JP2007177262A - マグネシウム金属材料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マグネシウムまたはマグネシウム合金からなる母材2の表面に、主成分としての酸化マグネシウムと、水酸化マグネシウム、マンガン、アルミニウム、および/またはフッ素とを含むスピネル型多孔質陽極酸化皮膜3を備えるマグネシウム金属材料1であって、スピネル型多孔質陽極酸化皮膜3が、多孔質層4と、バリヤ層5とを有しており、多孔質層4の微細孔の平均孔径が50nm〜20μmであり、多孔質層4とバリヤ層5との合計厚さが1〜50μmであることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
しかしながら、この技術では、重金属塩を使用するために、環境汚染防止を考慮した排水処理設備が必要となる。また、皮膜に形成された孔によって表面粗さRaが大きい(粗い)。
このマグネシウム金属材料では、前記した特定の成分からなるスピネル型多孔質陽極酸化皮膜であって、従来のマグネシウム金属材料と比較して多孔質層の表層における微細孔の平均孔径が50nm〜10μmと小さいので、その封孔効果によって耐食性に優れるとともに、表面粗さRaが小さい。また、バリヤ層が、実質的に無孔質層であることからマグネシウムまたはマグネシウム合金と、大気(酸素)との接触を遮断しており、大気中でのマグネシウムまたはマグネシウム合金の酸化腐食を防止している。なお、本発明におけるバリヤ層は、5nm以下程度の超微小孔を有しているものを含んでいる。
そして、このマグネシウム金属材料では、マグネシウムまたはマグネシウム合金の表面に形成されるスピネル型多孔質陽極酸化皮膜(多孔質層およびバリヤ層(無孔質層))の厚さが1〜50μm程度であって、従来のマグネシウム金属材料と比較して薄いので、高い寸法精度を実現することができる。
この製造方法では、前記した成分からなる電解液中を使用するとともに、浴温、電流密度、および電圧を前記した所定の範囲に設定した火花放電型陽極酸化処理によって、本発明のマグネシウム金属材料を製造することができる。
また、このような製造方法においては、前記火花放電型陽極酸化処理が、直流電源、周波数が100Hz乃至2kHzの交流電源、200乃至4000回/秒の周期で極性が変化するPR電源、または正極側が200乃至2000パルス/秒のパルス波を形成するパルス電源を使用して電解が行われることが望ましい。
そして、表層よりもさらに深い部分であってバリヤ層5(無孔質層)との間に形成される多孔質層4は、平均孔径で50nm〜5μmの微細孔を有している。つまり、多孔質層4は、深い部分になるほど(バリヤ層5(無孔質層)寄りになるほど)孔径分布が狭くなっている。
バリヤ層5(無孔質層)は、多孔質層4と前記母材2の間に形成される実質的に無孔質の層であって、母材2(マグネシウムまたはマグネシウム合金)と大気(酸素)との接触を遮断している。
このようなスピネル型多孔質陽極酸化皮膜3における、酸化マグネシウムの含有率は、60〜99質量%が好ましく、水酸化マグネシウムの含有率は、0.01〜30質量%が好ましい。また、スピネル型多孔質陽極酸化皮膜3におけるマンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)および/またはこれらの酸化物のそれぞれの含有率は、各元素換算で、マンガン0.01〜20質量%、アルミニウム0.01〜20質量%、フッ素0.01〜20質量%が好ましい。
そして、スピネル型多孔質陽極酸化皮膜3では、酸化マグネシウムと、マンガン、アルミニウム、フッ素、および/またはこれらの酸化物とがスピネル型構造を形成している。
この製造方法では、後記する電解液中で母材2(図1参照)に火花放電型陽極酸化処理が行われて母材2の表面にスピネル型多孔質陽極酸化皮膜3が形成される。
前記リン酸塩としては、例えば、Na3PO4、Na2HPO4、NaH2PO4、Na4P2O6、Na2H2P2O6、Na4P2O7、Na2H2P2O7、Na5P3O10、K3PO4、K2HPO4、KH2PO4、K4P2O7、K6(PO3)6等が挙げられる。
前記ホウ酸塩としては、例えば、NaBO2、Na2B4O7、NaBO3、KBO2、K2B4O7等が挙げられる。
前記ケイ酸塩としては、例えば、Na2SiO3、Na4SiO4、K2SiO3、K2SiO7、K2Si4O9等が挙げられる。
前記水酸化物としては、例えば、NaOH、KOH、Ba(OH)2等が挙げられる。
このようなリン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、および水酸化物は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
この皮膜添加剤としては、例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のフッ化物塩、重フッ化物塩、マンガン酸塩、過マンガン酸塩、ケイ酸化合物、ケイフッ化物、金属もしくは金属化合物等の無機系のもの、または水酸基、カルボキシル基もしくはスルホン基を有する直鎖状、または環状の有機系のものが挙げられる。
前記重フッ化物としては、例えば、NH4FHF、NaFHF、KFHF等が挙げられる。
前記マンガン酸塩としては、例えば、K2MnO4、Na2MnO4、Na3MnO4等が挙げられる。
前記過マンガン酸塩としては、例えば、KMnO4、NaMnO4、Mg(MnO4)2、Ca(MnO4)2等が挙げられる。
前記ケイ酸化合物としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の前記ケイ酸塩と同様のものが挙げられる。
前記ケイフッ化物としては、例えば、Na2SiF6、MgSiF6、(NH4)2SiF6等が挙げられる。
前記金属としては、例えば、Al、Si、W、Mo等が挙げられ、金属化合物としては、例えば、NaAlO2、CoAl2O4、KAlO2、Na2SiO3、K2SiO2、K2SiO9、Co2SiO4等が挙げられる。
水酸基、カルボキシル基、またはスルホン基を有する前記有機化合物としては、例えば、(CH2OH)2、(CH2CH2OH)O、(CH2OH)2CHOH等のアルコール類、(COOH)2、(CH2CH2COOH)2、[CH(OH)COOH]2、C6H4(OH)COOH、C6H5COOH、C6H4(COOH)2等のカルボン酸及びこれらの塩、C6H4(SO3H)COOH、C6H3(COOH)(OH)SO3H等のスルホン基を有する化合物等を挙げることができる。なかでも、カルボン酸およびその塩が好ましく、その塩としては、カリウム塩、およびナトリウム塩が好ましい。
これらの皮膜添加剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、無機系の皮膜添加剤と、カルボン酸との組み合わせは、電解液の管理が容易となるので好ましい。
このような電解液の温度(浴温)は、15〜40℃であり、好ましくは15〜30℃である。電解液のPHは、9以上が好ましい。
陽極酸化処理する際の電源としては、直流電源、交流電源、パルス電源、およびPR(Periodic Reverse)電源のいずれであってもよく、これらの電源は、2種以上を組み合わせて使用することができる。そして、これらの電源を組み合わせて使用することによって、電源から供給される電流の波形が、例えば、直流−PR波形、直流−周波数100Hz乃至2kHzの交流波形、直流−交流重畳波形、直流−パルス周期200乃至4000パルス/秒のパルス波形、直流−PR−直流波形、直流−周波数100Hz乃至2kHzの交流−直流波形等の各種波形の組み合わせとなるように設定することが可能となる。
ちなみに、PR電源は、直流出力の極性を高速反転させてPR電解(Periodic Reverse Electrolyzing)を行うことができるものであれば特に制限はなく、上市品を使用することができる。
この製造方法では、電流密度が、0.5〜15A/dm2程度に設定される。
交流電源を使用した交流電解を行って陽極酸化処理を行う場合には、周波数が100Hz〜2kHz程度に設定されることが好ましい。また、PR電源を使用して陽極酸化処理を行う場合には、反転周期を200〜4000回/秒に設定することが望ましい。そして、パルス電源を使用する場合には、正極側におけるパルス周期を200〜2000パルス/秒に設定することが望ましい。
母材2に火花放電型の陽極酸化処理を行う時間は、10〜70分程度が好ましい。
本実施形態に係るマグネシウム金属材料1は、マグネシウムまたはマグネシウム合金からなる母材2の表面に形成されたスピネル型多孔質陽極酸化皮膜3が、主に酸化マグネシウムからなり、その他の含有金属が、略完全に近い酸化物組成となっている。そして、スピネル型多孔質陽極酸化皮膜3の表面における微細孔の平均孔径は、50nm〜20μmとなっている。したがって、本実施形態に係るマグネシウム金属材料1は、従来の火花放電型陽極酸化処理で得られたマグネシウム金属材料(例えば、特許文献1参照)と比較して、大気中の酸素による酸化進行がより確実に抑制されるとともに、表面の平均孔径が比較的大きい従来のもの(平均孔径:25μm)よりも封孔性が優れているので、耐食性に優れる。
また、この製造方法では、電解液中に、前記した所定の皮膜添加剤を含むので、電解液の寿命の延長や、母材2に形成するスピネル型多孔質陽極酸化皮膜3の均一性、安定性等の性能の向上を図ることができるとともに、酸化マグネシウムと他の成分とのスピネル型構造を効率よく形成させることができる。
(実施例1)
マグネシウム合金製の圧延板(大阪富士社製、AZ31B(70mm×150mm×5mm))の両面を荒削りした後に、ダイヤモンドバイトを使用して仕上げ加工することで、本実施例で作製するマグネシウム金属材料の母材を形成した。この母材の厚さの寸法精度は、4.22±0.001mmであり、表面粗さ(Ra)は、0.3μmであった。次に、この母材を脱脂及び酸洗浄した後、液温26±2℃に保持した後記する組成の電解液中で母材に火花放電型陽極酸化処理を60分間施した。その結果、母材の表面には、後記する組成を有するスピネル型の多孔質陽極酸化皮膜が形成された。このときの電解条件は、電源が周波数1000Hzの交流であり、電流密度が2〜5A/dm2であり、火花放電開始電圧が約50Vであり、火花放電最終電圧が95Vであった。
NaOH 3.5モル/L
Na2HPO4 0.3モル/L
Al2O3 0.3モル/L
KF 0.2モル/L
KMnO4 0.2モル/L
Na2SiO3 0.15モル/L
[CH(OH)COONa]2 0.15モル/L
なお、Al2O3、KF、KMnO4、Na2SiO3、および[CH(OH)COONa]2は、皮膜添加剤として配合した。
耐食性試験は、JIS Z 2371の塩水噴霧試験に準拠して行った。つまり、この耐食性試験では、所定の濃度の塩水を8時間噴霧した後に16時間噴霧を中断する工程を1サイクルとし、マグネシウム金属材料の表面が腐食するまでのサイクル数で耐食性が評価された。その結果、本実施例に係るマグネシウム金属材料でのサイクル数は、91回であった。ちなみに、RN(レイティングナンバ)は、9.8以上であった(腐食面積率0.02%以下)。表1に、マグネシウム金属材料の寸法精度(mm)、表面粗さRa(μm)、皮膜の厚さ(μm)、微細孔の平均孔径(μm)、耐食性試験結果(サイクル数(回))、および皮膜の色調を記載する。
なお、本実施例で電解液の成分として使用した過マンガン酸カリウム(KMnO4)のような過マンガン酸塩に代えてマンガン酸塩を使用し、フッ化カリウム(KF)のようなフッ化塩に代えて重フッ化塩を使用することによっても、本実施例とほぼ同じ効果が得られる。
この比較例1では、電解条件としての、交流電源の周波数が50Hzに変更され、火花放電開始電圧が約55Vに変更され、火花放電最終電圧が92Vに変更された以外は、実施例1と同様にしてマグネシウム合金製の母材上に皮膜が形成された。母材上に形成された皮膜の表面を観察したところ、濃い茶系の色を呈していた。そして、寸法精度は、4.22±0.025mmであり、表面粗さ(Ra)は、11μmであった。
また、皮膜には、主に、MgO・Al2O3、MgO、およびMg(OH)2が含まれることが確認された。
この実施例2では、後記する組成の電解液を使用した。そして、電解条件として、電源が直流電源に変更され、電流密度が1〜2A/dm2に変更され、火花放電最終電圧が98Vに変更され、電解時間(火花放電型陽極酸化処理時間)が65分に変更された以外は、実施例1と同様にしてマグネシウム合金製の母材上に後記する組成を有するスピネル型の多孔質陽極酸化皮膜が形成された。
NaOH 3.0モル/L
Na2HPO4 0.3モル/L
Al2O3 0.3モル/L
KMn2O4 0.25モル/L
[CH(OH)COONa]2 0.15モル/L
KF 0.2モル/L
なお、Al2O3、KMn2O4、[CH(OH)COONa]2、およびKFは、皮膜添加剤として配合した。
この比較例2では、電解条件としての、電源が交流電源(周波数50Hz)に変更された以外は、実施例2と同様にしてマグネシウム合金製の母材上に皮膜が形成された。母材上に形成された皮膜の表面を観察したところ、濃い茶系の色を呈していた。そして、寸法精度は、4.22±0.03mmであり、表面粗さ(Ra)は、12.5μmであった。
表1に示すように、実施例1と比較例1との比較、および実施例2と比較例2との比較から明らかなように、実施例1および実施例2で得られた本発明のマグネシウム金属材料は、比較例1および比較例2で得られたものより、寸法精度、耐食性に優れている。そして、母材に形成された皮膜の表面粗さRa、および表面の孔径の大きさについては、実施例1および実施例2のものが、比較例1および比較例2のものよりも小さくなっている。また、皮膜の厚さについては、実施例1および実施例2のものが、比較例1および比較例2のものよりも薄くなっている。そして、皮膜の色調については、実施例1および実施例2のものが、比較例1および比較例2のものよりも淡色になっている。
したがって、本発明によれば、耐食性に優れるとともに、これを使用した製品の、寸法精度を高くし、表面粗さを低減し、しかも色調の淡色化を図ることができることが確認された。
2 母材
3 スピネル型多孔質陽極酸化皮膜
4 多孔質層
5 バリヤ層
Claims (4)
- マグネシウムまたはマグネシウム合金の表面に、主成分としての酸化マグネシウムと、
水酸化マグネシウム、マンガン、アルミニウム、フッ素および/またはこれらの酸化物とを含むスピネル型多孔質陽極酸化皮膜を備えるマグネシウム金属材料であって、
前記スピネル型多孔質陽極酸化皮膜が、多孔質層と、バリヤ層より成り立ち、
前記多孔質層の微細孔の平均孔径が50nm〜20μmであり、
前記多孔質層と前記バリヤ層との合計厚さが1〜50μmであることを特徴とするマグネシウム金属材料。 - アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のリン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、ケイフッ化塩、または水酸化物の1種以上と、
皮膜添加剤としてのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のフッ化物塩、重フッ化物塩、マンガン酸塩、または過マンガン酸塩の1種以上とを含む電解液を調製する工程と、
浴温を15〜40℃に設定した前記電解液中で、電流密度を0.5〜15A/dm2に設定し、電圧を20V以上に設定して火花放電をさせながら電解を行ってマグネシウムまたはマグネシウム合金の表面に火花放電型陽極酸化処理を施す工程と、
を備えることを特徴とするマグネシウム金属材料の製造方法。 - 前記電解液が、有機カルボン酸および/またはその塩をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のマグネシウム金属材料の製造方法。
- 前記火花放電型陽極酸化処理が、直流電源、周波数が100Hz乃至2kHzの交流電源、200乃至4000回/秒の周期で極性が変化するPR電源、または正極側が200乃至2000パルス/秒のパルス波を形成するパルス電源の1種、または2種以上を組み合わせて使用して電解が行われることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマグネシウム金属材料の製造方法。
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