以下、本発明に係る実施の形態を図面に沿って説明する。
まず、本発明を適用し得る多段式自動変速機1(以下、単に「自動変速機」という)、具体的には前進8速段の自動変速機の概略構成について説明する。図1に示すように、例えばFRタイプ(フロントエンジン、リヤドライブ)の車輌に用いて好適な自動変速機1は、不図示のエンジンに接続し得る自動変速機1の入力軸11を有しており、該入力軸11の軸方向を中心としてトルクコンバータ7と、変速機構2とを備えている。
上記トルクコンバータ7は、自動変速機1の入力軸11に接続されたポンプインペラ7aと、作動流体を介して該ポンプインペラ7aの回転が伝達されるタービンランナ7bとを有しており、該タービンランナ7bは、上記入力軸11と同軸上に配設された上記変速機構2の入力軸12に接続されている。また、該トルクコンバータ7には、ロックアップクラッチ10が備えられており、該ロックアップクラッチ10が後述の油圧制御装置の油圧制御によって係合されると、上記自動変速機1の入力軸11の回転が変速機構2の入力軸12に直接伝達される。
上記変速機構2には、入力軸12(及び中間軸13)上において、プラネタリギヤDPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。上記プラネタリギヤDPは、サンギヤS1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1に噛合するピニオンP1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP2を互いに噛合する形で有している、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤである。
また、該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2(CR3)、及びリングギヤR3(R2)を有し、該キャリヤCR2に、サンギヤS2及びリングギヤR3に噛合するロングピニオンP4と、該ロングピニオンP4及びサンギヤS3に噛合するショートピニオンP3とを互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。
上記プラネタリギヤDPのサンギヤS1は、例えばミッションケース3に一体的に固定されているボス部3bに接続されて回転が固定されている。また、上記キャリヤCR1は、上記入力軸12に接続されて、該入力軸12の回転と同回転(以下、「入力回転」という。)になっていると共に、第4クラッチC−4(摩擦係合要素)に接続されている。更に、リングギヤR1は、該固定されたサンギヤS1と該入力回転するキャリヤCR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、第1クラッチC−1(摩擦係合要素)及び第3クラッチC−3(摩擦係合要素)に接続されている。
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、係止手段としての第1ブレーキB−1(摩擦係合要素)に接続されてミッションケース3に対して固定自在となっていると共に、上記第4クラッチC−4及び上記第3クラッチC−3に接続されて、第4クラッチC−4を介して上記キャリヤCR1の入力回転が、第3クラッチC−3を介して上記リングギヤR1の減速回転が、それぞれ入力自在となっている。また、上記サンギヤS3は、第1クラッチC−1に接続されており、上記リングギヤR1の減速回転が入力自在となっている。
更に、上記キャリヤCR2は、中間軸13を介して入力軸12の回転が入力される第2クラッチC−2(摩擦係合要素)に接続されて、該第2クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、係止手段としてのワンウェイクラッチF−1及び第2ブレーキB−2(摩擦係合要素)に接続されて、該ワンウェイクラッチF−1を介してミッションケース3に対して一方向の回転が規制されると共に、該第2ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR3は、不図示の駆動車輪に回転を出力する出力軸15に接続されている。
つづいて、上記構成に基づき、変速機構2の作用について図1、図2及び図3に沿って説明する。なお、図3に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素(各ギヤ)の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤDPの部分において、横方向最端部(図3中左方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中右方側へ順に縦軸は、リングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(図3中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR3(R2)、キャリヤCR2(CR3)、サンギヤS2に対応している。
例えばD(ドライブ)レンジであって、前進1速段(1st)では、図2に示すように、第1クラッチC−1及びワンウェイクラッチF−1が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、キャリヤCR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりキャリヤCR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。すると、サンギヤS3に入力された減速回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、前進1速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
なお、エンジンブレーキ時(コースト時)には、第2ブレーキB−2を係止してキャリヤCR2を固定し、該キャリヤCR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。また、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF−1によりキャリヤCR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチF−1の自動係合により滑らかに行うことができる。
前進2速段(2nd)では、図2に示すように、第1クラッチC−1が係合され、第1ブレーキB−1が係止される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、第1ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、キャリヤCR2がサンギヤS3よりも低回転の減速回転となり、該サンギヤS3に入力された減速回転が該キャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、前進2速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進3速段(3rd)では、図2に示すように、第1クラッチC−1及び第3クラッチC−3が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、第3クラッチC−3の係合によりリングギヤR1の減速回転がサンギヤS2に入力される。つまり、サンギヤS2及びサンギヤS3にリングギヤR1の減速回転が入力されるため、プラネタリギヤユニットPUが減速回転の直結状態となり、そのまま減速回転がリングギヤR3に出力され、前進3速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進4速段(4th)では、図2に示すように、第1クラッチC−1及び第4クラッチC−4が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、第4クラッチC−4の係合によりキャリヤCR1の入力回転がサンギヤS2に入力される。すると、キャリヤCR2がサンギヤS3よりも高回転の減速回転となり、該サンギヤS3に入力された減速回転が該キャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、前進4速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進5速段(5th)では、図2に示すように、第1クラッチC−1及び第2クラッチC−2が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第1クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、第2クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS3に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、上記前進4速段より高い減速回転となってリングギヤR3に出力され、前進5速段としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進6速段(6th)では、図2に示すように、第2クラッチC−2及び第4クラッチC−4が係合される。すると、図1及び図3に示すように、第4クラッチC−4の係合によりサンギヤS2にキャリヤCR1の入力回転が入力される。また、第2クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。つまり、サンギヤS2及びキャリヤCR2に入力回転が入力されるため、プラネタリギヤユニットPUが入力回転の直結状態となり、そのまま入力回転がリングギヤR3に出力され、前進6速段(直結段)としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進7速段(7th、OD1)では、図2に示すように、第2クラッチC−2及び第3クラッチC−3が係合される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第3クラッチC−3を介してサンギヤS2に入力される。また、第2クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS2に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、入力回転より僅かに高い増速回転となってリングギヤR3に出力され、前進7速段(上記直結段よりも増速のオーバードライブ1速段)としての正転回転が出力軸15から出力される。
前進8速段(8th、OD2)では、図2に示すように、第2クラッチC−2が係合され、第1ブレーキB−1が係止される。すると、図1及び図3に示すように、第2クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。また、第1ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、固定されたサンギヤS2によりキャリヤCR2の入力回転が上記前進7速段より高い増速回転となってリングギヤR3に出力され、前進8速段(上記直結段よりも増速のオーバードライブ2速段)としての正転回転が出力軸15から出力される。
後進1速段(Rev1)では、図2に示すように、第3クラッチC−3が係合され、第2ブレーキB−2が係止される。すると、図1及び図3に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるキャリヤCR1によって減速回転するリングギヤR1の回転が、第3クラッチC−3を介してサンギヤS2に入力される。また、第2ブレーキB−2の係止によりキャリヤCR2の回転が固定される。すると、サンギヤS2に入力された減速回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、後進1速段としての逆転回転が出力軸15から出力される。
後進2速段(Rev2)では、図2に示すように、第4クラッチC−4が係合され、第2ブレーキB−2が係止される。すると、図1及び図3に示すように、第4クラッチC−4の係合によりキャリヤCR1の入力回転がサンギヤS2に入力される。また、第2ブレーキB−2の係止によりキャリヤCR2の回転が固定される。すると、サンギヤS2に入力された入力回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、後進2速段としての逆転回転が出力軸15から出力される。
なお、本自動変速機においては、油圧制御装置による油圧制御により、リバースレンジ時に第4クラッチC−4及び第2ブレーキB−2が係合されて、つまり後進2速段(Rev2)のみを形成するようにしている。しかし、これは、種々変更が可能で、後進1速段のみ、もしくは、後進1速段および後進2速段の両方を形成することもできる。
また、例えばP(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、第1クラッチC−1、第2クラッチC−2、第3クラッチC−3、及び第4クラッチC−4が解放される。すると、キャリヤCR1とサンギヤS2との間、リングギヤR1とサンギヤS2及びサンギヤS3との間、即ちプラネタリギヤDPとプラネタリギヤユニットPUとの間が切断状態となる。また、入力軸12(中間軸13)とキャリヤCR2との間が切断状態となる。これにより、入力軸12とプラネタリギヤユニットPUとの間の動力伝達が切断状態となり、つまり入力軸12と出力軸15との動力伝達が切断状態となる。
図4は、上記自動変速機1に適用される油圧制御装置20の概略を示す図であり、基本的には、前記各クラッチ及びブレーキの各油圧サーボに各別に油圧が供給又は解放されるように複数のリニアソレノイドバルブにより制御される。殆どの油圧サーボB−1,C−4,C−1,C−3は、それぞれ専用のリニアソレノイドバルブSL5,SL4,SL1,SL3により制御され、両方が同時作動されることのない、前進高速段(5速〜8速)でのみ係合する第2クラッチ用油圧サーボC−2と後進時及び1速エンジンブレーキ時に係合する第2ブレーキ用油圧サーボB−2が、1個の兼用リニアソレノイドバルブSL2により兼用されて制御される。従って、合計6個の油圧サーボに対して5個のリニアソレノイドバルブにより制御される。なお、第2ブレーキ用油圧サーボB−2は、後進時と1速エンジンブレーキ時とは係合必要トルクが大きく異なるので、インナーとアウターの2個の油圧サーボに分かれており、後進時にインナー及びアウターの両方に油圧が供給され、1速エンジンブレーキ時は一方のみ油圧が供給されるように切換えられる。
各リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、それぞれライン圧(又はモジュレータ圧)PLが入力する入力ポートaと、出力ポートbと、フィードバックポートc、ドレーンポートを有しており、入力ポートaのライン圧が、制御部からの電気信号が入力するソレノイド部により調圧制御されて、出力ポートbから出力する。各出力ポートは、それぞれ油圧サーボに連通して、各油圧サーボを、0圧からライン圧までに適宜調圧制御する。
即ち、第5リニアソレノイドバルブSL5が第1ブレーキ用油圧サーボB−1に連通し、第4リニアソレノイドバルブSL4が第4クラッチ用油圧サーボC−4に連通し、第1リニアソレノイドバルブSL1が第1クラッチ用油圧サーボC−1に連通し、第3リニアソレノイドバルブSL3が第3クラッチ用油圧サーボC−3に連通し、そして第2リニアソレノイドバルブSL2が第2クラッチ用油圧サーボC−2又は第2ブレーキ用油圧サーボB−2に連通している。
そして、前記専用各リニアソレノイドバルブSL5,SL4,SL1,SL3と各油圧サーボB−1,C−4,C−1,C−3との間には、分割された2本のバルブからなる第1の切換えバルブ22が介在しており、該切換えバルブ22は、第1の制御用ソレノイドバルブ23により切換えられる。また、前記兼用リニアソレノイドバルブSL2の出力ポートbと、第2クラッチ用油圧サーボC−2又は第2ブレーキ用油圧サーボB−2との間には、第2の切換えバルブ25が介在しており、該第2の切換えバルブ25は、第2の制御用ソレノイドバルブ26により切換えられる。なお、第1の切換えバルブ22は、分割された2個の切換えバルブ22a,22bからなるが、共に第1の制御用ソレノイドバルブ23により制御されており、1個の切換えバルブから構成してもよい。
前記第1の切換えバルブ22a,22bは、共にスプール27a,27bの一端にスプリング29a,29bが付勢作用していると共に、該スプールの他端が上記第1の制御用ソレノイドバルブ23の出力ポートbからの制御圧が作用する制御油室da,dbになっており、該ソレノイドバルブ23の作動、非作動により上半位置(第1位置)、下半位置(第2位置)に切換えられる。前記第2の切換えバルブ25は、スプール30の一端にスプリング31が付勢作用していると共に、該スプールの他端が上記第2の制御用ソレノイドバルブ26の出力ポートbからの制御圧が作用する制御油室eになっており、該ソレノイドバルブ26の作動、非作動により右半位置(第1位置)、左半位置(第2位置)に切換えられる。また、各リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の出力ポートbと上記第1の切換えバルブ22の各入力ポートとの間にはそれぞれ圧力センサ33…が連通されている。また、第2の切換えバルブ25の出力ポート(v)と油圧サーボB−2との間に圧力センサ33が配置されている。なお、該圧力センサ33は、第2の制御用ソレノイドバルブ26及び第2の切換えバルブ25のいずれか一方でも故障した場合を検知するためのものであり、該圧力センサの配置は他の箇所でもよい。また、上記第1及び第2の制御用ソレノイドバルブ23,25は、通電時に制御圧を出力するノーマルクローズタイプであることが好ましい。
前記圧力センサ33に基づき、前記各リニアソレノイドバルブSL1〜SL5及び第2の制御用ソレノイドバルブ26(及び第2の切換えバルブ25)のいずれか1個が故障したことを検出する。なお、実際の油圧回路には、各リニアソレノイドバルブと油圧サーボとの間に、オールオフフェールに際してのフェールセーフのため、例えば特開2007−177932号公報に示すように、バルブが介在している。即ち、本発明は、各リニアソレノイドバルブが1個でも故障した場合のフェールセーフであって、具体的には、原則として前進走行中には7速(7TH)に、第5のリニアソレノイドバルブSL5が出力状態のまま故障した場合は8速(8TH)に、後進走行中には後進2速(Rev2)になるように、各リニアソレノイドバルブの出力を振り分けるものである。なお、上記圧力センサ33は、各リニアソレノイドバルブSL1〜SL5及び第2の制御用ソレノイドバルブ26が出力状態のまま又は出力しない状態で故障したことを検出するためのものであるが、圧力センサに限らず、他の故障検出手段でもよい。
図5を参照しつつ、図4に沿って前記第1の切換えバルブ22の各ポートについて説明する。第5リニアソレノイドバルブSL5からの入力ポートfは、切換えバルブ22の上半位置にあっては第1ブレーキ用油圧サーボB−1への出力ポートqに連通し、下半位置にあっては第4クラッチ用油圧サーボC−4への出力ポートrに連通する。第4リニアソレノイドバルブSL4からの出力ポートbから油圧は分岐されて2個の入力ポートg及びkに入力し、一方の入力ポートgは、上半位置にあっては第4クラッチ用油圧サーボC−4への出力ポートrに連通し、下半位置にあっては後述する連通ポート(第2の連通ポート)iに連通する。他方の入力ポートkは、第1の切換えバルブ22の上半位置にあっては閉塞(×)され、下半位置にあっては第3クラッチ用油圧サーボC−3への出力ポートtに連通する。第1リニアソレノイドバルブSL1からの入力ポートjは、上半位置にあっては第1クラッチ用油圧サーボC−1への出力ポートsに連通し、下半位置にあっては閉塞(×)される。第3リニアソレノイドバルブSL3からの入力ポートlは、上半位置にあっては第3クラッチ用油圧サーボC−3への出力ポートtに連通し、下半位置にあっては後述する連通ポート(第1の連通ポート)mに連通する。
そして、第2ソレノイドバルブSL2の出力ポートbは、第2の切換えバルブ25の入力ポートoに連通しており、該入力ポートoは、該切換えバルブの左半位置(第1位置)にあっては第2クラッチ用油圧サーボC−2への出力ポートuに連通し、右半位置にあっては第2ブレーキ用油圧サーボB−2に連通する。前記第1の切換えバルブ22の連通ポートiは、第2の切換えバルブ25のポートpに連通しており、該ポートpは、左半位置にあっては閉塞(×)され、右半位置にあっては第2クラッチ用油圧サーボC−2へのポートuに連通する。上記第1の切換えバルブ22の連通ポートiは、前述したように下半位置にあって第4ソレノイドバルブSL4からの入力ポートgに連通しているが、上半位置にあってはドレーンポートに連通する。前記第1の切換えバルブ22の連通ポートmは、第2の切換えバルブ25のポートnに連通し、該ポートnは、左半位置にあっては第2ブレーキ用油圧サーボB−2へのポートvに連通し、右半位置にあっては閉塞(×)される。上記ポートmは、前述したように下半位置にあっては第3リニアソレノイドバルブSL3からの入力ポートlに連通しているが、上半位置にあってはドレーンポートに連通する。
即ち、第1の切換えバルブ22が上半位置にある正常状態にあっては、第2の切換えバルブ25は、第2リニアソレノイドバルブSL2からの出力油圧を、所定前進高速段(7速)を達成するための一方のクラッチ(第2クラッチ)用油圧サーボ(C−2)と、後進2速段を達成するための一方のブレーキ(第2ブレーキ)用油圧サーボ(B−2)とへ供給先を切換えるが、第1の切換えバルブが下半位置にある場合、上記第2クラッチ用油圧サーボC−2は、ポートu,p,i,gを介して第4リニアソレノイドバルブSL4の出力ポートに連通し、上記第2ブレーキ用油圧サーボB−2は、ポートv,n,m,lを介して第3リニアソレノイドバルブSL3の出力ポートに連通する。
ついで、図6〜図17に沿って、各リニアソレノイドバルブ及び第2の制御用ソレノイドバルブの故障の際のフェールセーフについて、各別に説明する。
図6は、第1リニアソレノイドバルブSL1が出力したままの状態で故障した場合を示す。第1の制御用ソレノイドバルブ23の作動により、第1の切換えバルブ22を破線に示すように切換える。即ち、出力状態の第1リニアソレノイドバルブSL1からの油圧は、入力ポートjが閉塞されることにより遮断される。この状態では、第4クラッチC−4、第3クラッチC−3、第2クラッチC−2、第2ブレーキB−2の各油圧サーボが、それぞれ第5、第4、第3、第2リニアソレノイドバルブSL5、SL4、SL3、SL2、及び第2の制御用ソレノイドバルブ26により作動可能である。
車輌が前進走行状態にあっては、第2の制御用ソレノイドバルブ26を作動して、第2の切換えバルブ25を右半位置に切換える。そして、第4リニアソレノイドバルブSL4を作動して、ポートk,tを介して第3クラッチ用油圧サーボC−3に油圧を供給すると共に、ポートg,i,p,uを介して第2クラッチ用油圧サーボC−2に油圧を供給する。この際、第2リニアソレノイドバルブSL2は非作動状態にあり、第2ブレーキ用油圧サーボB−2は、ポートv,oを介してドレーンされる。これにより、第2クラッチC−2及び第3クラッチC−3が係合して前進7速(7TH)になる。なお、第1の切換えバルブ22を上半位置に保持したままの場合、1速〜5速及び1速エンジンブレーキが可能である。
車輌が後進走行状態にあっては、第2の制御用ソレノイドバルブ26を作動して、第2の切換えバルブを右半位置に切換える。そして、第5ソレノイドバルブSL5を作動して、ポートf,rを介して第4クラッチ用油圧サーボC−4に油圧を供給すると共に、第2リニアソレノイドバルブSL2を作動して、ポートo,vを介して第2ブレーキ用油圧サーボB−2に油圧を供給する。この際、第2クラッチ用油圧サーボC−2は、ポートu,p,i,gを介して第4のリニアソレノイドバルブSL4からドレーンする。これにより、第4クラッチC−4及び第2ブレーキB−2が係合して後進2段となる。なお、第5リニアソレノイドバルブSL5の代りに、第4ソレノイドバルブSL4を作動して、第3クラッチ用油圧サーボC−3に油圧を供給して、後進1速(Rev1)を達成することも可能である。この場合には、第2の制御用ソレノイドバルブ26を非作動にして、第2の切換えバルブ25を左半位置にする必要がある。
車輌がニュートラル状態にある場合、ソレノイドバルブ23を作動状態として、出力状態の第1リニアソレノイドバルブSL1からの出力を遮断すると共に、他のリニアソレノイドバルブをすべて非作動とする。
図7は、第1リニアソレノイドバルブSL1が出力しない状態で故障した場合を示す。この場合、第1の制御用ソレノイドバルブ23は非作動状態のままとし、切換えバルブ22を上半位置に保持し、各リニアソレノイドバルブと各油圧サーボは実線で示すように連通する。
車輌が前進走行中にある場合、第2の制御用ソレノイドバルブ26を非作動として、第2の切換えバルブ25を左半位置に保持する。そして、第2リニアソレノイドバルブSL2及び第3リニアソレノイドバルブSL3を作動して、他のリニアソレノイドバルブを非作動する。これにより、第2クラッチ用油圧サーボC−2及び第3クラッチ用油圧サーボC−3に油圧が供給されて、前進7速となる。なお、第2クラッチ用油圧サーボC−2,第4クラッチ用油圧サーボC−4,第3クラッチ用油圧サーボC−3,第2ブレーキ用油圧サーボB−2,第1ブレーキ用油圧サーボB−1に油圧を供給可能で、上記7速以外にも、6速,8速が可能である。また、第1の制御用ソレノイドバルブ23を作動して第1の切換えバルブ22を下半位置に切換えた場合でも、前進7速が可能である。
車輌が後進走行中にある場合、第2の制御用ソレノイドバルブ26を作動して、第2の切換えバルブ25を右半位置に切換える。そして、第4リニアソレノイドバルブSL4及び第2リニアソレノイドバルブSL2を作動し、その他のリニアソレノイドバルブを非作動とする。これにより、第4クラッチ用油圧サーボC−4及び第2ブレーキ用油圧サーボB−2に油圧を供給して、後進2速を達成する。なお、第4クラッチC−4の代りに第3クラッチC−3を作動して、後進1速が可能である。また、第1の切換えバルブ22を下半位置に切換えても、後進2速及び1速が可能である。なお、後進1速(Rev1)を達成する場合には、第2の制御用ソレノイドバルブ26を非作動にして第2の切換えバルブ25を左半位置に切り換える必要がある。
車輌がニュートラル状態の場合、オフフェールの第1ソレノイドバルブSL1の外、すべてのリニアソレノイドバルブ及びソレノイドバルブ23を非作動とする。
図8は、第2ソレノイドバルブSL2が出力状態のままスティック(故障)した場合を示す。この場合、第1の制御用ソレノイドバルブ23を非作動状態として、第1の切換えバルブ22を上半位置に保持する。
車輌が前進走行中にあっては、第2の切換えバルブ25を左半位置に保持する。この状態では、出力状態の第2リニアソレノイドバルブSL2からの油圧が第2クラッチ用油圧サーボC−2に供給されており、第3リニアソレノイドバルブSL3を出力して、他のリニアソレノイドバルブを非作動とする。これにより、第2クラッチ用油圧サーボC−2と第3クラッチ用油圧サーボC−3に油圧が供給されて、前進7速となる。なお、この状態で、各リニアソレノイドバルブを適宜制御することにより、前進7速の外、前進5、6速、8速が可能となる。また、第1の切換えバルブ22を切換えた状態で6速及び7速が可能である。
車輌が後進状態にある場合、第2の切換えバルブ25を右半位置に切換える。この状態では、出力状態にある第2ソレノイドバルブSL2からの出力油圧が第2ブレーキ用油圧サーボB−2に供給され、更に第4リニアソレノイドバルブSL4を作動して、その出力油圧を第4クラッチ用油圧サーボC−4に供給し、他のリニアソレノイドバルブを非作動とする。これにより、後進2速が達成される。なおこの際、第4リニアソレノイドバルブSL4からの出力圧は、分岐された一方のポートgからポートrを介して第4クラッチ用油圧サーボC−4に供給されるが、他方のポートkは閉塞されている。また、上記後進2速の外、後進1速も可能であり、また第1の切換えバルブ22を下半位置に切換えた状態でも後進2速が可能である。
車輌がニュートラル状態にある場合、故障中の第2ソレノイドバルブSL2以外のすべてのリニアソレノイドバルブを非作動とする。なお、ソレノイドバルブ23は、非作動状態のまま保持しても作動に切換えてもよい。
図9は、第2リニアソレノイドバルブSL2が出力しない状態で故障した場合を示す。この場合、第1の制御用ソレノイドバルブ23を作動して、切換えバルブ22を下半位置に切換える。
車輌が前進走行中にあっては、第2の制御用ソレノイドバルブ26を作動して、第2の切換えバルブ25を右半位置に切換える。この状態では、非出力状態の第2リニアソレノイドバルブSL2が第2ブレーキ用油圧サーボB−2に連通して、該第2ブレーキB−2は解放状態に保持される。そして、第4リニアソレノイドバルブSL4を作動して、他のリニアソレノイドバルブをオフする。これにより、第4リニアソレノイドバルブSL4からの出力油圧が、ポートk,tを介して第3クラッチ用油圧サーボC−3に供給されると共に、ポートg,i,p,uを介して第2クラッチ用油圧サーボC−2に供給されて、前進7速が達成される。なお、第1の制御用ソレノイドバルブ23を作動させないで、前進1速、2速、3速、4速が可能となる。
車輌が後進状態にある場合、第2の切換えバルブ25を左半位置に保持する。この状態では、出力されないリニアソレノイドバルブSL2は第2クラッチ用油圧サーボC−2に連通する。そして、第5リニアソレノイドバルブSL5及び第3リニアソレノイドバルブSL3を作動すると共に、他のリニアソレノイドバルブをオフする。これにより、第1の切換えバルブ22のポートf,rを介して第4クラッチ用油圧サーボC−4に油圧が供給されると共に、第1の切換えバルブ22のポートl,m及び第2の切換えバルブ25のポートn,vを介して第2ブレーキ用油圧サーボB−2に油圧が供給されて、後進2速が達成される。なお、後進1速も可能である。
車輌がニュートラル状態にある場合、すべての正常なリニアソレノイドバルブをオフする。なおこの際、ソレノイドバルブ23は作動、非作動どちらでもよい。
図10は、第3ソレノイドバルブSL3が出力状態で故障した場合を示す。車輌が前進走行中にある場合、第1の制御用ソレノイドバルブ23を作動させず、第1の切換えバルブ22を上半位置に保持すると共に、第2の切換えバルブ25を左半位置に保持する。この状態では、出力状態にある第3リニアソレノイドバルブSL3からの出力油圧は、第3クラッチ用油圧サーボC−3に供給され、第2リニアソレノイドバルブSL2を作動して、第2クラッチ用油圧サーボC−2に油圧を供給し、他のリニアソレノイドバルブをオフする。これにより、前進7速が達成される。なおこの際、第2ブレーキ用油圧サーボB−2は、ポートv,n,mを介してドレーンポートEXに連通している。また、この状態で、適宜リニアソレノイドバルブを制御することにより、前進7速の外、3速が可能である。また、第1の制御用ソレノイドバルブ23を作動させた状態でも、前進7速が可能である。
車輌が後進状態にある場合、第1の制御用ソレノイドバルブ23を作動して、第1の切換えバルブ22を下半位置に切換えると共に、第2の制御用ソレノイドバルブ26を非作動として、第2の切換えバルブ25を左半位置に保持する。この状態では、出力状態にある第3リニアソレノイドバルブSL3からの油圧が、第1の切換えバルブ22のポートl,m及び第2の切換えバルブ25のポートn,vを介して第2ブレーキ用油圧サーボB−2に供給され、第5リニアソレノイドバルブSL5を作動して第4クラッチ用油圧サーボC−4に油圧を供給し、他のリニアソレノイドバルブをオフする。これにより、後進2速が達成される。なおこの状態で、後進2速の外、後進1速も可能であり、ソレノイドバルブ23を作動させない状態では、後進1速のみが可能である。
車輌がニュートラル状態にある場合、出力状態にある第3リニアソレノイドバルブSL3以外、すべてのリニアソレノイドバルブをオフする。なお、ソレノイドバルブ23は非作動でも作動でもよい。
図11は、第3リニアソレノイドバルブSL3が出力しない状態で故障した場合を示す。車輌が前進走行中にあっては、第1の制御用ソレノイドバルブ23を作動して、第1の切換えバルブ22を下半位置に切換えると共に、第2の制御用ソレノイドバルブ26を作動して、第2の切換えバルブ25を右半位置に切換える。この状態では、出力しない第3リニアソレノイドバルブSL3は、ポートl,mを介して第2の切換えバルブ25のポートnで閉塞され、第4リニアソレノイドバルブSL4を作動して、ポートk,tを介して第3クラッチ用油圧サーボC−3に油圧を供給すると共に、ポートg,i,p,uを介して第2クラッチ用油圧サーボC−2に油圧を供給し、他のリニアソレノイドバルブをオフする。これにより、前進7速が達成される。なお、第1のソレノイドバルブ23を非作動とすると、1速、2速、4速、5速、6速、8速及び1速エンジンブレーキが可能である。ただし、5速、6速、8速時は、第2の切換えバルブ25を左半位置にする必要がある。
車輌が後進状態にある場合、第1のソレノイドバルブ23を非作動状態にして、第1の切換えバルブ22を上半位置に保持すると共に、第2の制御用ソレノイドバルブ26を作動して、第2の切換えバルブ25を右半位置に切換える。この状態では、出力しない第3リニアソレノイドバルブSL3は第3クラッチ用油圧サーボC−3に連通し、第4リニアソレノイドバルブSL4を作動して、第4クラッチ用油圧サーボC−4に油圧を供給すると共に、第2リニアソレノイドバルブSL2を作動して、第2ブレーキ用油圧サーボB−2に油圧を供給し、他のリニアソレノイドバルブをオフにする。これにより、後進2速を達成する。なお、第1の制御用ソレノイドバルブ23を作動させない状態でも後進2速が可能である。
車輌がニュートラル状態にある場合、すべての正常なリニアソレノイドバルブを非作動とする。この際、ソレノイドバルブ23は非作動・作動のどちらでもよい。
図12は、第4リニアソレノイドバルブSL4が出力状態のまま故障した場合を示す。車輌が前進走行中にあっては、第1の制御用ソレノイドバルブ23を作動して、第1の切換えバルブ22を下半位置に切換えると共に、第2の制御用ソレノイドバルブ26を作動して、第2の切換えバルブ25を右半位置に切換える。この状態では、出力状態にある第4リニアソレノイドバルブSL4の出力油圧が、第1の切換えバルブ22の一方のポートg,i及び第2の切換えバルブ25のポートp,uを介して第2クラッチ用油圧サーボC−2に供給すると共に、他方のポートk,tを介して第3クラッチ用油圧サーボC−3に油圧を供給し、他のリニアソレノイドバルブをオフとする。これにより、前進7速が達成される。なお、ソレノイドバルブ23を非作動状態とすると、4速及び6速が可能である。ただし、4速、6速を達成するためには、第2の切換えバルブ25を左半位置に切り換える必要がある。
車輌が後進状態にある場合、第1の制御用ソレノイドバルブ23を非作動状態として、切換えバルブ22を上半位置に保持すると共に、第2の制御用ソレノイドバルブ26を作動して、第2の切換えバルブ25を右半位置に切換える。この状態では、出力状態にある第4リニアソレノイドバルブSL4からの出力油圧が、ポートg,rを介して第4クラッチ用油圧サーボC−4に供給されると共に、第2ソレノイドバルブSL2を作動して、ポートo,vを介して第2ブレーキ用油圧サーボB−2に油圧を供給し、他のリニアソレノイドバルブをオフとする。これにより、後進2速が達成される。なお、ソレノイドバルブ23を作動状態とし、第2の切換えバルブ25を左半位置に保持した状態で、後進1速が可能である。
車輌がニュートラル状態にある場合、出力状態にある第4リニアソレノイドバルブSL4以外のすべてのリニアソレノイドバルブをオフにする。なお、ソレノイドバルブ23は、非作動・作動のどちらでもよい。
図13は、第4リニアソレノイドバルブSL4が出力しない側にて故障した場合を示す。車輌が前進走行中にあっては、第1の制御用ソレノイドバルブ23を非作動として、第1の切換えバルブ22を上半位置に保持すると共に、第2の切換えバルブ25を左半位置に保持する。この状態では、出力しない第4リニアソレノイドバルブSL4が第4クラッチ用油圧サーボC−4に連通し、第2ソレノイドバルブSL2を作動して第2クラッチ用油圧サーボC−2に油圧を供給すると共に、第3リニアソレノイドバルブSL3を作動して第3クラッチ用油圧サーボC−3に油圧を供給し、他のリニアソレノイドバルブをオフとする。これにより、前進7速が達成される。なお、各リニアソレノイドバルブを適宜作動することにより、上記制御用ソレノイドバルブ23の非作動にあって、上記7速の外に、1速、2速、3速、5速、8速、1速エンジンブレーキが可能であり、1速エンジンブレーキ時の場合には、第2の切換えバルブ25を右半位置にする。また、上記第1の制御用ソレノイドバルブ23の作動において、6速が可能となる。
車輌が後進走行中にあっては、第1の制御用ソレノイドバルブ23を作動して、第1の切換えバルブ22を下半位置に切換えると共に、第2の制御用ソレノイドバルブ26を非作動として、第2の切換えバルブ25を左半位置に保持する。この状態では、第5リニアソレノイドバルブSL5を作動して第4クラッチ用油圧サーボC−4に油圧を供給すると共に、第3リニアソレノイドバルブSL3を作動して、ポートl,m,n,vを介して第2ブレーキ用油圧サーボB−2に油圧を供給し、他のリニアソレノイドバルブをオフとする。これにより、後進2速が達成される。なお、第2ブレーキ用油圧サーボB−2への油圧供給は、第2の切換えバルブ25を右半位置に切換えて、第2リニアソレノイドバルブSL2により行ってもよい。第1の制御用ソレノイドバルブ23を非作動状態として第2の切換えバルブ25を右半位置にすることで、後進1速が可能である。
車輌がニュートラル状態にある場合、すべての正常なリニアソレノイドバルブをオフとする。なおこの際、ソレノイドバルブ23は非作動・作動のどちらでもよい。
図14は、第5リニアソレノイドバルブSL5が出力状態のままで故障した場合を示す。車輌が前進走行中にあっては、第1の制御用ソレノイドバルブ23を非作動として、第1の切換えバルブ22を上半位置に保持すると共に、第2の制御用ソレノイドバルブを非作動状態として、第2の切換えバルブ25を左半位置に保持する。この状態では、出力状態にある第5リニアソレノイドバルブSL5の出力油圧は、ポートf,qを介して第1ブレーキ用油圧サーボB−1に供給されると共に、第2リニアソレノイドバルブSL2を作動して、ポートo,uを介して第2クラッチ用油圧サーボC−2に油圧を供給し、他のリニアソレノイドバルブをオフとする。これにより、第2ブレーキB−1と第2クラッチC−2が作動して、前進8速(8TH)となる。この状態は、他の故障が前進7速になるのに対し、前進8速となるが、車輌が1速段で走行したり、また停止状態にある場合は、まず、第1リニアソレノイドバルブSL1を作動して、ポートj,sを介して第1クラッチ用油圧サーボC−1に油圧を供給し、前進2速にした後、第1リニアソレノイドバルブSL1を非作動すると共に、第2リニアソレノイドバルブSL2を作動して前進8速にして、前進8速走行を可能とする。更に、第1の制御用ソレノイドバルブ23を作動して、第1の切換えバルブ22を下半位置とし、出力状態にある第5リニアソレノイドバルブSL5からの油圧を、ポートf,rを介して第4クラッチ用油圧サーボC−4に供給し、上述した第2リニアソレノイドバルブSL2による第2クラッチ用油圧サーボC−2への油圧供給と相俟って、前進6速を可能とする。これにより、6速から8速、又は2速、6速、8速の変速が可能である。
車輌が後進状態にある場合、第1の切換えバルブ22を下半位置に切換えると共に、第2の切換えバルブ25を右半位置に切換える。この状態では、出力状態にある第5リニアソレノイドバルブSL5の出力が、ポートf,rを介して第4クラッチ用油圧サーボC−4に供給され、第2リニアソレノイドバルブSL2からの出力が、ポートo,vを介して第2ブレーキ用油圧サーボB−2に供給され、他のリニアソレノイドバルブをオフとする。これにより、後進2速が達成される。
車輌がニュートラル状態にある場合、上記出力状態にある第5リニアソレノイドバルブSL5以外のすべてのリニアソレノイドバルブをオフとする。この際、ソレノイドバルブ23は、非作動でも作動でもよい。
図15は、第5リニアソレノイドバルブSL5が出力しない側で故障した場合を示す。この場合、該第5リニアソレノイドバルブSL5は出力しない側で故障なので、第1の切換えバルブ22を上半位置に保持して、第5リニアソレノイドバルブSL5を第1ブレーキ用油圧サーボB−1に連通したままで足りる。
車輌が前進走行中にある場合、第2の切換えバルブ25を左半位置に保持した状態で、第2リニアソレノイドバルブSL2を作動して、第2クラッチ用油圧サーボC−2に油圧を供給すると共に、第3リニアソレノイドバルブSL3を作動して、第3クラッチ用油圧サーボC−3に油圧を供給し、他のリニアソレノイドバルブをオフとする。これにより、前進7速が達成される。なお、ソレノイドバルブ23を非作動として、上記7速の外に、1速、3速、4速、5速、6速、1速エンジンブレーキが可能であり、第1の制御用ソレノイドバルブ23を作動とし、かつ第2の切換えバルブ25を右半位置とすることにより、7速が可能である。
車輌が後進走行中にある場合、第1の切換えバルブ22を上半位置に保持したままで、第4リニアソレノイドバルブSL4を作動して、第4クラッチ用油圧サーボC−4に油圧を供給すると共に、第2の切換えバルブ25を右半位置に切換え、この状態で第2リニアソレノイドバルブSL2を作動して、第2ブレーキ用油圧サーボB−2に油圧を供給し、他のリニアソレノイドバルブをオフとする。これにより、後進2速を達成する。なお、第1のソレノイドバルブ23の非作動状態で、後進2速の外、後進1速も可能であり、またソレノイドバルブ23の作動状態で第2の切換えバルブ25を右半位置とすることで後進1速が可能である。
車輌がニュートラル状態にある場合、すべての正常なリニアソレノイドバルブをオフにする。なお、ソレノイドバルブ23は非作動・作動どちらでもよい。
図16は、第2の制御用ソレノイドバルブ26が出力状態で故障した場合、又は第2の切換えバルブ25が作動側(右半位置)にスティックした場合を示す。車輌が前進走行中にある場合、第1の制御用ソレノイドバルブ23を作動して、第1の切換えバルブ22を下半位置に切換える。この状態では、出力状態にある第2の制御用ソレノイドバルブにより第2の切換えバルブ25が右半位置にあり、第4リニアソレノイドバルブSL4を作動して、ポートg,i,p,uを介して第2クラッチ用油圧サーボC−2に油圧を供給すると共に、他方のポートk,tを介して第3クラッチ用油圧サーボC−3に油圧を供給し、他のリニアソレノイドバルブをオフとする。これにより、前進7速が達成される。なお、第1の切換えバルブ22を上半位置とした場合、1速、2速、3速、4速、1速エンジンブレーキが可能である。
車輌が後進走行中になる場合、第1の制御用ソレノイドバルブ23を非作動として、第1の切換えバルブ22を上半位置に保持する。この状態では、同様に出力状態にある第2のソレノイドバルブ26により第2の切換えバルブ25は右半位置にあり、第2リニアソレノイドバルブSL2を作動して、その出力圧をポートo,vを介して第2ブレーキ用油圧サーボB−2に供給すると共に、第4リニアソレノイドバルブSL4を作動して、ポートg,rを介して第4クラッチ用油圧サーボC−4に油圧を供給し、その他のリニアソレノイドバルブをオフとする。これにより、後進2速が達成される。なお、後進1速も可能であり、また第1の切換えバルブ22を上半位置に保持した状態でも、後進2速が可能である。
車輌がニュートラル状態にある場合、出力状態にある第2のソレノイドバルブ26以外のすべてのリニアソレノイドバルブをオフにする。この際、ソレノイドバルブ23は、作動・非作動のどちらでもよい。
図17は、第2のリニアソレノイドバルブ26が出力しない側で故障した場合、又は第2の切換えバルブ25が非作動側(左半位置)でスティックした場合を示す。車輌が前進走行中にあっては、第1の制御用ソレノイドバルブ23を非作動として、第1の切換えバルブ22を上半位置に保持する。この状態では、第2の制御用ソレノイドバルブ26が非出力なので、第2の切換えバルブ25は左半位置にあり、第2リニアソレノイドバルブSL2を作動して、ポートo,uを介して第2クラッチ用油圧サーボC−2に油圧を供給すると共に、第3リニアソレノイドバルブSL3を作動して、ポートl、tを介して第3クラッチ用油圧サーボC−3に油圧を供給し、その他のリニアソレノイドバルブをオフとする。これにより、前進7速が達成される。なお、7速の外、1速、2速、3速、4速、5速、6速、8速が可能であり、また第1の制御用ソレノイドバルブ23の作動によっても、6速、7速が可能である。
車輌が後進走行状態にあっては、第1の制御用ソレノイドバルブ23を作動して、切換えバルブ22を下半位置に切換える。この状態にあっては、非出力の第2の制御用ソレノイドバルブ26により第2の切換えバルブ25は左半位置に保持され、第3リニアソレノイドバルブSL3を作動して、その出力圧をポートl,m,n,vを介して第2ブレーキ用油圧サーボB−2に供給すると共に、第5リニアソレノイドバルブSL5を作動して、ポートf,rを介して第4クラッチ用油圧サーボC−4に油圧を供給し、その他のリニアソレノイドバルブはオフとする。これにより、後進2速が達成される。なお、後進1速も可能であり、第1の制御用ソレノイドバルブ23の非作動では、後進を得られない。
車輌がニュートラル状態にある場合、すべての正常なリニアソレノイドバルブをオフとする。この際、ソレノイドバルブ23は、非作動・作動のどちらでもよい。
なお、上述実施の形態は、各油圧サーボがそれぞれリニアソレノイドバルブにより直接調圧制御されるが、これに限らず、デューティ制御されるソレノイドバルブからの制御圧により調圧制御される調圧バルブを介して各油圧サーボに油圧を供給する油圧制御装置にも適用可能である。