JP2009046389A - シリカ被覆炭素生成物の製造方法 - Google Patents

シリカ被覆炭素生成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】シリカ被覆炭素生成物の製造方法の提供。
【解決手段】1つの方法において、水性媒体もしくは溶液および炭素生成物が、金属イオンを実質的に含有しないケイ酸塩を含む溶液と、シリカ被覆炭素生成物を形成するのに十分な時間および温度で接触される。水性媒体および炭素生成物をモノケイ酸を含有する溶液と接触することによりシリカ被覆生成物を製造する方法も、金属ケイ酸塩を含有する溶液中の金属イオンを水素イオンと交換し、シリカ被覆炭素生成物を形成するために水性媒体および炭素生成物を、その溶液と接触させることと同様に記載されている。これらの方法から得られるシリカ被覆炭素生成物も記載され、多くのシリカ被覆生成物を含み、各シリカ被覆生成物は、シリカで実質的に均一に被覆され、遊離シリカが実質的にない。さらに、シリカ被覆炭素生成物を含有するエラストマー組成物等も記載されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、シリカ被覆炭素生成物およびシリカ被覆炭素生成物の製造方法に関する。好適には、シリカは、カーボンブラックのような炭素生成物上に、独立した(free−standing)シリカ粒子を形成することなく、被覆される。さらに本発明は、シリカ被覆炭素生成物を製造する間に金属陽イオンを除去する手段を提供する。
カーボンブラックは、顔料、充填剤、および補強剤として、タイヤの製造に使用されるエラストマー混合物の混合および製造に広く使用される。それらは、粒状カーボンブラックを含有する燃焼生成物を製造するために炭化水素原料を高温燃焼ガスで熱分解することによりファーネス型反応器で製造されるのが通常である。カーボンブラックは凝集体の形態で存在する。凝集体は、逆にカーボンブラック粒子から構成される。カーボンブラックは、粒径および比表面積、凝集体径、形状および分布、ならびに化学的および物理的表面特性を含むがこれに限定されない、分析的特性を基礎として特徴づけられるのが通常である。カーボンブラックの特性は当業者に公知の試験により分析的に測定される。たとえば、窒素吸着表面積(ASTM試験法D3037−方法Aにより測定される)は比表面積のものさしである。圧縮(CDBP)および非圧縮(DBP)カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(それぞれASTM試験法D3493−86およびD2414−93で測定される)は、凝集体構造に関係する。与えられるカーボンブラックの特性は、製造条件に依存し、たとえば温度、圧力、原料、滞留時間、急冷温度、原料処理量、および他のパラメータを変えることにより変更されうる。
タイヤのトレッドおよび他の部分を構成するとき、カーボンブラックを含有する混合物を使用するのがタイヤの製造において望ましいのが通常である。たとえば、適切なトレッド混合物は、異なる温度で高い耐摩耗性および良好なヒステリシスバランスを与えるために混合されたエラストマーを使用する。高い耐摩耗性を有するタイヤは、耐摩耗性はタイヤ寿命に比例するので、望ましい。カーボンブラックの物理的特性は、トレッド混合物の耐摩耗性およびヒステリシスに直接に影響しうる。通常、高表面積および小粒径を有するカーボンブラックはトレッド混合物に高い耐摩耗性およびヒステリシスを与える。カーボンブラック配合量もエラストマー混合物の耐摩耗性に影響する。耐摩耗性は少くとも最適点までは、配合量が増加するとともに増加し、それを超えると実際に耐摩耗性は減少する。
エラストマー混合物のヒステリシスは、周期的変形での消散エネルギーに関する。すなわちエラストマー組成物のヒステリシスは、エラストマーを変形するのに加えられるエネルギーともとの非変形状態に回復するときの解放エネルギーとの間の差に関する。ヒステリシスは損失係数(loss tangent)、tanδにより特徴づけられ、それは貯蔵弾性率(storage modulus)に対する損失弾性率(loss modulus)の比である(すなわち動的弾性率(elastic modulus)に対する粘性弾性率(viscous modulus)。40℃以上のような比較的高い温度で測定された比較的低いヒステリシスを有するタイヤトレッドでつくられるタイヤは、減少した転がり抵抗を有し、それは逆にそのタイヤを使用する乗物により減少された燃料消費をもたらす。同時に、0℃以下のような低い温度で測定された比較的高いヒステリシス値を有するタイヤトレッドは、運転の安全性を増加する高い湿潤トラクションおよびスキッド抵抗を有するタイヤをもたらす。このように、高温での低いヒステリシスおよび低温での高いヒステリシスを示すタイヤトレッド混合物は良好なヒステリシスバランスを有するといえる。
さらにシリカはエラストマーに対する補強剤(もしくは充填剤)として使用される。しかし、エラストマーに対して補強剤としてシリカ単独の使用は、補強剤としてカーボンブラック単独で得られる結果に比較して不十分な性能をもたらす。強い充填剤−充填剤相互作用および弱い充填剤−エラストマー相互作用がシリカの不十分な性能を説明することが理論で述べられる。シリカ−エラストマー相互作用は、米国、Witco社からA−1210として、そしてドイツDegussaAG社からSi−69として、商業的に入手しうるビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフェン(TESPT)のような化学的カップリング剤によりその2つを化学的に結合することにより改善されうる。TESPTのようなカップリング剤はエラストマーとシリカの間に化学的結合を創り出し、それによりシリカをエラストマーにカップリングする。
シリカがエラストマーに化学的にカップリングされると、得られるエラストマー組成物のある性能特性が高められる。乗物のタイヤに組入れられると、このようなエラストマー混合物は、改良されたヒステリシスバランスを提供する。しかし、第1の補強剤としてシリカを含有するエラストマー混合物は、低い熱伝導性、高い電気比抵抗、高密度、および不十分な加工性を示す。
カーボンブラックのみが補強剤としてエラストマー組成物中で使用されるとき、それはエラストマーと化学的にカップリングするのではなく、カーボンブラック表面はエラストマーと相互作用するための多くのサイトを提供する。カーボンブラックとともにカップリング剤の使用はエラストマー組成物にある性能の向上を与えるが、その向上は、シリカとともにカップリング剤が用いられるときに得られるそれとは同等ではない。
カーボンブラックの特性がシリカのそれと同等でありうるようにカーボンブラックの特性を改良する1つの方法はシリカでカーボンブラックを被覆することである。1つの方法は日本の特開昭63−63755号公報に記載されている。カーボンブラックは水に分散され、つづいてpHを10〜11に調節され、温度を少くとも70℃に保持する。その間、希釈されたケイ酸ナトリウム溶液が添加される。ついでpHを6.5〜7に低下することにより、ケイ酸ナトリウムは加水分解され、無定形シリカを生じ、カーボンブラック粒子表面に付着もしくは堆積する。ついでスラリーはろ過され、被覆カーボンブラック粒子は溶解ナトリウムを除去するために洗浄される。シリカ被覆ブラックはついで乾燥される。英国特許第972,626号および米国特許第5,679,728号は、このようなシリカ被覆カーボンブラックはゴム配合に使用されうることを述べる。
シリカ被覆カーボンブラックを製造する、このような方法の不利な点は、シリカの独立粒子を形成する可能性である。ケイ酸ナトリウム溶液は、ケイ酸およびシリカの両方の粒子を含有し、それは大部分は2〜3nmであるが、いくつかは径が5〜10nmもの大きさである。pHが低下するにつれて、比較的大きなシリカ粒子が、もっと大きくなり、小さい粒子が消失する傾向がある。したがって、シリカ被覆カーボンブラックに加えて、多くの独立したシリカ粒子がある蓋燃性が高い。独立したシリカは望ましくない。なぜならゴム混合物中の充填剤−充填剤相互作用は高くて、タイヤトレッド混合物の性能の劣化をもたらすからである。
特開昭63−63755号公報により記述される方法のもう1つの不利な点は、シリカ被覆カーボンブラックは溶解ナトリウムを除去するためにろ過および洗浄されなければならないことであり、それは酸化ニナトリウム(Na2O) もしくは水酸化ナトリウム(NaOH)の形態であり、その両方とも腐食性である。その小粒径のために、カーボンブラックスラリーはろ過するのが困難であり、シリカ被覆カーボンブラックを単離するためのろ過工程は時間がかかり、高価である。
本発明の1つの態様において、本発明は、シリカ被覆炭素生成物の製造方法に関する。
その方法は、シリカ被覆炭素生成物を形成するのに十分な時間および温度で、水性媒体および炭素生成物を、実質的に金属イオンを含まないケイ酸塩を含有する溶液と接触することを含む。好適には水性媒体は炭素生成物を含有する水性スラリーである。
本発明のもう1つの態様において、本発明は、シリカ被覆炭素生成物を形成するのに十分な時間および温度で、水性媒体および炭素生成物を、モノケイ酸を含有する溶液と接触させることによりシリカ被覆炭素生成物を製造する方法に関する。
本発明はさらに、金属ケイ酸塩を含有する溶液中の金属イオンを水素イオンと交換すること、そしてシリカ被覆炭素生成物を形成するのに十分な時間および温度で水性媒体および炭素生成物を該溶液と接触させることを含む、シリカ被覆炭素生成物の製造方法に関する。
さらに本発明は、各シリカ被覆炭素生成物がシリカで実質的に、均一に被覆されており、多くのシリカ被覆生成物は実質的に遊離シリカおよび/または金属イオンを有さない、多くのシリカ被覆炭素生成物に関する。
先の一般的説明および次の詳細な説明は典型的、説明的にすぎず、本発明のさらなる説明が請求の範囲のように提供されることが理解されるべきである。
一般に、本発明はシリカ被覆炭素生成物の製造方法に関し、さらに炭素生成物に、好ましくは遊離シリカを実質的に存在させないで、もっと均一なシリカ被覆を好適に与えるシリカ被覆炭素生成物に関する。
本発明の目的のために、炭素生成物は、カーボンブラック、黒鉛粉末、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素布、ビトレアス炭素生成物、および活性炭、活性木炭のような活性炭素生成物、ならびにそれらの混合物でありうる。上述のものの微細形態が好適である。好適には、炭素生成物はカーボンブラックである。
本発明の目的のために、炭素生成物は、米国特許出願08/446,141および08/446,142ならびにPCT WO96/37547に記載されるように炭素相およびケイ素含有種相を含有する凝集体であり得、それらのすべてはここでの引用により丸ごと組入れられる。本発明の目的のために、炭素生成物は、米国出願08/828,785に記載されるような金属含有種相および炭素相を含む凝集体であり得、それはここで引用により丸ごと組入れられる。
いかなる炭素生成物も、炭素生成物上に1つ、もしくはそれより多い付着有機基を有しうる。このような有機基の例は、好適には直接に炭素生成物に付着する芳香族基もしくはC1〜C12 アルキル基を含有する有機基を含む。炭素生成物の水分散性を促進する有機基は、イオンもしくはイオン化しうる基を有する芳香族基を含む有機基のように、特に好適である。このようなイオンおよびイオン化しうる基の具体例は、スルホン酸基もしくはその塩、スルフィン酸基もしくはその塩、カルホン酸基もしくはその塩、ホスホン酸もしくはその塩、または四級アンモニウムもしくはホスホニウム基を含むが、これらに限定されない。有機基の具体例は、PCT WO96/18696,WO96/18688およびWO96/18695、ならびに米国特許第5,554,739;5,571,311;5,630,868;5,672,198;5,707,432;5,713,988;5,803,959;5,895,522;5,885,335;5,851,280;および5,698,016に記載されており、そのすべてはここで引用することにより丸ごと組入れられる。
シリカ被覆炭素生成物、たとえばカーボンブラックがタイヤトレッド配合におけるようなタイヤ用途に用いられるとき、炭素生成物はカーボンブラックであり、約90〜約250m2/g の窒素表面積および約90〜約150m2/g の内部表面積もしくはt−面積を有するのが好適である。t−面積は、窒素表面積についてASTM D3037−A法に記載された試料調製および測定手順にしたがって測定される。この測定について、窒素吸着等温線は0.55相対圧力まで延ばされる。相対圧力は飽和圧力(Po)(窒素が凝縮する圧力)で割られる圧力(P)である。吸着層厚さ(tL) はついで
Figure 2009046389
を用いて計算される。
吸着される窒素量はついでtL に対してプロットされる。直線は3.9〜6.2Åの値に対するデータ点により適合される。t−面積は次のように線の傾きから得られる。
t−面積(m2/g)=15.47傾き
カーボンブラックは約90〜約180ml/100gのDBP吸油量を有するのが好ましい。窒素表面積およびt−面積はタイヤトレッド混合物に用いられるカーボンブラックを表示するが、本発明はこれらの仕様を有するカーボンブラック充填剤に限定されない。
本発明の目的のために、炭素生成物は、通常、いかなる窒素表面積、パラメータ、および/または外部表面積もしくはt−面積を有することができる。
本発明のシリカ被覆炭素生成物の製造方法に関して、水性媒体(たとえば水)および炭素生成物は、少くともケイ酸塩を含み、そこでケイ酸塩は実質的に金属イオンを含有しない溶液に接触させられる。水性媒体および炭素生成物は本発明のシリカ被覆炭素生成物を形成するのに十分な時間および十分な温度でケイ酸塩を含有する溶液と接触させられる。水性媒体は炭素生成物を含むことができ、このように水性スラリーの形態でありうる。水性スラリーに関して、いかなる量の炭素生成物も水性スラリーが維持されるかぎり存在しうる。好ましくは、約1wt%〜約20wt%の炭素生成物が水性スラリー中に存在し得、もっと好ましくは約2wt%〜約7wt%、そして最も好ましくは約5wt%の炭素生成物が、残りの%は水もしくは水性にもとづく液体である水性中に存在しうる。
上述のように、水性媒体および炭素生成物は別々に添加され、ケイ酸塩を含有する溶液と接触させられうる。たとえば、炭素生成物はペレタイザー内に置かれることができ、そして水は別に添加されることができる。さらに、ケイ酸塩を含有する溶液もいつでも添加されうる。このような方法で、炭素生成物の量は、ケイ酸塩を含有する溶液で炭素生成物を被覆させるために、十分な、水のような水性媒体があればいかなる量であってもよい。たとえば存在する全成分の質量にもとづいて50wt%までのカーボンブラックがこのようなペレット化処理に使用されうる。炭素生成物のペレット化に通常用いられる水の量は、いったんケイ酸塩を含有する溶液が添加されると、本発明のシリカ被覆炭素生成物を形成するのに十分でありうる。通常の量は炭素生成物100部あたり水約100〜約150部を含みうる。
炭素生成物のほかに、分散剤、界面活性剤、安定剤および緩衝剤のような他の成分が水性スラリー中に存在しうる。種々の任意の成分が従来の量で存在し得、界面活性剤の存在は、炭素生成物上にシリカの均一な被覆を得る目的のために水性媒体中に炭素生成物をもっと分散的にするのを助ける。界面活性剤の存在は、もし炭素生成物が、本発明の目的のために水性媒体中に炭素生成物を十分に分散的にする有機基を含むか付着されて用いられると、必要ではない。
本発明の目的のために、水性媒体および好適にはスラリーの温度は、シリカに炭素生成物上に形成および被覆させるいかなる温度でもよい。好ましくは、水性媒体および炭素生成物の温度は少くとも70℃、そしてもっと好ましくは約70℃〜約100℃、そして最も好ましくは約80℃〜約85℃である。さらに、水性媒体もしくはスラリーはいかなるpHを有してもよいが、水性媒体もしくはスラリーは約4〜約10、そしてもっと好ましくは約4〜約7のpHを有する。水性媒体もしくはスラリーのpHは、当業者に公知の塩基もしくは酸を使用していかなる所望のpHにも調節されうる。金属成分のない酸もしくは塩基、たとえばアンモニアにもとづく化合物がpHを調節するのに用いられるのが好ましい。
実質的に金属イオンを含有しないケイ酸塩は、金属イオンが通常約約750ppm 未満、そして好ましくは約500ppm 以下、そしてもっと好ましくは約10ppm〜約350ppm、そして最も好ましくは無視できる金属イオンか、全くないことである。好適には、ケイ酸塩はHSiO3 -およびSiO3 2- のようなイオン性ケイ素含有種を含有するケイ酸である。さらに他の形態のケイ素含有種も存在しうる。好適には、ケイ酸塩はモノケイ酸である。さらに、通常、水はケイ酸塩を含有する溶液の1部として存在しうる。
実質的に金属イオンのないケイ酸塩を含有する溶液は、多くの方法で調製されうる。好適には、別々の容器で、ケイ酸ナトリウムもしくはケイ酸カリウムのような金属ケイ酸塩が強酸性陽イオン交換樹脂と接触させられ、その樹脂はモノケイ酸および/またはそのイオン種の形態のような、実質的に金属イオンが存在しないケイ酸塩の形態で、シリカを残すケイ酸塩から金属陽イオンを交換する。本質的に強酸性陽イオン交換樹脂は金属イオンを水素イオンに交換する。
好適には、金属ケイ酸塩は水溶性金属ケイ酸塩であり、もっと好適にはケイ酸ナトリウムもしくはケイ酸カリウムである。さらに、金属ケイ酸塩は二酸化ケイ素(SiO2) を約1wt%〜約30wt%含有するのが好ましく、もっと好ましくは約3wt%〜約5wt%である。さらに二酸化ケイ素/酸化ニナトリウム比は好ましくは約3.2以下、もっと好ましくは約2.5未満であり、アンモニアもしくは水酸化ナトリウムのような塩基を用いて達成され得、さらに、ケイ酸塩を含有する溶液を、約12、もっと好ましくは12.5より大きいpHを有するように導く。このような条件が達成されると、ケイ酸塩を含有する溶液の大部分のポリシロキサン種は好ましくは消失し、溶液はケイ酸(Si(OH)4)、 ならびにHSiO3 -およびSiO3 2- を含有するイオン性ケイ素含有種を含む、通常、このような好適な条件で、本質的にすべてのケイ素はモノマー形態にある。本発明のもう1つの態様において、ポリシロキサンが存在し、シリカと結合してシリカ被覆炭素生成物の混合物を形成させることができ、それはある有利な特性を有することができる。
適切な陽イオン交換樹脂の例は、Dow Chemical Company(米国)によるHGR−W2 Dowex、およびRohm and Haas Company(米国)によるAmberliteを含むが、これらに限定されない。陽イオン交換の間、比較的多くの金属イオンが水素イオンと交換されるので、ケイ酸塩のpHは低下し、それによりイオン性シリカ種を消失し、付加的なモノケイ酸を生成する。通常、この方法で生成されるモノケイ酸の溶液は、過飽和され、表面への凝縮もしくは沈殿によりポリシロキサンシリカを生成する。したがって、過飽和モノケイ酸は炭素生成物の表面に、シリカで炭素生成物を有利に被覆する形態にある。
金属ケイ酸塩を含有する溶液中に存在しうるポリシロキサン種を実質的に除去し、ついでその溶液を強酸性陽イオン交換樹脂と接触させるのが好適である。
さらに、本発明の目的のために、金属ケイ酸塩溶液、および炭素生成物を含有する水性媒体もしくはスラリーは同時にイオン交換樹脂に通過され得、あるいは金属ケイ酸塩溶液が別にイオン交換樹脂を通過し、ついで炭素生成物を含有する水性媒体もしくはスラリーと接触させられることができる。炭素生成物を含有する水性媒体もしくはスラリーが実質的に金属イオンのないケイ酸塩を含有する溶液と接触させられる態様は、いかなる態様でもなされることができ、たとえば、その水性媒体もしくはスラリーを、攪拌、もしくは他の機械的手段、または2つの溶液を互いに接触させるいかなる他の手段により、その溶液と一緒に混合することが挙げられる。
本発明の方法により、炭素生成物を被覆するシリカの形態は炭素生成物を含有する水性媒体もしくはスラリーのpHを調節することにより制御させうる。たとえば、水性媒体もしくはスラリーのpHが約7以下であると、シリカは通常、炭素生成物を全体的にもしくは部分的に被覆する薄い被覆の形態にある。一方、もし水性媒体もしくはスラリーのpHが約7以上であると、シリカは通常、炭素生成物のまわりに凝集する細粒、たとえば粒径約5〜約10mm、もっと好ましくは約7〜約8mmである、形態にある。いずれの場合も、炭素生成物を被覆するシリカは事実上、実質的に均一であり、存在する炭素生成物と同一の径である遊離シリカ粒子を避けるのが通常であり、そしていかなる遊離シリカ粒子の存在も避けるのか、もしくは実質的に避けるのがもっと好適である。
本発明によって、シリカ被覆炭素生成物はナトリウムのような金属イオンがなく、したがって金属イオンを除去するのに必要ないかなる洗浄工程も避けるのが好適である。形成されたシリカ被覆炭素生成物はろ過のような単離手段により水性媒体もしくはスラリーから除去されることができ、ついで乾燥され、またはスラリーはスプレードライヤに供給され、水からシリカ被覆生成物を分離しうる。
いかなる適切なエラストマーも、エラストマー混合物を与えるためにシリカ被覆炭素生成物と混合されうる。このようなエラストマーは、1,3−ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、エチレンおよびプロピレンのホモ−もしくはコ−ポリマーを含むが、これらに限定されない。好適には、エラストマーは示差熱測定法(DSC)で測定されたガラス転移点(Tg) が約−120℃〜約0℃の範囲にある。その例はスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびそれらの油展誘導体を含むが、それらに限定されない。前述のもののいかなるブレンドも使用されうる。
本発明とともに使用するのに適切なゴムの中に、天然ゴムおよび塩素化ゴムのようなその誘導体がある。シリカ被覆炭素生成物は、合成ゴムとともにも使用され得る:たとえば、スチレン19部およびブタジエン81部からなるコポリマー、スチレン30部およびブタジエン70部からなるコポリマー、スチレン43部およびブタジエン57部からなるコポリマー、ならびにスチレン50部およびブタジエン50部からなコポリマーのような、スチレン約10〜70wt%およびブタジエン約90〜約30wt%からなるコポリマー;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のような共役ジエンのポリマーおよびコポリマー、ならびにそのような共役ジエンとそれと共重合しうるエチレン基含有モノマー、たとえばスチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、アクリロニトリル、2−ビニル−ピロリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、アルキル置換アクリレート、ビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、メチルビニルエーテル、アルファメチレンカルボン酸およびそのエステルとアミド、たとえばアクリル酸およびジアルキルアクリル酸アミド、とのコポリマー;さらにここでの使用に適切であるのは、エチレンと他の高級アルフォオレフィン、たとえばプロピレン、ブテン−1およびペンテン−1とのコポリマーである。
本発明のゴム組成物は、したがって、エラストマー、硬化剤、補強充填材、カップリング剤、および任意に種々の処理助剤(processing aids)、油展剤および分解防止剤を含有することができる。上述の例に加えて、エラストマーは、1,3−ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン等から製造されるポリマー(たとえば、ホモポリマー、コポリマーおよびターポリマー)であってもよいが、これらに限定されない。これらのエラストマーはDSCで測定されたガラス転移点が−120℃〜0℃であるのが好適である。このようなエラストマーの例はポリ(ブタジエン)、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)、およびポリ(イソプレン)を含む。
本発明において開示されるエラストマー組成物は、加硫組成物(VR)、熱可塑性加硫ゴム(TPV)、熱可塑性エラストマー(TPE)および熱可塑性ポリオレフィン(TPO)を含むが、これらに限定されない。TPV、TPEおよびTPO物質は、性能特性の低下なしに数回、押出され、成型される能力によりさらに分類される。
エラストマー組成物は、たとえば硫黄、硫黄供与体、活性化剤、促進材、過酸化物、およびエラストマー組成物の加硫を実施するのに用いられる他の系のような硬化剤を1つ、もしくはそれより多く含みうる。
本発明のシリカ被覆炭素生成物を含み、そして任意に1つもしくはそれより多いカップリング剤を含み、結果として生じたエラストマー混合物は、種々のエラストマー生成物として使用され得、たとえば、トレッド混合物、アンダトレッド混合物、サイドウォール混合物、ワイアスキム混合物、インナライナ混合物、ビード、アペクス、乗物のタイヤ用のカーカスおよび他の要素に使用される混合物、産業用ゴム製品、シール、タイミングベルト、動力伝達ベルトならびに他のゴム製品が挙げられる。
本発明は次の実施例によりさらに明らかになろうが、それは単に本発明の典型例である。
実施例1
機械的スターラーおよび加熱マントルを備えた2Lガラス容器に脱イオン(DI)水380gが添加された。かくはん機がスイッチをつけられ、水は80〜85℃に加熱された。t−面積135m2/g および圧縮DBP106ml/100gを有するふわふわした(fluffy)カーボンブラック20gが、ついで注意深く添加され、カーボンブラック5wt%および水95wt%wp含有するカーボンブラックスラリーが調製された。
別のガラス容器中に、SiO2 28.7wt%およびNa2O 8.9wt%を含有するケイ酸ナトリウム溶液(米国PQ Corporationにより製造されたSodium Silicate N)14.4gが添加された。ケイ酸塩溶液はついでDI水165gで希釈された。溶液からポロシロキサン分子を除去するために、pHがNaOH3.8gを添加することにより12.6に上昇した。
2つのイオン交換カラムが、HGR−W2 Dowex樹脂110mlを2つの19mm径ガラスカラムの両方に装入することにより用意された。Masterflexぜん動ポンプを用いて、希釈シリカ溶液が7g/分に等しい速度で強酸性陽イオン交換カラムに押し出された。5分後に、シリカ供給が停止され、DI水が5分間、7g/分に等しい速度でカラムに供給された。希釈シリカ溶液およびDI水は、シリカ溶液の半分が供給されるまで、このような方法で交互に供給され、その後に第2の強酸性陽イオン交換カラムを用いて処理がくりかえされた。イオン交換カラムからのケイ酸がカーボンブラックスラリーに添加されるにつれて、シリカ被覆カーボンブラックスラリーのpHは7から約4.6に低下した。
すべてのシリカがカチオン樹脂を通過したとき、シリカ被覆カーボンブラック粒子を含有するスラリーはさらに2時間、加熱・かくはんされた。ついでスラリーはろ過され、そしてぬれたシリカ被覆カーボンブラック粒子はオーブン乾燥された。
シリカ被覆カーボンブラックのt−面積が122m2/g と測定されたが、この表面積の低下は、原カーボンブラック粒子は今やシリカで被覆され、したがって大きく比表面積は比較的小さいという事実による。
シリカ被覆カーボンブラックの試料は、高温炉に2時間置かれ、シリカのみからなり炭素を含まない灰分を残した。灰化試料はJEOL−JEM−1200EX顕微鏡を用いて試験された。図1は、200,000倍に拡大された灰化試料の部分を示す。画像は、シリカが試料が灰化される前にカーボンブラック粒子の被覆として存在したという証拠として半径15nmを有する曲線状の端(edges)を示す。灰分の窒素表面積が測定され、631m2/g であることがわかったが、4nmに類似する非常に小さい特徴的な径を暗示する。
シリカ被覆カーボンブラック試料5gが10%V/V HF100mlで1時間抽出された。ケイ素含量および窒素表面積およびt−面積が、HF処理の前後に測定された。その結果は表1に示される。
Figure 2009046389
表1のデータは、シリカが除去されると充填剤粒子のt−面積が減少することを示す。データは比較的大きい径および比較的小さい比表面積を有するシリカ被覆カーボンブラックが製造された証拠である。窒素表面積は少し減少し、シリカ被覆カーボンブラックは原シリカのないカーボンブラック充填剤よりも大きい気孔率を有していたことを示す。
実施例2
シリカ被覆カーボンブラックの第2試料が、実施例1と同様に、しかしモノケイ酸がカーボンブラック溶液に供給される前に、原カーボンブラックスラリーのpHが、希NaOH溶液を用いて10に調節されて、調整された。ケイ酸がカーボンブラックスラリーに添加されるとともに、少量のNaOH溶液がスラリーのpHを7〜10に保持するために添加された。この方法により製造されたシリカ被覆カーボンブラックは、ついでDI水で洗浄され、オーブンで乾燥された。
第2のシリカ被覆カーボンブラック試料は灰化され、顕微鏡下で試験された。図2は200,000倍に拡大された灰化試料の部分を示す。画像は、シリカが凝集体としてもっと大きなカーボンブラックを被覆した証拠として径約8mmのシリカ凝集体を示す。灰分の窒素表面積が測定され353m2/g であることがわかったが、8nmに類似する非常に小さい特徴的な径を暗示する。
シリカ被覆カーボンブラック試料5gが10%V/V HF100mlで1時間抽出された。ケイ素含量および窒素表面積およびt−面積が、HF処理の前後に測定された。その結果は表2に示される。
Figure 2009046389
表2のデータは、シリカが除去されると充填剤粒子の表面積が増加することを示す。データは、気孔が隣接するシリカ粒子から形成されるマクロポア充填材であることの証拠である。
本発明の多くの変形は、上述の詳細な開示に照らして当業者に示唆されている。たとえば、方法は顔料、トナー等に適した被覆カーボンブラックを製造するのにも使用されうる。すべての変更は請求項の意図された範囲内にある。
本発明の他の態様は、ここで開示される本発明の明細書および実施を考慮して、当業者に明らかであろう明細書および実施例は例示的であり、発明の真の範囲および要旨は請求の範囲により示される。
200,000倍に拡大された灰化シリカ被覆カーボンブラックのマイクロ写真である。 200,000倍に拡大された、第2のシリカ被覆カーボンブラックの灰化試料を示すマイクロ写真である。

Claims (31)

  1. 十分な時間および温度で、水性媒体および炭素生成物を、シリカ被覆炭素生成物を形成するために、ケイ酸塩を含む溶液と接触させることを含み、該溶液は実質的に金属イオンを含まないことを特徴とするシリカ被覆炭素生成物の製造方法。
  2. 該炭素生成物が、カーボンブラック、黒鉛粉末、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素布、ビトレアス炭素生成物、活性炭生成物、活性木炭生成物もしくはそれらの混合物である請求項1記載の方法。
  3. 炭素生成物がカーボンブラックである請求項1記載の方法。
  4. 該炭素生成物が炭素相およびケイ素含有種相を含む凝集体である請求項1記載の方法。
  5. 該炭素生成物が炭素相および金属含有種相を含む凝集体である請求項1記載の方法。
  6. 該炭素生成物が少なくとも1つの有機基を付着した請求項1記載の方法。
  7. 該炭素生成物が、イオン性もしくはイオン化しうる基で置換された少なくとも1つの有機基を付着した請求項1記載の方法。
  8. 該炭素生成物が、芳香族基またはイオン性もしくはイオン化しうる基で任意に置換されたC1〜C12アルキル基を少なくとも1つの有機基を付着した請求項1記載の方法。
  9. 該炭素生成物がカーボンブラックである請求項8記載の方法。
  10. 該水性媒体および炭素生成物が、炭素生成物を含む水性スラリーの形態である請求項1記載の方法。
  11. 該水性スラリーが、さらに界面活性剤、緩衝剤、もしくは両方を含む、請求項10記載の方法。
  12. 該水性スラリーが約7以下のpHを有する請求項10記載の方法。
  13. 水性スラリーが7以上のpHを有する請求項10記載の方法。
  14. 組み合わされた水性媒体および溶液の該温度が少なくとも約70℃である請求項1記載の方法。
  15. 実質的に金属イオンを含まないケイ酸塩を含む該溶液が、金属ケイ酸塩を含む溶液に強酸性陽イオン交換樹脂を通過させることにより生成される請求項1記載の方法。
  16. 金属ケイ酸塩を含む溶液のpHが少なくとも約12である請求項15記載の方法。
  17. 水性媒体からシリカ被覆炭素生成物を単離することをさらに含む請求項1記載の方法。
  18. 該金属ケイ酸塩が約1〜約30wt%SiO2 を含む請求項15記載の方法。
  19. 金属ケイ酸塩を含む該溶液が約2.5以下の二酸化ケイ素/酸化ニナトリウム比を有する請求項15記載の方法。
  20. 金属ケイ酸塩を含む該溶液が約3.2以下の二酸化ケイ素/酸化ニナトリウム比を有する請求項15記載の方法。
  21. 約1wt%〜約20wt%の炭素生成物が水性スラリー中に存在する請求項10記載の方法。
  22. 約5wt%の炭素生成物が水性スラリー中に存在する請求項10記載の方法。
  23. シリカ被覆炭素生成物を形成するのに十分な時間および温度で、水性媒体および炭素生成物をモノケイ酸を含有する溶液と接触させることを含む、シリカ被覆炭素生成物の製造方法。
  24. 金属ケイ酸塩を含有する溶液中の金属イオンを水素イオンと交換すること、そしてシリカ被覆炭素生成物を形成するのに十分な時間および温度で水性媒体および炭素生成物を該溶液と接触させることを含む、シリカ被覆炭素生成物の製造方法。
  25. 該金属イオン交換が水性媒体と該溶液との接触と同時に起こる請求項24記載の方法。
  26. 各シリカ被覆炭素生成物が、シリカで実質的に、且つ均一に被覆されており、実質的に遊離シリカがない、多くのシリカ被覆炭素生成物。
  27. シリカ被覆炭素生成物が実質的に金属イオンを有さない請求項26記載の多くのシリカ被覆炭素生成物。
  28. 該シリカ被覆炭素生成物が部分的に被覆されている請求項1記載の方法。
  29. 該シリカ被覆炭素生成物がシリカで十分に被覆されている請求項1記載の方法。
  30. 該炭素生成物、水性媒体、および該溶液がペレタイザーに一緒にもしくは別々に添加される請求項1記載の方法。
  31. 該炭素生成物が約1wt%〜約50wt%の量で存在する請求項30記載の方法。
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