JP7426835B2 - ポーラスアルミナシートおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、陽極酸化により形成されたポーラスアルミナシートおよびその製造方法に関する。
アルミニウムを酸性浴中で陽極酸化することにより、アルミニウム上には多孔質の酸化皮膜であるポーラスアルミナシートが形成される。このようなポーラスアルミナシートには、ポーラスアルミナシートの表面に開口しておりかつ長手方向が該表面に垂直な方向に沿っている細孔が複数形成されている。各細孔は、ナノからサブミクロンサイズの均一な径を有している。このようなポーラスアルミナシートは、フィルター、触媒担体、および鋳型材料等の様々な応用が期待される機能性材料である。
特に、アルミニウム材から剥離されたポーラスアルミナシートは、フィルター用途などメンブレンとして使用できる。
国際公開第2014-020939号公報(特許文献1)には、陽極酸化により、溶解性の異なるアルミナ層が2層以上積層された構造を有するポーラスアルミナシートを形成し、該ポーラスアルミナシートをエッチャントに浸漬した後、溶解性の高いアルミナ層を選択的に溶解除去することにより、溶解性の低いアルミナ層を細孔が貫通孔化されたスルーホールメンブレンに形成することを特徴とするアルミナスルーホールメンブレンの製造方法が開示されている。
また、特開2018-3048号公報(特許文献2)には、細孔周期が、700nmを超えるほどに大きな細孔周期を有し、大面積に対して適用可能であり、ロール状の地金に対しても適用可能なポーラスアルミナの製法方法が提案されている。
国際公開第2014-020939号公報 特開2018-3048号公報
ポーラスアルミナシートは、複数の細孔が形成されたセラミックであるため、脆い。そのため、ポーラスアルミナシートの表面の微小領域に外力が加えられるだけで、クラックが生じやすいという問題がある。
本発明の主たる目的は、従来のポーラスアルミナシートと比べて、ポーラスアルミナシートの表面の微小領域に外力が加えられたときにもクラックが生じにくいポーラスアルミナシートおよびその製造方法を提供することにある。
本発明に係るポーラスアルミナシートは、第1面と、第1面とは反対側に位置する第2面とを有する。ポーラスアルミナシートには、第1面から第2面に貫通する複数の貫通孔が形成されている。複数の貫通孔の各々は円柱形状を有しており、複数の貫通孔の各々の孔径は、0.5μm以下である。ポーラスアルミナシートの嵩密度は1.0g/cm3以上である。一辺の長さが80μmである矩形視野内において、第1面および第2面の各々の平均面粗さSaが15nm以下である。上記矩形視野内において、第1面および第2面の各々の平均面粗さSzJISが150nm以下である。
本発明によれば、従来のポーラスアルミナシートと比べて、ポーラスアルミナシートの表面の微小領域に外力が加えられたときにもクラックが生じにくいポーラスアルミナシートおよびその製造方法を提供することができる。
実施の形態に係るポーラスアルミナシートを示す側面図である。 図1中の矢印IIから視た平面図である。 図2中の線分III-IIIから視た断面図である。 図2中の線分IV-IVから視た端面図である。 図4中の線分V-Vから視た断面図である。 図4中の線分VI-VIから視た断面図である。 実施の形態に係るポーラスアルミナシートの製造方法の一工程を示す側面図である。 実施の形態に係るポーラスアルミナシートの製造方法の、図7に示される一工程後の一工程を示す側面図である。 実施の形態に係るポーラスアルミナシートの製造方法の、図8に示される一工程後の一工程を示す平面図である。 図9中の線分X-Xから視た断面図である。 実施の形態に係るポーラスアルミナシートの製造方法の、図9および図10に示される一工程後の一工程を示す断面図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
<ポーラスアルミナシートの構成>
図1に示されるように、ポーラスアルミナシート1は、第1面1A、第2面1B、および外周面1Cを有している。第2面1Bは、第1面1Aの反対側に位置している。外周面1Cは、第1面1Aおよび第2面1Bをつないでいる。図2に示されるように、第1面1Aおよび第2面1Bの各々の平面形状は、例えば矩形である。図1に示されるように、外周面1Cは、例えば矩形形状を有している1つの平面が第1面1Aの周方向に4つ連なって構成されている。なお、第1面1Aおよび第2面1Bの各々の平面形状は、任意に設定され得る。第1面1Aおよび第2面1Bの各々の平面形状は、例えば円形または楕円形であってもよいし、三角形、五角形、もしくは六角形またはこれらの角が丸みを帯びた形状であってもよい。
図3に示されるように、ポーラスアルミナシート1には、第1面1Aから第2面1Bに貫通する複数の貫通孔1Dが形成されている。各貫通孔1Dは、陽極酸化により形成された貫通孔である。複数の貫通孔1Dの各孔軸は、第1面1Aおよび第2面1Bと交差する方向に沿って延びている。複数の貫通孔1Dの各々は、円柱形状を有している。第1面1Aおよび第2面1B上での各貫通孔1Dの平面形状は、円形状である。ここでの円は、真円および楕円を含む。複数の貫通孔1Dは、第1面1Aに沿った方向において互いに間隔を隔てて配置されている。各貫通孔1Dの孔径は、陽極酸化により形成され得る任意の孔径であればよいが、例えば0.5μm以下である。各貫通孔1Dの孔径は、例えば0.1nm以上である。各貫通孔1Dの間隔は、陽極酸化により形成され得る任意の間隔であればよいが、例えばサブナノメートルからサブミクロンのオーダーの範囲内である。各貫通孔1Dの孔軸は、例えば屈曲していてもよい。ポーラスアルミナシート1には、円柱形状を有する複数の貫通孔1Dの他に、例えば枝分かれした構造を有する貫通孔がさらに形成されていてもよい。なお、図2において、貫通孔1Dの図示は省略されている。
一辺の長さが80μmである矩形視野内において、第1面1Aおよび第2面1Bの各々の平均面粗さSaが15nm以下である。平均面粗さSaは、JIS B0601(2001年版)およびISO4287(1997年版)で定義されている算術平均粗さRaを、観察された表面全体に適用できるように三次元に拡張して算出された値である。
一辺の長さが80μmである矩形視野内において、第1面1Aおよび第2面1Bの各々の平均面粗さSzJISが150nm以下である。平均面粗さSzJISは、JIS B0601(2001年版)およびISO4287(1997年版)で定義されている十点平均粗さRzJISを、観察された表面全体に適用できるように三次元に拡張して算出された値である。
例えば、原子間力顕微鏡(AFM)により上記矩形視野(指定面)内にて観察された三次元の表面凹凸から最小二乗近似により曲面を求め、かつ該曲面に三次曲面自動傾き補正を施すことによって、三次元凹凸データを得る。平均面粗さSaは、上記指定面内の上記三次元凹凸データの高さの平均値に対する上記三次元凹凸データ上の各点の高さまたは深さの絶対値の平均値として算出される。具体的には、平均面粗さSaは、以下の式(1)で表される。
Figure 0007426835000001
なお、上記式(1)において、S0は、指定面(座標(X1,Y1)(X1,Y2)(X2,Y1)(X2,Y2)の4点で表される四角形の領域)が理想的にフラットであると仮定したときの面積を指す。Z0は、指定面内における上記三次元凹凸データのZ方向の高さの平均値を指す。
平均面粗さSzJISは、上記指定面内において上記三次元凹凸データの高さの平均値に対する上記三次元凹凸データ上の各点の高さが最も高い点から5番目までの各点の高さの絶対値の平均値と、上記指定面内において上記三次元凹凸データの高さの平均値に対する上記三次元凹凸データ上の各点の深さが最も深い点から5番目までの各点の深さの絶対値の平均値との和として算出される。
本発明者らは、ポーラスアルミナシート1の第1面1Aおよび第2面1Bの各々の平均面粗さSaが15nmよりも大きいと、耐クラック性は低くなることを確認した。第1面1Aおよび第2面1Bの各々の平均面粗さSaが15nmよりも大きいと、ポーラスアルミナシート1のハンドリング時またはポーラスアルミナシート1の使用時にポーラスアルミナシート1に外力が加えられたときに、ポーラスアルミナシート1にクラックが発生しやすくなる。ポーラスアルミナシート1の耐クラック性を高める観点から、好ましくは、平均面粗さSaは10nm以下である。
本発明者らは、ポーラスアルミナシート1の第1面1Aおよび第2面1Bの各々の平均面粗さSaが15nm以下であっても、第1面1Aおよび第2面1Bの各々の平均面粗さSzJISが150nmよりも大きいと、ポーラスアルミナシート1の耐クラック性は低くなることを確認した。平均面粗さSzJISは、第1面1Aおよび第2面1Bの各々の平均面粗さSaが十分に小さくても、第1面1Aまたは第2面1Bの少なくともいずれかに、極端に高い山および極端に深い谷の少なくともいずれかが少数存在するだけで、大きくなる。極端に高い山および極端に深い谷の少なくともいずれかが少数存在する第1面1Aまたは第2面1Bの微小領域に外力が加えられると、上記山および上記谷に応力が集中し、その結果ポーラスアルミナシート1にクラックが入りやすくなる、と推測される。
ポーラスアルミナシート1は、アルミナ(Al23)を含む。ポーラスアルミナシート1の残部は、不純物からなる。該不純物は、例えば不可避不純物であるが、不可避不純物の他に微量の不純物を含んでいてもよい。上記不純物は、例えば珪素(Si)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)、炭素(C)、りん(P)、セレン(Se)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、およびビスマス(Bi)等からなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む。
ポーラスアルミナシート1の嵩密度は、1.0g/cm3以上である。ポーラスアルミナシート1の嵩密度は、複数の貫通孔1D内に形成される空間の体積を含むポーラスアルミナシート1の見かけの体積に対するポーラスアルミナシート1の重量の比率である。嵩密度が1.0g/cm3より低いと、ポーラスアルミナシート1の第1面1Aおよび第2面1Bの耐クラック性が著しく低下する。嵩密度が低くなるほど、第1面1Aまたは第2面1Bに沿った方向において各貫通孔1D間に存在するアルミナが少なくなるため、第1面1Aおよび第2面1Bにクラックが入りやすくなる。好ましくは、ポーラスアルミナシート1の嵩密度は1.1g/cm3以上である。好ましくは、ポーラスアルミナシート1の嵩密度は、3.9g/cm3以下である。嵩密度が3.9g/cm3より大きいと、各貫通孔1Dの径が小さくなって一部の貫通孔1Dが塞がるおそれが生じる。このようなポーラスアルミナシート1は、フィルター等に使用できなくなる可能性がある。
ポーラスアルミナシート1は、アルミニウム基材2(図8参照)と該アルミニウム基材2上に陽極酸化により形成されたポーラスアルミナ層3(図8参照)との積層体4(図8参照)から切り出されたシートである。
図1および図4に示されるように、ポーラスアルミナシート1の外周面1Cの上記周方向の少なくとも一部は、第1面1Aから第2面1B側へ延びる第1外周領域11と、第1外周領域11から第2面1Bに達する第2外周領域12とを有している。外周面1Cは、第1外周領域11と第2外周領域12とが上記交差する方向に積層した2層構造を有している。図4に示されるように、第2外周領域12において、外周面1Cには、第2面1Bから第1面1A側へ延びておりかつ第1外周領域11と第2外周領域12との境界で終端する複数の溝1Eが形成されている。複数の溝1Eは、第1外周領域11には形成されていない。なお、図1において、溝1Eの図示は省略されている。
各溝1Eは、陽極酸化により複数の貫通孔1Dと同時に形成されたポーラスアルミナ層中の貫通孔を平面視したときの当該貫通孔の一部であり、かつ上記貫通孔の上記交差する方向の一部である。各溝1Eは、後述するポーラスアルミナシート1の製造方法においてポーラスアルミナシート1を積層体4から分離する工程により、ポーラスアルミナ層中の上記貫通孔の第2面1B側に位置する一部が平面視において分割されることにより、形成されている。他方、ポーラスアルミナ層中の上記貫通孔の第2面1B側に位置する残部は、後述するポーラスアルミナシート1を積層体4から分離する工程において、潰される。これにより、第1外周領域11には、上記貫通孔に由来する溝1Eが形成されていない。すなわち、外周面1Cは、ポーラスアルミナ層中の貫通孔の一部が潰れている第1外周領域11と、ポーラスアルミナ層中の貫通孔の残部が溝1Eとして残存している第2外周領域12とが上記交差する方向に積層した2層構造を有している。
図4に示されるように、各溝1Eは、上記交差する方向に沿って延びている。図5に示されるように、各溝1Eの上記交差する方向に垂直な断面形状は例えば円弧である。複数の溝1Eの上記周方向の幅は、0.5μm以下である。複数の溝1Eの上記交差する方向の幅は、第2外周領域12の上記交差する方向の厚みに等しく、ポーラスアルミナシート1の第1面1Aと第2面1Bとの間の厚みT1よりも狭い。ポーラスアルミナシート1の厚みT1に対する第1外周領域11の厚みT2の比率は、10%以上90%以下である。
本発明者らは、外周面1Cが第1外周領域11および第2外周領域12を有するポーラスアルミナシート1では、外周面1Cが第1外周領域11のみからなるポーラスアルミナシート、および外周面1Cが第2外周領域12のみからなるポーラスアルミナシートと比べて、ポーラスアルミナシート1を積層体4から分離する工程時に、外周面から内部に進展したクラックおよび割れの発生が抑制されていることを確認した。
外周面1Cが第1外周領域11および第2外周領域12を有するポーラスアルミナシート1では、該ポーラスアルミナシートを積層体から分離する工程時に第1外周領域11の近傍でクラックが発生したとしても、該クラックが上記交差する方向に進展しやすいために、クラックが内部に進展することが抑制されていると推測される。また、ポーラスアルミナシート1では、上記交差する方向に進展したクラックが、第2外周領域12の形成に寄与していると推測される。
外周面が第2外周領域12のみからなるポーラスアルミナシートでは、該ポーラスアルミナシートをポーラスアルミナ層から切り出す必要がある。このとき、該ポーラスアルミナシートの全体が脆いため、外周面近傍で発生したクラックおよび割れが内部に進展しやすいと推測される。外周面が第1外周領域11のみからなるポーラスアルミナシートでは、該ポーラスアルミナシートを積層体から分離する工程時に第1外周領域の近傍で発生したクラックおよび割れがポーラスアルミナシートにおいて上記交差する方向に進展する余地がないため、当該クラック等はポーラスアルミナシートの内部に進展しやすいと推測される。
ポーラスアルミナシート1の厚みT1は、18μm以上100μm以下である。厚みT1が18μmよりも薄いポーラスアルミナシート1では、厚みT1が18μm以上であるポーラスアルミナシート1と比べて、ポーラスアルミナシート1に対する加工時にクラックおよび割れが生じやすく、また形状維持が困難であった。厚みT1が100μmよりも厚いポーラスアルミナシート1では、厚みT1が100μm以下であるポーラスアルミナシート1と比べて、後述するポーラスアルミナシート1を積層体4から分離する工程においてクラックおよび割れが生じやすかった。
<ポーラスアルミナシートの製造方法>
本実施の形態に係るポーラスアルミナシート1の製造方法は、アルミニウム基材2を準備する工程(S10)、アルミニウム基材2に対する陽極酸化によりアルミニウム基材2とポーラスアルミナ層3とが積層した積層体4を形成する工程(S20)、ポーラスアルミナ層3に切り込みを入れる工程(S30)、および積層体4からポーラスアルミナシート1を分離する工程(S40)を備える。
はじめに、アルミニウム基材2が準備される(工程(S10))。本工程(S10)では、図7に示されるように、平均面粗さSaが10nm以下、SzJISが150nm以下である第3面2Aを有するアルミニウム基材2が準備される。
まず、鋳塊を準備する。具体的には、所定の組成のアルミニウムの溶湯を調製し、アルミニウムの溶湯を凝固させて鋳造することにより鋳塊が準備される。溶湯は、例えば溶解されたアルミニウム地金に、鉄またはアルミニウム-鉄母合金、およびマンガンまたはアルミニウム-マンガン母合金を添加することにより準備される。鋳造方法は、特に制限されないが、例えば半連続鋳造、連続鋳造、または金型鋳造である。溶湯中の珪素(Si)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、およびマグネシウム(Mg)の各含有量は、アルミニウム基材2のアルミニウム純度が99.9質量%以上となるように制御されていることが好ましい。溶湯中のアルミニウム以外の金属元素は少ないほど好ましい。より好ましくは、溶湯中のアルミニウム純度は99.95質量%以上である。
次に、得られた鋳塊に均質化処理を行う。均質化熱処理は、一般的な操業条件の範囲内であればよいが、例えば加熱温度を400℃以上630℃以下、加熱時間を1時間以上20時間以下とする条件で行われる。
次に、鋳塊を熱間圧延する。本工程により、所定の厚みを有する熱延材が得られる。熱間圧延は、1回または複数回行われてもよい。なお、連続鋳造によって薄板のアルミニウム鋳塊を製造する場合には、当該薄板状の鋳塊は本工程を介さずに冷間圧延されてもよい。
次に、熱間圧延により得られた熱延材を冷間圧延する。本工程において、冷間圧延は例えば中間焼鈍工程を挟んで複数回行われる。中間焼鈍は、一般的な操業条件の範囲内であればよいが、例えば焼鈍温度を50℃以上500℃以下、焼鈍時間を1秒以上20時間以下とする条件で行われる。
次に、冷延材を最終仕上げ冷間圧延する。本工程では、圧延ロールを用いて被圧延材を最終仕上げ冷間圧延する。圧延ロールは被圧延材と接触して圧延するロール面を有している。被圧延材を挟んで配置される一対の圧延ロールのうち、少なくとも被圧延材に対してアルミニウム基材2の第3面2Aが形成される側に配置された一方の圧延ロールのロール面の算術平均粗さRaが50nm以下である。算術平均粗さRaが50nmより大きい圧延ロールを用いて被圧延材を圧延すると、得られるアルミニウム基材の表面の平均面粗さSaは10nm以上となる。本工程で使用する圧延ロールの算術平均粗さRaは、できるだけ小さいことが好ましく、より好ましくは40nm以下である。
最終仕上げ冷間圧延工程における圧下率は20%以上で行う。一般的に圧下率が低くなると、圧延ロールとアルミニウム基材との間にかみこまれる圧延油膜量が増える傾向にある。このため、圧延工程後のアルミニウム基材の表面に圧延油が押し込まれてできる深さが数十~数百nmのオイルピットが増える。その結果、得られたアルミニウム基材の表面は、オイルピットによる凹凸が増えてしまう。20%よりも小さい圧下率で冷間圧延を行うと、得られるアルミニウム基材の平均面粗さSzJISは、オイルピットによる凹凸に大きく影響され、150nmよりも大きくなる。圧下率の上限値は、圧延性を考慮して、50%であるのが好ましい。
最終仕上げ冷間圧延に使用する圧延油の種類は特に限定されないが、圧延油の粘度は低い方が好ましい。この理由は、圧延油の粘度が低い方が、圧延ロールとアルミニウム基材との間にかみこまれる圧延油の潤滑がより高くなり、最終仕上げ冷間圧延工程中にアルミニウム基材の表面に押し込まれてできるオイル溜りが生成しにくくなるため、当該工程後のアルミニウム基材の表面に存在するオイルピットが低減できる。好ましくは油温度が37.8℃(100°F)の時の粘度が1.7cSt以上3.5cSt以下であることが好ましく、より好ましくは2.0cSt以上3.0cSt以下である。
このような上記工程(S10)により、平均面粗さSaが10nm以下、SzJISが150nm以下である第3面2Aを有するアルミニウム基材2が準備される。なお、最終仕上げ冷間圧延後に、アルミニウム基材2の第3面2Aとなるべき面に対して電解研磨、化学研磨、切削またはバフ研磨が実施されてもよい。つまり、第3面2Aは、最終仕上げ冷間圧延により形成された面であってもよいし、最終仕上げ冷間圧延後に電解研磨、化学研磨、切削またはバフ研磨が実施されることにより形成された面であってもよい。
次に、アルミニウム基材2の第3面2Aに対する陽極酸化により積層体4が形成される(工程(S20))。本工程は一般的に公知となっている陽極酸化処理方法により実施され得る。陽極酸化処理は、例えば硫酸浴、シュウ酸浴、マロン酸浴、酒石酸浴、セレン酸浴、ホスホン酸浴、エチドロン酸浴、ホスホノ酢酸浴およびリン酸浴からなる群から選択される少なくとも1つを電解液とし、これにアルミニウム基材を浸漬させて陽極とし、該電解液中に浸漬させた他の電極を陰極とし、これらの間を通電することにより行われる。陽極酸化処理方法の各条件は、陽極酸化皮膜の厚み、すなわちポーラスアルミナシート1の厚みT1、が18μm以上100μm以下となるように適宜選択される。このようにして、図8に示される、アルミニウム基材2とポーラスアルミナ層3との積層体4が形成される。積層体4において露出しているポーラスアルミナ層3の上面の一部が、ポーラスアルミナシート1の第1面1Aとなる。積層体4においてアルミニウム基材2と接しているポーラスアルミナ層3の下面の一部が、ポーラスアルミナシート1の第2面1Bなる。
次に、ポーラスアルミナ層3に切り込みを入れる(工程(S30))。図9および図10に示されるように、ポーラスアルミナ層3に対し、その上面側から当該上面と交差する方向に、メッサー刃などのアルミナに対して切り込みを入れることができる刃具20を入れる。図10に示されるように、刃具20の刃先は、アルミニウム基材2とポーラスアルミナ層3との境界に達しないように、ポーラスアルミナ層3内で止められる。ポーラスアルミナ層3の上面に対する切り込みの深さが、上述した第1外周領域11の上記厚みT2となる。好ましくは、切り込みの上記深さは、ポーラスアルミナシート1の厚みT1の10%以上90%以下となるように、設定される。刃具20は、その刃先が上記深さまで入れられた後、ポーラスアルミナ層3から抜かれる。このようにポーラスアルミナ層3において切り込まれた部分は、ポーラスアルミナシート1において第1外周領域11を構成する。なお、図9および図10において、貫通孔1Dおよび溝1Eの図示は省略されている。
図9に示されるように、ポーラスアルミナ層3を平面視したときに、上記切り込みの外形状は、例えばポーラスアルミナシート1の外周面1Cの平面形状と略相似の関係となる。上記切り込みの外形状は、例えば矩形である。上記切り込みの平面形状は、例えば刃具20の平面形状と略相似の関係となる。この場合、ポーラスアルミナ層3に刃具20を1回入れることにより、外形状がポーラスアルミナシート1の外周面1Cの平面形状と略相似する上記切り込みが形成される。なお、ポーラスアルミナ層3に刃具20を複数回入れることにより、該形状がポーラスアルミナシート1の外周面1Cの平面形状と略相似する上記切り込みが形成されてもよい。
本工程(S30)では、ポーラスアルミナ層3において刃具20が入れられる領域に形成された貫通孔の一部が、刃具20によって潰される。
次に、積層体4からポーラスアルミナシート1を分離する(工程(S40))。本工程での分離方法は公知の分離方法により実施され得る。例えば、まず過塩素酸エタノール溶液中に、陽極としてポーラスアルミナ層3に上記切り込みが入れられた積層体4を配置し、かつ陰極としてアルミニウム板を配置する。次に、陽極と陰極との間に、上記工程(S30)での陽極酸化処理時の通電電圧よりも高い電圧を印加して通電する。これにより、図11に示されるように、積層体4のアルミニウム基材2とポーラスアルミナ層3とが分離すると同時に、ポーラスアルミナ層3において上記切り込みが入れられている部分を外周端部とするポーラスアルミナシート1が切り出される。なお、図11において、貫通孔1Dおよび溝1Eの図示は省略されている。
本工程(S40)によってポーラスアルミナシート1が分離される理由としては、上記分離処理によって、先の工程(S30)にてポーラスアルミナ層3に形成された切り込みからポーラスアルミナ層3に対して交差する方向にクラックが進展するためと考えられる。なお、切り込みの上記深さがポーラスアルミナシート1の厚みT1の10%以上90%以下となるように設定されていれば、本工程(S40)において外周面1Cから内部に進展するクラックおよび割れの発生を抑制できる。
本工程(S40)における分離方法は、上述した例に限られるものではなく、上記特許文献1に記載されている方法であってもよい。また、分離方法は、陽極酸化処理の終了時の通電電圧を開始時の通電電圧よりも下げることによって陽極酸化処理時にポーラスアルミナ層3の底部に存在するアルミナバリア層を薄くし、その後陽極酸化処理により形成された積層体4をリン酸水溶液に浸漬して上記アルミナバリア層を溶かす、という方法であってよい。これらの分離方法によっても、予め上記工程(S30)が実施されていることにより、ポーラスアルミナシート1が積層体4から分離される。
上記工程(S40)の後、ポーラスアルミナシート1を酸性浴中に浸漬する工程がさらに実施されてもよい。この工程により、ポーラスアルミナシート1の底部に残存するアルミナバリア層、およびポーラスアルミナシート1の表面に存在する封孔水和物を除去し、かつ貫通孔の孔径を広げることができる。なお、酸性浴に用いられる溶液はアルミナが溶解するものであれば特に限定されないが、好ましくはリン酸である。ポーラスアルミナシート1は、上述した製造方法により製造され得る。
なお、上記工程(S30)では、切り込みの上記深さが、ポーラスアルミナシート1の厚みT1の10%よりも小さく、または90%よりも大きくなるように設定されてもよい。切り込みの上記深さはポーラスアルミナシート1の厚みT1と等しくなるように設定されてもよい。また、上記工程(S30)は実施されず、ポーラスアルミナ層3に切り込みを入れずに、上記工程(S40)を実施してもよい。
以下に説明するように本実施の形態の実施例と比較例のポーラスアルミナシートの試料を作製し、それらの耐クラック性および上記積層体からポーラスアルミナシートを分離する工程でのクラックおよび割れの生じやすさ(ポーラスアルミナシートを指定形状に切り出す工程でのクラックおよび割れの生じやすさ)を評価した。
まず、以下に示す製造工程に従って、実施例1~14および比較例1~8の各アルミニウム基材を作製した。
DC鋳造によって得られたアルミニウム純度99.98質量%のアルミニウムの鋳塊を加熱炉にて均質化熱処理を行った。均質化熱処理は、加熱温度を400℃以上630℃以下、加熱時間を1時間以上20時間以下とする条件で行った。その後、厚みが約6.5mmになるまで熱間圧延を行った。得られた熱間圧延材に対し、厚みが所定の値になるまで、複数回の冷間圧延を行った。複数回の冷間圧延は中間焼鈍を挟んで行われた。これにより、厚みが100μm~350μmであるアルミニウム基材を作製した。
この際、実施例1~14および比較例1については、最終仕上げ冷間圧延において算術平均粗さRaが40nmの圧延ロールを使用して圧延を行った。比較例2,3については、最終仕上げ冷間圧延において算術平均粗さRaが50nmの圧延ロールを使用して圧延を行った。比較例4,5,8については、最終仕上げ冷間圧延において算術平均粗さRaが100nmの圧延ロールを使用して圧延を行った。比較例6,7については、最終仕上げ冷間圧延において算術平均粗さRaが150nmの圧延ロールを使用して圧延を行った。
さらに、実施例5および比較例3,5,7については、最終仕上げ冷間圧延により得られたアルミニウム基材の第3面となるべき面(圧延ロールに圧延された面)に対し、電解研磨を行った。電解研磨は、5質量%の過塩素酸エタノール溶液中に、アルミニウム基材を電圧25Vの条件で3分間浸漬させることにより行った。
このようにして作製された各アルミニウム基材の第3面の平均面粗さSaおよび平均面粗さSzJISは、表1および表2に示す通りである。なお、第3面の平均面粗さSaおよび平均面粗さSzJISの測定方法は、後述する。
次に、実施例1~14および比較例1~8の各アルミニウム基材に対し、陽極酸化処理を行った。各試料の陽極酸化処理の条件は表1,2に示す通りである。各試料を電解液に浸漬させて陽極とし、これと陰極との間に電圧を所定の時間印加し、陽極酸化処理を行った。なお、陽極酸化処理時の印加電圧は、いずれの試料においても直流定電圧とした。各試料の処理時間は、所定の厚みのポーラスアルミナ層が得られる時間とした。このようにして、アルミニウム基材とポーラスアルミナ層との積層体を作製した。なお、いずれの積層体においても、ポーラスアルミナ層に形成された複数の貫通孔の各々は円柱形状を有しており、かつ各孔径は0.5μm以下であった。
次に、実施例1~12,14および比較例1~8の上記積層体のポーラスアルミナ層に、メッサー刃を用いて切り込みを入れた。上記平面視における切り込みの外形状は、矩形状とした。実施例1~10および比較例1~8の切り込みの深さは、ポーラスアルミナシートの厚みT1の30%となるように設定した。実施例11の切り込みの深さは、ポーラスアルミナシートの厚みT1の10%となるように設定した。実施例12の切り込みの深さは、ポーラスアルミナシートの厚みT1の90%となるように設定した。実施例14の切り込みの深さは、ポーラスアルミナシートの厚みT1の100%となるように設定した。つまり、実施例14では、メッサー刃がアルミニウム基材とポーラスアルミナ層との境界まで入れられた。
なお、実施例13の上記積層体のポーラスアルミナ層には、上記のような切り込みを入れなかった。実施例13のポーラスアルミナシートを製造する方法では、上記工程(S30)を実施せずに、上記工程(S40)を実施した。
次に、実施例1~14および比較例1~8の積層体からポーラスアルミナシートを分離した。分離処理では、5質量%で5℃の過塩素酸エタノール溶液中に陽極として上記積層体を配置し、かつ陰極としてアルミニウム板を配置した後、陽極と陰極との間に上記陽極酸化時の通電電圧よりも10V高い電圧を2分間印加した。これにより、各積層体から、実施例1~12,14および比較例1~8のポーラスアルミナシートを分離した。実施例13については、上記分離処理によって上記積層体から分離されたポーラスアルミナ層から、実施例1~12,14および比較例1~8のポーラスアルミナシートと同じ平面形状のシートをメッサー刃により切り出した。
さらに、実施例2~8および比較例1~8の各ポーラスアルミナシートを、10質量%で30℃のリン酸水溶液に所定時間浸漬した。浸漬時間は表1,2に示すとおりである。
Figure 0007426835000002
Figure 0007426835000003
<評価方法>
上述のように作製された実施例1~14および比較例1~8の積層体からポーラスアルミナシートを、以下の評価方法により評価した。評価結果は表3,4に示される。
Figure 0007426835000004
Figure 0007426835000005
各ポーラスアルミナシートの厚みは、TSUGAMI製のマイクロゲージで測定した。
アルミニウム基材およびポーラスアルミナシートの平均面粗さSaおよび平均面粗さSzJISの算出は、株式会社日立ハイテクサイエンス製の走査型プローブ顕微鏡AFM5000IIを用いて行った。具体的には、アルミニウム基材の第3面およびポーラスアルミナシートの第1面および第2面の各々について、上記原子間力顕微鏡のプローブを80μm×80μmの矩形の視野でダイナミックフォースモード方式(非接触)により走査して、表面凹凸を観察した。
得られた表面凹凸から最小二乗近似により曲面を求め、かつ該曲面に三次曲面自動傾き補正を施すことによって、三次元凹凸データを得た。平均面粗さSaは、上記凹凸データから、上記式(1)に基づいて算出した。平均面粗さSzJISは、上記矩形視野(指定面)内において上記三次元凹凸データの高さの平均値に対する上記三次元凹凸データ上の各点の高さが最も高い点から5番目までの各点の高さの絶対値の平均値と、上記指定面内において上記三次元凹凸データの高さの平均値に対する上記三次元凹凸データ上の各点の深さが最も深い点から5番目までの各点の深さの絶対値の平均値との和として算出した。上記測定を無作為の位置に3回行い、それぞれ得られた測定値の平均値をそれぞれSa,SzJIS値とした。
ポーラスアルミナシートの嵩密度は、Micromeritics社製のポロシメーターAutoPore IV 9500 Version 2.02により測定された複数の貫通孔内に形成される空間の全体積を含む各ポーラスアルミナシートの見かけの体積と各ポーラスアルミナシートの全体重量から算出した。
耐クラック性の評価は、ビッカース硬度計を用い、対面角が136°の正四角錘形状を有するダイヤモンド圧子をポーラスアルミナシートの第1面および第2面の各々に押し当てて耐クラック荷重を評価することにより行った。具体的には、圧子押し当て荷重を0.05kgf、0.10kgf、0.20kgf、0.30kgf、0.50kgf、1.00kgfと段階的に大きくしていき、それぞれの荷重で圧子を第1面または第2面に5秒間押し当てた。第1面または第2面とも上記それぞれの荷重で無作為の位置に5回ずつ押し当て、1度もクラックが圧痕より外側に入らない最大荷重を耐クラック荷重とした。なお、圧子を0.05kgfで押し当てたときにクラックが確認された表面の耐クラック荷重は、0.00kgfとした。ビッカース硬度計は、島津製作所製ビッカース硬度計HMV-1を用いた。
ポーラスアルミナシートの厚みに対する第1外周領域の厚みの比率T2/T1は、各ポーラスアルミナシートの外周面を電子顕微鏡(SEM)により1000倍の視野で3箇所観察することにより算出した。第1外周領域の厚みT2は、ポーラスアルミナシートの外周面において貫通孔に由来する溝が潰されている領域の厚みとして測定した。
上記積層体からポーラスアルミナシートを分離する工程でのクラックおよび割れの生じやすさは、上記積層体からポーラスアルミナシートを分離する工程でのクラックおよび割れの有無を目視により評価した。
表1~表4に示されるように、嵩密度は1.0g/cm3以上であり、一辺の長さが80μmである矩形視野内において第1面および第2面の各々の平均面粗さSaが15nm以下であり、かつ上記矩形視野内において第1面および第2面の各々の平均面粗さSzJISが150nm以下である実施例1~14のポーラスアルミナシートでは、第1面の耐クラック荷重が0.50kgf以上であり、かつ第2面の耐クラック荷重が0.30kgf以上であった。
これに対し、嵩密度が1.0g/cm3未満である点で実施例1~14とは異なる比較例1のポーラスアルミナシートでは、第2面のクラック荷重が0.10kgfであった。
上記矩形視野内において第1面および第2面の各々の平均面粗さSzJISが150nmよりも大きい点で実施例1~14とは異なる比較例2のポーラスアルミナシートでは、第2面のクラック荷重が0.10kgfであった。
一辺の長さが80μmである矩形視野内において第1面および第2面の各々の平均面粗さSaが15nmよりも大きく、かつ上記矩形視野内において第1面の平均面粗さSzJISが150nmよりも大きい点で実施例1~14とは異なる比較例3のポーラスアルミナシートでは、第2面のクラック荷重が0.20kgfであった。
嵩密度は1.0g/cm3よりも小さく、一辺の長さが80μmである矩形視野内において第1面および第2面の各々の平均面粗さSaが15nmよりも大きく、かつ上記矩形視野内において第1面および第2面の各々の平均面粗さSzJISが150nmよりも大きい比較例4のポーラスアルミナシートでは、第1面の耐クラック荷重が0.20kgfであり、かつ第2面の耐クラック荷重が0.05kgfであった。
嵩密度は1.0g/cm3よりも小さく、一辺の長さが80μmである矩形視野内において第1面の平均面粗さSaが15nmよりも大きく、かつ上記矩形視野内において第1面の平均面粗さSzJISが150nmよりも大きい比較例5のポーラスアルミナシートでは、第2面の耐クラック荷重が0.20kgfであった。
一辺の長さが80μmである矩形視野内において第1面および第2面の各々の平均面粗さSaが15nmよりも大きく、かつ上記矩形視野内において第1面および第2面の各々の平均面粗さSzJISが150nmよりも大きい比較例6,7の各ポーラスアルミナシートでは、第1面の耐クラック荷重が0.05kgfであり、かつ第2面の耐クラック荷重が0.00kgfであった。
一辺の長さが80μmである矩形視野内において第1面および第2面の各々の平均面粗さSaが15nmよりも大きく、かつ上記矩形視野内において第1面および第2面の各々の平均面粗さSzJISが150nmよりも大きい比較例8のポーラスアルミナシートでは、第2面の耐クラック荷重が0.05kgfであった。
以上の結果から、実施例1~14のポーラスアルミナシートは、嵩密度、第1面および第2面の平均面粗さSa、ならびに第1面および第2面の平均面粗さSzJISの各々が上記数値範囲内にあることにより、比較例1~8のポーラスアルミナシートと比べて、表面の微小領域に外力が加えられたときにもクラックが生じにくかったと言える。
また、平均面粗さSaが10nm以下、SzJISが150nm以下であるアルミニウム基材の第3面上に陽極酸化により形成された実施例1~14および比較例1のポーラスアルミナシートでは、第1面および第2面の各々の平均面粗さSaが15nm以下、SzJISが150nm以下であった。
これに対し、平均面粗さSaが10nmより大きい、あるいはSzJISが150nmより大きいアルミニウム基材の第3面上に陽極酸化により形成された比較例2~8のポーラスアルミナシートでは、第1面の平均面粗さSaが15nmよりも大きく、かつ第1面のSzJISが150nmよりも大きかった。
この結果から、第1面および第2面の平均面粗さSaが15nm以下でありかつ第1面および第2面の平均面粗さSzJISが150nm以下であるポーラスアルミナシートを作製するためには、第3面の平均面粗さSaが10nm以下でありかつ第3面の平均面粗さSzJISが150nm以下であるアルミニウム基材が必要であることが確認された。
耐クラック荷重については、実施例13,14のポーラスアルミナシートは、実施例1~12のポーラスアルミナシートと同等であった。
一方で、実施例1~12のポーラスアルミナシートでは上記積層体からポーラスアルミナシートを分離する工程でクラックおよび割れが確認されなかったのに対し、実施例13,14のポーラスアルミナシートでは上記積層体からポーラスアルミナシートを分離する工程でのクラックおよび割れが確認された。
この結果は表3に示される比率T2/T1に起因すると推測される。つまり、比率T2/T1が0%である実施例13のポーラスアルミナシートの外周面は第2外周領域12のみからなるため、該ポーラスアルミナシートをポーラスアルミナ層から切り出す必要があり、このときに外周面近傍で発生したクラックおよび割れが内部に進展したと推測される。
比率T2/T1が100%である実施例14のポーラスアルミナシートの外周面は第1外周領域11のみからなるため、該ポーラスアルミナシートを積層体から分離する工程時に第1外周領域の近傍で発生したクラックおよび割れがポーラスアルミナシートにおいて上記交差する方向に進展する余地がなく、当該クラック等がポーラスアルミナシートの内部に進展したと推測される。
比率T2/T1が30%である実施例1~10のポーラスアルミナシート、比率T2/T1が10%である実施例11のポーラスアルミナシート、および比率T2/T1が90%である実施例12のポーラスアルミナシートでは、上記積層体からポーラスアルミナシートを分離する工程でクラックおよび割れが確認されなかった。
以上の結果から、上記積層体からポーラスアルミナシートを分離する工程でクラックおよび割れの発生を抑制する観点から、ポーラスアルミナシートの上記比率T2/T1は10%以上90%以下であるのが好ましいことが確認された。
また、陽極酸化の前処理としての電解研磨の有無、陽極酸化処理の電解液の種類、アルミナバリア層を除去するための積層体に対するリン酸処理の有無等は、アルミニウム基材の第3面の平均面粗さSaおよび平均面粗さSzJISほどには、ポーラスアルミナシートの嵩密度、第1面1Aおよび第2面の平均面粗さSaおよび平均面粗さSzJISに影響を与えないことが確認された。
今回開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものであることが意図される。
1 ポーラスアルミナシート、1A 第1面、1B 第2面、1C 外周面、1D 貫通孔、1E 溝、2 アルミニウム基材、2A 第3面、3 ポーラスアルミナ層、4 積層体、11 第1外周領域、12 第2外周領域、20 刃具。

Claims (8)

  1. 第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面とを有し、
    前記第1面から前記第2面に貫通する複数の貫通孔が形成されており、
    前記複数の貫通孔の各々は、円柱形状を有し、
    前記複数の貫通孔の各々の孔径は、0.5μm以下であり、
    嵩密度が1.0g/cm3以上3.9g/cm 3 以下であり、
    前記第1面と前記第2面との間の厚みが18μm以上100μm以下であり、
    一辺の長さが80μmである矩形視野内において、前記第1面および前記第2面の各々の平均面粗さSaが15nm以下であり、かつ前記第1面および前記第2面の各々の平均面粗さSzJISが150nm以下である、ポーラスアルミナシート。
  2. 前記第1面および前記第2面をつなぐ外周面をさらに有し、
    前記外周面の周方向の少なくとも一部は、前記第1面から前記第2面側へ延びる第1外周領域と、前記第1外周領域から前記第2面に達する第2外周領域とを有し、
    前記第2外周領域において、前記外周面には、前記第2面から前記第1面側へ延びておりかつ前記第1外周領域と前記第2外周領域との境界で終端する複数の溝が形成されている、請求項1に記載のポーラスアルミナシート。
  3. 前記外周面の前記周方向の全部が、前記第1外周領域と前記第2外周領域とを含む、請求項2に記載のポーラスアルミナシート。
  4. 前記ポーラスアルミナシートの前記第1面と前記第2面との間の厚みに対する前記第2外周領域の厚みの比率が10%以上90%以下である、請求項2または3に記載のポーラスアルミナシート。
  5. 前記ポーラスアルミナシートの前記第1面と前記第2面との間の厚みは、18μm以上100μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポーラスアルミナシート。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載のポーラスアルミナシートを製造する方法であって、
    第3面を有し、一辺の長さが80μmである矩形視野内において、前記第3面の平均面粗さSaが10nm以下であり、かつ前記第3面の平均面粗さSzJISが150nm以下であるアルミニウム基材を準備する工程と、
    前記アルミニウム基材の前記第3面に対する陽極酸化処理により、前記アルミニウム基材とポーラスアルミナ層との積層体を形成する工程とを備え
    前記アルミニウム基材を準備する工程では、表面粗さRaが50nm以下である圧延ロールを用いて、圧下率が20%以上で行われる最終仕上げ冷間圧延により前記アルミニウム基材が準備される、ポーラスアルミナシートの製造方法。
  7. 前記積層体の前記ポーラスアルミナ層に切り込みを入れる工程と、
    前記切り込みを入れる工程後に、前記積層体から前記ポーラスアルミナシートを分離する工程とをさらに備える、請求項6に記載のポーラスアルミナシートの製造方法。
  8. 前記切り込みを入れる工程において、前記ポーラスアルミナ層の厚みに対する前記切り込みの深さの比率が10%以上90%以下である、請求項7に記載のポーラスアルミナシートの製造方法。
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