JP2009039104A - 抗酸菌属細菌の検出用オリゴヌクレオチドおよびその用途 - Google Patents

抗酸菌属細菌の検出用オリゴヌクレオチドおよびその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】臨床診断上重要な抗酸菌属細菌について迅速、確実かつ簡便に検出または菌種同定する方法を提供する。
【解決手段】抗酸菌属細菌のdnaJ1遺伝子において菌種特異性が極めて高い領域を標的核酸とするプローブを用いた融解曲線解析を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は臨床診断上、トリ型結核菌(Mycobacterium avium)またはマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacteriumintracellulare)を迅速、確実かつ簡便に検出するためのオリゴヌクレオチド、該オリゴヌクレオチドを利用する抗酸菌属細菌の検出方法ならびにそれらの試薬に関する。
抗酸菌属は抗酸性の性質をもつグラム陽性桿菌であり、結核菌やらい菌など、重篤な病変を引き起こす病原菌が多い。一般に抗酸菌は発育が遅く、培養にはかなりの時間を要する。
この中でもヒト型結核菌はヒトに結核を起こす病原体であり、その検査は臨床上、極めて重要である。ヒト型結核菌が起因となる病変には肺結核が圧倒的に多いが、ほとんど全ての臓器に結核性病変を起こし、結核性胸膜炎、結核性髄膜炎、カリエス、腸結核、腎結核、関節結核などを起こす。感染源は患者であり、飛沫感染などによって経気道的に感染する。
従来、結核菌の検査は培養法によって行っていた。一般的には小川培地上で結核菌を分離培養し、培地上の性状(増殖速度・温度、コロニーの形状や色素産生など)、ナイアシンテスト、硝酸還元試験、耐熱カタラーゼ試験、ツイーン80水解試験などの結果から菌種を同定する。しかし、ヒト型結核菌は増殖が遅く、分離培養だけで約3〜4週間を要し、その後の各種試験で、さらに約2〜3週間を要する。そのため、ヒト型結核菌の検出または同定検査は、その臨床上の重要性・緊急性にもかかわらず、約1ヶ月以上を要し、機動的な診断や投薬に大きな制約となっていた。ヒト型結核菌が産生するタンパク質を抗原抗体反応で検出する方法などが開発されてきたが、未だ十分な菌種同定を行うまでに至っておらず、しかも、感度的に問題があるため分離培養が必要なことは変わりがなかった。
ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の他にも、トリ型結核菌(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacteriumintracellulare)、マイコバクテリウム・カンサシイ(Mycobacterium kansasii)、マイコバクテリウム・スクロフラセウム(Mycobacterium scrofulaceum)、マイコバクテリウム・フォーチュイタム(Mycobacterium fortuitum)などの非定型抗酸菌が、ヒトに病原性を示すことが知られている。症状は結核に比べて軽く、感染力も弱いが、抗結核剤に耐性であり、有効な薬剤はない。これらは結核菌と同様に、ヒトの肺、リンパ節、皮膚などを冒し、特に肺感染症が多い。
一般に、肺結核の鑑別は、臨床症状、病理組織学的所見からは極めて困難であるため、菌の同定によってなされなければならない。非定型抗酸菌の病原性はマイコバクテリウム・カンサシイ(Mycobacterium kansasii)>トリ型結核菌(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)>その他の順で大きく、上位3菌種は特に重要である。
従来から、これらの非定型抗酸菌をヒト結核菌と同様、小川培地上で分離培養し、培地上の性状(増殖速度・温度、コロニーの形状や色素産生など)、ナイアシンテスト、硝酸還元試験、耐熱カタラーゼ試験、ツイーン80水解試験、光発光テストなどの結果から菌種を同定している。しかし、これらも一般的に増殖が遅く、菌種の同定までに約1ヶ月以上を要することが多い。
ヒト型結核菌と非定型抗酸菌の同定は、臨床上、極めて重要である。ヒト型結核菌は病状が重篤であるが、ストレプトマイシン、リファンピシン、エタンブトール、イソニコチン酸ヒドラジドなどの抗結核剤投与が有効なため、早期に治療を開始する必要がある。一方、非定型抗酸菌は一般にこれらの薬剤に対して耐性である。菌種の同定は、その後の治療方針を大きく左右するのである。しかしながら前述したように、これらの菌は増殖が遅く、菌種同定には数週間を要する。また、マイコバクテリウム・スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)など、類似の非病原性菌が検出されることもある。迅速で確実な検出及び菌種同定法が望まれるのはこのためである。
最近、DNAやRNAを人為的に増幅し、増幅後の核酸を検出することによって、高感度に病原体を検出する方法が開発されてきた。既に知られている核酸増幅方法としてPCR(特許文献1、特許文献2、特許文献3)、NASBA(非特許文献1)、LCR(特許文献4、特許文献5)、SDA(非特許文献2)、RCR(特許文献6)、TMA(非特許文献3)LAMP(非特許文献4)、ICAN(非特許文献5)などが挙げられる。
なかでもPCR法は、標的核酸、4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸、一対のオリゴヌクレオチドプライマー、および耐熱性DNAポリメラーゼの存在下で、温度の上昇および下降を繰り返すことにより、当該一対のオリゴヌクレオチドプライマーで挟まれる標的核酸の特定領域を指数関数的に増幅させることができる。
通常PCR法は特許文献3に示されているように、a)90〜105℃の範囲内の温度(好ましくは90〜100℃)で0.5〜5分間(好ましくは0.5〜3分間)、変性させる工程、b)35〜65℃の範囲内の温度(好ましくは37〜60℃)で0.5〜5分間(好ましくは1〜3分間)、プライマーと鋳型のハイブリッドを形成させる(アニーリング)工程、およびc)40〜80℃の範囲内の温度(好ましくは50〜75℃)で0.5〜40分間(好ましくは1〜3分間)、プライマー伸長生成物を形成させる(伸長)工程、からなる増幅サイクルを用いる。
PCR法のサイクルを繰り返し行うことで増幅した核酸断片は、各種の検出方法を用いて検出できるようになる。現在利用されている代表的な検出方法として、アガロースゲル電気泳動法がある。しかしながら、電気泳動による検出では指数関数的に増幅された標的核酸の増幅産物を取り扱う必要があり、コンタミネーションが起こる危険性が高かった。また、操作も煩雑であり検出終了までの時間も1時間以上を要するため、当該検出方法の臨床診断への適用は困難であった。
電気泳動以外の検出方法として、二本鎖核酸に結合した時に蛍光が増強される性質を示すDNA挿入色素(インターカレーター)を利用する方法が一般的に用いられている。核酸増幅中のDNA濃度の上昇に伴う蛍光の増強は、反応の進行を測定するために、また標的核酸分子のコピー数を決定するために利用できる。さらに、精密に制御された温度変化に伴う蛍光の変化をモニターすることにより、例えばPCRサイクル反応の終了時点で、DNA融解曲線を作成することができる。このような融解曲線解析では二本鎖核酸の性質をある程度識別することができ、融解曲線解析での融解温度が極端に低い場合はプライマーダイマーなど、標的核酸断片より短い核酸断片が増幅されたことが考えられるし、主なピークが一本でない場合は標的核酸断片ではない非特異的な増幅核酸断片が存在することを示している。このように、蛍光を測定する方法によれば、増幅核酸断片の飛散などによりコンタミネーションが起こり正しい判定結果が得られなくなる危険性や、煩雑な操作から起こり得る人為的なミスを防止することができるため、臨床診断に適している。しかし、一般的なインターカレーター法は二本鎖核酸特異的に蛍光が生じるため、特に臨床診断など、目的の核酸配列に特異的な検出が必要とされる場合には、当該核酸配列に非特異的な二本鎖核酸をも検出する可能性があるため、それほど有効ではない。
核酸配列特異的プローブ法は、増幅反応の進行をモニターするために、さらなる核酸反応成分(核酸プローブ)を利用する。この方法は、検出の基本として蛍光エネルギー転移(FET)を利用することが多い。一つあるいはそれ以上の核酸プローブを蛍光色素で標識し、一方のプローブに標識された蛍光色素はエネルギー供与体分子として、もう一方の蛍光色素はエネルギー受容体分子として働くことができるようにする。これらは時として、それぞれレポーター分子および消光分子として知られる。エネルギー供与体分子は励起スペクトラム範囲の特異的波長の光で励起され、引き続いて蛍光放出波長の範囲で光を放出する。エネルギー受容体分子も、様々な距離依存性エネルギー転移機構により、当該供与体分子からエネルギーを受け取ることにより、この波長で励起される。蛍光エネルギー転移の特別な例には、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)がある。一般に、エネルギー受容体分子とエネルギー供与体分子が近接している場合、例えば、これらが同じまたは隣接する分子上にある場合に、受容体分子は供与体分子の放出エネルギーを受け取ることができる。通常、FETまたはFRETプローブには二つの種類、すなわち、エネルギー受容体からエネルギー供与体を分離するために核酸プローブの加水分解を用いるものと、供与体分子と受容体分子の空間的関係を変化させるためにハイブリダイゼーションを用いるものが利用される。
加水分解を用いるプローブは、TaqMan(登録商標)プローブとして市販されている。このプローブは、エネルギー供与体およびエネルギー受容体分子で標識されたオリゴヌクレオチドからなり、増幅核酸断片の一方の鎖の特異的領域にハイブリダイズするように設計される。例えばPCRにおいて、プライマーがこの鎖にアニールした後、Taqポリメラーゼが5’から3’へのポリメラーゼ活性によりDNAを伸長する。このときTaqMan(登録商標)プローブは、Taqによる伸長の開始を防ぐために、3’末端がリン酸化で保護されている。もしTaqMan(登録商標)プローブが産物の鎖にハイブリダイズしていれば、伸長するTaq分子がプローブを加水分解し、エネルギー受容体とエネルギー供与体を遊離し、検出可能なシグナルが発生する。このシグナルは累積的であり、遊離のエネルギー供与体および受容体分子の濃度は増幅反応の各サイクルで上昇する。しかし、蛍光シグナルの生成がプローブの加水分解反応の発生に依存するため、この方法には時間的不利益が存在する。また、50サイクル以上というような多数回の増幅サイクルが必要な場合、加水分解が非特異的に起こり得る問題点も見出されている。
ハイブリダイゼーションを用いるプローブは、数多くの型式のものが利用可能である。例えば、分子ビーコンは、ヘアピンループを形成するような相補的な5’および3’配列を有するオリゴヌクレオチドであり、その末端に標識された蛍光色素は、ヘアピン構造が形成されるためにFRETが起こるような近接位置にある。分子ビーコンの標的核酸配列へのハイブリダイゼーションに伴ってエネルギー受容体とエネルギー供与体が分離されるとFRETは起こらなくなることを利用して、検出を行う。
また、標識プローブの対合も利用可能である。エネルギー供与体分子を標識したプローブとエネルギー受容体分子を標識したプローブが増幅核酸断片の鎖上で近接してハイブリダイズすることによってFRETが生じ、このFRETによって生じた波長の蛍光を検出する。このタイプの変種には、標識増幅プライマーと単一の近接する標識プローブの利用が含まれる。しかし、二つの標識オリゴヌクレオチドの使用、または二つの標識分子を含む分子ビーコンの使用は、一般に検出にかかるコストが高いことが問題である。さらに、例えば臨床診断において複数の病原体について菌種を同定しようとする場合には、複数のエネルギー受容体およびエネルギー供与体のペアと、それらから発せられる複数の波長の蛍光シグナルを検出する装置とが必要であり、非常に高価なシステムと複雑な試薬設計を強いられることが問題である。前述のように、ヒト型結核菌と非定型抗酸菌の同定は臨床診断上重要であり、迅速で確実な検出および菌種同定法が望まれているが、これらの技術では要望を満たすことができない。
特許文献7では、DNA二本鎖結合剤と、DNA二本鎖結合剤から蛍光エネルギーを吸収できるあるいは蛍光エネルギーを与えることができる反応性分子を含む核酸プローブを利用し、標的核酸の増幅反応を経て、蛍光をモニターする検出方法が開示されている。当該検出方法では標識オリゴヌクレオチドが一つで良いためコストの面で有利であるが、特許文献7に開示された技術を用いても、上述のような、臨床診断において複数の病原体について菌種を同定しようとする場合に、複数のエネルギー受容体およびエネルギー供与体のペアと、それらから発せられる複数の波長の蛍光シグナルを検出する装置とが必要であり、非常に高価なシステムと複雑な試薬設計を強いられる問題は解決されていない。
特許文献8では、ハイブリダイゼーションの際に蛍光が消光する核酸プローブを用いた検出方法が開示されている。蛍光色素で標識された核酸プローブを標的核酸にハイブリダイズさせ、当該ハイブリダイゼーションの前後において蛍光色素が発する蛍光の減少量を測定する方法、または蛍光色素で標識された核酸プライマーを標的核酸にハイブリダイゼーションさせた後に伸長させ、核酸変性時の蛍光量に対するアニーリング反応および伸長反応時の蛍光量の減少を測定する方法が示されている。さらに当該方法を用いたリアルタイム定量的PCR法、および該PCR法で得られるデータの解析の際にアニーリング反応時の蛍光強度値を変性反応時のもので補正する過程を有するデータ解析法が記載されている。当該検出方法では標識オリゴヌクレオチドが一つで良く、さらにインターカレーターも使用しないためコストの面で有利であるが、特許文献8に開示された技術を用いても、臨床診断において複数の病原体について菌種を同定しようとする場合には、複数の蛍光色素と、それらから発せられる複数の波長の蛍光シグナルを検出する装置とが必要であり、上述のような非常に高価なシステムと複雑な試薬設計を強いられる問題は解決されていない。
米国特許第4,683,195号 米国特許第4,683,202号 米国特許第4,965,188号 国際公開89/12696号 特開平2−2934号 国際公開90/1069号公報 特表2003−500001 特許第3437816号 Nucleic acid sequence−basedamplification method;Nature 第350巻、第91頁(1991) Strand Displacement Amplification:Nucleic acid research 第20巻、第1691頁(1992) Transcription mediated amplification method;J.Clin.Microbiol. 第31巻、第3270頁(1993) Loop−mediated isothermal amplification method :J Clin Microbiol. 2004 第42巻:第1,956頁 Isothermal and chimeric primer−initiated amplification of nucleic acids: Kekkaku. 2003 第78巻、第533頁
前述のように、電気泳動による検出では指数関数的に増幅された標的核酸の増幅産物を取り扱うことから、コンタミネーションが起こり、正しい判定結果が得られなくなる危険性があるため臨床診断には適していない。
また、インターカレーターを用いる方法ではコンタミネーションの可能性は低減されるが、二本鎖核酸特異的に蛍光が生じるため、標的核酸配列に非特異的な二本鎖核酸をも検出し、正しい判定結果が得られなくなる危険性があるため臨床診断には適していない。
核酸配列特異的なプローブを用いる方法では、上述したような判定結果の正確性に関する問題点はある程度改善されているが、例えばヒト型結核菌と非定型抗酸菌の同定など、臨床診断上重要である複数の病原体について菌種を同定しようとする場合には、複数の蛍光色素と、それらから発せられる複数の波長の蛍光シグナルを検出する装置とが必要であり、非常に高価なシステムと複雑な試薬設計を強いられるため臨床診断には適していない。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、臨床診断上重要な抗酸菌属細菌を迅速、確実かつ簡便に検出または菌種同定するためのオリゴヌクレオチド、該オリゴヌクレオチドを利用する抗酸菌属細菌の検出方法ならびにそれらの試薬を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ヒト型結核菌をはじめとする抗酸菌属細菌のdnaJ1遺伝子における特定領域の菌種特異性が高く、当該遺伝子領域を標的核酸とするプローブを用いることにより、トリ型結核菌(Mycobacterium avium)またはマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacteriumintracellulare)について非常に正確に検出または菌種同定できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
[項1]
配列番号1または2に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した10塩基よりなる核酸配列を含有することを特徴とするオリゴヌクレオチド。
[項2]
少なくとも以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とするトリ型結核菌(Mycobacterium avium)またはマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacteriumintracellulare)の検出方法。
(1)少なくとも1種類のオリゴヌクレオチドプライマー(A)と、該プライマー(A)の伸長産物の一部と相補的な少なくとも1種類のオリゴヌクレオチドプライマー(B)と、を用いて配列番号1または2に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列と90%以上一致する核酸配列を含む核酸断片を増幅する第一工程、
(2)第一工程で得られうるプライマー(B)の伸長産物と、配列番号1または2に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち少なくとも連続した10塩基よりなる核酸配列を含有する少なくとも1種類の検出用オリゴヌクレオチドプローブ(Cm)と、をハイブリダイズさせ複合体(Pm)を形成せしめる第二工程、
(3)第二工程で得られうる該複合体(Pm)を検出する第三工程。
[項3]
(1)〜(3)の工程を密封状態のままで行うことを特徴とする項2に記載の検出方法。
[項4]
検出用オリゴヌクレオチドプローブ(Cm)が蛍光色素で標識されていることを特徴とする項2または3に記載の検出方法。
[項5]
複合体(Pm)の検出にIFP法を用いることを特徴とする項2〜4のいずれかに記載の検出方法。
[項6]
複合体(Pm)の検出にQ−Probe法を用いることを特徴とする項2〜4のいずれかに記載の検出方法。
[項7]
少なくとも以下の(1)および(2)を含むことを特徴とするトリ型結核菌(Mycobacterium avium)またはマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacteriumintracellulare)の検出キット。
(1)配列番号1または2に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列と90%以上一致する核酸配列を含む核酸断片を増幅することが可能なオリゴヌクレオチドプライマー(A)およびオリゴヌクレオチドプライマー(B)、
(2)配列番号1または2に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち少なくとも連続した10塩基よりなる核酸配列を含有する検出用オリゴヌクレオチドプローブ(Cm)。
本発明によれば、以上のように、臨床診断上重要な抗酸菌属細菌について迅速、確実かつ簡便に検出または菌種同定することが可能となる。具体的には、ヒト型結核菌をはじめとする抗酸菌属細菌のdnaJ1遺伝子において菌種特異性が極めて高い領域を標的核酸とするプローブを用いた融解曲線解析を行うことにより、トリ型結核菌(Mycobacterium avium)またはマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacteriumintracellulare)について非常に正確に検出または菌種同定できるという効果を奏する。
本明細書において「抗酸菌属細菌のdnaJ1遺伝子において菌種特異性が高い領域」とは、後述のPCR法を用いて、以下の配列を有する2種類のオリゴヌクレオチド、
5’−CTACAAGGAGCTGGGCGTCTCCTCTG−3’(配列番号3)
および
5’−CCCGAGGGAGCGCCGCGCAACCCGGCCTCGCCCTG−3’(配列番号4)
をプライマーとして使用した際に、増幅される抗酸菌属細菌の遺伝子領域に含まれる。当該増幅領域について、トリ型結核菌(Mycobacterium avium)は配列番号13に、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)は配列番号14に、マイコバクテリウム・カンサシイ(Mycobacterium kansasii)は配列番号15に、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は配列番号16に、それぞれ具体的な核酸配列を記載する。
また、上記の「抗酸菌属細菌のdnaJ1遺伝子において菌種特異性が高い領域」は、「領域Aおよび領域B」として後述するが、従来公知であるdnaJ遺伝子の部分配列(特許第2966478号、特許第3134940号、L Clin. Microbio1.第31巻446頁参照)より当該遺伝子の下流に位置し、従来技術において抗酸菌属細菌の検出および/または同定には使用されなかった領域である。
本発明の抗酸菌属細菌の検出方法は、上記のような抗酸菌属細菌のdnaJ1遺伝子において菌種特異性が高い領域を検出する検出工程を含んでいる。
上記検出工程は、抗酸菌属細菌のdnaJ1遺伝子において菌種特異性が高い領域の少なくとも一部をコードする核酸配列を増幅する増幅工程を含むことが好ましい。当該増幅工程では、試料中の全核酸配列中から増幅したい核酸配列(標的核酸)のみが、その固有の配列に対して相補性を有するプライマーを利用して増幅される。具体的に上記増幅工程では、一本鎖に変性させた抗酸菌属細菌の染色体またはその断片に、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)、DNAポリメラーゼおよび2種類以上のオリゴヌクレオチド(プライマー)等を作用させることによって、上記プライマー間の配列が増幅される。
上記増幅工程に用いられる具体的な核酸増幅方法としては特に限定されず、適宜公知の方法を用いることができる。例えば、上記核酸増幅方法としては、PCR、NASBA(Nucleic acid sequence−basedamplification method;Nature 第350巻、第91頁、1991年参照)、LCR(国際公開89/12696号、特開平2−2934号参照)、SDA(Strand Displacement Amplification:Nucleic Acids Res. 第20巻、第1691頁、1992年参照)、RCA(国際公開90/1069号参照)、TMA(Transcription mediated amplification method;J. Clin. Microbiol. 第31巻、第3270頁、1993年参照)、LAMP(Loop−mediated isothermal amplification method:J. Clin Microbiol. 第42巻:第1,956頁、2004年参照)、ICAN(isothermal and chimeric primer−initiated amplification of nucleic acids:Kekkaku. 第78巻、第533頁、2003年参照)などを挙げることができるが、これらに限定されない。上記核酸増幅方法を用いれば、従来では検出不可能であった、極めて微量(1分子でも可)の試料核酸をも検出することが可能であり、上記増幅工程に好適に用いることが可能である。
また、試料中の核酸量が少ない場合には、上記増幅工程に先立って、抗酸菌属細菌の染色体またはその断片を上記増幅工程と同じ方法によって増幅しておくことも可能である。
上記増幅工程において用いられる核酸増幅方法としては、上記方法の中でもPCR法を用いることが好ましい。PCR法は、試料核酸、一対のプライマー(AおよびB)、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸、および耐熱性DNAポリメラーゼの存在下で、変性工程、アニーリング工程、伸長反応の3工程からなる反応サイクルを繰り返すことによって、上記一対のプライマー(AおよびB)によって挟まれる試料核酸中の領域を、指数関数的に増幅させることができる。すなわち、変性工程にて試料核酸を変性し、続くアニーリング工程にて各プライマーと当該プライマーに相補的な試料核酸中の領域とをハイブリダイズさせ、続く伸長工程にて各プライマーを起点として、試料核酸に相補的なDNA鎖を伸長させる。この1サイクルによって、1本の二本鎖DNAが2本の二本鎖DNAに増幅される。従って、このサイクルをn回繰り返せば、理論上、上記一対のプライマー(AおよびB)で挟まれた試料DNAの領域は2のn乗倍に増幅される。
増幅工程に使用する一対のプライマー(AおよびB)としては、増幅された核酸断片に上記の抗酸菌属細菌のdnaJ1遺伝子において菌種特異性が高い領域を含んでいれば特に限定されないが、GC含量が65%以下の領域に設計することが好適である。より好適には、配列番号17(領域C)または配列番号18(領域D)または配列番号19(領域E)の核酸配列中または各配列に相補的な核酸配列中に設計できる。配列番号3及び配列番号4をプライマーとして使用した場合に増幅される核酸配列領域はGC含量が高い(約70%)。該領域中において、領域C、領域D、領域EはそれぞれGC含量が55.17%、57.89%、63.33%と比較的低い領域である。そのため、GC含量が高いことによるプライマーの非特異反応が起こりにくく、試料中の標的核酸を特異的に増幅することができる。
例えば、
プライマー(A)としては、
5’−ACGGCGCTGAGTTCAACCTCAACG−3’(配列番号5)
5’−CCAAGCGCAAGGAGTACGACGAA−3’(配列番号6)
プライマー(B)としては、
5’−GAACAAGCCACCGAACAAGTCACCGAT−3’(配列番号7)
5’−CGTCGAACATTTCGTTGAGGTTGAACT−3’(配列番号8)
5’−CAAGCCACCGAACAGGTCGCCGAT−3’(配列番号9)
のような配列を有するオリゴヌクレオチドを使用することができる。
少なくともプライマー(A)とプライマー(B)を用いて増幅させた核酸断片と配列番号1または2に示される核酸配列または該核酸配列に相補的な核酸配列が「90%以上一致する」とは、トリ型結核菌およびマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(以後、MACと略する)の株間で該核酸断片に変異が存在する場合の一致率を示している。MAC株間で変異が存在する場合でも、MAC以外の抗酸菌種と区別して、MACを特異的に検出できることを表している。好適には該一致率は90%以上である。より好適には95%以上であり、さらに好適には97%以上である。臨床分離されたヒト型結核菌及び非結核性抗酸菌35種の保有する核酸配列と配列番号1に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列との一致率を例として表1に示す。配列番号1と最も一致している菌種は マイコバクテリウム・マルモエンス(Mycobacterium malmoense)で、一致率88%である。MACと同属の抗酸菌種であっても一致率は90%に満たない。また、トリ型結核菌やマイコバクテリウム・イントラセルラーレ各40株の保有する核酸配列と、配列番号1または2に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列との一致率は、80株全て90%以上である。
本発明の抗酸菌属細菌の検出方法において、検出工程で使用する検出用オリゴヌクレオチドプローブについて説明する。本発明の抗酸菌属細菌のdnaJ1遺伝子において菌種特異性が高い領域は、図1に、一例としてヒト型結核菌をはじめとする4種類の抗酸菌属細菌についてdnaJ1遺伝子の部分配列を用いて示したように、領域Aおよび領域Bの2箇所があり、どちらの領域を用いても本発明の効果を得ることができる。なお、図1において、Maは配列番号13に記載のトリ型結核菌(Mycobacterium avium)に由来する核酸配列であり、Miは配列番号14に記載のマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)に由来する核酸配列であり、Mkは配列番号15に記載のマイコバクテリウム・カンサシイ(Mycobacterium kansasii)に由来する核酸配列であり、Mtは配列番号16に記載のヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に由来する核酸配列である。
臨床診断において、トリ型結核菌(Mycobacterium avium)およびマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacteriumintracellulare)は、トリ型結核菌複合体(Mycobacterium avium complex;MAC)として同様に扱われることが多い。トリ型結核菌またはマイコバクテリウム・イントラセルラーレ、すなわちMACを特異的に検出するための検出用オリゴヌクレオチドプローブ(Cm)としては、配列番号1(領域A)または配列番号2(領域B)に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち少なくとも連続した10塩基よりなる核酸配列を有していれば特に限定されない。連続した9塩基以下の核酸配列になると、オリゴヌクレオチドプローブ(Cm)の核酸配列がMAC以外の抗酸菌や他属の細菌の核酸配列に一致し、MACに特異的な検出ができなくなる。好適には、配列番号1(領域A)中の、5‘−TCAACGTCGG−3’(配列番号20)を少なくとも含む核酸配列または該配列に相補的な核酸配列を使用できる。好適には、配列番号2(領域B)中の、5‘−AGCGGCGGCA−3’(配列番号21)を少なくとも含む核酸配列または該配列に相補的な核酸配列を使用できる。配列番号20および配列番号21の核酸配列または該配列に相補的な核酸配列は抗酸菌属の種間において特に変異が多く存在する領域であるため、より特異的な検出が可能となる。さらに好適には、本明細書の実施例に記載のオリゴヌクレオチドを使用することができる。
本発明の抗酸菌属細菌の検出方法において、検出にIFP法やQ−Probe法など蛍光色素を用いる方法を用いれば、核酸増幅後の反応容器の蓋を開けることなく検出または菌種同定を行う、いわゆるホモジニアス検出が可能となり、臨床診断において致命的なコンタミネーションによる誤判定の危険性を抑制することができる。
ここで、図2を用いて、融解曲線解析の原理について説明する。図2は融解曲線解析の原理を模式的に示す図であり、(a)は検出にIFP法を用いる融解曲線解析の原理を示し、(b)は検出にQ−Probe法を用いる融解曲線解析の原理を示し、(c)は融解曲線解析で核酸増幅の結果を確認した結果の一例を示す。
図2(a)に示すように、IFP法では、特許文献7に記載のように、二本鎖核酸に結合する化合物(インターカレーター)と、当該化合物が当該二本鎖核酸に結合したときに、発する蛍光が変化する反応分子で標識したプローブとを用いる。つまり、二本鎖核酸が一本鎖核酸に解離した状態の当該反応分子が発する蛍光を検出してもよく、解離していない状態の当該反応分子が発する蛍光を検出してもよい。
インターカレーターは二本鎖核酸に特異的に結合し蛍光を発する物質であれば良く、SYBR Green I(商標)、LC Green I(商標)、LC Green Plus(商標)、エチジウムブロマイド、アクリジンオレンジ、チアゾールオレンジ、オキサゾールイエロー、ローダミン等があるがこの限りではない。[2−[N−[(3−dimethylaminopropyl)−N−propylamino]−4−[2,3−dihydro−3−methyl−(benzo−1,3−thiazol−2−yl)−methylidene]−1−phenyl−qunolinium]を用いても良い。
二本鎖核酸構造は、標的核酸中の塩基とその相補的な核酸配列中の塩基の間で起こる塩基対生成によって形成される。塩基対生成はC(シトシン)とG(グアニン)、A(アデニン)とT(チミン)またはA(アデニン)とU(ウラシル)の間で起こる水素結合により生じる。インターカレーターはこの二本鎖核酸構造を標的に結合し、蛍光を生じるようになる。
核酸プローブに標識する蛍光物質は、核酸増幅工程中分解もしくは減衰しなければよく、蛍光検出工程で検出できればよい。蛍光物質としてはFITC、6−FAM、HEX、TET、TAMRA、Texas Red(商標)、Cy3、Cy5、ローダミン等があるが、好ましくはFRETを生じる蛍光物質であり、より好ましくはインターカレーターと相互作用して特異的に検出できればよく、特に好ましい蛍光物質としてはTexas Red(商標)が挙げられるがこの限りではない。FRET現象を利用すれば、蛍光検出工程において核酸プローブの存在のみで発する蛍光が抑えられ、標的核酸とハイブリダイゼーションした核酸プローブの発する蛍光を特異的に検出することが可能となる。
本発明に用いられる、好ましいインターカレーターと核酸プローブに標識する蛍光物質の組み合わせは、(SYBR Green I(商標)とTexas Red(商標))、(LC Green I(商標)とTexas Red(商標))、(LC Green Plus(商標)とTexas Red(商標))または([2−[N−[(3−dimethylaminopropyl)−N− propylamino]−4−[2,3−dihydro−3−methyl−(benzo−1,3−thiazol−2−yl)−methylidene]−1−phenyl−qunolinium]とTexas Red(商標))である。
図2(b)に示すように、Q−Probe法では、特許文献8に記載のように、3’末端にC(シトシン)を有し、C(シトシン)とG(グアニン)とが水素結合したときに蛍光が消える蛍光色素で標識したプローブを用いる。核酸増幅後に温度を徐々に上昇させて、二本鎖核酸が一本鎖核酸に解離すると、消光していた蛍光色素が再度発光する。この蛍光を検出すれば、核酸増幅の確認を行うことができる。
標識プローブに標識する蛍光物質は、核酸増幅工程中分解もしくは蛍光が減衰してなくならなければよく、ハイブリダイゼーション時に消光を生じる蛍光物質であればよい。特に標識プローブの末端においてグアニンとシトシンの塩基対形成時に蛍光の消光を生じる蛍光物質が好ましい。具体的には、フルオロセインまたはその誘導体(例えばフルオロセインイソチオシアネート(FITC))、BODIRY(商標) シリーズ、ローダミンまたはその誘導体(例えば5−カルボキシローダミン6G(GR6G)やテトラメチルローダミン(TAMRA))などを使用できるが、BODIPYシリーズやCR6Gの使用が特に好ましい。蛍光色素のオリゴヌクレオチドへの結合方法は、通常の方法に従って行うことができる。蛍光色素の消光を利用すれば、インターカレーターなど二本鎖核酸構造への挿入色素を用いることなく、またFRET現象を起こす二種類のプローブを用いることなく、一種類の蛍光物質に標識されたプローブを用いて単純かつ特異的に標的核酸配列を検出することができる。標識プローブの塩基配列中の蛍光物質の標識位置は特に限定されないが、末端部に標識されていることが好ましく、末端に標識されていることがより好ましい。
標識プローブの塩基配列とそれに対し相補的な標的核酸の塩基配列の選択はハイブリダイゼーション時に蛍光の消光を生じるために重要である。標識プローブの塩基配列は標的核酸とのハイブリダイゼーション時に消光を生じる塩基配列であればよく、二本鎖核酸構造形成時に、蛍光物質が修飾されている標識プローブ末端部にG(グアニン)とC(シトシン)の対が少なくとも1つ以上存在するように設計すればよい。標識プローブの末端が標識されている場合は、その末端塩基がG(グアニン)もしくはC(シトシン)であること、または標識プローブの末端と塩基対を形成する標的核酸の塩基から1もしくは3塩基離れてG(グアニン)が存在するように標識プローブの塩基配列が設計されていることがより好ましい。標識プローブの末端が標識されており、かつ末端塩基がC(シトシン)であるように設計することがさらに好ましい。
図2(c)に示すように融解曲線解析の結果は、温度および蛍光強度の変化量によってアウトプットすればよい。図2(c)は縦軸を蛍光強度の変化量としている。これは、上述のIFP法では、二本鎖核酸が一本鎖核酸に解離した状態で、上記反応分子が発する蛍光を検出した場合を示す。また、Q−Probe法での蛍光色素の発光を検出した場合でもある。IFP法で、解離していない状態の上記反応分子が発する蛍光を検出する場合は、解離した状態で発する蛍光を検出した場合と比べて、蛍光強度の変化量の正負が反対になる。つまり、得られる表の形は、図2(c)に示す表の各線の形を、温度軸を対象に反転させた形となる。換言すれば、解離していない状態の上記反応分子が発する蛍光を検出して、縦軸を、蛍光強度の変化量のマイナスとすれば、図2(c)に示す表の各線の形と同じになる。
また、図2(c)では3通りの試料に対して核酸増幅を行なった結果を示している。つまり、形成される二本鎖核酸の配列によって解離する温度が異なるため、各線のピークを示す温度が異なることが試料中に含まれた核酸の塩基配列が異なっていたことを示している。実線及び破線の結果を示した試料には、それぞれ異なる塩基配列を有する標的核酸が、1種類ずつ含まれていたことを示す。一点鎖線の結果を示した試料には、実線及び破線の結果を示した試料に含まれていた標的核酸が共に含まれていたことを示す。このように融解曲線解析を行なうことで、核酸増幅による増幅及び試料中に含まれていた標的核酸の塩基配列すなわち抗酸菌属細菌の種類を判別することができる。
抗酸菌属細菌の検出には、16SリボゾームRNA(rRNA)遺伝子が従来より広く用いられてきた。しかし、16SrRNA遺伝子は菌種特異性が本発明のdnaJ1遺伝子領域に比べて低く、したがってプローブの菌種特異性が低いため検出の際に非特異的なシグナルが生成することが問題であった。換言すれば、本発明の抗酸菌属細菌の検出方法では、本発明のdnaJ1遺伝子領域の菌種特異性が高いため、当該遺伝子を標的とするプローブの菌種特異性も高く、正確に菌種の判別を行うことができる。
図3に本発明のdnaJ1遺伝子領域と16SrRNA遺伝子について、進化系統樹を示した。進化系統樹は菌種間で遺伝子配列に差異が生じる確率を示す指標であり、数値すなわち進化距離が大きいほど菌種間で遺伝子配列の差異が大きいことを表している。図3のように、本発明のdnaJ1遺伝子領域は、16SrRNA遺伝子に比べ、菌種による遺伝子配列の違いが約10倍高く、抗酸菌属細菌の菌種を同定するための遺伝子として優れていることが分かる。遺伝子の進化系統樹は、例えば遺伝子解析ソフトウェアGENETYX(株式会社ゼネティクス製)などを用いて、遺伝子配列より計算することができる。
また、本発明のdnaJ1遺伝子領域の進化距離は、従来公知であるdnaJ遺伝子の部分配列(特許第2540023号、特許第2966478号、特許第3134940号、特許第3151415号、特許第3360736号、特開2001−103986、J.Clin.Microbiol.第31巻446頁参照)より大きい。これは、本発明のdnaJ1遺伝子領域の菌種特異性が、従来公知のdnaJ遺伝子の部分配列より高く、抗酸菌属細菌の検出または菌種を同定するための遺伝子として優れていることを意味する。
特にMACを検出するための標的遺伝子としてdnaJ遺伝子は優れている。16SリボソームRNA遺伝子を用いて抗酸菌属細菌の検出を行った場合、例えば特許第2675723号に開示されているように、MACで総称されるトリ型結核菌とマイコバクテリウム・イントラセルラーレの2菌種は異なるプローブにより検出せざるを得なかった。本発明の配列番号3および配列番号4のプライマーを用いて増幅されるdnaJ1遺伝子領域はMACに含まれる菌種間の一致率が90%以上であり、かつMACに含まれない抗酸菌種との一致率は90%未満であるという特徴がある。そのためMACとMAC以外の抗酸菌種を明確に分けることができる。さらに領域を特定すればトリ型結核菌とマイコバクテリウム・イントラセルラーレの2菌種をMACとして同時に検出するためのプローブが設計できる。つまり1種類のプローブによりMACを特異的に検出することが可能となる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
〔実施例1:Q−Probe法を用いたMACの検出〕
(1)試料の調製
4種類の抗酸菌属細菌、すなわち、ヒト型結核菌、トリ型結核菌、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ、マイコバクテリウム・カンサシイより、それぞれフェノール・クロロフォルム法を用いて抽出したDNAを試料とした。陰性コントロールとしては、水を試料とした。
(2)プライマーおよび標識プローブの合成
パーキンエルマー社製DNAシンセサイザー392型を用いて、ホスホアミダイト法にて、配列番号10〜12に示される核酸配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、オリゴ10〜12と示す)を合成した。合成はマニュアルに従い、各種オリゴヌクレオチドの脱保護はアンモニア水で55℃、一夜実施した。オリゴヌクレオチドの精製はパーキンエルマー社OPCカラムにて実施した。もしくはDNA合成受託会社((株)日本バイオサービス、シグマアルドリッチジャパン(株)、オペロンバイオテクノロジー(株)など)に依頼した。オリゴ10がプライマー(A)であり、オリゴ11がプライマー(B)であり、オリゴ12がプローブ(Cm)である。オリゴ12は5’末端がBODIPY−FLにより標識され、3’末端がリン酸化されている。
(3)核酸増幅および融解曲線解析
4種類の抗酸菌属細菌DNAおよび陰性コントロールにそれぞれ下記試薬を添加して、下記条件によりヒト型結核菌を検出した。核酸増幅および融解曲線解析にはロシュ・ダイアグノスティック社製ライトサイクラー(登録商標)を使用した。測定モードは530nmを利用し、ライトサイクラーソフトウェアにより結果を解析した。
試薬
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ10 250nM、
オリゴ11 1500nM、
オリゴ12(5’末端をBODIPY−FL標識) 250nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO 4mM、
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.2U、
抽出DNA溶液 20ng
核酸増幅増幅および融解曲線解析条件
94℃・2分
98℃・0秒、
63℃・5秒、(50サイクル)
94℃・1分、
40℃・1分、
40℃〜75℃(0.5℃/秒で温度上昇)。
(4)結果
図4は、ライトサイクラーソフトウェアの解析により、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。図4より明らかなように、トリ型結核菌(MA)およびマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(MI)、すなわちMACのDNAを試料とした場合にのみ明瞭なピークが観察され、ヒト型結核菌(MT)、マイコバクテリウム・カンサシイ(MK)それぞれのDNAを試料とした場合には陰性コントロール(NC)と同様にピークが得られなかった。これは、プローブ(Cm)の特異性が非常に高いことを示しており、プローブ(Cm)を用いることでMACを特異的に検出できることを示している。
〔実施例2:Q−Probe法を用いたマイコバクテリウム・カンサシイの検出2〕
(1)試料の調製
実施例1と同様に調製した4種類の抗酸菌属細菌のDNAを試料とした。陰性コントロールとしては、水を試料とした。
(2)プライマーおよび標識プローブの合成
実施例1同様に、配列番号23〜25に示される核酸配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、オリゴ23〜25と示す)を合成した。オリゴ23〜25はプローブであり、オリゴ23は3’末端がBODIPY−FLにより標識され、オリゴ24、25は5’末端がBODIPY−FLにより標識されている。
(3)核酸増幅および融解曲線解析
4種類の抗酸菌属細菌DNAおよび陰性コントロールにそれぞれ下記試薬を添加して、下記条件によりMACを検出した。核酸増幅および融解曲線解析にはロシュ・ダイアグノスティック社製ライトサイクラー(登録商標)を使用した。測定モードは530nmを利用し、ライトサイクラーソフトウェアにより結果を解析した。
試薬1
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ10 1500nM、
オリゴ11 250nM、
オリゴ23、24(BODIPY−FL標識) 250nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO 4mM、
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.2U、
抽出DNA溶液 20ng
試薬2
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ10 250nM、
オリゴ11 1500nM、
オリゴ25(BODIPY−FL標識) 250nM、
×10緩衝液 1μL
核酸増幅および融解曲線解析条件
実施例1と同様の条件を使用した。
(4)結果2
図5〜7は、図4のオリゴ12にかえてオリゴ23〜25を用いて検出した結果を表した図である。図4〜7より明らかなように、配列番号1(領域A)に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち少なくとも連続した10塩基よりなる核酸配列を有していれば、MACのDNAを試料とした場合に特異的なピークが観察される。さらに配列番号1(領域A)中の、5‘−TCAACGTCGG−3’(配列番号20)を少なくとも含む標識プローブのオリゴ23,24ではMACに属するMAおよびMIともMACに特異的な同一の検出ピークが得られている。しかし、5‘−TCAACGTCGG−3’の配列を完全に含まない配列を持つオリゴ25を使用した場合(図7)では、MAとMIの塩基配列に一塩基の変異が含まれるため、検出ピークがMAで64℃、MIで59℃とずれが生じている。配列番号1(領域A)中の、5‘−TCAACGTCGG−3’は、MACの検出の際には、より有用な配列であることがわかる。
〔実施例3:Q−Probe法を用いたMACの検出3〕
(1)試料の調製
実施例1と同様に調製した4種類の抗酸菌属細菌のDNAを試料とした。陰性コントロールとしては、水を試料とした。
(2)プライマーおよび標識プローブの合成
実施例1同様に、配列番号22、26に示される核酸配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、オリゴ22、26と示す)を合成した。オリゴ22はプライマー(B)である。オリゴ26はプローブであり、3’末端がBODIPY−FLにより標識されている。
(3)核酸増幅および融解曲線解析
4種類の抗酸菌属細菌DNAおよび陰性コントロールにそれぞれ下記試薬を添加して、下記条件によりMACを検出した。核酸増幅および融解曲線解析にはロシュ・ダイアグノスティック社製ライトサイクラー(登録商標)を使用した。測定モードは530nmを利用し、ライトサイクラーソフトウェアにより結果を解析した。
試薬
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ10 250nM、
オリゴ22 1500nM、
オリゴ26(BODIPY−FL標識) 250nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO 4mM、
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.2U、
抽出DNA溶液 20ng
核酸増幅および融解曲線解析条件
実施例1と同様の条件を使用した。
(4)結果2
図8は、図4のオリゴ12にかえてオリゴ26を用いて検出した結果を表した図である。図8より明らかなように、配列番号2(領域B)に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち少なくとも連続した10塩基よりなる核酸配列を有していれば、MACのDNAを試料とした場合に特異的なピークが観察される。加えて、オリゴ26は配列番号2(領域B)中の5‘−AGCGGCGGCA−3’(配列番号21)を少なくとも含む核酸配列を有する標識プローブであるため、MACに特異的な検出ピーク以外の非特異ピークは観察されなかった。
〔比較例1:Q−Probe法を用いたMACの検出4〕
(1)試料の調製
実施例1と同様に調製した4種類の抗酸菌属細菌のDNAを試料とした。陰性コントロールとしては、水を試料とした。
(2)プライマーおよび標識プローブの合成
実施例1同様に、配列番号27に示される核酸配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、オリゴ27と示す)を合成した。オリゴ27はプローブである。オリゴ27は5’末端がBODIPY−FLにより標識されている。
(3)核酸増幅および融解曲線解析
4種類の抗酸菌属細菌DNAおよび陰性コントロールにそれぞれ下記試薬を添加して、下記条件によりMKを検出した。核酸増幅および融解曲線解析にはロシュ・ダイアグノスティック社製ライトサイクラー(登録商標)を使用した。測定モードは530nmを利用し、ライトサイクラーソフトウェアにより結果を解析した。
試薬
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ10 1500nM、
オリゴ11 250nM、
オリゴ27(BODIPY−FL標識) 250nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO 4mM、
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.2U、
抽出DNA溶液 20ng
核酸増幅および融解曲線解析条件
実施例1と同様の条件を使用した。
(4)結果
図9は、図4のオリゴ12にかえて、オリゴ27を用いて検出した結果を表した図である。オリゴ27は領域Aまたは領域Bまたはそれらの相補的な核酸配列の連続した10塩基以上を含まれない核酸配列を有したプローブである。図9より明らかなように、オリゴ27を用いた場合ではMA、MI、MKのDNAを鋳型としたときに検出ピークが得られるが、MAとMIの検出ピークの間にMKの検出ピークが存在するため、MAC(MAとMI)に特異的な検出ピークは得られなかった。データには示さないが、オリゴ27の塩基配列はMAC株間で変異が存在する領域であるためトリ型結核菌種であってもMKと同一のピークを示す株や、イントラセルラーレ種であっても検出ピークが異なる株が存在する。つまり、MACに属する株の検出ピークが特定できない。オリゴ27の核酸配列は一例であるが、配列番号1または2に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列以外の核酸配列を標識プローブの核酸配列に用いると、他の抗酸菌種も同時に検出することによる偽陽性の可能性およびMAC株間で検出ピークが異なることによる偽陰性の可能性が高いことがわかる。
〔実施例4:Q−Probe法を用いたMACの検出5〕
(1)試料の調製
36種類の抗酸菌属細菌をそれぞれマクファランドNo.1の濃度となるようにTEバッファーに懸濁し、AMR社製MORA−EXTRACT用ビーズ充填チューブに入れた。チューブを95℃10分間加熱し、ボルテックスにより5分間菌体破砕処理を行った。その後破砕処理後の液を100倍希釈して菌体破砕液とし、これを試料とした。陰性コントロールとしては、水を試料とした。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
36種類の抗酸菌属細菌菌体破砕液および陰性コントロールにそれぞれ下記試薬を添加して、下記条件によりMACを検出した。核酸増幅および融解曲線解析にはロシュ・ダイアグノスティック社製ライトサイクラー(登録商標)を使用した。測定モードは530nmを利用し、ライトサイクラーソフトウェアにより結果を解析した。
試薬
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ10 250nM、
オリゴ11 1500nM、
オリゴ12(3’末端をBODIPY−FL標識) 250nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO 4mM、
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.2U、
菌体破砕液 1μL
核酸増幅および融解曲線解析条件
実施例1と同様の条件を使用した。
(3)結果
表2に36種類の抗酸菌属細菌の検出結果を示す。検出欄の「+」が検出可能な菌種。「−」が検出されない菌種を示す。MACの菌体破砕液を試料とした場合にのみ64℃における特異的な検出ピークが確認された。抗酸菌属であってもMACとは種の異なる34種類の抗酸菌属菌体破砕液を試料とした場合では陰性コントロール(NC)と同様に64℃の特異的な検出ピークが得られなかった。これは、プローブ(オリゴ12)の特異性が非常に高いことを示しており、プローブ(オリゴ12)を用いることでMACを特異的に検出できることを示している。
〔実施例5:Q−Probe法を用いたMACの検出6〕
(1)試料の調製
臨床分離されたMAC40株をそれぞれマクファランドNo.1の濃度となるようにTEバッファーに懸濁し、AMR社製MORA−EXTRACT用ビーズ充填チューブに入れた。チューブを95℃10分間加熱し、ボルテックスにより5分間菌体破砕処理を行った。その後破砕処理後の液を100倍希釈して菌体破砕液とし、これを試料とした。陰性コントロール(NC)としては、水を試料とした。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
臨床分離されたMAC40株の菌体破砕液および陰性コントロールにそれぞれ下記試薬を添加して、下記条件によりMACを検出した。核酸増幅および融解曲線解析にはロシュ・ダイアグノスティック社製ライトサイクラー(登録商標)を使用した。測定モードは530nmを利用し、ライトサイクラーソフトウェアにより結果を解析した。
試薬
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ10 1500nM、
オリゴ11 250nM、
オリゴ23(3’末端をBODIPY−FL標識) 250nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO 4mM、
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.2U、
菌体破砕液 1μL
核酸増幅および融解曲線解析条件
実施例1と同様の条件を使用した。
(3)結果
表3に臨床分離されたMAC40株の検出結果を示す。検出欄の「+」が検出可能な菌種。「−」が検出されない菌種を示す。表3の一致率(%)は配列番号13に示される塩基配列の塩基番号1〜340までの配列をMAC株間で比較した時の一致率を示している。MAC40株の菌体破砕液全てにおいて検出が確認された。この時の融解曲線解析の検出ピークは図5と同様のピークが得られた。領域A配列中の5‘−TCAACGTCGG−3’(配列番号20)を少なくとも含む標識プローブのオリゴ23を用いればMACを株間差なく検出できることを示している。プローブ(オリゴ23)のMACに対する特異性が非常に高いことを示しており、プローブ(オリゴ23)を用いることで株間差の大きいMACを特異的に検出できることを示している。
〔実施例6:IFP法を用いたMACの検出1〕
(1)試料の調製
実施例1と同様に調製した4種類の抗酸菌属細菌のDNAを試料とした。陰性コントロールとしては、水を試料とした。
(2)プライマー及び標識プローブの合成
実施例1同様に、配列番号28、29に示される核酸配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、オリゴ28、29と示す)を合成した。オリゴ28、29はプローブである。オリゴ28、29は5’末端および3‘末端がTexas Redにより標識されている。
(3)核酸増幅および融解曲線解析
4種類の抗酸菌属細菌DNAおよび陰性コントロールにそれぞれ下記試薬を添加して、下記条件によりMACを検出した。核酸増幅および融解曲線解析にはロシュ・ダイアグノスティック社製ライトサイクラー(登録商標)を使用した。測定モードは640nmを利用し、ライトサイクラーソフトウェアにより結果を解析した。
試薬1
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ10 1500nM、
オリゴ11 250nM、
オリゴ28(Texas Red標識)1000nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO 4mM、
SYBR Green I(商標)(インビトロジェン社製)1/20000
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.2U、
抽出DNA溶液 20ng
試薬2
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ10 250nM、
オリゴ11 1500nM、
オリゴ29(Texas Red標識) 1000nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO 4mM、
SYBR Green I(商標)(インビトロジェン社製)1/20000
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.2U、
抽出DNA溶液 20ng
核酸増幅および融解曲線解析条件
94℃・2分
98℃・0秒、
63℃・5秒、(50サイクル)
94℃・1分、
40℃・1分、
40℃〜75℃(0.5℃/秒で温度上昇)。
(4)結果
図10、11はライトサイクラーソフトウェアの解析により、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。図10にオリゴ28(領域Aに設計)、図11にオリゴ29(領域Bに設計)を用いた場合の検出結果を示す。図10、11に示すように、MAC(MA、MI)のDNAを試料とした場合にのみ明瞭なピークが観察され、ヒト型結核菌(MT)、マイコバクテリウム・カンサシイ(MK)それぞれのDNAを試料とした場合には陰性コントロール(NC)と同様にピークが得られなかった。これは、プローブ(オリゴ28,29)の特異性が非常に高いことを示しており、領域Aまたは領域Bに設計したプローブ(オリゴ28,29)を用いることでMACを特異的に検出できることを示している。
〔比較例2:IFP法を用いたMACの検出2〕
(1)試料の調製
実施例1と同様に調製した4種類の抗酸菌属細菌のDNAを試料とした。陰性コントロールとしては、水を試料とした。
(2)プライマー及び標識プローブの合成
実施例1同様に、配列番号30に示される核酸配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、オリゴ30と示す)を合成した。オリゴ30はプローブである。オリゴ30は5’末端および3‘末端がTexas Redにより標識されている。
(3)核酸増幅および融解曲線解析
実施例5と同じ条件を使用した。
試薬
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ10 1500nM、
オリゴ11 250nM、
オリゴ30(Texas Red標識) 1000nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO 4mM、
SYBR Green I(商標)(インビトロジェン社製)1/20000
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.2U、
抽出DNA溶液 20ng
核酸増幅および融解曲線解析条件
94℃・2分
98℃・0秒、
63℃・5秒、(50サイクル)
94℃・1分、
40℃・1分、
40℃〜75℃(0.5℃/秒で温度上昇)。
(4)結果
図12は、図10のオリゴ28にかえて、オリゴ30を用いて検出した結果を表した図である。オリゴ30は領域Aまたは領域Bまたはそれぞれの相補的な核酸配列に含まれない核酸配列を有したプローブである。図12より明らかなようにオリゴ30を用いた場合、MACに特異的な検出ピークが得られず、MACを検出できなかった。
本発明によれば、臨床診断上重要な抗酸菌属細菌について迅速、確実かつ簡便に検出または菌種同定することが可能となる。具体的には、ヒト型結核菌をはじめとする抗酸菌属細菌のdnaJ1遺伝子において菌種特異性が極めて高い領域を標的核酸とするプローブを用いた融解曲線解析を行うことにより、MACについて非常に正確に検出または菌種同定できるという効果を奏するため、産業界に大きく寄与することが期待される。
本発明の抗酸菌属細菌のdnaJ1遺伝子において菌種特異性が高い領域を示す図である。 融解曲線解析の原理を模式的に示す図である。 本発明のdnaJ1遺伝子領域と16SrRNA遺伝子について、進化系統樹を示す図である。 実施例1のオリゴ12を用いて検出した結果を示した図である。 実施例2のオリゴ23を用いて検出した結果を示した図である。 実施例2のオリゴ24を用いて検出した結果を示した図である。 実施例2のオリゴ25を用いて検出した結果を示した図である。 実施例3のオリゴ26を用いて検出した結果を示した図である。 比較例1のオリゴ27を用いて検出した結果を示した図である。 実施例5のオリゴ28を用いて検出した結果を示した図である。 実施例5のオリゴ29を用いて検出した結果を示した図である。 比較例2のオリゴ30を用いて検出した結果を示した図である。

Claims (7)

  1. 配列番号1または2に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち、少なくとも連続した10塩基よりなる核酸配列を含有することを特徴とするオリゴヌクレオチド。
  2. 少なくとも以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とするトリ型結核菌(Mycobacterium avium)またはマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacteriumintracellulare)の検出方法。
    (1)少なくとも1種類のオリゴヌクレオチドプライマー(A)と、該プライマー(A)の伸長産物の一部と相補的な少なくとも1種類のオリゴヌクレオチドプライマー(B)と、を用いて配列番号1または2に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列と90%以上一致する核酸配列を含む核酸断片を増幅する第一工程、
    (2)第一工程で得られうるプライマー(B)の伸長産物と、配列番号1または2に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち少なくとも連続した10塩基よりなる核酸配列を含有する少なくとも1種類の検出用オリゴヌクレオチドプローブ(Cm)と、をハイブリダイズさせ複合体(Pm)を形成せしめる第二工程、
    (3)第二工程で得られうる該複合体(Pm)を検出する第三工程。
  3. (1)〜(3)の工程を密封状態のままで行うことを特徴とする請求項2に記載の検出方法。
  4. 検出用オリゴヌクレオチドプローブ(Cm)が蛍光色素で標識されていることを特徴とする請求項2または3に記載の検出方法。
  5. 複合体(Pm)の検出にIFP法を用いることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の検出方法。
  6. 複合体(Pm)の検出にQ−Probe法を用いることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の検出方法。
  7. 少なくとも以下の(1)および(2)を含むことを特徴とするトリ型結核菌(Mycobacterium avium)またはマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacteriumintracellulare)の検出キット。
    (1)配列番号1または2に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列と90%以上一致する核酸配列を含む核酸断片を増幅することが可能なオリゴヌクレオチドプライマー(A)およびオリゴヌクレオチドプライマー(B)、
    (2)配列番号1または2に示される核酸配列または該配列に相補的な核酸配列のうち少なくとも連続した10塩基よりなる核酸配列を含有する検出用オリゴヌクレオチドプローブ(Cm)。
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