JP2011186158A - フィルム、フィルムロール体及びフィルムの製造方法 - Google Patents

フィルム、フィルムロール体及びフィルムの製造方法 Download PDF

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Kentaro Tamura
健太郎 田村
Kenichi Harai
謙一 原井
Hitoshi Oishi
仁志 大石
Masakazu Saito
昌和 齊藤
Sogo Komoto
壮悟 幸本
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Abstract

【課題】基材及びコレステリック樹脂層を備えるフィルムにおいて、光学特性を均一にし、且つ、ハンドリング性を良好にする。
【解決手段】基材と、基材上に設置されたコレステリック規則性を有する樹脂層とを備えたフィルムにおいて、樹脂層がコレステリック規則性の螺旋ピッチが勾配を有するようにし、基材として、樹脂層が設置された平滑な平滑面と、平滑面とは反対側に位置し凹凸を有する凹凸面とを備え、且つ、ヘイズが2.5%以下であり、波長365nmでの透過率が80%以上である基材を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明はコレステリック規則性を有する樹脂層を備えるフィルム及びそのフィルムを巻回してなるフィルムロール体、並びに前記フィルムの製造方法に関する。
液晶表示装置等の表示装置において、その性能を向上させるために様々な光学部材を設けることが知られている。例えば、液晶表示装置において、バックライトからの光を有効に利用し、輝度を向上させ且つ発光効率を高めるための一方法として、輝度向上フィルムを設けることが知られている。かかる輝度向上フィルムとして提案されている種々のものの一つとして、所定の円偏光を透過しその他の偏光を反射する円偏光分離素子と、円偏光分離素子を透過した円偏光を直線偏光に変換する位相差フィルムとを含むものがある。
かかる円偏光分離素子としては、コレステリック規則性を有する樹脂層(以下、適宜「コレステリック樹脂層」という。)を有するフィルムが知られている。具体的には、コレステリック液晶性を示す重合性モノマーを含む液晶組成物を基材上に塗布して塗膜を形成し、配向させ、重合、硬化したフィルムなどが知られている。このようなコレステリック樹脂層としては、従来から多くの具体例が知られている(例えば特許文献1〜5)。
特開2006−3883号公報 特開平6−281814号公報 特開2004−219522号公報 特開2004−219540号公報 特開2004−264322号公報
基材の面のうち、前記の塗膜を形成する面を塗工面とし、塗工面とは反対側の面を裏面とすると、コレステリック樹脂層の製造工程においては、基材は塗工面を鉛直上方に向け、裏面を鉛直下方に向けた状態で搬送される。これは、硬化前の塗膜は流体状であるので塗工面を鉛直下方に向けると塗膜を安定して保持できない可能性があるからである。
また、一般的に、コレステリック樹脂層を製造する場合の紫外線(UV)の照射は塗工面側から行われる。したがって、紫外線の照射装置は、通常、塗工面の鉛直上方に配置される。
しかしながら、塗工面の鉛直上方に紫外線の照射装置を配置すると、照射装置の可動部等から生じる異物が塗膜に落下する可能性がある。そこで、基材の裏面側から塗膜に紫外線を照射する技術が考えられる。
基材の裏面側から塗膜に紫外線を照射する場合、紫外線は基材を透過してから塗膜に入射することになる。このため、基材の光学特性が製造されるコレステリック樹脂層の品質に影響を与える可能性がある。具体的には、基材のヘイズが大きい場合、当該ヘイズによって紫外線照射強度にムラが生じる可能性がある。広い波長帯域において円偏光分離機能を発現させるためには前記の紫外線照射強度を制御することが求められるが、前記のように紫外線照射強度にムラが生じると、得られるコレステリック樹脂層の光学特性(特に、円偏光分離機能を発揮する波長帯域。なお、この波長帯域を以下、適宜「反射偏光分離帯域」という。)が面方向で均一でなくなる可能性がある。また、基材の紫外線透過率が低いと、基材のロットにより基材を通じて塗膜に入射する紫外線のスペクトルが変動しやすくなり、製品の広帯域挙動に大きなロット差が生じる可能性がある。
他方、製造工程を減らして簡略化するためには、基材をそのままコレステリック樹脂層から剥離させることなくコレステリック樹脂層の保護フィルムとして使用することが求められる。基材を保護フィルムとする場合、コレステリック樹脂層は、コレステリック樹脂層及び基材を備える積層フィルムの状態で保存、運搬等がなされることになる。
保護フィルムとして使用するためには、前記の積層フィルムのハンドリング性を改善する観点から、基材には滑り性等の機械的特性が求められる。滑り性を改善する手段としては、基材の表面(すなわち、塗工面及び裏面)に凹凸を形成して表面粗さを粗くすることにより滑り性を向上させることが考えられる。しかし、表面粗さを粗くすると基材のヘイズが大きくなり、基材を通じた塗膜への紫外線照射強度にムラが生じる可能性がある。また、塗工面に凹凸があると、凹凸の分だけコレステリック樹脂層の厚みが不均一になったり、凹凸による紫外線の集束及び拡散により紫外線照射強度にムラが生じたりして、得られるコレステリック樹脂層の光学特性が均一でなくなる可能性がある。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、光学特性が均一で、ハンドリング性に優れる、基材及びコレステリック樹脂層を備えるフィルム及びそのフィルムのフィルムロール体、並びに前記フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、基材及びコレステリック樹脂層を備えるフィルムにおいて、基材の塗工面を平滑にし、裏面を凹凸面とし、且つ、基材のヘイズ及び透明性を所定の範囲に収めることにより、基材の裏面側から紫外線を照射して広い波長帯域で円偏光分離機能を発現させたコレステリック樹脂層の光学特性を均一にし、且つ、ハンドリング性を良好にできることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔8〕を要旨とする。
〔1〕 基材と、前記基材上に設置されたコレステリック規則性を有する樹脂層とを備えたフィルムであって、
前記樹脂層は、コレステリック規則性の螺旋ピッチが勾配を有し、
前記基材は、前記樹脂層が設置された平滑な平滑面と、前記平滑面とは反対側に位置し凹凸を有する凹凸面とを備え、且つ、前記基材のヘイズが2.5%以下であり、前記基材の波長365nmでの透過率が80%以上である、フィルム。
〔2〕 前記基材がフィラーを有する層を備え、
前記フィラーを有する層の表面が前記凹凸面となっている、〔1〕記載のフィルム。
〔3〕 前記基材がポリエチレンテレフタレートを含む、〔1〕又は〔2〕記載のフィルム。
〔4〕 さらに1/4波長板を備える、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のフィルム。
〔5〕 〔4〕記載のフィルムを巻き取ってなるフィルムロール体。
〔6〕 前記1/4波長板の遅相軸が、前記フィルムの長さ方向に対して45°±10°以内で傾いている、〔5〕記載のフィルムロール体。
〔7〕 基材と、前記基材上に設置されたコレステリック規則性を有する樹脂層とを備えたフィルムの製造方法であって、
前記基材上に、重合可能な液晶化合物及び光重合開始剤を含む液晶層形成用組成物を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜中の前記液晶化合物を配向させる工程と、
前記光重合開始剤の感光波長域の光を含む活性光を、前記基材側から前記塗膜に対して照射する工程とを含み、
前記基材が、前記液晶層形成用組成物を塗布される平滑な平滑面と、前記平滑面とは反対側に位置し凹凸を有する凹凸面とを備え、且つ、前記基材のヘイズが2.5%以下であり、前記基材の前記活性光の最大ピーク波長での透過率が80%以上である、フィルムの製造方法。
〔8〕 前記活性光の最大ピーク波長が350nm以上400nm以下である、〔7〕記載のフィルムの製造方法。
本発明によれば、光学特性が均一で、ハンドリング性に優れる、基材及びコレステリック樹脂層を備えるフィルム及びそのフィルムのフィルムロール体、並びに前記フィルムの製造方法を提供することができる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に挙げる実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
〔1.概要〕
本発明のフィルム(以下、適宜「コレステリック積層フィルム」という。)は、少なくとも、基材と、前記基材上に設置されたコレステリック樹脂層(即ち、コレステリック規則性を有する樹脂層)とを備えた積層フィルムである。コレステリック樹脂層のコレステリック規則性の螺旋ピッチは勾配を有しており、これによって、本発明のコレステリック積層フィルムは円偏光分離機能を発現する反射偏光分離帯域が、前記螺旋ピッチに勾配を有さない場合と比較して広帯域化されている。
また、前記の基材は、所定のヘイズ及び透明性を有し、且つ、平滑面及びこの平滑面とは反対側に位置する凹凸面を備えていて、前記の平滑面にコレステリック樹脂層が設置されている。このような構成により、本発明のコレステリック積層フィルムでは、光学特性を均一にすることと、ハンドリング性に優れることとを両方とも実現できる。
さらに、本発明のコレステリック積層フィルムは、基材及びコレステリック樹脂層以外にも層を備えていてもよい。例えば、本発明のコレステリック積層フィルムは1/4波長板を備えていてもよい。1/4波長板を備える場合、本発明のコレステリック積層フィルムは、輝度向上フィルムとして使用することができる。
〔2.基材〕
本発明に係る基材は、コレステリック樹脂層の製造時に液晶層形成用組成物を塗布する対象となる部材である。本発明に係る基材としては、液晶層形成用組成物の塗布が可能であり、コレステリック規則性の発現が可能であるものを用いる。また、基材としてはフィルム状の基材を用いる。さらに、液晶表示装置等に光学素子として実装する際の薄膜化等の観点から、本発明に係る基材はコレステリック樹脂層と剥離可能であることが好ましい。
本発明に係る基材は、平滑な面である平滑面を備え、この平滑面にコレステリック樹脂層が設置されている。したがって、本発明のコレステリック積層フィルムでは、この平滑面が基材とコレステリック樹脂層との界面となり、この界面において基材とコレステリック樹脂層とが接着層等を介さずに直接に接することになる。このようにコレステリック樹脂層を設置された基材の面が平滑面であるため、基材表面の凹凸によるコレステリック樹脂層の厚みの不均一は生じず、コレステリック樹脂層の厚みを均一にできる。また、平滑面が平滑であることにより、本発明に係る基材のヘイズを小さくしたり、基材とコレステリック樹脂層との界面の凹凸に起因する活性光の照射強度のムラを抑制したりできる。これらによって、コレステリック樹脂層が発現する光学特性を均一にできる。特に、コレステリック樹脂層の反射偏光分離帯域のムラ(以下、適宜「広帯域ムラ」という。)をなくして反射偏光分離帯域を均一にできる。
ここで平滑面が平滑であるとは、表面の凹凸構造がその上に形成されるコレステリック樹脂層の配向、並びに、凹凸構造上に生じる急峻な厚みムラ及びそれに伴う面状の異常を発生させない程度に平滑であることを意味し、例えば本発明のコレステリック積層フィルムを顕微鏡で透過観察した場合に、基材の表面の凹凸を反映していると思われる暗い点状の模様、及び、配向の乱れであるオイリーストリークが発生しない程度に平滑であることを意味する。点状の模様が発生した場合、外観は濁りを呈する。
平滑面の具体的な平滑さの程度は前記の程度であればよいが、十点平均粗さRz(JIS B0601−1994)で規定すると、その値は通常0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは、0.1μm以下である。なお、下限は理想的には0μmであるが、通常は0.05μm以上である。なお、離散的に存在する凹凸が評価されるように、測定位置、方向を変えて複数回測定し、その平均値で評価することが好ましい。
本発明に係る基材は、平滑面とは反対側に位置する面として凹凸面を備える。凹凸面は凹凸を有する面である。基材がコレステリック樹脂層が形成された平滑面とは反対側に凹凸面を有することにより、前記凹凸面の滑り性を向上させられるので、本発明のコレステリック積層フィルムのハンドリング性を改善することが可能となっている。
凹凸面が有する凹凸の程度は、少なくとも凹凸面が前記平滑面よりも粗くなっていればよい。具体的な凹凸の程度は、本発明のコレステリック積層フィルムが良好なハンドリング性を有する程度に凹凸面の滑り性が高くなり、後述するヘイズの条件を満たす範囲で、基材の材料の種類等に応じて設定すればよい。
凹凸面の凹凸の程度を示す指標を挙げると、十点平均粗さRz(JIS B0601−1994)で規定すると、その値は通常0.3μmより大きく、好ましくは0.4μmより大きく、さらに好ましくは0.5μmより大きい。なお、離散的に存在する凹凸が評価されるように、測定位置、方向を変えて複数回測定し、その平均値で評価することが好ましい。
本発明に係る基材のヘイズは、通常2.5%以下、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下である。なお、ヘイズの下限は理想的には0%であるが、通常は0.3%以上である。基材のヘイズが小さいため、本発明のコレステリック樹脂層の光学特性を均一にできる。本発明に係る基材は凹凸面を有するが、凹凸面とは反対側に位置する面が平滑面であるため、凹凸面を有するにもかかわらず前記のようにヘイズを低くできるようになっている。ただし、凹凸面の凹凸の程度によってはヘイズが過大となる可能性があるため、光学特性を均一にすることとハンドリング性を良好にすることとの両方を達成する観点から、凹凸面の凹凸の程度は基材のヘイズを前記範囲に収めることができる範囲に設定する。
コレステリック樹脂層の製造時に使用する活性光の最大ピーク波長(通常は、波長365nm)での本発明に係る基材の透過率は、通常80%以上、好ましくは83%以上、より好ましくは85%以上である。なお、前記の透過率の上限は理想的には100%であるが、通常は94%以下である。基材を透過する活性光の透過率が高いことにより、基材のロットが違っても基材を透過する活性光のスペクトルを変動しにくくすることができる。したがって、製品のロット差を生じ難くしたり、頻繁な活性光の強度調整を不要にして製造工程を安定にしたり、活性光のスペクトルのずれによる光学特性の不均一を防止したりすることが可能となる。
基材を剥離させずコレステリック樹脂層とともに光学素子の一部として使用する場合には、基材は透明な基材であることが好ましい。基材が透明である場合、当該基材の具体的な光線透過率は用途に応じて一様ではないが、例えば1mm厚で全光線透過率が80%以上の基材であればよい。
基材の材料としては通常は樹脂を用いる。基材の材料となる樹脂の具体例を挙げると、脂環式オレフィンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレン等の鎖状オレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、変性アクリルポリマー、エポキシ樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。これらの中でもポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。ポリエチレンテレフタレートを含むフィルムを基材として用いることにより、ハンドリング性および機械的特性が両立できる。なお、基材の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、基材は、1層のみからなる単層構造であってもよく、2層以上の層を有する積層構造であってもよい。
本発明に係る基材の平滑面及び凹凸面を形成する手段に制限は無い。例えば、基材の形状を上述した条件を満たすように成形することにより平滑面及び凹凸面を形成してもよい。具体例を挙げると、表面及び裏面のうち少なくとも一方の面が平滑面であるフィルムを用意し、このフィルムの平滑面とは反対側の面にエンボス加工等を施して凹凸面を形成するようにしてもよい。
また、例えば、基材にフィラー(粒子)を有する層(以下、適宜「フィラー層」という。)を備えさせ、このフィラー層の表面を本発明に係る基材の凹凸面としてもよい。具体例を挙げると、表面及び裏面のうち少なくとも一方の面が平滑面であるフィルムを用意し、このフィルムの平滑面とは反対側の面にフィラー層を形成して、フィラー層の露出面が凹凸面となるようにしてもよい。この際、フィラーは1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、フィラーの粒径は、前記の凹凸面の凹凸の程度にあわせて適切な範囲に設定すればよい。さらに、フィラー層には、フィラーをフィラー層に保持するためのバインダ樹脂が含まれていてもよく、必要に応じて添加剤が含まれていてもよい。このようなタイプの基材の例を製品名で挙げると、コスモシャインA4100(東洋紡績株式会社製)、テトロンフィルムO3PF8(登録商標、帝人株式会社製)などが挙げられる。また、フィラー層は、平滑面側の層と多層押し出しで同時に形成してもよく、平滑面側の層へ後からコーティングによって形成してもよい。
また、基材は配向膜を備えていてもよい。配向膜は通常は基材の表面に露出するように設けられ、配向膜の露出面が本発明に係る基材の平滑面を形成する。基材が配向膜を備える場合、配向膜上に液晶層形成用組成物を塗布してコレステリック樹脂層を製造することになり、配向膜の上に成膜される液晶層中の液晶化合物を所望の方向により確実に配向させることができる。配向膜は、例えば、基材を構成するフィルムの配向膜を形成しようとする面に、必要に応じてコロナ放電処理等を施した後、配向膜の材料を水又は溶剤に溶解させた溶液等を塗布し、乾燥させ、その後乾燥塗膜にラビング処理を施すことにより形成することができる。
前記配向膜の材料としては、例えば、セルロース、シランカップリング剤、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エポキシアクリレート、シラノールオリゴマー、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリオキサゾール、環化ポリイソプレンなどが挙げられるが、変性ポリアミドが特に好ましい。なお、配向膜の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記変性ポリアミドとしては、例えば、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドに変性を加えたものが挙げられる。中でも脂肪族ポリアミドに変性を加えたものが好ましい。具体例を挙げると、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12、3元ないし4元共重合ナイロン、脂肪酸系ポリアミド、又は脂肪酸系ブロック共重合体(例えばポリエーテルエステルアミド、ポリエステルアミド)に変性を加えたもの等が挙げられる。当該変性としては、例えば、末端アミノ変性、カルボキシル変性、ヒドロキシル変性などの変性、並びにアミド基の一部をアルキルアミノ化又はN−アルコキシアルキル化する変性が挙げられる。N−アルコキシアルキル化変性ポリアミドとしては、例えば、ナイロン−6、ナイロン−66、又はナイロン−12等の共重合ナイロンのアミド基の一部をN−メトキシメチル化したものが挙げられる。前記変性ポリアミドの重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上であり、好ましくは500000以下、より好ましくは200000以下である。
配向膜の厚さは、液晶層に所望の配向均一性が得られる厚さであればよい。具体的には、0.001μm以上が好ましく、0.01μm以上がより好ましく、5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。
本発明に係る基材の厚みは、製造装置でのハンドリング性、材料のコスト、薄型化及び軽量化の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。なお、例えばフィラー層及び配向層等を備える場合、フィラー層及び配向層等を含めた基材全体の厚みが前記の範囲となることが好ましい。
〔3.コレステリック樹脂層〕
本発明のコレステリック積層フィルムが備えるコレステリック樹脂層は、コレステリック規則性の螺旋ピッチが勾配を有する樹脂層である。ここで、コレステリック樹脂層が有するコレステリック規則性とは、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面ではさらに角度がずれるという具合に、分子が一定方向に配列している平面を進むに従って分子軸の角度がずれて(ねじれて)いく構造である。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造は光学的にカイラルな構造となる。
コレステリック樹脂層は、円偏光分離機能を有する。すなわち、ある特定の波長帯域の左回転若しくは右回転の円偏光を反射し、それ以外の円偏光を透過する機能を有する。
円偏光分離機能を発揮する波長は、コレステリック樹脂層におけるコレステリック規則性の螺旋ピッチ(即ち、らせん構造のピッチ)に依存する。螺旋ピッチとは、らせん構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでの平面法線方向の距離のことである。この螺旋ピッチの大きさを変えることによって、円偏光分離機能を発揮する波長を変えることができる。
本発明に係るコレステリック樹脂層は、螺旋ピッチに勾配を有する。すなわち、本発明に係るコレステリック樹脂層は、らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層である。このように螺旋ピッチに勾配を有することにより反射変更分離帯域が広帯域化されるため、本発明に係るコレステリック樹脂層は広い反射偏光分離帯域を有する。
コレステリック樹脂層の反射偏光分離帯域は、その用途に応じて設定することができる。反射偏光分離帯域は、可視光の波長帯域内にあることが好ましく、可視光の全波長帯域にわたることがより好ましい。例えば、青色(波長410〜470nm)、緑色(波長520〜580nm)、赤色(波長600〜660nm)のいずれの波長域の光についても円偏光分離機能を有するコレステリック樹脂層であることが好ましい。
本発明のコレステリック積層フィルムを製造する場合、螺旋ピッチに勾配を有するコレステリック樹脂層は、例えば、基材の平滑面上に、コレステリック樹脂層を形成するための重合可能な液晶化合物(以下、適宜「重合性液晶化合物」という。)及び光重合開始剤を含む液晶層形成用組成物を塗布して塗膜を形成する工程(以下、適宜「塗布工程」という。)と、塗膜中の重合性液晶化合物を配向させる工程(以下、適宜「配向処理工程」という。)と、光重合開始剤の感光波長域の光を含む活性光を、基材側から塗膜に対して照射する工程(以下、適宜「硬化工程」という。)とを含む製造方法により製造できる。なお、前記の活性光の照射は1回だけ行ってもよく、2回以上の回数だけ行ってもよい。液晶層形成用組成物を塗布して得られる塗膜は重合性液晶化合物及び光重合開始剤を含む液晶層であるので、この液晶層中の重合性液晶化合物を配向させた後で活性光を照射することにより、液晶層を硬化させた液晶硬化物層としてコレステリック樹脂層が得られる。かかるコレステリック樹脂層は、重合性液晶化合物の分子配向を呈したまま硬化した非液晶性の樹脂層となる。
なお、前記の液晶層形成用組成物は、コレステリック液晶相を呈しうる液晶組成物(コレステリック液晶組成物)であることが好ましい。
前記の重合性液晶化合物は、屈折率異方性Δnが0.2以上の重合性液晶化合物(以下、適宜「高Δn重合性液晶化合物」という。)であることが好ましく、より好ましくは0.21以上、特に好ましくは0.23以上である。高Δn重合性液晶化合物を用いることにより、高い輝度向上効果を得ながら、斜め方向から観察した際の色相変化を小さくすることができ、高い光学的性能(例えば、円偏光分離特性)を有する円偏光分離素子を実現できる。また、屈折率異方性Δnが0.30以上であると、紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合があるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望の光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。このような高Δn重合性液晶化合物の例としては、後述する式(1)で表される棒状液晶化合物が挙げられる。
なお、化合物の屈折率異方性Δnはセナルモン法により測定できる。
重合性液晶化合物は、1分子中に2つ以上の重合性官能基を有することが好ましい。重合性官能基は、適切な条件下において重合反応を生じて重合性液晶化合物を重合させる基である。重合性液晶化合物が重合性官能基を2つ以上有することにより、液晶層形成用組成物を成膜して硬化させる場合に、重合性液晶化合物を重合させて安定した硬化物を得ることができる。逆に、1分子中に重合性官能基が1つ以下であると、液晶層形成用組成物を成膜して硬化させた場合に、架橋した硬化物が得られないため円偏光分離素子等として実用に耐えうる膜強度が得られないことがある。後述する架橋剤を使用した場合でも、膜強度が不足し実用は困難になる傾向がある。
なお、実用に耐えうる膜強度とは、鉛筆硬度(JIS K5400)でHB以上、好ましくはH以上である。膜強度がHBより低いと傷がつきやすくハンドリング性に欠ける。好ましい鉛筆硬度の上限は、光学的性能や耐久性試験に悪影響を及ぼさなければ特に限定されない。
前記の重合性官能基としては、例えば、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、チオエポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基、及びアミノ基などが挙げられる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルのことを指す。また、1分子中に含まれる重合性官能基は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
重合性液晶化合物の中でも好ましい例を挙げると、下記の一般式(1)で表される棒状液晶化合物が挙げられる。
−C−D−C−M−C−D−C−R (1)
一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して、重合性官能基を表す。
一般式(1)において、D及びDは、それぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のメチレン基及びアルキレン基等の二価の飽和炭化水素基、並びに、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。
一般式(1)において、C〜Cは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH−、−OCH−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CHCOO−、及び−CHOCO−からなる群より選択される基を表す。
一般式(1)において、Mはメソゲン基を表す。Mの具体例を挙げると、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の群から選択された2〜4個の骨格を、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH−、−OCH−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CHCOO−、及び−CHOCO−等の結合基によって結合されて形成される基を表す。
前記のメソゲン基Mが有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−O−R、−O−C(=O)−R、−C(=O)−O−R、−O−C(=O)−O−R、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−NR、または−O−C(=O)−NRを表す。
ここで、R及びRは、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を表す。R及びRがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、Rは、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。前記「置換基を有してもよい炭素原子数1〜10個のアルキル基」における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜6個のアルコキシ基、炭素原子数2〜8個のアルコキシアルコキシ基、炭素原子数3〜15個のアルコキシアルコキシアルコキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7個のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
液晶層形成用組成物は、1種類の重合性液晶化合物を単独で含んでいてもよく、2種類以上の重合性液晶化合物を任意の比率で組み合わせて含んでいてもよい。
重合性液晶化合物の分子量は、好ましくは600以上である。液晶層形成用組成物が後述するように一般式(2)で表される化合物を含む場合、重合性液晶化合物の分子量を前記のように大きくすれば、一般式(2)で表される化合物の分子がそれよりも分子量の大きい重合性液晶化合物の隙間に入り込むことができ、配向均一性を向上させることができる。
液晶層形成用組成物において、重合性液晶化合物の濃度は、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上であり、通常40重量%以下、好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。重合性液晶化合物の濃度をこのような範囲に収めることにより、重合性液晶化合物の析出を抑制しながら、所望の液晶層を効率よく成膜できる。
光重合開始剤としては、例えば、所定の感光波長域の光を含む活性光を照射されることにより、ラジカル又は酸を発生させる公知の化合物が使用できる。
光重合開始剤の例を挙げると、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp′−ジクロロベンゾフェノン、pp′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]や1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)などのカルバゾールオキシム化合物、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。なお、所望する物性に応じて光重合開始剤は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて液晶層形成用組成物に公知の光増感剤や重合促進剤としての三級アミン化合物を含ませて、液晶層形成用組成物の硬化性をコントロールすることもできる。
光重合開始剤の配合割合は、液晶層形成用組成物中0.03重量%〜7重量%であることが好ましい。光重合開始剤の配合量が0.03重量%より少ないと重合度が低くなり得られるコレステリック樹脂層の膜強度が低下する場合がある。逆に7重量%より多いと、重合性液晶化合物の配向を阻害して液晶相が不安定になる場合がある。
液晶層形成用組成物は、通常、溶媒を含む。溶媒としては、コレステリック樹脂層の材料を溶解する限り任意のものを使用できる。なかでも、重合性液晶化合物の溶解性及び溶媒の乾燥速度の制御性の観点から、環状ケトン構造を有する溶媒(以下、適宜「環状ケトン溶媒」という。)と環状エーテル構造を有する溶媒(以下、適宜「環状エーテル溶媒」という。)とを組み合わせて用いることが好ましい。環状ケトン溶媒と環状エーテル溶媒とを含む場合、通常、液晶層形成用組成物はこれらの溶媒に他の成分が溶解した溶液の状態で使用される。環状ケトン溶媒及び環状エーテル溶媒を含むことにより、液晶層形成用組成物において重合性液晶化合物の溶解性と溶媒の乾燥速度の制御性とを良好にして、欠陥のない均一な成膜が可能となる。この利点は、溶媒に溶解し難い傾向がある高Δn重合性液晶性化合物を用いた場合に顕著である。
環状ケトン溶媒としては、例えば、シクロプロパノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられ、中でもシクロペンタノンが好ましい。なお、環状ケトン溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
環状エーテル溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等が挙げられ、中でも1,3−ジオキソランが好ましい。なお、環状エーテル溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
液晶層形成用組成物において、環状ケトン溶媒は環状エーテル溶媒よりも蒸気圧が低いことが好ましい。この観点から、環状ケトン溶媒と環状エーテル溶媒との重量比率(環状ケトン溶媒/環状エーテル溶媒)は、通常30/70以上、好ましくは40/60以上、より好ましくは45/55以上であり、通常90/10以下、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下である。前記範囲の下限以上とすることにより、溶媒の乾燥速度が過度に速くなることを防止して厚みムラの発生を抑制できる。また、前記範囲の上限以下とすることにより、溶媒の乾燥速度が過度に遅くなることを防止して液晶層及びコレステリック樹脂層に溶媒が残留することを抑制できる。
液晶層形成用組成物における環状ケトン溶媒及び環状エーテル溶媒の量は、重合性液晶化合物100重量部に対する環状ケトン溶媒及び環状エーテル溶媒の合計量で、通常100重量部以上、好ましくは150重量部以上、より好ましくは200重量部以上であり、通常1900重量部以下、好ましくは900重量部以下、より好ましくは500重量部以下である。この範囲の下限以上とすることにより重合性液晶化合物の析出を安定して抑制でき、この範囲の上限以下とすることにより溶媒量が過剰となって液晶層及びコレステリック樹脂層の製造効率が低下することを防止できる。
液晶層形成用組成物は、下記一般式(2)で表される化合物を含んでいてもよい。
−A−Z−A−R (2)
一般式(2)において、R及びRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基からなる群より選択される基を表す。
前記アルキル基及びアルキレンオキサイド基は、置換されていなくてもよく、ハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい。さらに、アルキル基及びアルキレンオキサイド基のそれぞれにおいて、2以上の置換基が存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
また、前記ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基は、炭素原子数1〜2個のアルキル基及び/又はアルキレンオキサイド基と結合していてもよい。
及びRとして好ましい例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基が挙げられる。
及びRの少なくとも一方は重合性官能基であることが好ましい。R及び/又はRとして重合性官能基を有することにより、前記一般式(2)で表される化合物が硬化時に液晶層中に固定され、より強固な膜であるコレステリック樹脂層を形成することができる。ここで重合性官能基とは、例えば、重合性液晶化合物と同様のものが挙げられ、中でもカルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、及びアミノ基が好ましい。
一般式(2)において、A及びAはそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基を表す。前記1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基は、置換されていなくてもよく、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜10個のアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の置換基で1つ以上置換されていてもよい。さらに、A及びAのそれぞれにおいて、2以上の置換基が存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
及びAとして特に好ましいものとしては、1,4−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、及び2,6−ナフチレン基が挙げられる。これらの芳香環骨格は脂環式骨格と比較して比較的剛直であり、重合性液晶化合物のメソゲンとの親和性が高く、配向均一能がより高くなる。
一般式(2)において、Zは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH−、−OCH−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CHCOO−、及び−CHOCO−からなる群より選択される。Zとして特に好ましいものとしては、単結合、−OCO−及び−CH=N−N=CH−が挙げられる。
一般式(2)で表される化合物は、少なくとも一種が液晶性を有することが好ましく、また、キラリティを有することが好ましい。また、液晶層形成用組成物は、一般式(2)で表される化合物として、複数の光学異性体の混合物を含有することが好ましい。例えば、複数種類のエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物を含有することができる。一般式(2)で表される化合物の少なくとも一種は、その融点が、50℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。
一般式(2)で表される化合物が液晶性を有する場合には、その屈折率異方性は高いことが好ましい。これにより、液晶層形成用組成物の屈折率異方性を向上させることができ、広帯域の円偏光分離素子を作製することができる。一般式(2)で表される化合物の少なくとも一種の屈折率異方性は、好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。
なお、一般式(2)で表される化合物の中には重合性液晶化合物としての要件を充足するものもありえ、そのような化合物は重合性液晶化合物として扱うものとする。
また、一般式(2)で表される化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
液晶層形成用組成物において、前記一般式(2)で表される化合物の分子量が600未満であることが好ましい。一般式(2)で表される化合物の分子量が600未満であることにより、一般式(2)で表される化合物がそれよりも分子量の大きい重合性液晶化合物の隙間に入り込むことができ、液晶層形成用組成物における液晶化合物の配向均一性を向上させることができる。
一般式(2)で表される化合物として特に好ましい具体例としては、例えば、下記の化合物(A1)〜(A10)が挙げられる。なお、化合物(A3)において、「*」はキラル中心を表す。
Figure 2011186158
Figure 2011186158
一般式(2)で表される化合物の配合割合は、(一般式(2)で表される化合物の合計重量)/(重合性液晶化合物の合計重量)の重量比で、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.15以上が特に好ましく、また、1以下が好ましく、0.65以下がより好ましく、0.45以下が特に好ましい。前記重量比が小さすぎると液晶層形成用組成物における液晶化合物の配向均一性が不十分となる場合があり、また逆に大きすぎると液晶層形成用組成物における重合性液晶化合物の配向均一性が低下したり、液晶層形成用組成物の液晶相の安定性が低下したり、液晶層形成用組成物の液晶組成物としての屈折率異方性が低下して、成膜した場合に所望の光学的性能(例えば、円偏光分離特性)が得られない場合がある。なお、合計重量とは、1種を用いた場合にはその重量を示し、2種以上用いた場合には合計の重量を示す。
液晶層形成用組成物は、硬化後の膜強度向上や耐久性向上のために、架橋剤を含んでいてもよい。当該架橋剤としては、液晶層形成用組成物を塗布して形成される液晶層の硬化時に同時に反応したり、硬化後に熱処理を行って反応を促進したり、湿気により自然に反応が進行したりして、コレステリック樹脂層の架橋密度を高めることができ、かつ配向均一性を悪化させないものを適宜選択し用いることができる。また架橋剤は、例えば紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
架橋剤の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;などが挙げられる。なお、架橋剤は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、液晶層形成用組成物には架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を含ませ、膜強度や耐久性向上に加えて生産性を向上させるようにしてもよい。
前記架橋剤の配合割合は、液晶層形成用組成物を硬化して得られるコレステリック樹脂層中における架橋剤の濃度が0.1重量%〜15重量%となるようにすることが好ましい。架橋剤の配合割合が0.1重量%より少ないと架橋密度向上の効果が得られない可能性があり、逆に15重量%より多いとコレステリック樹脂層の安定性を低下させる可能性がある。
液晶層形成用組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。当該界面活性剤としては、配向を阻害しないものを適宜選択して使用することができる。
界面活性剤の例を挙げると、疎水基部分にシロキサン、フッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤等が好適に使用できる。中でも、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤としては、例えば、OMNOVA社PolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652;ネオス社フタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D;セイミケミカル社サーフロンのKH−40等を用いることができる。なお、界面活性剤は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤の配合割合は、液晶層形成用組成物を硬化して得られるコレステリック樹脂層中における界面活性剤の濃度が0.05重量%〜3重量%となるようにすることが好ましい。界面活性剤の配合割合が0.05重量%より少ないと空気界面における配向規制力が低下して配向欠陥が生じる場合がある。逆に3重量%より多い場合には、過剰の界面活性剤が液晶化合物分子間に入り込み、配向均一性を低下させる場合がある。
液晶層形成用組成物は、カイラル剤を含んでいてもよい。カイラル剤の具体例としては、特開2005−289881号公報、特開2004−115414号公報、特開2003−66214号公報、特開2003−313187号公報、特開2003−342219号公報、特開2000−290315号公報、特開平6−072962号公報、米国特許第6468444号公報、国際公開第98/00428号、特開2007−176870号公報、等に掲載されるものを適宜使用することができる。その具体例を挙げると、例えばBASF社パリオカラーのLC756が挙げられる。なおカイラル剤は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
カイラル剤の配合割合は、所望する光学的性能を低下させない範囲とする。具体的なカイラル剤の配合割合は、液晶層形成用組成物中、1重量%〜60重量%とすることが好ましい。
液晶層形成用組成物は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した成分以外にその他の成分を含んでいてもよい。例えば、液晶層形成用組成物は、ポットライフ向上のための重合禁止剤、耐久性向上のための酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等を含んでいてもよい。ただし、これらその他の成分の配合割合は、所望する光学的性能を低下させない範囲とする。なお、その他の成分は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
塗布工程では、前記の液晶層形成用組成物を、基材の平滑面上に塗布し、塗膜として液晶層を形成する。塗布は、例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法等により実施すればよい。基材の凹凸面ではなく平滑面に液晶層形成用組成物を塗布することにより、形成される塗膜の厚みを均一にして、コレステリック樹脂層に発現する光学特性を均一にできる。
塗布工程の後で、必要に応じて、塗膜中の重合性液晶化合物を配向させる配向処理工程を行う。配向は、例えば塗膜を50〜150℃で0.5〜10分間加温することにより行なう。当該配向処理工程を行うことにより、塗膜中の重合性液晶化合物を良好に配向させることができる。
配向処理工程の後で、塗膜に対して活性光を照射する硬化工程を行う。硬化工程を行うことにより、重合性官能基が反応して重合性液晶化合物等が重合し、液晶層が硬化してコレステリック樹脂層が得られる。
また、硬化工程においては活性光を基材側から塗膜に照射するようにする。これにより、活性光は基材を透過してから塗膜に入射することになる。このような場合でも、本発明に係る基材は塗膜が形成される面が平滑な面であり、ヘイズが低く、且つ活性光の透過率に優れるため、活性光の照射強度を均一にすることができ、ひいてはコレステリック樹脂層に発現する光学特性を平滑面における位置によらず均一にできる。
なお、硬化工程における活性光の照射は、少なくとも1回行えばよく、2回以上の回数行ってもよい。
ここで活性光とは、可視光のみならず紫外線及びその他の電磁波をも含む。具体的な活性光の波長範囲に制限は無いが、通常は、最大ピーク波長が350nm以上400nm以下の光を用いる。これにより、吸収スペクトルが可視光領域に影響を及ぼさない光重合開始剤を選択できる。さらに、この波長範囲は一般的に基材に用いられる樹脂の透過率が高い波長範囲であるため、基材の材料選択に自由度が持たせられる。また、この波長範囲であれば、活性光を照射する光源の選択にも自由度が持たせられる。
活性光を照射する際の具体的な条件及び操作内容は、製造しようとするコレステリック樹脂層の構成に応じて適切に設定すればよい。例えば波長200nm〜500nmの活性光を照射する場合、照射時間は0.01秒〜3分照射すればよい。また、例えば0.01mJ/cm〜50mJ/cmの微弱な活性光(通常は紫外線)の照射と加温処理とを複数回交互に繰り返し、反射偏光分離帯域の広い円偏光分離素子を得ることもできる。さらに、上記の微弱な活性光の照射等による反射偏光分離帯域の拡張を行った後に、例えば50mJ/cm〜10,000mJ/cmの比較的強い活性光(通常は紫外線)を照射し、重合性液晶化合物を完全に重合させ、コレステリック樹脂層とすることができる。上記の反射偏光分離帯域の拡張及び強い活性光の照射は、空気下で行ってもよく、又はその工程の一部又は全部を、酸素濃度を制御した雰囲気(例えば、窒素雰囲気下)中で行ってもよい。
前記の塗布工程、配向処理工程及び硬化工程は、1回だけ行いコレステリック樹脂層を1層だけ形成するようにしてもよく、2回以上繰り返して2層以上のコレステリック樹脂層を形成することもできる。ただし、塗布工程及び硬化工程をそれぞれ1回のみ行った場合であっても、良好に配向した重合性液晶化合物の重合物を含み、例えば5μm以上といった十分な厚みのコレステリック樹脂層を容易に形成することはできる。
コレステリック樹脂層の厚さに制限はないが、その乾燥膜厚は、好ましくは3.0μm以上、より好ましくは3.5μm以上であり、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは8μm以下である。コレステリック樹脂層の乾燥膜厚が3.0μmより薄いと反射率が低下する傾向があり、逆に10.0μmより厚いと、コレステリック樹脂層に対して斜め方向から観察した時に着色することがある。なお、前記乾燥膜厚は、コレステリック樹脂層が2以上の層である場合は各層の膜厚の合計を指し、コレステリック樹脂層が1層である場合にはその膜厚を指す。
〔4.1/4波長板〕
本発明のコレステリック積層フィルムは、1/4波長板を備えていてもよい。1/4波長板の位置は、基材、コレステリック樹脂層及び1/4波長板がこの順になる位置でもよく、1/4波長板、基材及びコレステリック樹脂層がこの順になる位置でもよい。1/4波長板を備えるようにすることによって、本発明のコレステリック積層フィルムを輝度向上フィルムとして使用できるようになる。
1/4波長板は、その正面方向のリターデーションRe(以下、「Re」と略記することがある。)を透過光の波長の略1/4波長とすることができる。ここで、透過光の波長範囲は、本発明のコレステリック積層フィルムに求められる所望の範囲とすることができ、具体的には例えば400nm〜700nmである。また、正面方向のリターデーションReが透過光の波長の略1/4波長であるとは、Re値が、透過光の波長範囲の中心値において、中心値の1/4の値から±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲であることをいう。このようなリターデーション値を有することにより、偏光変換機能、即ち円偏光を直線偏光に変換する機能を発現することができる。
1/4波長板の厚み方向のリターデーションRth(以下、「Rth」と略記することがある。)は、本発明のコレステリック積層フィルムに求められる光学特性に応じて任意に選択できる。例えば本発明のコレステリック積層フィルムを輝度向上フィルムとして液晶表示装置に実装した場合、Rthの値は、液晶表示装置の斜め方向の輝度と色に影響を及ぼす。具体例を挙げると、斜め方向の輝度が高く、輝度向上フィルムがない場合と比較した色度の差が少ない(つまり、輝度向上フィルムが斜め方向の色に影響を与えない)という特性を期待する場合は、厚み方向のリターデーションRthの値は、透過光の波長範囲の中心値において0nm未満であることが好ましく、より好ましくは−30nm〜−1000nm、特に好ましくは−50nm〜−300nmの範囲である。一方、輝度向上フィルムによって斜め方向の色を意図的に変化させて、液晶表示装置の液晶パネルの着色特性を補償するよう設計する場合は、厚み方向のリターデーションRthの値は、透過光の波長範囲の中心値において0nm以上であることが好ましく、より好ましくは55nm〜600nm、特に好ましくは60nm〜300nmの範囲である。色の変化の挙動は、コレステリック樹脂層のピッチの分布に依存するが、大きな傾向として出射側のピッチが短い場合は青色に、長い場合は黄色に変化する。
ここで、正面方向のリターデーションReは、式I:Re=(nx−ny)×d(式I中、nxは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であってnxに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。)で表される値であり、厚み方向のリターデーションRthは、式II:Rth={(nx+ny)/2−nz}×d(式II中、nxは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であってnxに直交する方向の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。)で表される値である。
なお、前記正面方向のリターデーションRe及び厚み方向のリターデーションRthは、市販の位相差測定装置を用いて測定されたフィルム全体の平均値である。
1/4波長板としては、例えば、フィルム状のポリマーを延伸してなる延伸フィルムを用いることができる。ポリマーとしては通常は熱可塑性樹脂を用い、中でも透明樹脂を好ましく用いることができる。ここで透明樹脂は、例えば1mm厚板で全光透過率80%以上のものを使用することができる。透明樹脂の例を挙げると、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、脂環式オレフィンポリマーなどが挙げられる。なお、延伸フィルムに用いる樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。具体的な材料の好ましい選択は、厚み方向のリターデーションRthの値によって異なる。
厚み方向のリターデーションRthが0nm未満の1/4波長板は、例えば、固有複屈折が負である樹脂を含むフィルムを延伸することによって得られる。固有複屈折が負である樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂が挙げられる。ここでスチレン系樹脂とは、スチレン構造を繰り返し単位の一部又は全部として有するポリマー樹脂であり、ポリスチレン又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体を好適に用いることができる。
スチレン系樹脂の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンの重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常300,000以下、好ましくは250,000以下、より好ましくは200,000以下である。
1/4波長板は、好ましくは、スチレン系樹脂からなる層と、他の熱可塑性樹脂を含む層との積層構造を有する。前記の積層構造を有することにより、1/4波長板は、スチレン系樹脂による光学的特性と、他の熱可塑性樹脂による機械的強度とを兼ね備えた素子となる。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、脂環式構造を有する樹脂やメタクリル樹脂を好適に用いることができる。
脂環式構造を有する樹脂としては、例えば脂環式オレフィンポリマーが挙げられる。脂環式オレフィンポリマーは、主鎖及び/または側鎖にシクロアルカン構造又はシクロアルケン構造を有する非晶性のオレフィンポリマーである。機械的強度や耐熱性などの観点から、主鎖にシクロアルカン構造を含有する重合体が好適である。また、シクロアルカン構造としては、単環、多環(縮合多環、橋架け環など)が挙げられる。シクロアルカン構造の一単位を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、1/4波長板の機械的強度、耐熱性、及び成形性の諸特性が高度にバランスされ好適である。脂環式オレフィンポリマーとしては、例えば、特開平05−310845号公報、特開平05−097978号公報、米国特許第6,511,756号公報に記載されているものが挙げられる。
メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルを主成分とする重合体であり、例えばメタクリル酸エステルの単独重合体や、メタクリル酸エステルとその他の単量体との共重合体が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、通常、メタクリル酸アルキルが用いられる。共重合体とする場合は、メタクリル酸エステルと共重合するその他の単量体としては、アクリル酸エステルや、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物などが用いられる。
1/4波長板の好ましい具体的態様として、ポリスチレン樹脂からなるフィルム(a層)の両面に、他の熱可塑性樹脂からなるフィルム(b層)を積層してなる複層フィルムを延伸してなる延伸複層フィルムを挙げることができる。以下、この具体的態様について説明する。
前記a層を構成するポリスチレン樹脂しては、上記「スチレン系樹脂」と同様のものを用いることができる。
a層の材料である前記ポリスチレン樹脂及びb層の材料である前記他の熱可塑性樹脂を積層して、複層フィルムに成形する方法は、特に限定されないが、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出による成形方法、ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法、及びコーティング成形方法などの公知の方法が適宜利用され得る。中でも、製造効率や、フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出による成形方法が好ましい。押出し温度は、使用する前記ポリスチレン樹脂、及び前記他の熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択され得る。
複層フィルムは、前記a層の両面に、前記b層を積層してなる。a層とb層の間には、接着層を設けることができるが、a層とb層とを直接に積層させる(つまり、b層/a層/b層の3層構成の積層体とする)ことが好ましい。また、複層フィルムにおいて、前記a層及びその両面に積層されたb層の厚みは特に制限はないが、好ましくはそれぞれ10〜300μm及び10〜400μmとすることができる。
前記延伸複層フィルムは、前記複層フィルムを延伸してなる。当該延伸は、好ましくは一軸延伸又は斜め延伸により行うことができ、さらに好ましくはテンターによる一軸延伸又は斜め延伸により行うことができる。
他方、厚み方向のリターデーションRthが0nm以上の1/4波長板は、例えば、固有複屈折が正である樹脂を含むフィルムを延伸することによって得られる。中でも、固有複屈折が正の樹脂として上記の脂環式オレフィンポリマーを用いたフィルムが好ましい。
1/4波長板の厚みは、好ましくは50μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは600μm以下である。
ところで、本発明のコレステリック積層フィルムは、製造コスト及び管理コスト等の観点から、長尺のフィルムとして製造されることが好ましく、また、前記長尺のフィルムとして製造された本発明のコレステリック積層フィルムは巻き取られてフィルムロール体として保管及び運搬されることが好ましい。ここで、「長尺」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
本発明のコレステリック積層フィルムを長尺のフィルムとして製造する場合、1/4波長板は、遅相軸の方向が本発明のコレステリック積層フィルムの長さ方向に対して傾いていることが好ましい。具体的には、1/4波長板の遅相軸が本発明のコレステリック積層フィルムの長さ方向に対して、好ましくは45°±10°以内、より好ましくは45°±5°以内の角度で傾く。すなわち、1/4波長板の遅相軸が本発明のコレステリック積層フィルムの長さ方向に対してなす角度は、35°〜55°が好ましく、40°〜50°がより好ましい。
通常、コレステリック樹脂層と1/4波長板とを備える本発明のコレステリック積層フィルムを通過し、1/4波長板側から出射する光の多くの電場の振動成分は、1/4波長板の遅相軸に対して45°傾いている。他方、液晶表示装置に備えられた液晶表示モジュールは通常は光の入射側に二色性偏光板を備えており、その二色性偏光板の透過軸は、多くの場合、液晶表示モジュールの矩形構造に対して水平もしくは垂直である。ここで、本発明のコレステリック積層フィルムを液晶表示装置に実装する場合、本発明のコレステリック積層フィルムから出射した光が効率よく二色性偏光板を透過できるようにすることが好ましい。そのためには、本発明のコレステリック積層フィルムを出射した光の振動方向と二色性偏光板の透過軸とが一致していることが好ましい。したがって、通常、本発明のコレステリック積層フィルムは1/4波長板の遅相軸に対しておよそ45°傾いた形状で打ち抜かれることになる。このとき、1/4波長板の遅相軸が本発明のコレステリック積層フィルムの長さ方向に対して水平もしくは垂直であると、本発明のコレステリック積層フィルムの長さ方向に対して傾いた形状で打ち抜くことになり、歩留まりが非常に悪くなる。しかし、1/4波長板の遅相軸が本発明のコレステリック積層フィルムの長さ方向に対して傾いていれば、打ち抜かれたフィルム片の矩形形状の傾きを緩和できるか、もしくは打ち抜く形状を本発明のコレステリック積層フィルムの長さ方向に対して傾けなくてもよくなるため、歩留まりが向上する。
このような特性は、例えば、特開昭50−83482号公報、特開平2−113920号公報、特開平3−182701号公報、特開2000−9912号公報、特開2002−86554号公報、特開2002−22944号公報、国際公開第2007/111313号に記載された方法を用いて、1/4波長板用の延伸前フィルムを斜め延伸することによって得ることができる。
〔5.二色性偏光子〕
本発明のコレステリック積層フィルムは、二色性偏光子を備えていてもよい。中でも、本発明のコレステリック積層フィルムが1/4波長板を備える場合に、二色性偏光子を備えるようにすることが好ましい。この場合の二色性偏光子の位置は、通常、コレステリック樹脂層、1/4波長板及び二色性偏光子がこの順に並ぶような位置とする。これにより、本発明のコレステリック積層フィルムを輝度向上フィルム等の光学素子として液晶表示装置等に設けた場合に、より偏光度の高い直線偏光を表示面に向けて出光させることが可能となる。
二色性偏光子は、通常、直線偏光子、即ちある直線偏光を透過させ、その他の光を吸収若しくは反射する偏光子である。二色性偏光子の偏光度は特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。また、偏光子の平均厚みは好ましくは5μm〜80μmである。
二色性偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得られるもの、またはポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ延伸しさらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるものなどが挙げられる。
さらに、二色性偏光子は、保護層を備えていてもよく、備えていなくてもよい。二色性偏光子が保護層を備えない場合、基材、コレステリック樹脂層又は1/4波長板が二色性偏光子の保護層の機能を兼ねるようにしてもよい。
また、二色性偏光子は、位相差フィルムを備えていてもよい。
一般に、二色性偏光子の透過軸は、その長さ方向に垂直もしくは平行であり、中でも垂直であることがより一般的である。本発明のコレステリック積層フィルムがコレステリック樹脂層、1/4波長板及び二色性偏光子を備える長尺のフィルムである場合、上述と同様の理由によって、1/4波長板を出射する光の電場の振動方向が二色性偏光子の透過軸の方向に近づくよう、1/4波長板の遅相軸が本発明のコレステリック積層フィルムの長さ方向に対して傾いていることが好ましい。
また、1/4波長板の遅相軸が傾く向きは、二色性偏光子を通して1/4波長板を見て、コレステリック樹脂層が右円偏光を透過する特性を有する場合は二色性偏光子の透過軸を基準に反時計回り方向であることが好ましく、左円偏光を透過する特性を有する場合は時計回り方向であることが好ましい。
〔6.接着層〕
本発明のコレステリック積層フィルムは接着層を備えていてもよい。例えば、1/4波長板及び二色性偏光子等を基材及びコレステリック樹脂層とを貼り合わせるために接着層を設けてもよい。
接着層は広義の接着剤で形成された層である。広義の接着剤の例を挙げると、硬化によって常温下でタックを失う狭義の接着剤(ホットメルト接着剤、UV硬化型粘着剤、EB型硬化粘着剤等を含む。)と、タックを失わない粘着剤(感圧接着剤等)が挙げられる。
接着剤の選択に特に制限は無いが、通常は透明性の高い接着剤を用いる。また、製造工程の時間短縮のために、貼り合わせ直後から物性が変化しない粘着剤か、速やかに硬化する接着剤(例えば、ホットメルト接着剤、UV硬化型接着剤、EB硬化型接着剤等)が好ましい。さらに製品の信頼性と機械的強度を確保するためには、UV硬化型接着剤及びEB硬化型接着剤が特に好ましい。なお、接着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
接着層には、本発明の効果を著しく損なわない限り添加剤を含ませてもよい。添加剤の例を挙げると、光拡散剤が挙げられる。光拡散剤は光線を拡散させる性質を有する粒子であり、無機フィラーと有機フィラーとに大別できる。無機フィラーとしては、例えば、ガラス、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、マグネシウムシリケート、およびこれらの混合物等が挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリシロキサン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル、及びこれらの架橋物等が挙げられる。これらの中でも、有機フィラーとしては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリシロキサン樹脂、及びこれらの架橋物からなる微粒子が、高分散性、高耐熱性、成形時の着色(黄変)がない点で好ましい。これらの中でも、より透明性に優れる点でアクリル樹脂の架橋物からなる微粒子がより好ましい。また、光拡散剤として2種類以上の素材からなるものを用いてもよいし、2種類以上の光拡散剤を組み合わせて用いてもよい。光拡散剤の量は、未硬化状態の接着剤に含まれる固形分100重量部に対して、通常0.5〜20重量部である。光拡散剤の具体的な量は、所望のヘイズ値と接着層の膜厚とで決定される。
接着層の厚みは、光学特性、信頼性及び機械的強度を損なわない限りにおいて、任意に選択できるが、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。100μmよりも厚いと透過率が低くなったり接着層の硬化が不十分となって信頼性及び機械的強度が低くなったりする可能性がある。0.5μmよりも薄いと、貼り合わせる部材の表面凹凸の影響等によって、貼り合わせ工程で気泡が混入する可能性がある。
〔7.その他の層〕
本発明のコレステリック積層フィルムは、本発明の効果を著しく損なわない限り、さらに別の層を備えていてもよい。そのような層の例を挙げると、拡散性のあるシート、ハードコート層、光学補償層等が挙げられる。ここで、光学補償層としては、基板上に液晶分子をホメオトロピック配向させて硬化させたホメオトロピック液晶配向フィルム(特許3992969号公報)、基板上に液晶分子をネマチックハイブリッド配向させた状態を硬化したネマチックハイブリッド液晶配向フィルム(特開2000−66192号公報)等が挙げられる。
〔8.用途〕
本発明のコレステリック積層フィルムは、円偏光分離機能を有するコレステリック樹脂層を備えるため、例えば円偏光分離素子として使用できる。
また、本発明のコレステリック積層フィルムが1/4波長板を備える場合、例えば、輝度向上フィルムとして用いることができる。輝度向上フィルムは、入射した光のうち所定の偏光を透過させ、その他の偏光を反射する機能を有する。かかる輝度向上フィルムは、例えば液晶表示装置等に設けられた場合に、入射した光のうち一部を画像表示に必要な偏光として表示面側へ出光し、それ以外の光は反射するようになっている。輝度向上フィルムにおいて反射した偏光は、反射板などの他の部材において再び拡散及び反射し、そのうちの少なくとも一部は偏光状態を変化させてから再び輝度向上フィルムに入射するようになっている。このようにして、画像表示に必要な偏光を多く供給することができ、その結果、輝度向上フィルムを備えた液晶表示装置等では、輝度を向上させることが可能である。輝度向上フィルムとして本発明のコレステリック積層フィルムを液晶表示装置に実装する場合、コレステリック樹脂層が光源に近い側となり、1/4波長板が光源から遠い側となる向きで設ける。これにより、光源から発せられた光のうち右円偏光及び左円偏光のうち一方の円偏光だけがコレステリック樹脂層を透過し、1/4波長板で偏光状態を直線偏光に変更されて、表示面へ向けて出光することになる。
なお、本発明のコレステリック積層フィルムを円偏光分離素子及び輝度向上フィルム等の光学素子として使用する場合、基材は剥がしてもよいが、剥がさずに光学素子の一部として用いてもよい。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、以下の記載において、量を表す「部」は、特に断らない限り「重量部」を表す。また、構造式においてEtはエチル基を表す。
〔評価方法〕
(1.基材のヘイズの測定方法)
日本電色工業株式会社の濁度計(NDH2000)を用いて、D65光源、方法1(JIS K7105に相当)の設定で測定を実施した。
(2.基材の透過率の測定方法)
日本分光株式会社製の分光光度計(V550)を用いて、指定の波長の全光線透過率を測定した。
(3.点状欠点の確認方法)
製造されたフィルムを顕微鏡を用いて透過観察を実施し、面状の乱れの有無を目視確認した。点状欠点は、表面の凹凸を反映していると思われる多数の暗い点状の模様として確認される。
(4.広帯域ムラの確認方法)
製造されたフィルムを顕微鏡を用いて透過観察を実施し、色ムラの有無を目視確認した。色ムラは局所的な広帯域化不良が可視化したものであるため、ニュートラルに見える通常部に着色した(例えば黄色の)スポットとして確認される。
(5.貼付きの確認方法)
製造されたフィルムを2枚準備し、コレステリック樹脂層と基材とが向かい合うように重ね合わせた。その上に、圧力が約4kPa掛かるように200g分銅を30秒間載せ、2枚のフィルムが光学密着するか確認した。
(6.ロット間の広帯域挙動差の確認方法)
各実施例及び比較例においてそれぞれ同様の方法によってロットの異なる3枚のフィルムを製造し、そのうちの1枚を基準フィルムとした。その基準フィルムに対して、450nm〜700nmの波長範囲に亘るスペクトルがフラットになるよう照射量の条件出しを行い、これを基準照射量条件とし、得られたスペクトルを基準スペクトルとした。なお基準照射量条件は、実施例及び比較例ごとに基材の透過率が異なるため、それぞれ別の値となる。
残る2枚のフィルムに対して基準スペクトルを元に得られるスペクトルが基準スペクトルと一致するように照射量条件の微調整を実施した。この結果、基準照射量条件に対して、照射量の変更が5%未満の場合を「良」、5%以上の場合を「不良」として判定した。
〔実施例1〕
(液晶層形成用組成物の調製)
後述する化合物1を24重量部、化合物2を6重量部、カイラル剤(BASF社製、商品名LC756)2重量部、重合開始剤(チバ・ジャパン社製、商品名イルガキュアOXE02)1重量部、フッ素系界面活性剤(ネオス社製、商品名フタージェント209F)0.032重量部、シクロペンタノン42重量部、及び1,3−ジオキソラン28重量部を混合して、液晶層形成用組成物を調製した。
化合物1としては、下記化合物を使用した。この化合物1は高Δn重合性液晶化合物であり、その屈折率異方性は0.22である。
Figure 2011186158
化合物2としては、下記化合物を使用した。この化合物2は液晶性を有さない化合物である。
Figure 2011186158
(コレステリック積層フィルムの製造)
基材として、東洋紡績株式会社製のコスモシャインA4100を用意した。この基材は、フィラーを含まないフィルムの片面にフィラー層が形成されたタイプの基材であり、その厚みは100μmであった。また、そのおもて面が凹凸面であり、裏面が平滑面であり、ヘイズが0.9%であり、測定波長365nmにおける透過率が86%であった。なお、凹凸面及び平滑面の凹凸及び平滑さは、方向を変えて2回測定したRzの平均値が、凹凸面で0.46μm、平滑面で0.23μmであった。
前記の基材に対して、以下の工程を、基材を一定の速度で搬送しながら、連続的に実施した。
フィルム状の基材のロール体から基材を巻き出し、基材の平滑面にコロナ放電処理及びラビング処理を行った後、コロナ放電処理面に対して先に調製した液晶層形成用組成物を、乾燥膜厚が5μmとなるようにダイコーターで塗布し、液晶層に相当する塗膜を形成した。塗膜が形成された基材を配向用ドライヤ内に搬送し、100℃で5分間配向処理した。ドライヤから搬出された基材上の塗膜に対して、搬送経路上にある2組の紫外線照射装置と加温用ドライヤによって、微弱な紫外線の照射処理と、それに続く加温処理を2回実施した。紫外線の照射量は、0.1mJ/cm〜65mJ/cmの範囲内で適宜調整を行い、加温処理は100℃で1分間行った。なお、前記の紫外線の最大ピーク波長は365nmであり、紫外線の照射はいずれも基材側から行った。加温処理が終了した後で、塗膜を窒素雰囲気下で、出力を100%に設定した高出力紫外線照射装置(Light Hammer(登録商標)、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)からの紫外光に60mmの距離で塗膜面側から2秒間暴露させることによって硬化させた。これにより、基材とコレステリック樹脂層とを備えるフィルムが得られた。
得られたフィルムについて、上述した方法によって、点状欠陥の有無、広帯域ムラの有無、貼付きの有無、およびロット間の広帯域挙動差を評価した。結果を表1に示す。なお表1においては、コレステリック樹脂層を形成した基材の面(塗布面)の平滑性について、塗布面が平滑なものを「平滑」と示し、平滑でないものを「凹凸」と示している。
〔実施例2〕
基材として、帝人デュポンフィルム株式会社製のテイジンテトロンフィルムO3PF8を用いたこと以外は実施例1と同様にして、基材とコレステリック樹脂層とを備えるフィルムを製造し、点状欠陥の有無、広帯域ムラの有無、貼付きの有無、およびロット間の広帯域挙動差を評価した。結果を表1に示す。
なお、実施例2で用意した基材は、フィラーを含まないフィルムの片面にフィラー層が形成されたタイプの基材であり、その厚みは100μmであった。また、そのおもて面が凹凸面であり、裏面が平滑面であり、ヘイズが0.9%であり、測定波長365nmにおける透過率が81%であった。なお、凹凸面及び平滑面の凹凸及び平滑さは、方向を変えて2回測定したRzの平均値が、凹凸面で0.92μm、平滑面で0.14μmであった。
〔比較例1〕
基材として、日本ゼオン株式会社製のゼオノアフィルムZF16−130を用いたこと以外は実施例1と同様にして、基材とコレステリック樹脂層とを備えるフィルムを製造し、点状欠陥の有無、広帯域ムラの有無、貼付きの有無、およびロット間の広帯域挙動差を評価した。結果を表1に示す。
なお、比較例1で用意した基材は、両面ともが平滑面であるフィルムであり、その厚みが130μmであった。また、ヘイズが0.7%であり、測定波長365nmにおける透過率が91%であった。なお、平滑面の平滑さは、方向を変えて2回測定したRzの平均値が、0.09μmであった。
〔比較例2〕
基材として、東レ株式会社製のルミラーT60を用いたこと以外は実施例1と同様にして、基材とコレステリック樹脂層とを備えるフィルムを製造し、点状欠陥の有無、広帯域ムラの有無、貼付きの有無、およびロット間の広帯域挙動差を評価した。結果を表1に示す。
なお、比較例2で用意した基材は、両面ともが凹凸面であるフィルムであり、その厚みが100μmであった。また、ヘイズが2.2%であり、測定波長365nmにおける透過率が72%であった。なお、凹凸面の凹凸は、方向を変えて2回測定したRzの平均値が、0.34μmであった。
〔比較例3〕
基材として、日本ゼオン株式会社製のゼオノアフィルムZF16−130の片面にエンボス加工を施したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、基材とコレステリック樹脂層とを備えるフィルムを製造し、点状欠陥の有無、広帯域ムラの有無、貼付きの有無、およびロット間の広帯域挙動差を評価した。結果を表1に示す。
なお、比較例3で用意した基材は、フィルムの片面にエンボス加工による凹凸が形成されたタイプの基材であり、その厚みは130μmであった。また、エンボス加工が施された面は凹凸面となっており、その反対側の面は平滑面のままであり、ヘイズが2.9%であり、測定波長365nmにおける透過率が91%であった。なお、凹凸面の凹凸は、方向を変えて2回測定したRzの平均値が、1.1μmであった。
〔参考例1〕
重合開始剤をIRGACURE907(チバ・ジャパン社製)に変更し、微弱な紫外線の最大ピーク波長を313nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、検討を行った。液晶層形成用組成物の吸収により、微弱な紫外線の照射量が前記の範囲を超えて高くなり、また得られたスペクトル形状も不完全であったが、同じ評価を実施した。結果を表1に示す。なお、使用した基材の測定波長313nmにおける透過率は15%であった。
Figure 2011186158
〔検討〕
表1から分かるように、実施例1,2では点状欠点、色ムラ、貼付き及びロット間広帯域挙動差のいずれの評価においても良好な結果が得られた。
他方、比較例を見ると、比較例1では貼付きの評価において光学密着が生じていた。これは、基材のコレステリック樹脂層が形成された面とは反対側の面が平滑面であったため、この平滑面の滑り性が低かったためと推察される。
比較例2では点状欠点が生じていた。これは、基材のコレステリック樹脂層が形成された面が凹凸面であったため、この凹凸面の凹凸によりコレステリック樹脂層の厚みが不均一となったためと推察される。さらに比較例2ではロット間広帯域挙動差が不良である。これは、照射された紫外線の最大ピーク波長での透過率が低いため、ロット間の紫外線照射強度の差が大きくなったためと推察される。
比較例3では色ムラの評価において点状ムラが確認された。これは、基材のヘイズが大きいために紫外線照射強度にムラが生じたためと推察される。
本発明のコレステリック積層フィルムは、例えば円偏光分離素子、輝度向上フィルム等の光学素子として用いて好適であり、特に液晶表示装置用の光学素子に適している。

Claims (8)

  1. 基材と、前記基材上に設置されたコレステリック規則性を有する樹脂層とを備えたフィルムであって、
    前記樹脂層は、コレステリック規則性の螺旋ピッチが勾配を有し、
    前記基材は、前記樹脂層が設置された平滑な平滑面と、前記平滑面とは反対側に位置し凹凸を有する凹凸面とを備え、且つ、前記基材のヘイズが2.5%以下であり、前記基材の波長365nmでの透過率が80%以上である、フィルム。
  2. 前記基材がフィラーを有する層を備え、
    前記フィラーを有する層の表面が前記凹凸面となっている、請求項1記載のフィルム。
  3. 前記基材がポリエチレンテレフタレートを含む、請求項1又は2記載のフィルム。
  4. さらに1/4波長板を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム。
  5. 請求項4記載のフィルムを巻き取ってなるフィルムロール体。
  6. 前記1/4波長板の遅相軸が、前記フィルムの長さ方向に対して45°±10°以内で傾いている、請求項5記載のフィルムロール体。
  7. 基材と、前記基材上に設置されたコレステリック規則性を有する樹脂層とを備えたフィルムの製造方法であって、
    前記基材上に、重合可能な液晶化合物及び光重合開始剤を含む液晶層形成用組成物を塗布して塗膜を形成する工程と、
    前記塗膜中の前記液晶化合物を配向させる工程と、
    前記光重合開始剤の感光波長域の光を含む活性光を、前記基材側から前記塗膜に対して照射する工程とを含み、
    前記基材が、前記液晶層形成用組成物を塗布される平滑な平滑面と、前記平滑面とは反対側に位置し凹凸を有する凹凸面とを備え、且つ、前記基材のヘイズが2.5%以下であり、前記基材の前記活性光の最大ピーク波長での透過率が80%以上である、フィルムの製造方法。
  8. 前記活性光の最大ピーク波長が350nm以上400nm以下である、請求項7記載のフィルムの製造方法。
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