JP2009073977A - ガソリン組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】含酸素化合物を含有するガソリン組成物であって、高オクタン価、低蒸気圧、かつ、優れた酸化安定性を有するガソリン組成物と、その製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、オレフィン分が1〜20容量%、芳香族分が20〜50容量%、及び含酸素化合物含有量が1〜12容量%であり、かつ炭素数8以上の芳香族分(Ar8)に対する炭素数7以下の芳香族分(Ar7)の容量比(Ar7/Ar8)が0.45以下であるガソリン組成物、好ましくは、リサーチ法オクタン価が98〜110、硫黄分が10質量ppm以下であり、さらに、上記含酸素化合物はエチルターシャリブチルエーテル(ETBE)を95容量%以上含有する。また本発明は、ETBEを95容量%以上含有する含酸素化合物と炭化水素基材とを混合して、上記のガソリン組成物を製造するガソリン組成物の製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、含酸素化合物を含有するガソリン組成物に関し、酸化安定性に優れたガソリン組成物に関する。
含酸素化合物の一つであるエチルターシャリブチルエーテル(ETBE)は、高いオクタン価を有し、同じ含酸素化合物であるエタノールと比べると、ガソリンに用いた場合に低添加量でも共沸現象による蒸気圧増加を起こすことがなく、また水混入時にガソリンからの相分離を起こすことがないこと等から、ハンドリングが比較的容易であることが知られている。CO削減を背景にETBEをガソリンに混合する技術等は数多く報告されている(特許文献1〜3参照)。
ETBEを混合したガソリンにおける酸化安定性は、重要な実用性能の一つである。ETBEあるいはETBEに含まれる不純物などにより、酸化安定性が十分でない場合がある。酸化安定性の向上には、酸化防止剤を添加することが有効であるが、酸化防止剤を添加することは経済的に不利である(非特許文献1参照)。
特開2005−029762号公報 特開2004−292511号公報 特開2004−285204号公報 SAE TECNICAL PAPER SERIES 941860
本発明は、含酸素化合物、特にはエチルターシャリブチルエーテル(ETBE)を含有するガソリンにおいて、高オクタン価、低蒸気圧、かつ、優れた酸化安定性を有するガソリン組成物と、その製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ETBEを配合したガソリンにおいて、ある特定の性状を満足するように調整した場合に、酸化安定性に優れる無鉛で高性能のガソリンを得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は次のとおりのガソリン組成物である。
(1)オレフィン分が1〜20容量%、芳香族分が20〜50容量%、及び含酸素化合物含有量が1〜12容量%であり、かつ炭素数8以上の芳香族分(Ar8)に対する炭素数7以下の芳香族分(Ar7)の容量比(Ar7/Ar8)が0.45以下であるガソリン組成物。
(2)リサーチ法オクタン価が98〜110、硫黄分が10質量ppm以下である請求項1記載のガソリン組成物。
(3)含酸素化合物がエチルターシャリブチルエーテルを95容量%以上含有する上記(1)又は(2)に記載のガソリン組成物。
(4)エチルターシャリブチルエーテルを95容量%以上含有する含酸素化合物と炭化水素基材とを混合することにより、上記(1)又は(2)に記載のガソリン組成物を製造するガソリン組成物の製造方法。
本発明の含酸素化合物を含有するガソリン組成物によれば、特に構成する芳香族成分について、特定の2つの芳香族成分の構成比率を特定の範囲に規定したことから、高オクタン価、低蒸気圧でありながら、顕著な酸化安定性を有するという格別な効果を奏する。
〔ガソリン組成物〕
本発明のガソリン組成物のオレフィン分は1〜20容量%である。オレフィン分が20%容量を超えると、ガソリンの酸化安定性を悪化させ、吸気バルブデポジットを増加させる可能性があるため好ましくない。好ましくは15容量%以下であり、さらに好ましくは13容量%以下、特に好ましくは10容量%以下である。またオレフィン分の下限は、リサーチ法オクタン価(RON)向上効果の観点から、1容量%以上が必要であり、好ましくは3容量%以上、さらに好ましくは5容量%以上、特に好ましくは8容量%以上である。
芳香族分は20〜50容量%であり、好ましくは25容量%以上、より好ましくは30容量以上、また上限として好ましくは45容量%以下、より好ましくは40容量%以下である。芳香族分は、オクタン価を向上させる効果があるが、芳香族分が50容量%を超えると排ガス性状を悪化させたり、プラグの燻りを引き起こすため好ましくない。また、芳香族分が20容量%より少ないと発熱量低下により燃費悪化を引き起こすことがあるため好ましくない。
ガソリン組成物中の各組成成分の量と酸化安定性について検討を行った結果、芳香族分の内、炭素数8以上の芳香族分(Ar8)に対する炭素数7以下の芳香族分(Ar7)の容量比(Ar7/Ar8)が0.45以下とし、好ましくは、0.40以下であると酸化安定性が良好である。Ar7/Ar8が0.45を超えると、オレフィン分や芳香族分が前記の記載範囲であっても、酸化安定性が良好でなくなるため好ましくない。また、50%留出温度を低く維持するために、Ar7/Ar8は0.17以上が好ましく、さらに好ましくは0.21以上である。
また、ガソリン中のベンゼン分は、品質確保法で1%以下と定められているが、排ガス性状の悪化防止の観点から0.5%以下が好ましく、特には0.4%以下が好ましい。
含酸素化合物(含酸素基材ともいう)の含有量は1〜12容量%である。排出ガス中のCOの低減やオクタン価向上効果の観点から、1容量%以上、好ましくは3容量%以上、より好ましくは5容量%以上である。また、排出ガス中のNOx増加を抑制する観点、また、既販車の燃料供給系統部材への影響を抑える観点から12容量%以下、好ましくは10容量%以下、より好ましくは8容量%以下である。
RONは98〜110であることが好ましい。燃費向上効果から好ましくは99以上、さらに好ましくは100以上である。また、芳香族分増加による排気ガス品質悪化、蒸留性状が重質化することによる冷機時運転性悪化から好ましくは105以下、より好ましくは104以下である。
ガソリン組成物の硫黄分は10質量ppm以下、好ましくは5質量ppm以下、より好ましくは1質量ppm以下である。ガソリン中の硫黄分は、排気ガス中で硫黄酸化物となり、窒素酸化物除去触媒を被毒する。そのために、窒素酸化物触媒の活性を回復すべく還元雰囲気を形成するために燃料が使用され、燃費悪化の原因となっているため、燃費向上の観点からもガソリン中の硫黄分は少ないほど好ましい。
ガソリン組成物のリード蒸気圧は、蒸発ガス低減のため65kPa以下、好ましくは60kPa以下、より好ましくは58kPa以下である。
ガソリン組成物の蒸留性状における50%留出温度は、100℃以下、好ましくは98℃以下、より好ましくは96℃以下である。50%留出温度が100℃を越えると、揮発性悪化を引き起こし、冷機時の運転性が悪化するため好ましくない。
〔ガソリン組成物の製造方法〕
本発明のガソリン組成物は、含酸素化合物と炭化水素基材とを混合することによって製造することができる。各基材を組み合わせて混合する際は、オレフィン分、芳香族分、願酸素化合物、Ar7/Ar8が所定の範囲となるように、各基材等の成分分析を実施して配合比率を決定し、ガソリン組成物を調製する。
〔含酸素化合物〕
本発明のガソリン組成物の製造に用いる含酸素化合物は、エタノール、エチルターシャリブチルエーテル(ETBE)を使用できる。燃料は、カーボンニュートラルである植物など生物由来のバイオマスが、大気中のCO濃度を実質的に増加させないことから好ましい。そのような観点から、特にバイオマスエタノール等が含酸素化合物の原料として好適である。なお、ETBEは一般的にエタノールとイソブテンとの反応により合成される。また、ETBE原料に使用するイソブテンは、炭素数3以下及び炭素数5以上の炭化水素含有量が少ない方が、ETBE製造時に生成する副生成物が少なくなり好ましい。
本発明に使用する含酸素化合物としては、ETBEを好適に用いることができる。含有される不純物の濃度は低いほど、酸化安定性がよくなるため、ETBE含有量が95容量%以上、好ましくは98容量%以上、特には99容量%以上が好適に使用できる。
また、含酸素化合物の水分は500質量ppm以下、好ましくは400質量ppm以下、より好ましくは350質量ppm以下である。水分量が500質量ppmを超える場合、ETBEを含有するガソリン組成物の酸化安定性が低下すること、また、炭化水素基材と混合したときに水分の分離等が起こる可能性があるため好ましくない。
含酸素基材の硫黄分は5質量ppm以下が好ましく、排気ガス触媒の被毒防止から、2質量ppm以下、さらには1質量ppm以下がより好ましい。また、含酸素基材のリード蒸気圧は40kPa以下であることが好ましく、ガソリンの蒸気圧低減効果からより好ましくは37kPa以下、さらには35kPa以下、特には33kPa以下が好ましい。
〔炭化水素基材〕
炭化水素基材としては、原油を蒸留して得た直留ナフサ、それを水素化脱硫後、蒸留分離することにより得た脱硫直留軽質ナフサ(DS−LG)、及び脱硫直留重質ナフサなどが挙げられる。前記脱硫直留重質ナフサからは、固体改質触媒により改質して改質ガソリンを得ることができ、得られた改質ガソリンをそのまま、蒸気圧を調整する程度で炭化水素基材として用いることができる。さらに、改質ガソリンを蒸留して得られた特定のアロマリッチな改質ガソリン留分(AC7、AC9など)も挙げられる。
さらに重質軽油や減圧軽油を、あるいはそれらを水素化脱硫して得られた脱硫油を流動床式分解して得られた接触分解油(接触分解ガソリン)なども炭化水素基材として用いることができる。接触分解ガソリンは、そのままでも使用することができるが、さらにこれを蒸留して適宜の沸点留分に調整し重質分を除去した軽質接触分解ガソリン(FC−LG)基材を好適に使用することができる。この軽質接触分解ガソリンの好ましい性状は、50%留出温度が40〜85℃、特には45〜60℃であり、90%留出温度が50〜140℃、特には60〜120℃である。
さらに、ブテン留分とイソブタン留分をアルキル化して得られたアルキレートガソリン(ALKG)、各種の精製工程から副生されるガソリン留分、さらに、単離されたブタン(C4)、ペンタン(特にイソペンタン)、あるいは、トルエン、キシレン等の芳香族基材などが挙げられる。
〔添加剤〕
さらに、本発明のガソリンには、当業界で公知の燃料油添加剤の1種又は2種以上を必要に応じて配合することができる。これらの配合量は適宜選べるが、通常は添加剤の合計配合量を0.1質量%以下に維持することが好ましい。本発明のガソリンで使用可能な燃料油添加剤を例示すれば、シッフ型化合物、チオアミド型化合物などの金属不活性化剤、有機リン系化合物などの表面着火防止剤、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミンなどの清浄分散剤、多価アルコール又はそのエーテルなどの氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステルなどの助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの帯電防止剤、アルケニル琥珀酸エステルなどの防錆剤、アゾ染料などの着色剤を挙げることができる。
以下に、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら制限されるものではない。
〔含酸素基材〕
含酸素基材としてETBEを95容量%含有する含酸素化合物を使用した。その諸特性を表1に示す。
Figure 2009073977
〔炭化水素基材〕
含酸素基材とともにガソリン組成物を調製する炭化水素基材として、その物性を表2に示す6種類の炭化水素基材とブタン(C4)を用意した。これらの炭化水素基材は次のようにして得たものである。
C4:ブタン留分であり、脱硫液化石油ガスを蒸留分離することにより炭素数4の炭化水素を95%以上含有し、ノルマルブタンを73容量%含有する留分を得た。
DS−LG:脱硫直留軽質ナフサであり、中東系原油のナフサ留分を水素化脱硫後、その軽質分を蒸留分離することにより得た。
ALKG:アルキレートガソリンであり、ブテンを主成分とする留分とイソブタンを主成分とする留分を硫酸触媒により反応させて、イソパラフィン分の高い炭化水素を得た。
FC−LG:減圧軽油を主成分とする重質軽油留分を水素化脱硫後、流動接触分解して得た流動接触分解ガソリンの100℃以下留分を蒸留分離することにより、軽質でオクタン価が高い留分を得た。
RFG:接触改質ガソリンであり、中東系原油のナフサ留分を水素化脱硫後、前記脱硫直留軽質ナフサ(DS−LG)を得る際に、重質留分(脱硫重質ナフサ)が蒸留分離される。この脱硫重質ナフサを固体改質触媒により移動床式反応装置を用いて改質反応させることにより、芳香族分の高い炭化水素油、すなわち改質ガソリンを得た。
AC7:軽質改質ガソリンである。前記のよう調製された改質ガソリン(RFG)を蒸留分離することにより炭素数7の芳香族炭化水素(トルエン)を95容量%含有する留分(AC7)を得た。
AC9:重質改質ガソリンであり、上記のよう調製された改質ガソリン(RFG)の蒸留分離において、炭素数11以上の炭化水素が5容量%以下、炭素数9及び10の炭化水素が90容量%以上含有される留分(AC9)を得た。
Figure 2009073977
〔ガソリン組成物の調製〕
上記の含酸素基材と炭化水素基材を、表3の上部に示す混合割合(容量%)でブレンドして実施例1〜3、比較例1〜2のガソリン組成物を調製した。得られたガソリン組成物の組成及び物性を測定し、酸化安定性を試験評価し、その結果を表3に併せて示す。
Figure 2009073977
表3に示す組成及び物性の測定、並びに酸化安定性の評価試験は、次の方法により実施した。
(1)蒸留性状:JIS K 2254「石油製品−蒸留試験法」
(2)リード蒸気圧:JIS K 2258「原油及び燃料油−蒸気圧試験方法−リード法」
(3)オクタン価(RON):JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」
(4)硫黄分:JIS K 2541−6「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」の紫外蛍光法に準拠して、小数点以下1桁まで求めた。
(5)密度:JIS K 2249「原油及び石油製品−密度試験方法」の振動式密度試験方法
(6)オレフィン分、芳香族分:JIS K 2536「石油製品−成分試験方法」のガスクロマトグラフィー法
<カラム槽条件>
カラム材質:100%メチルシリコーンキャピラリーカラム
温度条件:初期温度5℃、保持時間10分、昇温速度2℃/分、最終温度140℃
ガス条件:流速2mL/分、スプリット比50:1、メークアップ量50mL/分、
試料注入量:0.5μL
(7)ETBE含有量:水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフィーにより測定した。
<GC−FID測定条件>
GC装置:Hewlett Packard社製 6890型 FID検出器付GC
カラム:Spelco社製 PTE−5 0.25mmφ×30m
カラムオーブン温度:40℃で10分保持後、10℃/分で昇温し、300℃で15分保持
注入口温度:290℃、インターフェイス温度:300℃
注入方法:スプリット比(50:1)注入量:0.1μL
カラム流量:0.7mL/分(ヘリウム)
FID検出器:水素40mL、空気450mL、メークアップヘリウム及びキャリアーガス45mL
(8)酸化安定度:JIS K 2287 「ガソリン−酸化安定度試験方法−誘導期間法」
触媒ありの場合は、試料50mLに対して酢酸銅(0.20mgCu/mL)を2mL添加したものを試料として試験を実施した。

Claims (4)

  1. オレフィン分が1〜20容量%、芳香族分が20〜50容量%、及び含酸素化合物含有量が1〜12容量%であり、かつ炭素数8以上の芳香族分(Ar8)に対する炭素数7以下の芳香族分(Ar7)の容量比(Ar7/Ar8)が0.45以下であることを特徴とするガソリン組成物。
  2. リサーチ法オクタン価が98〜110、及び硫黄分が10質量ppm以下である請求項1に記載のガソリン組成物。
  3. 含酸素化合物がエチルターシャリブチルエーテルを95容量%以上含有する請求項1又は2に記載のガソリン組成物。
  4. エチルターシャリブチルエーテルを95容量%以上含有する含酸素化合物と炭化水素基材とを混合することにより、請求項1又は2に記載のガソリン組成物を製造するガソリン組成物の製造方法。
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