JP2009059692A - プラズマディスプレイパネル - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、高精細表示でも、高輝度、高信頼性を確保し、さらに環境問題に配慮したPDPを実現することを目的としている。
【解決手段】ガラス基板上に表示電極6と誘電体層8と保護層9とが形成された前面板2と、基板上に電極と隔壁と蛍光体層とが形成された背面板とを対向配置するとともに周囲を封着して放電空間を形成したPDPであって、前面板2の誘電体層8が、Bi2O3を含有するとともに少なくともCuOとCoOとを含有し、CuOとCoOのモル%で表現される含有量の合計が0.03%〜0.3%である。
【選択図】図2
【解決手段】ガラス基板上に表示電極6と誘電体層8と保護層9とが形成された前面板2と、基板上に電極と隔壁と蛍光体層とが形成された背面板とを対向配置するとともに周囲を封着して放電空間を形成したPDPであって、前面板2の誘電体層8が、Bi2O3を含有するとともに少なくともCuOとCoOとを含有し、CuOとCoOのモル%で表現される含有量の合計が0.03%〜0.3%である。
【選択図】図2
Description
本発明は、表示デバイスなどに用いるプラズマディスプレイパネルに関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、100インチクラスのテレビなどが製品化されている。近年、PDPは従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上のハイディフィニションテレビへの適用が進んでいるとともに、環境問題に配慮して鉛成分を含まないPDPも製品化されている。
PDPは、基本的には、前面板と背面板とで構成されている。前面板は、フロート法による硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極とバス電極とで構成される表示電極と、この表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、この誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。一方、背面板は、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極と、アドレス電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
前面板と背面板とはその電極形成面側を対向させて気密封着され、隔壁によって仕切られた放電空間にNe−Xeの放電ガスが55kPa〜80kPaの圧力で封入されている。PDPは、表示電極に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせてカラー画像表示を実現している。
表示電極のバス電極には導電性を確保するための銀電極が用いられ、誘電体層としては酸化鉛を主成分とする低融点ガラスが用いられているが、近年の環境問題への配慮から誘電体層として鉛成分を含まない例が開示されている(例えば、特許文献1、2、3、4など参照)。
特開2003−128430号公報
特開2002−053342号公報
特開2001−045877号公報
特開平9−050769号公報
近年、PDPは従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上のハイディフィニションテレビへの適用が進んでいる。
このようなハイビジョン化によって、走査線数が増加して表示電極の数が増加し、さらに表示電極間隔が小さくなる。そのため、表示電極を構成する銀電極から誘電体層やガラス基板への銀イオンの拡散が多くなる。銀イオンが誘電体層やガラス基板に拡散すると、誘電体層中のアルカリ金属イオンやガラス基板中に含まれる2価の錫イオンによって還元作用を受け、銀のコロイドを形成する。その結果、誘電体層やガラス基板が、黄色や褐色により強く着色するとともに、酸化銀が還元作用を受けて酸素を発生して誘電体層中に気泡を発生させる。
したがって、走査線の数が増加することによって、ガラス基板の黄変や誘電体層中の気泡発生がより顕著になり、画像品質を著しく損なうとともに誘電体層の絶縁不良を発生させる。
本発明は、このような上記の課題を解決して、高精細表示でも、高輝度、高信頼性を確保し、さらに環境問題に配慮したPDPを実現することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明のPDPは、ガラス基板上に表示電極と誘電体層と保護層とが形成された前面板と、基板上に電極と隔壁と蛍光体層とが形成された背面板とを対向配置するとともに周囲を封着して放電空間を形成したPDPであって、誘電体層が、Bi2O3を含有するとともに少なくともCuOとCoOとを含有し、CuOとCoOのモル%で表現される含有量の合計が0.03%〜0.3%である。
このような構成によれば、黄変を発生させずに、直線透過率を維持した環境問題に配慮した高輝度、高信頼性を確保するPDPを実現することができる。
さらに、誘電体層が、2種類以上のR2O(RはLi、Na、Kから選ばれる1種類)を含有することが望ましい。Bi系の材料の含有量を低減させつつ、ガラスの軟化点を下げて製造プロセスが容易でガラス基板に反りの発生のないPDPを実現することができる。
さらに、2種類以上のR2O(RはLi、Na、Kから選ばれる1種類)のモル%で表現される含有量の合計が、1%〜9%であることが望ましい。このような構成によれば、黄変を抑制して誘電体層の誘電率の変化を抑制した画像表示性能に優れたPDPを実現することができる。
さらに、2種類以上のR2O(RはLi、Na、Kから選ばれる1種類)のうち1種類はK2Oであることが望ましい。このような構成によれば、誘電体層を形成した前面ガラス基板が反ることを抑制して高信頼性のPDPを実現することができる。
さらに、誘電体層のK2Oのモル%で表現される含有量が、誘電体層のLi2OとNa2Oのモル%で表現される含有量の合計よりも多く含むことが望ましい。このような構成によれば、誘電体層を形成する際に前面ガラス基板の熱膨張係数の変化を確実に抑制して、前面ガラス基板が大きく反ることを抑制することができる。
さらに、Bi2O3のモル%で表現される含有量が1%〜5%であることが望ましい。このような構成によれば、黄変を抑制して鉛成分を含まない環境に優しいPDPを実現することができる。
さらに、誘電体層が、CaOとBaOとMoO3を含有することが望ましい。このような構成によれば、これらの材料によってR2Oによる還元作用を抑制させ、誘電体層の着色や気泡の発生を抑制した高信頼性で画像表示性能に優れたPDPを実現することができる。
さらに、誘電体層のMoO3のモル%で表現される含有量が0.1%〜2%であることが望ましい。このような構成によれば、誘電体層への気泡の発生と着色を抑制し、誘電体ガラスの結晶化による白濁化を抑制して光透過率の高い画像表示性能に優れたPDPを実現することができる。
本発明は以上のような構成によって、誘電体層の黄変や基板の反りがなく、可視光透過率が高くて環境に優しい表示品質に優れたPDPを実現することができる。
以上のように、本発明によれば、高精細表示においても、高輝度、高信頼性を確保し、さらに環境問題に配慮したPDPを実現することができる。
以下、本発明の実施の形態におけるPDPについて図面を用いて説明する。
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態におけるPDP1の構造を示す斜視図である。PDP1の基本構造は、一般的な交流面放電型PDPと同様である。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置され、その外周部をガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、NeおよびXeなどの放電ガスが55kPa〜80kPaの圧力で封入されている。
図1は本発明の実施の形態におけるPDP1の構造を示す斜視図である。PDP1の基本構造は、一般的な交流面放電型PDPと同様である。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置され、その外周部をガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、NeおよびXeなどの放電ガスが55kPa〜80kPaの圧力で封入されている。
前面板2の前面ガラス基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極6とブラックストライプ(遮光層)7が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面ガラス基板3上には表示電極6と遮光層7とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成され、さらにその表面に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が形成されている。
また、背面板10の背面ガラス基板11上には、前面板2の走査電極4および維持電極5と直交する方向に、複数の帯状のアドレス電極12が互いに平行に配置され、これを下地誘電体層13が被覆している。さらに、アドレス電極12間の下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成されている。隔壁14間の溝にアドレス電極12毎に、紫外線によって赤色、青色および緑色にそれぞれ発光する蛍光体層15が順次塗布して形成されている。走査電極4および維持電極5とアドレス電極12とが交差する位置に放電セルが形成され、表示電極6方向に並んだ赤色、青色、緑色の蛍光体層15を有する放電セルがカラー表示のための画素になる。
図2は、本発明の実施の形態におけるPDP1の誘電体層8の構成を示す前面板2の断面図である。図2は図1と上下反転させて示している。図2に示すように、フロート法などにより製造された前面ガラス基板3に、走査電極4と維持電極5よりなる表示電極6とブラックストライプ7がパターン形成されている。走査電極4と維持電極5はそれぞれインジウム錫酸化物(ITO)や酸化錫(SnO2)などからなる透明電極4a、5aと、透明電極4a、5a上に形成された金属バス電極4b、5bとにより構成されている。金属バス電極4b、5bは透明電極4a、5aの長手方向に導電性を付与する目的として用いられ、銀(Ag)材料を主成分とする導電性材料によって形成されている。
誘電体層8は、前面ガラス基板3上に形成されたこれらの透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bとブラックストライプ7を覆って設けられ、誘電体層8上に保護層9を形成している。
次に、PDP1の製造方法について説明する。まず、前面ガラス基板3上に、走査電極4および維持電極5と遮光層7とを形成する。走査電極4と維持電極5とを構成する透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bは、フォトリソグラフィ法などを用いてパターニングして形成される。透明電極4a、5aは薄膜プロセスなどを用いて形成され、金属バス電極4b、5bは銀(Ag)材料を含むペーストを所望の温度で焼成して固化している。また、遮光層7も同様に、黒色顔料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や黒色顔料をガラス基板の全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、焼成することにより形成される。
次に、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆うように前面ガラス基板3上に誘電体ペーストをダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト層(誘電体材料層)を形成する。誘電体ペーストを塗布した後、所定の時間放置することによって塗布された誘電体ペースト表面がレベリングされて平坦な表面になる。その後、誘電体ペースト層を焼成固化することにより、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆う誘電体層8が形成される。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料、バインダおよび溶剤を含む塗料である。
次に、誘電体層8上に酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層9を真空蒸着法により形成する。以上の工程により、前面ガラス基板3上に所定の構成物(走査電極4、維持電極5、遮光層7、誘電体層8、保護層9)が形成されて前面板2が完成する。
一方、背面板10は次のようにして形成される。まず、背面ガラス基板11上に、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、金属膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法などによりアドレス電極12用の構成物となる材料層を形成し、それを所望の温度で焼成することによりアドレス電極12を形成する。次に、アドレス電極12が形成された背面ガラス基板11上にダイコート法などによりアドレス電極12を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより下地誘電体層13を形成する。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料とバインダおよび溶剤を含んだ塗料である。
次に、下地誘電体層13上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布して所定の形状にパターニングすることにより、隔壁材料層を形成した後、焼成することにより隔壁14を形成する。ここで、下地誘電体層13上に塗布した隔壁用ペーストをパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法を用いることができる。次に、隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上および隔壁14の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストを塗布し、焼成することにより蛍光体層15が形成される。以上の工程により、背面ガラス基板11上に所定の構成部材を有する背面板10が完成する。
このようにして所定の構成部材を備えた前面板2と背面板10とを走査電極4とアドレス電極12とが直交するように対向配置して、その周囲をガラスフリットで封着し、放電空間16にNe、Xeなどを含む放電ガスを封入することによりPDP1が完成する。
次に、前面板2の誘電体層8について詳細に説明する。前述したように、誘電体層8は、高い耐電圧を要求されるが、一方で高い光透過率を有することを要求される。この特性は誘電体層8に含まれるガラス成分の組成に大きく左右される。
従来、このような誘電体層8を形成する方法として、ガラス粉体成分と樹脂を含む溶剤、可塑剤、分散剤などからなるバインダ成分で構成されたペーストをスクリーン印刷法やダイコート法などを用いて、表示電極6を形成した前面ガラス基板3上に塗布し、乾燥後450℃から600℃程度で焼成する方法や、このようなペーストをフィルム上に塗布、乾燥して、表示電極6を形成した前面ガラス基板3に転写し、450℃から600℃程度で焼成する方法が知られている。
これまでは、450℃から600℃程度での焼成を可能にするために、誘電体層8に含まれるガラス成分には、モル%で表現される20%以上の酸化鉛が含まれていた。しかしながら環境への配慮のために、近年はガラス中に酸化鉛を含有させずに、モル%で表現される5%〜40%程度のBi2O3を含有させている例が開示されている。
これに対し、本発明の実施の形態におけるPDP1では、誘電体層8が、Bi2O3を含有するとともに少なくともCuOとCoOとを含有し、CuOとCoOのモル%で表現される含有量の合計が0.03%〜0.3%である。
また、上記ガラス材料はCaOのモル%で表現される含有量が上記誘電体層8のガラス材料のBaOのモル%で表現される含有量よりも多く含まれることを特徴とする。さらに上記ガラス材料はK2Oと1種類以上のR2O(RはLi、Naから選ばれる少なくとも1種類)を含むことを特徴とする。さらに上記ガラス材料に含まれるK2Oのモル%で表現される含有量が上記のガラス材料のLi2OとNa2Oのモル%で表現される含有量の合計よりも多く含むことを特徴とする。さらに上記ガラス材料に含まれるMoO3のモル%で表現される含有量が2%以下であることを特徴とする。さらに上記ガラス材料に含まれるBi2O3のモル%で表現される含有量が5%以下であることを特徴とする。
これらの組成成分からなる誘電体材料を、湿式ジェットミルやボールミルで平均粒径が0.5μm〜3.0μmとなるように粉砕して誘電体材料粉末を作製する。次にこの誘電体材料粉末50重量%〜65重量%と、バインダ成分35重量%〜50重量%とを三本ロールでよく混練してダイコート用あるいは印刷用の誘電体層用ペーストを作製する。
バインダ成分はエチルセルロースあるいはアクリル樹脂1重量%〜20重量%を含むターピネオールあるいはブチルカルビトールアセテートである。また、ペースト中には、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルを添加し、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、アルキルアリル基のリン酸エステルなどを添加して印刷性を向上させてもよい。
次に、この誘電体層用ペーストを用い、表示電極6を覆うように前面ガラス基板3にダイコート法あるいはスクリーン印刷法で印刷して乾燥させ、その後、誘電体材料の軟化点より少し高い温度の575℃〜590℃で焼成する。
なお、誘電体層8の膜厚が小さいほどPDP1の輝度の向上と放電電圧を低減するという効果は顕著になるので、絶縁耐圧が低下しない範囲内であればできるだけ膜厚を小さく設定するのが望ましい。このような条件と可視光透過率の観点から、本発明の実施の形態では、誘電体層8の膜厚を41μm以下に設定している。
本発明の実施の形態におけるPDP1では、誘電体層8を上述の構成とすることで、高精細表示でも高輝度、高信頼性を確保し、さらに環境に配慮したPDP1を実現することができる。
次に、本発明の実施の形態におけるPDP1の誘電体層8の構成材料について詳細に述べる。
まず、Bi2O3の含有量とR2Oの添加について述べる。本発明の実施の形態では、誘電体ガラスにおいて鉛成分の代替材料としてBi2O3を用いている。誘電体ガラス中のBi2O3の含有量を増加させると、誘電体ガラスの軟化点を下げることができて製造プロセスに様々な利点がある。しかしながら、Bi系の材料が高価であることから、Bi2O3の含有量を増加させることは、使用する原材料のコスト増加を招くことになる。
Bi系の材料の含有量を減少させると、誘電体ガラスの軟化点が上昇するために焼成温度が上昇する。焼成温度が上昇すると表示電極6を構成する銀電極から拡散する銀イオンの拡散量がより増加する。そのために、コロイド化する銀の量がより多くなり誘電体層8の着色や気泡の発生という現象が起こり、PDP1の画像品質の劣化や誘電体層8の絶縁不良の発生に至るという課題が発生する。
本発明はBi系の材料の代替材料として、Li、Na、K、RbおよびCsなどから選ばれるアルカリ金属に着目した。アルカリ金属の酸化物を含有させると、ガラスの軟化点を下げることができるため、Bi系の材料の含有量を低減させつつ、ガラスの軟化点を下げて製造プロセスに様々な利点を与えることが可能である。
しかしながら、アルカリ金属の酸化物を過剰に含有した場合、表示電極6を構成する銀電極から拡散する銀イオンの還元作用がより促進されて、銀のコロイドがより多く形成され、誘電体層8の着色や気泡の発生という現象が起こる。その結果、PDP1の画像品質の劣化や誘電体層8の絶縁不良の発生に至るという弊害が発生する。
本発明の実施の形態においては、R2Oのモル%で表現される含有量を1%〜9%としている。含有量を1%以上とすることで黄変を抑制することができるが、含有量が9%を超えると誘電体層8の誘電率が大幅に変化して画像表示時に不具合を生じる。またBi2O3のモル%で表現される含有量も1〜5%まで低減することが可能となった。
そしてさらに、本発明の実施の形態においては、R2O(RはLi、Na、Kから選ばれる1種類)のRが2種類以上含有するようにしている。これは以下の理由に基づいている。一般的なPDP1の前面ガラス基板3にはK2OとNa2Oが多く含まれている。そして誘電体層8を550℃以上といった高温で焼成すると、誘電体ガラスに含まれるR2Oと前面ガラス基板3に含まれるNa2Oとでアルカリ金属のイオン(Li+、Na+、K+)の交換作用が起こる。
ところが、Li+とNa+とK+ではそれぞれ前面ガラス基板3の熱膨張係数への寄与が異なる。そのため、誘電体層8の焼成においてイオン交換が起こった場合、前面ガラス基板3の誘電体層8近傍の熱収縮量と、前面ガラス基板3の誘電体層8近傍以外の部分の熱収縮量とに差が生じ、その結果、誘電体層8を形成した前面ガラス基板3に大きく反りを発生させるといった課題がある。
ところが本発明の実施の形態のように、R2Oが2種類以上含まれると上記の交換作用が起こったとしても、熱収縮量に差が生じにくく、前面ガラス基板3の反りを低減することができる。この結果、誘電体ガラスに含まれるBi2O3のモル%で表現した量を5%以下に低減させることが可能となり、かつ前面ガラス基板3の反りも低減させることが可能となった。
次に、R2Oの添加種と添加量の詳細について説明する。
R2Oとして添加する酸化物としては、K2Oは必ず含み、かつLi2OあるいはNa2Oのいずれかまたはその両者を含むことが望ましい。これによって、イオン交換が生じたとしても前面ガラス基板3の熱膨張係数が大きく変化することはなく、その結果、誘電体層8を形成した前面ガラス基板3が大きく反ることを防ぐことができる。
特に、誘電体ガラスに含まれるK2Oのモル%で表現される含有量が、誘電体ガラスに含まれるLi2OとNa2Oのモル%で表現される含有量の合計よりも多くすることで、前面ガラス基板3の熱膨張係数の変化を確実に抑制して、前面ガラス基板3が大きく反ることを抑制することができる。
このように、R2Oは誘電体ガラスの軟化点を下げることが可能である。一方で、R2Oで表されるアルカリ金属の酸化物は、表示電極6を構成する銀電極から拡散される銀イオンの還元作用を促進する。その結果、銀のコロイドがより多く形成され、誘電体層8の着色や気泡の発生という現象が起こり、PDP1の画像品質の劣化や誘電体層8の絶縁不良の発生に至るという課題がある。
このようなR2Oによる還元作用を抑制させるために、本発明の実施の形態では誘電体ガラスにCuOとCaOを添加している。さらに、銀のコロイドの形成を抑制させるために、MoO3を添加している。以下にそれぞれの作用効果について述べる。
まず、CuOの添加について述べる。CuOは誘電体層8を焼成する際に、CuOからCu2Oへと還元作用を起こす。その結果、銀イオン(Ag+)の還元を抑制して黄変の発生を抑制することが可能となる。
しかしながら、CuOは誘電体ガラスを青色に発色させる作用がある一方で、Cu2Oは誘電体ガラスを緑色に発色させる作用があることが判明したため、以下に示すように発色作用の発生原因を解明することによりその改善方法を見出したものである。
PDP1を製造する工程では、アセンブリ工程も含めて焼成工程を複数回行う必要がある。CuOからCu2Oへの還元作用は、それらの焼成時における酸素濃度などの周囲の雰囲気条件によって影響を受けやすく、かつその還元度合いの制御が困難であるという性質を併せ持っている。その結果、PDP1を製造する際には、CuOの還元作用がより多く進行して青色発色が強い部分と、還元作用の進行が少なく緑色発色が強い部分とがPDP1面内に混在して着色度合いのバラツキが生じ、PDP1の画像表示時の輝度、色度の不均一が発生して画像表示品質を損なう。
このようなCuOの還元作用による着色バラツキを抑制するために、本発明の実施の形態では誘電体ガラスにCoOを加えている。CoOはCuOと同様に誘電体ガラスを青色に発色させる効果があるが、CoOを加えることで誘電体ガラスはより安定して青色発色させることが可能となり、PDP1の画像品質を高めることが可能となる。
また、その添加量については、CuOとCoOのモル%で表記した含有量の合計が0.3%を超えると、誘電体ガラスの青色発色が強すぎる結果となり、逆にPDP1の画像品質を劣化させてしまうこととなる。さらにCoOのみを添加した場合は、上記に述べた銀イオンの還元作用を抑制できないだけでなく、誘電体層8の可視光透過率が低下するという弊害も発生する。これに対して、CuOとCoOのモル%で表記した含有量の合計が0.3%以下であれば上記の青色発色は最適な範囲となり、PDP1の画像品質も良好となる。
また、その添加量についても最適値がある。CuOとCoOのモル%で表記した含有量の合計が0.03%〜0.3%の範囲であることが望ましい。0.03%を含有するだけで、上記の効果は現出するが、含有量の合計が0.3%を超えると、誘電体ガラスの青色発色が強すぎる結果となり、逆にPDP1の画像品質を劣化させてしまうこととなる。さらにCoOのみを添加した場合は、上記に述べた銀イオンの還元作用を抑制できないだけでなく、誘電体層8の直線透過率が低下するという弊害も発生する。これに対して、CuOとCoOのモル%で表記した含有量の合計が0.3%以下であれば上記の青色発色は最適な範囲となり、PDP1の画像品質も良好となる。
次に、CaOの添加について述べる。上述したようにCaOは銀イオン(Ag+)の還元を抑制して黄変の発生を抑制することが可能である。CaOの効果は酸化剤としての役割である。しかしながらCaOを含有する誘電体ガラスは可視光透過率、特にディスプレイの精細さに寄与する直線透過率が低くなるといった課題がある。そこで本発明の実施の形態では直線透過率を高める効果があるBaOをCaOの代わりに一部置換するという形で加えている。
しかしながら、BaOは銀イオン(Ag+)の還元を促進して黄変の発生を生じさせる弊害も併せ持つ。したがってBaOのモル%で表記した含有量をCaOのモル%で表記した含有量よりも少なくすることが重要となる。これによって、黄変を発生させずに、直線透過率を維持することができる。
次に、MoO3の添加について述べる。上述したように本発明の実施の形態では、銀コロイドの発生を抑制するためにMoO3を添加している。Bi2O3を含む誘電体ガラスにMoO3を添加することによって、Ag2MoO4、Ag2Mo2O7、Ag2Mo4O13、といった安定な化合物が580℃以下の低温で生成しやすいことが知られている。
本発明の実施の形態では、誘電体層8の焼成温度が550℃〜590℃であることから、焼成中に誘電体層8中に拡散した銀イオン(Ag+)は誘電体層8中のMoO3と反応し、安定な化合物を生成して安定化する。すなわち、銀イオン(Ag+)が還元されることなく安定化されるために、凝集した銀コロイドを生成することがない。したがって、銀コロイドの生成に伴う酸素の発生も少なくなるため、誘電体層8中への気泡の発生も少なくなる。なおMoO3の代わりにWO3やCeO2やMnO2といった組成を加えても同様の効果を期待することができる。
また、MoO3はモル%で表記した含有量が0.1%以上、2%以下であることが望ましい。0.1%以上含有することで、気泡数および黄変度合いが良化するが、2%以上となると誘電体ガラスの焼成時に誘電体ガラスが結晶化を起こしやすくなり、その結果、誘電体ガラスが白濁化して透明性を保てなくなり、可視光透過率が低下してPDP1の画像品質を劣化させる。2%以下であれば、結晶化は起こりにくく、PDP1の画像品質を劣化させることはない。
以上のように、本発明の実施の形態におけるPDP1の誘電体層8を、上記の材料組成の構成とすることで、銀(Ag)材料よりなる金属バス電極4b、5b上に誘電体層8を形成しても、黄変現象と気泡発生を抑制し、なおかつ高い光透過率と均一な誘電体ガラスの着色を可能として、さらに前面ガラス基板3の反りの抑制を実現している。その結果、気泡や黄変の発生が極めて少なく透過率の高いPDP1を実現することが可能となる。
本発明の実施の形態におけるPDP1として、放電セルとして42インチクラスのハイビジョンテレビに適合するように、隔壁14の高さを0.15mm、隔壁14の間隔(セルピッチ)を0.15mm、表示電極6の電極間距離を0.06mm、放電ガスのXeの含有量が15体積%のNe−Xe系の混合ガスを封入圧60kPaに封入したPDP1を作製した。このPDP1において誘電体層8の材料組成を変えた実施例について説明する。
(実施例1)
表1は、誘電体層8を構成する誘電体ガラスの材料組成を示す。これらの誘電体ガラスにより形成される誘電体層8のPDP1を作製した。また、表1に示した材料組成の項目である「その他、材料組成」とは、酸化亜鉛(ZnO)、酸化硼素(B2O3)、酸化硅素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)などの鉛成分を含まない材料組成である。これら材料組成の含有量は特に限定はなく、従来技術程度の材料組成の含有量範囲である。
表1は、誘電体層8を構成する誘電体ガラスの材料組成を示す。これらの誘電体ガラスにより形成される誘電体層8のPDP1を作製した。また、表1に示した材料組成の項目である「その他、材料組成」とは、酸化亜鉛(ZnO)、酸化硼素(B2O3)、酸化硅素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)などの鉛成分を含まない材料組成である。これら材料組成の含有量は特に限定はなく、従来技術程度の材料組成の含有量範囲である。
表1に示される誘電体ガラスから構成されるPDPの特性を評価するために、以下の項目について評価を行った。その評価結果を表2に示す。
まず前面板2の透過率をヘイズメーターを用いて測定した。測定については、前面ガラス基板3の透過率と走査電極4など他の構成要素の影響を差し引いて、誘電体層8の実際の透過率とし、その直線成分である直線透過率を用いて比較した。なお、PDP1における誘電体層8の直線透過率は70%以上あることが望ましく、70%以下となればPDP1の輝度が低下してしまうため好ましくない。
また、銀(Ag)による黄変の度合いを色彩計(コニカミノルタ株式会社製;CR−300)で測定し、黄色の度合いを示すb*を測定した。またb*値はPDP1の面内9点を測定して、平均値と最大値によって比較した。その結果を同じく表2に示す。なお、黄変がPDP1の表示性能に影響を与えるb*値の目安はb*=3であり、この値が大きければ大きいほど黄変が目立ちPDP1として色温度が低下し好ましくない。
次に、誘電体の着色度を評価するため、前面板2の透過率を、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製;CM−3600)を用いて測定した。測定については、前面ガラス基板3の透過率と走査電極4など他の構成要素の影響を差し引いて、誘電体層8の実際の透過率とし、透過率の波長依存性として550nmの透過率から660nmの透過率を引いた値を比較対象とした。なお、PDP1における上記透過率の波長依存性は2%以下であることが望ましく、2%以上となればパネル発光の白色度が低下してしまうため好ましくない。
さらに、誘電体ガラスによる基板の反りを評価するため、偏光歪み計を用いて基板の残留応力を測定した。偏光歪み計ではガラス成分による歪みが原因で前面ガラス基板3に存在している残留応力を測定することができる。こうした残留応力の測定方法は特開2004−067416号公報など広く知られている。測定した残留応力は前面ガラス基板3に圧縮応力が存在していれば、プラス(+)の値、前面ガラス基板3に引張応力が存在していれば、マイナス(−)の値として表2に示した。なお、PDP1における残留応力はプラス(+)であれば、誘電体層8には逆に引張応力が発生していることとなり、誘電体層8の強度が低下することになる。よってPDP1における残留応力はマイナス(−)であることが望ましい。
表2における結果について説明する。比較例1、7および比較例8は、それぞれ表1においてBaOが含まれていない、MoO3の含有量が多すぎる、あるいはCuOが含まれていない、といった原因のために直線透過率が70%に満たない。
比較例2は、表1においてBaOが多く含まれすぎているため、直線透過率は82.7%と高いものの、b*値が5.6と高くなってしまい好ましくない。
比較例3は、表1においてCoOが含まれていないため、b*値の平均値は2.6であり、3.0以下となるが、最大値が3.4とバラツキが大きくなってしまい好ましくない。
比較例4は、表1においてCoOとCuOの合計が0.5%と多いため、透過率波長依存性の値が3.1%と大きくなり好ましくない。
比較例5、6は、表1においてK2Oを含まない、あるいはK2OがNa2OとLi2Oの合計よりも少ないため、残留応力の値が望ましくない。
比較例9は、表1においてCoOとCuOを含まないため、b*値の値が大きくなって不適である。
これらに対して、本発明の実施の形態におけるPDP1の誘電体層8を構成する実施例1、2では、誘電体ガラスの材料組成が適切であり、表2の評価結果もすべて好ましい。
なお、発明者等は別途MoO3の含有量の依存性について測定を行った。これによるとMoO3を含有していないPDP1の面内9点のb*値の平均値が4.0以上だったのに対して、MoO3を0.1%含有し、他の組成が同様であるPDP1のb*値は2.0まで良化することを確認した。また、MoO3の含有量が0.7%までb*値および気泡数ともに良好な結果を示したが、MoO3の含有量が2%より大きくなると、PDP1の誘電体層8が白濁し、透過率が著しく低下した。
以上のように、本発明の実施の形態におけるPDP1によれば、誘電体層8として可視光直線透過率が高くb*値が最適で、かつ、基板の反りを抑制できる鉛(Pb)成分を含まない環境に優しいPDP1を実現することができる。
(実施例2)
次に、Bi2O3の含有量とR2Oの含有量について、特に黄変について詳細に検討した実施例について述べる。
次に、Bi2O3の含有量とR2Oの含有量について、特に黄変について詳細に検討した実施例について述べる。
表3は、実施例2における誘電体層8を構成する誘電体ガラスの材料組成を示す。また、表3には、実施例1と同様に、色彩計(コニカミノルタ株式会社製;CR−300)を用いてb*値を測定した結果も示す。なお、黄変がPDP1の表示性能に影響を与えるb*値の目安は3であり、この値が大きければ大きいほど黄変が目立ちPDP1として色温度が低下し好ましくない。
表3において、比較例1はBi2O3を含まないが、R2Oを多く含んでいるためb*値が5.1と大きく、比較例2はBi2O3を含むが、R2Oを含まないため、b*値が7.0と大きくなっている。
これらに対して、実施例1、2、3では、Bi2O3とR2Oを本発明の実施の形態とすることにより評価結果もすべて好ましい結果となっている。なお、R2Oの含有量について下限値を検討したところ、1%以上含有することによって、誘電体ガラスの軟化点を下げつつ、基板の反りを抑制することができることを確認している。
以上のように、本発明の実施の形態におけるPDPによれば、b*値が最適で、鉛(Pb)成分を含まない環境に優しいPDPを実現することができる。
以上述べてきたように、本発明のPDPは、誘電体層の黄変がなく、さらに環境に優しく表示品質に優れたPDPを実現して大画面の表示デバイスなどに有用である。
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a,5a 透明電極
4b,5b 金属バス電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ(遮光層)
8 誘電体層
9 保護層
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a,5a 透明電極
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9 保護層
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11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
Claims (8)
- ガラス基板上に表示電極と誘電体層と保護層とが形成された前面板と、基板上に電極と隔壁と蛍光体層とが形成された背面板とを対向配置するとともに周囲を封着して放電空間を形成したプラズマディスプレイパネルであって、前記誘電体層が、Bi2O3を含有するとともに少なくともCuOとCoOとを含有し、CuOとCoOのモル%で表現される含有量の合計が0.03%〜0.3%であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
- 前記誘電体層が、2種類以上のR2O(RはLi、Na、Kから選ばれる1種類)を含有することを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
- 2種類以上のR2O(RはLi、Na、Kから選ばれる1種類)のモル%で表現される含有量の合計が、1%〜9%であることを特徴とする請求項2記載のプラズマディスプレイパネル。
- 2種類以上のR2O(RはLi、Na、Kから選ばれる1種類)のうち1種類はK2Oであることを特徴とする請求項2記載のプラズマディスプレイパネル。
- K2Oのモル%で表現される含有量がLi2OとNa2Oのモル%で表現される含有量の合計よりも多いことを特徴とする請求項4記載のプラズマディスプレイパネル。
- Bi2O3のモル%で表現される含有量が1%〜5%であることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記誘電体層が、CaOとBaOとMoO3を含有することを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
- 誘電体層のMoO3のモル%で表現される含有量が0.1%〜2%であることを特徴とする請求項7記載のプラズマディスプレイパネル。
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