JP2009022862A - 固体触媒 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリアルキレングリコール部位を含む有機化合物の末端部位、および遷移金属錯体部位を含む有機化合物の末端部位のそれぞれが多孔質材料の表面に共有結合により結合された固体触媒。
【選択図】なし
Description
しかし、分子触媒の利用は、触媒成分と生成物の分離が困難であること、比較的高価な貴金属や配位子を含んだ触媒の再利用に煩雑な操作が必要になるなどの問題点があり、実用的に用いられる例は限られている。
このような担持系固体触媒のなかでも、カーボン、シリカ、アルミナなどの無機系多孔体材料に遷移金属が担持されたものは、樹脂系担体に比べ機械的な強度や溶媒に対する耐性等が優れており、工業的に有用である。
一つは市販されているパラジウムカーボン、白金アルミナ、パラジウムシリカ等の様に多孔質材料に遷移金属を直接担持したタイプのものであり、他の一つは、多孔質材料の表面にアミノプロピル基、フォスフィノプロピル基、メルカプトプロピル基またはそれらの誘導体等の配位性置換基を結合させ、遷移金属をそれらの配位により担持したタイプである(例えば、非特許文献1)。
多孔質材料表面に先に述べた配位性置換基を共有結合させる方法、およびそれに遷移金属を担持したもの、更には、これらの触媒をクロスカップリング反応に利用する報告例もみられる(例えば、特許文献3、非特許文献3,4)。
例えば、F. Xiaoらは規則性多孔質材料であるSBA-15にポリエチレングリコール(m=4)を固定化し、それにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体を支持させた触媒を用いて鈴木カップリング反応を試みている(非特許文献5)。
しかし、触媒を繰り返し使用するためには、原料として反応性の高いハロゲン化アリールを用いる必要があり、また、1モル%といった多量の触媒を用いなければならない等の問題点があった。この理由は定かではないが、パラジウムまたはリン配位子が共有結合等の強固な結合で多孔質材料に担持されていないことによるものと推定している。
しかし、これも前記と同様に、パラジウムクラスターは多孔質材料上ではなくポリエチレングリコール上に支持された構造となっている。
また、この論文では、アルコールの酸化反応にこの触媒が応用されているのみであり、かつ溶媒が超臨界二酸化炭素である特殊な反応条件のみで検討がなされているに過ぎず、クロスカップリング反応の触媒としての有効性などについては何ら検討されていない。
即ち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
〈1〉ポリアルキレングリコール部位を含む有機化合物の末端部位、および遷移金属錯体部位を含む有機化合物の末端部位のそれぞれが多孔質材料の表面に共有結合により結合された固体触媒。
〈2〉ポリアルキレングリコール部位を含む有機化合物が下記一般式(1)で示される化合物であることを特徴とする〈1〉に記載の固体触媒。
〈3〉遷移金属錯体部位を含む有機化合物が下記一般式(2)で示される化合物であることを特徴とする〈1〉に記載の固体触媒。
〈4〉多孔質材料がケイ素を含む金属酸化物であることを特徴とする〈1〉に記載の固体触媒。
〈5〉〈1〉〜〈4〉4のいずれかに記載の固体触媒を含有するクロスカップリング反応用固体触媒。
〈6〉〈5〉記載のクロスカップリング反応用固体触媒の存在下、ハロゲン化アリールとアリールボロン酸を塩基の存在下でクロスカップリング反応させることを特徴とするビアリール化合物の製造法。
本発明の固体触媒は、上記のような特有な構造を有することから、種々のクロスカップリング反応の触媒として極めて高い活性を示し、たとえばハロゲン化アリールとアリールボロン酸を塩基の存在下でクロスカップリング反応させてビアリール化合物を製造する際の触媒として用いるとビアリール化合物を高収率で製造することができる。
また、本発明の固体触媒は、固体でありかつ触媒成分が多孔質材料に強固に結合していることから、耐久性に優れると共に繰り返し使用が可能であり、しかも濾過等の簡便な操作により触媒と反応液とを分離できるので、工業的に極めて有用な固体触媒ということができる。
本発明の固体触媒は、両親媒性を示すポリアルキレングリコール部位と触媒活性を示す遷移金属錯体部位が共存しており、しかもポリアルキレングリコール部位の両親媒性により、反応原料となる水溶性物質および油溶性物質の双方あるいは促進剤がその近傍に取り込まれ、これらが極めて接近した位置に存在するようになるため、反応原料双方あるいは促進剤などがその近傍に存在する遷移金属錯体分子の触媒作用によって活性化され、所望とする触媒反応が促進される。
また、ポリアルキレングリコール部位を含む有機化合物の末端部位、および遷移金属錯体部位を含む有機化合物の末端部位のそれぞれが多孔質材料の表面に共有結合により結合されているため、これらの化合物が多孔質材料の表面に長時間安定に存在することが可能となり、触媒の耐久性が向上する。
また、二価の炭化水素基としては、二価の脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基が包含される。二価の脂肪族炭化水素基としては、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが、二価の芳香族炭化水素としては、フェニレンやフェニレンメチレンなどが例示される。
ここで、AとXは前記一般式(1)で説明したものと同様である。
また、Zである、メルカプト基、アミノ基およびフォスフィノ基は無置換体でもよいが置換体であってもよい。このような置換体のメルカプト基としてはメチルチオ基、フェニルチオ基等が、アミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が、フォスフィノ基としてはジメチルフォスフィノ基、ジブチルフォスフィノ基、ジシクロヘキシルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基等が挙げられる。
Mは、遷移金属であり、ここで言う遷移金属にはその金属塩、およびホモまたはヘテロ複核錯体、金属単体、クラスターも包含される。また、さらに有機置換基や配位子を有していても良い。遷移金属の金属種として具体的には、後周期の遷移金属が望ましく例えば、第8族の遷移金属および貴金属である。さらに具体的には、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、金等が挙げられる。
このような多孔質材料としては、例えばシリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア等の酸化物や、アルミノシリケート、チタノシリケート等の複合酸化物、MCM−41、SBA−15、FSM−16等の規則性メソ多孔体、結晶性アルミノシリケート、メタロシリケート、アルミノフォスフェート、シリカアルミノフォスフェート等のゼオライトまたはメソ多孔体、あるいは多孔質ガラスや粘土鉱物等であっても良い。また、これらの混合物でもよい。この中でもシリカ、ゼオライト、メソ多孔シリカ、多孔質ガラス、シリカアルミナ、シリカアルミノフォスフェート等のケイ素を含む金属酸化物が好ましく用いられる。
上記多孔質材料は0.5〜500 nm平均細孔径を有するものであり、好ましくは1〜100nmの平均細孔径を有するものである。また、ポリアルキレングリコール部位等を高濃度に結合させるためには、表面積の大きな多孔質材料が好ましく、比表面積に特に制限は無いが、望むらくは100〜1500m2/gの比表面積を有するものである。
共有結合の形態は、用いる有機化合物や多孔質材料の種類により異なるが、例えば両有機化合物の末端部位がSi含有基で、多孔質材料がシリカ系の場合にはシロキサン結合(Si−O−Si)であり、両有機化合物の末端部位がアルケニル基で、表面が水素化処理されたシリカ系多孔質材料の場合は、ケイ素−炭素結合(Si−C)となる。
ここで、クロスカップリング反応とは、二つの同じ化学種を結合させるホモカップリング反応とことなり、二つの異なる化学種を選択的に結合させる反応であり、かつ遷移金属を触媒として用いることで進行することを特徴とする反応である。
(1)鈴木カップリング反応
パラジウム等の遷移金属を触媒に用いて塩基性条件下、有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化物等をクロスカップリングさせる反応
(2)溝呂木−ヘックカップリング反応
パラジウム等の遷移金属を触媒に用いて塩基性条件下、末端アルケンとハロゲン化アリール等をクロスカップリングさせアルケニルアリール化合物を合成する反応
(3)根岸カップリング反応
パラジウム、ニッケル等の遷移金属を触媒に用いて、有機亜鉛化合物と有機ハロゲン化物等をクロスカップリングさせる反応
(4)スティレカップリング反応
パラジウム等の遷移金属を触媒に用いて、有機スズ化合物と有機ハロゲン化物等をクロスカップリングさせる反応
(5)辻−トロストカップリング反応
パラジウム等の遷移金属を触媒に用いて塩基性下、アリルエステル等と有機求核剤をクロスカップリングさせアリル位アルキル化生成物を合成する反応
(6)薗頭カップリング反応
パラジウム等の遷移金属を触媒に用いて塩基性条件下、末端アルキンとハロゲン化アリール等をクロスカップリングさせアルキニルアリール化合物を合成する反応
(7)熊田−玉尾カップリング反応
ニッケル、パラジウム等の遷移金属を触媒に用いて、グリニャール試薬と有機ハロゲン化物等をクロスカップリングさせる反応
(8)ブッフバルト−ハートウィックカップリング反応
パラジウム等の遷移金属を触媒に用いて塩基性条件下、ハロゲン化アリールとアミンまたはアルコールをクロスカップリングさせアリールアミンまたはアリールエーテルを合成する反応
鈴木クロスカップリング反応によるビアリール化合物の合成に用いる原料としては、ハロゲン化アリールとアリールボロン酸が挙げられる。
それぞれの原料はアリール基上を種々の置換基で置換されていても良い。また、本反応で用いられる固体触媒の遷移金属としては、パラジウムが好ましく使用される。
シリカゲル(1.54g)にジメトキシエタン(15ml)、有機ケイ素化合物A(1.56g)
規則性メソ多孔体材料であるSBA-15(1.31g)にジエチレングリコールジメチルエーテル(10ml)、有機ケイ素化合物A(1.09g)を加え、3日間110℃に加熱した。室温に冷却後固体をクロロホルムで洗浄し、減圧下乾燥すると、固形生成物が1.07g得られた。乾燥した固形生成物を153mgとり、これにトルエン(2ml)、配位性ケイ素化合物B(149mg)を加え、3日間加熱還流した。室温に冷却後固体をトルエンで洗浄し、減圧下乾燥すると、白色固体が171mg得られた。乾燥した白色固体を130mgとり、酢酸パラジウム(1.9mg)とテトラヒドロフラン(3ml)を加え24時間室温で攪拌した。反応液をゆっくりと濃縮乾燥することで、ポリアルキレングリコール部位および遷移金属錯体部位が規則性メソ多孔体の表面に共有結合で固定された下記の模式構造で示される固体触媒Dが得られた。
反応管に実施例1で合成した固体触媒Cを24.7mg(0.05mol%)、フェニルボロン酸439.9mg、ブロモ安息香酸エチル717.7mg、炭酸カリウム864.5mg、内部標準物質430mg、水1.5mlを混合し、100℃、5時間反応させた。反応後触媒を濾過で除き反応液を精製するとフェニル安息香酸エチルが82%収率で得られた。濾過で回収した触媒にフェニルボロン酸428.8mg、ブロモ安息香酸エチル707.0mg、炭酸カリウム863.7mg、内部標準物質427.8mg、水1.5ml加え、同様な条件下反応を行い処理するとフェニル安息香酸エチルが81%収率で得られた。さらに回収された触媒にフェニルボロン酸434.8mg、ブロモ安息香酸エチル707.1mg、炭酸カリウム869.9mg、内部標準物質432.6mg、水1.5ml加え、同様な条件下反応を行い処理するとフェニル安息香酸エチルが75%収率で得られた。
このことからこの固体触媒は濾過によるリサイクルが可能なことが解る。
反応管に実施例1で合成した固体触媒Cを21.4mg(0.05mol%)、フェニルボロン酸422.1mg、ブロモ安息香酸エチル696.8mg、炭酸カリウム845.5mg、内部標準物質440mg、トルエン3mlを混合し、100℃で反応させた。1時間後と5時間後の反応液を取り、ガスクロマトグラフィーで収率を求めると1時間後の収率33%、5時間後の収率52%であった。
実施例4で用いた触媒の代わりに、実施例2で合成した固体触媒Dを用いて同様の条件下反応を行った。1時間後と5時間後の反応液を取り、ガスクロマトグラフィーで収率を求めると1時間後の収率68%、5時間後の収率89%であった。
シリカゲル(1.28g)にトルエン(7ml)、配位性ケイ素化合物B(528mg)を加え、3日間加熱還流した。室温に冷却後固体をトルエンで洗浄し、減圧下乾燥すると、白色固体が1.65g得られた。乾燥した白色固体を300mgとり、酢酸パラジウム(11.1mg)とテトラヒドロフラン(1ml)を加え24時間室温で攪拌した。反応液をゆっくりと濃縮乾燥することで、遷移金属錯体部位のみがシリカ表面に共有結合で固定された下記の模式構造で示される固体触媒Eが得られた。
実施例4で用いた触媒の代わりに、合成した固体触媒Eを用いて同様の条件下反応を行った。1時間後と5時間後の反応液を取り、ガスクロマトグラフィーで収率を求めると1時間後の収率3%、5時間後の収率20%であった。
規則性メソ多孔体であるSBA-15(2.07g)にトルエン(30ml)、配位性ケイ素化合物B(758mg)を加え、3日間加熱還流した。室温に冷却後固体をトルエンで洗浄し、減圧下乾燥すると、白色固体が2.52g得られた。乾燥した白色固体を1.00gとり、酢酸パラジウム(24.3mg)とテトラヒドロフラン(8ml)を加え24時間室温で攪拌した。反応液をゆっくりと濃縮乾燥することで、遷移金属錯体部位のみが規則性メソ多孔体表面に共有結合で固定された下記の模式構造で示される固体触媒Fが得られた。
実施例4で用いた触媒の代わりに、合成した固体触媒Fを用いて同様の条件下反応を行った。1時間後と5時間後の反応液を取り、ガスクロマトグラフィーで収率を求めると1時間後の収率39%、5時間後の収率48%であった。
市販の5%パラジウムシリカ(0.98g)にジエチレングリコールジメチルエーテル(10ml)、有機ケイ素化合物A(0.61g)を加え、3日間110℃に加熱した。室温に冷却後固体をクロロホルムで洗浄し、減圧下乾燥すると、ポリアルキレングリコール部位のみがシリカ表面に共有結合で固定された下記の模式構造で示される固体触媒Gが1.01g得られた。
実施例4で用いた触媒の代わりに、合成した固体触媒Gを0.5mol%用いて同様の条件下反応を行った。1時間後と5時間後の反応液を取り、ガスクロマトグラフィーで収率を求めると1時間後の収率6%、5時間後の収率12%であった。
Claims (6)
- ポリアルキレングリコール部位を含む有機化合物の末端部位、および遷移金属錯体部位を含む有機化合物の末端部位のそれぞれが多孔質材料の表面に共有結合により結合された固体触媒。
- 多孔質材料がケイ素を含む金属酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の固体触媒。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の固体触媒を含有するクロスカップリング反応用固体触媒。
- 請求項5に記載のクロスカップリング反応用固体触媒の存在下、ハロゲン化アリールとアリールボロン酸を塩基の存在下でクロスカップリング反応させることを特徴とするビアリール化合物の製造法。
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