JP2009037236A - 液晶表示装置用偏光板、液晶表示装置用偏光板の製造方法、および、液晶表示装置 - Google Patents

液晶表示装置用偏光板、液晶表示装置用偏光板の製造方法、および、液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、光学特性の発現性に優れ、かつ、光学特性が損なわれることなく液晶セルと接着させることが可能な液晶表示装置用偏光板を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、セルロース誘導体からなる基材、および、上記基材上に直接形成され、上記セルロース誘導体と屈折率異方性を示す棒状化合物と含有する位相差層を有する位相差フィルムと、上記位相差フィルムの上記位相差層上に接着され、ポリビニルアルコールからなる偏光子と、上記偏光子上に接着された偏光板保護フィルムと、を有することを特徴とする液晶表示装置用偏光板を提供することにより、上記課題を解決するものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、主に液晶表示装置に用いられる偏光板、および、その製造方法に関するものである。
液晶表示装置は、その省電力、軽量、薄型等といった特徴を有することから、従来のCRTディスプレイに替わり、近年急速に普及している。一般的な液晶表示装置としては、例えば、図9に示すように、入射側の偏光板102Aと、出射側の偏光板102Bと、液晶セル101とを有するものが代表的である。ここで、偏光板102Aおよび102Bは、所定の振動方向の振動面を有する直線偏光のみを選択的に透過させるように構成されたものであり、それぞれの振動方向が相互に直角の関係になるようにクロスニコル状態で対向して配置されている。また、液晶セル101は画素に対応する多数のセルを含むものであり、偏光板102Aと102Bとの間に配置されている。
このような液晶表示装置は、上記液晶セルに用いられる液晶性材料の配列形態により種々の駆動方式を用いたものが知られている。今日、普及している液晶表示装置の主たるものは、TN、STN、VA、IPS、および、OCB等に分類される。なかでも今日においては、上記VA駆動方式を有するものが広く普及するに至っている。
一方、液晶表示装置はその特有の問題点として、液晶セルや偏光板の屈折率異方性に起因する視野角依存性の問題点がある。この視野角依存性の問題は、液晶表示装置を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合とで視認される画像の色味やコントラストが変化してしまう問題である。このような視野角特性の問題は、近年の液晶表示装置の大画面化に伴って、さらにその問題の重大性を増している。
このような視野角依存性の問題を改善するため、現在までに様々な技術が開発されている。その代表的な方法として位相差フィルムを用いる方法がある。この位相差フィルムを用いる方法は、例えば、図10に示すように所定の光学特性を有する位相差フィルム103、104を、液晶セル101と偏光板102Aおよび102Bとの間に配置することにより、視野角依存性の問題を改善する方法である。このような方法は位相差フィルム103を液晶表示装置に組み込むことのみで上記視野角依存性の問題点を改善できることから、簡便に視野角特性に優れた液晶表示装置を得ることが可能な方法として広く用いられるに至っている。
従来、このような位相差フィルムとしては、図11に示すように任意の基材105上に配向層106を設け、さらに当該配向層106上に液晶分子を有する位相差層107を形成し、上記配向層の配向規制力により上記液晶分子を配向させて所望の屈折率異方性を発現させる構成を有するもの一般的であった。このような位相差フィルムとしては、例えば特許文献1または特許文献2に開示されているような、コレステリック規則性の分子構造を有する位相差層(複屈折性を示す位相差層)が配向層を有する基材上に形成されたものや、例えば特許文献3開示されているような、円盤状化合物からなる位相差層(複屈折性を示す位相差層)が配向層を有する基材上に形成されたものが知られている。
しかしながら、このような構成を有する位相差フィルムは、液晶分子が用いられていることから位相差性の発現性に優れるという利点を有するものであったが、液晶表示装置に用いる場合に位相差性に変動が生じてしまうという問題点があった。すなわち、図11に示すような構成を有する位相差フィルムを液晶表示装置に用いる場合は、位相差フィルムを液晶セルおよび偏光板(あるいは偏光子)に接着剤を用いて接着することが必要になる。このため、液晶セルおよび偏光板(あるいは偏光子)と、位相差フィルムとを接着させるために粘着剤層を形成することが必須になるところ、液晶性材料等が含有される位相差層に粘着剤が付着すると、その影響で位相差層中の液晶分子の配列性が損なわれてしまい、位相差フィルムの光学特性が損なわれてしまうという問題点があった。
特開平3−67219号公報 特開平4−322223号公報 特開平10−312166号公報
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、光学特性の発現性に優れ、かつ、光学特性が損なわれることなく液晶セルと接着させることが可能な液晶表示装置用偏光板を提供することを主目的とするものである。
上記課題を解決するために本発明は、セルロース誘導体からなる基材、および、上記基材上に直接形成され、上記セルロース誘導体と屈折率異方性を示す棒状化合物とを含有する位相差層を有する位相差フィルムと、上記位相差フィルムの上記位相差層上に接着され、ポリビニルアルコールからなる偏光子と、上記偏光子上に接着された偏光板保護フィルムと、を有することを特徴とする液晶表示装置用偏光板を提供する。
本発明によれば、上記位相差フィルムの位相差層側に上記偏光子が接着されていることにより、本発明の液晶表示装置用偏光板を液晶セルに接着する際には、上記基材側が液晶セルに接着されることになる。このため、液晶セルと本発明の液晶表示装置用偏光板とを接着する際に粘着剤が用いられたとしても、当該接着剤の影響によって上記位相差層の光学特性が損なわれることがない。
また、本発明の液晶表示装置用偏光板は、上記位相差層にセルロース誘導体が含有されていることから、例えば、上記位相差層の表面をアルカリけん化処理して親水化することにより、上記位相差層と上記ポリビニルアルコールからなる偏光子とを粘着剤を用いることなく接着させることが可能になる。このため、本発明の液晶表示装置用偏光板は、その製造過程においても上記位相差層の光学特性が損なわれることを防止することができる。
このようなことから、本発明によれば光学特性の発現性に優れ、かつ、光学特性が損なわれることなく液晶セルと接着させることが可能な液晶表示装置用偏光板を得ることができる。
本発明においては、上記位相差フィルムと、上記偏光子との間に親水性接着剤からなる接着剤層が形成されていることが好ましい。これにより、上記位相差フィルムと上記偏光子とをより強固に接着させることがきるからである。また、親水性接着剤が用いられることにより、位相差フィルムの光学特性を損なうことなく、上記位相差フィルムと偏光子とを接着させることができるからである。
また本発明においては、上記位相差フィルムの上記基材上に、アクリル系粘着剤を含有する粘着剤層が形成されていてもよい。このような粘着剤層が形成されていることにより、本発明の液晶表示装置用偏光板を用いて液晶表示装置を作製する際に、本発明の液晶表示装置用偏光板を液晶セルに接着させることが容易になるからである。
さらに本発明においては、上記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成していることが好ましい。これにより本発明に用いられる位相差フィルムを、光学的に負のCプレートとしての性質を有するものとすることができ、本発明の液晶表示装置用位相差フィルムを光学特性の発現性により優れたものにできるからである。
本発明は、セルロース誘導体からなる基材を用い、上記基材上に屈折率異方性を示す棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を直接塗工して位相差層を形成することにより、上記基材と、上記基材上に形成され、上記セルロース誘導体および上記棒状化合物を含有する位相差層とを有する位相差フィルムを作製する位相差フィルム作製工程と、上記位相差フィルムの位相差層の表面を親水化する親水化処理工程と、親水化された上記位相差層上にポリビニルアルコールからなる偏光子を接着させる、偏光子接着工程と、を有することを特徴とする液晶表示装置用偏光板の製造方法を提供する。
本発明によれば、上記親水化処理工程において上記位相差層を親水化させた後、上記偏光子接着工程において、上記親水化された位相差層上に偏光子を接着させることにより、上記位相差層の光学特性を損なうことなく、上記位相差層上に偏光子を接着させることができる。また、本発明によって製造される液晶表示装置用偏光板を用いて液晶表示装置を作製する際には、上記位相差フィルムの基板と、液晶セルとを粘着剤によって接着させることになるため、光学特性を損なうことなく液晶表示装置用偏光板と液晶セルとを接着させることができる。
このようなことから、本発明によれば光学特性の発現性に優れ、かつ、光学特性が損なわれることなく液晶セルと接着させることが可能な液晶表示装置用偏光板を製造することができる。
本発明の液晶表示装置用偏光板の製造方法においては、上記親水化処理工程が、上記位相差層に含有される上記セルロース誘導体をアルカリけん化することにより、上記位相差層の表面を親水化するものであることが好ましい。これにより、上記親水化処理工程において、上記位相差層の光学特性を損なうことなく、位相差層の表面を親水化することができるからである。
また本発明は、液晶セルと、上記液晶セルの少なくとも片側に配置された、上記本発明に係る液晶表示装置用偏光板と、を有する液晶表示装置であって、上記液晶セルと、上記液晶表示装置用偏光板の基材とが粘着剤を含有する粘着剤層を介して接着されていることを特徴とする液晶表示装置を提供する。
本発明によれば、上記本発明に係る液晶表示装置用偏光板の基材側が、液晶セルと背着されていることにより、本発明の液晶表示装置を作製する際に上記位相差フィルムの光学特性を損なうことなく、液晶表示装置用偏光板と液晶セルとを接着させることができる。このため、本発明によれば、緻密に設計された位相差フィルムの光学特性を維持したまま、上記液晶表示装置用偏光板と、液晶セルとを接着させることができるため視野角特性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
本発明によれば、光学特性の発現性に優れ、かつ、光学特性が損なわれることなく液晶セルと接着させることが可能な液晶表示装置用偏光板を得ることができるという効果を奏する。
本発明は、液晶表示装置に用いられる液晶表示装置用偏光板と、液晶表示装置用偏光板の製造方法と、液晶表示装置に関するものである。
以下、これらについて順に説明する。
A.液晶表示装置用偏光板
まず、本発明の液晶表示装置用偏光板について説明する。上述したように本発明の液晶表示装置用偏光板は、セルロース誘導体からなる基材、および、上記基材上に形成され、上記セルロース誘導体と屈折率異方性を示す棒状化合物とを含有する位相差層を有する位相差フィルムと、上記位相差フィルムの上記位相差層上に接着され、ポリビニルアルコールからなる偏光子と、上記偏光子上に接着された偏光板保護フィルムと、を有することを特徴とするものである。
このような本発明の液晶表示装置用偏光板について図を参照しながら説明する。図1は本発明の液晶表示装置用偏光板の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように本発明の液晶表示装置用偏光板10は、偏光子1と、上記偏光子1の一方の面上に接着された位相差フィルム2と、上記偏光子1の他方の面上に接着された偏光板保護フィルム3とを有するものである。
このような例において、本発明の液晶表示装置用偏光板10は、上記位相差フィルム2が、セルロール誘導体からなる基材2aと、上記基材2a上にされ、基材2aを構成するセルロース誘導体および屈折率異方性を示す棒状化合物を含有する位相差層2bと、を有するものであり、上記位相差フィルム2の上記位相差層2b側が、上記偏光子1と接着されていることを特徴とするものである。
本発明によれば、上記位相差フィルムの位相差層側に上記偏光子が接着されていることにより、本発明の液晶表示装置用偏光板を液晶セルに接着する際には、上記基材側が液晶セルに接着されることになる。このため、液晶セルと本発明の液晶表示装置用偏光板とを接着する際に粘着剤が用いられたとしても、当該接着剤の影響によって上記位相差層の光学特性が損なわれることがない。
また、本発明の液晶表示装置用偏光板は、上記位相差層にセルロース誘導体が含有されていることから、例えば、上記位相差層の表面をアルカリけん化処理して親水化することにより、上記位相差層と上記ポリビニルアルコールからなる偏光子とを粘着剤を用いることなく接着させることが可能になる。このため、本発明の液晶表示装置用偏光板は、その製造過程においても上記位相差層の光学特性が損なわれることを防止することができる。
さらに、さらに本発明の液晶表示装置用偏光板は、上記位相差フィルムの位相差層側が上記偏光子と接着されていることから、上記位相差層の光学特性変動が少ないという利点も有する。
このようなことから、本発明によれば光学特性の発現性に優れ、かつ、光学特性が損なわれることなく液晶セルと接着させることが可能な液晶表示装置用偏光板を得ることができる。
本発明の液晶表示装置用偏光板は、少なくとも上記位相差フィルムと、上記偏光子と、上記偏光板保護フィルムとを有するものであり、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。
以下、本発明の液晶表示装置用偏光板に用いられる各構成について順に説明する。
1.位相差フィルム
まず、本発明に用いられる位相差フィルムについて説明する。本発明に用いられる位相差フィルムは、基材と、当該基材上に形成された位相差層と、を有するものである。
(1)位相差層
本発明に用いられる位相差層は、後述する基材上に直接形成され、当該基材を構成するセルロース誘導体および屈折率異方性を示す棒状化合物を含有するものである。
a.棒状化合物
本発明に用いられる棒状化合物としては、屈折率異方性を有するものであり、位相差層において配列されることにより、位相差層に所望の光学特性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。
ここで、上記「棒状化合物」とは、分子構造の主骨格が棒状となってものを意味するものとする。
ここで、本発明における「棒状化合物」とは、分子構造の主骨格が棒状となってものを指し、このような棒状の主骨格を有する化合物としては、例えば、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類を挙げることができる。また、以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
本発明においては、上記のいずれの分類に属する棒状化合物であっても好適に用いることができるが、なかでも2以上の複数のベンゼン環が結合された棒状の主骨格を有するものであることが好ましく、特に2以上の複数のベンゼン環が互いにエステル結合で結合された棒状の主骨格を有するものであることが好ましい。このような構造を有する棒状化合物は、分子内の屈折率異方性が大きいため、位相差層内で配列されることにより位相差層に、高い位相差性を付与することが可能になるからである。
本発明に用いられる棒状化合物は、分子量が比較的小さい化合物が好ましい。より具体的には、分子量が200〜1200の範囲内である化合物が好ましく、特に400〜1000の範囲内である化合物が好適に用いられる。その理由は次の通りである。すなわち、本発明に用いられる位相差層は、上記棒状化合物と、後述する基材を構成するセルロース誘導体とを含有するものであるが、上記棒状化合物として分子量が比較的小さい化合物を用いることによって、上記位相差層において上記棒状化合物が上記セルロース誘導体と混合しやすくなるため、基材と位相差層との密着性を向上させることができるからである。
なお、上記棒状化合物として重合性官能基を有する材料を用いる場合、上記棒状化合物の分子量は、重合前のモノマーの分子量を示すものとする。
また、本発明に用いられる棒状化合物は、液晶性を示す液晶性材料であることが好ましい。液晶性材料は規則的に配列する特性を備えるため、複屈折Δn(nx−ny)が大きく、位相差層に所望の位相差性を付与しやすいからである。
上記液晶性材料としては、ネマチック相、コレステリック相、および、スメクチック相等のいずれの液晶相を示す材料であっても好適に用いることができる。なかでも本発明においては、ネマチック相を示す液晶性材料を用いることが好ましい。ネマチック相を示す液晶性材料は、他の液晶相を示す液晶性材料と比較して規則的に配列させることが容易であるからである。
また、上記ネマチック相を示す液晶性材料としてはメソゲン両端にスペーサを有する材料を用いることが好ましい。メソゲン両端にスペーサを有する液晶性材料は柔軟性に優れるため、このような液晶性材料を用いることにより、本発明に用いられる位相差フィルムを透明性に優れたものにできるからである。
さらに、本発明に用いられる棒状化合物は、分子内に重合性官能基を有するものが好適に用いられ、なかでも3次元架橋可能な重合性官能基を有するものがより好適に用いられる。上記棒状化合物が重合性官能基を有することにより、上記棒状化合物を重合して固定することが可能になるため、配列安定性に優れ、位相差性の経時変化が生じにくい位相差層を得ることができるからである。
また、本発明においては上記重合性官能基を有する棒状化合物と、上記重合性官能基を有さない棒状化合物とを混合して用いてもよい。
なお、上記「3次元架橋」とは、液晶性分子を互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることを意味する。
上記重合性官能基としては、例えば、紫外線、電子線等の電離放射線、或いは熱の作用によって重合する重合性官能基を挙げることができる。これら重合性官能基の代表例としては、ラジカル重合性官能基、或いはカチオン重合性官能基等を挙げることができる。さらにラジカル重合性官能基の代表例としては、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が挙げられ、具体例としては、置換基を有するもしくは有さないビニル基、アクリレート基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を包含する総称)等が挙げられる。また、上記カチオン重合性官能基の具体例としては、エポキシ基等が挙げられる。その他、重合性官能基としては、例えば、イソシアネート基、不飽和3重結合等が挙げられる。これらの中でもプロセス上の点から、エチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が好適に用いられる。
さらにまた、本発明に用いられる棒状化合物は液晶性を示す液晶性材料であって、末端に上記重合性官能基を有するものが特に好ましい。このような液晶性材料を用いることにより、例えば、互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることができるため、配列安定性を備え、かつ、光学特性の発現性に優れた位相差層を形成することができるからである。
なお、本発明においては片末端に重合性官能基を有する液晶性材料を用いた場合であっても、他の分子と架橋して配列安定化することができる。
本発明に用いられる棒状化合物の具体例としては、下記式(1)〜(6)で表される化合物を例示することができる。
Figure 2009037236
ここで、化学式(1)、(2)、(5)および(6)で示される液晶性材料は、D.J.Broerら、Makromol.Chem.190,3201−3215(1989)、またはD.J.Broerら、Makromol.Chem.190,2250(1989)に開示された方法に従い、あるいはそれに類似して調製することができる。また、化学式(3)および(4)で示される液晶性材料の調製は、DE195,04,224に開示されている。
また、末端にアクリレート基を有するネマチック液晶性材料の具体例としては、下記化
学式(7)〜(17)に示すものも挙げられる。
Figure 2009037236
なお、本発明に用いられる液晶性材料は、1種類のみであってもよく、または、2種以上であってもよい。例えば、上記液晶性材料として、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料と、片末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料とを混合して用いると、両者の配合比の調整により重合密度(架橋密度)及び光学特性を任意に調整できる点から好ましい。
b.棒状化合物の配列形態
次に、本発明における位相差層内において棒状化合物が配列している形態について説明する。上記棒状化合物が配列している形態としては、本発明に用いられる位相差フィルムに所望の光学特性を付与できる形態であれば特に限定されるものではない。このような配列形態としては、例えば、棒状化合物が一方向に規則的に配向した形態や、コレステリック配向、ハイブリッド配向、およびランダムホモジニアス配向等の形態を挙げることができる。なかでも本発明においては、上記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成していることが好ましい。これにより、上記位相差層に白濁等が生じることを防止でき、透明性に優れた位相差フィルムを得ることができるからである。
以下、このようなランダムホモジニアス配向について説明する。
上記ランダムホモジニアス配向は、少なくとも、位相差層において棒状化合物分子が形成するドメインの大きさが可視光領域の波長よりも小さいこと(以下、単に「分散性」と称する場合がある。)、および、位相差層において棒状化合物分子が、該位相差層の表面に平行な平面に存在していること(以下、単に「面内配向性」と称する場合がある。)、を特徴とするものである。
このようなランダムホモジニアス配向について図を参照しながら説明する。図2は、本発明に用いられる位相差フィルムの一例を示す概略斜視図であり、図3(a)は上述した図2中のZで表す位相差層の法線方向から本発明に用いられる位相差フィルムを正視した場合の概略図である。また、図3(b)、(c)は、図3(a)におけるX−X’線矢視断面図である。
まず、本発明におけるランダムホモジニアス配向が具備する「分散性」について図3(a)を参照しながら説明する。上記「分散性」は、図3(a)に示すように、位相差層2bにおいて棒状化合物Aがドメインbを形成している場合に、ドメインbの大きさが可視光領域の波長よりも小さいことを示すものである。本発明においては、上記ドメインbの大きさが小さい程好ましいものであり、棒状化合物がドメインを形成せずに単分子で分散している状態が最も好ましいものである。
次に、上記ランダムホモジニアス配向が具備する「面内配向性」について図3(b)を参照しながら説明する。上記「面内配向性」は、図3(b)に示すように、位相差層2bにおいて棒状化合物Aが、分子軸aを位相差層2bの法線方向Zに対して略垂直になるように配向していることを意味する。本発明における上記「面内配向性」としては、図3(b)に示すように、上記位相差層2bにおけるすべての棒状化合物Aの分子軸aが上記法線方向Zに対して略垂直になっている場合のみを意味するものではなく、例えば図3(c)に示すように、上記位相差層2bに分子軸a’が上記法線方向Zと垂直でない棒状化合物Aが存在していたとしても、位相差層2b中に存在する棒状化合物Aの分子軸aの平均的な方向が上記法線方向Zに対して略垂直である場合を含むものである。
次に、上記位相差層に含まれる棒状化合物がこのような「分散性」および「面内配向性」を具備することを確認する方法について説明する。
まず、本発明におけるランダムホモジニアス配向が具備する「分散性」の確認方法について説明する。上記「分散性」は、上記位相差層のヘイズ値が、上記棒状化合物のドメインの大きさが可視光領域の波長以下であることを示す範囲内であることにより確認することができる。なかでも本発明においては、位相差層のヘイズ値が0.1%〜1%の範囲内であることが好ましい。
ここで、上記ヘイズ値は、JIS K7105に準拠して測定した値を用いるものとする。
ここで、位相差層のヘイズ値は、本来は位相差層単層について測定すればよいものである。しかしながら実際多くの場合は、位相差層は厚みが薄く、かつ、基材上に密着しているため、位相差層のみ分離しての測定が困難な場合が多い。したがって、通常は、位相差フィルム全体のヘイズ値から位相差層以外の層のヘイズ値を差し引くことにより求める。すなわち、位相差フィルム全体、および、位相差フィルムから位相差層を切除したものについてヘイズ値を測定し、前者のヘイズ値から後者のヘイズ値を差し引くことにより位相差層のヘイズ値を求めることができる。上記ヘイズ値は、JIS K7105に準拠して測定した値を用いるものとする。
次に、本発明におけるランダムホモジニアス配向が具備する「面内配向性」の確認方法について説明する。上記「面内配向性」は、上記位相差層が光学的に負のCプレートとしての性質を示す厚み方向のレターデーション(Rth)値を有することにより確認することができる。ここで、本発明において「負のCプレート」としての性質を示す」とは、厚み方向のレターデーション(Rth)が50nm以上であることを意味するものであるが、なかでも本発明における位相差層の厚み方向レターデーション(Rth)は、50nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。
なお、上記厚み方向のレターデーション(Rth)は、本発明の位相差フィルムを構成する位相差層の面内における進相軸方向(屈折率が最も小さい方向)の屈折率nx、および、遅相軸方向(屈折率が最も大きい方向)の屈折率nyと、厚み方向の屈折率nzと、位相差層の厚みd(nm)とにより、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dの式で表される値である。本発明におけるRth値は、上記式で表される値の絶対値を指すものとする。
なお、上記位相差層の厚み方向のレターデーション(Rth)についても、本来は位相差層単層について測定すればよいものである。ただし、実際多くの場合は、位相差層は厚みが薄く、かつ、基材上に密着しているため、位相差層のみ分離しての測定が困難な場合が多い。したがって、通常、位相差フィルム全体の厚み方向のレターデーション(Rth)から位相差層以外の層が示す厚み方向のレターデーション(Rth)を差し引くことにより求める。すなわち、位相差フィルム全体、および、位相差フィルムから位相差層を切除したものについて厚み方向のレターデーション(Rth)測定し、前者の測定値から後者の測定値を差し引くことにより位相差層の厚み方向のレターデーション(Rth)を求めることができる。厚み方向のレターデーション(Rth)は、例えば、王子計測機器株式会社製 KOBRA−WRを用い、平行ニコル回転法により測定することができる。
上記棒状化合物として2以上の複数のベンゼン環が結合された棒状の主骨格を有するものが用いられている場合、上記「面内配向性」は、上記位相差層の厚み方向のラマンピーク強度比(1605cm−1/2942cm−1)を測定することによっても確認することができる。すなわち、上記位相差層の厚み方向の切断面における厚み方向に対して垂直方向のラマンピーク強度比(1605cm−1/2942cm−1)が、厚み方向に対して平行方向のラマンピーク強度比(1605cm−1/2942cm−1)よりも大きいことにより、上記「面内配向性」を備えることを確認することができる。なかでも本発明においては、上記位相差層の厚み方向の切断面における厚み方向に対して垂直方向のラマンピーク強度比(1605cm−1/2942cm−1)が、厚み方向に対して平行方向のラマンピーク強度比(1605cm−1/2942cm−1)の1.1倍以上であることが好ましい。これにより、本発明における光学機能層を厚み方向のリタデーション(Rth)の発現性に優れたものになるからである。
ここで、本発明における上記ラマンピーク強度比(1605cm−1/2942cm−1)は、例えば、レーザーラマン分光光度計(日本分光:NRS−3000)を用いて、直線偏光の電場振動面が位相差層の厚み方向の切断面において、厚み方向に対して平行方向および垂直方向に一致するように測定光を入射することにより、厚み方向の切断面における厚み方向に対して平行方向および垂直方向のそれぞれについてラマン分光スペクトルを測定した後、1605cm−1(C−H結合由来ピーク)のピーク強度と、2942cm−1(ベンゼン環由来ピーク)のピーク強度とを評価することによって求めることができる。また、上記レーザーラマン分光光度計を用いてラマンスペクトルを測定する条件は、露光時間15秒、積算回数8回、励起波長532.11nmとする。
なお、上記位相差層の上記ラマンピーク強度比は、例えば、位相差フィルムを厚み方向に切断して切片を作製した後、上記位相差層に相当する部位のみのラマン分光スペクトルを測定することにより求めることができる。
上記棒状化合物が上記ランダムホモジニアス配向を形成している場合、本発明に用いられる位相差フィルムは、少なくとも光学的に負のCプレートとしての性質を有するものになるが、上記位相差フィルムの光学特性は上記位相差層内における棒状化合物の配列規則性を制御することによって光学的にAプレートとしての性質を併有させることもできる(なお、光学的にAプレートとしての性質と、光学的にCプレートとしての性質とを併有することを、単に「光学的にBプレートとしての性質を有する」と表現する場合がある。)。
より具体的には、上記位相差層の面内において上記棒状化合物がランダムに配列している場合(以下、このような場合を「等方性」と称する場合がある。)、上記位相差層は光学的に負のCプレートとしての性質のみを有するものとなり、一方、上記棒状化合物が上記位相差層の面内において分子軸が平均的に一方向に向くように配列している場合(以下、このような場合を「異方性」と称する場合がある。)、上記位相差層は光学的にBプレートとしての性質を有するものとなる。
このように、上記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成している場合は、上記棒状化合物の規則性を「等方性」とするか、あるいは、「異方性」するかによって、さらには「異方性」とする場合にはどの程度の「異方性」にするかによって、光学的に負のCプレートとしての性質を保持しつつ、光学的にAプレートとしての性質を任意の程度で付与することが可能になる。
以下、上記「等方性」および「異方性」について順に説明する。
まず、上記「等方性」について説明する。上述したように本発明における「等方性」とは、上記棒状化合物が上記位相差層内でランダムに配列していること意味するものである。
上記棒状化合物の「等方性」について図3を参照しながら説明する。図3(a)に例示するように上記「等方性」は、位相差層2bにおいて棒状化合物Aがランダムに配列していることを示すものである。ここで、上述したように本発明においては上記棒状化合物Aの配列方向を説明するのに、図3(a)中のaで表す分子長軸方向(以下、分子軸と称する。)を基準として考えるものである。したがって、上記棒状化合物Aの配列方向がランダムであることは、上記位相差層2bに含まれる棒状化合物Aの分子軸aがランダムに向いていることを意味する。
なお、図3(a)に例示するような配列状態の他に、棒状化合物がコレステリック構造を有する場合であっても、上記分子軸の方向が全体としてランダムになるため、形式的には上記「等方性」に該当するが、本発明における上記「等方性」には、コレステリック構造に起因する形態は含まないものとする。
本発明に用いられる棒状化合物が、上記「等方性」を備えることは、上記位相差層の面内レターデーション(Re)評価、および、コレステリック構造に起因する選択反射波長の有無を評価することにより確認することができる。これは、上記位相差層の面内レターデーション(Re)評価により棒状化合物がランダムに配向をしていることを確認でき、選択反射波長の有無により棒状化合物がコレステリック構造を形成していないことを確認することができるからである。
上記棒状化合物がランダムに配向していることは、面内レターデーション(Re)の値が、上記棒状化合物の配向状態がランダムであることを示す範囲内であることにより、確認することができる。なかでも、本発明においては位相差層の面内レターデーション(Re)が0nm〜5nmであることが好ましい。
上記位相差層の面内レターデーション(Re)は、本来は位相差層単層について測定すればよいものである。しかしながら、実際多くの場合、位相差層は厚みが薄く、かつ、基材上に密着しているため、位相差層のみを分離しての測定が困難な場合が多い。したがって、通常は、位相差フィルム全体の面内レターデーション(Re)から位相差層以外の層が示す面内レターデーション(Re)を差し引くことにより求める。すなわち、位相差フィルム全体、および、位相差フィルムから位相差層を切除したものについて面内レターデーション(Re)測定し、前者の測定値から後者の測定値を差し引くことにより位相差層の面内レターデーション(Re)を求めることができる。面内レターデーション(Re)は、例えば、王子計測機器株式会社製 KOBRA−WRを用い、平行ニコル回転法により測定することができる。
また、上記棒状化合物がコレステリック構造を有しないことは、例えば、株式会社島津製作所製紫外可視近赤外分光光度計(UV−3100等)を用い、本発明における位相差層が、選択反射波長を有していないことを確認することにより評価できる。コレステリック構造を有する場合は、その特徴としてコレステリック構造の螺旋ピッチに依存する選択反射波長を有するからである。
次に、上記「異方性」について説明する。上述したように本発明における「異方性」とは、上記棒状化合物が上記位相差層内で分子軸が平均的に一方向に向くように配列している場合を意味するものである。
このような「異方性」について図4を参照しながら説明する。図4に例示するように、上記「異方性」は、位相差層2bの表面に対して法線方向から位相差フィルムを正視した場合に、位相差層2bにおいて棒状化合物Aが平均的に一方向に配列していることを示すものである。
上記棒状化合物が上記「異方性」を有していることは、位相差層の面内レターデーション(Re)の値が、位相差層が光学的にAプレートとしての性質を有すること評価することにより確認することができる。ここで、本発明において「光学的にAプレートとしての性質を有する」とは、面内レターデーション(Re)の値が5nm以上であること意味するが、なかでも本発明においては、位相差層の面内レターデーション(Re)が、5nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、なかでも10nm〜200nmの範囲内の範囲内であることが好ましく、特に40nm〜150nmの範囲内であることが好ましい。
なお、上記棒状化合物として2以上の複数のベンゼン環が結合された棒状の主骨格を有するものが用いられている場合、上記「等方性」および「異方性」は、上記位相差層の面内方向のラマンピーク強度比(1605cm−1/2942cm−1)を測定することによっても確認することができる。
すなわち、本発明における位相差層の面内における遅相軸方向のラマンピーク強度比(1605cm−1/2942cm−1)が、面内の進相軸方向のラマンピーク強度比(1605cm−1/2942cm−1)よりも大きいことを確認することにより、上記「異方性」を備えることを確認することができる。なかでも本発明においては、位相差層の面内における遅相軸方向のラマンピーク強度比(1605cm−1/2942cm−1)が、面内における進相軸方向のラマンピーク強度比(1605cm−1/2942cm−1)の1.1倍以上であることが好ましい。これにより、本発明における光学機能層を厚み方向のリタデーション(Rth)の発現性に優れたものになるからである。一方、本発明における位相差層の面内における遅相軸方向のラマンピーク強度比(1605cm−1/2942cm−1)と、面内の進相軸方向のラマンピーク強度比(1605cm−1/2942cm−1)とが、ほぼ同等であることにより、上記「等方性」を備えることを確認することができる。
ここで、本発明における上記ラマンピーク強度比(1605cm−1/2942cm−1)は、例えば、レーザーラマン分光光度計(日本分光:NRS−3000)を用いて、直線偏光の電場振動面が位相差層の面内における遅相軸方向および進相軸方向に一致するように測定光を入射することにより、面内の進相軸方向および面内の進相軸方向のそれぞれについてラマン分光スペクトルを測定した後、1605cm−1(C−H結合由来ピーク)のピーク強度と、2942cm−1(ベンゼン環由来ピーク)のピーク強度とを評価することによって求めることができる。また、上記レーザーラマン分光光度計を用いてラマンスペクトルを測定する条件は、露光時間15秒、積算回数8回、励起波長532.11nmとする。
なお、上記位相差層の上記ラマンピーク強度比は、例えば、位相差フィルム全体の上記ラマンピーク強度比から位相差層以外の層が示す上記ラマンピーク強度比を差し引くことにより求めることができる。すなわち、位相差フィルム全体、および、位相差フィルムから位相差層を切除したものについて上記ラマンピーク強度比測定し、前者の値から後者の値を差し引くことにより位相差層の上記ラマンピーク強度比を求めることができる。
c.セルロース誘導体
次に、位相差層に含有されるセルロース誘導体について説明する。位相差層に含有されるセルロース誘導体は、後述する基材を構成するセルロース誘導体である。本発明においては、位相差層にこのようなセルロース誘導体が含有されることにより、基材と位相差層との密着性に優れた位相差フィルムを得ることができる。
本発明における位相差層中に含有されるセルロース誘導体の量としては、本発明に用いられる位相差フィルムにおいて、基材および位相差層、位相差層および偏光子の密着性を所望の範囲にすることができる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記セルロース誘導体の含有量が、1質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましく、特に5質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましい。
なお、上記位相差層に含有されるセルロース誘導体については、後述する「(2)基材」の項において、説明するものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
d.位相差層
本発明に用いられる位相差層には、上記棒状化合物および上記セルロース誘導体以外に他の化合物が含有されていてよい。このような他の化合物としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、有機変性シロキサン等のシリコン形レベリング剤;ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルビニルエーテル等の直鎖状重合物;フッ素系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤等の界面活性剤;テトラフルオロエチレン等のフッ素系レベリング剤;光重合開始剤等を挙げることができる。
なかでも本発明においては、上記棒状化合物として、光照射により重合する重合性官能基を有する棒状化合物を用いる場合に、上記他の化合物として光重合開始剤を含むことが好ましい。
本発明に用いられる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、アデカ社製N1717、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸やトリエタノールアミンのような還元剤との組み合わせ等を例示できる。
本発明においては、これらの光重合開始剤を1種類のみで用いてもよく、または、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において上記光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始助剤を併用することが好ましい。本発明に用いることができる光重合開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の3級アミン類や、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミド安息香酸エチル等の安息香酸誘導体を例示することができるが、これらに限られるものではない。
本発明に用いられる位相差層に上記光重合開始剤を含有させる場合、その含有量としては、上記棒状化合物を所望の時間で重合できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、上記棒状化合物100重量部に対して、1重量部〜10重量部の範囲内が好ましく、特に3重量部〜6重量部の範囲内が好ましい。
さらに本発明に用いられる位相差層には、本発明の目的を損なわない範囲内で、下記に示すような化合物を添加することができる。添加できる化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂、アミノ基エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物;アクリル基やメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等が挙げられる。このような化合物を含有することにより本発明に用いられる上記位相差層の機械強度が向上し、安定性が改善される場合がある。
本発明に用いられる位相差層の厚みとしては、上記棒状化合物や、後述する基材の種類に応じて、本発明に用いられる位相差フィルムの光学特性を所望の値にできる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、0.5μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。
(2)基材
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材はセルロース誘導体からなるものである。本発明に用いられるセルロース誘導体としては、位相差フィルムに所望の光学特性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記セルロース誘導体としてセルロースエステルを用いることが好ましく、セルロースエステル類の中でもセルロースアシレート類を用いることが好ましい。セルロースアシレート類は工業的に広く用いられていることから、入手容易性の点において有利だからである。
また、本発明においては上記セルロースアシレート類のなかでも炭素数2〜4の低級脂肪酸エステルを用いることが好ましい。このような低級脂肪酸エステルとしては、例えばセルロースアセテートのように、単一の低級脂肪酸エステルのみを含むものでもよく、また、例えばセルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートのような複数の脂肪酸エステルを含むものであってもよい。
本発明においては、上記低級脂肪酸エステルの中でもセルロースアセテートを特に好適に用いることができる。セルロースアセテートとしては、平均酢化度が57.5〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のトリアセチルセルロースを用いることが最も好ましい。トリアセチルセルロースは、比較的嵩高い側鎖を有する分子構造を有することから、この程度の平均酢化度を有するトリアセチルセルロースから基材を構成することにより、上述した位相差層に含まれる棒状化合物が基材に浸透し易くなるため、基材と位相差層との密着性を向上させることができるからである。
ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算により求めることができる。
本発明に用いられる基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、特に90%以上であることがより好ましい。透過率が低いと、上記棒状化合物等の選択幅が狭くなってしまう場合があるからである。
ここで、基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
また、本発明に用いられる基材の厚みは、位相差フィルムに必要な自己支持性を付与できる範囲であれば特に限定されない。なかでも本発明に用いられる基材の厚みは10μm〜188μmの範囲内であることが好ましく、特に20μm〜125μmの範囲内であることが好ましく、特に30μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。基材の厚みが上記の範囲よりも薄いと、本発明に用いられる位相差フィルムに必要な自己支持性を付与することができない場合があるからである。また、厚みが上記の範囲よりも厚いと、例えば、本発明の液晶表示装置用偏光板を裁断加工する際に、加工屑が増加したり、裁断刃の磨耗が早くなってしまう場合があるからである。
(3)位相差フィルム
本発明に用いられる位相差フィルムは、上記基材上に位相差層が直接形成されているものである。ここで、「直接形成され」ているとは、基材と、位相差層との間に、例えば配向層等の他の層を介することなく、基材と、位相差層とが直接接触するように形成されていることを意味するものである。本発明においては、このように位相差層が上記基材上に直接形成されていることにより、上記位相差層と上記基材との密着性を向上させることができるという利点を有する。
本発明において上記位相差層が上記基材に接するように形成されている態様としては、基材と位相差層とが明確な界面を形成するように積層されている態様であってもよく、あるいは、基材と位相差層との間に明確な界面がなく、上記棒状化合物の濃度が連続的に変化するように積層されている態様であってもよい。
本発明に用いられる位相差フィルムの面内レターデーション(Re)は、本発明の液晶表示装置用偏光板が用いられる液晶表示装置の種類等に応じて、適宜決定することができるものである。なかでも本発明においては、位相差フィルムの面内レターデーション(Re)が、0nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、特に0nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、さらに0nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明に用いられる位相差フィルムの厚み方向のレターデーション(Rth)についても、本発明の液晶表示装置用偏光板が用いられる液晶表示装置の種類等に応じて、適宜決定することができるものである。なかでも本発明においては、位相差フィルムの厚み方向のレターデーション(Rth)が、0nm〜600nmの範囲内であることが好ましく、特に20nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、さらに50nm〜400nmの範囲内であることが好ましい。
さらに、本発明に用いられる位相差フィルムは、温度80℃、2000時間での上記面内レターデーション(Re)および厚み方向のレターデーション(Rth)の変動率が10%以下であることが好ましく、なかでも7%以下であることが好ましく、さらに5%以下であることが好ましい。
2.偏光子
次に、本発明に用いられる偏光子について説明する。本発明に用いられる偏光子は、本発明の液晶表示装置用偏光板に偏光特性を付与する機能を有するものである。
本発明に用いられる偏光子は、所望の偏光特性を備えるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に液晶表示装置の偏光板に用いられるものを特に制限なく用いることができる。本発明においては、このような偏光子として、通常、ポリビニルアルコールフィルムが延伸されてなり、ヨウ素を含有する偏光子が好適に用いられる。
3.偏光板保護フィルム
次に、本発明に用いられる偏光板保護フィルムについて説明する。本発明に用いられる偏光板保護フィルムは、本発明の液晶表示装置用偏光板において偏光子が空気中の水分等に曝されることを防止する機能や、偏光子の寸法変化を防止する機能等を有するものである。
本発明に用いられる偏光板保護フィルムは、後述する偏光子を保護することができ、かつ、所望の透明性を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる偏光板保護フィルムは、可視光領域における透過率が80%以上であるものが好ましく、90%以上であるものがより好ましい。
ここで、上記偏光板保護フィルムの透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
本発明に用いられる偏光板保護フィルムを構成する材料としては、例えば、セルロース誘導体、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類等を挙げることができる。
なかでも本発明においては、上記樹脂材料としてセルロース誘導体またはシクロオレフィン系ポリマーを用いることが好ましい。
上記セルロース誘導体としては、例えば、上記「1.位相差フィルム」の項において位相差フィルムに用いられる基材を構成するものとして説明したものと同様のものを用いることができる。
一方、本発明に用いられるシクロオレフィン系ポリマーとしては、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する樹脂であれば特に限定されるものではない。このような上記環状オレフィンからなるモノマーとしては、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等を挙げることができる。
なお、本発明に用いられるシクロオレフィン系ポリマーとしては、シクロオレフィンポリマー(COP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)のいずれであっても好適に用いることができる。
本発明に用いられるシクロオレフィン系ポリマーは上記環状オレフィンからなるモノマーの単独重合体であってもよく、または、共重合体であってもよい。
また、本発明に用いられるシクロオレフィン系ポリマーは、23℃における飽和吸水率が1質量%以下であるものが好ましく、なかでも0.1質量%〜0.7質量%の範囲内であるものが好ましい。このようなシクロオレフィン系ポリマーを用いることにより、本発明の位相差フィルムを吸水による光学特性の変化や寸法の変化がより生じにくいものとすることができるからである。
ここで、上記飽和吸水率は、ASTMD570に準拠し23℃の水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求められる。
さらに、本発明に用いられるシクロオレフィン系ポリマーは、ガラス転移点が100℃〜200℃の範囲内であるものが好ましく、特に100℃〜180℃の範囲内であるものが好ましく、なかでも100℃〜150℃の範囲内であるものが好ましい。ガラス転移点が上記範囲内であることにより、本発明に用いられる位相差フィルムを耐熱性および加工適性により優れたものにできるからである。
なお、本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂からなる偏光板保護フィルムの具体例としては、例えば、Ticona社製 Topas、ジェイエスアール社製 アートン、日本ゼオン社製 ZEONOR、日本ゼオン社製 ZEONEX、三井化学社製 アペル等を挙げることができる。
4.液晶表示装置用偏光板
本発明の液晶表示装置用偏光板には、必要に応じて上記位相差フィルム、偏光子、および、偏光板保護フィルム以外の他の構成が用いられていてもよい。本発明に用いられる他の構成は、本発明の液晶表意装置用偏光板の効果を損なわないものであれば特に限定されるものではなく、本発明の液晶表示装置用偏光板に所定の機能を付与できるものを任意に用いることができる。このような他の構成としては、例えば、上記位相差フィルムと、上記偏光子との間、および/または、上記偏光板保護フィルムと偏光子との間に形成され、親水性接着剤からなる接着剤層を挙げることができる。このような接着剤層が形成されていることにより、本発明の液晶表示装置用偏光板において、位相差フィルムと偏光子との接着性を向上させることができる。
本発明の液晶表示装置用偏光板に接着剤層が形成されている場合について図を参照しながら説明する。図5は本発明の液晶表示装置用偏光板に上述した接着剤層が形成されている場合の一例を示す概略断面図である。図5に例示するように、本発明の液晶表示装置用偏光板10’は、位相差フィルム2と、偏光子1との間、および、上記偏光板保護フィルム3と偏光子1との間に親水性接着剤からなる接着剤層4が形成されたものであってもよい。
上記接着剤層に用いられる親水性接着剤としては、上記位相差フィルムの光学特性を害することなく、上記位相差フィルムと偏光子とを接着できるものであれば特に限定されるものではない。このような親水性接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの親水性接着剤であっても好適に用いることができるが、なかでもポリビニルアルコールを用いることが好ましい。上述したように、本発明に用いられる偏光子はポリビニルアルコールからなるものであるため、上記親水性接着剤としてポリビニルアルコールを用いることにより、上記偏光子を上記位相差層と強固に接着させることができるからである。
なお、本発明に用いられる親水性接着剤は、1種類のみであってもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。
本発明に用いられる接着剤層の厚みとしては、上記親水性接着剤の種類に応じて上記偏光子と位相差層とを所望の接着力で接着できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる接着剤層は、厚みが5μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、特に10μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、さらに15μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
また、上記接着剤層以外に本発明に用いられる他の構成としては、上記位相差フィルムの基材上に形成され、粘着剤を含有する粘着剤層を挙げることができる。このような粘着剤層が形成されていることにより、本発明の液晶表示装置用偏光板を用いて液晶表示装置を作製する際に、本発明の液晶表示装置用偏光板を液晶セルに接着させることが容易になるという利点がある。
本発明の液晶表示装置用偏光板に粘着剤層が形成されている場合について図を参照しながら説明する。図6は本発明の液晶表示装置用偏光板に上述した粘着剤層が形成されている場合の一例を示す概略断面図である。図6に例示するように、本発明の液晶表示装置用偏光板10’’は、位相差フィルム2に用いられている基材2a上に、粘着剤を含有する粘着剤層5が形成されたものであってもよい。
上記粘着剤層に用いられる粘着剤としては、上記基材と液晶セルとを所望の強度で接着できるものであれば特に限定されるものではない。このような粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの粘着剤であっても好適に用いることができるが、なかでもアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。
本発明に用いられるアクリル系粘着剤の具体例としては、例えば、ブチルアクリレート粘着剤系、ポリエステルアクリレート系粘着剤、エポキシアクリレート系粘着剤等を挙げることができる。
本発明に用いられる粘着剤は、1種類のみであってもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。
本発明に用いられる粘着剤層の厚みとしては、上記粘着剤の種類に応じて上記基材と液晶セルとを所望の接着力で接着できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる粘着剤層は、厚みが5μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、特に10μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、さらに15μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
5.液晶表示装置用偏光板の製造方法
本発明の液晶表示装置用偏光板は、例えば、後述する「B.液晶表示装置用偏光板の製造方法」の項において説明する製造方法によって製造することができる。
B.液晶表示装置用偏光板の製造方法
次に、本発明の液晶表示装置用偏光板の製造方法について説明する。上述したように本発明の液晶表示装置用偏光板の製造方法は、セルロース誘導体からなる基材を用い、上記基材上に屈折率異方性を示す棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を直接塗工して位相差層を形成することにより、上記基材と、上記基材上に形成され、上記セルロース誘導体および上記棒状化合物を含有する位相差層とを有する位相差フィルムを作製する位相差フィルム作製工程と、上記位相差フィルムの位相差層の表面を親水化する親水化処理工程と、親水化された上記位相差層上にポリビニルアルコールからなる偏光子を接着させる偏光子接着工程と、を有することを特徴とするものである。
このような本発明の液晶表示装置用偏光板の製造方法について図を参照しながら説明する。図7は本発明の液晶表示装置用偏光板の製造方法の一例を示す概略図である。図7に例示するように、本発明の液晶表示装置用偏光板の製造方法は、セルロース誘導体からなる基材2aを用い(図7(a))、上記基材2a上に屈折率異方性を示す棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を直接塗工して位相差層2bを形成することにより、上記基材2aと、上記基材2a上に形成され、上記セルロース誘導体および上記棒状化合物を含有する位相差層2bとを有する位相差フィルム2を作製する位相差フィルム作製工程と(図7(b))、上記位相差フィルム2の位相差層2bの表面を親水化する親水化処理工程と(図7(c))、親水化された上記位相差層2b上にポリビニルアルコールからなる偏光子1を接着させる偏光子接着工程と(図7(d))、を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、上記親水化処理工程において上記位相差層を親水化させた後、上記偏光子接着工程において、上記親水化された位相差層上に偏光子を接着させることにより、上記位相差層の光学特性を損なうことなく、上記位相差層上に偏光子を接着させることができる。また、本発明によって製造される液晶表示装置用偏光板を用いて液晶表示装置を作製する際には、上記位相差フィルムの基板と、液晶セルとを粘着剤によって接着させることになるため、光学特性を損なうことなく液晶表示装置用偏光板と液晶セルとを接着させることができる。
このようなことから、本発明によれば光学特性の発現性に優れ、かつ、光学特性が損なわれることなく液晶セルと接着させることが可能な液晶表示装置用偏光板を製造することができる。
本発明の液晶表示装置用偏光板の製造方法は、少なくとも上記位相差フィルム作製工程と、親水化処理工程と、偏光子接着工程とを有するものであり、必要に応じて他の工程が用いられてもよいものである。
以下、本発明に用いられる各工程について順に説明する。
1.位相差フィルム作製工程
まず、本発明に用いられる位相差フィルム作製工程について説明する。本工程は、セルロース誘導体からなる基材を用い、上記基材上に屈折率異方性を示す棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を直接塗工して位相差層を形成することにより、上記基材と、上記基材上に形成され、上記セルロース誘導体および上記棒状化合物を含有する位相差層とを有する位相差フィルムを作製する工程である。
以下、このような本工程について詳細に説明する。
本工程に用いられる位相差層形成用塗工液は、通常、上記棒状化合物と、溶媒とからなり、必要に応じて他の化合物を含んでもよいものである。
ここで、上記位相差層形成用塗工液に用いられる棒状化合物については、上記「A.液晶表示装置用偏光板」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記位相差層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、上記棒状化合物を所望の濃度に溶解できるものであれば特に限定されない。このような溶媒としては、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒等を挙げることができる。本工程においてはこれらの溶媒の中でも、ケトン系溶媒を用いることが好ましく、なかでもシクロヘキサンが好適に用いられる。
なお、本工程に用いられる溶媒は、1種類でもよく、2種類以上の溶媒の混合溶媒でもよい。
上記位相差層形成用塗工液中における上記棒状化合物の含有量としては、上記位相差層形成用塗工液を基材上に塗布する塗工方式等に応じて、上記位相差層形成用塗工液の粘度を所望の値にできる範囲内であれば得に限定されない。なかでも本工程においては、上記棒状化合物の含有量が、上記位相差層形成用塗工液中0.1質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましく、特に1質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも10質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましい。
上記位相差層形成用塗工液中には、必要に応じて光重合開始剤が含まれていてもよい。本工程に用いられる光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、アデカ社製N1717、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸やトリエタノールアミンのような還元剤との組み合わせ等を例示できる。本工程においては、これらの光重合開始剤を1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、上記光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始助剤を併用することができる。このような光重合開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の3級アミン類や、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミド安息香酸エチル等の安息香酸誘導体を例示することができるが、これらに限られるものではない。
上記位相差層形成用塗工液を基材上に塗工する塗布方式としては、所望の平面性を達成できる方法であれば、特に限定されるものではない。具体的には、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などを例示することができるが、これに限られるものではない。
なお、本工程に用いられる基材については、上記「A.液晶表示装置用偏光板」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記位相差層形成用塗工液の塗膜の厚みについても、所望の平面性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.5μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、特に0.5μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。位相差層形成用塗工液の塗膜の厚みが上記範囲より薄いと形成される位相差層の平面性を損なってしまう場合があり、また厚みが上記範囲より厚いと、溶媒の乾燥負荷が増大し、生産性が低下してしまう可能性があるからである。
上記位相差層形成用塗工液の塗膜の乾燥方法は、加熱乾燥方法、減圧乾燥方法、ギャップ乾燥方法等、一般的に用いられる乾燥方法を用いることができる。また、本発明における乾燥方法は、単一の方法に限られず、例えば残留する溶媒量に応じて順次乾燥方式を変化させる等の態様により、複数の乾燥方式を採用してもよい。
上記棒状化合物として重合性材料を用いる場合、上記重合性材料を重合する方法は、特に限定されるものではなく、上記重合性材料が有する重合性官能基の種類に応じて任意に決定すればよい。なかでも本発明においては、活性放射線の照射により硬化させる方法が好ましい。活性放射線としては、重合性材料を重合することが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光を使用することが好ましく、なかでも波長が150〜500nm、好ましくは250〜450nm、さらに好ましくは300〜400nmの照射光を用いることが好ましい。
この照射光の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが例示できる。なかでも、メタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ灯等の使用が推奨される。また、照射強度は、光重合開始剤の含有量等によって適宜調整して照射することができる。
2.親水化処理工程
次に、本発明に用いられる親水化処理工程について説明する。本工程は、上記位相差フィルム作製工程において作製された位相差フィルムの、位相差層の表面を親水化する工程である。
本工程において、上記位相差層の表面が親水化される程度としては後述する偏光子接着工程において、偏光子と位相差層とを所望の接着力で接着できる程度であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程において上記位相差層の表面が親水化させる程度としては、少なくとも水に対する接触角で50°以下であることが好ましく、さらに45°以下であることが好ましい。ここで、上記水に対する接触角は、接触角計(DM300:協和界面科学株式会社製)を用いて測定した結果から、θ/2法により算出し値を用いるものとする。
本工程において、上記位相差層の表面を親水化する方法としては上記位相差層の光学特性を損なわない方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、上記位相差層の表面をアルカリけん化する方法、コロナ処理する方法等を挙げることができる。本工程においてはこれらのいずれの方法であっても好適に用いることができるが、なかでも上記位相差層の表面をアルカリけん化する方法が用いられることが好ましい。すなわち、本工程において表面が親水化される位相差層には、屈折率異方性を有する棒状化合物と、基材を構成するセルロース誘導体とが含まれることから、本工程においては位相差層の表面をアルカリけん化し、上記セルロース誘導体を加水分解することによって、位相差層の表面を親水化する方法を用いることが好ましい。このようなアルカリけん化は、アルカリ水溶液を用いて処理を行うことができるところ、一般的に水に難溶であるため、このような方法を用いることにより棒状化合物の配列状態を損なうくことなく位相差層の表面を親水化することができるため、上記位相差層の光学特性を損なうことなく、位相差層の表面を親水化することができるからである。
本工程において、親水化方法としてアルカリけん化を用いる場合、アルカリけん化処理溶液としては、上記セルロース誘導体を加水分解できるものであれば特に限定されるものではない。このようなアルカリけん化処理溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液等を挙げることができる。本工程においてはこれらのいずれのアルカリけん化処理溶液であっても好適に用いることができるが、なかでも水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。
上記アルカリけん化処理用液を用いて、位相差層の表面をアルカリけん化する方法としては、例えば、上記アルカリけん化処理用液を上記位相差層上に塗布した後、これを水洗する方法や、上記アルカリけん化処理溶液中に位相差フィルムを浸漬した後、これを引き揚げ、水洗する方法等を挙げることができる。
3.偏光子接着工程
次に、本発明に用いられる偏光子接着工程について説明する。本工程は上記親水化処理工程において親水化された上記位相差層上に、ポリビニルアルコールからなる偏光子を接着させる工程である。
本工程において、上記位相差層と偏光子とを接着させる方法としては、上記位相差層の光学特性を損なわない方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、上記偏光子上に水を塗布した後、これを位相差層に密着させる方法や、上記偏光子を高湿下に置き、これを位相差層に密着させる方法、あるいは、上記偏光子と上記位相差層とを親水性接着剤を介して接着させる方法等を挙げることができる。なかでも本工程においては上記偏光子と上記位相差層とを親水性接着剤を介して接着させる方法を用いることが好ましい。このような方法によれば本工程において上記偏光子と、上記位相差層とを強固に接着することが可能になるからである。
なお、本工程において上記親水性接着剤を用いる方法が採用された場合、本発明によって製造される液晶表示装置用偏光板は、上記位相差層と偏光子との間に親水性接着剤からなる接着剤層を有するものとなる。
本工程に用いられる親水性接着剤としては、上記位相差層の光学特性を損なうことなく、上記位相差層と上記偏光子とを接着できるものであれば特に限定されるものではない。このような、親水性接着剤としては、上記「A.液晶表示装置用偏光板」の項において、接着剤層に用いられる親水性接着剤として説明したものを用いることができる。
また、本工程においては2種類以上の親水性接着剤を用いることもできる。
なお、本工程において上記位相差層上に接着される偏光子については、上記「A.液晶表示装置用偏光板」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
4.液晶表示装置用偏光板の製造方法
本発明の液晶表示装置用偏光板の製造方法は、少なくとも上記位相差フィルム作製工程と、親水化処理工程と、偏光子接着工程とを有するものであり、必要に応じて他の工程が用いられてもよいものである。本発明に用いられる他の工程としては、本発明によって製造される液晶表示装置用偏光板の用途等に応じて、任意の構成を付与することができる工程を用いることができる。このような工程としては、例えば、上記偏光子の位相差フィルムが接着される側とは、反対側の表面上に偏光板保護フィルムを接着する偏光板保護フィルム接着工程や、上記位相差フィルムの基材上に粘着剤を含有する粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程等を挙げることができる。
(1)偏光板保護フィルム接着工程
上記偏光板保護フィルム接着工程において、偏光子に偏光板保護フィルムを接着する方法としては特に限定されるものではなく、上記偏光板保護フィルムの種類等に応じて、一般的に液晶表示装置に用いられる偏光板において偏光子と偏光板保護フィルムとを接着するために用いられる方法を特に制約なく用いることができる。このような方法としては、粘着剤を介して両者を接着する方法や、上述した偏光子接着工程と同様に、偏光板保護フィルムの表面を、アルカリけん化等によって親水化した後、これを偏光子と接着させる方法等を挙げることができる。
なお、本発明にこのような偏光板保護フィルム接着工程が用いられる場合、本工程は上述した偏光子接着工程と同時に実施されることが好ましい。すなわち、本工程において偏光板保護フィルム接着工程が用いられる場合は、上記偏光子のそれぞれの表面に上記位相差フィルムと、偏光板保護フィルムとを同時に接着させる態様で、上記偏光子接着工程と、偏光板保護フィルム接着工程とが実施されることが好ましい。上記偏光子接着工程と、偏光板保護フィルム接着工程とを別個に実施すると、最初に実施した工程の後に、偏光子がカールしたり、沿ったりしてしまう場合があるが、両工程を同時に実施することにより、このような変形を防止することができるからである。
なお、本工程に用いられる偏光板保護フィルムは、上記「A.液晶表示装置用偏光板」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
(2)粘着剤層形成工程
上記粘着剤層形成工程において粘着剤層を形成する方法としては、所定の厚みで粘着剤層を形成できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、粘着剤を含有する粘着剤層形成用塗工液を上記基材上に塗工する方法や、粘着剤を含有するドライシートを上記基材上に貼り合わせる方法等を挙げることができる。
なお、本工程に用いられる粘着剤についても、上記「A.液晶表意装置用偏光板」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
C.液晶表示装置
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、上記液晶セルの少なくとも片側に配置された、上記本発明に係る液晶表示装置用偏光板と、を有する液晶表示装置であって、上記液晶セルと、上記液晶表示装置用偏光板の基材とが粘着剤を含有する粘着剤層を介して接着されていることを特徴とするものである。
このような本発明の液晶表示装置ついて図を参照しながら説明する。図8は本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。図8に例示するように、本発明の液晶表示装置20は、液晶セル21と、上記液晶セル21の少なくとも片側に配置された、上記本発明に係る液晶表示装置用偏光板10と、を有するものであり、上記液晶セル21と、上記液晶表示装置用偏光板10の基材2aとが粘着剤を含有する粘着剤層22(5)を介して接着されていることを特徴とするものである。
また、図8に例示するように本発明の液晶表示装置には、通常、上記液晶セル21の液晶表示装置用偏光板10が接着された側とは反対側の面上に一般的な偏光板23が用いられる。
本発明によれば、上記本発明に係る液晶表示装置用偏光板の基材側が、液晶セルと接着されていることにより、本発明の液晶表示装置を作製する際に上記位相差フィルムの光学特性を損なうことなく、液晶表示装置用偏光板と液晶セルとを接着させることができる。このため、本発明によれば、緻密に設計された位相差フィルムの光学特性を維持したまま、上記液晶表示装置用偏光板と、液晶セルとを接着させることができるため視野角特性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
本発明の液晶表示装置は、少なくとも液晶セルと、液晶表示装置用偏光板と、粘着剤層とを有するものであり、必要に応じて他の構成が用いられてもよいものである。
以下、本発明に用いられる各構成について順に説明する。
なお、本発明に用いられる液晶表示装置用偏光板および粘着剤層については、上記「A.液晶表示装置用偏光板」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明に用いられる液晶セルとしては、一般的に液晶表示装置用の液晶セルとして高知のものを用いることができるのが用いられる。このような液晶セルとしては一般的に公知のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
本発明の液晶表示装置には、通常、上記液晶セルの上記液晶表示装置用偏光板が接着された側とは反対側の面上に偏光板が配置される。このとき、本発明に用いられる偏光板としては、一般的に液晶表示装置に用いられる偏光板として公知のものを用いることができ、また、上記本発明に係る液晶表示装置用偏光板を用いることもできる。
本発明の液晶表示装置は、上記液晶セルと、上記液晶表示装置用偏光板とを上記粘着剤層を介して接着させることにより製造することができる。また、上記液晶表示装置用偏光板として上記粘着剤層が用いられる場合は、上記液晶表示装置用偏光板を上記液晶セルに直接接着させることにより、本発明の液晶表示装置を製造することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
[実施例1]
1.位相差フィルム作製
基材としてフィルム厚80μmのTACフィルム(富士フイルム株式会社製、商品名:TF80UL)上に、以下の組成を有する位相差層形成用塗工液を塗布し、次いで、40℃で2分間加熱して溶剤乾燥除去した。次に、塗工面に紫外線を照射することにより、重合性液晶材料を固定化して位相差フィルムを作製した。このとき、上記基材上に直接位相差層形成用塗工液を塗布することにより、形成された位相差層中は上記TACフィルムを構成するトリアセチルセルロースが含まれるものになった。
<位相差層形成用塗工液(実施例1)の組成>
・重合性棒状液晶材料(下記式I) 15重量部
・光重合開始剤 (Irg189、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
4重量部
・反応禁止剤(商品名 BHT、関東化学社製)
0.1重量部
・シクロヘキサノン 85重量部
Figure 2009037236
2.ケン化処理
このようにして得られた位相差フィルムを、45℃の1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸し、ケン化処理を行った。蒸留水で水洗処理後、100℃で1分間乾燥した。位相差層の水の接触角を測定したところ、35°であった。
3.偏光板作製
フィルム厚80μmのTACフィルム(富士フイルム株式会社製、商品名:TF80UL)を偏光子保護フィルムとして用いた。偏光子保護フィルムを上記と同様の条件でケン化処理を行った。延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて、偏光子を作製した。位相差フィルムの位相差層と偏光子の一方の面とを積層し、さらに偏光子の他方の面と偏光子保護フィルムとを積層した。得られた偏光板の位相差フィルム側に粘着層(日東電工社製、商品名:CS9621)を形成し、無アルカリガラス(セントラル硝子社製)に貼り合わせた。
4.剥離強度測定
偏光板作製24時間後、偏光板から位相差フィルムは剥離しなかった。
5.信頼性試験
サンプルを100℃、ドライの環境下において、72時間静置し、取り出し後、位相差測定を行った。位相差測定には偏光・位相差解析/測定システム(Axometrics社製のAxoScan)を用いた。その結果、位相差層のレターデーションは約1nm低下した。
サンプルを80℃、ドライの環境下において、2000時間静置し、取り出し後、位相差測定を行った。その結果、位相差層のリタデーションは約3nm低下した。
[比較例1]
偏光板の積層順序として、偏光子保護フィルム、偏光子、基材、位相差層の順序になるように積層した以外は実施例1と同様の方法により偏光板を作製した。このとき、基材の水に対する接触角は18°であった。
サンプルを100℃、ドライの環境下において、72時間静置し、取り出し後、位相差測定を行った。その結果、位相差は約60nm低下した。また、サンプルを80℃、ドライの環境下において、2000時間静置し、取り出し後、位相差測定を行った。その結果、位相差層のレターデーションは約65nm低下した。
[比較例2]
基材としてフィルム厚80μmのTACフィルム(富士フイルム株式会社製、商品名:TF80UL)上に、以下の組成を有する配向膜形成用塗工液を塗布し、乾燥後膜厚0.2μmの配向膜を形成した。次いで、以下の組成を有する位相差層形成用塗工液を前記工程で作製した配向膜上に塗工し、加熱して液晶を配向させた後、紫外線を照射して、膜厚2.0μmの液晶層を形成し、位相差フィルムを作製した。位相差層の水の接触角は67°であった。
<配向膜形成用塗工液の組成>
・ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業社製) 1重量部
・メタノール 33重量部
・水 66重量部
<位相差層形成用塗工液(比較例2)の組成>
・重合性ディスコティック液晶材料(下記式(II)) 15重量部
・反応開始剤(商品名Irg907、チバスペシャルティケミカルズ社製)
0.8重量部
・反応禁止剤(商品名 BHT、関東化学社製) 0.004重量部
・シクロヘキサノン 72重量部
・イソプロピルアルコール 13重量部
Figure 2009037236
得られた位相差フィルムを実施例1と同様の方法によりケン化処理を行った。その結果、位相差層の水の接触角は67°であった。
次いで、実施例1と同様の方法により偏光板を作製した。その結果、偏光板作製24時間後、偏光板から位相差フィルムが剥離した。
[実施例2]
1.位相差フィルム作製
基材としてフィルム厚40μmのTACフィルム(コニカミノルタ株式会社製、商品名:KC4UYW)上に、以下の組成を有する位相差層形成用塗工液を塗布し、次いで、40℃で2分間加熱して溶剤乾燥除去した。さらに、塗工面に窒素雰囲気下で100mJ/cmの紫外線を照射することにより、重合性液晶材料を固定化して位相差フィルムを作製した。
<位相差層形成用塗工液(実施例2)の組成>
・重合性液晶材料(下記式III) 20重量部
・光重合開始剤 (ルシリンTPO、BASFジャパン社製) 4重量部
・反応禁止剤(商品名 BHT、関東化学社製) 0.06重量部
・シクロヘキサノン 80重量部
Figure 2009037236
2.ケン化処理
このようにして得られた位相差フィルムを、45℃の1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸し、ケン化処理を行った。蒸留水で水洗処理後、100℃で1分間乾燥した。位相差層の水の接触角を測定したところ、35°であった。
3.偏光板作製
フィルム厚40μmのTACフィルム(コニカミノルタ株式会社製、商品名:KC4UYW)を偏光子保護フィルムとして用いた。偏光子保護フィルムを上記と同様の条件でケン化処理を行った。延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて、偏光子を作製した。位相差フィルムの位相差層と偏光子の一方の面とを積層し、さらに偏光子の他方の面と偏光子保護フィルムとを積層した。得られた偏光板の位相差フィルム側に粘着層(日東電工社製、商品名:CS9621)を形成し、無アルカリガラス(セントラル硝子社製)に貼り合わせた。
4.剥離強度測定
偏光板作製24時間後、偏光板から位相差フィルムは剥離しなかった。
5.信頼性試験
サンプルを100℃、ドライの環境下において、72時間静置し、取り出し後、位相差測定を行った。位相差測定には偏光・位相差解析/測定システム(Axometrics社製のAxoScan)を用いた。その結果、位相差層のレターデーションは約2nm低下した。
サンプルを80℃、ドライの環境下において、2000時間静置し、取り出し後、位相差測定を行った。その結果、位相差層のリタデーションは約2nm低下した。
本発明の液晶表示装置用偏光板の一例を示す概略断面図である。 本発明に用いられる位相差フィルムの一例を示す概略斜視図である。 本発明に用いられる位相差フィルムの一例を示す概略図である。 本発明に用いられる位相差フィルムの他の例を示す概略図である。 本発明の液晶表示装置用偏光板の他の例を示す概略断面図である。 本発明の液晶表示装置用偏光板の他の例を示す概略断面図である。 本発明の液晶表示装置用偏光板の製造方法の一例を示す概略図である。 本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。 一般的な液晶表示装置の一例を表す概略断面図である。 位相差フィルムが用いられた液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。 従来の位相差フィルムの一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 … 偏光子
2 … 位相差フィルム
2a … 基材
2b … 位相差層
3 … 偏光板保護フィルム
4 … 接着剤層
5,22 … 粘着剤層
10,10’,10’’ … 液晶表示装置用偏光板
20 … 液晶表示装置
21 … 液晶セル
23 … 偏光板
101 … 液晶セル
102A、102B … 偏光板
103,104 … 位相差フィルム
105 … 基材
106 … 配向層
107 … 位相差層
A … 棒状化合物

Claims (7)

  1. セルロース誘導体からなる基材、および、前記基材上に直接形成され、前記セルロース誘導体と屈折率異方性を示す棒状化合物とを含有する位相差層を有する位相差フィルムと、
    前記位相差フィルムの前記位相差層上に接着され、ポリビニルアルコールからなる偏光子と、
    前記偏光子上に接着された偏光板保護フィルムと、を有することを特徴とする、液晶表示装置用偏光板。
  2. 前記位相差フィルムと、前記偏光子との間に親水性接着剤からなる接着剤層が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置用偏光板。
  3. 前記位相差フィルムの前記基材上に、アクリル系粘着剤を含有する粘着剤層が形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の液晶表示装置用偏光板。
  4. 前記棒状化合物がランダムホモジニアス配向を形成していることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の液晶表示装置用偏光板。
  5. セルロース誘導体からなる基材を用い、前記基材上に屈折率異方性を示す棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を直接塗工して位相差層を形成することにより、前記基材と、前記基材上に形成され、前記セルロース誘導体および前記棒状化合物を含有する位相差層とを有する位相差フィルムを作製する位相差フィルム作製工程と、
    前記位相差フィルムの位相差層の表面を親水化する親水化処理工程と、
    親水化された前記位相差層上にポリビニルアルコールからなる偏光子を接着させる偏光子接着工程と、を有することを特徴とする液晶表示装置用偏光板の製造方法。
  6. 前記親水化処理工程が、前記位相差層に含有される前記セルロース誘導体をアルカリけん化することにより、前記位相差層の表面を親水化するものであることを特徴とする、請求項5に記載の液晶表示装置用偏光板の製造方法。
  7. 液晶セルと、前記液晶セルの少なくとも片側に配置された、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の液晶表示装置用偏光板と、を有する液晶表示装置であって、
    前記液晶セルと、前記液晶表示装置用偏光板の基材とが粘着剤を含有する粘着剤層を介して接着されていることを特徴とする、液晶表示装置。
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