JP4355482B2 - ゴム用充填材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なゴム用充填材に関し、詳しくは、ゴム中での分散性に優れ、良好な補強性や耐摩耗性を付与できるカチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末よりなるゴム用充填材およびその製造方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ゴムの補強用充填材として、カーボンブラックが広く使用されている。これは、カーボンブラックが他の充填材と比較して、ゴムへ比較的容易に分散し、優れたゴム物性を付与できるためである。
【0003】
近年、シリカを充填したゴム組成物は、カーボンブラックを充填したゴム組成物と比較し、自由着色性を有し環境汚染性が少ない、耐引裂き性の改良に優れる、内部発熱を少なくできることから、シリカがゴム用充填材として重要視されるようになってきた。特に、乗用車向けタイヤにおいて、低燃費性と高グリップ性を両立させるために、シリカを主とする補強材を使用したゴム組成物が要求されている。
【0004】
上記カーボンブラックやシリカなどは、粉末状の形態で(粉末を造粒機により粒状化したものも含む)、バンバリーミキサー、オープンロール、ニーダー等の混練装置を用いてゴム中へ配合する方法が広く行なわれているが、シリカ粒子はその表面がシラノール基に覆われ、強い自己凝集性を持っているために、ゴム中へ良好に分散させることは困難であり、ゴム混練時間を長く必要としたり、ゴム組成物のムーニー粘度が高くなるという欠点を有していた。このため、シリカは、ゴムの補強材として使用する場合、カーボンブラックの補完的な目的で用いられることが多かった。
【0005】
これら問題を解決するために、シリカ粒子とゴムの親和性を上げる様々な改良が行なわれている。例えば、ジエン系のゴムとシリカよりなる系にシランカップリング剤を配合することにより、そのカップリング効果によりゴムとシリカ粒子との親和性を高め、分散性を改良する方法が数多く開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
ところが、上記方法では、十分な補強効果を発揮させるためには、多量のシランカップリング剤を配合しなければならないという問題があった。
【0007】
一方、予めシリカ粒子の表面を改質したものを用い、ゴム中の分散性を改良する方法も開示されている。例えば、有機珪素化合物で表面処理したシリカ粉末を用いることが開示されている(特許文献2、特許文献3参照)。
【0008】
しかしながら、上記処理後のシリカ粒子の表面にはシラノール基が存在しなくなるために、ゴムとの混練において補強効果を発揮するために添加されるシランカップリング剤が反応する部位が無くなり、ゴムの補強性が十分に改善されないという欠点を有していた。さらに、処理には多量の有機珪素化合物が必要であり、また、加熱処理工程などが必要であることから処理設備が大掛かりとなり、工程の複雑化を招くことから、製造コストの増大が懸念される。
【特許文献1】
特開平3−252431号公報
【特許文献2】
特公昭63−2886号公報
【特許文献3】
特開平6−157825号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ゴム中での分散性に優れ、少量のシランカップリング剤の併用により、得られるゴム組成物に良好な耐摩耗性、引張強度、モジュラスを付与できるシリカ粉末よりなるゴム用充填材およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を続けてきた。その結果、シリカ粒子の表面シラノール基をカチオン性高分子で表面処理したシリカ粉末を用いることにより、ゴム中への分散が容易となること、得られるゴム組成物に高補強性、高耐摩耗性を効果的に付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、カチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末よりなるゴム用充填材をゴムにロール又はバンバリーミキサーにて混練して充填することを特徴とするシリカ充填ゴムの製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられるシリカは、公知の方法により得られる乾式シリカ、湿式シリカおよびゾル−ゲル法シリカを用いることができる。乾式シリカは、一般に、四塩化珪素を酸水素炎中で燃焼させて得られる。また、湿式シリカは、珪酸ソーダを酸で中和することによって得られる沈降シリカやゲル法シリカが代表的であり、鉱酸の一部もしくは代わりに硫酸アルミニウムを用いて中和反応させた金属塩を多く含有した沈降シリカも用いることもできる。さらに、ゾル−ゲル法シリカは、テトラエメキシシランやテトラエトキシシラン等の珪素のアルコキシドを酸性あるいはアルカリ性の含水有機溶媒中で加水分解することによって得られるものである。
【0012】
本発明においては、生産性に優れる湿式法シリカ、中でも沈降シリカを用いるのが好ましい。
【0013】
本発明において表面処理剤として用いられるカチオン性高分子は、水に溶解させた際に活性イオンが陽イオンとなる化合物が何等制限なく使用される。例えば、高分子主鎖もしくは側鎖に1〜4級アンモニウム塩基を有する高分子が代表的である。また、上記活性イオンが塩を構成するアニオンとしては、塩素イオン、臭素イオンが一般的である。
【0014】
上記カチオン性高分子としては、例えば、1〜3級および4級のアンモニウム塩を親水基として有するモノマーを重合して得られるものが好適に使用され、4級のアンモニウム塩を親水基として有するモノマーを重合して得られるものが、水溶液とした場合に幅広いpH領域で安定であるため特に好ましい。さらに、上記した効果を阻害しない範囲で、その他のモノマーと共重合したものでも良い。
【0015】
本発明において好適なカチオン性高分子を具体的に例示すると、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリアミンスルホン、ポリアリルアミン、ポリジアリルメチルアミン、ポリアミドアミン、ポリアミノアルキルアクリレート、ポリアミノアルキルメタアクリレート、ポリアミノアルキルアクリルアミド、ポリエポキシアミン、ポリアミドポリアミン、ポリエステルポリアミン、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ポリアルキレンポリアミン・ジシアンジアミド縮合物等の高分子及びこれらのアンモニウム塩、更に、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリビニルピリジニウムクロライド、ポリメタクリル酸エステルメチルクロライド等の4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0016】
これらのうち、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルメチルアミン、ポリエポキシアミンおよびそのアンモニウム塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリビニルピリジニウムクロライドが好ましい。
【0017】
上記カチオン性高分子の重量平均分子量は、3,000〜1,000,000であることが好ましい。上記重量平均分子量が3,000未満であると本発明のカチオン性高分子で表面処理されたシリカを用いて得られるゴム組成物の補強性が不十分となりやすく、上記重量平均分子量が1,000,000を超えるとシリカの表面を均一に処理することが困難となる傾向がある。
【0018】
本発明のゴム用充填材は、前記カチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末よりなる。かかる表面処理は、シリカ粉末を構成するシリカ粒子の表面にカチオン性高分子が付着している状態であれば、特に制限されない。かかる付着は、カチオン性高分子のアンモニウムイオンに代表されるカチオン性基とシリカ粒子に存在するシラノール基の一部が結合しているものと推定される。
【0019】
このことは、本発明のカチオン性高分子で処理されたシリカ粉末の赤外吸収スペクトルにおいて、シリカ粒子に存在する孤立シラノール基に起因するピーク強度が減少し、高分子鎖に起因するピークが発現していることより確認することができる。
【0020】
上記表面処理されたシリカ粉末は、前記有機珪素化合物で処理されたシリカ粉末が殆どのシラノール基が消失するのと比べて、比較的多くのシラノール基が残存し、これによってゴム用充填材として使用するに際し、ゴムへの分散が良好であると共に、該残存シラノール基がシランカップリングと反応して、得られるゴム組成物の補強効果を著しく向上させることが可能になると思われる。
【0021】
また、本発明におけるカチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末は、その水分散液について測定したゼータ(ζ)電位が、カチオン性高分子の作用により5ミリボルト〜50ミリボルトになることが好ましい。なお、通常のシリカ粉末は、水中で負に帯電する傾向にあり、通常、マイナス30ミリボルト程度を示す。本発明において、ゼータ(ζ)電位は後記の実施例に示す方法により測定した値である。
【0022】
本発明において、上記シリカ粉末へのカチオン性高分子の付着量(処理量)は、シリカ100重量部に対して0.5〜20重量部が好ましく、特に、1〜10重量部が最も好ましい。
【0023】
上記カチオン性高分子の処理量が0.5重量部未満である場合、ゴム中への分散が不十分となり、補強性および耐摩耗性の改良効果が低い。また、20重量部を越えても補強性および耐摩耗性の向上効果は頭打ちとなる。
【0024】
本発明のカチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末の比表面積は、特に制限されないが、70〜250m2/gであるのが好ましい。上記カチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末の比表面積が高すぎる場合は、ゴムの配合物の粘度が十分に下がらないために加工性の改良効果が十分に発揮されない傾向にあり、また、上記比表面積が低すぎる場合はゴム補強特性が十分維持できなくなる場合がある。
【0025】
上述のように、カチオン性高分子で表面処理され、表面にカチオン性高分子が付着したシリカ粒子を、乾燥した、粉末状で得、これをゴム用充填材として使用することは、本発明によって初めて提案されたものであり、後述のように、添加されたゴムに対して優れた物性を付与することができるものである。
【0026】
なお、ゴム中におけるシリカ分散性を大幅に向上させる方法として、ゴムラテックスとシリカを混合後、共凝固させる方法、いわゆる湿式法によりゴム組成物を得る方法が提案されている。この方法では、水等の分散媒中で、平均粒子径が1μm以下のシリカ粒子とカチオン性高分子とを混合することによりゴムとシリカの共凝固を可能とし、分散性が良好なゴム組成物を得ることができる。
【0027】
しかし、上記方法により得られるゴム組成物は、シリカ粒子表面に共凝固したゴム成分が存在する形態で得られるものである。また、シリカ粉末として得られるものではない。したがって、本発明とは本質的に異なるものであり、上記方法は適用可能なゴムが乳化重合で製造されるものに限られるのに対し、本発明のカチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末は全てのゴムに適用できるというメリットを有する。また、本発明のゴム用充填材は、上記ゴム組成物に対して製造も極めて容易であり、工業的な実施において有利である。
【0028】
本発明のゴム用充填材の製造方法は特に制限されないが、シリカ粉末をカチオン性高分子により乾式で処理する方法、湿式で処理する方法の何れの処理を採用することができるが、湿式で処理する方が、処理が確実で且つ均一に処理できることからから好ましい。特に、本発明において、沈降シリカを用いる場合は、通常のシリカの製造工程内にかかる湿式での処理工程を組み入れることができるので好ましい。
【0029】
即ち、本発明によれば、前記ゴム用充填材の好適な製造方法として、シリカの水性懸濁液中でカチオン性高分子を混合し、該カチオン性高分子が付着したシリカ粒子をろ過、乾燥することを特徴とするゴム用充填材の製造方法が提供される。
【0030】
具体的には、プロペラ、ディスパー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、コロイドミル等の分散機を使用してシリカ粒子を水に分散させ水性懸濁液とし、上記分散機で攪拌しながら、あるいはラインミキサー等の静的混合機を用いて上記シリカの水性懸濁液とカチオン性高分子と混合する方法が挙げられる。上記水性懸濁液中のシリカの濃度は、1〜30重量%のものが好適に使用される。上記混合の際の温度は制限されるものではないが、5℃から80℃が好ましい。また、上記混合の際のpHは、シリカの安定性を考慮すると2から9とするのが好ましい。
【0031】
また、上記シリカの水性懸濁液としては、珪酸アルカリと酸との中和反応によって得られたシリカを乾燥することなく水に分散せしめて調製したものが好ましい。即ち、珪酸アルカリを酸で中和反応することにより得られたシリカの反応水性懸濁液、または、反応水性懸濁液をろ過・洗浄したシリカケークを用いた水性懸濁液を用いるのが好ましく、塩の少ないシリカケークを用いた水性懸濁液を用いるのが最も好ましい。
【0032】
上記シリカは、カチオン性高分子の処理による、得られるシリカ粉末の比表面積の低下を考慮し、処理後の比表面積が前記所望の範囲になるように、乾燥粉末の比表面積が100〜300m2/g程度に分散したシリカを選択すれば良い。本明細書において、比表面積は、後記の実施例に示す方法により測定した値である。
【0033】
本発明において、上記カチオン性高分子を混合したシリカの水性懸濁液は、ろ過、必要に応じて洗浄を行った後、乾燥することによって、適当な粒子径、かさ比重やDBP吸油量を有するものとなる。上記粒子径としては、1〜500μmが一般的である。
【0034】
それらの後処理の方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。
【0035】
例えば、カチオン性高分子で表面処理されたシリカの水性懸濁液をフィルタープレスでろ過、洗浄して得られたケークを静置乾燥する方法や、上記水性懸濁液を適度な濃度に調整し、次いで噴霧乾燥する方法などが挙げられる。
【0036】
本発明においては、カチオン性高分子の劣化を抑えるという点から噴霧乾燥機を用いて乾燥する態様が好ましい。
【0037】
上記噴霧乾燥条件は、使用される噴霧乾燥機の大きさや種類、混合液中の固形分濃度、粘度、流量などによって適宜選択すれば良いが、乾燥温度は100℃〜300℃が好ましく、この乾燥温度の範囲内で、十分乾燥した粉末が得られるように、他の乾燥条件を設定するのが好ましい。例えば、乾燥機入り口熱風温度150℃〜300℃とし、出口熱風温度50℃〜150℃になるように、該水性懸濁液の供給量を調整すれば良い。
【0038】
上記乾燥温度が100℃未満の場合、乾燥が不十分となり、300℃を越えるとカチオン性高分子が劣化し、本発明のカチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末を用いたゴム組成物において、補強性および耐摩耗性が十分に改善されないので好ましくない。
【0039】
従来、カチオン性高分子とシリカ粒子とを水性分散媒中で混合したものをゴムと共凝固させたものは存在するが、カチオン性高分子によって表面処理されたシリカを乾燥粉末として取得したものはなかった。これに対して、前述したようにカチオン性高分子によって表面処理されたシリカを乾燥粉末として取り出し、これをゴム用充填材として使用することは本発明によって初めて提供されたものであり、前記共凝固が困難なゴムに対しても、従来の充填材と同様にして混合することができると共に、シランカップリング剤を併用して得られるゴム組成物において、意外なことに、従来のゴム用充填材では達成することができなかった、高い耐摩耗性、引張強度、モジュラス等の効果を付与することができることがわかった。その要因については明らかでないが、本発明のカチオン性高分子によって表面処理されたシリカ粉末を構成するシリカ粒子の表面シラノール基が適度に残された状態となっていることに起因していると推察される。
【0040】
本発明のカチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末よりなるゴム用充填材は、ハンドリング性を向上させるために、押出造粒機、コンパクター等を用いて、粒径が0.5〜10mm程度の造粒体に成形して使用することもできる。
【0041】
本発明のゴム用充填材をゴムに充填する方法は、公知の方法が特に限定されず、採用できる。例えば、SBR等ロールあるいはバンバリーミキサーを用いて行うことができる。ゴムに対するシリカの充填量は特に制限されないが、一般的にはゴムに対して、10から100重量部の範囲で充填することが可能である。
【0042】
【実施例】
以下に、本発明を具体的に説明するための実施例および比較例を示すが、本発明は、これら実施例に何等限定されるものではない。また、下記の実施例および比較例において各種物性は、以下の方法で実施した。
【0043】
(1)ゼータ(ζ)電位
10ppm塩化ナトリウム水溶液100部に対して、カチオン性高分子で処理したシリカ粉末を0.05部配合して分散させ、この水性懸濁液のpHを塩酸または水酸化ナトリウムによって5に調整し、ゼータ電位をレーザードップラー法ゼータ電位測定器(大塚電子株式会社社製、LEZA−600)により測定した。
【0044】
(2)比表面積
JIS K6220により、BET一点法により求めた。
【0045】
(3)300%モジュラス
JIS K6301の引張応力試験法により測定した。
【0046】
(4)引張強度
JIS K6301の引張応力試験法により測定した。
【0047】
(5)摩耗減量
アクロン式摩耗試験機を用い、予備擦り1000回後の重量と本擦り1000回後の重量の減量から求めた。
【0048】
(6)作業性
ロール混練作業時の作業性、シリカ粉末の混入性について、非常に優れるものを◎、優れるものを○、普通のものを×とした。
【0049】
実施例1
温度調節機付きの1m3の反応容器に珪酸ナトリウム水溶液(SiO2濃度:10g/L、モル比:SiO2/Na2O=3.43)230Lを投入し、90℃に昇温した。次いで、22%硫酸73Lと珪酸ナトリウム水溶液(SiO2濃度:90g/L、モル比:SiO2/Na2O=3.43)440Lを同時に120分かけて投入した。10分間熟成後、22%硫酸16Lを15分かけて投入した。上記反応は反応液温度を90℃に保持し、反応液を常時攪拌しながら行い、最終的に反応液のpHが3.3のシリカスラリーを得た。これをろ過、水洗し、シリカ湿ケークとした。得られたシリカ湿ケークを乾燥したシリカ粉末の比表面積は、188m2/gであった。
【0050】
上記方法で得られたシリカ湿ケークとカチオン性高分子(重量平均分子量が4万のポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、および純水を混合し、ホモジナイザーを用いて粉砕と同時にシリカの表面処理を25℃で行い、pH4のカチオン性高分子で処理したシリカの水性懸濁液を得た。該水性懸濁液中のシリカ濃度は13%、カチオン性高分子はシリカ100重量部に対して3重量部になるように調製した。
【0051】
得られた混合液を噴霧乾燥装置にて、入り口温度250℃、出口温度120℃になるように混合液の供給量を調整しながら乾燥し、カチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末(A)を得た。シリカ粉末(A)の比表面積は145m2/g、ゼータ(ζ)電位は25ミリボルトであった。また、シリカ粉末(A)の赤外吸収スペクトル(拡散反射法)から、シリカ粒子の表面の孤立シラノール基に帰属される3740cm−1のピークが未処理のものと比較して減少し、1300から3000cm−1に高分子鎖に起因していると思われる新たなピークが発現していることが確認できた。
【0052】
上記のようにして得られたカチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末(A)に表1に示す配合量になるように、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シランカップリング剤(KBE−846、信越化学工業社製)、パラフィンワックス、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤(ノクラック6C、大内新興化学工業社製)、加硫促進剤(ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製)および硫黄を添加し、6インチのオープンロールを用いて混練し、ゴム組成物(A)を得た。このゴム組成物(A)を160℃で15分間プレス加硫して試験片を作製し各物性を測定した。混練時の作業性および物性測定結果を表2に示す。
【0053】
実施例2
実施例1において、カチオン性高分子で表面処理されたシリカの水性懸濁液中のカチオン性高分子の添加量をシリカ100重量部に対して1重量部になるように調製した以外は、実施例1と同様な操作を行い、カチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末(B)を得た。シリカ粉末(B)の比表面積は165m2/g、ゼータ(ζ)電位は10ミリボルトであった。また、シリカ粉末(B)の赤外吸収スペクトル(拡散反射法)から、シリカ粒子の表面の孤立シラノール基に帰属される3740cm−1のピークが未処理のものと比較して減少し、1300から3000cm−1に高分子鎖に起因していると思われる新たなピークが発現していることが確認できた。
【0054】
得られたカチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末(B)は、実施例1と同様に、表1に示す配合量になるようにスチレンブタジエンゴム(SBR)、シランカップリング剤(KBE−846、信越化学工業社製)、パラフィンワックス、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤(ノクラック6C、大内新興化学工業社製)、加硫促進剤(ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製)および硫黄を添加し、6インチのオープンロールを用いて混練し、ゴム組成物(B)を得た。このゴム組成物(B)を160℃で15分間プレス加硫して試験片を作製し、各物性を測定した。混練時の作業性および物性測定結果を表2に示す。
【0055】
実施例3
実施例1において、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの代わりに重量平均分子量が4万のポリジアリルメチルアミン塩酸塩を用いた以外は実施例1と同様な操作を行い、カチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末(C)を得た。シリカ粉末(C)の比表面積は145m2/g、ゼータ(ζ)電位は28ミリボルトであった。また、シリカ粉末(C)の赤外吸収スペクトル(拡散反射法)から、シリカ粒子の表面の孤立シラノール基に帰属される3740cm−1のピークが未処理のものと比較して減少し、1300から3000cm−1に高分子鎖に起因していると思われる新たなピークが発現していることが確認できた。
【0056】
得られたカチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末(C)は、実施例1と同様に、表1に示す配合量になるようにスチレンブタジエンゴム(SBR)、シランカップリング剤(KBE−846、信越化学工業社製)、パラフィンワックス、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤(ノクラック6C、大内新興化学工業社製)、加硫促進剤(ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製)および硫黄を添加し、6インチのオープンロールを用いて混練し、ゴム組成物(C)を得た。
【0057】
このゴム組成物(C)を160℃で15分間プレス加硫して試験片を作製し、各物性を測定した。混練時の作業性および物性測定結果を表2に示す。
【0058】
実施例4
温度調節機付きの1m3の反応容器に珪酸ナトリウム水溶液(SiO2濃度:10g/L、モル比:SiO2/Na2O=3.43)230Lを投入し、95℃に昇温した。次いで、22%硫酸73Lと珪酸ナトリウム水溶液(SiO2濃度:90g/L、モル比:SiO2/Na2O=3.43)440Lを同時に150分かけて投入した。10分間熟成後、22%硫酸16Lを15分かけて投入した。上記反応は反応液温度を95℃に保持し、反応液を常時攪拌しながら行い、最終的に反応液のpHが3.2のシリカスラリーを得た。これをろ過、水洗し、シリカ湿ケークとした。得られたシリカ湿ケークを乾燥したシリカ粉末の比表面積は、121m2/gであった。
【0059】
上記方法で得られたシリカ湿ケークとカチオン性高分子(重量平均分子量が4万のポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、および純水を混合し、ホモジナイザーを用いて粉砕と同時にシリカの表面処理を25℃で行い、pH4のカチオン性高分子で表面処理されたシリカの水性懸濁液を得た。該水性懸濁液中のシリカ濃度は13%、カチオン性高分子はシリカ100重量部に対して3重量部になるように調製した。得られた混合液を噴霧乾燥装置にて、入り口温度250℃、出口温度120℃になるように混合液の供給量を調整しながら乾燥し、カチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末(D)を得た。シリカ粉末(D)の比表面積は110m2/g、ゼータ(ζ)電位は26ミリボルトであった。また、シリカ粉末(D)の赤外吸収スペクトル(拡散反射法)から、シリカ粒子の表面の孤立シラノール基に帰属される3740cm−1のピークが未処理のものと比較して減少し、1300から3000cm−1に高分子鎖に起因していると思われる新たなピークが発現していることが確認できた。
【0060】
得られたにカチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末(D)を表1に示す配合量になるように、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シランカップリング剤(KBE−846、信越化学工業社製)、パラフィンワックス、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤(ノクラック6C、大内新興化学工業社製)、加硫促進剤(ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製)および硫黄を添加し、6インチのオープンロールを用いて混練し、ゴム組成物(D)を得た。このゴム組成物(D)を160℃で15分間プレス加硫して試験片を作製し各物性を測定した。混練時の作業性および物性測定結果を表2に示す。
【0061】
比較例1
実施例1で得られたシリカ湿ケークおよび純水を混合し、ホモジナイザーを用いて粉砕、pH6のシリカ水性懸濁液を得た。該水性懸濁液中のシリカ濃度は13%になるように調製した。得られた混合液を噴霧乾燥装置にて、入り口温度250℃、出口温度120℃になるように混合液の供給量を調整しながら乾燥し、シリカ粉末(F)を得た。シリカ粉末(F)の比表面積は188m2/g、ゼータ(ζ)電位は−30ミリボルトであった。
【0062】
得られたシリカ粉末(F)を表1に示す配合量になるように、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シランカップリング剤(KBE−846、信越化学工業社製)、パラフィンワックス、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤(ノクラック6C、大内新興化学工業社製)、加硫促進剤(ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製)および硫黄を添加し、6インチのオープンロールを用いて混練し、ゴム組成物(F)を得た。このゴム組成物(F)を160℃で15分間プレス加硫して試験片を作製し、各物性を測定した。混練時の作業性および物性測定結果を表3に示す。
【0063】
比較例2
実施例4で得られたシリカ湿ケークおよび純水を混合し、ホモジナイザーを用いて粉砕、pH6のシリカの水性懸濁液を得た。該水性懸濁液中のシリカ濃度は13%になるように調製した。得られた混合液を噴霧乾燥装置にて、入り口温度250℃、出口温度120℃になるように混合液の供給量を調整しながら乾燥し、シリカ粉末(G)を得た。シリカ粉末(G)の比表面積は121m2/g、ゼータ(ζ)電位は−26ミリボルトであった。
【0064】
得られたシリカ粉末(G)を表1に示す配合量になるように、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シランカップリング剤(KBE−846、信越化学工業社製)、パラフィンワックス、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤(ノクラック6C、大内新興化学工業社製)、加硫促進剤(ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製)および硫黄を添加し、6インチのオープンロールを用いて混練し、ゴム組成物(G)を得た。このゴム組成物(G)を160℃で15分間プレス加硫して試験片を作製し、各物性を測定した。混練時の作業性および物性測定結果を表3に示す。
【0065】
比較例3
実施例1で得られたシリカ湿ケーク、および純水を混合し、ホモジナイザーを用いて粉砕、pH6のシリカ水性懸濁液を得た。該水性懸濁液中のシリカ濃度は13%になるように調製した。次いで、得られた水性懸濁液のpHを8.5に保ちながら、ジメチルジクロルシランを添加し2時間攪拌した。ジメチルジクロルシランはシリカ100重量部に対して20重量部になるように調製した。得られた混合液を噴霧乾燥装置にて、入り口温度250℃、出口温度120℃になるように混合液の供給量を調整しながら乾燥し、有機珪素化合物で表面処理されたシリカ粉末(H)を得た。シリカ粉末(H)の比表面積は140m2/g、ゼータ(ζ)電位は−10ミリボルトであった。また、シリカ粉末(H)の赤外吸収スペクトル(拡散反射法)から、シリカ粒子の表面の孤立シラノール基に帰属される3740cm−1のピークが存在していないことが確認できた。
【0066】
得られたシリカ粉末(H)を表1に示す配合量になるように、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シランカップリング剤(KBE−846、信越化学工業社製)、パラフィンワックス、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤(ノクラック6C、大内新興化学工業社製)、加硫促進剤(ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製)および硫黄を添加し、6インチのオープンロールを用いて混練し、ゴム組成物(H)を得た。このゴム組成物(H)を160℃で15分間プレス加硫して試験片を作製し、各物性を測定した。混練時の作業性および物性測定結果を表3に示す。
【0067】
【表1】
【表2】
【表3】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明のカチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末は、ゴム中への分散が容易となり、少量のシランカップリング剤の配合により、従来のゴム用充填材では達成することができなかった、高い耐摩耗性、引張強度、モジュラス等の効果を付与することができる。
【0068】
その結果、耐摩耗性や引張強度の不足が問題とされていたタイヤ等の用途において有効である。また、沈降シリカを用いる場合、シリカ粒子へのカチオン性高分子の処理は、通常の沈降シリカの製造工程中に組み入れることも可能であるため、大量生産も容易であり、その実用的価値は極めて高い。
Claims (3)
- カチオン性高分子で表面処理されたシリカ粉末よりなるゴム用充填材をゴムにロール又はバンバリーミキサーにて混練して充填することを特徴とするシリカ充填ゴムの製造方法。
- シリカが沈降シリカである請求項1記載のシリカ充填ゴムの製造方法。
- ゴム用充填材が、カチオン性高分子をシリカ粉末100重量部に対して0.5〜20重量部の割合で存在せしめたものである請求項1または2記載のシリカ充填ゴムの製造方法。
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