JP2009021305A - 不揮発性メモリトランジスタ - Google Patents
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Abstract
【課題】書き換え可能な不揮発性メモリトランジスタであって、書き換えの繰り返しによる閾値電圧特性の変化が抑制された信頼性の高い不揮発性メモリトランジスタを提供する。
【解決手段】第1導電型の半導体基板31の表層部に、第2導電型のソース領域32とドレイン領域33が形成され、トンネル酸化膜41を介して、半導体基板31上でドレイン領域33に部分的に重なるようにして、浮遊ゲート電極51が設けられてなる書き換え可能な不揮発性メモリトランジスタ100であって、ソース領域32とドレイン領域33を最短距離で結ぶ断面において、ドレイン領域33と浮遊ゲート電極51の重なり寸法Lが、0.15μm以上、0.5μm以下、である不揮発性メモリトランジスタ100とする。
【選択図】図1
【解決手段】第1導電型の半導体基板31の表層部に、第2導電型のソース領域32とドレイン領域33が形成され、トンネル酸化膜41を介して、半導体基板31上でドレイン領域33に部分的に重なるようにして、浮遊ゲート電極51が設けられてなる書き換え可能な不揮発性メモリトランジスタ100であって、ソース領域32とドレイン領域33を最短距離で結ぶ断面において、ドレイン領域33と浮遊ゲート電極51の重なり寸法Lが、0.15μm以上、0.5μm以下、である不揮発性メモリトランジスタ100とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、書き換え可能な不揮発性メモリトランジスタに関する。
書き換え可能な不揮発性半導体記憶装置(不揮発性メモリトランジスタ)が、例えば、特開昭52−79884号公報(特許文献1)と特許第2848223号明細書(特許文献2)に開示されている。
図6は、特許文献1に開示された不揮発性半導体記憶装置(不揮発性メモリトランジスタ)80の模式的な断面構造を示す図である。
図6に示す半導体装置80では、P導電型Si単結晶半導体基板1の表層部に、N導電型のソース領域7とドレイン領域8が形成されている。また、半導体基板1より不純物濃度の高いP導電型(P+)領域3が、ソース領域7と分離し、ドレイン領域8に当接するようにして、半導体基板1の表層部に形成されている。半導体装置80では、半導体基板1上に、厚さ約55nmの薄ゲートSiO2膜(トンネル酸化膜)5を介して、多結晶シリコンからなる浮遊ゲート電極6が設けられている。さらにその上には、厚さ約500nmのSiO2膜9を介して、制御ゲート電極14が設けられている。尚、図6において、符号4で示した部分は絶縁膜であり、符号12,13で示した部分はそれぞれソース電極とドレイン電極である。図6の半導体装置80では、アバランシェブレークダウンにより生じた正孔(ホール)を浮遊ゲート電極6に注入して、データの書き込みを行う。また、データの消去は、アバランシェブレークダウンにより生じた高エネルギーの電子を浮遊ゲート電極6に注入する。
図7は、特許文献2に開示された不揮発性半導体記憶装置(不揮発性メモリトランジスタ)90の模式的な断面構造と、データ消去時における電圧印加状態を示す図である。
図7に示す不揮発性メモリトランジスタ90は、P型半導体基板21の表面にn+拡散層からなるドレイン22及びソース23と、ドレイン−ソース間の半導体表面を覆う7ないし20nmの酸化膜で構成された第1のゲート絶縁膜(トンネル膜)24と、その上の浮遊ゲート25、酸化膜−窒化膜−酸化膜の三層構造からなる絶縁膜26、制御ゲート27からなる二重ゲートを有し、ソース及びドレインは基板21よりも不純物濃度が高いP型領域28でくるまれている。ソース23とドレイン22は同一構造、すなわち、対称構造である。
不揮発性メモリトランジスタ90のデータの書き込みは、周知の方法であるチャンネルホットエレクトロン注入で行う。すなわちドレイン22に例えば3〜7V、制御ゲート7に6〜11Vを印加し、ソース23及び基板21を接地して、ドレイン領域近傍でのインパクトイオニゼーションにより生じた電子を浮遊ゲート25に注入することにより行う。
データの消去は、図7に示すように,ドレイン22は開放状態とし、基板21を接地し、制御ゲート27に正の電圧、例えば2Vを印加しておき、ソース23にソース−基板間のアバランシェブレークダウン電圧以上の電圧、例えば9Vを印加して、ソース−基板間にアバランシェブレークダウンを生ぜしめ、これに伴うホットキャリアを浮遊ゲート5に注入することにより行う。
特開昭52−79884号公報
特許第2848223号明細書
データの消去は、図7に示すように,ドレイン22は開放状態とし、基板21を接地し、制御ゲート27に正の電圧、例えば2Vを印加しておき、ソース23にソース−基板間のアバランシェブレークダウン電圧以上の電圧、例えば9Vを印加して、ソース−基板間にアバランシェブレークダウンを生ぜしめ、これに伴うホットキャリアを浮遊ゲート5に注入することにより行う。
図6と図7に示す不揮発性半導体記憶装置80,90は、次のように駆動されることでデータの書き換えが可能となっている。すなわち、データの書き込み時には、トンネル酸化膜5,24を通して浮遊ゲート電極6,25に高エネルギーの正孔(ホットホール)または電子(ホットエレクトロン)を注入し、浮遊ゲート電極6,25にこれら電荷を蓄積する。データの消去時には、正負逆の電荷を持った高エネルギーの電子または正孔をトンネル酸化膜5,24を通して浮遊ゲート電極6,25に注入し、蓄積されている電荷を中和して蓄積電荷量を減らす。上記データの書き込み動作と消去動作は繰り返し実施することができ、これによって、該不揮発性半導体記憶装置80,90においてはデータの書き換えが可能となっている。
図6と図7の不揮発性半導体記憶装置80,90では、上記したように、データの書き込み時またはデータの消去時のどちらかで、ホットホールを利用している。しかしながら、ホットホールは、薄いトンネル酸化膜5,24に界面準位や電荷のトラップを発生させやすい。この結果、書き換えを繰り返していくと、トンネル酸化膜5,24中あるいは半導体基板1,21の界面に電荷等が蓄積されていく。このような蓄積電荷は、浮遊ゲート電極6,25への注入に対し電位を上げることとなり、書き込み電荷の通過を阻害して、その書き換え閾値電圧特性が変化していくこととなる。
そこで本発明は、書き換え可能な不揮発性メモリトランジスタであって、書き換えの繰り返しによる閾値電圧特性の変化が抑制された信頼性の高い不揮発性メモリトランジスタを提供することを目的としている。
請求項1に記載の不揮発性メモリトランジスタは、第1導電型の半導体基板の表層部に、第2導電型のソース領域とドレイン領域が形成され、トンネル酸化膜を介して、前記半導体基板上で前記ドレイン領域に部分的に重なるようにして、浮遊ゲート電極が設けられてなる書き換え可能な不揮発性メモリトランジスタであって、前記ソース領域とドレイン領域を最短距離で結ぶ断面において、前記ドレイン領域と浮遊ゲート電極の重なり寸法が、0.15μm以上、0.5μm以下、であることを特徴としている。
上記不揮発性メモリトランジスタは、例えば、ソースからドレインに向うチャネル電流に含まれているドレイン領域近傍の高エネルギー状態にある電子(チャネルホットエレクトロン)を浮遊ゲート電極に注入し、該浮遊ゲート電極に電子を蓄積して、データの書き込みを行うことができる。また、データの消去時には、書き込みと同じドレイン領域と半導体基板とのPN接合界面付近でアバランシェブレークダウンを起こし、この時に発生する高エネルギー状態にある正孔(ホットホール)を浮遊ゲート電極に注入し、蓄積されている電子を中和して蓄積電荷量を減らすことができる。上記不揮発性メモリトランジスタにおいては、以上のようにしてデータの書き込み動作と消去動作を繰り返し実施することができ、これによってデータの書き換えが可能となっている。
上記ホットホールの浮遊ゲート電極への注入はトンネル酸化膜を介して行われるが、上記不揮発性メモリトランジスタにおいては、ドレイン領域と浮遊ゲート電極の重なり寸法が、0.15μm以上、0.5μm以下の範囲に設定されている。ドレイン領域と浮遊ゲート電極の重なり寸法を0.15μm以上にすることで、浮遊ゲート電極の端部がドレイン領域の先端から遠くなり、浮遊ゲート電極の側壁にある酸化膜への正孔や電子の注入を抑制することができる。浮遊ゲート電極の側壁酸化膜は、浮遊ゲート電極下のトンネル酸化膜に較べて膜質が悪く、電荷トラップが多く存在すると考えられる。このため、上記重なり寸法を0.15μm以上とすることで、アバランシェブレークダウンで発生した正孔や電子の浮遊ゲート電極の側壁酸化膜への注入を抑制して、書き換えの繰り返しによる側壁酸化膜での電荷トラップ量も低減することができる。一方、ドレイン領域と浮遊ゲート電極の重なり寸法を0.5μm以下にすることで、書き込み時のチャネルホットエレクトロンの発生箇所と消去時のアバランシェブレークダウンによるホットエレクトロンの発生箇所の重なりを小さくすることができる。従って、これらによるダメージ量も小さくなって、正孔や電子のトラップ量を低減することができる。このため、繰り返し書き換えを行っても書き込み後閾値電圧Vthwと消去後閾値電圧Vtheの変化が小さく、これらの閾値電圧差△Vthの低下を抑制して、十分に大きな閾値電圧差△Vthを維持することができる。
以上のようにして、上記不揮発性メモリトランジスタは、書き換え可能な不揮発性メモリトランジスタであって、書き換えの繰り返しによる閾値電圧特性の変化が抑制された信頼性の高い不揮発性メモリトランジスタとすることができる。
上記不揮発性メモリトランジスタにおいては、特に請求項2に記載のように、前記重なり寸法が、0.2μm以上、0.5μm以下、であることが好ましい。当該範囲においては、重なり寸法のばらつきに対する閾値電圧差△Vthの変化が小さいため、十分に大きな閾値電圧差△Vthを持った上記不揮発性メモリトランジスタを、安定的に製造することができる。
上記不揮発性メモリトランジスタにおいては、請求項3に記載のように、前記トンネル酸化膜の厚さが、8nm以上、14nm以下、であることが好ましい。特に請求項4に記載のように、前記トンネル酸化膜の厚さは、8.5nm以上、12nm以下、が好適である。
トンネル酸化膜の厚さを8nm以上(特に8.5nm以上)とすることで、浮遊ゲート電極に保持される電荷の保持寿命を、十分に確保することができる。また、トンネル酸化膜の厚さを14nm以下(特に12nm以下)とすることで、当該トンネル酸化膜中にトラップされる正孔量を抑制することができ、繰り返し書き換えによる閾値電圧差△Vthの低下を抑制することができる。
上記不揮発性メモリトランジスタは、請求項5に記載のように、前記半導体基板より不純物濃度の高い第1導電型領域が、前記断面において、前記ソース領域と分離し、前記ドレイン領域に当接するようにして、前記半導体基板の表層部に形成されてなる構成とすることができる。
上記不揮発性メモリトランジスタにおいては、アバランシェブレークダウンを第1導電型領域で発生させることができ、アバランシェブレークダウンの起動が容易になって、低電圧でホットホールを浮遊ゲート電極に注入することができる。このため、上記不揮発性メモリトランジスタは、低電圧駆動の不揮発性メモリトランジスタとすることができる。
この場合、請求項6に記載のように、前記第1導電型領域の不純物濃度は、前記ドレイン領域の不純物濃度より高いことが好ましい。
これによれば、空乏層がドレイン領域と第1導電型領域のPN接合界面から第1導電型領域側に伸びることとなり、アバランシェブレークダウンの発生位置も浮遊ゲート電極の側壁酸化膜から遠ざかることとなる。従って、前述したのと同じ理由で、書き換えの繰り返しによる側壁酸化膜での電荷トラップ量を低減することができ、閾値電圧差△Vthの低下を抑制することができる。
また、この場合には、請求項7に記載のように、前記ドレイン領域より不純物濃度の低い第2導電型領域が、前記断面において、前記ソース領域と分離し、前記第1導電型領域に当接するようにして、前記半導体基板の表層部に形成されてなる構成とすることが好ましい。
これによれば、書き込み時において例えばチャネルホットエレクトロンを第2導電型領域と第1導電型領域の界面近くで浮遊ゲート電極に注入し、消去時においてアバランシェブレークダウンを第1導電型領域とドレイン領域の界面近くで発生させて、ここからホットホールを浮遊ゲート電極に注入することができる。このように、チャネルホットエレクトロンの注入位置とホットホールの注入位置を分離することができ、これによって、ダメージ量も小さくなって、正孔や電子のトラップ量を低減することができる。
さらには、請求項8に記載のように、前記断面において、前記ソース領域の端部または前記トンネル酸化膜の前記ソース領域側における端部と前記第2導電型領域の端部との最短距離が、0.4μm以上、であることが好ましい。これによれば、トンネル酸化膜直下のチャネル形成領域において、ショートチャネル効果によるパンチスルーを防止することができる。
上記した不揮発性メモリトランジスタにおいて、制御ゲート電極は、酸化膜を介して浮遊ゲート電極上に配置されていてもよいし、チャネル形成領域上に浮遊ゲート電極と並んで配置されていてもよい。
しかしながら、特に請求項9に記載のように、制御ゲート電極が、酸化膜を介して、前記半導体基板上で、前記浮遊ゲート電極と並んで配置され、前記浮遊ゲート電極が、前記ドレイン領域の近くに偏って配置されてなる場合に好適である。
当該不揮発性メモリトランジスタにおいては、浮遊ゲート電極をドレイン領域側に配置して、制御ゲート電極をソース領域側に配置しているため、浮遊ゲート電極に注入される電子をドレイン近傍で十分に加速されたホットエレクトロンのみとすることができ、誤書込みを防止することができる。また、ソース近傍において制御ゲート電極の機能を発揮させるため、消去過程でホットホール注入を十分行うことができる。このため、過消去防止のための制御等が不要となり、書き込みや消去のための制御回路を小さくすることができる。
一方、制御ゲート電極が浮遊ゲート電極上に配置されてなる不揮発性メモリトランジスタにおいては、駆動電圧の設定によって、例えば、書き込み時の電子の注入と消去時の正孔の注入を、それぞれドレイン領域側とソース領域側の別領域で行うことも可能である。しかしながら、制御ゲート電極が浮遊ゲート電極と並んで配置されてなる当該不揮発性メモリトランジスタにおいては、制御ゲート電極により浮遊ゲート電極への電荷や正孔の注入が阻害されるため、書き込み時の電子の注入と消去時の正孔の注入を、同じドレイン領域側(またはソース領域側)で行う必要がある。このような書き込み時の電子の注入と消去時の正孔の注入が同じ領域で行われる当該不揮発性メモリトランジスタであっても、ドレイン領域と浮遊ゲート電極の重なり寸法が最適化しているため、前述したように書き換えの繰り返しによる閾値電圧特性の変化が抑制された信頼性の高い不揮発性メモリトランジスタとすることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一例で、不揮発性メモリトランジスタ100の模式的な断面図である。尚、図1は、不揮発性メモリトランジスタ100のソース領域32とドレイン領域33を最短距離で結ぶ断面を示した図である。
図1に示す不揮発性メモリトランジスタ100は、電気的にデータが書き換え可能な不揮発性メモリトランジスタで、P導電型(P−)の半導体基板31の表層部に、N導電型(N+)のソース領域32とドレイン領域33が形成されている。また、図1の不揮発性メモリトランジスタ100には、半導体基板31より不純物濃度の高いP導電型(P)領域34が、ソース領域32と分離し、ドレイン領域33に当接するようにして、半導体基板31の表層部に形成されている。
また、図1の不揮発性メモリトランジスタ100においては、トンネル酸化膜41を介して、半導体基板31上でドレイン領域33に部分的に重なるようにして、浮遊ゲート電極51が設けられている。また、制御ゲート電極52が、酸化膜42を介して、浮遊ゲート電極51上に配置されている。
図1に示す不揮発性メモリトランジスタ100は、例えば、ソースからドレインに向うチャネル電流に含まれているドレイン領域33近傍の高エネルギー状態にある電子(チャネルホットエレクトロン)を浮遊ゲート電極51に注入し、該浮遊ゲート電極51に電子を蓄積して、データの書き込みを行うことができる。また、データの消去時には、書き込みと同じドレイン領域33と半導体基板31のPN接合界面付近でアバランシェブレークダウンを起こし、この時に発生する高エネルギー状態にある正孔(ホットホール)を浮遊ゲート電極51に注入し、蓄積されている電子を中和して蓄積電荷量を減らすことができる。尚、図1の不揮発性メモリトランジスタ100では、ブレークダウン電圧を制御し電界集中層となるP導電型(P)領域34が形成されている。これによって、このP導電型領域34でアバランシェブレークダウンを発生させることができ、アバランシェブレークダウンの起動が容易になって、低電圧でホットホールを浮遊ゲート電極51に注入することができる。従って、図1の不揮発性メモリトランジスタ100は、低電圧駆動の不揮発性メモリトランジスタとすることが可能である。
図1の不揮発性メモリトランジスタ100では、以上のようにしてデータの書き込み動作と消去動作を繰り返し実施することができ、これによってデータの書き換えが可能となっている。
また、図1の不揮発性メモリトランジスタ100では、ソース領域32とドレイン領域33を最短距離で結ぶ断面において、図中に示すドレイン領域33と浮遊ゲート電極51の重なり寸法Lが、以下に示す考察と書き換えの繰り返しによる耐久試験より、0.15μm以上、0.5μm以下の範囲に設定されている。
図1の不揮発性メモリトランジスタ100においても、図6と図7に示したの不揮発性メモリトランジスタ80,90と同様に、ホットホールの浮遊ゲート電極51への注入はトンネル酸化膜41を介して行われる。しかしながら、図6と図7に示したの不揮発性メモリトランジスタ80,90で説明したように、ホットホールは、薄いトンネル酸化膜5,24に界面準位や電荷のトラップを発生させやすい。この結果、書き換えを繰り返していくと、トンネル酸化膜5,24中あるいは半導体基板1,21の界面に電荷等が蓄積されて、書き換え閾値電圧特性が変化していくこととなる。
従って、同様にホットホールをデータの書き換えに利用する図1の不揮発性メモリトランジスタ100おいては、浮遊ゲート電極51へのホットホールの注入を厳密に管理する必要があり、特に、トンネル酸化膜41の厚さと浮遊ゲート電極51へのホットホールの注入位置が重要であると考えられる。
図1の不揮発性メモリトランジスタ100おけるトンネル酸化膜41の厚さは、予備的な試験によれば、8nm以上、14nm以下、とすることが好ましい。特に、トンネル酸化膜41の厚さは、8.5nm以上、12nm以下、が好適である。
トンネル酸化膜41の厚さを8nm以上(特に8.5nm以上)とすることで、浮遊ゲート電極51に保持される電荷の保持寿命を、十分に確保することができる。また、トンネル酸化膜41の厚さを14nm以下(特に12nm以下)とすることで、当該トンネル酸化膜41中にトラップされる正孔量を抑制することができ、後述する繰り返し書き換えによる閾値電圧差△Vthの低下を抑制することが可能である。
また、図1の不揮発性メモリトランジスタ100における浮遊ゲート電極51へのホットホールの注入位置については、前述したように、アバランシェブレークダウンによるホットホールは、P導電型領域34におけるドレイン領域33とのPN接合界面付近発生すると考えられる。そこで、図1におけるドレイン領域33と浮遊ゲート電極51の重なり寸法Lを変えた幾つかの不揮発性メモリトランジスタ100について、書き換えの繰り返しによる閾値電圧の特性変化を調べた。
図2(a),(b)は、上記調査結果の一例で、それぞれ重なり寸法Lが0.1μmと0.2μmの場合について、100回書き換えを行ったときの書き込み後閾値電圧Vthwと消去後閾値電圧Vtheの変化の様子を示した図である。尚、図2(a),(b)には、書き込み状態と消去状態を判別するための判定電圧Vrefを3Vとして、図中に一点鎖線で同時に示している。
図2(a)に示す重なり寸法Lが0.1μmの試料では、消去後閾値電圧Vtheは、書き換えの初期において約1.9Vの値を示しており、100回書き換え後においても約1.7Vでほとんど一定の値を示す。これに対して、書き込み後閾値電圧Vthwは、書き換えを繰り返すと初期の約6.1Vから大きく低下していき、100回書き換え後においては約3.5Vとなってしまう。このため、100回書き換え後における書き込み後閾値電圧Vthwと消去後閾値電圧Vtheの閾値電圧差△Vthは、約1.8Vになってしまう。
図2(b)に示す重なり寸法Lが0.2μmの試料では、消去後閾値電圧Vtheは、図2(a)の重なり寸法Lが0.1μmの試料とほぼ同様で、書き換えの初期において約1.8Vの値を示しており、100回書き換え後においても約1.9Vでほとんど一定の値を示す。一方、書き込み後閾値電圧Vthwについては、図2(a)の重なり寸法Lが0.1μmの試料と異なり、初期の約6.1Vから初期劣化を除いて書き換えを繰り返してもほとんど低下せず、100回書き換え後においても約5.2Vとなっている。このため、100回書き換え後における閾値電圧差△Vthも約3.3Vの値を確保することができる。
繰り返し書き換え後における閾値電圧差△Vthの値は、不揮発性メモリトランジスタの信頼性を維持する上で重要な値である。当該不揮発性メモリトランジスタの記憶有無は、書き込み後閾値電圧Vthwと消去後閾値電圧Vtheの間に設定される判定電圧Vrefに対する大小で判定される。閾値電圧差△Vthが小さいと、判定電圧Vrefに対して書き込み後閾値電圧Vthwと消去後閾値電圧Vtheの判定電圧Vrefに対する十分なマージンが取れず、書き込みと消去の判定が不正確になる。書き込み後閾値電圧Vthwや消去後閾値電圧Vtheは、不揮発性メモリトランジスタの製造ばらつきによってその値がばらつき、温度依存性(例えば、車載用の場合は−40〜150℃の温度範囲で使用)もある。また、読出し回路を構成するトランジスタ部の性能ばらつきや、判定電圧Vrefの外部電源ばらつきに対するばらつきもある。従って、温度依存性や製造上のばらつきを考慮して判定電圧Vrefに対する十分なマージンを確保するために、閾値電圧差△Vthは、一般的に2.5V以上の値が必要となっている。
図3は、上記調査結果をまとめた図で、100回書き換え後における閾値電圧差△Vthと重なり寸法Lの関係を示した図である。
図3の結果より、
ドレイン領域33と浮遊ゲート電極51の重なり寸法Lを、0.15μm以上、0.5μm以下の範囲に設定することで、2.5V以上の閾値電圧差△Vthを確保することができる。上記重なり寸法Lは、特に、0.2μm以上、0.5μm以下、の範囲に設定することが好ましい。当該範囲においては、重なり寸法Lのばらつきに対する閾値電圧差△Vthの変化が小さいため、十分に大きな閾値電圧差△Vthを持った上記不揮発性メモリトランジスタを、安定的に製造することができる。
ドレイン領域33と浮遊ゲート電極51の重なり寸法Lを、0.15μm以上、0.5μm以下の範囲に設定することで、2.5V以上の閾値電圧差△Vthを確保することができる。上記重なり寸法Lは、特に、0.2μm以上、0.5μm以下、の範囲に設定することが好ましい。当該範囲においては、重なり寸法Lのばらつきに対する閾値電圧差△Vthの変化が小さいため、十分に大きな閾値電圧差△Vthを持った上記不揮発性メモリトランジスタを、安定的に製造することができる。
上記重なり寸法Lの範囲において、大きな閾値電圧差△Vthを確保することができる要因は、次のように考えられる。
すなわち、図1の不揮発性メモリトランジスタ100においては、ドレイン領域33と浮遊ゲート電極51の重なり寸法Lを0.15μm以上にすることで、浮遊ゲート電極51の端部がドレイン領域33の先端から遠くなり、浮遊ゲート電極51の側壁にある酸化膜43への正孔や電子の注入を抑制することができる。浮遊ゲート電極51の側壁酸化膜43は、浮遊ゲート電極51下のトンネル酸化膜41に較べて膜質が悪く、電荷トラップが多く存在すると考えられる。このため、上記重なり寸法Lを0.15μm以上とすることで、アバランシェブレークダウンで発生した正孔や電子の側壁酸化膜43への注入を抑制して、書き換えの繰り返しによる側壁酸化膜43での電荷トラップ量も低減することができる。
尚、図1の不揮発性メモリトランジスタ100では、ドレイン領域33に当接するP導電型領域34が形成されているが、このP導電型領域34の不純物濃度は、ドレイン領域33の不純物濃度より高いことが好ましい。これによれば、空乏層がドレイン領域33とP導電型領域34のPN接合界面からP導電型領域34側に伸びることとなり、アバランシェブレークダウンの発生位置も浮遊ゲート電極51の側壁酸化膜43から遠ざかることとなる。従って、前述したのと同じ理由で、書き換えの繰り返しによる側壁酸化膜43での電荷トラップ量を低減することができ、閾値電圧差△Vthの低下を抑制することができる。
一方、重なり寸法Lを0.5μm以下にすることで、書き込み時のチャネルホットエレクトロンの発生箇所と消去時のアバランシェブレークダウンによるホットエレクトロンの発生箇所の重なりを小さくすることができる。従って、これらによるダメージ量も小さくなって、正孔や電子のトラップ量を低減することができる。このため、繰り返し書き換えを行っても書き込み後閾値電圧Vthwと消去後閾値電圧Vtheの変化が小さく、これらの閾値電圧差△Vthの低下を抑制して、十分に大きな閾値電圧差△Vthを維持することができる。
以上のようにして、図1に示す不揮発性メモリトランジスタ100は、書き換え可能な不揮発性メモリトランジスタであって、書き換えの繰り返しによる閾値電圧特性の変化が抑制された信頼性の高い不揮発性メモリトランジスタとすることができる。
図4は、本発明の別の例で、不揮発性メモリトランジスタ101の模式的な断面図である。尚、図4に示す不揮発性メモリトランジスタ101において、図1に示した不揮発性メモリトランジスタ100と同様の部分については、同じ符号を付した。また、図4も、図1と同様で、不揮発性メモリトランジスタ101のソース領域32とドレイン領域33を最短距離で結ぶ断面を示した図である。
図1の不揮発性メモリトランジスタ100では、制御ゲート電極52が、酸化膜42を介して浮遊ゲート電極51上に配置されていた。これに対して、図4の不揮発性メモリトランジスタ101においては、制御ゲート電極53が、酸化膜44を介して、半導体基板31上で、浮遊ゲート電極51と並んで配置されている。従って、不揮発性メモリトランジスタ101の浮遊ゲート電極51は、図1の不揮発性メモリトランジスタ100と異なり、ドレイン領域33の近くに偏って配置された構成となっている。尚、図4の不揮発性メモリトランジスタ101においても、図1の不揮発性メモリトランジスタ100と同様に、ドレイン領域33と浮遊ゲート電極51の重なり寸法Lが、0.15μm以上、0.5μm以下の範囲に設定されている。
図4の不揮発性メモリトランジスタ101においては、浮遊ゲート電極51をドレイン領域33側に配置して、制御ゲート電極53をソース領域32側に配置しているため、浮遊ゲート電極51に注入される電子をドレイン近傍で十分に加速されたホットエレクトロンのみとすることができ、誤書込みを防止することができる。また、ソース近傍において制御ゲート電極53の機能を発揮させるため、消去過程でホットホール注入を十分行うことができる。このため、過消去防止のための制御等が不要となり、書き込みや消去のための制御回路を小さくすることができる。
一方、図1の制御ゲート電極52が浮遊ゲート電極51上に配置されてなる不揮発性メモリトランジスタ100においては、駆動電圧の設定によって、例えば、書き込み時の電子の注入と消去時の正孔の注入を、それぞれドレイン領域33側とソース領域32側の別領域で行うことも可能である。しかしながら、図4の制御ゲート電極53が浮遊ゲート電極51と並んで配置された不揮発性メモリトランジスタ101においては、制御ゲート電極53により浮遊ゲート電極51への電荷や正孔の注入が阻害されるため、書き込み時の電子の注入と消去時の正孔の注入を、同じドレイン領域33側(またはソース領域32側)で行う必要がある。このような書き込み時の電子の注入と消去時の正孔の注入が同じ領域で行われる不揮発性メモリトランジスタ101であっても、ドレイン領域33と浮遊ゲート電極51の重なり寸法Lが最適化しているため、前述したように書き換えの繰り返しによる閾値電圧特性の変化が抑制された信頼性の高い不揮発性メモリトランジスタとすることができる。
図5(a),(b)は、別の例で、それぞれ、不揮発性メモリトランジスタ102,103の模式的な断面図である。尚、図5(a),(b)に示す不揮発性メモリトランジスタ102,103において、図1および図4に示した不揮発性メモリトランジスタ100,101と同様の部分については、同じ符号を付した。
図5(a),(b)に示す不揮発性メモリトランジスタ102,103は、それぞれ、図1および図4に示した不揮発性メモリトランジスタ100,101の構造に加えて、ドレイン領域33より不純物濃度の低いN導電型(N)領域35が、ソース領域32と分離し、P導電型領域34に当接するようにして、半導体基板31の表層部に追加形成されている。
図5(a),(b)に示す不揮発性メモリトランジスタ102,103においては、どちらも、書き込み時において例えばチャネルホットエレクトロンをN導電型領域35とP導電型領域34の界面近くで浮遊ゲート電極51に注入し、消去時においてアバランシェブレークダウンをP導電型領域34とドレイン領域33の界面近くで発生させて、ここからホットホールを浮遊ゲート電極51に注入することができる。このように、チャネルホットエレクトロンの注入位置とホットホールの注入位置を分離することができ、これによって、ダメージ量も小さくなって、正孔や電子のトラップ量を低減することができる。
また、図5(a),(b)の不揮発性メモリトランジスタ102,103においては、
図5(a)の不揮発性メモリトランジスタ102のようにソース領域32の端部とN導電型領域35の端部との最短距離A、または図5(b)の不揮発性メモリトランジスタ103のようにトンネル酸化膜41のソース領域32側における端部とN導電型領域35の端部との最短距離Bが、0.4μm以上であることが好ましい。これによれば、トンネル酸化膜41直下のチャネル形成領域において、ショートチャネル効果によるパンチスルーを防止することができる。
図5(a)の不揮発性メモリトランジスタ102のようにソース領域32の端部とN導電型領域35の端部との最短距離A、または図5(b)の不揮発性メモリトランジスタ103のようにトンネル酸化膜41のソース領域32側における端部とN導電型領域35の端部との最短距離Bが、0.4μm以上であることが好ましい。これによれば、トンネル酸化膜41直下のチャネル形成領域において、ショートチャネル効果によるパンチスルーを防止することができる。
以上のようにして、上記した本発明の不揮発性メモリトランジスタは、書き換え可能な不揮発性メモリトランジスタであって、書き換えの繰り返しによる閾値電圧特性の変化が抑制された信頼性の高い不揮発性メモリトランジスタとすることができる。
尚、図1〜図5で例示した不揮発性メモリトランジスタ100〜103は、いずれもNチャネルの不揮発性メモリトランジスタであったが、本発明の不揮発性メモリトランジスタはこれに限らず、Pチャネルの不揮発性メモリトランジスタであってもよい。この場合には、図1〜図5で例示した不揮発性メモリトランジスタ100〜103の導電型がすべて逆転した構造になると共に、浮遊ゲート電極に蓄積される電荷も逆の導電型となる。
80,90,100〜103 不揮発性メモリトランジスタ
31 半導体基板(P−)
32 ソース領域(N+)
33 ドレイン領域(N+)
34 P導電型領域(P)
35 N導電型領域(N)
41 トンネル酸化膜
42 酸化膜
43 側壁酸化膜
51 浮遊ゲート電極
52 制御ゲート電極
31 半導体基板(P−)
32 ソース領域(N+)
33 ドレイン領域(N+)
34 P導電型領域(P)
35 N導電型領域(N)
41 トンネル酸化膜
42 酸化膜
43 側壁酸化膜
51 浮遊ゲート電極
52 制御ゲート電極
Claims (9)
- 第1導電型の半導体基板の表層部に、第2導電型のソース領域とドレイン領域が形成され、
トンネル酸化膜を介して、前記半導体基板上で前記ドレイン領域に部分的に重なるようにして、浮遊ゲート電極が設けられてなる書き換え可能な不揮発性メモリトランジスタであって、
前記ソース領域とドレイン領域を最短距離で結ぶ断面において、前記ドレイン領域と浮遊ゲート電極の重なり寸法が、
0.15μm以上、0.5μm以下、
であることを特徴とする不揮発性メモリトランジスタ。 - 前記重なり寸法が、
0.2μm以上、0.5μm以下、
であることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性メモリトランジスタ。 - 前記トンネル酸化膜の厚さが、
8nm以上、14nm以下、
であることを特徴とする請求項1または2に記載の不揮発性メモリトランジスタ。 - 前記トンネル酸化膜の厚さが、
8.5nm以上、12nm以下、
であることを特徴とする請求項3に記載の不揮発性メモリトランジスタ。 - 前記半導体基板より不純物濃度の高い第1導電型領域が、
前記断面において、前記ソース領域と分離し、前記ドレイン領域に当接するようにして、前記半導体基板の表層部に形成されてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の不揮発性メモリトランジスタ。 - 前記第1導電型領域の不純物濃度が、
前記ドレイン領域の不純物濃度より高いことを特徴とする請求項5に記載の不揮発性メモリトランジスタ。 - 前記ドレイン領域より不純物濃度の低い第2導電型領域が、
前記断面において、前記ソース領域と分離し、前記第1導電型領域に当接するようにして、前記半導体基板の表層部に形成されてなることを特徴とする請求項5または6に記載の不揮発性メモリトランジスタ。 - 前記断面において、
前記ソース領域の端部または前記トンネル酸化膜の前記ソース領域側における端部と前記第2導電型領域の端部との最短距離が、
0.4μm以上、
であることを特徴とする請求項6に記載の不揮発性メモリトランジスタ。 - 制御ゲート電極が、酸化膜を介して、前記半導体基板上で、前記浮遊ゲート電極と並んで配置され、
前記浮遊ゲート電極が、前記ドレイン領域の近くに偏って配置されてなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の不揮発性メモリトランジスタ。
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