JP6109604B2 - オクタヒドロビナフチル誘導体 - Google Patents

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本発明はクラウンエーテル様環状構造を有するオクタヒドロビナフチル誘導体及びその製造方法に関する。
アミノ酸を含む光学活性アミン類の需要は、医薬品合成への応用の拡大とともに大きく増加している。その中でも、光学異性体分離カラムを用いたラセミ体の分割は、最も信頼性が高い手法である。このようなアミン類の分離には、例えば、クラウンエーテル様環状構造及びビナフチル基を有する化合物を担体に担持させた分離剤を用いることが知られている(特許文献1、2)。しかし、固定相までの合成が煩雑であり、十分な収率を得られないという問題があった。
一方で、オクタヒドロビナフチル誘導体を対掌体の分離に用いる試みもなされており、例えば、3,3’位に大環状ポリエーテル構造を有するオクタヒドロビナフチル誘導体にキラル認識能があることが報告されている(非特許文献1)。しかし、2,2’位に大環状ポリエーテル構造を有するオクタヒドロビナフチル誘導体については知られていない。また、シリカゲル等の担体に固定化された大環状ポリエーテル構造とオクタヒドロビナフチル構造とを有する化合物についても知られていない。
国際公開第2012/050124号 特開2013−023483号公報
Hiroaki Yoshida, Yuka Kobayashi, Kazuhisa Hiratani, and Kazuhiko Saigo, Tetrahedron Letters (2005), 46(22), 3901-3904
本発明は、合成が容易な、クラウンエーテル様環状構造及びオクタヒドロビナフチル基を含む新規な化合物及びその製造方法を提供する。
本発明者らは、出発物質としてオクタヒドロビナフチル基の3,3’位がヨウ素で置換されたオクタヒドロビナフチル誘導体を用い、これをさらに特定の反応による誘導体化を行うことで、クラウンエーテル様環状構造及びオクタヒドロビナフチル基を有する新規の化合物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記式(I)で表される化合物を提供する。
[式中、R及びRは、それぞれ、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルケニル基、または置換基を有していてもよいアルキニル基を表し、nは4〜6の整数を表す。nが4であることが好ましい。]
また、R及びRが、それぞれ、置換基を有するフェニル基または置換基を有するナフチル基であり、該置換基が下記式(i)で示されるシリル基であることが好ましい。

[式中、R、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基またはイミダゾリル基を表す。また、(CHで表されるアルキレンは置換基を有していてもよく、該置換基は、ヒドロキシル基およびメチル基又はエチル基である。mは1〜5の整数を表す。]
及びRが、それぞれ、式(i)で示されるシリル基を有するフェニルであり、フェニルにおける置換位置が4位であることが好ましい。
また、nが4であり、R及びRが、それぞれ、下記式(ii)で示される構造であることが好ましい。
また、nが4であり、R及びRが、それぞれ、下記式(iii)で示される構造であることが好ましい。
また、nが4であり、R及びRが、それぞれ、下記式(iv)で示される構造であることが好ましい。
本発明の化合物は担体に担持させて、クロマトグラフィー用分離剤として用いることが好ましい。担体が無機担体であることが好ましい。
また、本発明は、下記式(II)で示されるオクタヒドロビナフチル誘導体Bの水酸基のそれぞれをポリエチレングリコール誘導体で架橋して、下記式(III)で示されるオクタヒドロビナフチル誘導体Cを得るC工程と、
下記式(III)で示されるオクタヒドロビナフチル誘導体Cの3,3’位のヨード基をそれぞれ下記式(I)で示されるR及びRに置き換えて、クラウンエーテル様環状構造及びオクタヒドロビナフチル基を有する下記式(I)で示される化合物を得るD工程と、
を含む、下記式(I)で示される化合物の製造方法を提供する。

[式中、nは4〜6の整数を表す。]

[式中、R及びRは、それぞれ、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルケニル基、または置換基を有していてもよいアルキニル基を表し、nは4〜6の整数を表す。]
C工程において、オキシエチレン基の繰り返し数が5〜7のポリオキシエチレングリコールジトシラートをアルカリ条件下で反応させてオクタヒドロビナフチル誘導体Bの水酸基間を架橋して、オクタヒドロビナフチル誘導体Cを得ることが好ましい。
また、D工程において、オクタヒドロビナフチル誘導体Cと下記式(V)で示される化合物とを、パラジウム触媒及び塩基の存在下で反応させて前記式(I)で示される化合物を得るをことが好ましい。

[式中、Xは前記R及びRと同様である。]
また、前記式(I)中のR及びRが、それぞれ、置換基を有するフェニル基または置換基を有するナフチル基であり、該置換基がカルボニルを含有する基であり、
D工程の後に、該カルボニルと、下記式(VI)で表される化合物とを反応させて、
式(I)の化合物として、下記式(vii)で示されるシリル基を有する化合物を得るE工程を含むことが好ましい。

[式中、R、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基またはイミダゾリル基を表す。Mgはマグネシウムであり、Yは塩素、臭素又はヨウ素を表す。nは1〜5の整数を表す。]

[式中、R、R及びRは上記と同様である。また、(CH)pで表されるアルキレンは置換基を有し、該置換基は、前記フェニル基またはナフチル基に結合した炭素に結合している。該置換基は、ヒドロキシル基およびメチル基又はエチル基である。また、pは1〜5の整数を表す。]
また、1,1’−ビ−2−ナフトールに水素添加して、下記式(IV)で表される、オクタヒドロビナフチル誘導体Aを得るA工程と、
該オクタヒドロビナフチル誘導体Aの3,3’位をそれぞれヨード化してオクタヒドロビナフチル誘導体Bを得るB工程と、
を前記C工程の前にさらに含むことが好ましい。

本発明によれば、合成が容易で収率の改善が期待できるクラウンエーテル様環状構造及びオクタヒドロビナフチル基を含む新規な化合物およびその製造方法を提供することができる。また、クラウンエーテル様環状構造及びオクタヒドロビナフチル基を含むクロマトグラフィー用分離剤を提供することができ、従来の分離剤では分離できない化合物を分離できることが期待される。
化合物6(精製前)のNMRスペクトルを示す。 化合物6(精製後)のNMRスペクトルを示す。 充填剤1のIRスペクトルを示す。 カラム1を用いたトリプトファンおよびフェニルグリシンの分離のクロマトグラムを示す。 充填剤2のIRスペクトルを示す。(a)800〜4000[cm−1]、(b)2500〜4000[cm−1 カラム2,3を用いた各試料の分離のクロマトグラムを示す。 カラム2,3を用いた各試料の分離のクロマトグラムを示す。 充填剤3のIRスペクトルを示す。(a)800〜4000[cm−1]、(b)2500〜4000[cm−1
本発明の化合物は、下記式(I)で示される化合物である。

[式中、R及びRは、それぞれ、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルケニル基、または置換基を有していてもよいアルキニル基を表し、nは4〜6の整数を表し、nは4であることが好ましい。]
上記式(I)中、置換基を有していてもよいアリール基におけるアリール基として、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基等が例示できる。このなかでも、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。フェニル基である場合、置換基として、アセチル基、プロピオニル基が好ましく例示でき、4−アセチルフェニルであることが好ましい。
上記式(I)中、置換基を有していてもよいアルケニル基におけるアルケニル基は分枝状または非分枝状のアルケンの任意の炭素原子から1個の水素原子を除去した1価の不飽和炭化水素基であり、炭素数2〜22、特に2〜8、18、20、22のものが挙げられる。遊離原子価は、例えばビニル基(CH=CH−)のように不飽和炭素原子上にあってもよいし、又は、例えばアリル基(CH=CHCH−)のように飽和炭素原子上にあってもよい。アルケニル基の特に好ましい例として、2−プロペニル基が挙げられる。
上記式(I)中、置換基を有していてもよいアルキニル基におけるアルキニル基は分枝状または非分枝状のアルキンの任意の炭素原子から1個の水素原子を除去した1価の不飽和炭化水素基であり、炭素数2〜6、特に2〜3のものが挙げられる。遊離原子価は、例えばエチニル基(CH≡C−)のように不飽和炭素原子上にあってもよいし、または例えばプロパルギル基(CH≡CCH−)のように飽和炭素原子上にあってもよい。
上記R及びRにおいて、置換基は1またはそれ以上であってもよい。例えば、塩素原子;フッ素原子;メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、イソブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基等のアシル基;フェニル基、ベンジル基等のアリール基;ビニル基、アリル基、メタリル基等のアルケニル基;炭素数が1〜3のアルキルシリル基;トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基等のアリールシリル基;アリルシリル基;ジアリルエトキシシリル基;トリアリルシリル基;メタリルシリル基;カルボキシル基等が例示できる。また、−OCH、−CN、−COOC、−CONH、−CONH
(C)、−CONH(Ph)等も例示できる。
担体との結合を考えた場合、これらの置換基のうち、ビニル基、アリル基、メタリル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、アセチル基等の反応性の高い置換基が好ましい。また、アセチル基、プロピオニル基等のカルボニルを含有するものも好ましい。
上記、R及びRは、それぞれ、置換基を有するフェニル基または置換基を有するナフチル基であり、該置換基が下記式(i)で示されるシリル基であってもよい。

[式中、R、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数2〜5のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基またはイミダゾリル基を表す。また、(CHで表されるアルキレンは置換基を有していてもよく、該置換基は、R及びRのフェニル基またはナフチル基に結合した炭素に結合していることが好ましく、該置換基はヒドロキシル基およびメチル基又はエチル基であり、ヒドロキシル基およびメチル基が好ましい。また、mは1〜5の整数を表し、2〜4が好ましく、3または4がより好ましい。]
上記、R、R及びRは、最終合成物を光学異性体用分離剤として用いる場合に、最終合成物を担体に共有結合等の化学結合により担持させるために用いられる。R、R及びRに関しては、アルキル基としてメチル基、エチル基などがさらに好ましく例示でき、アルケニル基としてビニル基、アリル基及びメタリル基がさらに好ましく例示できる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基のような炭素数1〜3のものが好ましく例示できる。アシル基としてはアセチル基、プロピオニル基が好ましく例示でき、アルコキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が好ましく例示できる。置換アミノ基とは、アミノ基の水素原子の1個又は2個が置換されたものであり、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基等が例示できる。イミダゾリル基としては1−イミダゾリル基、2−イミダゾリル基、及び4−イミダゾリル基が例示できる。
担体に担持させるという観点から、ビニル基、アリル基、メタリル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、アセチル基等の反応性の高い置換基を少なくとも一つ有することがより好ましい。
式(i)で示される置換基の数は、1〜3が好ましく、1がより好ましい。すなわち、置換基を有するフェニル基が、前記式(i)で示されるシリル基を有するフェニルであり、置換基を有するナフチル基が、前記式(i)で示されるシリル基を有するナフチルであることが好ましい。
また、式(i)で示されるシリル基の置換位置の構造としては、フェニルであれば、2位(オルト)、3位(メタ)、4位(パラ)が挙げられるが、4位が好ましい。また、1−ナフチルであれば、4位、5位、6位、7位等が好ましく例示でき、5位がより好ましい。2−ナフチルであれば、6位、7位等が好ましく例示でき、6位がより好ましい。
上記R及びRとしては、下記式(ii)〜(iv)の構造が好ましく例示できる。



本発明の化合物は、下記式(II)で示されるオクタヒドロビナフチル誘導体Bの水酸基のそれぞれをポリエチレングリコール誘導体で架橋して、下記式(III)で示されるオクタヒドロビナフチル誘導体Cを得るC工程と、
下記式(III)で示されるオクタヒドロビナフチル誘導体Cの3,3’位のヨード基をそれぞれ下記式(I)で示されるR及びRに置き換えて、クラウンエーテル様環状構造及びオクタヒドロビナフチル基を有する下記式(I)で示される化合物を得るD工程と、
を含む方法によって製造することができる。

[式中、nは上記式(I)のnと同様である。]

[式中、R及びRは、上記式(I)のR及びRと同様である。また、nは上記式(I)のnと同様である。]
本発明のC工程は、オクタヒドロビナフチル誘導体Bの2,2’位の水酸基にポリオキシエチレンを架橋させられる条件によって行うことができる。このような架橋は、求核置換反応を利用して行うことができ、例えば、オキシエチレン基の繰り返し数が5〜7のポリオキシエチレングリコールジトシラートをアルカリ条件下で反応させることにより、オクタヒドロビナフチル誘導体Bの2、2’の水酸基間を架橋させることで行うことができる。その際、ポリオキシエチレングリコールジトシラートに対する、塩基による直接的攻撃を避けるため、カリウムtert−ブトキシド等の嵩高い塩基を使用してもよい。
この反応は、通常、60〜80℃で15〜30時間反応を行う。またこの反応は、通常、テトラヒドロフランやジクロロメタン、ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒中で行わせる。
本発明のD工程において、上記式(III)で示される化合物の3,3’位のヨード基のみを上記R及びRに置き換えることは、例えば、鈴木−宮浦クロスカップリング反応により行うことができる。
この工程の鈴木−宮浦クロスカップリング反応は、式(III)で示される化合物と、例えば、パラジウム炭素(Pd/C)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウ
ム、酢酸パラジウム等のパラジウムを含む触媒及び炭酸カリウム等の塩基の存在下、アリールボロン酸等のボロン酸(有機ホウ素化合物)と反応させることによって起こる反応である。
この工程における反応温度は、80〜120℃であることが好ましく、確実に3,3’位のみを上記R及びRに置き換えるために90〜105℃であることがより好ましい。また、パラジウム触媒のなかでも、パラジウム炭素が安価で効率がよいため、好ましい。
この工程で用いることのできる溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFとも言う)やトルエンが挙げられる。
また、この工程において、パラジウムを含む触媒の使用量は、収率及び効果の頭打ちの観点から、前記式(III)で示される基質1モル当量に対して0.01〜0.15モル当量であることが好ましく、0.02〜0.08モル当量であることがより好ましい。
本発明のD工程においては、上記ボロン酸の有機基として、上記R及びRを有するボロン酸、すなわち下記式(V)のボロン酸を用いて、前記ヨード基を上記R及びRに置き換えることが好ましい。

[式中、Xは上記R及びRと同様である。]
例えば、上記R及びRが、フェニル基である場合は、式(V)のボロン酸としてフェニルボロン酸を用いればよく、上記R及びRが、上記式(i)で示されるシリル基を有するフェニル基やナフチル基であれば、上記式(i)で示されるシリル基を有するフェニルボロン酸またはナフチルボロン酸を用いればよい。また、上記R及びRが、上記式(ii)の構造である場合は、下記の式(vi)で表されるボロン酸を用いればよい。このような化合物は公知の方法により合成することができる。また、上記R及びRが、4−アセチルフェニルである場合は、4−アセチルフェニルボロン酸を用いればよい。

上記R及びRが、それぞれ、置換基を有するフェニル基または置換基を有するナフチル基であり、置換基が、アセチル基、プロピオニル基等のカルボニルを含有する基である場合、D工程の後、さらに、E工程により、下記式(vii)で示されるシリル基を有する式(I)の化合物を得ることもできる。E工程は、上記R及びRとして前記式(iv)の化合物を有する式(I)の化合物を得る場合に好ましい。
[式中、R、R及びRは上記と同様である。また、(CH)pで表されるアルキレンは置換基を有し、該置換基は、フェニル基またはナフチル基に結合した炭素に結合している。該置換基は、ヒドロキシル基およびメチル基又はエチル基であり、ヒドロキシル基およびメチル基であることが好ましい。また、pは1〜5の整数を表し、2〜4が好ましく、3または4がより好ましい。]
E工程は、上記式(I)中のR及びRが、それぞれ、置換基を有するフェニル基または置換基を有するナフチル基であり、置換基がカルボニルを含有する基である場合に、式(I)の化合物として、式(vii)で示されるシリル基を有する化合物を得る工程である。
E工程は、例えばグリニャール反応により、R及びRが、それぞれ、置換基を有するフェニル基または置換基を有するナフチル基であり、置換基がカルボニルを含有する基である式(I)の化合物の該カルボニルと、下記式(VI)で表される化合物とを反応させる工程である。式(VI)で示される化合物は、グリニャール試薬として知られている有機マグネシウムハロゲン化物である。このような化合物は公知の方法により得ることができる。

[式中、R、R及びRは上記と同様である。Mgはマグネシウムであり、Yは塩素、臭素又はヨウ素を表す。nは1〜5の整数を表し、2〜4が好ましい。]
グリニャール反応は、前記カルボニルを有する式(I)の化合物をジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の溶媒に溶解し、前記式(VI)で示されるグリニャール試薬を加えて撹拌し反応させることで起こる。グリニャール試薬の添加は過剰量添加することが好ましく、通常2〜15モル等量、好ましくは5〜10モル等量である。反応温度は、通常0〜40℃であり、好ましくは20〜30℃である。また、反応時間は、通常3〜10時間である。
本発明において、式(II)で示されるオクタヒドロビナフチル誘導体Bは、例えば、以下のA工程およびB工程を経て合成することができるが、この製法に限定されるものではない。
A工程は、1,1’−ビ−2−ナフトールに水素添加して、下記式(IV)で表される、オクタヒドロビナフチル誘導体Aを得る工程である。
B工程は、上記オクタヒドロビナフチル誘導体Aの3,3’位をそれぞれヨード化してオクタヒドロビナフチル誘導体Bを得る工程である。
A工程において、1,1’−ビ−2−ナフトールは、市販のものを用いることができる。1,1’−ビ−2−ナフトールへの水素添加は、公知の方法により行うことができ、J.
Org. Chem. 2004, 69, 3220-3221.に記載されている。例えば、PtOやPd/C等の触媒の存在下、水素含有ガスを圧力5〜6MPa程度で接触させることで水素化することができる。水素添加反応は、温度50〜100℃で、1〜2時間行うことが好ましい。
B工程における、オクタヒドロビナフチル誘導体Aの3,3’位の選択的なヨード化は、例えば、誘導体A(式(IV))を、N,N’−ジヨード−5,5’−ジメチルヒダントイン(DIH)とBi(OTf)等のルイス酸を溶解させたジクロロエタン、クロロホルムやジクロロメタンなどの溶媒の中で、0〜100℃、副生成物の生成を抑える観点から好ましくは20〜30℃の温度、10〜30時間、より好ましくは20〜30時間反応させることでできる。
また、このB工程において、DIHの使用量は、収率及び効果の頭打ちの観点から、前記式(IV)で示される基質1モル当量に対して1.2〜2.2モル当量であることが好ましく、1.5〜1.6モル当量であることがより好ましい。
B工程において、Bi(OTf)等のルイス酸の使用量は、用いるルイス酸の種類により異なるが、収率及び効果の頭打ちの観点から、前記式(IV)で示される基質1モル当量に対して通常0.02〜0.50モル当量であり、0.05〜0.20モル当量であることが好ましく、0.08〜0.15モル当量であることがより好ましい。
本発明の各工程において得られるオクタヒドロビナフチル誘導体は、精製してもよいし、生成物をそのまま次の工程の原料に用いてもよい。
本発明に係るオクタヒドロビナフチル誘導体は担体に担持させて、クロマトグラフィー用分離剤として用いることもできる。担体には、前記オクタヒドロビナフチル誘導体を共有結合等の化学結合によって固定することができる担体を用いることができる。このような担体としては、無機担体であってもよいし有機担体であってもよいが、無機担体が好ましい。無機担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、ガラス、カオリン、酸化チタン、ケイ酸塩、及びヒドロキシアパタイトが挙げられる。有機担体としては、例えば、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、及びポリアクリレートが挙げられ、架橋剤によって不溶化されたものが好ましい。
また、前記担体は、各種クロマトグラフィーに適応した形態で用いることができる。このような担体の形態としては、例えば、粒子、及びカラム管に液密に収容される多孔性の円柱体が挙げられる。
前記担体は、分離性能の向上の観点から、多孔体であることが好ましく、BET比表面積が100〜600m/gであることがより好ましい。また多孔質の担体の細孔径は、分離性能の向上の観点から、水銀圧入法によって測定される細孔径が60〜300Åであ
ることが好ましい。
前述した特性の観点から特に好ましい担体としては、例えばシリカゲルが挙げられる。
本発明に係るオクタヒドロビナフチル誘導体を担体に担持させる方法は化学的方法でも物理的方法でもよいが、共有結合などの化学結合によるものが好ましい。例えば、オクタヒドロビナフチル誘導体をトルエン等の溶剤に溶解させ、シリカゲル等の担体と混合して加温することで、担体に担持させることができる。R及びRが、上記式(i)で示されるシリル基を有する場合、このような方法により、例えば、Si−O−Siを形成することで、シリカゲルと化学結合させることができる。このような方法の例として、アリルシランを用いる無機担体への結合が、特開2004−175793号公報に記載されている。この場合、担持されなかった誘導体は回収することができる。回収された誘導体は、構造的に変化していなければ、再び担持に用いることが可能である。そのためアルコキシシランのように再利用が難しいシランカップリング剤と比べ、効率的、経済的である。構造的に変化しているかどうかはNMRにより確認できる。
また、3−アミノプロピルトリエトキシシランや3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン等のシランカップリング剤により表面処理した担体を用いて、オクタヒドロビナフチル誘導体に導入された置換基(好ましくは上記反応性の高い置換基)と結合させる方法でも良い。
オクタヒドロビナフチル誘導体を担体に担持させる化学的方法としては、これ以外にも様々なプロセスが考えられ、原料、中間体、オクタヒドロビナフチルとクラウンエーテル様骨格を形成した後など、適当な段階で適当な方法を用いればよい。例えばビナフチル骨格の3,3’位の置換基を化学結合に用いる上記の方法以外にも、NBS(N−ブロモスクシンイミド)で5位、5’位、8位、あるいは8’位に臭素原子を置換し、これを更にシリカゲルあるいはシリカゲル上に容易に導入できる原子団と結合することのできる他の官能基(例えば上記反応性の高い置換基)に置き換えることも可能である。
また、国際公開第2012/050124号に記載のように、誘導体のビナフチル骨格に、炭素数4〜33の脂肪族ジカルボン酸モノメチルエステルモノクロライドを塩化鉄の存在下で反応させた後に、担体に連結するための置換基(例えば上記反応性の高い置換基)を導入する方法も挙げられる。
また、必要があれば2,2’位の水酸基を適当な原子団で保護した上で、フリーデルクラフツ反応や同様の芳香族求電子置換反応を用いて、オクタヒドロビナフチル骨格のベンゼン環や、その3,3’置換基が芳香族基である場合にはこの芳香族環に、シリカゲルとの結合に好都合な置換基(例えば上記反応性の高い置換基)を導入することも考えられる。
このように、誘導体の結合の一部を何らかの原子団と置換し、該原子団を介して担体に結合することが有効である。
本発明に係るオクタヒドロビナフチル誘導体の担体への結合量(以下、誘導体結合量ともいう)は、担体が無機担体であれば、充填剤の炭素含有率で表すことができ、通常5〜30%であり、6〜20%が好ましい。このような範囲の結合量であれば、より十分な分離性能を発揮することができるため好ましい。炭素含有率の測定は、燃焼式の元素分析装置(例えばヤナコ分析工業社製CHNコーダーMT−5型)により測定できる。
担体が有機担体の場合は、誘導体結合量は(充填剤の炭素含有率−担体の炭素含有率)で表すことができる。
本発明のクロマトグラフィー用分離剤は、クロマトグラフィーの種類に応じて適宜に処理されて用いられる。例えばカラムクロマトグラフィーに用いられる場合では、本発明の
クロマトグラフィー用分離剤は、カラム管に充填又は収容される。また薄層クロマトグラフィーに用いられる場合では、本発明のクロマトグラフィー用分離剤は、例えば粒子状の分離剤である場合ではガラス板やプラスチック板等の基板の表面の薄層を形成して用いられる。これらの処理は、通常の方法によって行うことができる。
なお本発明のクロマトグラフィー用分離剤は、前記オクタヒドロビナフチル誘導体の光学特性に関わらずオクタヒドロビナフチル誘導体の構造に相互作用する光学異性体以外の特定の化合物の分離に用いることができる。このような光学異性体以外の化合物の分離に用いる場合では、前記オクタヒドロビナフチル誘導体は、光学分割能を示さない程にS体とR体とが混合していても(例えばラセミ体であっても)よい。
また、本発明にかかるオクタヒドロビナフチル誘導体は、不斉構造が保たれた状態で種々の置換基の導入が期待されることから、不斉合成や光学分割における高性能な不斉識別剤への利用が期待される。よって、本発明は、有用な不斉合成触媒や光学異性体用分離剤の開発や、これらを用いた医薬品、化成品、化粧料、電子材料等の種々の分野における新規材料の開発に大きく貢献することが期待される。
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に制限されない。
本実施例において、NMRは日本電子社製JNM−ECXを用い、H NMRを測定した。
また、炭素含有率は、ヤナコ分析工業社製CHNコーダーMT−5型を用い、燃焼式で測定した。標準試料にアンチピリンを用いて検量線を作成した。またキャリブレーションとしてアセトアニリドを分析した。充填剤は約10mg秤量して分析を行った。
<合成例1>
5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビ−2−ナフトールのヨード化
窒素雰囲気下、化合物1(2000 mg, 6.79 mmol)及びN,N’−ジヨード−5、5’ジメチルヒダントイン(DIH)(3097 mg, 8.15 mmol)とビスマス(III)トリフラート(Bi(OTf))(446 mg, 0.679 mmol)を蒸留CHClに溶解させ、室温で24時間撹拌した。反応終了後は、5重量%NaSO水溶液でクエンチし、水層をCHClで抽出した。集めた有機層は飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させた後、濾過・濃縮し化合物2を得た (3635mg, 98%)。得られた化合物2のNMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3) δ 1.616-1.706 (m, 8H), 2.069-2.128 (m, 2H), 2.243-2.304 (m, 2H),
2.726 (t, 4H), 4.965 (s, 2H), 7.508 (s, 2H).
<合成例2>
化合物2の水酸基の架橋反応
窒素雰囲気下、化合物2(2875 mg, 5.26 mmol)及びカリウムtert−ブトキシド(BuOK)(1181 mg, 10.52 mmol)を蒸留THF(92.2 mL)に溶解させ、70℃下で40分間攪拌した。次に、蒸留THF(92.2 mL)を加え、化合物a(2877 mg, 5.26 mmol)の蒸留THF溶液(154 mL)をシリンジポンプによって30分間で加えた。その後、70℃下で24時間攪拌した。反応終了後、濃縮させ、CHClに溶解させた後水で洗浄し、水層をCHClで抽出した。集めた有機層は飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させた後、濾過・濃縮し,粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/2)により精製し、目的の化合物3を得た(3032 mg 77%)。得られた化合物3のNMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3) δ 1.627-1.731 (m, 8H), 2.003-2.079 (m, 2H), 2.227-2.301 (m, 2H),
2.734 (t, 2.734), 3.297-3.351 (m, 2H), 3.516-3.740 (m, 16H), 3.813-3.866 (m, 2H), 3.912-3.963 (m, 2H), 7.553 (s, 2H).
<合成例3>
窒素雰囲気下、化合物4(国際公開第2013/002346号に従って合成)(3000 mg, 8.59 mmol)を蒸留THF(60 mL)に溶解させた後に、−78℃下でn−ブチルリチウム(BuLi)(17.2 mmol)を滴下し30分間攪拌した。その後、トリメトキシボラン(B(OMe))(20.6 mmol)を滴下し30分・−78℃で攪拌した。反応終了後、水でクエンチし、10重量%HCl水溶液を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過・濃縮することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1)によって精製することで目的の化合物5を得た(1970 mg, 73%)。得られ
た化合物5のNMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (DMSO) δ 0.523-0.566 (m, 2H), 1.527-1.633 (m, 8H), 2.547 (t, 2H), 4.797-4.852 (m, 6H), 5.686-5794 (m, 3H), 7.116 (d, 2H), 7.676 (d, 2H), 7.937 (s, 2H).
<実施例1>
目的化合物6の製造

窒素雰囲気下、化合物3(1534 mg, 2.05 mmol)及び化合物5(1611 mg, 5.12 mmol)、Pd/C(218 mg, 0.103 mmol)、KCO(1133 mg, 8.20 mmol)をジオキサン(30 ml)、HO(15 mL)に加え、95℃で6時間攪拌した。反応終了後セライト濾過を行い、水で洗浄した後に水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し、濾過・濃縮することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1)によって精製し、目的の化合物6を得た(1762 mg 83%)。得られた化合物6のNMRの測定結果を以下に示す。また、精製前の化合物6のNMRスペクトルを図1に、精製後の化合物6のNMRスペクトルを図2に示す。1H NMR (CDCl3) δ 0.621-0.701 (m, 4H), 1.569-1.772 (m, 24H), 2.187-2.261 (m, 2H), 2.357-2.432 (m, 2H), 2.639 (t, 4H), 2.806 (t, 4H), 3.160-3.561 (m, 18H), 3.643-3.698 (m, 2H), 4.843-4.912 (m, 12H), 5.709-5.835 (m, 6H), 7.068 (s, 2H), 7.183 (d, 4H), 7.528 (d, 4H).
<実施例2>
化合物6のシリカゲルへの担持
反応容器にシリカゲル(10 g)を入れ、真空下ドライヤーで加熱しながら15分間乾燥した後に、ヒートガンで加熱しながら15分間乾燥させた。その後、180℃で加熱しながら7時間乾燥させた。室温に戻した後、化合物6(1762 mg, 1.67 mmol)の蒸留トルエン溶液(60 mL)を加え、150℃で15時間還流させた。次に、シリカゲルをトルエンで洗浄し濃縮・乾燥させ化合物6が担持されたシリカゲル(充填剤1)を得た。担持されなかった化合物6は回収した(回収率:46%)。充填剤1の炭素含有率を元素分析により求めたところ6.5%であった。
得られた充填剤1のIRスペクトルを赤外分光光度計(FT/IR-4100 typeA、日本分光株
式会社)を用いて、拡散反射法で測定した(図3)。IRスペクトルでは、波数2900cm−1付近にアルキルのC−H伸縮振動ピーク(ピークNo.3)が見られ、化合物6がシリカゲルに担持されていることがわかる。
カラム1の作製
充填剤1を内径2.1mm×長さ150mmのステンレスカラムにスラリー充填し、カラム1を得た。
評価
カラム1を用いて、下記条件で試料(トリプトファン、フェニルグリシン)を分析した。結果を表1に示す。また、評価クロマトグラムを図4に示す。トリプトファン、フェニルグリシンを完全分割することができた。
(分析条件)
移動相:過塩素酸水溶液(pH1.5)
流速:0.1mL/min.
検出波長:200nm
温度:25℃
サンプル:1mg/1mL, 5μL注入
分析には、製品名LC−1500シリーズ、日本分光社製のものを用いた。溶離液には過塩素酸水溶液(pH1.5)を用いて、UV検出器(波長:200nm、製品名:UV−1575、日本分光社製)を用いてピークの検出、同定を行った。
表1において、溶離液がカラムを素通りする時間t(デッドタイム)はシュウ酸ナトリウムから求めた。また、tは最初に流出する対掌体の保持時間であり、tは後に流出する対掌体の保持時間である。k1’、k2’は容量比であり、αは分離係数であり、Rsは分離度である。なお、容量比、分離係数αおよび分離度Rsは下式で定義される。
[容量比k1’]
k1’=[(最初に流出する対掌体の保持時間)−(t0)]/t0)
[容量比k2’]
k2’=[(後に流出する対掌体の保持時間)−(t0)]/t0)
[分離係数α]
α=(より強く保持される対掌体の容量比)/(より弱く保持される対掌体の容量比)
[分離度Rs]
Rs={1.18×(より強く吸着される対掌体とより弱く吸着される対掌体の両ピーク間の距離)}/(両ピークの半値幅の合計)
<実施例3>
化合物6のシリカゲルへの担持(担持量増加)
反応容器にシリカゲル(2.50 g)を入れ、真空下ドライヤーで加熱しながら15分間乾燥した後に、ヒートガンで加熱しながら15分間乾燥させた。その後、180℃で加熱しながら7時間乾燥させた。室温に戻した後、化合物6(3.21 g, 3.04 mmol)の蒸留トルエン
溶液(60 mL)を加え、150℃で15時間還流させた。次に、シリカゲルをトルエンで洗浄し濃縮・乾燥させ化合物6が担持されたシリカゲル(2.76 g)(充填剤2)を得た。担持されなかった化合物6は回収した(回収率:2.35 g, 73%)。充填剤2の炭素含有率を元素分析により求めたところ19.2%であった。
得られた充填剤2のIRスペクトルを測定した(図5)。IRスペクトルでは、3000[cm−1]付近に芳香族のC−H伸縮振動ピーク、2900[cm−1]付近にアルキルのC−H伸縮振動ピークが見られ、化合物6がシリカゲルに担持されていることがわかる。
カラム2の作製
充填剤2を内径2.1mm×長さ150mmのステンレスカラムにスラリー充填し、カラム2を得た。
評価
カラム2を用いて、上記と同様の条件で表2に記載の試料を分析した。結果を表2に示す。また、評価クロマトグラムを図6および7に示す。各試料で良好な結果が得られた
<合成例4>
窒素雰囲気下、4−アリルブロモベンゼン(3000 mg, 15.2 mmol)と(NBu4)2[PtCl6](27.6 mg, 3.04 mmol)をジエチルエーテル(ETO)とCHClの混合溶媒中に溶解させ、0℃まで冷却した。その後、ジクロロメチルシラン(30.4 mmol)を加え12時間撹拌した後濃縮し、アリルマグネシウムブロマイド(41.1 mmol)を0℃下で滴下し3時間撹拌した。反応終了後、水でクエンチし10重量%のHClとNaHCO水溶液で洗浄しジエチルエーテルで水層から抽出した。集めた有機層は飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させた後、濾過・濃縮し,粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (hexane) により精製し、化合物7を得た(4674 mg 95%)。得
られた化合物7のNMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3) δ-0.024 (s, 3H), 0.546-0.592 (m, 2H), 1.526-1.633 (m, 6H) 2.564 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 4.817-4.861 (m, 4H), 5.692-5.804(m, 2H), 7.036 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 7.393 (d, J = 6.4 Hz, 2H)
窒素雰囲気下、化合物7(1000 mg, 3.09 mmol)を蒸留THF(60 mL)に溶解させた後に、−78℃下でn−ブチルリチウム(BuLi)(6.18 mmol)を滴下し30分間攪拌した。その後、トリメトキシボラン(B(OMe))(7.43 mmol)を滴下し30分・−78℃で攪拌した。反応終了後、水でクエンチし、10重量%HCl水溶液を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過・濃縮することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル=5/1)によって精製することで化合物8を得た(651 mg, 73%)。得られた化合物8のNMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (DMSO)δ-0.008 (s, 3H), 0.558-0.600 (m, 2H), 1.551-1.671 (m, 6H), 2.620 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 4.737-4.887 (m, 4H), 5.725-5.834 (m, 2H), 7.193 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.752 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 8.155 (s, 2H).
<実施例4>

窒素雰囲気下、化合物3(1200 mg, 1.60 mmol)及び化合物8(1156 mg, 4.01 mmol)、Pd/C(171 mg, 0.160 mmol)、KCO(886 mg, 6.41 mmol)をジオキサン(23.5 ml)、HO(11.7 mL)に加え、95℃で6時間攪拌した。反応終了後セライト濾過を行い、水で洗浄した後に水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し、濾過・濃縮することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1)によって精製し、目的の化合物9を得た(1226 mg 78%)。得られた化合物9のNMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3)δ-0.006 (s, 6H)0.591-0.670 (m, 4H), 1.554-1.813 (m, 20H), 2.206-2.266 (m, 2H), 2.361-2.436 (m, 2H), 2.644 (t, J = 6.4 Hz, 4H), 2.810 (t, J = 8.0 Hz, 4H), 3.165-3.700 (m, 20H), 4.829-4.881 (m, 8H), 5.640-5.832 (m, 4H), 7.071 (
s, 2H), 7.190 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 7.528 (d, J = 7.6 Hz, 4H).
<実施例5>
化合物9のシリカゲルへの担持
反応容器にシリカゲル(2.51 g)を入れ、真空下ドライヤーで加熱しながら15分間乾燥した後に、ヒートガンで加熱しながら15分間乾燥させた。その後、180℃で加熱しながら7時間乾燥させた。室温に戻した後、化合物9(3048 mg, 3.11 mmol)の蒸留トルエン溶液(60 mL)を加え、150℃で15時間還流させた。次に、シリカゲルをトルエンで洗浄し濃縮・乾燥させ化合物9が担持されたシリカゲル(充填剤3)(2.79 g)を得た。担持されなかった化合物9は回収した(回収率:2.77 g, 91%)。充填剤3の炭素含有率を元素分析により求めたところ10.5%であった。なお、回収された化合物9は、構造的に変化していないことをNMRにより確認した。
得られた充填剤3のIRスペクトルを測定した(図8)。3000[cm−1]付近に芳香族のC−H伸縮振動ピーク、2900[cm−1]付近にアルキルのC−H伸縮振動ピークが検出されており、化合物9がシリカゲルに担持されていることがわかる。
カラム3の作製
充填剤3を内径2.1mm×長さ150mmのステンレスカラムにスラリー充填し、カラム3を得た。
評価
カラム3を用いて、上記と同様の条件で表3に記載の試料を分析した。結果を表3に示す。また、評価クロマトグラムを図6および7に示す。各試料で良好な結果が得られた。
<実施例6>

窒素雰囲気下、化合物3(300 mg, 0.401 mmol)及び化合物b(4−アセチルフェニルボロン酸)(164 mg, 1.00 mmol)、Pd/C(218 mg, 0.103 mmol)、KCO(222 mg, 1.603 mmol)をジオキサン(30 mL)、HO (15 mL)に加え、95℃で6時間攪拌した。反応終了後セライト濾過を行い、水で洗浄した後に水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し、濾過・濃縮することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、化合物10を得た(293 mg 100%収率)。得られた化合物10のNMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3)δ1.711-1.793 (m, 8H), 2.214-2.290 (m, 2H), 2.398-2.432 (m, 2H), 2.648 (s, 6H), 2.819-2.835 (m, 4H), 3.187-3.674 (m, 20H), 7.113 (s, 2H), 7.758 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 8.009 (d, J = 6.4 Hz, 4H).
窒素雰囲気下、化合物10(153 mg, 0.209 mmol)をジエチルエーテル(Et2O)(8 mL)に溶解させた。次に0℃下で過剰量の上記グリニャール試薬c(国際公開第2013/002347号に従って合成)(1.67 mmol)を滴下し室温で5時間撹拌した。反応終了後、水でクエンチし、水で洗浄した後ジエチルエーテル(Et2O)で水層から抽出した。集めた有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し,濾過・濃縮することで目的の化合物11を得た(208 mg, 89%収率)。
1H NMR (CDCl3)δ0.557-0.621 (m, 4H), 1.53-1.863 (m, 28H), 2.211-2.270 (m, 2H), 2.370-2.427 (m, 2H), 2.796-2.827 (m, 4H), 3.183-3.652 (m, 26H), 4.811-4.947 (m, 12H), 5.680-5.843 (m, 6H), 7.073 (s, 2H), 7.439 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 7.589 (d, J = 7.6 Hz, 4H).
本発明に係るオクタヒドロビナフチル誘導体は、導入する置換基の種類や、クラウンエーテル様環状構造の大きさ等の要素によって、例えばクロマトグラフィー用の分離剤として用いた場合に、分離特性を調整できる可能性がある。また、本発明によれば、オクタヒドロビナフチル誘導体の所望の位置に置換基が導入されることによって、所望の特性が付与された新規材料の開発が大いに期待される。

Claims (7)

  1. 下記式(I)で示される化合物を担体に担持させてなる、光学異性体用分離剤

    [式中、R及びRは、それぞれ、それぞれ、置換基を有するフェニル基または置換基を有するナフチル基であり、該置換基が下記式(i)で示されるシリル基であり、nは4〜6の整数を表す。]

    [式中、R 、R 及びR はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基またはイミダゾリル基を表す。また、(CH で表されるアルキレンは置換基を有していてもよく、該置換基は、ヒドロキシル基およびメチル基又はエチル基である。mは1〜5の整数を表す。]
  2. nが4であることを特徴とする請求項1に記載の光学異性体用分離剤
  3. 及びRが、それぞれ、式(i)で示されるシリル基を有するフェニルであり、フェニルにおける置換位置が4位であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学異性体用分離剤
  4. nが4であり、R及びRが、それぞれ、下記式(ii)で示される構造である、請求項1に記載の光学異性体用分離剤
  5. nが4であり、R及びRが、それぞれ、下記式(iii)で示される構造である、請求項1に記載の光学異性体用分離剤
  6. nが4であり、R及びRが、それぞれ、下記式(iv)で示される構造である、請求項1に記載の光学異性体用分離剤
  7. 担体が無機担体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学異性体用分離剤
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