JP2009019269A - マグネシウム合金部材およびその製造方法ならびに輸送機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐食性および疲労強度の両方に優れたマグネシウム合金部材およびその製造方法ならびにそのようなマグネシウム合金部材を備えた輸送機器を提供する。
【解決手段】本発明によるマグネシウム合金部材10は、アルミニウムを含むマグネシウム合金から形成された部材本体1と、部材本体1の少なくとも一部を覆う陽極酸化皮膜2とを有する。陽極酸化皮膜2は、多孔質である第1の層2aと、第1の層2aと部材本体1との間に位置し 、第1の層2aよりもアルミニウム含有率が高い第2の層2bとを含む。陽極酸化皮膜2の厚さtに対する第2の層2bの厚さtの割合が5%以上20%以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、マグネシウム合金部材に関し、特に、陽極酸化皮膜を有するマグネシウム合金部材に関する。また、本発明は、そのようなマグネシウム合金部材の製造方法やそのようなマグネシウム合金部材を備えた輸送機器にも関する。
従来、輸送機器の構成部材には、機械的性質および加工性に優れ、安価であるという理由から、鋼が多く用いられてきた。しかしながら、輸送機器の燃費や走行性能を向上させるために、輸送機器の軽量化が課題となっており、鋼より軽量な材料を用いることが検討されている。
近年、鋼に比べて比重の小さいチタンやアルミニウム、マグネシウムなどの安価な精錬方法およびこれらの金属を含む合金の製造方法が開発されてきた。また、これらの金属の合金の強度や加工性を改善する技術も開発されてきた。
そのため、チタンやアルミニウム、マグネシウムの合金を輸送機器の構成部材の材料として用いることが提案されている。特に、マグネシウムの密度は鋼の約23%であるため、マグネシウム合金を用いた場合、大幅に輸送機器の重量を軽減することができる。
しかしながら、マグネシウム合金は、アルミニウム合金に比べて環境次第では腐食し易い。そこで、マグネシウム合金の耐食性を向上する手法の1つとして、陽極酸化処理によってマグネシウム合金の表面に陽極酸化皮膜を形成することが行われている。
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜については、多孔質なポーラス層と、無孔質なバリア層とを含むことが知られている。これらの層は、電子顕微鏡により観察することができる。マグネシウム合金の陽極酸化皮膜も、特許文献1に開示されているように、ポーラス層とバリア層とを含んでいる。
特許文献1には、ポーラス層の表層部分における微細孔の平均孔径を100nm〜25μmと従来よりも小さくすることにより、マグネシウム合金の耐食性が向上することが記載されている。
特開2006−291278号公報
しかしながら、輸送機器は主に屋外で使用されるため、その構成部材は過酷な環境に曝されることが多く、マグネシウム合金部材には耐食性のいっそうの向上が求められている。
現在実用されているマグネシウム合金部品の多くは、家電製品に用いられており、特に、小型モバイル機器の軽量化のために用いられている。そのような用途のマグネシウム合金部品の特徴は、小型で内装用部品であるということであり、要求される耐食性のレベルは輸送機器用のものよりも低い。
一般に、陽極酸化皮膜の厚さが大きくなるほど、耐食性は高くなる。家電製品用のマグネシウム合金部材に形成される陽極酸化皮膜の厚さは5μm〜15μm程度であることが多いが、輸送機器用のマグネシウム合金部材の表面に、従来の手法によってそのような厚さの陽極酸化皮膜を形成しても、耐食性は十分ではない。本願発明者の検討によれば、輸送機器用のマグネシウム合金部材について十分な耐食性を確保するためには、15μmを超える厚さが必要であることがわかった。
しかしながら、陽極酸化皮膜を厚くすると、ポーラス層もそれに伴って厚くなってしまう。主に酸化マグネシウム(MgO)や水酸化マグネシウム(MgOH)から形成されるポーラス層は、凹凸を有し、母材であるマグネシウム合金よりも脆いので、ポーラス層が厚くなることによってポーラス層の凹凸の高低差が大きくなると、疲労破壊の起点となり易く、疲労強度が低下してしまう。そのため、陽極酸化皮膜の厚さを増大させずに(さらには従来よりも陽極酸化皮膜を薄くしても)耐食性を向上させ得る方法の実現が望まれている。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐食性および疲労強度の両方に優れたマグネシウム合金部材およびその製造方法ならびにそのようなマグネシウム合金部材を備えた輸送機器を提供することにある。
本発明によるマグネシウム合金部材は、アルミニウムを含むマグネシウム合金から形成された部材本体と、前記部材本体の少なくとも一部を覆う陽極酸化皮膜と、を有し、前記陽極酸化皮膜は、多孔質である第1の層と、前記第1の層と前記部材本体との間に位置し、前記第1の層よりもアルミニウム含有率が高い第2の層と、を含み、前記陽極酸化皮膜の厚さに対する前記第2の層の厚さの割合が5%以上20%以下である。
ある好適な実施形態において、前記第2の層のアルミニウム含有率は、10質量%以上20質量%以下である。
ある好適な実施形態において、前記陽極酸化皮膜の厚さは2μm以上5μm以下であり、前記第2の層の厚さは200nm以上500nm以下である。
ある好適な実施形態において、前記第1の層の気孔率は、10%以上であり、前記第2の層の気孔率は、10%未満である。
ある好適な実施形態において、前記部材本体の、前記陽極酸化皮膜との界面から100μm以内の領域におけるアルミニウム含有率は、5.5質量%以上10.0質量%以下である。
ある好適な実施形態において、前記部材本体の、前記陽極酸化皮膜との界面から100μm以内の領域における平均結晶粒径は20μm以下である。
ある好適な実施形態において、前記陽極酸化皮膜の表面の十点平均粗さは6.4Rz以下である。
あるいは、本発明によるマグネシウム合金部材は、アルミニウムを含むマグネシウム合金から形成された部材本体と、前記部材本体の少なくとも一部を覆う陽極酸化皮膜と、を備え、前記陽極酸化皮膜は、多孔質である第1の層と、前記第1の層と前記部材本体との間に位置し、前記第1の層よりもアルミニウム含有率が高い第2の層と、を含み、前記陽極酸化皮膜の厚さは2μm以上5μm以下であり、前記第2の層の厚さは200nm以上500nm以下である。
本発明による輸送機器は、上記構成を有するマグネシウム合金部材を備える。
本発明によるマグネシウム合金部材の製造方法は、アルミニウムを含むマグネシウム合金から形成された部材本体を用意する工程と、前記部材本体の表面に陽極酸化皮膜を形成する工程と、を包含し、前記陽極酸化皮膜を形成する工程は、所定の電圧で所定の時間、前記部材本体の陽極酸化を行う陽極酸化工程を複数回繰り返し行うことによって実行され、2回目以降の陽極酸化工程は、前回の陽極酸化工程よりも高い電圧で行われる。
ある好適な実施形態において、前記陽極酸化工程は、40V以上150V以下の電圧で行われる。
ある好適な実施形態において、前記陽極酸化工程は、0.001秒以上120秒以下の時間行われる。
ある好適な実施形態において、2回目以降の陽極酸化工程は、前回の陽極酸化工程よりも0.5V以上5.0V以下高い電圧で行われる。
ある好適な実施形態において、前記陽極酸化工程は5回以上繰り返し行われる。
ある好適な実施形態において、前記部材本体を用意する工程は、アルミニウムを含むマグネシウム合金から前記部材本体をダイキャスト法により成形する工程を包含する。
ある好適な実施形態において、本発明によるマグネシウム合金部材の製造方法は、前記陽極酸化皮膜を形成する工程の前に、0.1mol/l以上1.0mol/l以下の濃度で25℃以上40℃以下の温度の酸性溶液に、前記部材本体を60秒以上300秒以下の間浸漬する工程をさらに包含する。
本発明によるマグネシウム合金部材の陽極酸化皮膜は、多孔質である第1の層と、第1の層と部材本体との間に位置し、第1の層よりもアルミニウム含有率が高い第2の層とを含んでいる。本発明によるマグネシウム合金部材では、陽極酸化皮膜の厚さに対する第2の層の厚さの割合が5%以上20%以下であり、従来よりも高いので、陽極酸化皮膜全体の厚さを徒に大きくすることなく、第2の層の厚さを大きくすることができる。そのため、疲労強度の低下を抑制しつつ、耐食性のいっそうの向上を図ることができる。つまり、疲労強度と耐食性の両方に優れたマグネシウム合金部材が得られる。
第2の層のアルミニウム含有率は、典型的には、10質量%以上20質量%以下である。
陽極酸化皮膜の厚さが2μm以上5μm以下である場合には、例えば第2の層の厚さを200nm以上500nm以下とすることにより、十分な疲労強度と十分な耐食性を得ることができる。
第1の層の気孔率は、典型的には10%以上であり、第2の層の気孔率は、典型的には10%未満(好ましくは5%以下)である。
部材本体の陽極酸化皮膜近傍(具体的には、部材本体の、陽極酸化皮膜との界面から100μm以内の領域)におけるアルミニウム含有率は、5.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。アルミニウム含有率が5.5質量%未満であると、スピネル(後述するようにアルミニウムとマグネシウムの酸化物である)の形成が阻害されて十分な厚さの第2の層を形成できないことがある。また、アルミニウム含有率が10.0質量%を超えると、マグネシウム合金の靭性が低下して構造部材として不適当なことがある。
陽極酸化工程においては、部材本体の表面近傍の溶解と皮膜の生成とが同時並行で起こっているので、部材本体の表面近傍における平均結晶粒径が小さいと、部材本体の表面近傍が溶解したときに表面が荒れにくく、第2の層の厚さのばらつき(場所による変動)を抑制することができる。具体的には、部材本体の、陽極酸化皮膜との界面から100μm以内の領域における平均結晶粒径が20μm以下であると、第2の層の厚さのばらつきを小さくする効果が高い。
また、同じ理由(部材本体の表面近傍が溶解したときに表面を荒れにくくし、第2の層の厚さのばらつきを抑制する目的)から、陽極酸化工程に用いられる部材本体の表面粗さが小さいことが好ましく、具体的には、部材本体の表面の十点平均粗さが3.2Rz以下であることが好ましい。表面の十点平均粗さが3.2Rz以下である部材本体に陽極酸化皮膜を形成すると、陽極酸化皮膜の表面の十点平均粗さは6.4Rz以下となる。つまり、陽極酸化皮膜の表面の十点平均粗さが6.4Rz以下であるマグネシウム合金部材は、第2の層の厚さのばらつきが小さい。
本発明によるマグネシウム合金部材は、耐食性および疲労強度に優れているので、各種の輸送機器に好適に用いられる。
本発明によるマグネシウム合金部材の製造方法では、陽極酸化皮膜を形成する工程が、所定の電圧で所定の時間、部材本体の陽極酸化を行う陽極酸化工程を複数回繰り返し行うことによって実行され、2回目以降の陽極酸化工程は、前回の陽極酸化工程よりも高い電圧で行われる。つまり、陽極酸化皮膜を形成する工程において、印加電圧が段階的に高くなる。このようにして陽極酸化皮膜を形成することにより、陽極酸化皮膜の厚さに対する第2の層の厚さの割合を5%以上20%以下と従来よりも高くすることができる。従って、陽極酸化皮膜全体の厚さを増大させずに第2の層の厚さを大きくすることができる。そのため、疲労強度の低下を抑制しつつ、耐食性のいっそうの向上を図ることができる。つまり、疲労強度と耐食性の両方に優れたマグネシウム合金部材が得られる。
各陽極酸化工程は、40V以上150V以下の電圧で行われることが好ましい。電圧が40V未満であると、スピネルの形成が阻害されて十分な厚さの第2の層を形成しにくいことがある。また、電圧が150Vを超えると、第2の層の厚さがばらついて均一な厚さの第2の層が形成しにくいことがあるので、生産性が低下することがある。
各陽極酸化工程は、0.001秒以上120秒以下の時間行われることが好ましい。各陽極酸化工程を行う時間は、基本的には短いほど良いが、0.001秒未満の場合には、電圧印加時間が短すぎて膜の生成速度が極端に低下してしまうことがある。そのため、コストや生産性を考慮すると各陽極酸化工程を行う時間は0.001秒以上であることが好ましい。また、120秒を超える場合には、第1の層の成長速度が上昇して陽極酸化皮膜全体の厚さに対する第2の層の厚さの割合が低下してしまう。そのため、第2の層の厚さの割合を高くするためには、各陽極酸化工程を行う時間は120秒以下であることが好ましく、90秒以下であることがより好ましい。
第2の層を効率よく形成するためには、ある陽極酸化工程とその直後の陽極酸化工程との電圧差がある程度以上大きいことが好ましく、具体的には、2回目以降の陽極酸化工程は、前回の陽極酸化工程よりも0.5V以上高い電圧で行われることが好ましい。ただし、電圧差が大きすぎると、最後の陽極酸化工程における電圧(最終電圧)を第2の層の厚さのばらつきが生じにくい大きさ(例えば上述したように150V以下)に保ちつつ陽極酸化工程の繰り返し回数を多くすることが難しいことがあるので、2回目以降の陽極酸化工程は、前回の陽極酸化工程における電圧との差が5.0Vを超えない電圧で行われることが好ましい。従って、2回目以降の陽極酸化工程は、前回の陽極酸化工程よりも0.5V以上5.0V以下高い電圧で行われることが好ましい。
陽極酸化皮膜の厚さに対する第2の層の厚さの割合を高くするためには、陽極酸化工程をある程度の回数以上行うことが好ましく、具体的には、5回以上繰り返し行うことが好ましい。
部材本体を用意する工程は、アルミニウムを含むマグネシウム合金から部材本体をダイキャスト法により成形する工程を包含することが好ましい。ダイキャスト法を用いると、アルミニウムを含むマグネシウム合金の溶湯が急冷されるので、部材本体の表面近傍における平均結晶粒径を内部よりも小さくすることができる。
陽極酸化皮膜を形成する工程の前に、0.1mol/l以上1.0mol/l以下の濃度で25℃以上40℃以下の温度の酸性溶液に、部材本体を60秒以上300秒以下の間浸漬する工程を行うことにより、部材本体の表面粗さを十分に小さく(例えば十点平均粗さを3.2Rz以下に)することができる。
本発明によると、耐食性および疲労強度の両方に優れたマグネシウム合金部材およびその製造方法が提供される。また、本発明によると、そのようなマグネシウム合金部材を備えた輸送機器が提供される。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1に、本実施形態におけるマグネシウム合金部材(以下では単に「部材」とも称する。)10の断面構造を示す。部材10は、図1に示すように、部材本体1と、部材本体1の少なくとも一部を覆う陽極酸化皮膜2とを有している。ここでは図示していないが、陽極酸化皮膜2上には、必要に応じて塗膜が形成される。
部材本体1は、アルミニウムを含むマグネシウム合金から形成されている。マグネシウム合金としては、種々の組成のものを用いることができ、アルミニウム以外の添加元素としては、マンガン、亜鉛、カルシウム、希土類元素などが挙げられる。部材本体1は、例えば鋳造により所定の形状に成形されている。
陽極酸化皮膜2は、多層構造を有しており、多孔質である第1の層2aと、第1の層2aと部材本体1との間に位置する第2の層2bとを有する。つまり、陽極酸化皮膜2は、部材本体1側から第2の層2bおよび第1の層2aがこの順で積層されて構成されている。
第1の層2aは、主に酸化マグネシウム(MgO)および水酸化マグネシウム(MgOH)から構成されており、既に述べたように多孔質である。これに対し、第2の層2bは、主にスピネルから構成されている。スピネルは、マグネシウムとアルミニウムの酸化物であり、化学量論的な組成(勿論これに限定されるものではないが)はAlMgである。第2の層2bは、主成分の構造式からもわかるように第1の層2aよりもアルミニウム含有率が高く、実質的には無孔質である。以下では、多孔質の第1の層2aを「ポーラス層」と呼び、無孔質の第2の層2bを「バリア層」と呼ぶ。バリア層2bは、部材本体1に陽極酸化処理を施した際に最初に形成される層であり、ポーラス層2aは、バリア層2bが形成された後にバリア層2b上に形成される層である。
ポーラス層2aの気孔率が典型的には10%以上50%以下であるのに対し、バリア層2bの気孔率は典型的には10%未満(好ましくは5%以下)である。また、ポーラス層2aのアルミニウム含有量が典型的には1質量%以上10質量%未満であるのに対し、バリア層2bのアルミニウム含有量は10質量%以上20質量%以下である。
多孔質であるポーラス層2aの微細孔の平均孔径は、典型的には10nm以上4.5μm以下である。これに対し、無孔質であるバリア層2bでは、微細孔の平均孔径は規定されない(勿論実際にはわずかに空孔が存在している。)。
本実施形態におけるマグネシウム合金部材10では、陽極酸化皮膜2の厚さtに対するバリア層2bの厚さtの割合が5%以上20%以下である。これに対し、従来のマグネシウム合金部材の陽極酸化皮膜では、陽極酸化皮膜の厚さに対するバリア層の厚さの割合は、1%以上ではあるものの5%未満であった。
ポーラス層2aは、多孔質であり、バリア層2bよりも気孔率が高い。そのため、ポーラス層2aの実際の厚さには局所的なばらつきがあり、ポーラス層2aはわずかな厚さしかない部分を有している。これに対し、バリア層2bは、無孔質であり、ポーラス層2aよりも気孔率が低いので、バリア層2bの厚さのばらつきはポーラス層2aに比べて小さい。そのため、バリア層2bを厚く形成することにより、耐食性を部位によらず均一に向上させることができる。つまり、バリア層2bが耐食性の向上に大きく寄与する。
本実施形態では、上述したように、陽極酸化皮膜2の厚さtに対するバリア層2bの厚さtの割合が5%以上20%以下と従来よりも高い。従って、陽極酸化皮膜2全体の厚さtやポーラス層2aの厚さtを徒に大きくすることなく、バリア層2bの厚さtを大きくすることができる。そのため、疲労強度の低下を抑制しつつ、耐食性のいっそうの向上を図ることができる。つまり、疲労強度と耐食性の両方に優れたマグネシウム合金部材10が得られる。なお、陽極酸化皮膜2の厚さtに対するバリア層2bの厚さtの割合が従来よりも高い陽極酸化皮膜2は、例えば後述する手法により形成することができる。
例えば陽極酸化皮膜2全体の厚さtが2μm以上5μm以下である場合、バリア層2bの厚さを200nm以上500nm以下とすることにより、十分な疲労強度と十分な耐食性を得ることができる。
続いて、図2を参照しながら、本実施形態におけるマグネシウム合金部材10の製造方法を説明する。図2は、マグネシウム合金部材10の製造方法を示すフローチャートである。
まず、アルミニウムを含むマグネシウム合金から形成された部材本体1を用意する(工程S1)。このとき、部材本体1の表面近傍(つまり後に形成される陽極酸化皮膜2近傍)におけるアルミニウム含有率が、部材本体1の厚さ方向中央におけるアルミニウム含有率よりも高いことが好ましい。バリア層2bは、部材本体1の表面近傍が酸化することによって形成される層であるので、表面近傍のアルミニウム含有率を高くすることにより、アルミニウム含有率が部材本体1の全体でほぼ均一な場合と比べてアルミニウムの総量が同じであっても厚いバリア層2bを形成することができる。
部材本体1は、公知の種々の方法により成形され得るが、冷却速度の速い金型鋳造法、特に、ダイキャスト法により成形されることが好ましい。ダイキャスト法を用いると、アルミニウムを含むマグネシウム合金の溶湯が急冷されるので、部材本体1の表面近傍におけるアルミニウム含有率を内部よりも高くすることができる。また、後述する理由から、部材本体1の表面近傍におけるマグネシウム合金の平均結晶粒径が小さいことが好ましく、ダイキャスト法を用いることにより、表面近傍における平均結晶粒径を内部よりも小さくすることもできる。
部材本体1の表面近傍(具体的には、部材本体1の、陽極酸化皮膜2との界面から100μm以内の領域)におけるアルミニウム含有率は、5.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。アルミニウム含有率が5.5質量%未満であると、スピネルの形成が阻害されて十分な厚さのバリア層2bを形成できないことがある。また、アルミニウム含有率が10.0質量%を超えると、マグネシウム合金の靭性が低下して構造部材として不適当なことがある。例えば、AM60B、AM80、AZ91D、AZ61などのマグネシウム合金を用いてダイキャスト法により部材本体1を成形することにより、部材本体1の表面近傍におけるアルミニウム含有率を5.5質量%以上10.0質量%以下にすることができる。
次に、部材本体1に対し、脱脂、水洗、最表面層の除去、水洗、表面調整、水洗(工程S2〜S7)を順次行う。脱脂は、部材本体1の表面に付着している油脂分を取り除く処理であり、最表面層の除去は、部材本体1の表面から表面汚染層を除去する処理である。また、表面調整は、上述した表面汚染層の除去の際に部材本体1の表面に発生した副生成物を、取り除いて清浄化するための処理である。これらの工程は、公知の種々の手法により行うことができる。例えば、最表面層の除去は、機械的に行ってもよいし、化学的に行ってもよい。なお、脱脂から表面調整までの工程は必ずしも行う必要はないが、用意される部材本体1によっては行うことが好ましい。例えば、部材本体1が離型剤の付着したダイキャスト成形品である場合には、これらの工程を行うことが好ましい。
続いて、部材本体1の表面に陽極酸化皮膜2を形成する(工程S8)。陽極酸化皮膜2を形成するこの工程は、所定の電圧で所定の時間、部材本体1の陽極酸化を行う陽極酸化工程を複数回繰り返し行うことによって実行される。
図3に、工程S8における印加電圧と時間との関係の一例を示す。図3に示す例では、陽極酸化工程が10回(工程S8−1から工程S8−10まで)繰り返し行われる。また、図3に示しているように、2回目以降の陽極酸化工程は、前回の陽極酸化工程よりも高い電圧で行われる。
陽極酸化に用いられる電解液は、アルカリ性溶液であればよく、公知の種々の組成の電解液を用いることができる。後述する実施例では、入手しやすいアルカリ性溶液(NaHCO水溶液やNaOH水溶液)で濃度が0.5〜2mol/lのものを用いた。
電流としては、直流電流が用いられるが、PR波電流(交流電流を制御して直流電流のような波形をつくったもの)を用いてもよい。また、電流密度に特に限定はなく、後述する実施例では、8〜15A/dmであった。
その後、水洗、後処理、純水洗、乾燥を順次行う(工程S9〜S12)。後処理としては、例えば、陽極酸化皮膜2の表面の微細孔を塞ぐ封孔処理が行われる。このようにして、陽極酸化皮膜2を有するマグネシウム合金部材10が完成する。
上述したように、本実施形態における製造方法では、陽極酸化皮膜2を形成する工程S8は、所定の電圧で所定の時間、部材本体1の陽極酸化を行う陽極酸化工程を複数回繰り返し行うことによって実行され、2回目以降の陽極酸化工程は、前回の陽極酸化工程よりも高い電圧で行われる。つまり、陽極酸化皮膜2を形成する工程において、印加電圧が段階的に高くなる。このようにして陽極酸化皮膜2を形成することにより、陽極酸化皮膜2の厚さtに対するバリア層2bの厚さtの割合を5%以上20%以下と従来よりも高くすることができる。以下、この理由を図4を参照しながら説明する。
図4は、ある一定電圧で陽極酸化を行ったときの部材本体1の表面における電圧の推移を表している。部材本体1の表面の電圧は、電圧印加直後から徐々に上昇して、最終的にはある一定値に収束する。このような電圧の推移は、陽極酸化皮膜2の生成状況により4つの段階A〜Dに分けられる。
最初の段階Aでは、電圧が急激に上昇し、部材本体1の表面にスピネルを主成分として含むバリア層2bが生成する。次の段階Bでは、段階Aと同様にバリア層2bが生成するが、電圧の上昇は緩やかになり、バリア層2bの生成速度も遅くなる。続く段階Cでは、酸化マグネシウムや水酸化マグネシウムを主成分として含むポーラス層2aが生成する。電圧はわずかに上昇を続け、バリア層2bもわずかであるが生成する。最後の段階Dでは、ポーラス層2aのみが生成する。電圧はほぼ一定値に収束する。
本実施形態における製造方法では、2回目以降の陽極酸化工程を、前回の陽極酸化工程よりも高い電圧で行うことにより、上述した段階Aと段階B(つまりバリア層2bが生成する段階)とを繰り返すことができるので、陽極酸化皮膜2の厚さtに対するバリア層2bの厚さtの割合を従来よりも高く(具体的には5%以上20%以下に)することができる。従って、陽極酸化皮膜2全体の厚さtを増大させずにバリア層2bの厚さtを大きくすることができる。そのため、疲労強度の低下を抑制しつつ、耐食性のいっそうの向上を図ることができる。つまり、疲労強度と耐食性の両方に優れたマグネシウム合金部材10が得られる。
これに対し、従来の製造方法では、図5に示すように、陽極酸化皮膜を形成する工程において、同じ大きさの電圧で陽極酸化が行われるので、陽極酸化皮膜全体の厚さに対するバリア層の厚さの割合を高くすることができない。
なお、図3には、印加電圧の異なる複数の陽極酸化工程S8−1〜S8−10が連続的に行われる場合を示したが、図6に示すように、陽極酸化工程S8−1〜S8−6が断続的に(間欠的に)行われてもよい。
各陽極酸化工程は、40V以上150V以下の電圧で行われることが好ましい。電圧が40V未満であると、スピネルの形成が阻害されて十分な厚さのバリア層2bを形成しにくいことがある。また、電圧が150Vを超えると、バリア層2bの厚さtがばらついて均一な厚さのバリア層2bが形成しにくいことがあるので、生産性が低下することがある。複数回の陽極酸化工程全体の所要時間を短縮化する観点からは、最初の陽極酸化工程における電圧(開始電圧)は、75V以上120V以下であることが好ましい。
各陽極酸化工程は、0.001秒以上120秒以下の時間行われることが好ましい。各陽極酸化工程を行う時間は、基本的には短いほど良いが、0.001秒未満の場合には、電圧印加時間が短すぎて膜の生成速度が極端に低下してしまうことがある。そのため、コストや生産性を考慮すると各陽極酸化工程を行う時間は0.001秒以上であることが好ましい。また、120秒を超える場合には、第1の層の成長速度が上昇して陽極酸化皮膜2全体の厚さに対する第2の層2bの厚さの割合が低下してしまう。そのため、第2の層2bの厚さの割合を高くするためには、各陽極酸化工程を行う時間は120秒以下であることが好ましく、90秒以下であることがより好ましい。なお、陽極酸化皮膜2を形成する工程全体は、典型的には、5分〜50分行われる。
陽極酸化皮膜2の厚さtに対するバリア層2bの厚さtの割合を高くするためには、陽極酸化工程をある程度の回数以上行うことが好ましい。具体的には、陽極酸化工程を5回以上繰り返し行うことが好ましい。
段階Aと段階Bとを繰り返すためには、ある陽極酸化工程とその直後の陽極酸化工程との電圧差がある程度以上大きいことが好ましく、具体的には、2回目以降の陽極酸化工程は、前回の陽極酸化工程よりも0.5V以上高い電圧で行われることが好ましい。ただし、電圧差が大きすぎると、最後の陽極酸化工程における電圧(最終電圧)を生産性の低下しない大きさ(例えば上述したように150V以下)に保ちつつ陽極酸化工程の繰り返し回数を多くすることが難しいことがあるので、2回目以降の陽極酸化工程は、前回の陽極酸化工程における電圧との差が5.0Vを超えない電圧で行われることが好ましい。つまり、2回目以降の陽極酸化工程は、前回の陽極酸化工程に比べて0.5V以上5.0V以下高い電圧で行われることが好ましい。
陽極酸化工程においては、部材本体1の表面近傍の溶解と皮膜の生成とが同時並行で起こっているので、部材本体1の表面近傍における平均結晶粒径(マグネシウム合金の平均結晶粒径)が小さいと、部材本体1の表面近傍が溶解したときに表面が荒れにくく、バリア層2bの厚さtのばらつき(場所による変動)を抑制することができる。具体的には、部材本体1の、陽極酸化皮膜2との界面から100μm以内の領域における平均結晶粒径が20μm以下であると、バリア層2bの厚さtのばらつきを小さくする効果が高い。
また、同じ理由(部材本体1の表面近傍が溶解したときに表面を荒れにくくし、バリア層2bの厚さtのばらつきを抑制する目的)から、陽極酸化工程に用いられる部材本体1の表面粗さが小さいことが好ましく、具体的には、部材本体1の表面の十点平均粗さが3.2Rz以下であることが好ましい。表面の十点平均粗さが3.2Rz以下である部材本体1に陽極酸化皮膜2を形成すると、陽極酸化皮膜2の表面の十点平均粗さは6.4Rz以下となる。つまり、陽極酸化皮膜2の表面の十点平均粗さが6.4Rz以下であるマグネシウム合金部材10は、バリア層2bの厚さのばらつきが小さいといえる。
部材本体1の表面粗さを小さくするためには、最表面層を除去する工程(図2に示す工程S4)において、部材本体1の表面を平滑化できるような処理を施せばよい。
例えば、機械的な研磨によって最表面層の除去を行う場合には、研磨具の番手を細かくする(例えば番手が#400〜#500のエメリーペーパーを用いて研磨する)ことにより、部材本体1の表面粗さを小さくすることができる。
また、化学的な手法であるエッチングによって最表面層の除去を行う場合には、処理液(エッチング液)の温度と濃度を従来よりも低くして処理時間を従来よりも長くしてもよい。具体的には、0.1mol/l以上1.0mol/l以下の濃度で25℃以上40℃以下の温度の酸性溶液(例えばりん酸や硝酸)に、部材本体1を60秒以上300秒以下の間浸漬することにより、部材本体1の表面粗さを十分に小さく(例えば十点平均粗さを3.2Rz以下に)することができる。
図7に、本実施形態の製造方法により製造されたマグネシウム合金部材10の断面の顕微鏡写真を示し、図8に、従来の製造方法により製造されたマグネシウム合金部材の断面の顕微鏡写真を示す。これらの顕微鏡写真を用いて断面観察を行って、陽極酸化皮膜およびバリア層の厚さを測定したところ、図7に示すマグネシウム合金部材10では、陽極酸化皮膜2全体の厚さtは5μm以下であり、バリア層2bの厚さtは200nm〜500nmであった。これに対し、図8に示す従来のマグネシウム合金部材では、バリア層の厚さは60nm〜300nmであり、平均値は200nm未満であった。このように、本実施形態の製造方法によれば、従来よりもバリア層2bを厚く形成することができる。
表1および表2に、本実施形態の製造方法により製造されたマグネシウム合金部材10について、EDX分析(エネルギー分散型蛍光X線分析)を行った結果を示す。なお、このEDX分析は、図9に示すように、ポーラス層2aに対応する分析箇所1、2、バリア層2bに対応する分析箇所3、部材本体1に対応する分析箇所4の4箇所について行った。
Figure 2009019269
Figure 2009019269
表1および表2に示したように、バリア層2bのアルミニウム含有率は、ポーラス層2aのアルミニウム含有率よりも高く、この結果から、バリア層2bが主にスピネルから形成され、ポーラス層2aが主に酸化マグネシウムや水酸化マグネシウムから形成されていることがわかる。
続いて、表3に、本実施形態の製造方法により製造されたマグネシウム合金部材10(実施例1〜6)と、従来の製造方法により製造されたマグネシウム合金部材(比較例1〜3)とについて、耐食性と疲労強度とを評価した結果を示す。耐食性は、ASTM―B−117に準拠した塩水噴霧試験を行って評価し、疲労強度は、応力比R=−1で平面曲げ疲労試験を行って評価した。なお、表3に示した実施例1〜6および比較例1〜3の電圧印加条件および陽極酸化工程実行時間は、表4に示す通りである。
Figure 2009019269
Figure 2009019269
表3に示すように、実施例1〜6では、陽極酸化皮膜2の厚さtに対するバリア層2bの厚さtの割合が高く(5%以上20%以下)、バリア層2bが厚いので、耐食性に優れている。また、陽極酸化皮膜2全体の厚さt自体はそれほど大きくないので、疲労強度にも優れている。
これに対し、比較例1、2および3では、陽極酸化皮膜の厚さに対するバリア層の厚さの割合が低い(具体的には5%未満)。そのため、比較例1のようにバリア層が薄くて耐食性が不足したり、比較例2および3のように陽極酸化皮膜が厚くて疲労強度が不足したりすることがある。
なお、表4には、実施例1〜6のそれぞれについて、各陽極酸化工程の実行時間として1秒または0.1秒を例示しているが、各陽極酸化工程の実行時間はさらに短くしてもよく、例えば0.001秒であってもよい。
本実施形態におけるマグネシウム合金部材10は、耐食性および疲労強度に優れているので、図10に示すような自動二輪車100をはじめとする各種の輸送機器に好適に用いられる。
輸送機器は、主に屋外で使用されるため、その構成部材は過酷な環境に曝されることが多いが、本実施形態におけるマグネシウム合金部材10を用いることにより、輸送機器の軽量化を図るとともに、過酷な環境下での腐食を抑制し、輸送機器の耐久性をいっそう向上させることができる。
本実施形態におけるマグネシウム合金部材10は、例えば、図11に示すような、自動二輪車のフレーム20である。あるいは、本実施形態におけるマグネシウム合金部材10は、図12に示すようなクランクケース30や、図13に示すようなホイール40である。勿論、ここで例示したものに限定されず、本実施形態におけるマグネシウム合金製部材10は輸送機器の種々の部材として好適に用いられる。
本発明によると、耐食性および疲労強度の両方に優れたマグネシウム合金部材およびその製造方法が提供される。本発明によるマグネシウム合金部材は、二輪自動車、四輪自動車などの車両や、船舶、飛行機などの各種輸送機器に幅広く用いることができる。
本発明の好適な実施形態におけるマグネシウム合金部材10の断面構造を模式的に示す図である。 マグネシウム合金部材10の製造方法を模式的に示すフローチャートである。 マグネシウム合金部材10の陽極酸化皮膜を形成する工程における印加電圧と時間との関係の一例を示すグラフである。 ある一定電圧で陽極酸化を行ったときの部材本体表面における電圧の推移を表すグラフである。 従来の陽極酸化皮膜を形成する工程における印加電圧と時間との関係を示すグラフである。 マグネシウム合金部材10の陽極酸化皮膜を形成する工程における印加電圧と時間との関係の他の一例を示すグラフである。 マグネシウム合金部材10の断面の顕微鏡写真である。 従来のマグネシウム合金部材の断面の顕微鏡写真である。 マグネシウム合金部材10についてEDX分析を行った箇所を示す写真である。 自動二輪車を模式的に示す側面図である。 自動二輪車のフレームを模式的に示す斜視図である。 クランクケースを模式的に示す分解斜視図である。 ホイールを模式的に示す斜視図である。
符号の説明
1 部材本体
2 陽極酸化皮膜
2a ポーラス層(第1の層)
2b バリア層(第2の層)
10 マグネシウム合金部材
20 フレーム
30 クランクケース
40 ホイール
100 自動二輪車

Claims (16)

  1. アルミニウムを含むマグネシウム合金から形成された部材本体と、
    前記部材本体の少なくとも一部を覆う陽極酸化皮膜と、を有し、
    前記陽極酸化皮膜は、多孔質である第1の層と、前記第1の層と前記部材本体との間に位置し、前記第1の層よりもアルミニウム含有率が高い第2の層と、を含み、
    前記陽極酸化皮膜の厚さに対する前記第2の層の厚さの割合が5%以上20%以下である、マグネシウム合金部材。
  2. 前記第2の層のアルミニウム含有率は、10質量%以上20質量%以下である請求項1に記載のマグネシウム合金部材。
  3. 前記陽極酸化皮膜の厚さは2μm以上5μm以下であり、
    前記第2の層の厚さは200nm以上500nm以下である請求項1または2に記載のマグネシウム合金部材。
  4. 前記第1の層の気孔率は、10%以上であり、
    前記第2の層の気孔率は、10%未満である請求項1から3のいずれかに記載のマグネシウム合金部材。
  5. 前記部材本体の、前記陽極酸化皮膜との界面から100μm以内の領域におけるアルミニウム含有率は、5.5質量%以上10.0質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載のマグネシウム合金部材。
  6. 前記部材本体の、前記陽極酸化皮膜との界面から100μm以内の領域における平均結晶粒径が20μm以下である請求項1から5のいずれかに記載のマグネシウム合金部材。
  7. 前記陽極酸化皮膜の表面の十点平均粗さが6.4Rz以下である請求項1から6のいずれかに記載のマグネシウム合金部材。
  8. アルミニウムを含むマグネシウム合金から形成された部材本体と、
    前記部材本体の少なくとも一部を覆う陽極酸化皮膜と、を備え、
    前記陽極酸化皮膜は、多孔質である第1の層と、前記第1の層と前記部材本体との間に位置し、前記第1の層よりもアルミニウム含有率が高い第2の層と、を含み、
    前記陽極酸化皮膜の厚さは2μm以上5μm以下であり、
    前記第2の層の厚さは200nm以上500nm以下であるマグネシウム合金部材。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載のマグネシウム合金部材を備えた輸送機器。
  10. アルミニウムを含むマグネシウム合金から形成された部材本体を用意する工程と、
    前記部材本体の表面に陽極酸化皮膜を形成する工程と、を包含し、
    前記陽極酸化皮膜を形成する工程は、
    所定の電圧で所定の時間、前記部材本体の陽極酸化を行う陽極酸化工程を複数回繰り返し行うことによって実行され、
    2回目以降の陽極酸化工程は、前回の陽極酸化工程よりも高い電圧で行われる、マグネシウム合金部材の製造方法。
  11. 前記陽極酸化工程は、40V以上150V以下の電圧で行われる請求項10に記載のマグネシウム合金部材の製造方法。
  12. 前記陽極酸化工程は、0.001秒以上120秒以下の時間行われる請求項10または11に記載のマグネシウム合金部材の製造方法。
  13. 2回目以降の陽極酸化工程は、前回の陽極酸化工程よりも0.5V以上5.0V以下高い電圧で行われる請求項10から12のいずれかに記載のマグネシウム合金部材の製造方法。
  14. 前記陽極酸化工程は5回以上繰り返し行われる、請求項10から13のいずれかに記載のマグネシウム合金部材の製造方法。
  15. 前記部材本体を用意する工程は、アルミニウムを含むマグネシウム合金から前記部材本体をダイキャスト法により成形する工程を包含する、請求項10から14のいずれかに記載のマグネシウム合金部材の製造方法。
  16. 前記陽極酸化皮膜を形成する工程の前に、0.1mol/l以上1.0mol/l以下の濃度で25℃以上40℃以下の温度の酸性溶液に、前記部材本体を60秒以上300秒以下の間浸漬する工程をさらに包含する請求項10から15のいずれかに記載のマグネシウム合金部材の製造方法。
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