JP2009046697A - 成形性、塗装焼付け硬化性および耐食性に優れた成形加工用アルミニウム合金板 - Google Patents
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Abstract
【課題】 成形性と耐食性の両立が図られ、ほかの要求特性の劣化なしで材料の性能バランスを最適に構築する。
【解決手段】 Mg0.2〜1.5%、Si0.3〜2.0%を含有し、かつTiとVの1種又は2種を合計で0.05〜0.5%を含有し、さらにMn0.03〜0.6%、Cr0.01〜0.4%、Zr0.01〜0.4%、Fe0.03〜1.5%、Zn0.03〜2.5%、Cu0.01〜1.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、圧延面とほぼ平行にTiおよび/またはVの高濃度層と低濃度層を交互に全板厚で各10層以上づつ存在し、しかも、円換算で直径2μm以上の大きさのTiおよび/またはV系金属間化合物の密度を1000個/mm2以下である。
【選択図】なし
【解決手段】 Mg0.2〜1.5%、Si0.3〜2.0%を含有し、かつTiとVの1種又は2種を合計で0.05〜0.5%を含有し、さらにMn0.03〜0.6%、Cr0.01〜0.4%、Zr0.01〜0.4%、Fe0.03〜1.5%、Zn0.03〜2.5%、Cu0.01〜1.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、圧延面とほぼ平行にTiおよび/またはVの高濃度層と低濃度層を交互に全板厚で各10層以上づつ存在し、しかも、円換算で直径2μm以上の大きさのTiおよび/またはV系金属間化合物の密度を1000個/mm2以下である。
【選択図】なし
Description
この発明は、成形加工用アルミニウム合金板に関し、特に用途に応じて成形加工や塗装焼付を施して使用されるAl−Mg−Si(−Cu)系の成形加工用アルミニウム合金板に関するものである。本願発明によって得られる成形加工用アルミニウム合金板は、自動車、船舶、航空機等の各種部材・部品、あるいは建築材料、構造材料、そのほか各種機械器具、家電製品やその部品等の素材として用いられ、特に自動車ボディシート、ボディパネルに好適に用いられる。
従来自動車のボディシートとしては、主として冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では車体軽量化等の観点から、アルミニウム合金圧延板を使用することが多くなっている。ところで自動車のボディシートはプレス加工を施して使用するところから、成形加工性が優れていること、また成形加工時におけるリューダースマークやリジング(ローピング)マークが発生しないことが要求される。
また高強度を有することも必須であって、通常は塗装焼付を施して使用されるため、塗装焼付後に高強度が得られる特性(焼付硬化性、すなわちBH性)が要求される。また素材の成形性(プレス成形性、形状凍結性、ヘム加工性など)を良好に保つため、素材を製造してから成形するまでの材料の室温(常温)経時変化(「室温時効」「常温時効」「自然時効」とも呼ぶ)を抑制することも必要である。また、素材が耐食性に優れることも必須である。
従来このような自動車用ボディシート向けのアルミニウム合金としては、Al−Mg系合金のほか、時効性を有するAl−Mg−Si系合金もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金が主として使用されている。これらの時効性Al−Mg−Si系合金、時効性Al−Mg−Si−Cu系合金は、塗装焼付前の成形加工時においては比較的強度が低くて成形性が優れている一方、塗装焼付時の加熱によって時効されて塗装焼付後の強度が高くなる利点を有するほか、リューダースマークが発生しにくい等の長所を有する。
なお、アルミニウム合金のプレス成形性は鉄鋼材料に比べて一般的に劣ると言われている。その対策の一つとしてAl−Mg−Si系合金にCuを多量に添加してプレス成形性を高める手法が取られている。しかし、Cu添加によってAl−Mg−Si系合金の耐食性、特に耐粒界腐食性が劣化するという問題があった。これがAl−Mg−Si−Cu系合金の使用拡大の障害になっている。
また、Cu添加有無に関わらず、腐食環境下において糸錆と粒界腐食のほかにAl−Mg−Si系合金には共通する耐食性の問題があった。それはアルミニウム合金板を貫通するおそれのある孔食の腐食形態である。
また、Cu添加有無に関わらず、腐食環境下において糸錆と粒界腐食のほかにAl−Mg−Si系合金には共通する耐食性の問題があった。それはアルミニウム合金板を貫通するおそれのある孔食の腐食形態である。
特許文献1、2にはTiの防食効果が述べられているが、特許文献1はAl−Mn系押出配管材、特許文献2はブレージングシートに用いるAl−Si系ろう材におけるもので、合金成分、要求特性なども異なる自動車ボディシート材などへの適用は全く示されていない。
特開2004−124166号公報
特開平2−34297号公報
前述のような自動車用ボディシート向けのAl−Mg−Si−Cu系、Al−Mg−Si系合金板について、最近の自動車用ボディシートに要求される特性を充分に満足させることは困難であった。
すなわち、最近では、自動車パネル形状の高い意匠性が求められ、それに伴って材料に対してさらなる高い成形性が要求され、特に張出性と絞り性の高いものが要求される。勿論、張出性、絞り性のような成形性指標だけではなく、ヘム加工性、耐食性、強度などの劣化も防いだ上での張出性、絞り性の向上でなければならない。従来のAl−Mg−Si系、Al−Mg−Si−Cu系合金板では未だ不充分であった。
ここで、従来の一般的なAl−Mg−Si系合金板では、Cu元素が含まないことで、耐糸錆、耐粒界食性が優れるが、成形性、とくに張出性と絞り性が劣る。またAl−Mg−Si−Cu系合金板では、良好な張出性と絞り性を有するが、Cu元素が含まないAl−Mg−Si系合金板に比べて耐糸錆、耐粒界食性が著しく低下した。すなわち、成形性と耐食性の両立が困難である問題がある。たま、両タイプの合金系においても使用環境によっては共通する孔食の問題があった。
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、成形性と耐食性の両立が図られ、ほかの要求特性の劣化なしで材料の性能バランスを最適に構築できる成形性と耐食性に優れたアルミニウム合金板を提供することを目的とするものである。
本発明は、請求項に記載の通り、Mg0.2〜1.5%、Si0.3〜2.0%を含有し、かつTiとVの1種又は2種を合計で0.05〜0.5%を含有し、さらにMn0.03〜0.6%、Cr0.01〜0.4%、Zr0.01〜0.4%、Fe0.03〜1.5%、Zn0.03〜2.5%、Cu0.01〜1.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金組成を有し、圧延面とほぼ平行にTiおよび/またはVの高濃度層と低濃度層が交互に全板厚で各10層以上づつ存在し、しかも、円換算で直径2μm以上の大きさのTiおよび/またはV系金属間化合物の密度が1000個/mm2以下であることを特徴とする成形性、塗装焼付け硬化性および耐食性に優れた成形加工用アルミニウム合金板である。
本発明のアルミニウム合金板は、Tiおよび/またはVの高濃度層と低濃度層を交互に全板厚で各10層以上づつ有し、しかも、円換算で直径2μm以上の大きさのTiおよび/またはV系金属間化合物の密度が1000個/mm2以下であるため耐食性が優れ、成形性、塗装焼付け硬化性にも優れる為、自動車、船舶、航空機等の各種部材・部品、あるいは建築材料、構造材料、そのほか各種機械器具、家電製品やその部品等に好適に使用できる。
まず、合金の成分組成の限定理由について説明する。
Mg:
Mgはこの発明で対象としている系の合金で基本となる合金元素であって、Siと共同して強度向上に寄与する。Mg量が0.2%未満では塗装焼付時に析出硬化によって強度向上に寄与するβ"相の生成量が少なくなるため、充分な強度向上が得られず、一方1.5%を越えれば、粗大なMg−Si系の金属間化合物が生成され、成形性、特に曲げ加工性が低下するから、Mg量は0.2〜1.5%の範囲内とした。最終板の成形性、特に曲げ加工性をより良好にするためには、Mg量は0.3〜0.9%の範囲内が好ましい。
Mgはこの発明で対象としている系の合金で基本となる合金元素であって、Siと共同して強度向上に寄与する。Mg量が0.2%未満では塗装焼付時に析出硬化によって強度向上に寄与するβ"相の生成量が少なくなるため、充分な強度向上が得られず、一方1.5%を越えれば、粗大なMg−Si系の金属間化合物が生成され、成形性、特に曲げ加工性が低下するから、Mg量は0.2〜1.5%の範囲内とした。最終板の成形性、特に曲げ加工性をより良好にするためには、Mg量は0.3〜0.9%の範囲内が好ましい。
Si:
Siもこの発明の系の合金で基本となる合金元素であって、Mgと共同して強度向上に寄与する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生成され、その金属Si粒子の周囲が加工によって変形されて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるため、再結晶組織の微細化にも寄与する。Si量が0.3%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.0%を越えれば粗大なSi粒子や粗大なMg−Si系の金属間化合物が生じて、成形性、特に曲げ加工性の低下を招く。したがってSi量は0.3〜2.0%の範囲内とした。プレス成形性と曲げ加工性とのより良好なバランスを得るためには、Si量は0.5〜1.4%の範囲内が好ましい。
Siもこの発明の系の合金で基本となる合金元素であって、Mgと共同して強度向上に寄与する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生成され、その金属Si粒子の周囲が加工によって変形されて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるため、再結晶組織の微細化にも寄与する。Si量が0.3%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.0%を越えれば粗大なSi粒子や粗大なMg−Si系の金属間化合物が生じて、成形性、特に曲げ加工性の低下を招く。したがってSi量は0.3〜2.0%の範囲内とした。プレス成形性と曲げ加工性とのより良好なバランスを得るためには、Si量は0.5〜1.4%の範囲内が好ましい。
Ti,V:
Tiは従来から鋳塊組織の微細化に有効な元素であることが知られている。
Tiの含有量が0.005%未満では充分な効果が得られず、一方0.04%を越えればTi添加による鋳塊組織微細化の効果が飽和する。すなわち、鋳塊組織の微細化だけを狙うなら、Tiの含有量が0.005%以上、0.05%未満であれば、充分である。本発明者が鋭意実験、検討を重ねた結果、Ti、Vそれぞれ単独であるいはTiとVを合計で0.05%以上添加すれば、アルミニウム合金板にTiおよび/またはV濃度の高い偏析層とTiおよび/またはV濃度の低い偏析層が明確に形成され、そのTiおよび/またはV濃度の高い偏析層はTi濃度の低い偏析層に比べて腐食されにくいため、粒界腐食のみならず、孔食の進行も食い止める効果がある。その添加量はTi単独であるいは後述のVと合計で0.5%を超えれば、防食効果が飽和するだけではなく、円換算で直径2μm以上大きさのTiおよび/またはV系金属間化合物の密度が1000個/mm2を越えるおそれがあり、これら粗大なTiおよび/またはV系金属間化合物が多いと、成形性、ヘム加工性の低下を招く。
合金特性のバランスを考慮してTiおよび/またはVの含有量は0.05%以上0.25%以下が好ましい。
Tiは従来から鋳塊組織の微細化に有効な元素であることが知られている。
Tiの含有量が0.005%未満では充分な効果が得られず、一方0.04%を越えればTi添加による鋳塊組織微細化の効果が飽和する。すなわち、鋳塊組織の微細化だけを狙うなら、Tiの含有量が0.005%以上、0.05%未満であれば、充分である。本発明者が鋭意実験、検討を重ねた結果、Ti、Vそれぞれ単独であるいはTiとVを合計で0.05%以上添加すれば、アルミニウム合金板にTiおよび/またはV濃度の高い偏析層とTiおよび/またはV濃度の低い偏析層が明確に形成され、そのTiおよび/またはV濃度の高い偏析層はTi濃度の低い偏析層に比べて腐食されにくいため、粒界腐食のみならず、孔食の進行も食い止める効果がある。その添加量はTi単独であるいは後述のVと合計で0.5%を超えれば、防食効果が飽和するだけではなく、円換算で直径2μm以上大きさのTiおよび/またはV系金属間化合物の密度が1000個/mm2を越えるおそれがあり、これら粗大なTiおよび/またはV系金属間化合物が多いと、成形性、ヘム加工性の低下を招く。
合金特性のバランスを考慮してTiおよび/またはVの含有量は0.05%以上0.25%以下が好ましい。
Mn、Cr、Zr:
これらの元素は、強度向上や結晶粒微細化、あるいは時効性(焼付硬化性)の向上に有効であり、いずれか1種または2種以上を添加する。Mnの含有量が0.03%未満、もしくはCr、Zrの含有量がそれぞれ0.01%未満では、上記の効果が充分に得られず、一方Mnの含有量が0.6%を越えるか、あるいはCr、Zr、の含有量がそれぞれ0.4%を越えれば、上記の効果が飽和するばかりでなく、多数の金属間化合物が生成されて成形性、特にヘム曲げ性に悪影響を及ぼすおそれがあり、したがってMnは0.03〜0.6%の範囲内、Cr、Zrはそれぞれ0.01〜0.4%の範囲内とした。
これらの元素は、強度向上や結晶粒微細化、あるいは時効性(焼付硬化性)の向上に有効であり、いずれか1種または2種以上を添加する。Mnの含有量が0.03%未満、もしくはCr、Zrの含有量がそれぞれ0.01%未満では、上記の効果が充分に得られず、一方Mnの含有量が0.6%を越えるか、あるいはCr、Zr、の含有量がそれぞれ0.4%を越えれば、上記の効果が飽和するばかりでなく、多数の金属間化合物が生成されて成形性、特にヘム曲げ性に悪影響を及ぼすおそれがあり、したがってMnは0.03〜0.6%の範囲内、Cr、Zrはそれぞれ0.01〜0.4%の範囲内とした。
Fe:
Feは強度向上と結晶粒微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.03%未満では充分な効果が得られず、一方1.5%を越えれば、成形性、特に曲げ加工性が低下するおそれがあり、したがってFe量は0.03〜1.5%の範囲内とした。
Feは強度向上と結晶粒微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.03%未満では充分な効果が得られず、一方1.5%を越えれば、成形性、特に曲げ加工性が低下するおそれがあり、したがってFe量は0.03〜1.5%の範囲内とした。
Zn:
Znは時効性向上を通じて強度向上に寄与するとともに表面処理性の向上に有効な元素であるが、Znの添加量が0.03%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.5%を越えれば成形性と耐食性が低下するから、Zn量は0.03〜2.5%の範囲内とした。
Znは時効性向上を通じて強度向上に寄与するとともに表面処理性の向上に有効な元素であるが、Znの添加量が0.03%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.5%を越えれば成形性と耐食性が低下するから、Zn量は0.03〜2.5%の範囲内とした。
Cu:
Cuは成形性向上および強度向上のために添加される元素である。この成形性向上および強度向上の目的から0.4%以上添加される。しかし、その量が1.5%を越えれば耐食性(耐粒界腐食性、耐糸錆性)が劣化するから、Cuの含有量は1.5%以下に規制することとした。なお、より耐食性の改善を図りたい場合はCu量1.0%以下が好ましい。さらに耐食性を重視する場合はCu量0.05%以下が好ましい。
Cuは成形性向上および強度向上のために添加される元素である。この成形性向上および強度向上の目的から0.4%以上添加される。しかし、その量が1.5%を越えれば耐食性(耐粒界腐食性、耐糸錆性)が劣化するから、Cuの含有量は1.5%以下に規制することとした。なお、より耐食性の改善を図りたい場合はCu量1.0%以下が好ましい。さらに耐食性を重視する場合はCu量0.05%以下が好ましい。
また、一般のAl合金においては、鋳塊組織の微細化のために前述のTiと同時にBを添加することもあり、BをTiとともに添加することによって、鋳塊組織の微細化と安定化の効果が一層顕著となる。そしてこの発明の場合、Tiとともに500ppm以下のBを添加することは許容される。
更に、鋳塊組織の微細化にはScの添加も効果があるとされており、この発明の場合もScを添加しても良く、Sc0.01〜0.2%の範囲内であれば特に支障はない。
また時効性Al−Mg−Si(−Cu)系合金においては、高温時効促進元素あるいは常温時効抑制元素であるAg、In、CdあるいはSnを微量添加することがあるが、この発明の場合もそれぞれ0.3%以下の微量添加であれば許容される。
次に、この発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法について説明する。
この発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法は特に規制するものではなく、常法に従えば良い。
即ち、前述のような成分組成の合金を常法に従って溶製し、DC鋳造や凝固、冷却速度の大きい連続鋳造等の通常の鋳造法によって鋳造する。
この鋳造時に、鋳塊にTiおよび/またはV濃度の高い偏析部とTiおよび/またはV濃度の低い偏析部が鋳塊組織中に明確に形成される。
この鋳造時に、鋳塊にTiおよび/またはV濃度の高い偏析部とTiおよび/またはV濃度の低い偏析部が鋳塊組織中に明確に形成される。
得られた鋳塊に対しては、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延で所定の板厚とする。
次に鋳塊を所要の板厚まで圧延した後、溶体化処理を行なう。この溶体化処理は、Mg2Si、単体Si等をマトリックスに固溶させ、これにより焼付硬化性を付与して塗装焼付後の強度向上を図るために重要な工程である。またこの工程は、Mg2Si、単体Si粒子等の固溶により第2相粒子の分布密度を低下させて、延性と曲げ性を向上させるためにも寄与し、さらには再結晶により最終的に所要の結晶方位を得て、良好な成形性を得るためにも重要な工程である。
Ti、Vはアルミニウム母相における拡散速度が非常に遅いため、均質化処理、冷却、熱間圧延、溶体化処理などの過程でそれらの偏析が解消されることがなく、溶体化処理後も板組織中に層状で残存し、板厚方向にその濃淡層の存在によって粒界腐食、孔食の進行を抑制する効果がある。
次に、本発明の成形加工用アルミニウム合金板の金属組織について説明する。
本発明者が鋭意、実験、検討を重ねた結果、Ti、Vの偏析層による耐食性の向上効果が顕著にするために、圧延面とほぼ平行にTiおよび/またはVの高濃度層と低濃度層が交互に全板厚で各10層以上づつ存在することを要することが判明した。
また、成形性、ヘム加工性への影響を最小限に抑制するために、2μm以上大きさのTiおよび/またはV系金属間化合物の分布を1000個/mm2以下、好ましくは100個/mm2以下にする。そのためにはTi、Vそれぞれあるいは複合添加時の上限は0.25%以下にすることが好ましい。
以下にこの発明の実施例を比較例とともに記す。なお以下の実施例は、この発明の効果を説明するためのものであり、実施例記載のプロセスおよび条件がこの発明の技術的範囲を制限するものではない。
表1に示す成分組成の合金について、それぞれ常法に従って溶製し、DC鋳造法によりスラブに鋳造した。その後、530℃、5hの均質化処理を行なった。均質化処理後、熱間圧延、冷間圧延条件で1mm厚さの板とした。その後、得られた素材に対して540℃の溶体化処理を施した。さらに溶体化処理後、冷却速度100℃/min以上で150℃以下に冷却した。このようにして得られたアルミニウム合金板を供試材として以下に示す各種試験に供した。
・Tiおよび/またはV高濃度層の数(注:低濃度層の数も同じだけある。)
EPMA(Electron Probe Micro-Analysis:X線マイクロアナライザー)による板厚方向のTi、V元素濃度のマッピング画像から判定した。
EPMA(Electron Probe Micro-Analysis:X線マイクロアナライザー)による板厚方向のTi、V元素濃度のマッピング画像から判定した。
・張出し試験:
200mm×200mmの大きさの1mm板の両面にマスキングフィルムを貼り、さらに潤滑を高めるため、ワックスを塗った状態で張出し試験に供し、最大張出し高さを調べた。なおポンチとしては球頭ポンチ径100mmのものを使用した。
200mm×200mmの大きさの1mm板の両面にマスキングフィルムを貼り、さらに潤滑を高めるため、ワックスを塗った状態で張出し試験に供し、最大張出し高さを調べた。なおポンチとしては球頭ポンチ径100mmのものを使用した。
・塩水噴霧(孔食)試験
試験片寸法:幅45mm、長さ75mm
試験期間720h、温度35℃、他の条件はJIS Z 2371に準ずる。
上記の試験後、試験片を常温の水で十分に洗浄し、腐食生成物を除去した後、乾燥を行った。
試験片寸法:幅45mm、長さ75mm
試験期間720h、温度35℃、他の条件はJIS Z 2371に準ずる。
上記の試験後、試験片を常温の水で十分に洗浄し、腐食生成物を除去した後、乾燥を行った。
・粒界腐食試験
試験片寸法:幅45mm、長さ75mm
NaCl(濃度:3%)とHCl(濃度:10ml/l)の混合溶液に30℃、24h浸漬する。上記の試験後、試験片を常温の水で十分に洗浄し、腐食生成物を除去した後、乾燥を行った。その後、光学顕微鏡で断面観察を行なって板厚方向の最大腐食深さを割出した。
試験片寸法:幅45mm、長さ75mm
NaCl(濃度:3%)とHCl(濃度:10ml/l)の混合溶液に30℃、24h浸漬する。上記の試験後、試験片を常温の水で十分に洗浄し、腐食生成物を除去した後、乾燥を行った。その後、光学顕微鏡で断面観察を行なって板厚方向の最大腐食深さを割出した。
表2の番号1〜4は本発明の合金組成であり、1と2はCu含有量が少なく、Ti添加との総合作用で、特に耐食性(孔食も粒界腐食も)が優れている。3と4は、Cu含有量の増加により1、2と比べて成形性指標である張出高さが高く、耐食性の劣化は限定的である。同じくCu含有量が高いがTi,Vの添加の少ない8と比べると、3と4のVとTiによる耐食性の改善効果が歴然である。
表2の5〜7は合金組成が本発明範囲から外れた比較例であり、成形性、耐食性のいずれかが劣る。
Claims (1)
- Mg0.2〜1.5%(mass%、以下同じ)、Si0.3〜2.0%を含有し、かつTiとVの1種又は2種を合計で0.05〜0.5%を含有し、さらにMn0.03〜0.6%、Cr0.01〜0.4%、Zr0.01〜0.4%、Fe0.03〜1.5%、Zn0.03〜2.5%、Cu0.01〜1.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金組成を有し、圧延面とほぼ平行にTiおよび/またはVの高濃度層と低濃度層が交互に全板厚で各10層以上づつ存在し、しかも、円換算で直径2μm以上の大きさのTiおよび/またはV系金属間化合物の密度が1000個/mm2以下であることを特徴とする成形性、塗装焼付け硬化性および耐食性に優れた成形加工用アルミニウム合金板。
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