JP2009027018A - 窒化物半導体レーザ素子およびその製造方法 - Google Patents

窒化物半導体レーザ素子およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高出力時においても十分な信頼性、CODレベルが得られる窒化物半導体レーザ素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】共振器の出射側の端面にAlGaON膜が設けられた窒化物半導体レーザ素子、ならびに、AlGaON膜を設ける前の共振器を25〜350℃で予備加熱する工程と、前記予備加熱後の共振器を50〜600℃にまで加熱した状態で、原子状窒素またはアンモニアガスを含む気体に曝す工程と、前記気体に曝しながら、共振器の光出射側の端面に100〜600℃でAlGaON膜を形成する工程とを含む窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、窒化物半導体レーザ素子およびその製造方法に関するものである。
窒化物半導体レーザ素子は、高密度光記録媒体を対象とした情報の読み出しや書き込みを行うための短波長光源技術として注目されている。さらに、短波長光源からの発光の可視光域への波長変換が可能なことから、照明やバックライトなどの可視光の光源としても期待されている。したがって、用途を拡大すべく、安定した動作が可能であり、出力の高い半導体レーザ素子の開発が盛んに行われている。
窒化物半導体レーザ素子において出力を高くした場合、レーザ光を出射する光出射端面での光密度が高くなることによって、半導体結晶が溶融したり欠陥が増殖したりするCOD(Catastrophic Optical Damage:光学損傷)が起こり、問題となっている。このCODは、窒化物半導体レーザ素子の共振器端面が発光再結合準位の存在によりレーザ光が吸収されて過度に発熱を起こすために発生する。
非発光再結合準位が発生する主要因として、共振器端面の酸化が挙げられる。特開平9−162496号公報(特許文献1)には、酸素を含まない窒化物膜を共振器端面に形成することで、共振器端面の酸化を防ぐことができると記載されている。また、特開2002−237648号公報(特許文献2)には、窒化物半導体レーザ素子の共振器端面に、共振器端面と同じ窒化物で形成された誘電体膜を形成することで、非発光再結合準位を低減できると記載されている。このように共振器端面に窒化物膜を形成する手法は従来より知られている。
窒化物の中でも特に窒化アルミニウム(AlN)は、化学的・熱的に安定で、絶縁性が高く、熱伝導率が高く放熱効果も大きいなどの優れた特徴を有している。このため、たとえば特開平3−209895号公報(特許文献3)には、共振器端面にAlNからなる保護膜を形成する技術が開示されている。また、国際公開2003/036771号パンフレット(特許文献4)においても、同様な目的で、共振器端面にAlGaN膜を形成する技術が開示されている。しかしながら、これらの酸素を含有しない膜は一般に応力が高く、たとえばダークラインの発生のような劣化に結びつくとされている。
特開平9−162496号公報 特開2002−237648号公報 特開平3−209895号公報 国際公開2003/036771号パンフレット
本発明者らは、高出力駆動時でも共振器端面の劣化を原因とした信頼性不良を起こさないような窒化物半導体レーザ素子の実現を目指して、上述したAlGaN膜を共振器端面に接して形成する技術開発に取り組んできた。まず、ECRスパッタ法を用いて、成膜温度を100℃とし、AlGaNターゲットと窒素ガスを用いて50nmのAlGaN膜を光出射側の共振器端面に形成した。また、光反射側の共振器端面には酸化シリコン/酸化チタンの誘電体多層膜を形成して、95%以上の高反射率とした。このような条件で作製された窒化物半導体レーザ素子を200hエージング後(300時間、80℃、100mW、CW駆動)、その素子のエージング前とエージング後のCODレベルを調べた(5個の窒化物半導体レーザ素子についてCODレベルの平均値を求めた)。結果、エージング前では、400mWで熱飽和したが、エージング後ではCOD破壊を起こし、そのCODレベル値は230mW程度であり、CODレベルは不十分であった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、高出力時においても十分な信頼性、CODレベルが得られる窒化物半導体レーザ素子およびその製造方法を提供することである。
本発明は、共振器の出射側の端面にAlGaON膜が設けられた窒化物半導体レーザ素子である。
本発明の窒化物半導体レーザ素子において、AlGaON膜が窒化物で形成された積層構造に隣接して設けられてなることが好ましい。
また本発明の窒化物半導体レーザ素子において、AlGaON膜中における酸素原子濃度が15%未満であることが、好ましい。
本発明の窒化物半導体レーザ素子において、AlGaON膜は、膜中の酸素濃度が共振器に隣接する側から離反するにつれて多くなるように変化していることが、好ましい。
本発明の窒化物半導体レーザ素子において、AlGaON膜の厚みは10nm〜1μmであることが、好ましい。
また本発明の窒化物半導体レーザ素子において、AlGaON膜は単結晶のAlGaONで形成されていることが、好ましい。
また、本発明の窒化物半導体レーザ素子は、AlGaON膜上に、酸化物、フッ化物または窒化物で形成された被覆膜が設けられてなることが、好ましい。この場合、前記被覆膜は、酸化アルミニウム、フッ化マグネシウム、窒化アルミニウムまたは窒化アルミニウムガリウムで形成されてなることが特に好ましい。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、5E17atoms/cc以上の酸素がドーピングされたGaN基板を備えることが、好ましい。
また本発明は、共振器の光出射側の端面にAlGaON膜を設けた窒化物半導体レーザ素子を製造する方法であって、AlGaON膜を設ける前の共振器を25〜350℃で予備加熱する工程と、前記予備加熱後の共振器を50〜600℃にまで加熱した状態で、原子状窒素またはアンモニアガスを含む気体に曝す工程と、前記気体に曝しながら、共振器の光出射側の端面に100〜600℃でAlGaON膜を形成する工程とを含む、窒化物半導体レーザ素子の製造方法についても提供する。
本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法は、以下の(1)または(2)であることが好ましい。
(1)前記気体が純度99.0%以上の原子状窒素からなるものであり、150KPa〜0.1MPaの雰囲気圧力下で、共振器を前記気体に曝す、
(2)前記気体がアンモニアガスを主成分とするものであり、150KPa〜1MPaの雰囲気圧力下で、共振器を前記気体に曝す。
本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法はまた、上述したAlGaON膜を形成する工程において、原料ガスとして酸素を含むガスを用いることが好ましい。この場合、酸素を含むガスは、アルゴン、ヘリウムまたは窒素を主成分とするガスであることがより好ましい。
本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法では、前記AlGaON膜を形成する材料としてAlxy(0<x<1、0<y<0.6)を用いることが好ましい。この場合、AlGaON膜を形成する工程において、Alxy(0<x<1、0<y<0.6)を電子ビームまたはレーザを用いて気化させることが、より好ましい。
本発明によれば、エージング処理後においてもCODレベルの低下が少なく、高い信頼性が確保された窒化物半導体レーザ素子および当該窒化物半導体レーザ素子を製造するための方法を提供することができる。
図1は、本発明の好ましい一例の窒化物半導体レーザ素子1を模式的に示す断面図であり、図2はその斜視図である。なお、図1は、図2に示す窒化物半導体レーザ素子1の切断面Iで切断した断面を示している。本発明の窒化物半導体レーザ素子1は、共振器2の光出射側の端面(共振器端面2a)にAlGaON膜3が設けられてなることを特徴とする。本発明の窒化物半導体レーザ素子1は、AlGaON膜3と共振器の光出射側の端面との間の界面における酸素濃度が1E18atoms/cc以上でありながらも、エージング後においてもCODレベルの低下が少なく、高い信頼性が確保されたものである。
なお、本明細書中において、「窒化物半導体レーザ素子」とは、AlInGaN系の材料で形成された活性層およびクラッド層を少なくとも備える半導体レーザ素子を指す。また本明細書中において、「共振器の光出射側の端面」とは、上述した活性層およびクラッド層が少なくとも基板上に積層されたウエハに劈開、エッチングなどの手法を施すことによって形成された、レーザ発振に不可欠な鏡面を意味する。
また本明細書中において「CODレベル」とは、窒化物半導体レーザ素子に流す電流を徐々に増加させ、共振器の光出射側の端面を破壊することによって発振が止まった際の光出力の最高値を指し、具体的には、CW(連続発振:Continuous Wave oscillation)駆動で光−電流特性を測定した場合の数値を示している。さらに具体的には、本発明の窒化物半導体レーザ素子について、80℃、CW100mW、300時間エージング処理を行った場合、エージング前のCODレベルは500mW程度であり、エージング処理後のCODレベルは450mWと殆どエージング処理による劣化がみられない。なお、エージング処理の前後のいずれでも窒化物半導体レーザ素子は熱飽和しており、共振器の光出射側の端面のCOD破壊はみられない。このような本発明の窒化物半導体レーザ素子1は、発振波長405nmの窒化物半導体レーザ素子のみならず、紫外領域から緑色領域にまで発振波長を有する窒化物半導体レーザ素子に適用できる。また、高出力用途のストライプ幅が数十μmのブロードエリアレーザ素子に対しても適用することができる。
ここで、図3は、本発明の窒化物半導体レーザ素子1におけるAlGaON膜3(後述する実施例1で形成されたAlGaON膜)について、膜の深さ方向にSIMS(二次イオン質量分析:Secondary Ion Mass Spectrometry)による分析を行った結果を示すグラフであり、縦軸は酸素濃度(atoms/cc)であり、横軸はAlGaON膜の共振器端面側からの深さ(μm)(共振器端面との界面を0とする)である。図3から分かるように、本発明の窒化物半導体レーザ素子1において、AlGaON膜3は共振器端面2aとの界面において酸素濃度が1E18atoms/cc以上であり、さらに、膜中においても、深さ方向に向かってある程度までは1E18atoms/cc以上の酸素濃度を有している。しかしながら、このAlGaON膜3の共振器端面2aとの界面を、TEM(透過型電子顕微鏡:Transmission Electron Microscope)を用いて断面観察すると、当該界面に転位線は見られない。
これに対し、図9は、共振器の光出射側の端面にAlGaN膜を設けた場合に、当該AlGaN膜の深さ方向にSIMSによる分析を行った結果を示すグラフであり、縦軸は酸素濃度(atoms/cc)であり、横軸はAlGaN膜の共振器端面側からの深さ(μm)(共振器端面との界面を0とする)である。図9から分かるように、AlGaN膜の場合、膜中には酸素は検出されないものの、共振器端面との界面において1E18atoms/cc以上の酸素が検出される(EDX(エネルギー分散型X線元素分析装置:Energy Dispersive X-ray spectrometer)を用いた測定では、6E22atoms/ccの酸素濃度)。このAlGaN膜について、上述と同様に共振器端面との界面をTEMを用いて観察すると、当該界面に転位線が集中して見られる。このようにして得られた共振器の光出射側の端面にAlGaN膜を設けた窒化物半導体レーザ素子では、CODレベルが低下してしまい、十分な信頼性が得られない。
なお、AlGaN膜を設けた場合についての上述した結果は、当該AlGaN膜を設けた後にエージング処理を施した後の結果であり、エージング処理前の状態では、上記界面における酸素濃度は1E18atoms/cc程度(SIMSにより測定、EDXでは測定不能)であり、また当該界面には点欠陥は存在していたが転位線は観察されなかった。このことより、上記AlGaN膜を設けた場合におけるCODレベルの低下に関して、次のようなモデルが考えられる。すなわち、窒化物半導体レーザ素子において、レーザ発振すると、その発熱によって共振器の光出射側の端面とAlGaN膜との間の界面に存在するAlGaONによる点欠陥に起因して転位線が発生する。この転位線に沿って界面における酸素濃度が増え、さらに転位線が増える。この悪循環により、界面に存在する転位線がエージング処理によって爆発的に増加して、共振器の光出射側の端面における発熱が促進され、結果としてCODレベルが低下する。
本発明者らは、上述したモデルに基づいて、様々な界面クリーニング法を試みたが、界面における酸素濃度を1E18atoms/cc未満にすることができず、クリーニングを施した場合にはCODレベルは多少上がったものの十分ではなかった。また、レーザウエハを10-9Paの超高真空化で劈開後、MBE装置を用いて共振器の光出射側の端面にAlGaN膜を設けたところ、界面に酸素は混入せず、エージング処理後も熱飽和しCODレベルが上がった。このことにより、上述したモデルは正しいことが証明されたが、真空劈開を用いると、量産が困難となることが問題であると考えられた。
そこで、本発明者らは、発想を転換し、クリーニングでは除去できないAlGaONを界面に存在させつつ、共振器端面にAlGaON膜を設けることで、驚くべきことに、点欠陥が見られないことを見出し、本発明を完成させた。すなわち、上述した本発明によれば、AlGaON膜と共振器の光出射側の端面との間の界面における酸素濃度が1E18atoms/cc以上でありながらも、エージング処理後においてもCODレベルの低下が少なく、高い信頼性が確保された窒化物半導体レーザ素子1が提供される。
なお、本発明では、共振器の光出射側の端面にAlGaON膜を設けるが、AlGaON膜以外の膜(たとえばAlN膜、AlGaN膜などの窒化物膜など)を設けた場合には、CODレベルが低下してしまい、十分な信頼性を有する窒化物半導体レーザ素子を製造することができない。また、AlGaON膜は、共振器の光出射側の端面に設ける必要があり、当該端面に上述したようなAlGaON膜以外の膜を設け、その上にさらにAlGaON膜を設けたとしても、CODレベルが低下してしまい、十分な信頼性を有する窒化物半導体レーザ素子を実現することができない。
本発明の窒化物半導体レーザ素子1におけるAlGaON膜3は、AlGaONの窒素元素のうち、その約10%以下がAs(ヒ素)、P(リン)およびSb(アンチモン)から選ばれる少なくともいずれかの元素で置換されていてもよく、また、AlGaONにSi(ケイ素)、Cl(塩素)、S(硫黄)、C(炭素)、Ge(ゲルマニウム)、Zn(亜鉛)、Cd(カドミウム)、Mg(マグネシウム)、B(ホウ素)およびBe(ベリリウム)から選ばれる少なくともいずれかがドーピングされていてもよい。本発明者らが検討したところ、吸収端が395nm以上にあるような酸窒化物(AlGaInONなど)の場合には特性がばらつく虞があるが、AlGaONを用いることで、このようなばらつきがなく、安定して高いCODレベルを有する窒化物半導体レーザ素子を実現できることが分かった。
本発明の窒化物半導体レーザ素子1において、AlGaON膜3は、膜中の酸素原子濃度が15%未満であることが好ましい。AlGaON膜3の酸素原子濃度が15%以上である場合には、エージング処理を施した後のCODレベルが低下してしまう虞がある。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、AlGaON膜3が窒化物で形成された積層構造に隣接して設けられてなることが好ましい。図1および図2には、窒化物で形成された積層構造の一例として、基板4の厚み方向一方側に、活性層6を含む窒化物で形成された層が複数積層されて形成された窒化物半導体成長層5が設けられ、この窒化物半導体成長層5にその一部が隣接するようにして、AlGaON膜3が設けられた例を示している。
本発明の窒化物半導体レーザ素子において、AlGaON膜は、膜中の酸素濃度が、共振器に隣接する側から離反するにつれて多くなるように変化するように実現されてもよい。このように、膜中の酸素濃度が深さ方向に関して変化しているAlGaON膜を共振器の光出射側の端面に設けることでも、エージング処理後においてもCODレベルの低下が少なく、高い信頼性が確保されるというような利点を有する窒化物半導体レーザ素子が提供される。
図4は、膜中の酸素濃度が、共振器に隣接する側から離反するにつれて多くなるように変化するAlGaON膜を形成する場合の成膜シーケンスを示している。図4には、共振器の光出射側の端面に、AlGaON膜を形成し、さらにAlGaON膜上に酸化物で形成された被覆膜(後述)としてAl23膜を設けた例を示している。まず、たとえばMBE装置の成膜室内に共振器を設置し、成膜室内の雰囲気圧力(真空度)を10-6Paにして予備加熱を行った後、成膜室の温度を600℃にまで上昇させ、雰囲気圧力を10-4Paとして曝露工程(クリーニング)を行う。図4に示す例では、純度99.99%の原子状窒素をRFガンを用いて成膜室内に導入することで、共振器の光出射側の端面をクリーニングしている。上記クリーニングを10分間行った後、AlセルおよびGaセルのシャッタを開け、酸素濃度が0.1%であるアルゴン−酸素混合気体をRFガンを通して導入することにより、AlおよびGaを共振器の光出射側の端面に供給し、さらにガスセルより成膜室内に酸素を導入してAlGaON膜を形成する(後述する成膜工程)。その際、成膜室内に導入する酸素量は徐々に増やし、また、原子状窒素の量は徐々に減らすようにする。その後、AlGaON膜の厚みが100nmとなった時点で原子状窒素の量をゼロとし、またGaセルのシャッタを閉じることで、原子状窒素とGaの供給を停止する。このようにして、上述したように膜中の酸素濃度が、共振器に隣接する側から離反するにつれて多くなるように変化するAlGaON膜を形成することができる。図4に示す例では、その後にも酸素およびAlの供給を続け、AlGaON膜上にさらにAl23膜を形成している。
本発明の窒化物半導体レーザ素子1におけるAlGaON膜3は、その厚みは特に制限されるものではないが、10nm〜1μmの範囲内であることが好ましく、100nm〜500nmの範囲内であることがより好ましい。
また本発明におけるAlGaON膜は、AlGaONの単結晶で形成されていることが好ましい。AlGaON膜が多結晶またはアモルファスで形成されていると、十分なCODレベルを得ることができない虞がある。後述する本発明の製造方法における成膜工程を、400〜600℃の温度範囲内で行うことで、単結晶のAlGaONにてAlGaON膜を形成することができる(成膜工程の際の温度が400℃以下である場合にはAlGaONは多結晶となり、特に50℃下である場合にはAlGaONはアモルファスとなる)。なお、AlGaON膜を構成するAlGaONが単結晶であるか否かは、たとえばX線回折法によって確認することができる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子1に用いられる基板4としては、通常、窒化物半導体基板が用いられる。ここで、「窒化物半導体基板」とは、AlxGayIn(1-x-y)N(0≦x≦1、0≦y≦1)からなる基板を意味する。具体的には、n型GaN基板、p型GaN基板、半絶縁性のGaN基板、AlGaN基板、AlGaInN基板などが挙げられ、中でも、n型GaN基板を用いることが好ましい。
本発明に用いられる窒化物半導体基板は、六方晶系に維持されているのであれば、その窒素元素の約10%以下がAs、PおよびSbから選ばれる少なくともいずれかの元素で置換されていてもよい。また、窒化物半導体基板中に、Si、O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、Mg、BおよびBeから選ばれる少なくともいずれかがドーピングされても構わない。n型の窒化物半導体基板を用いる場合には、上述した中でもSi、OおよびClから選ばれる少なくともいずれかがドーピングされていることが好ましい。また、5E17atoms/cc以上の酸素がドーピングされたGaN基板を用いることが特に好ましい。
また、本発明においては、主面の結晶方位がC面{0001}、A面{11−20}、R面{1−102}、M面{1−100}または{1−101}である窒化物半導体基板が、表面ホモロジーが良好であり、好ましく用いられ得る。なお、これらの結晶方位から2°以下のオフ角度を有する主面を有する窒化物半導体基板を用いれば、その表面ホモロジーは良好であり得る。
本発明の窒化物半導体レーザ素子では、好ましくは、図1および図2に示す例のように、基板4の厚み方向一方側に、活性層6を含む窒化物半導体成長層5が形成される。この窒化物半導体成長層5は、上述したように、窒化物で形成された層が複数積層された構造にて実現される。この窒化物半導体成長層5は、III族元素としてGa、Al、InおよびBから選ばれる少なくともいずれかを含んでいてもよく、また、V族元素としてN、または、NとAsおよび/またはSbとを含んでいてもよい。
図1および図2には、窒化物半導体成長層5が、基板4側から順に、n型GaN層11、n型AlGaNクラッド層12、n型GaNガイド層13、活性層6、p型AlGaNキャリアブロック層14、p型AlGaNクラッド層15およびp型GaNコンタクト層16が積層されて形成された例を示している。なお、活性層6は、図1および図2には省略して示しているが、具体的には、下部GaN障壁層と上部GaN障壁層と間に、アンドープのInGaN(In0.15Ga0.85N)井戸層およびアンドープのGaN障壁層が、井戸層、障壁層、井戸層、障壁層、井戸層の順で形成されたMQW(多重量子井戸:Multiple Quantum Well)構造(この場合は、井戸数3)を備えるように実現されてなることが好ましい。井戸層および障壁層には、InxGa1-xN(0≦x<1)、AlxGa1-xN(0≦x<1)、InGaAlN、GaN1-xAsx(0<x<1)、GaN1-xx(0<x<1)またはこれらの化合物などの窒化物半導体を用いることができる。なお、障壁層は井戸層よりもバンドギャップエネルギーが大きくなるような組成とする。また、窒化物半導体レーザ素子1の発振閾値を引き下げる目的からは、活性層6を井戸数が2〜4のMQW構造とすることが好ましいが、活性層6をSQW(単一量子井戸:Single Quantum Wall)構造としても構わない(この場合は、本明細書でいうところの井戸層で挟まれる障壁層は存在しないことになる。)。
本発明の窒化物半導体レーザ素子1は、共振器2のAlGaON膜3が形成された側の端面2aとは反対側の端面2bに、通常、HR(高反射:High Reflection)コーティング膜が形成される。HRコーティング膜は、たとえば、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化シリコン(SiO2)、酸化チタン(TiO2)などの材料で形成された膜を多層構造にして形成される。なお、SiN、ZrO2、Ta25、MgF2などの誘電体を単層または複数層用いてHRコーティング膜を形成するようにしてもよい。図1および図2には、共振器2側から順に、窒化アルミニウム膜32、酸化アルミニウム膜33が形成され、さらに酸化シリコン膜および酸化チタン膜を1ペアとして4ペア分積層され(図1および図2では省略して示している)、最表面に酸化シリコン膜34が形成されて、HRコーティング膜が実現されている。図1および図2に示す例のHRコーティング膜では、たとえば95%の高反射率を達成できる。HRコーティング膜を形成する方法は特に制限されるものではなく、当分野において従来より広く知られた適宜の方法を採用することができる。
また、本発明の窒化物半導体レーザ素子1は、共振器2の光出射側の端面に設けられたAlGaON膜3上に、酸化物、フッ化物または窒化物で形成された被覆膜41がさらに設けられてなることが好ましい。このような被覆膜41の形成に用いられる酸化物としては、特に制限されるものではなく、たとえば、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化二オブ、酸化タンタル、酸化イットリウムなどが挙げられ、中でも酸化アルミニウムが好ましい。また被覆膜41の形成に用いられるフッ化物としては、特に制限されるものではなく、たとえば、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ランタン、フッ化リチウムなどが挙げられ、中でもフッ化マグネシウムが好ましい。また、被覆膜41の形成に用いられる窒化物としては、特に制限されるものではなく、たとえば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウムアルミニウム(AlGaN)、窒化シリコンなどが挙げられ、中でも、窒化アルミニウムまたは窒化ガリウムアルミニウムが好ましい。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、たとえば従来公知の適宜のレーザパッケージ内に密封封止して実装されて、窒化物半導体レーザ装置として提供され得る。
上述した本発明の窒化物半導体レーザ素子1は、その製造方法については特に制限されるものではないが、後述する本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法によって製造されたものであることが好ましい。すなわち、本発明は、共振器の光出射側の端面にAlGaON膜を設けた窒化物半導体レーザ素子を製造する方法であって、〔1〕AlGaON膜を設ける前の共振器を25〜350℃で予備加熱する工程(以下、「予備加熱工程」と呼称する。)と、〔2〕前記予備加熱後の共振器を50〜600℃にまで加熱した状態で、原子状窒素またはアンモニアガスを含む気体に曝す工程(以下、「曝露工程」と呼称する。)と、〔3〕前記気体に曝しながら、共振器の光出射側の端面に100〜600℃でAlGaON膜を形成する工程(以下、「成膜工程」と呼称する。)とを含む、窒化物半導体レーザ素子の製造方法についても提供するものである。以下、本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法について、詳しく説明する。なお、本発明では、共振器が複数連なった状態のレーザバー(後述)についてこれらの工程を行うようにしてもよい。以下、各工程について詳細に説明する。
〔1〕予備加熱工程
まず予備加熱工程では、AlGaON膜を設ける前の共振器を25〜350℃で予備加熱する。この予備加熱工程を行わずに、後述する曝露工程および成膜工程を経て共振器の光出射側の端面にAlGaON膜を設けたとしても、所望のCODレベルを達成することができない。予備加熱の温度が350℃を超えると、初期CODレベルが低下してしまう。予備加熱工程の際の雰囲気圧力および予備加熱工程を行う時間については、特に制限されるものではない。
〔2〕曝露工程
次に、曝露工程では、前記予備加熱後の共振器を50〜600℃にまで加熱した状態で、原子状窒素またはアンモニアガスを含む気体に曝す。この曝露工程は、共振器の光出射側の端面における不純物(酸素など)を除去する(クリーニング)工程である。この曝露工程を経ることなく、上述した予備加熱工程の後に後述する成膜工程によって、共振器の光出射側の端面にAlGaON膜を設けたとしても、得られた窒化物半導体レーザ素子はレーザ発振できない。曝露工程では、共振器を50〜600℃(好ましくは300〜600℃)の範囲で、上述した予備加熱工程の際の温度よりも高い温度で加熱する。
曝露工程では、共振器を原子状窒素またはアンモニアガス(NH3)を含む気体に曝す。原子状窒素またはアンモニアガスを含む気体以外の気体に共振器を曝露させたとしても、得られた窒化物半導体レーザ素子はレーザ発振しない。原子状窒素を含む気体は、たとえばRF(高周波:Radio frequency)ガン、ECR(電子サイクロトロン共鳴:Electron Cyclotron Resonance)ガン、熱クラッキングセルなどを用いて窒素を原子状とすることで調製することができる。なお、気体中に原子状窒素が含まれるか否かは、Q−mass(四重極質量分析装置)により確認することができ、また、分光分析で747nmに鋭いピークを有するか否かをみることでも確認できる。
曝露工程において原子状窒素を含む気体を用いる場合、当該気体は、純度が99.0%以上の純度の原子状窒素からなることが好ましい。当該気体における原子状窒素の純度が99.0%未満である場合には、得られた窒化物半導体レーザ素子のCODレベルが低下してしまう虞がある。
また曝露工程において原子状窒素を含む気体を用いる場合、共振器に当該気体を曝露させる雰囲気圧力は150KPa〜0.1MPaの範囲内であることが好ましく、10MPa〜0.1MPaの範囲内であることがより好ましい。また曝露工程においてアンモニアガスを含む気体を用いる場合、共振器に当該気体を曝露させる雰囲気圧力は150KPa〜1MPaの範囲内であることが好ましい。なお、曝露工程を行う時間については、特に制限されるものではない。
〔3〕成膜工程
続く成膜工程では、上述した原子状窒素またはアンモニアガスを含む気体に曝しながら、共振器の光出射側の端面に100〜600℃(好ましくは400〜600℃)でAlGaON膜を形成する。上述した曝露工程で用いた気体に共振器を曝露することなく成膜工程を行った場合には、得られた窒化物半導体レーザ素子はレーザ発振できない。
成膜工程において、AlGaON膜の形成のための原料ガスとして酸素を含むガスを用いることが好ましいが、原料ガスの酸素の含有量が多すぎると、取り扱い性が困難となる虞がある(たとえば、純度が99.9%である酸素ガスを原料ガスとして用いると、AlGaON膜における酸素濃度を制御するためにはフルスケールが5ccmのマスフローコントローラを用いる必要があり、またAlGaON膜における酸素濃度を低く制御することが困難となる)。
成膜工程において原料ガスとして用いられる前記酸素を含むガスは、アルゴン、ヘリウムまたは窒素を主成分とするガスであることが好ましい。中でも、取り扱い性の観点からは、アルゴンまたはヘリウムを主成分とする酸素との混合ガスを用いることがより好ましい(たとえば、窒素と酸素との混合ガスを用いた場合には、導入時に窒素と酸素とが反応して、AlGaON膜における酸素濃度を制御することが困難となる。)。なお、上述のように低い濃度に制御することは困難とはなるが、本発明において酸素ガスを原料ガスとして用いても勿論よい。
成膜工程ではまた、AlGaON膜を形成する材料としてAlxy(0<x<1、0<y<0.6)を用いることが好ましい。また成膜工程では、Alxy(0<x<1、0<y<0.6)は、電子ビームまたはレーザを用いて気化させることが好ましい。中でも、装置が故障しにくく、装置の稼働率が良好であることから、レーザを用いたレーザアブレーション法により、Alxy(0<x<1、0<y<0.6)を気化させることが特に好ましい。
本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法における上述した〔1〕〜〔3〕の工程は、従来公知の適宜の装置を用いて行うことができ、特に制限されるものではないが、MBE(Molecular Beam Epitaxy)装置を用いて行うことが好ましい。ここで「MBE装置」とは、Al、Ga、Inなどの固体材料と、N2に代表される気体材料を個別に制御して試料に供給でき、試料温度を200℃以上に加熱でき、曝露工程(クリーニング)および成膜工程において成膜室内の雰囲気圧力(真空度)を10-3Pa以下に制御できる装置を指す。なお、MBE装置を用いずに、マグネトロンスパッタ、ECRスパッタ法などの各種スパッタ法、CVD(化学気相成長:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、EB(電子ビーム:Electron Beam)蒸着法を用いてAlGaON膜を設けるようにしても勿論よい。
なお、本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、上述した〔1〕〜〔3〕の工程によりAlGaON膜3を形成する前の共振器2の製造(窒化物半導体成長層5の形成を含む)は、従来公知の適宜の手法を用いて基板上に形成することができ、特に制限されるものではない。図5〜図7には、AlGaON膜を形成する前の共振器2の製造過程を段階的に示している。まず、図5は、窒化物半導体ウエハ17(後述するように、分割されて基板4となる)上に、上述したn型GaN層11、n型AlGaNクラッド層12、n型GaNガイド層13、活性層6、p型AlGaNキャリアブロック層14、p型AlGaNクラッド層15およびp型GaNコンタクト層16が積層されて形成された窒化物半導体成長層5が形成された状態を示す斜視図である。基板4上に窒化物半導体成長層5を形成する方法としては、特に制限されるものではなく、たとえばMOCVD(有機金属化学気相蒸着:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(分子線エピタキシ:Molecular Beam Epitaxy)法、HVPE(ハイドライドVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法などのエピタキシャル成長できる気相成長法が挙げられる。中でも、MOCVD法によって窒化物半導体成長層5を形成することが好ましい。
具体的には、以下の手順による窒化物半導体成長層5の形成が例示される。まず、窒化物半導体ウエハ17をMOCVD装置の成長炉内の所定のサセプタ上に設置し、キャリアガスとしてH2を流しながら昇温した後、原料としてアンモニア(NH3)、トリメチルガリウム((CH33Ga:TMG)およびSiH4を成長炉内に供給し、n型GaN層11を成長させる。その後、TMGの供給量を減少し、Alの原料としてトリメチルアルミニウム((CH33Al:TMA)を成長炉内に供給して、n型AlGaNクラッド層12を成長する。その後、TMAの供給を停止し、TMGの供給量を増加して、n型GaNガイド層13を成長させる。
次に、以下の手順で活性層6を形成する。まず、TMG、SiH4の供給を停止して、キャリアガスをH2からN2に代え、サセプタ温度を昇温し、TMGを成長炉内に供給し、GaNからなる下部GaN障壁層を成長させる。その後、インジウムの原料としてトリメチルインジウム((CH33In:TMI)を供給し、In0.15Ga0.85Nからなる井戸層を成長させる。次に、TMIの供給を停止し、TMGを供給しGaNからなる障壁層を成長させる。以下、同様にして井戸層と障壁層を、所望の井戸数に応じて交互に成長させる。最上層となる井戸層を形成後、TMGを成長炉内に供給し、上部GaN障壁層を成長させる。
MQW構造の活性層6を形成後、サセプタ温度を昇温し、キャリアガスをN2からH2に代え、TMAおよびTMGの供給量を増加し、p型ドーパントであるMgの原料としてビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム((C25542Mg:EtCp2Mg)を成長炉内に供給し、p型AlGaNキャリアブロック層14を成長させる。引き続き、TMAの供給量を減少し、p型AlGaNクラッド層15を成長させ、次に、TMGの供給量を増加し、TMAの供給を停止し、p型GaNコンタクト層16を成長させる。その後、TMGおよびEtCp2Mgの供給を停止して降温する。このような手順にて、図5に示したように窒化物半導体成長層5を窒化物半導体ウエハ17上に形成することができる。
図6は、窒化物半導体成長層5に、リッジストライプ18および電極(p型電極19、n型電極20)をさらに形成した状態を示す斜視図である。リッジストライプ18は、通常のフォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術とを用いて、p型GaNコンタクト層16およびp型AlGaNクラッド層15を部分的にエッチング除去し、方向(共振器方向)Aに沿ってストライプ状に延びるように形成される。ドライエッチングに用いる反応性ガスとしては、特に制限されるものではないが、たとえばSiCl4、BCl3、Cl2などの塩素を含有するガスを好適に用いることができ、中でも、SiCl4が特に好ましい。
リッジストライプ18を形成後、リッジストライプ18上部を除く窒化物半導体成長層5の表面に、電流狭窄のため絶縁膜21を設ける。絶縁膜21を形成する材料は特に制限されないが、好適な例として酸化シリコンを挙げることができる。次に、Pd、Mo、Auを順次蒸着した後、p型GaNコンタクト層16との間でオーミック接触が得られるように高温で電極の合金化を行い、図6に示すようにp型電極19を形成する。
次に、窒化物半導体ウエハ17の窒化物半導体成長層5が形成されていない側を研削、研磨により部分的に除去した後、HfおよびAlからなるn型電極20を形成し、窒化物半導体ウエハ17との間でオーミック接触が得られるように高温で電極の合金化を行う。
図7は、図6に示した状態の窒化物半導体ウエハ17を分割して、複数のレーザバー(上述してきた共振器2が複数連なった状態の構造物)25を形成した状態を示す斜視図である。なお、図7では、各参照符号は省略して示している。窒化物半導体ウエハ17の分割は、たとえばスクライブ装置を用い、リッジストライプ18が延在する方向(上述した共振器方向A)と垂直な方向に沿って劈開することで行う。この劈開により形成された端面が、互いに平行な共振器端面となる(そのうちの一方の端面が、AlGaON膜3を形成するための光出射側の端面2aである)。
分割して得られた各レーザバー25は、その共振器長(共振器方向Aに沿った長さ)は、特に制限されない。本発明者らは、共振器長を0.4mm、0.6mm、0.8mm、1mm、1.5mmとした各場合について、本発明の窒化物半導体レーザ素子の作製を試みたが、いずれの場合も同様に良好な結果が得られた。
このようにして得られたレーザバー25を、上述した〔1〕予備加熱工程、〔2〕曝露工程および〔3〕成膜工程を有する本発明の窒化物半導体レーザ素子1の製造方法に供することができる。上述したように、〔1〕〜〔3〕の工程は、たとえばMBE装置の成膜室内で行うことができる。図8は、レーザバー25を、MBE装置の成膜室内にセッティングした状態を模式的に示す図である。レーザバー25は、光出射側の端面2aとする側にAlGaON膜を形成するための原料ガス(図8には、アルミニウム(Al)、酸素(O2)、原子状窒素(N2)、ガリウム(Ga)およびインジウム(In)のみを示している)が供給されるように配置され、上述した〔1〕〜〔3〕の各工程を行う。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
以下のような手順に従って、図1および図2に示した窒化物半導体レーザ素子1を製造した。窒化物半導体ウエハ17としては、1E18atoms/ccの濃度の酸素がドーピングされたn型GaN系のウエハを用いた。窒化物半導体ウエハ17をMOCVD装置の成長炉内の所定のサセプタ上に設置し、キャリアガスとしてH2を5L/min流しながら、サセプタ温度を1050℃まで昇温した。昇温後、原料としてアンモニア(NH3)3L/min、トリメチルガリウム((CH33Ga:TMG)を100μmol/min、SiH4を10nmol/minとして成長炉内に供給し、n型GaN層11を1μm成長させた。その後、TMGを50μmol/minに減少し、Alの原料としてトリメチルアルミニウム((CH33Al:TMA)を40μmol/minとして成長炉内に供給して、n型Al0.05Ga0.95Nクラッド層12を0.7μm成長させた。n型Al0.05Ga0.95Nクラッド層12の成長が終了すると、TMAの供給を停止し、TMGを100μmol/minに増加し、n型GaNガイド層13を0.05μm成長させた。
その後、TMG、SiH4の供給を停止して、キャリアガスをH2からN2に代え、サセプタ温度を70℃まで昇温し、TMGを15μm/minとして成長炉内に供給し、GaNからなる20nm厚の下部GaN障壁層を成長させた。次に、インジウムの原料としてトリメチルインジウム((CH33In:TMI)を50μmol/min供給し、In0.15Ga0.85Nからなる4nm厚の井戸層を成長させた。次に、TMIの供給を停止し、TMGを15μm/min供給しGaNからなる8nm厚の障壁層を成長させた。以下、同様にして4nm厚の井戸層と8nm厚の障壁層を、井戸層/障壁層/井戸層の順で成長させた。引き続き、TMGを15μmol/minで成長炉内に供給し、50nmの上部GaN障壁層を成長させた。このようにして、下部GaN障壁層/井戸層/障壁層/井戸層/障壁層/井戸層/上部GaN障壁層の順でMQW構造を備える活性層6を形成した。
MQW構造の活性層6を形成後、サセプタ温度1050℃まで昇温し、キャリアガスをN2からH2に代え、TMAの供給量を120μmol/min、TMGの供給量を100μmol/minに増加し、p型ドーパントであるMgの原料としてビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム((C25542Mg:EtCp2Mg)を10nmol/minで成長炉内に供給し、Al0.2Ga0.8Nキャリアブロック層14を20nm成長させた。引き続き、TMAの供給を50μmol/minに減少し、p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層15を0.5μm成長させ、次に、TMGの供給を100μmol/minに増加し、TMAの供給を停止し、p型GaNコンタクト層16を0.1μm成長させた。その後、TMGおよびEtCp2Mgの供給を停止して降温した。このようにして、図5に示したような窒化物半導体成長層5を形成した窒化物半導体ウエハ17を得た。
次に、通常のフォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術を用いて、幅略2μmのリッジストライプ構造を形成するように、p型GaNコンタクト層16とp型Al0.1Ga0.9Nクラッド層15をエッチングして除去して、リッジストライプ18を形成した。ドライエッチングの反応性ガスとしてはSiCl4を用いた。リッジストライプ18の形成後、リッジストライプ18の上部を除く窒化物半導体成長層5の表面に、酸化シリコンからなる絶縁層21を形成した。次に、Pd、Mo、Auを順次蒸着した後、p型GaNコンタクト層16との間でオーミック接触が得られるように高温で電極の合金化を行い、p型電極19を形成した。さらに、窒化物半導体ウエハ17の窒化物半導体成長層5が形成されていない側を研削および研磨により部分的に除去して窒化物半導体ウエハ17の厚みを100μm程度にまで薄くした。その後、窒化物半導体ウエハ17の窒化物半導体成長層5が形成されていない側に、HfおよびAlからなるn型電極20を形成し、窒化物半導体ウエハ17との間でオーミック接触が得られるように高温で電極の合金化を行った。このようにして、図6に示したようなリッジストライプ18および電極をさらに形成した状態の窒化物半導体ウエハ17を得た。
次に、スクライブ装置を用いて、リッジストライプ18が延在する方向と垂直な方向に沿って窒化物半導体ウエハ17を劈開して、共振器長0.6mmのレーザバー25を作製した(図7を参照)。
こうして得られたレーザバー25を、図8に示すようにMBE装置の成膜室内にセッティングした。まず、成膜室内の雰囲気圧力(真空度)を10-6Paとし、300℃にまで予備加熱した(予備加熱工程)。次に、成膜室内の雰囲気圧力(真空度)を10-4Paとし、RFガンを通して純度が99.99%の原子状窒素を構成成分とする気体を導入し、600℃にまで加熱して600℃で10分間保持した(曝露工程)。なお、気体の分光分析を行ったところ、747nmに鋭いピークを持っており、当該気体に原子状窒素が含まれていることを確認した。また、Q−massでも、当該気体中に原子状窒素が含まれていることを確認した。
その後、原子状窒素に曝露させた状態で、レーザバー25を580℃の温度に安定させ、AlセルおよびGaセルのシャッタを開け、酸素濃度が0.1%であるアルゴン−酸素混合気体をRFガンを通して導入した。これによって、Al、Ga、NおよびOを共振器の光出射側の端面2aに供給し、AlGaON膜3としてアンドープのAl0.05Ga0.95ON膜を100nm厚で形成した(成膜工程)。次に、Gaのシャッタを閉じると同時に窒素の導入を停止して、AlGaON膜3上に酸化アルミニウム膜を76nm厚で形成した。その後、降温し、レーザバー25をMBE装置から取り出した。
次に、共振器2のAlGaON膜3を設けた側とは反対側の端面2b(光反射側の端面)に、まず、6nmの窒化アルミニウム膜32を設け、次に80nmの酸化アルミニウム膜33を設けた後、171nmの酸化シリコン膜および46nmの酸化チタン膜を1ペアとして、4ペア分積層させた後、最表面に142nmの酸化シリコン膜34を形成した。このようにして、反射率95%のHRコーティング膜を形成した。その後、スクライブ装置を用いて、リッジストライプ18が延在する方向に沿って分割して、本発明の窒化物半導体レーザ素子1を作製した。このようにして得られた窒化物半導体レーザ素子1を、レーザパッケージ内に密封封止して実装し、窒化物半導体レーザ装置を作製した。
得られた窒化物半導体レーザ素子におけるAlGaON膜について、膜の深さ方向に関するSIMS分析を行ったところ、AlGaON膜中において1E18atoms/ccの酸素が検出され、また、当該AlGaON膜と共振器の光出射側の端面との間の界面にも1E18atoms/ccの酸素が検出された(図3を参照)。この界面を断面TEMにより観察したところ、転位線は観察されなかった。また、AlGaON膜中における酸素原子濃度を測定したところ、10%であった。なお、形成されたAlGaON膜の結晶状態をX線回折法により確認したところ、単結晶であった。
また、上述したように作製された窒化物半導体レーザ素子について、80℃、CW100mW、300hエージング試験を行った。共振器の光出射側の端面にAlGaON膜が形成されている本発明の窒化物半導体レーザ素子は、エージング処理前のCODレベル値は500mW程度であり、エージング処理後でも450mW程度であった。このように、エージング処理によりCODレベルは殆ど劣化していなかった。また、エージング処理の前後いずれの場合でも窒化物半導体レーザ素子は熱飽和しており、共振器の光出射側の端面のCOD破壊は見れなかった。
<実施例2>
実施例1と同様にして作製したレーザバーをMBE装置に導入後、雰囲気圧力を低下せずに予備加熱を行ったこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかった。
<実施例3>
Al0.2Ga0.8ONという組成にてAlGaON膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかった。
<実施例4>
ヘリウムを主成分ガスとするヘリウム−酸素混合ガスを原料ガスとして用いてAlGaON膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかった。
<実施例5>
窒素ガスを主成分とする窒素−酸素混合ガスを原料ガスとして用いてAlGaON膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかった。
<実施例6>
純度が99.9%である酸素ガスを原料ガスとして用いてAlGaON膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかった。
<実施例7>
AlGaON膜上に酸化アルミニウム膜を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかったが、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子の方が特性は優れていた。
<実施例8>
AlGaON膜上に、酸化シリコン膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかったが、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子の方が特性は優れていた。
<実施例9>
AlGaON膜上に、酸化チタン膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかったが、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子の方が特性は優れていた。
<実施例10>
AlGaON膜上に、酸化ハフニウム膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかったが、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子の方が特性は優れていた。
<実施例11>
AlGaON膜上に、酸化ジルコニウム膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかったが、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子の方が特性は優れていた。
<実施例12>
AlGaON膜上に、酸化ニオブ膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかったが、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子の方が特性は優れていた。
<実施例13>
AlGaON膜上に、酸化タンタル膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかったが、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子の方が特性は優れていた。
<実施例14>
AlGaON膜上に、酸化イットリウム膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかったが、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子の方が特性は優れていた。
<実施例15>
AlGaON膜上に、フッ化マグネシウム膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られず、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子と同等の特性が得られた。
<実施例16>
AlGaON膜上に、フッ化カルシウム膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかったが、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子の方が特性は優れていた。
<実施例17>
AlGaON膜上に、フッ化ランタン膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかったが、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子の方が特性は優れていた。
<実施例18>
AlGaON膜上に、フッ化リチウム膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかったが、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子の方が特性は優れていた。
<実施例19>
AlGaON膜上に、窒化アルミニウム膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られず、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子と同等の特性が得られた。
<実施例20>
AlGaON膜上に、窒化アルミニウムガリウム膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られず、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子と同等の特性が得られた。
<実施例21>
AlGaON膜上に、窒化シリコン膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかったが、酸化アルミニウム膜を形成した実施例1の窒化物半導体レーザ素子の方が特性は優れていた。
<実施例22>
窒化物半導体ウエハとして、SiがドーピングされたGaN系のウエハを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかったが、AlGaON膜が剥れた素子が存在し、歩留りが若干悪かった。
<実施例23>
図4に示した成膜シーケンスに従って曝露工程および成膜工程を行い、膜中の酸素濃度が、共振器に隣接する側から離反するにつれて多くなるように変化するAlGaON膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。
まず、MBE装置内の雰囲気圧力(真空度)を10-6Paとして、成膜室内のレーザバーを常温から300℃にまで予備加熱した。次に、雰囲気圧力を10-4Paとして純度99.99%である原子状窒素をRFガンを通して導入し、600℃にまで加熱して600℃で10分間保持した。その後、580℃で安定させた状態でAlセルおよびGaセルのシャッタを開け、酸素濃度が0.1%であるアルゴン−酸素混合気体をRFガンを通して導入することによりGaおよびAlを端面に供給した後、ガスセルより酸素を導入しAlGaONを600℃にて成膜した。その際、チャンバに導入する酸素量は徐々に増やしていき、窒素量は徐々に減らしていった。さらにAlGaONの層厚が100nmになった際に窒素量をゼロとしてGaセルのシャッタを閉じることにより窒素とGaの供給を停止した。その後、Al23膜を160nm厚で成膜した。次に、降温し、レーザバーをMBE装置より取り出した。
得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかったが、歩留りが若干悪かった。
<実施例24>
曝露工程および成膜工程において、原子状窒素の代わりにアンモニアガスを含む気体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかった。
<実施例25>
成膜工程において、レーザアブレーション法に代えて電子ビーム法を用いてAlGaON膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルの劣化は見られなかった。
<比較例1>
実施例1と同様にして作製したレーザバーをMBE装置に導入後、昇温せずに、純度が99.99%の原子状窒素を構成成分とする気体を導入し、AlGaON膜の形成開始後に温度を580℃にまで昇温したこと以外は実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルは低下していた。
<比較例2>
実施例1と同様にして作製したレーザバーをMBE装置に導入後、成膜室内の雰囲気圧力(真空度)を10-6Paとし、予備加熱を行うことなく600℃にまで昇温した後、純度が99.99%の原子状窒素を構成成分とする気体を導入し、580℃に温度を保持してAlGaON膜の形成を行ったこと以外は実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、エージング処理前のCODレベル(初期CODレベル)が低下していた。また、エージング処理後のCODレベルも低下していた。
<比較例3>
実施例1と同様にして作製したレーザバーをMBE装置に導入後、予備加熱を行うことなく、純度が99.99%の原子状窒素を構成成分とする気体を導入しながら温度を650℃にまで上昇し、580℃に温度を保持してAlGaON膜の形成を行ったこと以外は実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子は、電極が劣化し、素子抵抗が上昇していた。
<比較例4>
50℃で成膜工程を行ったこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルは低下していた。なお、形成されたAlGaON膜の結晶状態をX線回折法により確認したところ、アモルファスであった。
<比較例5>
曝露工程において原子状窒素を導入しなかったこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子は、レーザ発振しなかった。
<比較例6>
原子状窒素に曝し続けることなく成膜工程を行ったこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子は、レーザ発振しなかった。
<比較例7>
成膜工程において酸素を導入せず、AlGaON膜を形成する代わりにAlGaN膜を共振器の光出射側の端面に形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルは低下していた。なお、本比較例で形成したAlGaN膜について、膜の深さ方向に関するSIMS分析を行ったところ、AlGaN膜中からは酸素は検出されなかったが、AlGaN膜と共振器の光出射側の端面との間の界面には1E18atoms/ccの酸素が残留していた(図9を参照)。また、断面TEM観察を行ったところ、端面付近で転位線が集中して観察された。
<比較例8>
成膜工程においてAlGaON膜を形成する代わりにAlN膜を形成し、その上にAlGaON膜(Al0.05Ga0.95ON)を形成したこと以外は、実施例1と同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製した。得られた窒化物半導体レーザ素子について、実施例1と同様にエージング試験を行ったところ、CODレベルは低下していた。
今回開示された実施の形態、実施例および比較例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明の好ましい一例の窒化物半導体レーザ素子1を模式的に示す断面図である。 本発明の好ましい一例の窒化物半導体レーザ素子1を模式的に示す斜視図である。 本発明の窒化物半導体レーザ素子1におけるAlGaON膜3について、膜の深さ方向にSIMSによる分析を行った結果を示すグラフである。 膜中の酸素濃度が、共振器に隣接する側から離反するにつれて多くなるように変化するAlGaON膜を形成する場合の成膜シーケンスである。 上述したn型GaN層11、n型AlGaNクラッド層12、n型GaNガイド層13、活性層6、p型AlGaNキャリアブロック層14、p型AlGaNクラッド層15およびp型GaNコンタクト層16が積層されて形成された窒化物半導体成長層5が形成された状態の窒化物半導体ウエハ17を示す斜視図である。 窒化物半導体成長層5に、リッジストライプ18および電極をさらに形成した状態を示す斜視図である。 図6に示した状態の窒化物半導体ウエハ17を分割して、複数のレーザバー(共振器2)を形成した状態を示す斜視図である。 レーザバー(共振器2)を、MBE装置の成膜室内にセッティングした状態を模式的に示す図である。 共振器の光出射側の端面にAlGaN膜を設けた場合に、当該AlGaN膜の深さ方向にSIMSによる分析を行った結果を示すグラフである。
符号の説明
1 窒化物半導体レーザ素子、2 共振器、2a 共振器端面、3 AlGaON膜、4 基板、5 窒化物半導体成長層、6 活性層、11 n型GaN層、12 n型AlGaNクラッド層、13 n型GaNガイド層、14 p型キャリアブロック層、15 p型AlGaNクラッド層、16 p型GaNコンタクト層、17 窒化物半導体ウエハ、18 リッジストライプ、19 p型電極、20 n型電極、21 絶縁膜、25 レーザバー、32 窒化アルミニウム膜、33 酸化アルミニウム膜、34 酸化シリコン膜、41 被覆膜。

Claims (20)

  1. 共振器の出射側の端面にAlGaON膜が設けられた、窒化物半導体レーザ素子。
  2. AlGaON膜が窒化物で形成された積層構造に隣接して設けられてなる、請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  3. AlGaON膜中における酸素原子濃度が15%未満である、請求項1または2に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  4. AlGaON膜は、膜中の酸素濃度が共振器に隣接する側から離反するにつれて多くなるように変化している、請求項2または3に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  5. AlGaON膜の厚みが10nm〜1μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  6. AlGaON膜が、単結晶のAlGaONで形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  7. AlGaON膜上に、酸化物で形成された被覆膜が設けられてなる、請求項1〜6のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  8. 酸化物が酸化アルミニウムである、請求項7に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  9. AlGaON膜上に、フッ化物で形成された被覆膜が設けられてなる、請求項1〜6のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  10. フッ化物がフッ化マグネシウムである、請求項9に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  11. AlGaON膜上に、窒化物で形成された被覆膜が設けられてなる、請求項1〜6のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  12. 窒化物が窒化アルミニウムまたは窒化アルミニウムガリウムである、請求項11に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  13. 5E17atoms/cc以上の酸素がドーピングされたGaN基板を備える、請求項1〜12のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  14. 共振器の光出射側の端面にAlGaON膜を設けた窒化物半導体レーザ素子を製造する方法であって、
    AlGaON膜を設ける前の共振器を25〜350℃で予備加熱する工程と、
    前記予備加熱後の共振器を50〜600℃にまで加熱した状態で、原子状窒素またはアンモニアガスを含む気体に曝す工程と、
    前記気体に曝しながら、共振器の光出射側の端面に100〜600℃でAlGaON膜を形成する工程とを含む、窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  15. 前記気体が純度99.0%以上の原子状窒素からなるものであり、150KPa〜0.1MPaの雰囲気圧力下で、共振器を前記気体に曝すことを特徴とする請求項14に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  16. 前記気体がアンモニアガスを主成分とするものであり、150KPa〜1MPaの雰囲気圧力下で、共振器を前記気体に曝すことを特徴とする請求項14に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  17. 前記AlGaON膜を形成する工程において、原料ガスとして酸素を含むガスを用いることを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  18. 前記酸素を含むガスが、アルゴン、ヘリウムまたは窒素を主成分とするガスであることを特徴とする請求項17に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  19. 前記AlGaON膜を形成する材料としてAlxy(0<x<1、0<y<0.6)を用いることを特徴とする請求項14〜18のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  20. AlGaON膜を形成する工程において、Alxy(0<x<1、0<y<0.6)を電子ビームまたはレーザを用いて気化させることを特徴とする請求項19に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
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