JP5757602B2 - 不斉選択性の切り替えが可能なクロマトグラフィー用充填剤 - Google Patents

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Description

本発明は、クロマトグラフィー法、特に液体クロマトグラフィーによる光学異性体の分離に用いられる光学異性体分離剤及びそれを担持させてなる充填剤に関し、特に固体状態で不斉選択性を自在に切り替え可能ならせん状ポリアセチレン化合物を担体にコーティングしてなる充填剤、及びその製造方法に関する。
有機化合物には物理的、化学的性質、例えば沸点、融点、溶解度といった物性が全く同一であるが、生理活性に差がみられる光学異性体が多く存在する。医薬の技術分野では、生体内の特定の受容体との結合のし易さによる薬理活性の違いがよく研究されており、光学異性体の間で薬効、毒性の点で顕著な差が見られる場合が多いことが広く知られている。このため薬物としてラセミ体を使用する場合には、それぞれの異性体について、吸収、分布、代謝、排泄動態を検討しておくことが望ましい旨、厚生省の医薬品製造指針にも記載されている。
前述の通り、光学異性体の物理的、化学的性質は全く同一であるが故に、通常の分離手段では分析が行えないため、広範な種類の有機化合物の光学異性体を簡便、且つ精度良く分析する技術の研究が精力的に行われてきた。それらの中でも、特に高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと称することもある。)による光学分割法は、光学異性体分離機能を有する物質、すなわち、光学異性体分離剤そのもの、或いは光学異性体分離剤を適当な担体上に化学結合又はコーティングすることにより担持させたキラル固定相を使用して光学異性体を分離するものである。例えば、低分子化合物である光学活性なクラウンエーテル化合物を担体にコーティングした充填剤(特許文献1)、合成高分子である光学活性メタクリル酸トリフェニルメチルポリマーを担体にコーティングした充填剤(特許文献2)、多糖の誘導体である三酢酸セルロースを担体にコーティングした充填剤(特許文献3)、安息香酸セルロースを担体にコーティングした充填剤(特許文献4)、セルロースフェニルカルバメートを担体にコーティングした充填剤(特許文献5)、セルロースあるいはアミロース誘導体(非特許文献1)、タンパクであるオボムコイド(特許文献6)等が開発され、その高い光学分割能から商品化され、広く使用されている。
キラル固定相を用いるHPLC(以下、キラルHPLCと称する場合もある。)による光学異性体の分離、分析及び分取において、両異性体のピークが接近している場合、後から溶出する異性体に、先に溶出する異性体が混入しやすいので、後から溶出する異性体については光学純度の高いものを得るのが困難な場合が多い。そこで、各異性体の溶出順序を逆転できれば、微量の異性体を先に溶出させることにより、後に溶出する異性体の光学純度を高めることが可能である。従って、光学分割能を完全に保ちつつ、溶出順序のみを逆転することができる鏡像異性体の関係にあるキラル固定相が自在に利用できれば、極めて有用である。
しかし、光学異性体分離剤は、一般に非常に高価であると共に、使用する光学異性体分離剤の不斉炭素原子由来のキラリティー(低分子化合物の場合)又はコンホメーション由来のキラリティー(高分子化合物の場合)により不斉選択性が既に決められているため、不斉選択性を切り替えることは通常困難である。例えば、既にHPLC用キラル固定相として市販もされている高分子化合物(ポリメタクリル酸エステル誘導体)は、溶液中でもほどけることのない安定な一方向巻きのらせん構造を有するが、らせんの巻き方向は、光学活性な触媒や開始剤を用いることで重合反応の段階で決定づけられるので、不斉選択性の切り替えを行うことはできない(非特許文献2)。
一方、溶液中で右巻きと左巻きのらせん反転が素早く起こる動的らせん高分子と呼ばれる一群のポリアセチレン化合物が知られている。具体的には、光学活性アミン存在下で該ポリアセチレン化合物に所望の巻き方向のらせんを自在に誘起することが可能であることが見出されている(非特許文献3)。そして、前記らせん構造複合体から光学活性化合物を除去し、アキラルな化合物と置き換えても一方向巻きのらせん構造(らせんのキラリティー)が記憶されることも報告されている(非特許文献4)。しかし、溶液中とは異なり動的平衡が起こりにくい固体状態で効率よく右巻きと左巻きのらせん構造を反転させ、それをアキラルな化合物による置き換えをすることなく記憶させることができるポリアセチレン化合物は見出されていない。
特開昭62−210053号公報 特開昭57−150432号公報 特開昭60−82858号公報 特開昭60−40952号公報 特開昭60−108751号公報 特開昭63−307829号公報
Okamoto, Y., Kawashima, M. and Hatada, K. J.Am.Chem.Soc., 1984, 106, 5357. Nakano, T. and Okamoto, Y. Chem. Rev. 2001, 101, 4013. Yashima, E., Matsushima, T. and Okamoto, Y. J. Am. Chem. Soc., 1995, 117, 11596. Yashima, E., Maeda, K. and Okamoto, Y. Nature, 1999, 399, 449.
このような背景のもと、幅広い種類の有機化合物の光学異性体の混合物を簡便且つ安価に、精度良く分析することができるキラル固定相の開発がますます求められている。
本発明の目的は、光学異性体分離剤の不斉選択性を固体状態で自在に切り替えることができる新規かつ実用的ならせんのキラリティーを有するポリアセチレン化合物及びそれを担体にコーティングしてなる充填剤、並びに該ポリアセチレン化合物の不斉選択性を固体状態で切り替える実用的な方法を提供することである。
本発明者らは、かかる状況下、鋭意検討を重ねた結果、下記の式(I):
[式中、
及びR’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1−6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1−6アルキル−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルコキシ−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、又は−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基又は−R−(O−Rn1−(ここで、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、n1は、1乃至3の整数を示す。)を示し、Rは、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)を示し;
は、OR、SR、NHCOR、CONHR、OCOR、OCON(R9’)(R9’’)又はCO(ここで、Rは、置換されていてもよいC8−30アルキル基を示し、R9’は、水素原子又は置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1−30アルキル基を示す。)を示し;
、R’、R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、又は置換されていてもよいC1−6アルコキシ基を示し;且つ
nは、10以上の整数を示す。]
で表されるポリアセチレン化合物(以下、「化合物(I)」又は「光学不活性な化合物(I)」と称する場合がある。)を、光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該低分子化合物を除去することにより、一方向巻きのらせん構造を誘起し、且つ記憶させることができることを見出すと共に、該ポリアセチレン化合物が有機化合物の光学異性体混合物の分離剤として有用であることを見出した。また、このようにして製造した一方向巻きのらせん状ポリアセチレン化合物を、先のらせんキラリティー誘起の際に使用した光学活性な低分子化合物の鏡像異性体又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させることにより、らせんの巻き方向を反転させることができることも初めて見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 一方向巻きのらせん構造を有するポリアセチレン化合物の製造方法であって、式(I):
[式中、
及びR’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1−6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1−6アルキル−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルコキシ−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、又は−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基又は−R−(O−Rn1−(ここで、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、n1は、1乃至3の整数を示す。)を示し、Rは、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)を示し;
は、OR、SR、NHCOR、CONHR、OCOR、OCON(R9’)(R9’’)、又はCO(ここで、Rは、置換されていてもよいC8−30アルキル基を示し、R9’は、水素原子又は置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1−30アルキル基を示す。)を示し;
、R’、R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、又は置換されていてもよいC1−6アルコキシ基を示し;且つ
nは、10以上の整数を示す。]
で表されるポリアセチレン化合物を、光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該低分子化合物を除去する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
[2] 一方向巻きのらせん構造を有するポリアセチレン化合物の製造方法であって、式(I):
[式中、
及びR’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1−6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1−6アルキル−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルコキシ−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、又は−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基又は−R−(O−Rn1−(ここで、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、n1は、1乃至3の整数を示す。)を示し、Rは、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)を示し;
は、OR、SR、NHCOR、CONHR、OCOR、又はCO(ここで、Rは、置換されていてもよいC8−30アルキル基を示す。)を示し;
、R’、R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、又は置換されていてもよいC1−6アルコキシ基を示し;且つ
nは、10以上の整数を示す。]
で表されるポリアセチレン化合物を、光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該低分子化合物を除去する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
[3] 上記[1]又は[2]に記載の製造方法により得られる一方向巻きのらせん構造を有するポリアセチレン化合物を、上記[1]又は[2]で使用する低分子化合物の鏡像異性体又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該鏡像異性体を除去することにより、らせんの巻き方向を反転させる工程を更に含む、上記[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 低分子化合物が、(R)−(−)−1−フェニルエチルアルコール又は(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコールである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 低分子化合物の光学純度が、99%ee以上である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 低分子化合物の光学純度が、40%ee以上である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[7] R及びR’が共に−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、C1−6アルキル基を示す。)であり、RがOR(ここで、Rは、C10−20アルキル基を示す。)であり、R、R’、R及びR’が共に水素原子である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8] R及びR’が共にメトキシメチル基であり、且つRがドデシルオキシ基である、上記[7]に記載の方法。
[9] R及びR’が共に−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、C1−6アルキル基を示す。)であり、RがOCON(R9’)(R9’’)(ここで、R9’は、水素原子を示し、R9’’は、C1−6アルキル基を示す。)であり、R、R’、R及びR’が共に水素原子である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[10] R及びR’が共にメトキシメチル基であり、且つRがブチルカルバモイルオキシ基である、上記[9]に記載の方法。
[11] 低分子化合物又はその鏡像異性体の除去が、メタノール洗浄により行われる、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12] 上記[1]〜[11]のいずれかに記載の方法により製造されることを特徴とする、一方向巻きのらせん構造を有するポリアセチレン化合物。
[13] 上記[12]に記載のポリアセチレン化合物からなる光学異性体分離剤。
[14] 上記[13]に記載の光学異性体分離剤を担体にコーティングしてなる充填剤。
[15] 担体がシリカゲルである、上記[14]に記載の充填剤。
[16] 上記[14]又は[15]に記載の充填剤を充填して調製されるキラルカラム。
[17] 光学異性体の混合物の純度測定用又は分離用として使用する、上記[16]に記載のキラルカラム。
[18] 充填剤を光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該低分子化合物を除去することによる、上記[14]又は[15]に記載の充填剤中のポリアセチレン化合物のらせんの巻き方向を反転させる方法。
[19] キラルカラムに光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液を満たし静置した後、該低分子化合物を除去することによる、上記[16]又は[17]に記載のキラルカラムの充填剤中のポリアセチレン化合物のらせんの巻き方向を反転させる方法。
[20] 一方向巻きのらせん構造を有する式(I):
[式中、
及びR’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1−6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1−6アルキル−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルコキシ−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、又は−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基又は−R−(O−Rn1−(ここで、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、n1は、1乃至3の整数を示す。)を示し、Rは、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)を示し;
は、OR、SR、NHCOR、CONHR、OCOR、OCON(R9’)(R9’’)、又はCO(ここで、Rは、置換されていてもよいC8−30アルキル基を示し、R9’は、水素原子又は置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1−30アルキル基を示す。)を示し;
、R’、R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、又は置換されていてもよいC1−6アルコキシ基を示し;且つ
nは、10以上の整数を示す。]
で表されるポリアセチレン化合物を、光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該低分子化合物を除去することによる、該ポリアセチレン化合物のらせんの巻き方向を反転させる方法。
[21] 一方向巻きのらせん構造を有する式(I):
[式中、
及びR’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1−6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1−6アルキル−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルコキシ−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、又は−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基又は−R−(O−Rn1−(ここで、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、n1は、1乃至3の整数を示す。)を示し、Rは、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)を示し;
は、OR、SR、NHCOR、CONHR、OCOR、又はCO(ここで、Rは、置換されていてもよいC8−30アルキル基を示す。)を示し;
、R’、R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、又は置換されていてもよいC1−6アルコキシ基を示し;且つ
nは、10以上の整数を示す。]
で表されるポリアセチレン化合物を、光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該低分子化合物を除去することによる、該ポリアセチレン化合物のらせんの巻き方向を反転させる方法。
[22] 低分子化合物の光学純度が、99%ee以上である、上記[20]又は[21]に記載の方法。
[23] 低分子化合物の光学純度が、40%ee以上である、上記[20]又は[21]に記載の方法。
[24] 式(Ia):
[式中、
1a及びR1a’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1−6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1−6アルキル−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルコキシ−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、又は−R5a−O−R6a(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、R5aは、C1−4アルキレン基又は−R7a−(O−R8an0−(ここで、R7aは、C1−4アルキレン基を示し、R8aは、C1−4アルキレン基を示し、n0は、1乃至3の整数を示す。)を示し、R6aは、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)を示し;
2aは、OCON(R9a’)(R9a’’)(ここで、R9a’は、水素原子又は置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、R9a’’は、置換されていてもよいC1−30アルキル基を示す。)を示し;
3a、R3a’、R4a及びR4a’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、又は置換されていてもよいC1−6アルコキシ基を示し;且つ
n’は、10以上の整数を示す。]
で表されるポリアセチレン化合物。
[25] R1a及びR1a’が共にメトキシメチル基であり、且つR2aがブチルカルバモイルオキシ基である、上記[24]に記載の化合物。
本発明によれば、一方向巻きのらせん構造を有する化合物(I)(以下、「本発明の化合物(I)」と称する場合がある。)を簡便に合成することができる。また、本発明の化合物(I)は、優れた光学分割能を有し、且つ光学活性な低分子化合物の存在下、固体状態でらせんの向きを自由自在に反転させることができる。さらに、本発明の化合物(I)を担体に担持してなるキラルカラム用充填剤は、カラム充填後であっても充填剤中の化合物(I)のらせんの巻き方向を自在に反転させることができるため、光学分割能を完全に保ちながら、分離対象物の溶出順序のみを逆転させることでき、これにより高感度な微量分析や高純度の光学異性体の分取を簡便且つ安価に行うことができる。また、らせんの巻き方向を制御する(すなわち、らせんのキラリティーを誘起する)際に使用する光学活性な低分子化合物としては、必ずしも光学的に純粋(99%ee以上)な化合物を用いる必要はなく、低い光学純度(40%ee以上)の化合物を用いた場合にも、正の非線形現象(いわゆる、「不斉増幅現象」)が確認され、光学的に純粋な化合物を用いた場合と同程度の光学純度でらせんの巻き方向を制御することができるので、高い光学分割能を有するキラル固定相を簡便且つ安価に製造することができる。
実施例1で得られた化合物(I−1)のH−NMRスペクトルの部分拡大図である。 実施例2で得られた化合物(I−2)のH−NMRスペクトルの部分拡大図である。 (a)は、実施例3(1)において、(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコール(0.8M)存在下で6時間経過後の化合物(I−1)(1.0mM)のCD及びUVスペクトルであり、(b)は、実施例3(2)において、(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコールを完全に除去した後の化合物(I−1)(1.0mM)のCD及びUVスペクトルである。 実施例4(1)で得られた一方向巻きのらせん構造を記憶として保持した化合物(I−1)(1.0mM)の−10℃下、ヘキサン中でのCD及びUVスペクトルである。 実施例4(2)で得られた化合物(I−2)の薄膜状態におけるCD及びUVスペクトルである。 実施例5(ii−1)で得られたカラムAによるtrans−スチルベンオキシドのラセミ体の約0℃下でのキラル分離クロマトグラム(流速:0.025mL/分、溶出溶媒:メタノール−水(75:25,v/v))である。 実施例5(ii−2)で得られたカラムA’による2,2’−ジヒドロキシ−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニルのラセミ体のキラル分離クロマトグラム(流速:0.2mL/分、溶離液:ヘキサン/2−プロパノール(97:3)である。 実施例5で得られたカラムBによるtrans−スチルベンオキシドのラセミ体の約0℃下でのキラル分離クロマトグラム(流速:0.025mL/分、溶出溶媒:メタノール−水(75:25,v/v))である。 (c)は、0〜100%eeの(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコール存在下([(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコール]/[化合物(I−1)]=400)、ヘキサン溶液中、6時間経過後の化合物(I−1)(1.0mM)のCDスペクトルのピーク強度(Δε)(縦軸)と(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコールの光学純度(横軸)との正の非線形効果を示す図であり、(d)は、0〜100%eeの(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコール中、化合物(I−1)を固体状態で50℃下、10分間静置した後に(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコールを完全に除去した後のヘキサン溶液中における化合物(I−1)(1.0mM)のCDスペクトルのピーク強度(Δε)(縦軸)と(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコールの光学純度(横軸)との正の非線形効果を示す図である。
以下に本発明の詳細を説明する。
(定義)
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
本明細書中、「アルキル(基)」とは、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を意味し、「C1−4アルキル(基)」とは、炭素原子数1〜4のアルキル基であり、「C1−6アルキル(基)」とは、炭素原子数1〜6のアルキル基であり、これらの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチルが挙げられる。また、「C1−30アルキル(基)」とは、炭素原子数1〜30のアルキル基であり、「C8−30アルキル(基)」とは、炭素原子数8〜30のアルキル基であり、「C10−20アルキル(基)」とは、炭素原子数10〜20のアルキル基であり、炭素原子数8以上のアルキル基の例としては、例えば、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、エイコシルが挙げられる。
本明細書中、「C3−8シクロアルキル(基)」とは、炭素原子数3〜8の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。
本明細書中、「C1−6アルコキシ(基)」とは、直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基が酸素原子と結合した基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、1−エチルプロポキシ、ヘキソキシ、イソヘキソキシ、1,1−ジメチルブトキシ、2,2−ジメチルブトキシ、3,3−ジメチルブトキシ、2−エチルブトキシ等が挙げられる。
本明細書中、「C1−6アルキルチオ(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基が硫黄原子と結合した基を意味し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、ヘキシルチオ等が挙げられる。
本明細書中、「C1−6アルキル−カルボニル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基がカルボニル基に結合した基を意味し、例えば、メチル−カルボニル、エチル−カルボニル、プロピル−カルボニル、イソプロピル−カルボニル、ブチル−カルボニル、イソブチル−カルボニル、sec−ブチル−カルボニル、tert−ブチル−カルボニル、ペンチル−カルボニル、イソペンチル−カルボニル、ネオペンチル−カルボニル、1−エチルプロピル−カルボニル、ヘキシル−カルボニル、イソヘキシル−カルボニル、1,1−ジメチルブチル−カルボニル、2,2−ジメチルブチル−カルボニル、3,3−ジメチルブチル−カルボニル、2−エチルブチル−カルボニル等が挙げられる。
本明細書中、「C1−6アルコキシ−カルボニル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基がカルボニル基に結合した基を意味し、例えば、メトキシ−カルボニル、エトキシ−カルボニル、プロポキシ−カルボニル、イソプロポキシ−カルボニル、ブトキシ−カルボニル、イソブトキシ−カルボニル、sec−ブトキシ−カルボニル、tert−ブトキシ−カルボニル、ペントキシ−カルボニル、イソペントキシ−カルボニル、ネオペントキシ−カルボニル、1−エチルプロポキシ−カルボニル、ヘキソキシ−カルボニル、イソヘキソキシ−カルボニル、1,1−ジメチルブトキシ−カルボニル、2,2−ジメチルブトキシ−カルボニル、3,3−ジメチルブトキシ−カルボニル、2−エチルブトキシ−カルボニル等が挙げられる。
本明細書中、「C1−6アルキルスルホニル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基がスルホニル基に結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec−ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、1−エチルプロピルスルホニル、ヘキシルスルホニル、イソヘキシルスルホニル、1,1−ジメチルブチルスルホニル、2,2−ジメチルブチルスルホニル、3,3−ジメチルブチルスルホニル、2−エチルブチルスルホニル等が挙げられる。
本明細書中、「C1−4アルキレン(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜4のアルキレン基を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、メチルエチレン等を挙げることができ、直鎖のものが好ましい例として挙げられる。
本明細書中、「アリール基」とは、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭化水素基を意味し、具体的には、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、2−アンスリル等のC6−14アリール基を示す。中でもC6−10アリール基が好ましい。
本明細書中、「C6−10アリール基」とは、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルを示し、フェニルが特に好ましい。
本明細書中、「C7−14アラルキル」とは、「C1−4アルキル基」に「C6−10アリール基」が置換した基を意味し、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、(ナフチル−1−イル)メチル、(ナフチル−2−イル)メチル、1−(ナフチル−1−イル)エチル、1−(ナフチル−2−イル)エチル、2−(ナフチル−1−イル)エチル、2−(ナフチル−2−イル)エチル、ビフェニリルメチル等が挙げられる。
本明細書中、「C6−10アリール−カルボニル基」とは、「C6−10アリール基」がカルボニル基に結合した基を意味し、例えば、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル等が挙げられる。中でも、ベンゾイル基が好ましい。
本明細書中、「C6−10アリールオキシ基」とは、「C6−10アリール基」が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。中でも、フェノキシ基が好ましい。
本明細書中、「C6−10アリールチオ基」とは、「C6−10アリール基」が硫黄原子に結合した基を意味し、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ等が挙げられる。中でも、フェニルチオ基が好ましい。
本明細書中、「C7−14アラルキルオキシ基」とは、「C7−14アラルキル基」が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、ベンジルオキシ、1−ナフチルメチルオキシ、2−ナフチルメチルオキシ等が挙げられる。中でも、ベンジルオキシ基が好ましい。
本明細書中、「C6−10アリールオキシ−カルボニル基」とは、「C6−10アリールオキシ基」がカルボニル基に結合した基を意味し、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル、2−ナフチルオキシカルボニル等が挙げられる。中でも、フェノキシカルボニル基が好ましい。
本明細書中、「C7−14アラルキルオキシ−カルボニル基」とは、「C7−14アラルキルオキシ基」がカルボニル基に結合した基を意味し、例えば、ベンジルオキシカルボニル、1−ナフチルメチルオキシカルボニル、2−ナフチルメチルオキシカルボニル等が挙げられる。中でも、ベンジルオキシカルボニル基が好ましい。
本明細書中、「C6−10アリールスルホニル基」とは、「C6−10アリール基」がスルホニル基に結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル、2−ナフチルスルホニル等が挙げられる。中でも、フェニルスルホニル基が好ましい。
本明細書中、「トリC1−6アルキルシリル基」とは、同一又は異なる3個のC1−6アルキル基により置換されたシリル基を意味し、当該アルキル基としては、C1−4アルキル基が好ましい。トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、又はtert−ブチルジメチルシリル基が好ましい。
本明細書中、「保護されたアミノ基」とは、「保護基」で保護されたアミノ基を意味する。当該「保護基」としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons刊(1980)に記載のアミノ基の保護基を使用し得、例えば、C1−6アルキル基、C7−14アラルキル基、C6−10アリール基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基、C7−14アラルキル−カルボニル基、トリC1−6アルキルシリル基等の保護基が挙げられる。上記の保護基は、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基又はニトロ基により更に置換されていてもよい。当該アミノ基の保護基の具体例としては、メチル、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル等が挙げられる。
本明細書中、「置換されていてもよい」とは、1個以上の置換基を有していてもよいことを意味し、該「置換基」としては、(1)ハロゲン原子、(2)ニトロ、(3)シアノ、(4)C1−6アルキル、(5)C3−8シクロアルキル、(6)C1−6アルコキシ、(7)C6−10アリール、(8)C7−14アラルキル、(9)C1−6アルコキシ−カルボニル、(10)C7−14アラルキルオキシ−カルボニル、(11)C1−6アルキル−カルボニル、(12)C6−10アリール−カルボニル、(13)C6−10アリールオキシ−カルボニル、(14)C1−6アルキルスルホニル、(15)C6−10アリールスルホニル、(16)ホルミル、(17)アジド、(18)C1−6アルキルチオ、(19)C6−10アリールチオ、(20)C1−6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル、(21)トリC1−6アルキルシリル基、(22)保護されたアミノ基等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシ−カルボニル、アセチル、ホルミル、カルバモイル、アジド、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、ジメチルアミノ、アセチルアミノ、tert−ブトキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ等が好ましく、ハロゲン原子が特に好ましい。また、複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
本明細書中、「一方向巻きのらせん構造」とは、右巻き又は左巻きのいずれかに片寄ったらせん構造であればよく、好ましくは完全に右巻き又は左巻きのらせん構造である。
本明細書中、「光学活性な低分子化合物」とは、光の平面偏光を回転させる性質、すなわち、旋光能を有する低分子化合物であり、不斉炭素原子を少なくとも1つ有する分子量が500以下の有機化合物を意味する。好ましくは、光学的に純粋な不斉炭素原子を1つ有する化合物であり、例えば、(R)−(−)−1−フェニルエチルアルコール、(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコール、(R)−(−)−2−ブタノール、(S)−(+)−2−ブタノール等が挙げられる。中でも、(R)−(−)−1−フェニルエチルアルコール又は(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコールが特に好ましい。該光学活性な低分子化合物としては、上記の通り、光学的に純粋な化合物を使用するのが好ましいが、後述するように、低い光学純度の化合物を用いた場合にも、正の非線形現象(いわゆる、「不斉増幅現象」)が確認され、光学的に純粋な化合物を用いた場合と同程度の光学純度でらせんのキラリティーを誘起することができる。従って、「光学活性な低分子化合物」には、光学的に純粋な化合物だけでなく、光学純度の低い化合物も包含される。該低分子化合物は、液体でも固体でもよく、好ましくは、液体である。
本明細書中、「ee」とは、鏡像体過剰率(enantiomeric excess)の略称であり、キラルな化合物の光学純度を表す。「ee」は、多い方の鏡像体の物質量から少ない方の鏡像体の物質量を引き、全体の物質量で割った値に100を掛けて算出され、「%ee」で表される。
本明細書中、「光学的に純粋な」とは、99%ee以上の光学純度を示す状態を表す。
本明細書中、「鏡像異性体」とは、光学活性な低分子化合物中の全ての不斉炭素原子の立体配置が異なっている光学的対掌体を意味し、光学活性な低分子化合物と互いに右手と左手との関係にある1対の光学異性体を構成している。具体的には、例えば、光学活性な低分子化合物が(R)−(−)−1−フェニルエチルアルコールである場合の鏡像異性体は(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコールである。
本明細書中、「らせんの巻き方向を反転させる」とは、一方向巻きのらせんを、それとは逆方向巻きのらせんに反転させることを意味し、具体的には、例えば、右巻きのらせん構造を左巻きのらせん構造へと反転させることである。なお、らせんの巻き方向を完全に反転させることが望ましいが、「らせんの巻き方向を反転させる」とは、必ずしもらせんの巻き方向を完全に反転させる態様のみを意味するのではなく、逆方向巻きに片寄ったらせん構造(逆の符号の比旋光度を有する化合物へと変換されていればよい。)へと変換させる態様も含まれる。
本明細書中、「低分子化合物(の鏡像異性体)又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させ」とは、低分子化合物(の鏡像異性体)が液体の場合には、それ自体に含浸させることを意味し、低分子化合物(の鏡像異性体)が液体又は固体の場合には、該化合物を有機溶媒に溶解させた溶液に含浸させることを意味する。
本明細書中、「光学異性体分離剤」とは、1つ以上の不斉炭素原子を有する低分子化合物の光学異性体の混合物を分離させる能力を有する物質であればよく、特に限定されない。
本発明の光学異性体分離剤を用いて、光学活性化合物を光学分割する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、超臨界クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動等のクロマトグラフィー法及び膜分離による光学異性体分離等が挙げられる。
本発明の光学異性体分離剤を、例えば、高速液体クロマトグラフィー用のカラム充填剤の固定相として使用する場合、溶離液としては、本発明の分離剤を溶解又はこれと反応する液体を除いて特に限定するものではなく、ヘキサン−イソプロパノール等を用いる順相系、アルコール−水等を用いる逆相系のいずれにおいても応用可能である。
本発明において、式(I)で示される一方向巻きのらせん構造を有するポリアセチレン化合物自体を光学異性体分離剤として使用することもできるが、分離剤の耐圧能力の向上、溶媒置換による膨潤、収縮の防止、理論段数の向上等の目的のため、何らかの担体に担持させることが好ましい。
本発明に用いられる担体としては、多孔質有機担体又は多孔質無機担体が挙げられ、好ましくは多孔質無機担体である。多孔質有機担体として適当なものは、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート等からなる高分子物質であり、多孔質無機担体として適当なものは、シリカゲル、アルミナ、マグネシア、ガラス、カオリン、酸化チタン、ケイ酸塩、ヒドロキシアパタイトなどである。特に好ましい担体はシリカゲルである。
本発明の化合物(I)を担体に担持させる方法としては、物理的方法でも化学的方法でもよく、特に限定されない。物理的方法としては、本発明の化合物(I)と多孔質無機担体又は多孔質有機担体を接触させる方法が例示される。また、化学的方法としては、本発明の化合物(I)の製造時にそのポリマーの末端に官能基を付与し、多孔質無機担体又は多孔質有機担体の表面上の官能基と化学的に結合させる方法が挙げられる。
本発明の化合物(I)の担持量としては、用いる担体の種類、物性により異なり、特に限定されるものではないが、担体の重量に対して、通常1〜1000重量%の範囲である。また、化合物(I)を担体に担持させる場合、一方向巻きのらせん構造を有する化合物(I)を使用することが好ましいが、担持後でも固体状態で一方向巻きのらせんのキラリティーを誘起又は反転させることが可能であることから、かかる操作を行うのであれば、光学不活性な化合物(I)自体を予め担体に担持させておいてもよい。
本発明の充填剤は、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、超臨界クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動などのクロマトグラフィー法及び膜分離による光学異性体分離に用いるのが一般的であるが、特に液体クロマトグラフィー法に応用するのが好ましい。
更に本発明の充填剤は、主として光学純度測定を目的に使用される高速液体クロマトグラフィーの分析用キラルカラム、数mg〜数kgの光学活性体取得を目的とする単カラム方式の液体クロマトグラフィーの分取用キラルカラム、擬似移動床方式に代表される連続式液体クロマトグラフィーの分取用キラルカラム等に好ましく使用される。
本発明の光学異性体分離剤は、上記した液体クロマトグラフィーの充填剤用途のみに限らず、核磁気共鳴スペクトル(NMR)のシフト試薬等としても利用可能である。
本発明の光学異性体分離剤、又は該光学異性体分離剤を担持させてなる充填剤をキラル固定相として用いるキラルカラムにより分離することができる光学異性体の混合物としては、特に限定されないが、分子量が500以下の低分子化合物の光学異性体分離に好適に使用することができる。該低分子化合物としては、例えば、trans−スチルベンオキシド、トレガー塩基(Troeger’s base)、モノ置換[2.2]パラシクロファン等が挙げられる。
(化合物(I))
化合物(I)は、下記式(I):
[式中の各記号は、前記と同義である。]
で表されるポリアセチレン化合物である。
以下、化合物(I)の各基について説明する。
及びR’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1−6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1−6アルキル−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルコキシ−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、及び−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基又は−R−(O−Rn1−(ここで、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、n1は、1乃至3の整数を示す。)を示し、Rは、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)からなる群より選択される基である。
及びR’は、好ましくは、ともに−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)であり、特に好ましくは、ともにメトキシメチル基である。
は、OR、SR、NHCOR、CONHR、OCOR、OCON(R9’)(R9’’)及びCO(ここで、Rは、置換されていてもよいC8−30アルキル基を示し、R9’は、水素原子又は置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1−30アルキル基を示す。)からなる群より選択される基である。
は、好ましくは、OR、NHCOR、CONHR及びOCON(R9’)(R9’’)(ここで、Rは、置換されていてもよいC10−20アルキル基を示し、R9’は、水素原子を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1−30アルキル基を示す。)からなる群より選択される基であり、より好ましくは、OR(ここで、Rは、置換されていてもよいC10−20アルキル基を示す。)又はOCON(R9’)(R9’’)(ここで、R9’は、水素原子を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)であり、特に好ましくは、ドデシルオキシ基又はn−ブチルカルバモイルオキシ基である。
、R’、R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、及び置換されていてもよいC1−6アルコキシ基からなる群より選択される基である。
、R’、R及びR’は、好ましくは、全て水素原子である。
nは、10以上の整数であり、好ましくは、100以上10000以下の整数である。
化合物(I)としては、以下の化合物が好適である。
[化合物(I−0)]
及びR’が、ともに−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)であり;
が、OR、NHCOR、及びCONHR(ここで、Rは、置換されていてもよいC10−20アルキル基を示す。)からなる群より選択される基であり;
、R’、R及びR’が、全て水素原子であり;並びに
nが、10以上の整数である、化合物(I)。
[化合物(I−0’)]
及びR’が、ともに−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)であり;
が、OCON(R9’)(R9’’)(ここで、R9’は、水素原子を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)であり;
、R’、R及びR’が、全て水素原子であり;並びに
nが、10以上の整数である、化合物(I)。
特に好適な化合物(I)は、以下の化合物である。
[化合物(I−1)]
及びR’が、ともにメトキシメチル基であり;
が、ドデシルオキシ基であり;
、R’、R及びR’が、全て水素原子であり;並びに
nが、10以上10000以下の整数である、化合物(I)。
[化合物(I−2)]
及びR’が、ともにメトキシメチル基であり;
が、n−ブチルカルバモイルオキシ基であり;
、R’、R及びR’が、全て水素原子であり;並びに
nが、10以上10000以下の整数である、化合物(I)。
本発明に用いられる化合物(I)の数平均重合度(1分子中に含まれるビフェニルエチレン単位の平均数)は、10以上、好ましくは100以上であり、特に上限はないが、10000以下であることが取り扱いの容易さの点で望ましい。
本発明に用いられる化合物(I)の立体規則性は、シス−トランソイドである。
化合物(I)には、上記式(I)で表される化合物の他に、それらの塩(酸や塩基との付加塩)、それらの水和物及び溶媒和物も包含される。
(化合物(I)の合成)
化合物(I)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の製造法1又は製造法2に示されるような反応を経て合成することができる。
原料化合物は、特に述べない限り、市販品として容易に入手できるか、あるいは、自体公知の方法またはこれらに準ずる方法に従って製造することができる。
なお、以下の反応式中の各工程で得られた化合物は、反応液のままか粗生成物として次の反応に用いることもできる。あるいは、該化合物は常法に従って反応混合物から単離することもでき、再結晶、蒸留、クロマトグラフィーなどの通常の分離手段により容易に精製することができる。
化合物(I)は、例えば、以下の工程により製造することができる。
(製造法1)
[式中、Xは、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等の脱離基を示し、Yは、ジヒドロキシボラン、トリアルキルスズ、ハロゲン化亜鉛、マグネシウム等の活性基を示し、他の記号は、前記と同義である。]
工程1
当該工程は、鈴木−宮浦カップリング、根岸カップリング、熊田−玉尾カップリング、Stilleカップリング等の反応条件に従い、式1で表される化合物(以下、化合物1と略称する。)と式2で表される化合物(以下、化合物2と略称する。)とを縮合させることにより、式3で表される化合物(以下、化合物3と略称する。)を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、金属触媒を用いて行われる。
金属触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd(dba))等のパラジウム触媒;ニッケル(0)ジ(アセチルアセトナート)(Ni(acac))等のニッケル触媒等の遷移金属触媒が挙げられ、中でもテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が好ましい。
該金属触媒の使用量は、化合物1(1当量)に対して、通常0.001〜1当量である。
当該工程においては、必要に応じて塩基を添加してもよい。塩基としては、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化タリウム等の無機塩基が挙げられ、好ましくは、炭酸カリウムである。
該塩基の使用量は、化合物1(1当量)に対して、通常0.1〜10当量である。
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコール−ジメチルエーテル(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム(diglyme))等のエーテル系溶媒、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、テトラヒドロフランと水、DMEと水のような含水系若しくは二層系の溶媒等が挙げられ、中でもジエチルエーテル、DME等が特に好ましい。
反応温度は、通常−30〜120℃、好ましくは0〜100℃である。
反応時間は、通常0.1〜30時間である。
工程2
当該工程は、化合物3のベンジルオキシ基を加水素分解することによりヒドロキシ基へと変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、水素雰囲気下、金属触媒を用いて行われる。
金属触媒としては、例えば、パラジウム炭素、パラジウムブラック、水酸化パラジウム等のパラジウム触媒、酸化白金等の白金触媒が挙げられ、中でもパラジウム炭素が好ましい。
該金属触媒の使用量は、化合物3(1当量)に対して、通常0.01〜10当量である。
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、それらの混合溶媒等が挙げられ、中でも酢酸エチル、エタノールが好ましい。
工程2における水素雰囲気下とは、系内の水素圧が常圧、中圧、又は高圧のいずれを採用してもよいが、常圧又は中圧条件が好ましく、常圧がより好ましい。
反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは15〜40℃である。
反応時間は、通常0.5〜100時間である。
工程3
当該工程は、化合物3の脱ベンジル体のヒドロキシ基をトリフルオロメタンスルホニル化することにより、化合物4へと変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基存在下、トリフルオロメタンスルホン化剤を用いて行われる。
トリフルオロメタンスルホン化剤としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸ハロゲン化物が挙げられ、中でも、トリフルオロメタンスルホン酸無水物が好ましい。
該トリフルオロメタンスルホン化剤の使用量は、化合物3(1当量)に対して、通常1〜5当量である。
塩基としては、例えば、2,6−ルチジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基が挙げられ、中でも2,6−ルチジンが好ましい。
該塩基の使用量は、化合物3(1当量)に対して、通常1〜10当量である。
溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコール−ジメチルエーテル(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム(diglyme))等のエーテル系溶媒、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒類が挙げられ、中でもジクロロメタン、クロロホルム等が特に好ましい。
反応温度は、通常−78℃〜60℃、好ましくは−78℃〜40℃である。
反応時間は、通常0.5〜24時間である。
工程4
当該工程は、化合物4のトリフルオロメタンスルホニルオキシ基(以下、トリフラートと称する場合もある。)を薗頭カップリング条件下でトリメチルシリルエチニル基に置換して、化合物5へと変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基存在下、金属触媒を用いて行われる。
金属触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd(dba))、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(Pd(PPhCl)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)((CHCN)PdCl)等のパラジウム化合物が挙げられ、中でも、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)が好ましい。
該金属触媒の使用量は、化合物4(1当量)に対して、通常0.001〜1当量である。
塩基としては、例えば、トリエチルアミン等の有機塩基やアンモニア等の無機塩基が挙げられ、中でもトリエチルアミンが好ましい。
該塩基は、溶媒として使用することもでき、該塩基の使用量は、化合物4(1当量)に対して、通常10〜1000当量である。
当該工程においては、必要に応じてヨウ化銅や臭化銅等の銅化合物、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル等のホスフィン化合物等の添加物を添加してもよい。
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランや1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリルやジメチルホルムアミド等の極性溶媒、又はベンゼン等の炭化水素溶媒が挙げられ、中でも、ジメチルホルムアミドが好ましい。
反応温度は、通常−10℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃である。
反応時間は、通常0.5〜24時間である。
工程5
当該工程は、化合物5のトリメチルシリル基を除去することにより、化合物6へと変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基を用いて行われる。
塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基が挙げられ、中でも、炭酸カリウムが好ましい。
該塩基の使用量は、化合物5(1当量)に対して、通常1〜10当量である。
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコール−ジメチルエーテル(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム(diglyme))等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフランとメタノール、DMEとメタノールのような混合溶媒等が挙げられ、中でもテトラヒドロフランとメタノールの混合溶媒が好ましい。
反応温度は、通常−10℃〜100℃、好ましくは0℃〜40℃である。
反応時間は、通常0.5〜24時間である。
工程6
当該工程は、化合物6を重合させることにより、化合物(I)へと変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、窒素雰囲気下、塩基存在下で金属触媒を用いて行われる。
金属触媒としては、例えば、2,5−ノルボルナジエンロジウム(I)クロリド二量体(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン−ロジウムクロリド(I)ダイマー:[Rh(nbd)Cl])、シクロオクタジエンロジウム(I)クロリド二量体等のロジウム/ジエン触媒が挙げられ、中でも[Rh(nbd)Cl]が好ましい。
該金属触媒の使用量は、化合物6(1当量)に対して、通常0.00001〜0.1当量、好ましくは、0.001〜0.05当量である。
塩基としては、例えば、トリエチルアミン等の有機塩基が挙げられ、中でもトリエチルアミンが好ましい。
該塩基は、共溶媒として使用することもでき、該塩基の使用量は、化合物6(1当量)に対して、通常1〜1000当量である。
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコール−ジメチルエーテル(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム(diglyme))等のエーテル系溶媒が挙げられ、中でもテトラヒドロフランが好ましい。
当該工程で使用される溶媒の量は、例えば、化合物6が0.001〜1M程度の濃度となる量が好ましい。特に0.1〜0.5M程度の濃度となる量が好ましい。
反応温度は、通常−10℃〜100℃、好ましくは0℃〜40℃である。
反応時間は、通常0.5〜24時間である。
化合物(I)(例えば、Rが、OR、OCOR、OCON(R9’)(R9’’)(ここで、R、R9’及びR9’’は、前記と同義である。)等である化合物(I))は、以下の工程(製造法2)によっても製造することができる。なお、本明細書中、Rが、OCON(R9’)(R9’’)(ここで、R9’及びR9’’は、前記と同義である。)である化合物(I)は、化合物(Ia)とも称することもある新規化合物である。
(製造法2)
[式中、X及びXは、ハロゲン原子を示し、他の記号は、前記と同義である。]
工程1’
当該工程は、化合物7のヒドロキシ基をトリフルオロメタンスルホニル化することにより、化合物8へと変換する工程である。
本工程は、前記製造法1の工程3と同様の反応条件下で行うことができる。
工程2’
当該工程は、化合物8のトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を薗頭カップリング条件下でトリイソプロピルシリル(TIPS)エチニル基に置換して、化合物9へと変換する工程である。
本工程は、前記製造法1の工程4と同様の反応条件下で行うことができる。
工程3’
当該工程は、化合物9のXをボロン酸ピナコールエステル基に置換して、化合物10へと変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、窒素雰囲気下、ビス(ピナコラト)ジボロン及び塩基存在下で金属触媒を用いて行われる。
金属触媒としては、例えば、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)とビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd(dba))の錯体等のパラジウム触媒等が好ましい。
該金属触媒の使用量は、化合物9(1当量)に対して、通常0.001〜1当量である。
塩基としては、例えば、酢酸カリウムが好ましい。
該塩基の使用量は、化合物9(1当量)に対して、通常1〜10当量である。
溶媒としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコール−ジメチルエーテル(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム(diglyme))等のエーテル系溶媒等が挙げられ、中でもジオキサン等が特に好ましい。
反応温度は、通常−30〜120℃、好ましくは0〜100℃である。
反応時間は、通常0.1〜30時間である。
工程4’
当該工程は、鈴木−宮浦カップリングの反応条件に従い、化合物10と化合物11とを縮合させることにより、化合物12を製造する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、金属触媒を用いて行われる。
金属触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd(dba))等のパラジウム触媒等のパラジウム触媒が挙げられ、中でもテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が好ましい。
該金属触媒の使用量は、化合物10(1当量)に対して、通常0.001〜1当量である。
当該工程においては、必要に応じて塩基を添加してもよい。塩基としては、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化タリウム等の無機塩基が挙げられ、好ましくは、炭酸カリウムである。
該塩基の使用量は、化合物10(1当量)に対して、通常0.1〜10当量である。
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコール−ジメチルエーテル(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム(diglyme))等のエーテル系溶媒、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、テトラヒドロフランと水、DMEと水のような含水系若しくは二層系の溶媒等が挙げられ、中でもDMEと水の混合溶媒が特に好ましい。
反応温度は、通常−30〜120℃、好ましくは0〜100℃である。
反応時間は、通常0.1〜30時間である。
工程5’
当該工程は、化合物12のトリイソプロピルシリル基を除去する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、フッ化物塩を用いて行われる。
フッ化物塩としては、例えば、フッ化セシウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)等が挙げられ、中でも、テトラブチルアンモニウムフルオリドが好ましい。
該フッ化物塩の使用量は、化合物12(1当量)に対して、通常1〜10当量である。
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコール−ジメチルエーテル(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム(diglyme))等のエーテル系溶媒が挙げられ、中でもテトラヒドロフランが好ましい。
反応温度は、通常−10℃〜100℃、好ましくは0℃〜40℃である。
反応時間は、通常0.5〜24時間である。
工程6’
当該工程は、化合物12の脱シリル体のヒドロキシ基を、塩基存在下でアルキル化、アシル化又はカルバモイル化することにより化合物6へと変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基存在下、アルキル化剤、アシル化剤又はカルバモイル化剤を用いて行われる。
工程7’
当該工程は、化合物6を重合させることにより、化合物(I)へと変換する工程である。
本工程は、前記製造法1の工程6と同様の反応条件下で行うことができる。
上記方法により得られる化合物(I)の立体規則性は、100%シス−トランソイドである。
同位元素(例、H、H、14C)などで標識された化合物も、化合物(I)に包含される。
(化合物(I)への固体状態での一方向巻きのらせんキラリティーの誘起方法とらせんキラリティー記憶の確認方法)
光学不活性な化合物(I)への固体状態での一方向巻きのらせんキラリティーの誘起は、例えば、以下の方法により行うことができる。
化合物(I)を、光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該低分子化合物を除去することにより行うことができる。
当該低分子化合物としては、前記例示した化合物が挙げられ、中でも、(R)−(−)−1−フェニルエチルアルコール又は(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコールが特に好適に使用される。当該低分子化合物は、液体でも固体でもよく、好ましくは、液体である。
当該光学活性な低分子化合物としては、光学的に純粋な化合物(99%ee以上)を使用するのが好ましいが、後述するように、低い光学純度(40%ee以上)の化合物を用いても、正の非線形現象(いわゆる、「不斉増幅現象」)が確認され、光学的に純粋な化合物を用いた場合と同程度の光学純度でらせんのキラリティーを固体状態でも誘起することができるので、光学純度の低い化合物を使用することもできる。
本発明の一方向巻きのらせんキラリティーの誘起方法としては、具体的には、当該低分子化合物を、化合物(I)を溶解しない有機溶媒に溶解させた溶液に、化合物(I)を含浸させることにより、化合物(I)に一方向巻きのらせんキラリティーを誘起する方法であるが、当該低分子化合物が液体の場合には、無溶媒で化合物(I)を直接含浸させることにより、一方向巻きのらせんキラリティーを誘起することもできる。
含浸させる時間は、使用する低分子化合物にもよるが、通常、数分間から1時間である。
化合物(I)を溶解しない有機溶媒としては、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトニトリル等が挙げられるが、中でも、アセトンが特に好ましい。
一方向巻きのらせんキラリティーが誘起された化合物(I)を含む混合液から光学活性な低分子化合物を除去することにより、化合物(I)に一方向巻きのらせん構造が記憶された本発明の化合物(I)を得ることができる。
前記混合液からの光学活性な低分子化合物の除去は、例えば、混合液を濾過後、化合物(I)を溶解せず、且つ光学活性な低分子化合物を溶解する有機溶媒により1回以上(数回、好ましくは、2〜5回)洗浄することにより行うことができる。また、洗浄後の洗液から溶媒を留去することにより、光学活性な低分子化合物を100%回収することが可能であり、回収された光学活性な低分子化合物は再利用することができる。
前記洗浄のための有機溶媒としては、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノールであり、好ましくは、メタノールである。
化合物(I)に一方向巻きのらせんキラリティーが誘起されたか否か、及び当該キラリティーが記憶されたか否かは、CD及びUVスペクトルを測定することにより確認することができる。
化合物(I)にどの程度の光学純度で一方向巻きのらせんキラリティーが誘起されたかどうか(らせんキラリティーの片寄りの程度)は、CDスペクトルのピーク強度(Δε)を測定することにより確認することができる。すなわち、ピーク強度が大きいほど、らせんの巻き方向が一方向に片寄っていることを示す。
(一方向巻きのらせん構造を有する化合物(I)(本発明の化合物(I))のらせんの巻き方向を固体状態で反転させる方法)
本発明の化合物(I)のらせんの巻き方向を固体状態で反転させるには、前記した一方向巻きのらせんキラリティーの誘起方法と同様の方法により行うことができる。
具体的には、前記一方向巻きのらせんキラリティーの誘起方法における光学不活性な化合物(I)に換えて、本発明の化合物(I)を用い、また、光学活性な低分子化合物に換えて、該光学活性な低分子化合物の鏡像異性体又は該光学活性な低分子化合物とは異なる種類の光学活性な低分子化合物(好ましくは、該光学活性な低分子化合物の鏡像異性体)を用いて行うことにより、逆の符号の比旋光度を示す本発明の化合物(I)へと変換することができる。
固体状態での反転の際に使用する該光学活性な低分子化合物の鏡像異性体、又は該光学活性な低分子化合物とは異なる種類の光学活性な低分子化合物としては、光学的に純粋な化合物(99%ee以上)を使用するのが好ましいが、上記と同様に、低い光学純度の化合物を用いても、正の非線形現象(いわゆる、「不斉増幅現象」)が確認され、光学的に純粋な化合物を用いた場合と同程度の光学純度でらせんの巻き方向を反転させることができる。従って、該光学活性な低分子化合物の鏡像異性体、又は該光学活性な低分子化合物として、光学純度の低い化合物を使用することもできる。
本発明の化合物(I)のらせんの巻き方向が反転されたか否かは、CDスペクトルを測定することにより確認することができる。
化合物(I)のらせんの巻き方向の反転の程度(光学純度)は、反転処理後の化合物(I)のCDスペクトルのピーク強度(Δε)を測定することにより確認することができる。すなわち、ピーク強度が大きいほど、らせんの巻き方向の反転の程度(逆方向巻きのらせんへのシフト率)が高いことを示す。
(本発明の化合物(I)を担持してなるキラルカラム用充填剤、及び該充填剤が充填された高速液体クロマトグラフィー用キラルカラムの製造方法)
本発明の化合物(I)は、それ自体を光学異性体分離剤として使用することもできるが、通常、多孔質有機担体又は多孔質無機担体等の担体に担持させることが好ましい。
本発明に用いられる最も好ましい担体はシリカゲルであり、シリカゲルの粒径は0.1μm〜300μm、好ましくは1μm〜10μmであり、平均孔径は10Å〜100μm、好ましくは50Å〜50000Åである。
本発明の化合物(I)のシリカゲルへの担持方法としては、最も簡便には、本発明の化合物(I)をヘキサンに溶解し、シリカゲルにコーティングして担持させる方法が挙げられる。
本発明の化合物(I)のシリカゲルへの担持量は、熱重量分析を用いて確認することができる。
本発明の化合物(I)が担持されたシリカゲルをスラリー法(溶媒としては、メタノールが好ましい。)によりカラムに充填することによりキラルカラムを調製することができる。
本発明の一方向巻きのらせんキラリティーの固体状態での誘起方法、及びらせんの巻き方向の固体状態での反転方法は、化合物(I)自体を光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に含浸させて行う態様のみならず、化合物(I)を担持させた充填剤を光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に含浸させたり、或いは該充填剤を充填してなるカラムに光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液を満たして静置して行う態様も含まれる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらより何ら限定されるものではない。
反応は、Merck 60 F254 シリカゲルプレート(厚さ0.25mm)を用いて、薄層クロマトグラフィーによりモニターした。
H及び13C−NMRスペクトルは、JEOL EX270、JEOL LA400、JEOL ECA500を用い、重クロロホルムを溶媒として測定した。H−NMRについてのデータは、化学シフト(δppm)、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、quint=クインテット、m=マルチプレット、dd=ダブルダブレット、dt=ダブルトリプレット、brs=ブロードシングレット)、カップリング定数(Hz)、積分及び割当てとして報告する。
フラッシュクロマトグラフィーは、関東化学株式会社(日本、東京)のシリカゲル60Nを用いて行った。
平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(日本分光製高速液体クロマトグラフィーポンプ PU−2080、日本分光製紫外可視検出器 UV−970、日本分光製カラムオーブン CO−1560、Shodex製カラム KF−805L)によりポリスチレン換算で算出した。
調製した本発明の化合物(I)の分離能の測定には日本分光製高速液体クロマトグラフィーポンプPU−2080、日本分光製紫外可視検出器 MD−910、日本分光製旋光検出器 OR−990を用いた。円二色性(CD)測定は日本分光製円二色性分散計 J−725、紫外可視吸収測定は日本分光製紫外可視分光光度計 V−570、赤外吸収測定は、日本分光製赤外分光光度計 FT/IR−460を用いて行った。
以下の実施例中の「室温」は通常約10℃ないし約25℃を示す。混合溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。%は、特に断らない限り重量%を示す。
実施例1
化合物(I−1)の合成
(1)1−ブロモ−4−ドデシルオキシ−2−メトキシメトキシベンゼン(2b)の合成
窒素雰囲気下、4−ブロモ−3−メトキシメトキシフェノール(2a)(5.78g,24.4mmol)を脱水DMF(15mL)に溶解し、炭酸カリウム(7.20g,52.1mmol)、1−ブロモドデカン(11.9mL,49.6mmol)を加えた。その後、140℃で2時間撹拌した。反応溶液をろ過した後、溶媒を減圧除去した。得られた粗生成物をジエチルエーテルで希釈し、水、飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を減圧除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:50)で精製することにより、1−ブロモ−4−ドデシルオキシ−2−メトキシメトキシベンゼン(2b)(7.63g,収率77%)を白色固体として得た。
H−NMR(270MHz,CDCl,rt):δ7.39(d,J=8.7Hz,1H,Ar−H),6.74(d,J=2.7Hz,1H,Ar−H),6.45(dd,J=2.7,8.7Hz,1H,Ar−H),5.23(s,2H,OCHO),3.91(t,J=6.6Hz,2H,OCH CH),3.52(s,3H,OCH),1.76(quint,J=6.6Hz,2H,OCH CH ),1.22−1.50(m,18H,9CH),0.88(t,J=6.3Hz,3H,CH).
(2)4−ドデシルオキシ−2−メトキシメトキシフェニルホウ酸(2−1)の合成
窒素雰囲気下、1−ブロモ−4−ドデシルオキシ−2−メトキシメトキシベンゼン(2b)(7.02g,17.5mmol)を脱水THF(175mL)に溶解し、−78℃に冷却した。1.6M n−ブチルリチウム(n−BuLi)−ヘキサン溶液(13.1mL,21.0mmol)を滴下し、−78℃で20分間撹拌した。トリメトキシボラン(4.13mL,35.0mmol)を一度にすばやく加え、−78℃で30分間撹拌した後、室温で2時間撹拌した。その後、1N塩酸(18.5mL)を加え、30分間撹拌した。反応溶液を減圧除去した後、得られた粗生成物をジエチルエーテルで希釈し、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。濾過後、濾液にシリカゲルを加え、溶媒を減圧留去し、シリカゲルに粗生成物を吸着させた。これをカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)で精製することにより、4−ドデシルオキシ−2−メトキシメトキシフェニルホウ酸(2−1)(4.28g,収率67%)を白色固体として得た。
H−NMR(270MHz,CDCl,rt):δ7.75(d,J=8.4Hz,1H,Ar−H),6.68(d,J=2.4Hz,1H,Ar−H),6.61(dd,J=2.4,8.4Hz,1H,Ar−H),5.49(s,2H,OH),5.27(s,2H,OCHO),3.97(t,J=6.6Hz,2H,OCH CH),3.51(s,3H,OCH),1.78(quint,J=6.6Hz,2H,OCH CH ),1.21−1.50(m,18H,9CH),0.88(t,J=6.3Hz,3H,CH).
(3)4−ベンジルオキシ−4’−ドデシルオキシ−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル(3−1)合成
窒素雰囲気下、4−ベンジルオキシ−1−ブロモ−2−メトキシメトキシベンゼン(1−1)(3.35g,10.4mmol)、4−ドデシルオキシ−2−メトキシメトキシフェニルホウ酸(2−1)(3.79g,10.4mmol)をDME/水(3/1)(560mL)混合溶液に溶解し、Pd(PPh(1.20g,1.04mmol)、炭酸カリウム(4.29g,31.1mmol)を加え、遮光条件下、80℃で17時間撹拌した。反応溶媒を減圧除去した後、残渣をジエチルエーテルで希釈し、水、飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)で精製することにより、4−ベンジルオキシ−4’−ドデシルオキシ−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル(3−1)(5.22g,収率89%)を白色固体として得た。
H−NMR(270MHz,CDCl,rt):δ7.32−7.48(m,5H,Ar−H),7.14(d,J=5.1Hz,1H,Ar−H),7.11(d,J=5.1Hz,1H,Ar−H),6.90(d,J=2.7Hz,1H,Ar−H),6.79(d,J=2.1Hz,1H,Ar−H),6.67(dd,J=2.7,8.6Hz,1H,Ar−H),6.60(dd,J=2.7,8.6Hz,1H,Ar−H),5.07(s,2H,CHBn),5.05(s,2H,OCHO),5.04(s,2H,OCHO),3.96(t,J=6.6Hz,2H,OCH CH),3.35(s,6H,OCH),1.79(quint,J=6.6Hz,2H,OCH CH ),1.40−1.51(m,2H,CH),1.19−1.39(m,16H,8CH),0.88(t,J=6.9Hz,3H,CH).
(4)4’−ドデシルオキシ−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル−4−オール(4a)の合成
4−ベンジルオキシ−4’−ドデシルオキシ−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル(3−1)(1.50g,2.66mmol)を酢酸エチル(25mL)に溶解し、窒素置換した。その後、5%パラジウム炭素(200mg)を加え、水素置換した後、室温で67時間撹拌した。セライト濾過によりパラジウム炭素を除き、溶媒を減圧除去し、4’−ドデシルオキシ−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル−4−オール(4a)(1.31g,収率:定量的)を白色固体として得た。
H−NMR(270MHz,CDCl,rt):δ7.11(d,J=8.4Hz,1H,Ar−H),7.07(d,J=8.4Hz,1H,Ar−H),6.78(d,J=2.4Hz,1H,Ar−H),6.73(d,J=2.4Hz,1H,Ar−H),6.60(dd,J=2.4,8.4Hz,1H,Ar−H),6.52(dd,J=2.4,8.4Hz,1H,Ar-H),5.53(brs,1H,OH),5.05(s,2H,OCHO),5.04(s,2H,OCHO),3.96(t,J=6.6Hz,2H,OCH CH),3.36(s,3H,OCH),3.35(s,3H,OCH),1.79(quint,J=6.6Hz,2H,OCH CH ),1.40−1.51(m,2H,CH),1.22−1.39(m,16H,8CH),0.88(t,J=6.6Hz,3H,CH).
(5)4’−ドデシルオキシ−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル−4−イル トリフルオロメタンスルホネート(4−1)の合成
窒素雰囲気下、4’−ドデシルオキシ−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル−4−オール(4a)(4.26g,8.98mmol)を脱水ジクロロメタン(880mL)に溶解し、−78℃に冷却し、10分間撹拌した。2,6−ルチジン(5.23mL,44.9mmol)を加え、−78℃で10分間撹拌した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(1.62mL,9.87mmol)をゆっくり滴下し、−78℃で1時間撹拌した。その後、室温で1時間撹拌した。反応溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)で精製することにより、4’−ドデシルオキシ−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル−4−イル トリフルオロメタンスルホネート(4−1)(5.10g,収率94%)を無色透明油状物として得た。
H−NMR(270MHz,CDCl,rt):δ7.28(d,J=8.7Hz,1H,Ar-H),7.15(d,J=2.4Hz,1H,Ar-H),7.10(d,J=8.7Hz,1H,Ar-H),6.96(dd,J=2.4,8.4Hz,1H,Ar-H),6.80(d,J=2.4Hz,1H,Ar-H),6.61(dd,J=2.4,8.4Hz,1H,Ar-H),5.08(s,2H,OCHO),5.06(s,2H,OCHO),3.97(t,J=6.6Hz,2H,OCH CH),3.38(s,3H,OCH),3.33(s,3H,OCH),1.79(quint,J=6.6Hz,2H,OCH CH ),1.40−1.52(m,2H,CH),1.22−1.34(m,16H,8CH),0.88(t,J=6.6Hz,3H,CH).
(6){[4’−ドデシルオキシ−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル−4−イル]エチニル}トリメチルシラン(5−1)の合成
窒素雰囲気下、4’−ドデシルオキシ−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル−4−イル トリフルオロメタンスルホネート(4−1)(5.09g,8.39mmol)を脱水DMF/トリエチルアミン(EtN)(5/1)(144mL)混合溶媒に溶解し、トリメチルシリルアセチレン(TMSA)(2.44mL,17.6mmol)、Pd(PPhCl(589mg,0.839mmol)を加えた。その後、遮光条件下、90℃で39時間撹拌した。反応溶液にジエチルエーテルを加え、1N塩酸、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:20)で精製することにより、{[4’−ドデシルオキシ−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル−4−イル]エチニル}トリメチルシラン(5−1)(4.08g,収率88%)を無色透明油状物として得た。
H−NMR(270MHz,CDCl,rt):δ7.30(s,1H,Ar−H),7.09−7.17(m,3H,Ar−H),6.77(d,J=2.1Hz,1H,Ar−H),6.60(dd,J=2.7,8.4Hz,1H,Ar−H),5.06(s,2H,OCHO),5.03(s,2H,OCHO),3.96(t,J=6.6Hz,2H,OCH CH),3.36(s,3H,OCH),3.32(s,3H,OCH),1.79(quint,J=6.6Hz,2H,OCH CH ),1.24−1.52(m,18H,9CH),0.88(t,J=6.9Hz,3H,CH),0.25(s,9H,TMS).
(7)4−ドデシルオキシ−4’−エチニル−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル(6−1)
{[4’−ドデシルオキシ−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル−4−イル]エチニル}トリメチルシラン(5−1)(2.71g,4.89mmol)をTHF/メタノール(3/1,v/v)(168mL)に溶解し、炭酸カリウム(3.38g,24.5mmol)を加え、室温で10時間撹拌した。反応溶液を濾過後、溶媒を減圧除去した。得られた粗生成物をジクロロメタンで希釈し、水、飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:9)で精製することにより、4−ドデシルオキシ−4’−エチニル−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル(6−1)(2.19g,収率93%)を白色固体として得た。
mp:37.8−38.6℃;
IR(KBr,cm−1):3241(≡CH),2106(C≡C);
H−NMR(400MHz,CDCl,rt):δ7.34(s,1H,Ar−H),7.19(s,2H,Ar−H),7.12(d,J=8.5Hz,1H,Ar−H),6.80(d,J=2.2Hz,1H,Ar−H),6.61(dd,J=8.5,2.4Hz,1H,Ar−H),5.06(s,2H,OCHO),5.05(s,2H,OCHO),3.97(t,J=6.5Hz,2H,OCH CH),3.36(s,3H,OCH),3.34(s,3H,OCH),3.08(s,1H,CH),1.79(quint,J=6.8Hz,2H,OCH CH ),1.50−1.43(m,2H,CH),1.24−1.39(m,16H,8CH),0.88(t,J=6.8Hz,3H,CH);
13CNMR(125MHz,CDCl,rt):δ160.12,155.83,154.96,131.89,131.72,130.29,125.82,121.99,120.65,119.23,107.28,102.94,95.37(2C),83.81,77.12,68.23,56.10(2C),32.07,29.82,29.79,29.76,29.75,29.58,29.51,29.47,26.24,22.85,14.27.
(8)化合物(6−1)の重合による化合物(I−1)の合成
窒素雰囲気下、重合管に化合物(6−1)(300mg,0.626mmol)を入れ、1時間真空乾燥させた。脱水THF(883μL)を加えてモノマーを溶解させた後、脱水トリエチルアミン(260μL)を加え、モノマー溶液を調製した([トリエチルアミン]/[モノマー]=3)。[Rh(nbd)Cl](7.16mg,0.0155mmol)を脱水THF(500μL)に溶解し、0.0311Mの触媒溶液を調製した。触媒溶液(100μL)をモノマー溶液に加えてすぐに撹拌し、重合を開始した([モノマー]=0.5M,[モノマー]/[Rh]=100)。30℃の恒温槽で3時間静置した後、大量のメタノールに再沈殿させ、遠心分離により不溶部の化合物(I−1)(298mg)を収率98%で回収した。得られた化合物(I−1)のSEC測定により求めたポリスチレン換算の数平均分子量Mは4.9×10であり分散度M/Mは1.87であった。また、化合物(I−1)のH−NMRスペクトル(500MHz,CDCl中,50℃で測定)(図1−1)より、化合物(I−1)の立体規則性は、ほぼ100%シス−トランソイドであることが分かった。
実施例2
化合物(I−2)の合成
(1)4−クロロ−3−メトキシメトキシフェニル トリフルオロメタンスルホネート(8−1)の合成
窒素雰囲気下、4−クロロ−3−メトキシメトキシフェノール(7−1)(11.4g,60.0mmol)を脱水ジクロロメタン(200mL)に溶解し、0℃に冷却し、10分間撹拌した。2,6−ルチジン(35mL,300mmol)を加え、0℃で10分間撹拌した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(11.1mL,66.0mmol)をゆっくり滴下し、0℃で1時間撹拌した。その後、室温で1時間撹拌した。反応溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:20)で精製することにより、4−クロロ−3−メトキシメトキシフェニル トリフルオロメタンスルホネート(8−1)(16.9g,収率88%)を無色透明油状物として得た。
(2)[(4−クロロ−3−メトキシメトキシフェニル)エチニル]トリイソプロピルシラン(9−1)の合成
窒素雰囲気下、4−クロロ−3−メトキシメトキシフェニル トリフルオロメタンスルホネート(8−1)(16.9g,53.0mmol)を脱水DMF/トリエチルアミン(EtN)(5/1)(420mL)混合溶媒に溶解し、トリメチルシリルアセチレン(TMSA)(18.4mL,95.2mmol)、Pd(PPhCl(3.71g,5.30mmol)を加えた。その後、遮光条件下、90℃で17時間撹拌した。反応溶液にヘキサンを加え、1N塩酸、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することにより、[(4−クロロ−3−メトキシメトキシフェニル)エチニル]トリイソプロピルシラン(9−1)(18.3g,収率98%)を無色透明油状物として得た。
(3)4−(トリイソプロピルシリル)エチニル−2−メトキシメトキシフェニルボロン酸ピナコールエステル(10−1)の合成
窒素雰囲気下、[(4−クロロ−3−メトキシメトキシフェニル)エチニル]トリイソプロピルシラン(9−1)(2.00g,5.67mmol)、酢酸カリウム(0.83g,8.50mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン((Bpin))(1.58g,6.24mmol)を脱水1,4−ジオキサン(38mL)に溶解した。トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)(286mg,1.02mmol)とビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd(dba))(0.25g,0.43mmol)を溶解した1,4−ジオキサン溶液(30mL)を加え、80℃で13時間撹拌した。反応溶液をシリカゲルパッドで濾過することで、触媒を除去した。濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:9)で精製することにより、4−(トリイソプロピルシリル)エチニル−2−メトキシメトキシフェニルボロン酸ピナコールエステル(10−1)(2.03g,収率93%)を淡黄色固体として得た。
(4)4’−(トリイソプロピルシリル)エチニル−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル−4−オール(12−1)の合成
窒素雰囲気下、4−(トリイソプロピルシリル)エチニル−2−メトキシメトキシフェニルボロン酸ピナコールエステル(10−1)(1.13g,2.54mmol)、4−ブロモ−3−メトキシメトキシフェノール(11−1)(0.56g,2.31mmol)をDME/水(3/1)(90mL)混合溶液に溶解し、Pd(PPh(0.27g,0.23mmol)、炭酸カリウム(0.99g,6.9mmol)を加え、遮光条件下、80℃で6時間撹拌した。反応溶媒を減圧留去した後、残渣を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:4)で精製することにより、4’−(トリイソプロピルシリル)エチニル−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル−4−オール(12−1)(0.81g,収率75%)を淡黄色透明油状物として得た。
(5)4−ブチルカルバモイルオキシ−4’−エチニル−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル(6−2)の合成の合成
窒素雰囲気下、4’−(トリイソプロピルシリル)エチニル−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル−4−オール(12−1)(0.79g,1.7mmol)を脱水THF(73mL)に溶解し、1.0Mテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)−THF溶液(2.03mL,2.03mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、1N塩酸、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を減圧留去した。得られた褐色透明油状物(0.73g)を、窒素雰囲気下、脱水ジクロロメタン(30mL)に溶解した。トリエチルアミン(3滴)、n−ブチルイソシアナート(0.32mL,2.79mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応溶媒を減圧除去した後、残渣をヘキサンで希釈し、1N塩酸、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)で精製することにより、4−ブチルカルバモイルオキシ−4’−エチニル−2,2’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル(6−2)(0.42g,収率60%)を淡黄色透明油状物として得た。
IR(KBr,cm−1):3241(≡CH),2106(C≡C),1712(C=O);
H−NMR(500MHz,CDCl,rt):δ7.35(s,1H,Ar−H),7.21−7.16(m,3H,Ar−H),7.02(d,J=1.8Hz,1H,Ar−H),6.86(dd,J=8.5,2.1Hz,1H, Ar−H),5.06(s,4H,OCHO),5.00(t,1H,NH),3.35(d,J=2.7Hz,6H,OCH),3.29(dd,J=13.3,6.9Hz,2H,NCH),3.08(s,1H,C≡C−H),1.61−1.54(m,2H,CH),1.41(m,2H,CH),0.96(t,J=7.3Hz,3H,CH).
13C−NMR(125MHz,CDCl,rt):δ155.22,154.70,154.40,151.37,131.51,131.30,129.53,125.60,125.02,122.22,118.85,114.80,109.08,95.09,95.08,83.52,77.13,55.95,53.42,40.95,31.87,19.89,13.72.
(6)化合物(6−2)の重合による化合物(I−2)の合成
窒素雰囲気下、重合管に化合物(6−2)(350mg,0.85mmol)を入れ、1時間真空乾燥させた。脱水THF(1.00mL)を加えてモノマーを溶解させた後、トリエチルアミン(0.35mL)を加え、モノマー溶液を調製した([トリエチルアミン]/[モノマー]=3)。[Rh(nbd)Cl](1.95mg,4.23μmol)を脱水THF(340μL)に溶解し、12.4mMの触媒溶液を調製した。触媒溶液をモノマー溶液に加えてすぐに撹拌し、重合を開始した([モノマー]=0.5M,[モノマー]/[Rh]=100)。30℃の恒温槽で3時間静置した後、大量のメタノールに再沈殿させ、遠心分離により不溶部の化合物(I−2)(301mg)を収率86%で回収した。得られた化合物(I−2)のSEC測定により求めたポリスチレン換算の数平均分子量Mは1.2×10であり分散度M/Mは1.99であった。また、化合物(I−2)のH−NMRスペクトル(500MHz,CDCl中,50℃で測定)(図1−2)より、化合物(I−2)の立体規則性は、ほぼ100%シス−トランソイドであることが分かった。
IR(KBr,cm−1):1720(C=O);
H−NMR(500MHz,CDCl,50℃):δ6.93−6.84(br,4H,Ar−H),6.58(br,1H,Ar−H),6.40(br,1H,Ar−H),5.97(br,1H,C≡C−H),5.23(br,1H,NH),4.74(br,4H,OCHO),3.20(br,2H,NCH),3.05(br,6H,OCH),1.52−1.30(br,4H,2CH),0.88(t,3H,CH).
実施例3
光学不活性な化合物(I−1)への一方向巻きのらせんキラリティーの誘起と記憶
(1)光学不活性な化合物(I−1)へのらせんキラリティーの誘起
化合物(I−1)のヘキサン溶液に光学的に純粋なアルコール((S)−(+)−1−フェニルエチルアルコール)を800当量添加し、当該溶液のCDおよびUVスペクトルを測定した(装置:日本分光(株)製JASCOJ−725、V−570、セル長:0.1cm、測定温度:−10℃、試料(化合物(I−1))濃度:1.0mM)(図2の(a))。その結果、主鎖の吸収領域に明確なコットン効果が観測され、これにより化合物(I−1)に一方向巻きのらせん構造が誘起されたことが示唆された。
(2)化合物(I−1)に誘起されたらせんキラリティーの記憶
前記処理により一方向巻きのらせん構造が誘起された化合物(I−1)のヘキサン溶液を−10℃以下の低温下でメタノールに再沈殿し、光学的に純粋なアルコールとの混合溶液から化合物(I−1)のみを回収した。回収した化合物(I−1)を再びヘキサンに溶解させ、CDおよびUVスペクトルを測定したところ、化合物(I−1)と光学的に純粋なアルコールとの混合溶液時と同様の誘起CDが観測された(図2の(b))。これにより、化合物(I−1)に誘起された一方向巻きのらせん構造は、光学的に純粋なアルコールの除去後も記憶として化合物(I−1)に保持されることが確認された。
実施例4
(1)光学不活性な化合物(I−1)への固体状態での一方向巻きのらせんキラリティーの誘起
光学不活性な化合物(I−1)(1.0mg)を光学的に純粋なアルコール((S)−(+)−1−フェニルエチルアルコール)/アセトン(1/1(v/v))混合溶液50μL中に50℃で10分間静置した。その後、数回メタノールで洗浄を行い、真空乾燥することで化合物(I−1)を回収した。回収した化合物(I−1)をヘキサンに溶解し、CDおよびUVスペクトルを測定した(図3)。その結果、固体状態でも光学的に純粋なアルコールのアセトン溶液に数分間浸すだけで溶液中と同様に、化合物(I−1)に一方向巻きのらせん構造が誘起されることが確認された。
(2)光学不活性な化合物(I−2)への固体状態での一方向巻きのらせんキラリティーの誘起
光学不活性な化合物(I−2)(1.0mg)を溶解したTHF溶液を石英板上にスピンコーティングし、減圧乾燥することで、化合物(I−2)の薄膜を調製した。薄膜上に(R)−(−)−1−フェニルエチルアルコールを1滴加え、もう一枚の石英板で挟み60℃で静置した。30分後、化合物(I−2)の薄膜状態におけるCDおよびUVスペクトルを測定した(図4)。その結果、(R)−(−)−1−フェニルエチルアルコールに30分間接触させるだけで、薄膜状態でも化合物(I−2)に一方向巻きのらせん構造が誘起されることが確認された。
実施例5
キラルカラムの調製と不斉識別能評価
(1)光学分割用キラルカラムの調製
(i−1)光学不活性な化合物(I−1)を担持させたカラムの調製
実施例1と同様の方法で合成した光学不活性な化合物(I−1)(480mg)をヘキサン(30mL)に溶解し、HPLC用のシリカゲル(ダイソー製:粒径3μm)に担持した(担持率:16wt%)。得られたポリマー担持ゲルをスラリー法(溶媒:メタノール)により長さ25cm、内径0.20cmのステンレスカラムに充填した。
(ii−1)充填剤への一方向巻きのらせん構造誘起
前記(i−1)により調製したカラムに光学的に純粋な(R)−(−)−1−フェニルエチルアルコール/アセトン(1/1(v/v))を送液し、カラム内を満たした。50℃で10分間、25℃で10分間静置した後、メタノールを流し、カラム内をメタノール置換して、光学的に純粋な(R)−(−)−1−フェニルエチルアルコールを除去することによりカラムAを調製した。
(i−2)光学不活性な化合物(I−2)を担持させたシリカゲル充填剤の調製
実施例2と同様の方法で合成した光学不活性な化合物(I−2)(200mg)をTHF(6mL)に溶解し、HPLC用のシリカゲル(800mg、ダイソー製:粒径7μm)に担持した(担持率:20wt%)。
(ii−2)充填剤への一方向巻きのらせん構造誘起
前記(i−2)により調製したポリマー担持シリカゲルを(R)−(−)−1−フェニルエチルアルコールに浸漬し、60℃で静置した。30分後、充填剤をエタノールで洗浄し、(R)−(−)−1−フェニルエチルアルコールを除去した。得られたキラル充填剤をスラリー法(溶媒:ヘキサン)により長さ25cm、内径0.20cmのステンレスカラムに充填し、カラムA’を作製した。
(2)HPLCによるキラルカラムの不斉識別能の確認
(i)上記(1)(ii−1)の操作で調製されたカラムAを用いて、trans−スチルベンオキシドの光学分割をHPLCにより行った(カラム温度:約0℃)。溶離液にはメタノール/水=75/25(v/v)を用いて、流速は0.025mL/分とした。また、溶離液がカラムを素通りする時間tはアセトンの溶出時間から求めた。その結果、k’=3.66(+)、α=1.10と見積もられた(図5)。
(ii)上記(1)(ii−2)の操作で得られたカラムA’を用いて、様々な化合物のラセミ体の光学分割をHPLCにより行った。その結果を表1にまとめて示した。図6に2,2’−ジヒドロキシ−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニルの分割クロマトグラムを示した。溶離液にはヘキサン/2−プロパノール=97/3(v/v)を用いて、流速は0.2mL/分とした。また、溶離液がカラムを素通りする時間tは1,3,5−トリ−tert−ブチルベンゼンの溶出時間から求めた。
ここで保持係数kとは、最初に溶出するエナンチオマーが充填剤とどの程度強く相互作用しているかどうかを表す指標であり、具体的には、式:k=(t−t)/t(式中、t:最初に溶出するエナンチオマーの溶出時間、t:充填剤と全く相互作用しない物質(1,3,5−トリ−tert−ブチルベンゼン)が溶出してくる時間)で表される式により算出される。また、分離係数αとは、両エナンチオマーの保持係数の比を意味し、具体的には、式:α=k/k(式中、k:先に溶出するエナンチオマーの保持係数、k:後から溶出するエナンチオマーの保持係数)で表される式により算出される。一般には、αが1の場合、溶出時間が全く同じで分離されないことを意味し、α>1であれば、両エナンチオマーが分離可能であることを示し、一般にαが1.2以上であれば、ピークの裾まで完全に分離可能であることを示す。
表1によれば、本発明の化合物(I−2)をHPLCカラムのキラル固定相として使用することにより、ビフェノール、ビナフトール等のキラル化合物のラセミ体を極めて効率良く分離できることが確認された。
(3)光学異性体の溶出順序の反転化
(i)上記(1)(ii−1)の操作で調製されたカラムAに光学的に純粋な(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコール/アセトン(1/1(v/v))を送液し、カラム内を満たした。50℃で10分間、25℃で10分間静置した後、メタノールを流し、カラム内をメタノール置換して、光学的に純粋な(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコールを除去することによりカラムBを調製した。カラムBを用いて、trans−スチルベンオキシドの光学分割をHPLCにより行った(カラム温度:約0℃)。溶離液にはメタノール/水=75/25(v/v)を用いて、流速は0.025mL/分とした。また、溶離液がカラムを素通りする時間tはアセトンの溶出時間から求めた。その結果、k’=3.59(−)、α=1.10と見積もられた(図7)。
(ii)上記(1)(i−2)の操作で調製されたキラル充填剤を(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコールに浸漬し、80℃で静置した。3時間後、充填剤をエタノールで洗浄し、(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコールを除去した。得られたキラル充填剤をスラリー法(溶媒:ヘキサン)により長さ25cm、内径0.20cmのステンレスカラムに充填し、カラムB’を作製した。カラムB’を用いて、2,2’−ジヒドロキシ−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニルの光学分割をHPLCにより行った。溶離液にはヘキサン/2−プロパノール=97/3(v/v)を用いて、流速は0.2mL/分とした。また、溶離液がカラムを素通りする時間tは1,3,5−トリ−tert−ブチルベンゼンの溶出時間から求めた。その結果、k=1.11(+)、α=1.17と見積もられ、各光学異性体の溶出順序が逆転したことが確認された。
図5及び図7のtrans−スチルベンオキシドの分割クロマトグラムから、各光学異性体の溶出順序が逆転したことが確認された。
実施例6
低い光学純度の低分子化合物を用いる一方向巻きのらせんキラリティーの誘起と誘起されたらせんキラリティーの記憶(非線形効果の確認)
(1)光学不活性な化合物(I−1)のヘキサン溶液に光学純度の異なるアルコール((S)−(+)−1−フェニルエチルアルコール)(10%ee、20%ee、40%ee、60%ee、80%、>99%ee)を400当量添加し(化合物(I−1)の濃度:1.0mM)、室温で6時間静置した後に、CDスペクトルを測定した(図8の(c))。
(2)光学不活性な化合物(I−1)(1.0mg)を光学純度の異なるアルコール((S)−(+)−1−フェニルエチルアルコール)(100μL)(20%ee、40%ee、60%ee、80%、>99%ee)中にそれぞれ浸漬し、50℃で10分間静置した。その後、数回メタノールで洗浄を行い、真空乾燥することで化合物(I−1)を回収した。回収した化合物(I−1)をヘキサンに溶解し、CDスペクトルを測定した(図8の(d))。
その結果、図8の(c)、(d)で示されるように、溶液状態、固体状態のいずれの場合においても、化合物(I−1)のらせんキラリティーの誘起の際に、光学純度が40%ee以上の(S)−1−フェニルエチルアルコールを使用することにより、光学的に純粋な(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコールを使用した場合と同程度のCDスペクトルにおけるピーク強度(Δε)が観測された。このことから、化合物(I−1)のらせんのキラリティーの誘起において、正の非線形現象(いわゆる、「不斉増幅現象」)を確認することができた。
本発明によれば、一方向巻きのらせん構造を有するポリアセチレン化合物を簡便に合成することができ、また、そのらせんの巻き方向も固体状態で自由自在に反転させることができる。また、該らせん構造を有するポリアセチレン化合物を担体に担持させた状態又はカラムに充填させた状態でも、該ポリアセチレン化合物のらせんの巻き方向を自在に反転させることができ、それにより分離対象物の溶出順序を容易に逆転させることができるという利点を有する。さらに、本発明によれば、らせんのキラリティーの誘起及び/又は反転の際に使用する光学活性な低分子化合物も容易に回収、再利用可能であるため、簡便かつ実用的な光学異性体の分離方法を提供することができる。そして、固体状態での、らせんのキラリティーの誘起及び/又は反転の際に、光学純度の低い低分子化合物を使用しても、光学的に純粋な低分子化合物を使用した場合と同程度の光学純度で一方向巻きのらせん構造を有するポリアセチレン化合物を得ることができるので、実用性に優れたキラル固定相の製造方法となり得る。
本出願は日本で出願された特願2012−109971(出願日:2012年5月11日)及び特願2012−166570(出願日:2012年7月27日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (23)

  1. 一方向巻きのらせん構造を有するポリアセチレン化合物の製造方法であって、式(I):
    [式中、
    及びR’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1−6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1−6アルキル−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルコキシ−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、又は−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基又は−R−(O−Rn1−(ここで、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、n1は、1乃至3の整数を示す。)を示し、Rは、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)を示し;
    は、OR、SR、NHCOR、CONHR、OCOR、OCON(R9’)(R9’’)、又はCO(ここで、Rは、置換されていてもよいC8−30アルキル基を示し、R9’は、水素原子又は置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1−30アルキル基を示す。)を示し;
    、R’、R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、又は置換されていてもよいC1−6アルコキシ基を示し;且つ
    nは、10以上の整数を示す。]
    で表されるポリアセチレン化合物を、光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該低分子化合物を除去する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
  2. 請求項1記載の製造方法により得られる一方向巻きのらせん構造を有するポリアセチレン化合物を、請求項1で使用する低分子化合物の鏡像異性体又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該鏡像異性体又は異なる種類の光学活性低分子化合物を除去することにより、らせんの巻き方向を反転させる工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
  3. 低分子化合物が、(R)−(−)−1−フェニルエチルアルコール又は(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコールである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 低分子化合物の光学純度が、99%ee以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 低分子化合物の光学純度が、40%ee以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  6. 及びR’が共に−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、C1−6アルキル基を示す。)であり、RがOR(ここで、Rは、C10−20アルキル基を示す。)であり、R、R’、R及びR’が共に水素原子である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 及びR’が共にメトキシメチル基であり、且つRがドデシルオキシ基である、請求項6に記載の方法。
  8. 及びR’が共に−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、C1−6アルキル基を示す。)であり、RがOCON(R9’)(R9’’)(ここで、R9’は、水素原子を示し、R9’’は、C1−6アルキル基を示す。)であり、R、R’、R及びR’が共に水素原子である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  9. 及びR’が共にメトキシメチル基であり、且つRがブチルカルバモイルオキシ基である、請求項8に記載の方法。
  10. 低分子化合物又はその鏡像異性体の除去が、メタノール洗浄により行われる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法により製造されることを特徴とする、一方向巻きのらせん構造を有するポリアセチレン化合物。
  12. 請求項11に記載のポリアセチレン化合物からなる光学異性体分離剤。
  13. 請求項12に記載の光学異性体分離剤を担体に担持してなる充填剤。
  14. 担体がシリカゲルである、請求項13に記載の充填剤。
  15. 請求項13又は14に記載の充填剤を充填して調製されるキラルカラム。
  16. 光学異性体の混合物の純度測定用又は分離用として使用する、請求項15に記載のキラルカラム。
  17. 充填剤を光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該低分子化合物を除去することによる、請求項13又は14に記載の充填剤中のポリアセチレン化合物のらせんの巻き方向を反転させる方法。
  18. キラルカラムに光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液を満たし静置した後、該低分子化合物を除去することによる、請求項15又は16に記載のキラルカラムの充填剤中のポリアセチレン化合物のらせんの巻き方向を反転させる方法。
  19. 一方向巻きのらせん構造を有する式(I):
    [式中、
    及びR’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1−6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1−6アルキル−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルコキシ−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、又は−R−O−R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1−4アルキレン基又は−R−(O−Rn1−(ここで、Rは、C1−4アルキレン基を示し、Rは、C1−4アルキレン基を示し、n1は、1乃至3の整数を示す。)を示し、Rは、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)を示し;
    は、OR、SR、NHCOR、CONHR、OCOR、OCON(R9’)(R9’’)、又はCO(ここで、Rは、置換されていてもよいC8−30アルキル基を示し、R9’は、水素原子又は置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1−30アルキル基を示す。)を示し;
    、R’、R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、又は置換されていてもよいC1−6アルコキシ基を示し;且つ
    nは、10以上の整数を示す。]
    で表されるポリアセチレン化合物を、光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該低分子化合物を除去することによる、該ポリアセチレン化合物のらせんの巻き方向を反転させる方法。
  20. 低分子化合物の光学純度が、99%ee以上である、請求項19に記載の方法。
  21. 低分子化合物の光学純度が、40%ee以上である、請求項19に記載の方法。
  22. 式(Ia):
    [式中、
    1a及びR1a’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1−6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1−6アルキル−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルコキシ−カルボニル基、置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル基、又は−R5a−O−R6a(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、R5aは、C1−4アルキレン基又は−R7a−(O−R8an0−(ここで、R7aは、C1−4アルキレン基を示し、R8aは、C1−4アルキレン基を示し、n0は、1乃至3の整数を示す。)を示し、R6aは、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示す。)を示し;
    2aは、OCON(R9a’)(R9a’’)(ここで、R9a’は、水素原子又は置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、R9a’’は、置換されていてもよいC1−30アルキル基を示す。)を示し;
    3a、R3a’、R4a及びR4a’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1−6アルキル基、又は置換されていてもよいC1−6アルコキシ基を示し;且つ
    n’は、10以上の整数を示す。]
    で表されるポリアセチレン化合物。
  23. 1a及びR1a’が共にメトキシメチル基であり、且つR2aがブチルカルバモイルオキシ基である、請求項22に記載の化合物。
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