以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
また、ドライクリーニング技術に関しては、二瀬らの日本国特許出願第2006−107780号(2006.4.10出願)、二瀬らの日本国特許出願第2007−81147号(2007.3.27出願)に開示されている。
(実施の形態1)
本実施の形態の半導体装置の製造工程を図面を参照して説明する。図1〜図8は、本発明の一実施の形態である半導体装置、例えばCMISFET(Complementary Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を有する半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
まず、図1に示されるように、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)1を準備する。次に、この半導体基板1を熱酸化してその表面に例えば厚さ10nm程度の絶縁膜2を形成した後、その上層にCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより、例えば厚さ100nm程度の絶縁膜3を堆積する。絶縁膜2は酸化シリコンなどからなり、絶縁膜3は窒化シリコン膜などからなる。それから、図2に示されるように、フォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして絶縁膜3、絶縁膜2および半導体基板1を順次ドライエッチングすることにより、素子分離形成予定領域の半導体基板1に例えば深さ300nm程度の溝(素子分離用の溝)4aを形成する。溝4aは、素子分離用の溝であり、すなわち後述する素子分離領域4形成用の溝である。
次に、図3に示されるように、熱リン酸などを用いたウェットエッチングにより絶縁膜3を除去した後、溝4aの内部(側壁および底部)を含む半導体基板1の主面上に例えば厚み10nm程度の絶縁膜4bを形成する。それから、半導体基板1の主面上(すなわち絶縁膜4b上)に、溝4a内を埋めるように、絶縁膜4cをCVD法などにより形成(堆積)する。
絶縁膜4bは、酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなる。絶縁膜4bが酸窒化シリコン膜の場合には、絶縁膜4b形成工程以降の熱処理によって溝4aの側壁が酸化することによる体積膨張を防止でき、半導体基板1に働く圧縮応力を低減できる効果がある。
絶縁膜4cは、HDP−CVD(High Density Plasma CVD:高密度プラズマCVD)法により成膜された酸化シリコン膜、またはO3−TEOS酸化膜などである。なお、O3−TEOS酸化膜とは、O3(オゾン)およびTEOS(Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン、Tetra Ethyl Ortho Silicateとも言う)を原料ガス(ソースガス)として用いて熱CVD法により形成した酸化シリコン膜である。絶縁膜4cがHDP−CVD法により成膜された酸化シリコン膜の場合、絶縁膜4bは、絶縁膜4cを堆積する際の半導体基板1へのダメージ防止の効果がある。
次に、図4に示されるように、絶縁膜4cをCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨して、溝4aの外部の絶縁膜4cを除去し、溝4aの内部に絶縁膜4b,4cを残すことにより、素子分離(素子分離領域)4を形成する。
それから、半導体基板1を例えば1000℃程度で熱処理することにより、溝4aに埋め込んだ絶縁膜4cを焼き締める。焼き締め前の状態では、O3−TEOS酸化膜よりもHDP−CVD法により成膜された酸化シリコン膜の方が緻密である。このため、絶縁膜4cがO3−TEOS酸化膜の場合、焼き締めによる絶縁膜4cの収縮により、半導体基板1に働く圧縮応力を低減できる効果がある。一方、絶縁膜4cがHDP−CVD法により成膜された酸化シリコン膜の場合には、絶縁膜4cがO3−TEOS酸化膜の場合に比べて、焼き締め時の絶縁膜4cの収縮が少ないため、素子分離領域4によって半導体基板1に働く圧縮応力が大きくなる。
このようにして、溝4a内に埋め込まれた絶縁膜4b,4cからなる素子分離領域4が形成される。本実施の形態では、素子分離領域4は、LOCOS(Local Oxidization of Silicon)法ではなく、好ましくはSTI(Shallow Trench Isolation)法により形成される。すなわち、本実施の形態の素子分離領域4は、好ましくは、半導体基板1に形成された素子分離用の溝4a内に埋め込まれた絶縁体(ここでは絶縁膜4b,4c)からなる。後述するnチャネル型MISFETQn(すなわちnチャネル型MISFETQnを構成するゲート絶縁膜7、ゲート電極8aおよびソース・ドレイン用のn−型半導体領域9aおよびn+型半導体領域9b)は、素子分離領域4で規定された(囲まれた)活性領域に形成される。また、後述するpチャネル型MISFETQp(すなわちpチャネル型MISFETQpを構成するゲート絶縁膜7、ゲート電極8bおよびソース・ドレイン用のp−型半導体領域10aおよびp+型半導体領域10b)も、素子分離領域4で規定された(囲まれた)活性領域に形成される。
次に、図5に示されるように、半導体基板1の主面から所定の深さに渡ってp型ウエル5およびn型ウエル6を形成する。p型ウエル5は、pチャネル型MISFET形成予定領域を覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして、nチャネル型MISFET形成予定領域の半導体基板1に例えばホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することなどによって形成することができる。また、n型ウエル6は、nチャネル型MISFET形成予定領域を覆う他のフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして、pチャネル型MISFET形成予定領域の半導体基板1に例えばリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することなどによって形成することができる。
次に、例えばフッ酸(HF)水溶液を用いたウェットエッチングなどにより半導体基板1の表面を清浄化(洗浄)した後、半導体基板1の表面(すなわちp型ウエル5およびn型ウエル6の表面)上にゲート絶縁膜7を形成する。ゲート絶縁膜7は、例えば薄い酸化シリコン膜などからなり、例えば熱酸化法などによって形成することができる。
次に、半導体基板1上(すなわちp型ウエル5およびn型ウエル6のゲート絶縁膜7上)に、ゲート電極形成用の導体膜として、多結晶シリコン膜のようなシリコン膜8を形成する。シリコン膜8のうちのnチャネル型MISFET形成予定領域(後述するゲート電極8aとなる領域)は、フォトレジスト膜(図示せず)をマスクとして用いてリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することなどにより、低抵抗のn型半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とされている。また、シリコン膜8のうちのpチャネル型MISFET形成予定領域(後述するゲート電極8bとなる領域)は、他のフォトレジスト膜(図示せず)をマスクとして用いてホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することなどにより、低抵抗のp型半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とされている。また、導体膜8は、成膜時にはアモルファスシリコン膜であったものを、成膜後(イオン注入後)の熱処理により多結晶シリコン膜に変えることもできる。
次に、図6に示されるように、シリコン膜8をフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いてパターニングすることにより、ゲート電極8a,8bを形成する。
nチャネル型MISFETのゲート電極となるゲート電極8aは、n型の不純物を導入した多結晶シリコン(n型半導体膜、ドープトポリシリコン膜)からなり、p型ウエル5上にゲート絶縁膜7を介して形成される。すなわち、ゲート電極8aは、p型ウエル5のゲート絶縁膜7上に形成される。また、pチャネル型MISFETのゲート電極となるゲート電極8bは、p型の不純物を導入した多結晶シリコン(p型半導体膜、ドープトポリシリコン膜)からなり、n型ウエル6上にゲート絶縁膜7を介して形成される。すなわち、ゲート電極8bは、n型ウエル6のゲート絶縁膜7上に形成される。ゲート電極8a,8bのゲート長は、必要に応じて変更できるが、例えば50nm程度とすることができる。
次に、図7に示されるように、p型ウエル5のゲート電極8aの両側の領域にリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することにより、(一対の)n−型半導体領域9aを形成し、n型ウエル6のゲート電極8bの両側の領域にホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することにより、(一対の)p−型半導体領域10aを形成する。n−型半導体領域9aおよびp−型半導体領域10aの深さ(接合深さ)は、例えば30nm程度とすることができる。
次に、ゲート電極8a,8bの側壁上に、絶縁膜として、例えば酸化シリコンまたは窒化シリコンあるいはそれら絶縁膜の積層膜などからなる側壁スペーサまたはサイドウォール(側壁絶縁膜)11を形成する。サイドウォール11は、例えば、半導体基板1上に酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜を堆積し、この酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜をRIE(Reactive Ion Etching)法などにより異方性エッチングすることによって形成することができる。
サイドウォール11の形成後、(一対の)n+型半導体領域9b(ソース、ドレイン)を、例えば、p型ウエル5のゲート電極8aおよびサイドウォール11の両側の領域にリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することにより形成する。また、(一対の)p+型半導体領域10b(ソース、ドレイン)を、例えば、n型ウエル6のゲート電極8bおよびサイドウォール11の両側の領域にホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することにより形成する。n+型半導体領域9bを先に形成しても、あるいはp+型半導体領域10bを先に形成してもよい。イオン注入後、導入した不純物の活性化のためのアニール処理を行うこともできる。n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの深さ(接合深さ)は、例えば80nm程度とすることができる。
n+型半導体領域9bは、n−型半導体領域9aよりも不純物濃度が高く、p+型半導体領域10bは、p−型半導体領域10aよりも不純物濃度が高い。これにより、nチャネル型MISFETのソースまたはドレインとして機能するn型の半導体領域(不純物拡散層)が、n+型半導体領域(不純物拡散層)9bおよびn−型半導体領域9aにより形成され、pチャネル型MISFETのソースまたはドレインとして機能するp型の半導体領域(不純物拡散層)が、p+型半導体領域(不純物拡散層)10bおよびp−型半導体領域10aにより形成される。従って、nチャネル型MISFETおよびpチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域は、LDD(Lightly doped Drain)構造を有している。n−型半導体領域9aは、ゲート電極8aに対して自己整合的に形成され、n+型半導体領域9bは、ゲート電極8aの側壁上に形成されたサイドウォール11に対して自己整合的に形成され、p−型半導体領域10aは、ゲート電極8bに対して自己整合的に形成され、p+型半導体領域10bは、ゲート電極8bの側壁上に形成されたサイドウォール11に対して自己整合的に形成される。このようにして、p型ウエル5にnチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)Qnが形成され、n型ウエル6にpチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)Qpが形成され、図7の構造が得られる。なお、n+型半導体領域9bは、nチャネル型MISFETQnのソースまたはドレイン用の半導体領域とみなすことができ、p+型半導体領域10bは、pチャネル型MISFETQpのソースまたはドレイン用の半導体領域とみなすことができる。
次に、サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)技術により、nチャネル型MISFETQnのゲート電極8aおよびソース・ドレイン領域(ここではn+型半導体領域9b)の表面と、pチャネル型MISFETQpのゲート電極8bおよびソース・ドレイン領域(ここではp+型半導体領域10b)の表面とに、低抵抗の金属シリサイド層(後述の金属シリサイド層41に対応)を形成する。以下に、この金属シリサイド層の形成工程について説明する。
図9は、本実施の形態の半導体装置の製造工程の一部を示す製造プロセスフロー図であり、図7の構造が得られた後、サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)プロセスによりゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面に金属シリサイド層(金属・半導体反応層)を形成する工程の製造プロセスフローが示されている。図10はシリサイド材料(金属シリサイド層41形成用の材料膜、ここでは金属膜12およびバリア膜13に対応)の成膜装置の概略平面図、図11はシリサイド材料の成膜工程図、図12はシリサイド材料の成膜装置に備わるドライクリーニング処理用チャンバの概略断面図、図13はシリサイド材料の成膜装置に備わるドライクリーニング処理用チャンバにおける半導体ウエハの処理工程を説明するためのチャンバの概略断面図である。図14〜図17は、図8に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。なお、図9は、図8および図14の工程の製造プロセスフローに対応し、図11は図8の工程の製造プロセスフローに対応する。
上記のようにして図7の構造が得られた後、図8に示されるように、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面を露出させてから、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b上を含む半導体基板1の主面(全面)上に金属膜12を、例えばスパッタリング法を用いて形成(堆積)する(図9のステップS1)。すなわち、ステップS1では、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b上を含む半導体基板1上に、ゲート電極8a,8bを覆うように、金属膜12が形成される。
それから、金属膜12上にバリア膜(第1バリア膜、応力制御膜、酸化防止膜、キャップ膜)13を形成(堆積)する(図9のステップS2)。
また、ステップS1(金属膜12堆積工程)の前に、HFガス、NF3ガス、NH3ガス又はH2ガスのうち少なくともいずれか一つを用いたドライクリーニング処理(後述する工程P2に対応)を行って、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9b及びp+型半導体領域10bの表面の自然酸化膜を除去した後、半導体基板1を大気中(酸素含有雰囲気中)にさらすことなく、ステップS1およびステップS2を行えば、より好ましい。
金属膜12は、例えばニッケル(Ni)膜からなり、その厚さ(堆積膜厚)は、例えば9nm程度とすることができる。Ni(ニッケル)膜以外にも、例えばNi−Pt合金膜(NiとPtの合金膜)、Ni−Pd合金膜(NiとPdの合金膜)、Ni−Yb合金膜(NiとYbの合金膜)またはNi−Er合金膜(NiとErの合金膜)のようなニッケル合金膜などを金属膜12として用いることができる。バリア膜13は、例えば窒化チタン(TiN)膜またはチタン(Ti)膜からなり、その厚さ(堆積膜厚)は、例えば15nm程度とすることができる。バリア膜13は、詳細は後述するが、半導体基板1に働く応力の制御や金属膜12の酸化防止などのために金属膜12上に設けられる。以下に、金属膜12およびバリア膜13の好ましい形成方法の一例について説明する。
金属膜12およびバリア膜13の成膜には、図10に示されるシリサイド材料の成膜装置20が用いられる。
図10に示されるように、成膜装置20は、第1搬送室21aと第2搬送室21bの2つの搬送室が配置され、第1搬送室21aの周囲に開閉手段であるゲートバルブ22を介してロードロック室23,24および3つのチャンバ25,26,27が備わり、第2搬送室21bの周囲に開閉手段であるゲートバルブ22を介して2つのチャンバ28,29が備わったマルチチャンバタイプである。さらに、第1搬送室21aと第2搬送室21bとの間には2つの搬送用のチャンバ30,31が備わっている。第1搬送室21aは排気機構等により所定の真空度に保持され、その中央部には半導体ウエハSWを搬送するための多関節アーム構造の搬送用ロボット32aが設けられている。同様に、第2搬送室21bは排気機構等により所定の真空度に保持され、その中央部には半導体ウエハSWを搬送するための多関節アーム構造の搬送用ロボット32bが設けられている。
第1搬送室21aに備わるチャンバ25,26は相対的に高温の加熱処理を行う加熱処理用チャンバ、チャンバ27はドライクリーニング処理(処置)用チャンバである。第2搬送室21bに備わるチャンバ28はスパッタリング法により金属膜12(例えばニッケル膜)を成膜する成膜用チャンバ、チャンバ29はスパッタリング法によりバリア膜13(例えば窒化チタン膜)を成膜する成膜用チャンバである。また、バリア膜13をプラズマCVD法で成膜する場合は、チャンバ29はプラズマCVD法によりバリア膜13(例えばチタン膜)を成膜する成膜用チャンバとなる。
第1搬送室21aと第2搬送室21bとの間に備わるチャンバ30,31は第1搬送室21aと第2搬送室21bとの間での半導体ウエハSWの受け渡しを行う受渡用チャンバであり、また半導体ウエハSWの冷却にも用いられる冷却用チャンバである。なお、成膜装置20では、第1搬送室21aのみに備わるチャンバを3つとし、第2搬送室21bのみに備わるチャンバを2つとしたが、これに限定されるものではなく、同じ用途のチャンバまたは他の用途のチャンバを追加することも可能である。
まず、1枚の半導体ウエハSWをウエハ搬入出室33内に設置された搬送用ロボット36によっていずれかのフープ34から取り出し(図11の工程P1)、いずれかのロードロック室23または24へ搬入する。フープ34は半導体ウエハSWのバッチ搬送用の密閉収納容器であり、通常25枚、12枚、6枚等のバッチ単位で半導体ウエハSWを収納する。フープ34の容器外壁は微細な通気フィルタ部を除いて機密構造になっており、塵埃はほぼ完全に排除される。従って、クラス1000の雰囲気で搬送しても、内部はクラス1の清浄度が保てるようになっている。成膜装置20とのドッキングは、フープ34の扉をポート35に取り付けて、ウエハ搬入出室33の内部に引き込むことによって清浄さを保持した状態で行われる。続いてロードロック室23内を真空引きした後、搬送用ロボット32aによって半導体ウエハSWを第1搬送室21aからドライクリーニング処理用のチャンバ27へ真空搬送する(図11の工程P2)。図12にチャンバ27の概略断面図が示されている。図12に示されるように、チャンバ27は主としてウエハステージ27a、ウエハリフトピン27b、シャワーヘッド27cおよびリモートプラズマ発生装置27dによって構成される。ウエハステージ27aおよびウエハリフトピン27bは独立した昇降機構を持ち、シャワーヘッド27cと半導体ウエハSWとの距離および半導体ウエハSWとウエハステージ27aとの距離を任意に制御することができる。また、ウエハステージ27aの上方に設置されたシャワーヘッド27cは常に一定温度に維持されており、その温度は例えば180℃である。
チャンバ27へ半導体ウエハSWを搬入する時は、図13(a)に示されるように、ウエハステージ27aを下降させ、ウエハリフトピン27bを上昇させて、ウエハリフトピン27b上に半導体ウエハSWを載せる。シャワーヘッド27cと半導体ウエハSWとの距離は、例えば16.5±12.7mm、半導体ウエハSWとウエハステージ27aとの距離は、例えば25.4±17.8mmに設定される。
続いて半導体ウエハSWの主面上をドライクリーニング処理する時は、図13(b)に示されるように、ウエハステージ27aを上昇させ、ウエハリフトピン27bを下降させて、ウエハステージ27a上に半導体ウエハSWを載せる。シャワーヘッド27cと半導体ウエハSWとの距離は、例えば17.8±5.1mmに設定される。
ドライクリーニング処理時には、リモートプラズマ発生装置27dにおいて還元ガス、例えばNF3ガスおよびNH3ガスを添加したArガスを励起させてプラズマを生成し、このプラズマをチャンバ27内へ導入する。チャンバ27内に導入されたプラズマをシャワーヘッド27cを介して半導体ウエハSWの主面上に供給することにより、プラズマとシリコン(ゲート電極8a,8bを構成する多結晶シリコンとn+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bが形成された半導体基板1を構成する単結晶シリコン)の表面に形成された自然酸化膜との間で起きる、例えば式(1)に示す還元反応によって自然酸化膜が除去される。ドライクリーニング処理時におけるプロセス条件は、例えばシャワーヘッド温度180℃、NF3ガス流量14sccm、NH3ガス流量70sccm、圧力400Pa、プラズマパワー30Wである。
SiO2+NF3+NH3→ (NH4)2SiF6+O2 式(1)
この時、還元反応により生成された生成物((NH4)2SiF6)が半導体ウエハSWの主面上に残留する。さらに、半導体ウエハSWはウエハステージ27a上に載せてあるだけであり、上記生成物は半導体ウエハSWの側面および裏面の一部にも残留する。半導体ウエハSWの側面および裏面の一部に残留する生成物は、半導体ウエハSWを他のチャンバへ搬送する場合などにおいて剥がれ、汚染や発塵の原因となる。そこで、ドライクリーニング処理(処置)に続いて、チャンバ27内において半導体ウエハSWに熱処理を施すことにより、半導体ウエハSWの主面上に残留する生成物を除去すると同時に、半導体ウエハSWの側面および裏面の一部に残留する生成物を除去する。
続いて半導体ウエハSWを熱処理する時は、図13(c)に示されるように、ウエハステージ27aを下降させ、ウエハリフトピン27bを上昇させて、半導体ウエハSWを温度180℃に設定されたシャワーヘッド27cへ近づける。シャワーヘッド27cと半導体ウエハSWとの距離は、例えば3.8±2.6mm、半導体ウエハSWとウエハステージ27aとの距離は、例えば5.9mm以上に設定される。
熱処理時には、シャワーヘッド27cの加熱温度(180℃)を利用して半導体ウエハSWが加熱される。半導体ウエハSWの温度は100から150℃となり、上記ドライクリーニング処理(処置)時に半導体ウエハSWの主面上に形成された生成物((NH4)2SiF6)が、例えば式(2)に示す反応によって昇華し除去される。さらに、この熱処理によって半導体ウエハSWの側面および裏面も加熱されて、側面および裏面の一部に残留した生成物も除去される。
(NH4)2SiF6→ SiF4+2NH3+2HF 式(2)
しかしながら、上記ドライクリーニング処理時に半導体ウエハSWに形成された生成物の組成が(NH4)2SiF6から僅かでもずれていると、温度100から150℃の熱処理では式(2)の反応が起こり難く、完全に生成物を除去することができなくなり、極微少の生成物が半導体ウエハSWの主面上に残留する。前述したように、半導体ウエハSWの主面上に微少な生成物が残留していると、その後半導体ウエハSWの主面上に形成される金属シリサイド層(例えばニッケルシリサイド層)の電気抵抗にばらつきが生じる。そこで、次工程において、半導体ウエハSWに150℃よりも高い温度の熱処理を施して、半導体ウエハSWの主面上に残留した微少の生成物を除去する。
次に、搬送用ロボット32aによって半導体ウエハSWをドライクリーニング処理用のチャンバ27から加熱処理用のチャンバ25(またはチャンバ26)へ第1搬送室21aを介して真空搬送し、チャンバ25(またはチャンバ26)に備わるステージ上に載せる(図11の工程P3)。チャンバ25(またはチャンバ26)のステージ上に半導体ウエハSWを載せることにより、半導体ウエハSWを所定の温度で加熱し、100から150℃の温度では昇華せずに半導体ウエハSWの主面上に残留した生成物を昇華させて除去する。半導体ウエハSWの主面上での温度は、例えば150から400℃が適切な範囲と考えられる(他の条件によってはこの範囲に限定されないことはもとよりである)。また、量産に適した範囲としては165から350℃が考えられるが、さらに180から220℃等の200℃を中心値とする範囲が最も好適と考えられる。
次に、搬送用ロボット32aによって半導体ウエハSWを加熱処理用のチャンバ25(またはチャンバ26)から冷却・受渡用のチャンバ30(またはチャンバ31)へ第1搬送室21aを介して真空搬送し、チャンバ30(またはチャンバ31)に備わるステージ上に載せる(図11の工程P4)。チャンバ30(またはチャンバ31)のステージ上に半導体ウエハSWを載せることにより、半導体ウエハSWは冷却される。
次に、搬送用ロボット32bによって半導体ウエハSWを冷却・受渡用のチャンバ30(またはチャンバ31)から金属膜12成膜用のチャンバ28へ第2搬送室21bを介して真空搬送する(図11の工程P5)。チャンバ28内を排気機構により所定の真空度、例えば1.33×10−6Pa程度とした後、半導体ウエハSWを所定の温度に加熱し、チャンバ28内へArガスを所定の流量により導入してスパッタリング法により半導体ウエハSWの主面上へ金属膜12(例えばニッケル膜)を堆積する。この金属膜12の堆積工程が、上記ステップS1(図9のステップS1)に対応する。金属膜12の厚さは、例えば9nmであり、成膜時におけるスパッタリング条件は、例えば成膜温度40℃、Arガス流量13sccmである。
次に、搬送用ロボット32bによって半導体ウエハSWを金属膜12成膜用のチャンバ28からバリア膜13成膜用のチャンバ29へ第2搬送室21bを介して真空搬送する(図11の工程P6)。チャンバ29内を排気機構により所定の真空度とした後、半導体ウエハSWを所定の温度に加熱し、チャンバ29内へArガスおよびN2ガスを所定の流量により導入してスパッタリング法により半導体ウエハSWの主面上へ窒化チタン膜などからなるバリア膜13を堆積する。このバリア膜13の堆積工程が、上記ステップS2(図9のステップS2)に対応する。バリア膜13の厚さは、例えば15nmであり、成膜時におけるスパッタリング条件は、例えば成膜温度40℃、Arガス流量28sccm、窒素ガス流量80sccmである。
次に、搬送用ロボット32bによって半導体ウエハSWをバリア膜13成膜用のチャンバ29から冷却・受渡用のチャンバ30(またはチャンバ31)へ第2搬送室21bを介して真空搬送する(図11の工程P7)。
次に、搬送用ロボット32aによって半導体ウエハSWを冷却・受渡用のチャンバ30(またはチャンバ31)からいずれかのロードロック室23または24へ真空搬出し、さらに搬送用ロボット36によって半導体ウエハSWをロードロック室23または24からウエハ搬入出室33を介していずれかのフープ34へ戻す(図11の工程P8)。
なお、上記ドライクリーニング処理では、リモートプラズマ発生装置27dにおいて還元ガス、例えばNF3ガスおよびNH3ガスを添加したArガス(プラズマ励起用のガスとしてはArガスが多用されるが、その他の希ガスまたはそれらの混合ガスでもよい)を励起させてプラズマを生成し、このプラズマをチャンバ27内へ導入して自然酸化膜を還元反応により除去した。他の形態として、プラズマを用いずに、HFガスとNH3ガスまたはNF3ガスとNH3ガス等の還元ガスをチャンバ27内へ導入して自然酸化膜を還元反応により除去してもよい。
また、リモートプラズマ装置に限定されるものではなく、その他の特性に問題がなければ、通常のプラズマ装置を用いても問題はない。リモートプラズマは基板に損傷を与えない利点がある。
また、プラズマを用いて処理する場合は、上記ガスの組み合わせに限らず、窒素、水素、フッ素(これらの複合ラジカルを含む)のそれぞれのラジカルまたは反応種を生成するものであれば、特にこのプロセスに対して有害なものでなければ、その他のガスの組み合わせでもよい。すなわち、窒素、水素およびフッ素ラジカル生成ガス(混合ガスを含む)とプラズマ励起ガスとその他の添加ガス等との混合ガス雰囲気を適宜用いればよい。
また、還元ガス等の反応ガスは上記ガスに限らず、シリコン表面の酸化膜と比較的低温で反応して気化する反応種を生成するものであればよい。
このようにして、金属膜12およびバリア膜13を形成した後、半導体基板1に第1の熱処理(アニール処理)を施す(図9のステップS3)。ステップS3の第1の熱処理は、不活性ガス(例えばアルゴン(Ar)ガスまたはヘリウム(He)ガス)または窒素(N2)ガス雰囲気で満たされた常圧下で行うことが好ましい。また、金属膜12がニッケル(Ni)膜の場合には、ステップS3の第1の熱処理は、400〜500℃で行うことが好ましい。例えば、不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気中でRTA(Rapid Thermal Anneal)法を用いて、410℃程度の温度にて、10秒以上、1分以下の熱処理を半導体基板1に施すことにより、ステップS3の第1の熱処理を行うことができ、金属膜12にかかる熱量を半導体基板1の主面の全領域において均一にするため、昇温レートを低く(3℃/秒以上で10℃/秒以下程度)設定すればより好ましい。
ステップS3の第1の熱処理により、図14に示されるように、ゲート電極8a,8bを構成する多結晶シリコン膜と金属膜12、およびn+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bを構成する単結晶シリコンと金属膜12を選択的に反応させて、金属・半導体反応層である金属シリサイド層41を形成する。本実施の形態では、ステップS3の第1の熱処理により、金属膜12を構成する金属元素Mのモノシリサイド(すなわちMSi)からなる金属シリサイド層41が形成される。また、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの各上部(上層部)と金属膜12とが反応することにより金属シリサイド層41が形成されるので、金属シリサイド層41は、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの各表面(上層部)に形成される。
すなわち、ステップS3の第1の熱処理により、金属膜12を構成する金属元素Mとゲート電極8a,8bを構成する多結晶シリコンのSi(シリコン)とを反応(M+Si→MSi)させてゲート電極8a,8bの表面上(ゲート電極8a,8bの上層部)にMSiからなる金属シリサイド層41を形成する。また、ステップS3の第1の熱処理により、金属膜12を構成する金属元素Mとn+型半導体領域9bのSi(シリコン)とを反応(M+Si→MSi)させてn+型半導体領域9bの表面上(n+型半導体領域9bの上層部)にMSiからなる金属シリサイド層41を形成する。また、ステップS3の第1の熱処理により、金属膜12を構成する金属元素Mとp+型半導体領域10bのSi(シリコン)とを反応(M+Si→MSi)させてp+型半導体領域10bの表面上(p+型半導体領域10bの上層部)にMSiからなる金属シリサイド層41を形成する。
このように、ステップS3の第1の熱処理で、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b(を構成するシリコン)と金属膜12を選択的に反応させて、金属シリサイド層41を形成するが、ステップS3の第1の熱処理を行った段階で金属シリサイド層41をMSi(メタルモノシリサイド)相とし、M2Si(ダイメタルシリサイド)相やMSi2(メタルダイシリサイド)相とはしない。ここで、MSi(メタルモノシリサイド)は、金属膜12を構成する金属元素Mのモノシリサイドであり、MSi2(メタルダイシリサイド)は、金属膜12を構成する金属元素Mのダイシリサイドである。例えば、金属膜12がニッケル(Ni)膜であった場合は、ステップS3の第1の熱処理を行った段階で、金属シリサイド層41をNiSi(ニッケルモノシリサイド)相とし、Ni2Si(ダイニッケルシリサイド)相やNiSi2(ニッケルダイシリサイド)相とはしない。
なお、本実施の形態および以下の実施の形態では、金属膜12を構成する金属元素を化学式ではM、カタカナ表記では「メタル」と表記している。例えば、金属膜12がニッケル(Ni)膜である場合は、上記M(金属膜12を構成する金属元素M)はNiであり、上記MSi(メタルモノシリサイド)はNiSi(ニッケルモノシリサイド)であり、上記M2Si(ダイメタルシリサイド)はNi2Si(ダイニッケルシリサイド)であり、上記MSi2(メタルダイシリサイド)はNiSi2(ニッケルダイシリサイド)である。金属膜12が、Niが98原子%でPtが2原子%のNi−Pt合金膜(Ni0.98Pt0.02合金膜)の場合、上記M(金属膜12を構成する金属元素M)はNi及びPt(但しNiとPtの組成比を勘案すると上記MはNi0.98Pt0.02)であり、上記MSiはNi0.98Pt0.02Siであり、上記M2Siは(Ni0.98Pt0.02)2Siであり、上記MSi2はNi0.98Pt0.02Si2である。金属膜12が、Niが99原子%でPdが1原子%のNi−Pd合金膜(Ni0.99Pt0.01合金膜)の場合、上記M(金属膜12を構成する金属元素M)はNi及びPd(但しNiとPdの組成比を勘案すると上記MはNi0.99Pd0.01)であり、上記MSiはNi0.99Pd0.01Siであり、上記M2Siは(Ni0.99Pd0.01)2Siであり、上記MSi2はNi0.99Pd0.01Si2である。金属膜12が他の組成の合金膜の場合も、同様に考えることができる。
次に、ウェット洗浄処理を行うことにより、バリア膜13と、未反応の金属膜12(すなわちゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bまたはp+型半導体領域10bと反応しなかった金属膜12)とを除去する(図9のステップS4)。この際、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面上に金属シリサイド層41を残存させる。ステップS4のウェット洗浄処理は、硫酸を用いたウェット洗浄、または硫酸と過酸化水素水とを用いたウェット洗浄などにより行うことができる。
次に、半導体基板1に第2の熱処理(アニール処理)を施す(図9のステップS5)。ステップS5の第2の熱処理は、不活性ガス(例えばアルゴン(Ar)ガスまたはヘリウム(He)ガス)または窒素(N2)ガス雰囲気で満たされた、常圧下で行うことが好ましい。また、ステップS5の第2の熱処理は、上記ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度よりも高い熱処理温度で行う。例えば不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気中で半導体基板1にRTA法を用いて、10秒以上、1分以下の熱処理を施すことにより、ステップS5の第2の熱処理を行うことができる。
このステップS5の第2の熱処理を行うことで、金属シリサイド層41を安定化することができる。すなわち、ステップS3の第1の熱処理でMSi相の金属シリサイド層41が形成され、この金属シリサイド層41は、ステップS5の第2の熱処理を行っても、変わらずMSi相のままであるが、ステップS5の第2の熱処理を行うことで、金属シリサイド層41内の組成がより均一化され、金属シリサイド層41内の金属元素MとSiとの組成比が1:1の化学量論比により近くなり、金属シリサイド層41を安定化できる。なお、MSi相は、M2Si相およびMSi2相よりも低抵抗率であり、ステップS5以降も(半導体装置の製造終了まで)金属シリサイド層41は低抵抗のMSi相のまま維持され、製造された半導体装置では(例えば半導体基板1を個片化して半導体チップとなった状態でも)、金属シリサイド層41は低抵抗のMSi相となっている。
ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度T1よりもステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2が低いと、ステップS5の第2の熱処理を行っても、金属シリサイド層41はほとんど変化せず、金属シリサイド層41の安定化効果を見込めないため、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2は、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度T1よりも高く(T2>T1)する。ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度T1よりも高い熱処理温度T2で(すなわちT2>T1)ステップS5の第2の熱処理を行うことにより、金属シリサイド層41内の組成を均一化させ、金属シリサイド層41内の金属元素MとSiとの組成比が1:1の化学量論比により近くなり、金属シリサイド層41を安定化させることができる。
しかしながら、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2が高すぎると、ステップS5の第2の熱処理により、金属シリサイド層41を構成する金属元素Mが過剰に拡散するなどして、金属シリサイド層41からチャネル部にMSi2(メタルダイシリサイド)が異常成長しやすいことが、本発明者の検討により分かった。また、不要なMSi2部分が形成され、電界効果トランジスタ毎に金属シリサイド層41の電気抵抗がばらつく可能性があることも分かった。
このため、本実施の形態では、金属膜12を構成する金属元素MのダイシリサイドであるMSi2(メタルダイシリサイド)の格子サイズ(格子定数)と、半導体基板1の格子サイズ(格子定数)とが一致する温度T3(第1の温度)よりも、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を低くする(T3>T2)。これにより、ステップS5の第2の熱処理を行った際に、金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2(メタルダイシリサイド)の異常成長を抑制または防止することができ、また、不要なMSi2部分の形成を抑制または防止して各金属シリサイド層41の電気抵抗のばらつきを低減できる。このことについては、後でより詳細に説明する。
このようにして、nチャネル型MISFETQnのゲート電極8aおよびソース・ドレイン領域(n+型半導体領域9b)の表面(上層部)と、pチャネル型MISFETQpのゲート電極8bおよびソース・ドレイン領域(p+型半導体領域10b)の表面(上層部)とに、MSi(メタルモノシリサイド)からなる金属シリサイド層41が形成される。また、金属膜12の膜厚によるが、金属膜12の膜厚が例えば9nm程度の場合、金属シリサイド層41の膜厚は、例えば19nm程度である。
次に、図15に示されるように、半導体基板1の主面上に絶縁膜42を形成する。すなわち、ゲート電極8a,8bを覆うように、金属シリサイド層41上を含む半導体基板1上に絶縁膜42を形成する。絶縁膜42は例えば窒化シリコン膜からなり、成膜温度(基板温度)450℃程度のプラズマCVD法などにより形成することができる。それから、絶縁膜42上に絶縁膜42よりも厚い絶縁膜43を形成する。絶縁膜43は例えば酸化シリコン膜などからなり、TEOS(Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン、またはTetra Ethyl Ortho Silicateとも言う)を用いてプラズマCVD法などにより形成することができる。これにより、絶縁膜42,43からなる層間絶縁膜が形成される。その後、絶縁膜43の表面をCMP法により研磨するなどして、絶縁膜43の上面を平坦化する。下地段差に起因して絶縁膜42の表面に凹凸形状が形成されていても、絶縁膜43の表面をCMP法により研磨することにより、その表面が平坦化された層間絶縁膜を得ることができる。
次に、図16に示されるように、絶縁膜43上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして用いて、絶縁膜43,42をドライエッチングすることにより、絶縁膜42,43にコンタクトホール(貫通孔、孔)44を形成する。この際、まず絶縁膜42に比較して絶縁膜43がエッチングされやすい条件で絶縁膜43のドライエッチングを行い、絶縁膜42をエッチングストッパ膜として機能させることで、絶縁膜43にコンタクトホール44を形成してから、絶縁膜43に比較して絶縁膜42がエッチングされやすい条件でコンタクトホール44の底部の絶縁膜42をドライエッチングして除去する。コンタクトホール44の底部では、半導体基板1の主面の一部、例えばn+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面上の金属シリサイド層41の一部や、ゲート電極8a,8bの表面上の金属シリサイド層41の一部などが露出される。
次に、コンタクトホール44内に、タングステン(W)などからなるプラグ(接続用導体部、埋め込みプラグ、埋め込み導体部)45を形成する。プラグ45を形成するには、例えば、コンタクトホール44の内部(底部および側壁上)を含む絶縁膜43上に、成膜温度(基板温度)440℃以上460℃以下程度のプラズマCVD法によりバリア導体膜45a(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)を形成する。それから、タングステン膜などからなる主導体膜45bをCVD法などによってバリア導体膜45a上にコンタクトホール44を埋めるように形成し、絶縁膜43上の不要な主導体膜45bおよびバリア導体膜45aをCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより、プラグ45を形成することができる。ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bまたはp+型半導体領域10b上に形成されたプラグ45は、その底部でゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bまたはp+型半導体領域10bの表面上の金属シリサイド層41と接して、電気的に接続される。
次に、図17に示されるように、プラグ45が埋め込まれた絶縁膜43上に、ストッパ絶縁膜51および配線形成用の絶縁膜52を順次形成する。ストッパ絶縁膜51は絶縁膜52への溝加工の際にエッチングストッパとなる膜であり、絶縁膜52に対してエッチング選択比を有する材料を用いる。ストッパ絶縁膜51は、例えばプラズマCVD法により形成される窒化シリコン膜とし、絶縁膜52は、例えばプラズマCVD法により形成される酸化シリコン膜とすることができる。なお、ストッパ絶縁膜51と絶縁膜52には次に説明する第1層目の配線が形成される。
次に、シングルダマシン法により第1層目の配線を形成する。まず、レジストパターン(図示せず)をマスクとしたドライエッチングによって絶縁膜52およびストッパ絶縁膜51の所定の領域に配線溝53を形成した後、半導体基板1の主面上(すなわち配線溝の底部および側壁上を含む絶縁膜52上)にバリア導体膜(バリアメタル膜)54を形成する。バリア導体膜54は、例えば窒化チタン膜、タンタル膜または窒化タンタル膜などを用いることができる。続いて、CVD法またはスパッタリング法などによりバリア導体膜54上に銅のシード層を形成し、さらに電解めっき法などを用いてシード層上に銅めっき膜を形成する。銅めっき膜により配線溝53の内部を埋め込む。それから、配線溝53以外の領域の銅めっき膜、シード層およびバリアメタル膜54をCMP法により除去して、銅を主導電材料とする第1層目の配線55を形成する。配線55は、プラグ45を介してnチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpのソースまたはドレイン用のn+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bやゲート電極8a,8bなどと電気的に接続されている。その後、デュアルダマシン法により2層目の配線を形成するが、ここでは図示およびその説明は省略する。
次に、本実施の形態の効果について、より詳細に説明する。図18は、比較例の半導体装置におけるNiSi層141bの形成工程を示すプロセスフロー図であり、本実施の形態の図9に対応するものである。図19〜図21は、比較例の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。図22は、比較例の半導体装置の製造工程中の要部断面図であり、図21に対応する工程段階のnチャネル型MISFETが形成された領域が示されている。
図18〜図22の比較例の半導体装置は、本実施の形態の金属シリサイド層41に相当するNiSi層141bが本実施の形態とは異なる工程で形成されている以外は、本実施の形態の半導体装置と同様にして製造されている。
比較例の半導体装置を製造するには、本実施の形態の上記図7に相当する構造が得られた後、図19に示されるように、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b上を含む半導体基板1の主面上にNi膜112(本実施の形態の金属膜12に相当するもの)を堆積(図18のステップS101)させる。それから、Ni膜112上に窒化チタン膜113(本実施の形態のバリア膜13に相当するもの)を堆積させる(図18のステップS102)。その後、図20に示されるように、RTA法で320℃程度の熱処理を30秒程度行うことで、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b(を構成するシリコン)とNi膜112を選択的に反応させて、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面上にNi2Si(ダイニッケルシリサイド)層141aを形成する(図18のステップS103)。
次に、ウェット洗浄処理を行うことにより、窒化チタン膜113と、未反応のNi膜112とを除去(図18のステップS104)してから、RTA法で550℃程度の熱処理を30秒程度行う(図18のステップS105)。Ni2Si層141aと、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bのシリコン(Si)とを、ステップS105の熱処理で更に反応させて(Ni2Si+Si→2NiSiの反応をさせて)、図21に示されるように、Ni2Si相より安定で低抵抗率のNiSi相からなるNiSi層141bをゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面上に形成する。すなわち、先のステップS103の熱処理で一旦Ni2Si相(Ni2Si層141a)を形成し、これをその後のステップS105の熱処理でNiSi相(NiSi層141b)に変化させる。その後、比較例の半導体装置でも、本実施の形態と同様に、絶縁膜42,43、コンタクトホール44、プラグ45、配線46および絶縁膜47を形成するが、ここではその図示および説明は省略する。このようにして、比較例の半導体装置が製造される。
コバルトシリサイド形成の場合は、Si(シリコン)が拡散種であり、Co膜中へSiが移動することによりコバルトシリサイドが形成されるのに対して、ニッケルシリサイド形成の場合は、Ni(ニッケル)が拡散種であり、シリコン領域側にNi(ニッケル)が移動することによってニッケルシリサイドが形成される。
本発明者が、上記のようにして製造した比較例の半導体装置を丹念に調べたところ、NiSi層141bからチャネル部にNiSi2(ニッケルダイシリサイド)が異常成長しやすいことが分かった。図22では、NiSi2が異常成長しやすい領域を、NiSi2異常成長領域141cとして模式的に示してある。このようなNiSi2異常成長領域141cの発生は、本発明者の実験(半導体装置の断面観察および断面の組成分析など)により確認された。そして、NiSi層141bからチャネル部にNiSi2が異常成長していると、MISFETのソース・ドレイン間のリーク電流の増大を招いたり、ソース・ドレイン領域の拡散抵抗の増大を招いたりすることも分かった。
そこで、本実施の形態では、上述したように、ステップS1としてゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b上を含む半導体基板1の主面上に金属膜12を堆積してから、ステップS2として金属膜12上にバリア膜13を堆積させ、それから、ステップS3として第1の熱処理を行うが、この第1の熱処理により、MSi(メタルモノシリサイド)相の金属シリサイド層41が形成されるようにする。すなわち、ステップS3の第1の熱処理で、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b(を構成するシリコン)と金属膜12を選択的に反応させて、金属シリサイド層41を形成するが、このステップS3の第1の熱処理を行った段階で、金属シリサイド層41をM2Si(ダイメタルシリサイド)相やMSi2(メタルダイシリサイド)相ではなく、MSi(メタルモノシリサイド)相とする。例えば、金属膜12がニッケル(Ni)膜であった場合は、ステップS3の第1の熱処理を行った段階で、金属シリサイド層41を、Ni2Si(ダイニッケルシリサイド)相やNiSi2(ニッケルダイシリサイド)相ではなく、NiSi(ニッケルモノシリサイド)相とする。このため、本実施の形態では、ステップS3の第1の熱処理を、上記比較例のステップS103の熱処理よりも高い熱処理温度で行う。金属膜12がニッケル(Ni)膜の場合は、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度は、400〜500℃の範囲内であることが好ましく、例えば410℃とすることができる。
図23は、半導体基板にp+型シリコン領域およびn+型シリコン領域を形成し、その上にNi膜を10nm程度およびTiN(窒化チタン)膜を15nm程度形成してから、熱処理によりNi膜とp+型シリコン領域およびn+型シリコン領域とを反応させてニッケルシリサイド層を形成し、未反応Ni膜及びTiN膜を除去したときの、形成されたニッケルシリサイド層のシート抵抗の熱処理温度依存性を示すグラフである。図23のグラフの横軸は、熱処理によりNi膜とp+型シリコン領域およびn+型シリコン領域とを反応させるための熱処理温度に対応し、図23のグラフの縦軸は、その熱処理によって形成されたニッケルシリサイド層のシート抵抗値に対応する。図23の場合に行った熱処理はRTAで30秒程度である。また、図23のグラフには、熱処理によりNi膜とp+型シリコン領域とを反応させて形成されたニッケルシリサイド層のシート抵抗値を白丸(p+型シリコン領域+Ni膜)で示し、熱処理によりNi膜とn+型シリコン領域とを反応させて形成されたニッケルシリサイド層のシート抵抗値を黒丸(n+型シリコン領域+Ni膜)で示してある。
図23のグラフにも示されるように、ニッケルシリサイド層は、Ni2Si(ダイニッケルシリサイド)相よりもNiSi(ニッケルモノシリサイド)相の方が、シート抵抗が低い(Ni2Si相だと30Ω/□程度、NiSi相だと10Ω/□程度)。図23のグラフからも分かるように、熱処理温度が低いと、形成されるニッケルシリサイド層は高抵抗のNi2Si相であるが、熱処理温度を高くすると、形成されるニッケルシリサイド層は低抵抗のNiSi相となる。また、熱処理によりNi膜とn+型シリコン領域とが反応して形成されたニッケルシリサイド層(図23のグラフの黒丸に示されたものに対応)に比べて、熱処理によりNi膜とp+型シリコン領域とが反応して形成されたニッケルシリサイド層(図23のグラフの白丸に示されたものに対応)の方が、Ni2Si相からNiSi相へ変化する温度が低い(すなわちより低い熱処理温度でNiSi相が形成できる)。熱処理温度が400℃以上であれば、p+型シリコン領域およびn+型シリコン領域のいずれであっても、NiSi相のニッケルシリサイド層を形成することができる。
上記比較例では、ステップS103の熱処理でNi2Si層141aを形成するため、ステップS103の熱処理温度は、NiSi相が形成される温度よりも低い温度、例えば320℃程度で行う。それに対して、本実施の形態では、ステップS3の第1の熱処理によりM2Si相ではなくMSi相の金属シリサイド層41を形成するため、ステップS3の第1の熱処理は、MSi相を形成できる熱処理温度(MSi相を形成できる最低熱処理温度よりも高い温度)で行う。例えば金属膜12がニッケル(Ni)膜の場合は、図23からも分かるように、ステップS3の第1の熱処理は、400℃以上の温度で行うことが好ましく、例えば410℃程度で行う。これにより、ステップS3の第1の熱処理を行った段階で、金属シリサイド層41をM2Si(ダイメタルシリサイド)相ではなく、MSi(メタルモノシリサイド)相とすることができる。
但し、ステップS3の第1の熱処理では、金属元素Mの移動を伴うM+Si→MSiの反応を生じさせており、金属元素Mが移動しやすい状態のため、熱処理温度が高すぎると、バリア膜13が存在していても金属元素Mが過剰に拡散(移動)してしまい、MSi2(メタルダイシリサイド)が部分的に形成されてしまう可能性がある。更に、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度が、MSi相からMSi2相へ変化する温度よりも高いと、金属シリサイド層41全体がMSi2相となってしまう。このため、例えば金属膜12がニッケル(Ni)膜の場合は、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度を好ましくは500℃以下、より好ましくは450℃以下とし、それによって、MSiからなる金属シリサイド層41形成時にMSi2が形成されるのを防止することができる。従って、金属膜12がニッケル(Ni)膜の場合は、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度は、400〜500℃の範囲内であることが好ましい。
金属元素Mが拡散(移動)する反応を伴う熱処理の際には、金属元素Mが異常拡散して金属シリサイド層からチャネル部へのMSi2の異常成長が生じ易い。本実施の形態では、ステップS3の第1の熱処理では、金属元素Mの移動を伴うM+Si→MSiの反応を生じさせており、金属元素Mが移動しやすい状態のため、金属元素Mが異常拡散して金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2の異常成長が生じるおそれがあるが、バリア膜13がそれを防止している。
すなわち、上記比較例のように、ニッケルシリサイド層がバリア膜で覆われてない状態でニッケルシリサイド層の相が変化する(Ni2Si層141aをNiSi層141bとする)ような熱処理(上記ステップS105の熱処理)が行われた場合、NiSi相形成時に表面に酸素(O)が存在することになる。このため、酸素に起因した欠陥が増え、生じた欠陥を通してNiが拡散しやすくなるので、NiSi層141b形成のための熱処理中にNiSi2の異常成長が促進されてしまう。
それに対して、本実施の形態では、ステップS3の第1の熱処理によってMSiからなる金属シリサイド層41を形成する際に、バリア膜13が酸素(O)の透過を抑制または防止して、金属シリサイド層41に酸素(O)が供給されるのを防止できる。これにより、ステップS3の第1の熱処理によってMSiからなる金属シリサイド層41を形成する際に、酸素に起因した欠陥が生成されるのを抑制または防止でき、酸素に起因した欠陥を通して金属元素Mが拡散するのを抑制または防止できる。従って、ステップS3の第1の熱処理時に金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2の異常成長が生じるのを抑制または防止することができる。このような効果を高めるためには、バリア膜13は、酸素(O)を透過しない(透過しにくい)膜、すなわち、バリア膜13は酸素透過性が無い膜であることが好ましく、そのようなバリア膜13として、窒化チタン(TiN)膜やチタン(Ti)膜は好ましい。
また、本実施の形態では、バリア膜13は、半導体基板1に引張応力を生じさせる膜であることが好ましい。すなわち、半導体基板1に引張応力を生じさせる膜であるバリア膜13を金属膜12上に設けた状態で、ステップS3の第1の熱処理を行って、金属膜12とシリコン領域(ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b)とを反応させて、MSi相の金属シリサイド層41を形成する。
半導体基板1の格子サイズがMSi2(メタルダイシリサイド)の格子サイズに近い状態で、金属元素Mが拡散(移動)する反応を伴う熱処理を行うと、金属元素MとSi(半導体基板1を構成するSi)の格子間での置換が生じやすくなるため、熱処理中に金属元素Mが異常拡散しやすくなり、金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2の異常成長が生じやすくなる。
それに対して、本実施の形態では、半導体基板1に引張応力を生じさせるバリア膜13を形成した状態で、ステップS3の第1の熱処理を行うことで、バリア膜13が作用させる引張応力に起因して、バリア膜13が無い場合に比べて半導体基板1の格子サイズを大きくすることができ、半導体基板1の格子サイズとMSi2(メタルダイシリサイド)の格子サイズとの差を大きくすることができる。このため、ステップS3の第1の熱処理時に金属シリサイド層41からチャネル部へMSi2の異常成長が生じるのを抑制または防止することができる。
また、本実施の形態では、上述のように、ステップS3の第1の熱処理を行ってMSi相の金属シリサイド層41を形成した後、ステップS4としてウェット洗浄処理を行うことによりバリア膜13と、未反応の金属膜12とを除去し、それから、ステップS5として第2の熱処理を行う。本実施の形態では、ステップS3の第1の熱処理を行った段階で金属シリサイド層41は既にMSi相となっており、ステップS5の第2の熱処理を行っても、金属シリサイド層41はMSi相のままであり、ステップS5の第2の熱処理の前後で金属シリサイド層41の相(MSi相)は変わらない。比較例のステップS105の熱処理とは異なり、本実施の形態のステップS5の第2の熱処理は、金属シリサイド層41の相変化(M2Si相からMSi相への相変化)のために行うのではなく、金属シリサイド層41の安定化のために行われる安定化アニールである。ステップS5の第2の熱処理の後は、半導体装置の製造終了まで(例えば半導体基板1を切断して半導体チップに個片化するまで)、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2よりも高い温度に半導体基板1がならないようにする。すなわち、ステップS5の第2の熱処理よりも後の種々の加熱工程(例えば種々の絶縁膜や導体膜の成膜工程のように半導体基板1の加熱を伴う工程)で、半導体基板1の温度がステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2よりも高い温度にならないようにして、ステップS5の第2の熱処理の後には、半導体基板1の温度が第2の熱処理の熱処理温度T2よりも高温となるような処理が行われないようにする。換言すれば、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、ステップS5よりも後の全ての加熱工程(例えば種々の絶縁膜や導体膜の成膜工程のように半導体基板1の加熱を伴う工程)での半導体基板1の加熱温度よりも高くしておく。これにより、ステップS5よりも後の工程での熱印加(例えば種々の絶縁膜や導体膜の成膜工程)によって金属シリサイド層41(MSi相)を構成する金属元素Mが半導体基板1(ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b)中に拡散してMISFETの特性変動を招くのを防止することができる。
また、本実施の形態とは異なり、ステップS5の第2の熱処理を行わなかった場合には、その後の加熱工程(例えば種々の絶縁膜や導体膜の成膜工程のように半導体基板1の加熱を伴う工程)の条件に依存して金属シリサイド層41の特性が変わってしまう可能性があるため、半導体基板1の加熱を伴う工程の管理や見直しは、慎重に行う必要がある。それに対して、本願発明では、ステップS5の熱処理を行うことで、金属シリサイド層41を安定化しているので、ステップS5よりも後の加熱工程(例えば種々の絶縁膜や導体膜の成膜工程のように半導体基板1の加熱を伴う工程)の条件に依存して金属シリサイド層41の特性が変わるのを抑制または防止でき、半導体基板1の加熱を伴う工程の管理や見直しが容易になる。
また、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2は、ステップS5よりも後の全ての加熱工程(例えば種々の絶縁膜や導体膜の成膜工程のように半導体基板1の加熱を伴う工程)での半導体基板1の加熱温度よりも高くしておくことが好ましく、これにより、ステップS5の後には、半導体基板1の温度が第2の熱処理の熱処理温度T2よりも高温となるような処理が行われないことになる。このようにすれば、ステップS5よりも後の加熱工程(例えば種々の絶縁膜や導体膜の成膜工程のように半導体基板1の加熱を伴う工程)の条件の変動に金属シリサイド層41の特性が影響されなくなる。従って、ステップS5よりも後の半導体基板1の加熱を伴う工程の管理や見直しが極めて容易になる。
このように、ステップS5の第2の熱処理を行うことで、金属シリサイド層41の安定化効果や特性変動防止効果などを得ることができる。
ステップS3の第1の熱処理では、M+Si→MSiの反応が生じるため金属元素Mがシリコン領域(ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9b及びp+型半導体領域10b)中に大きく拡散(移動)するが、それに比べると、ステップS5の第2の熱処理では、そのような反応(M+Si→MSi)は生じないため、金属シリサイド層41中の金属元素Mはシリコン領域中へ拡散(移動)しにくい。また、ステップS3の第1の熱処理は、金属膜12が形成された状態で行われるので、金属膜12から金属元素Mが供給されるが、ステップS5の第2の熱処理は、金属膜12が除去された状態で行われるので、金属元素Mは新たに供給されない。このため、ステップS3の第1の熱処理を行った段階でのMSi相の金属シリサイド層41の安定性を高めようとステップS3の第1の熱処理を高くするよりも、ステップS5の第2の熱処理によりMSi相の金属シリサイド層41の安定性を高める方が、最終的な金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2の異常成長を防止するには有効である。
しかしながら、ステップS5の第2の熱処理でも、熱処理温度T2に依存して、金属シリサイド層41を構成する金属元素Mが過剰に拡散して、金属シリサイド層41からチャネル部にMSi2(メタルダイシリサイド)が異常成長する可能性があることが、本発明者の検討により分かった。また、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2に依存して、不要なMSi2部分が形成されて、電界効果トランジスタ毎に金属シリサイド層41の電気抵抗がばらつく可能性があることも、本発明者の検討により分かった。このステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2について、更に詳細に説明する。
ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度T1よりもステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2が低いと、ステップS5の第2の熱処理を行っても、金属シリサイド層41はほとんど変化せず、金属シリサイド層41の安定化効果を得られないため、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2は、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度T1よりも高く(T2>T1)することが必要である。ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2をステップS3の第1の熱処理の熱処理温度T1よりも高く(T2>T1)することで、ステップS5の第2の熱処理により、金属シリサイド層41内の組成がより均一化され、金属シリサイド層41内の金属元素MとSiとの組成比が1:1の化学量論比により近くなり、金属シリサイド層41を安定化させることができる。金属シリサイド層41を安定化させることで、MISFETのソース・ドレイン間のリーク電流などを抑制できる。
しかしながら、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2が高すぎると、ステップS5の第2の熱処理により、金属シリサイド層41を構成する金属元素Mが過剰に拡散して、金属シリサイド層41からチャネル部にMSi2(メタルダイシリサイド)が異常成長しやすくなってしまう。すなわち、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2が高すぎると、上記図22でNiSi2異常成長領域141cとして示したようなMSi2(メタルダイシリサイド)の異常成長が発生してしまう。ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2に依存して、金属シリサイド層41からチャネル部にMSi2(メタルダイシリサイド)が異常成長することは、本発明者の実験(半導体装置の断面観察および断面の組成分析など)により確認された。この金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2(メタルダイシリサイド)の異常成長は、上述したように電界効果トランジスタのソース・ドレイン間のリーク電流の増大を招いたり、ソース・ドレイン領域の拡散抵抗の増大を招いたりするので、電界効果トランジスタの性能や信頼性の向上のためには、このような金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2(メタルダイシリサイド)の異常成長を防止することが必要である。
そこで、本発明者は、ステップS5の第2の熱処理と金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2(メタルダイシリサイド)の異常成長との相間を調べたところ、次のことが分かった。すなわち、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、金属膜12を構成する金属元素MのダイシリサイドであるMSi2(メタルダイシリサイド)の格子サイズ(格子定数)と、半導体基板1の格子サイズ(格子定数)とが一致する温度T3よりも低くする(T2<T3)ことが、金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2(メタルダイシリサイド)の異常成長を防止するのに極めて有効であることが分かった。これは、熱処理中、半導体基板1とMSi2(メタルダイシリサイド)との格子サイズ(格子定数)が一致した状態になると、金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2(メタルダイシリサイド)の異常成長が起こりやすくなるからである。なお、本願において、格子サイズとは格子定数(単位格子の長さ)を意味する。
すなわち、半導体基板1の格子サイズがMSi2(メタルダイシリサイド)の格子サイズからかけ離れていると、ステップS5の第2の熱処理を行っても、金属元素MとSiの格子間で置換が生じにくいため、MSi相の金属シリサイド層41から半導体基板領域(単結晶シリコン領域)に金属元素Mは拡散しづらく、MSi2(メタルダイシリサイド)部分は生成されにくい。それに対して、半導体基板1の格子サイズがMSi2(メタルダイシリサイド)の格子サイズに近いと、金属元素MとSiの格子間で置換が生じやすくなるため、熱処理によりMSi相の金属シリサイド層41から半導体基板領域(単結晶シリコン領域)に金属元素Mが拡散しやすく、MSi2(メタルダイシリサイド)部分が生成されやすい。このため、ステップS5の第2の熱処理を行った際に、半導体基板1とMSi2(メタルダイシリサイド)との格子サイズ(格子定数)が一致した状態にならないようにすれば、金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2(メタルダイシリサイド)の異常成長を抑制または防止することができる。
そこで、本実施の形態では、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、MSi2(メタルダイシリサイド)の格子サイズと半導体基板1の格子サイズとが一致する温度T3よりも低くし(T2<T3)、それによって、ステップS5の第2の熱処理を行った際に、半導体基板1とMSi2(メタルダイシリサイド)との格子サイズが一致した状態にならないようにすることができる。これにより、ステップS5の第2の熱処理により金属シリサイド層41からチャネル部へMSi2(メタルダイシリサイド)が異常成長するのを抑制または防止でき、製造された半導体装置において、金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2(メタルダイシリサイド)の異常成長領域が生じるのを防止できる。
次に、半導体基板1を単結晶シリコン(Si)基板とし、金属膜12をニッケル(Ni)膜とし、金属シリサイド層41をニッケルシリサイド(NiSi)層とした場合への適用例について、より具体的に説明する。この場合、上記金属元素MはNi(ニッケル)となり、上記MSiはNiSi(ニッケルシリサイド)となり、上記MSi2はNiSi2(ニッケルダイシリサイド)となる。
図24は、単結晶シリコン(Si)とNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子サイズの温度依存性を示すグラフである。図24のグラフの横軸は温度に対応し、図24のグラフの縦軸は格子サイズまたは後述する格子サイズのミスマッチαに対応する。図24のグラフには、単結晶シリコン(Si)の格子サイズ(格子定数、後述の格子サイズLSや長さL1に対応)の温度依存性が実線で示され、NiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子サイズ(格子定数、後述の格子サイズLMや長さL2に対応)の温度依存性が一点鎖線で示されている。また、単結晶シリコン(Si)の格子サイズとNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子サイズとのミスマッチαの温度依存性が点線で示されている。
単結晶シリコン(Si)とNiSi2(ニッケルダイシリサイド)とは、いずれも温度の上昇と共に膨張するが、線膨張係数(熱膨張係数)は両者で異なる。図24のグラフに示されるように、室温での格子サイズは、単結晶シリコン(Si)よりもNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の方が大きいが、線膨張係数は単結晶シリコン(Si)よりもNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の方が大きいため、室温から温度を上昇させるにつれて、単結晶シリコン(Si)とNiSi2(ニッケルダイシリサイド)との格子サイズの差は縮まっていく。そして、温度T4で結晶シリコン(Si)とNiSi2(ニッケルダイシリサイド)との格子サイズ(格子定数)が一致する。更に、温度T4よりも高温になると、単結晶シリコン(Si)よりもNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の方が、格子サイズが大きくなる。単結晶シリコン(Si)とNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の場合、格子サイズが一致する温度T4は、約590℃である(T4=590℃)。
半導体基板1の格子サイズがNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子サイズからかけ離れていると、ステップS5の第2の熱処理を行っても、NiとSiの格子間で置換は生じにくいため、NiSi相のニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41)から半導体基板領域(単結晶シリコン領域)にNiは拡散しづらく、NiSi2(ニッケルダイシリサイド)部分は生成されにくい。しかしながら、本実施の形態とは異なり、もしステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2が温度T4以上(T2≧T4)だと、ステップS5の第2の熱処理の際に、半導体基板1の温度が温度T4に達した時点で、半導体基板1を構成する単結晶シリコン(Si)の格子サイズがNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子サイズに一致する状態が発生する。このとき、NiとSiの格子間で置換が生じやすくなり、ニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41)から単結晶シリコン領域(半導体基板領域)にNiが拡散してNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の異常成長が促進されてしまう。
このため、本実施の形態では、半導体基板1を単結晶シリコン(Si)基板としかつ金属膜12をNi膜とした場合には、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を温度T4よりも低くする(T2<T4)。これにより、ステップS5の第2の熱処理の際には、第2の熱処理の開始から終了まで、半導体基板1を構成する単結晶シリコン(Si)の格子サイズは、常にNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子サイズよりも大きく、半導体基板1を構成する単結晶シリコン(Si)の格子サイズがNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子サイズに一致する状態は発生しなくなる。従って、ステップS5の第2の熱処理中にNiSi相のニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41)からチャネル部へNiSi2(ニッケルダイシリサイド)が異常成長するのを抑制または防止することができる。
上記のように、単結晶シリコン(Si)とNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子サイズ(格子定数)が一致する温度T4は、約590℃である(T4=590℃)ため、半導体基板1を単結晶シリコン(Si)基板としかつ金属膜12をニッケル(Ni)膜とした場合には、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、温度T4すなわち590℃よりも低くする(T2<T4=590℃)。
次に、半導体基板1を単結晶シリコン(Si)基板とし、金属膜12をニッケル(Ni)と白金(Pt)の合金膜、すなわちNi−Pt合金膜とし、金属シリサイド層41をニッケル白金シリサイド(Ni1−xPtxSi)層とした場合への適用例について、より具体的に説明する。この場合、上記金属元素MはNiおよびPtであり、上記MSiはNi1−xPtxSiとなり、上記MSi2はNi1−xPtxSi2となる。
図25は、単結晶シリコン(Si)とNi1−xPtxSi2の格子サイズの温度依存性を示すグラフであり、上記図24に対応するものである。図25のグラフの横軸は温度に対応し、図25のグラフの縦軸は格子サイズまたは後述する格子サイズのミスマッチαに対応する。図25のグラフには、単結晶シリコン(Si)の格子サイズ(格子定数、後述の格子サイズLSや長さL1に対応)の温度依存性が実線で示され、Ni1−xPtxSi2の格子サイズ(格子定数、後述の格子サイズLMや長さL2に対応)の温度依存性が一点鎖線で示されている。また、単結晶シリコン(Si)の格子サイズとNi1−xPtxSi2の格子サイズとのミスマッチαの温度依存性が点線で示されている。但し、図25のグラフに示されているのは、Ni1−xPtxSi2においてx=0.02の場合、すなわちNi1−xPtxSi2がNi0.98Pt0.02Si2の場合である。このようにNi1−xPtxSi2のxがx=0.02となるのは、金属膜12を構成するNi−Pt合金膜中のPtの比率が2.0原子%(Niの比率が98原子%)である場合、すなわち金属膜12がNi0.98Pt0.02合金膜である場合に対応する。
図25に示される単結晶シリコン(Si)の格子サイズの温度依存性は、上記図24における単結晶シリコン(Si)の格子サイズの温度依存性と同じである。一方、Ni1−xPtxSi2の格子サイズ(室温での格子サイズ)は、Vegardの定理(Vegardの法則)を用いて、求めることができる。NiSi2のNiサイトの一部(ここではNiのサイトに対して2%)がPtに置き換わっている分、図24および図25を比較すると分かるように、Ni0.98Pt0.02Si2の格子サイズ(室温での格子サイズ)は、NiSi2の格子サイズ(室温での格子サイズ)よりも大きい。そして、Pt含有率が小さい場合、例えばNi1−xPtxSi2におけるxが0.02(x=0.02)程度の場合には、Ni1−xPtxSi2(すなわちNi0.98Pt0.02Si2)の線膨張係数(熱膨張係数)は、NiSi2の線膨張係数(熱膨張係数)とほぼ同じとみなすことができる。このようにして求められたNi1−xPtxSi2(図25ではNi0.98Pt0.02Si2)の格子サイズの温度依存性が、図25のグラフに示されている。
図25のグラフにも示されるように、室温での格子サイズは、単結晶シリコン(Si)よりもNi1−xPtxSi2の方が大きいが、線膨張係数は単結晶シリコン(Si)よりもNi1−xPtxSi2の方が大きいため、室温から温度を上昇させるにつれて、単結晶シリコン(Si)とNi1−xPtxSi2との格子サイズの差は縮まっていく。そして、温度T5で結晶シリコン(Si)とNi1−xPtxSi2との格子サイズが一致し、更に、温度T5よりも高温になると、単結晶シリコン(Si)よりもNi1−xPtxSi2の方が、格子サイズが大きくなる。Ni1−xPtxSi2におけるxが0.02の場合(すなわちNi0.98Pt0.02Si2の場合)、単結晶シリコン(Si)とNi1−xPtxSi2の格子サイズが一致する温度T5は、約495℃である(T5=495℃)。
本実施の形態では、半導体基板1を単結晶シリコン(Si)基板としかつ金属膜12をNi−Pt合金膜とした場合には、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、単結晶シリコン(Si)とNi1−xPtxSi2の格子サイズが一致する温度T5よりも低くする(T2<T5)。これにより、ステップS5の第2の熱処理の際には、第2の熱処理の開始から終了まで、半導体基板1を構成する単結晶シリコン(Si)の格子サイズ(格子定数)は、常にNi1−xPtxSi2の格子サイズよりも大きく、半導体基板1を構成する単結晶シリコン(Si)の格子サイズがNi1−xPtxSi2の格子サイズに一致する状態は発生しなくなる。従って、ステップS5の第2の熱処理中にNi1−xPtxSi相のPt含有ニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41)からチャネル部へNi1−xPtxSi2が異常成長するのを抑制または防止することができる。
上記のように、単結晶シリコン(Si)とNi0.98Pt0.02Si2の格子サイズが一致する温度T5は、約495℃である(T5=495℃)。このため、半導体基板1を単結晶シリコン(Si)基板としかつ金属膜12をNi0.98Pt0.02膜(Ni含有率が98原子%でPt含有率が2.0原子%の合金膜をNi0.98Pt0.02膜またはNi0.98Pt0.02合金膜と表記している)とした場合には、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、温度T5すなわち495℃よりも低くする(T2<T5=495℃)。
また、半導体基板1を単結晶シリコン(Si)基板としかつ金属膜12をNi−Pt合金膜とした場合でも、金属膜12中のPt含有率に応じて上記の温度T5は変化する。Ni−Pt合金膜(金属膜12)中のPt含有率が2.0原子%の場合は、上記温度T5は約495℃であるが、Ni−Pt合金膜(金属膜12)中のPt含有率が2.0原子%よりも少なければ、上記温度T5は約495℃よりも高温側にシフトし、Ni−Pt合金膜(金属膜12)中のPt含有率が2.0原子%よりも多ければ、上記温度T5は約495℃よりも低温側にシフトする。
また、上記温度T4や上記温度T5は、上記温度T3に対応するものである。すなわち、半導体基板1を単結晶シリコン(Si)基板としかつ金属膜12をニッケル(Ni)膜とした場合の、半導体基板1の格子サイズとMSi2(メタルダイシリサイド)の格子サイズとが一致する温度T3が、上記温度T4である(T3=T4)。また、半導体基板1を単結晶シリコン(Si)基板としかつ金属膜12をNi−Pt合金膜とした場合の、半導体基板1の格子サイズとMSi2(メタルダイシリサイド)の格子サイズとが一致する温度T3が、上記温度T5である(T3=T5)。
また、金属膜12がNi膜の場合とNi−Pt合金膜の場合とを例に挙げて説明したが、金属膜12がNi−Pd合金膜、Ni−Yb合金膜またはNi−Er合金膜などの場合についても同様である。すなわち、金属膜12がNi1−xPtx合金膜の場合は、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、Ni1−xPtxSi2の格子サイズと半導体基板1の格子サイズとが一致する温度よりも低くしたが、金属膜12がNi1−xPdx合金膜の場合には、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、Ni1−xPdxSi2の格子サイズと半導体基板1の格子サイズとが一致する温度よりも低くする。また、金属膜12がNi1−xYbx合金膜の場合は、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、Ni1−xYbxSi2の格子サイズと半導体基板1の格子サイズとが一致する温度よりも低くする。また、金属膜12がNi1−xErx合金膜の場合は、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、Ni1−xErxSi2の格子サイズと半導体基板1の格子サイズとが一致する温度よりも低くする。
このように、本実施の形態では、少なくとも、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、MSi2の格子サイズと半導体基板1の格子サイズとが一致する(すなわちミスマッチαがゼロ%となる)温度T3よりも低く(T2<T3)する。その上で、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2におけるMSi2(メタルダイシリサイド)の格子サイズと半導体基板1の格子サイズとの差(の絶対値)が、半導体基板1の格子サイズの0.01%以上(すなわちα≧0.01%)であるようにすれば、より好ましく、半導体基板1の格子サイズの0.02%以上(すなわちα≧0.02%)であるようにすれば、更に好ましい。
MSi2(メタルダイシリサイド)の格子サイズLM(後述の長さL2に対応)と半導体基板1の格子サイズLS(後述の長さL1に対応)との差の半導体基板1の格子サイズLSに対する比率(割合)を百分率表示で表したものをミスマッチαとすると、このミスマッチαは、次式、
α=[(LS−LM)/LS]×100(単位は%)
で表される。
上記図24および図25のグラフには、上記ミスマッチαの温度依存性を点線で示してある。図24および図25のいずれの場合も、上記式中のLSは単結晶シリコン(Si)の格子サイズに対応するが、図24の場合は、上記式中のLMはNiSi2の格子サイズに対応し、図25の場合は、上記式中のLMはNi0.98Pt0.02Si2の格子サイズに対応する。
図24の場合は、室温から温度の上昇と共に、結晶シリコン(Si)とNiSi2との格子サイズの差が縮小していくので、上記ミスマッチαは小さくなっていき、温度T4(約590℃)で、結晶シリコン(Si)とNiSi2との格子サイズが一致(LS=LM)し、上記ミスマッチαはゼロ%(α=0%)となる。一方、図25の場合は、室温から温度の上昇と共に、結晶シリコン(Si)とNi0.98Pt0.02Si2との格子サイズの差が縮小していくので、上記ミスマッチαは小さくなっていき、温度T5(約495℃)で、結晶シリコン(Si)とNi0.98Pt0.02Si2との格子サイズが一致(LS=LM)し、上記ミスマッチαはゼロ%(α=0%)となる。
ステップS5の第2の熱処理中に、半導体基板1の格子サイズとMSi2の格子サイズとが一致する状態を作らないようにするだけでなく、半導体基板1の格子サイズとMSi2の格子サイズとの差をある程度大きい状態を維持することで、MSi相の金属シリサイド層41から半導体基板領域への金属元素Mの拡散をより的確に抑制でき、チャネル部へのMSi2の異常成長をより的確に防止できるようになる。このため、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2における上記ミスマッチαはゼロ%より大きい(α>0%)ことが望ましいが、0.01%以上(α≧0.01%)であば、より好ましく、0.02%以上(α≧0.02%)であれば、更に好ましい。従って、上記ミスマッチαが0.01%となる温度を温度T6とし、上記ミスマッチαが0.02%となる温度を温度T7とすると、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2は、上記ミスマッチαが0.01%となる温度T6以下(T2≦T6)であることがより好ましく、上記ミスマッチαが0.02%となる温度T7以下(T2≦T7)であることが更に好ましい。これにより、ステップS5の第2の熱処理において、半導体基板1の格子サイズとMSi2の格子サイズとの差がある程度大きい状態になっているので、MSi相の金属シリサイド層41から半導体基板領域への金属元素Mの拡散をより的確に抑制でき、チャネル部へのMSi2の異常成長をより的確に防止できるようになる。
図24のグラフのように半導体基板1を単結晶シリコン(Si)基板としかつ金属膜12をニッケル(Ni)膜とした場合、すなわち金属シリサイド層41がニッケルシリサイド(NiSi)層の場合、上記ミスマッチαが0.01%となる温度T6は約575℃(T6=575℃)であり、上記ミスマッチαが0.02%となる温度T7は約560℃(T7=560℃)である。従って、半導体基板1を単結晶シリコン(Si)基板としかつ金属膜12をニッケル(Ni)膜とした場合には、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2は、少なくとも上記ミスマッチαがゼロ%となる温度T4(約590℃)以下とするが、上記ミスマッチαが0.01%となる温度T6以下、すなわち約575℃以下(T2≦T6=575℃)であることがより好ましい。そして、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2が、上記ミスマッチαが0.02%となる温度T7以下、すなわち約560℃以下(T2≦T7=560℃)であれば更に好ましい。
また、図25のグラフのように半導体基板1を単結晶シリコン(Si)基板としかつ金属膜12をNi0.98Pt0.02合金膜とした場合、すなわち金属シリサイド層41がNi0.98Pt0.02Si層の場合、上記ミスマッチαが0.01%となる温度T6は約480℃(T6=480℃)であり、上記ミスマッチαが0.02%となる温度T7は約470℃(T7=470℃)である。従って、半導体基板1を単結晶シリコン(Si)基板としかつ金属膜12をNi0.98Pt0.02合金膜とした場合には、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2は、少なくとも上記ミスマッチαがゼロ%となる温度T5(約495℃)以下とするが、上記ミスマッチαが0.01%となる温度T6以下、すなわち約480℃以下である(T2≦T6=480℃)ことがより好ましい。そして、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2が、上記ミスマッチαが0.02%となる温度T7以下、すなわち約470℃以下(T2≦T7=470℃)であれば更に好ましい。
図26は、リーク電流の分布(ばらつき)を示すグラフである。図26には、本実施の形態のステップS1〜S5に従ってニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41に対応するもの)を形成した場合(図26では「第2の熱処理あり」として白丸で示してある)と、本実施の形態とは異なりステップS5の第2の熱処理を省略してニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41に対応するもの)を形成した場合(図26では「第2の熱処理なし」として黒丸で示してある)とが示されている。なお、図26のグラフは、n+型シリコン領域上にNi膜を成膜してニッケルシリサイド層を形成した場合であり、第2の熱処理の熱処理温度T2は550℃にしてある。図26のグラフの横軸はリーク電流値(arbitrary unit:任意単位)に対応し、図26のグラフの縦軸は、確率分布に対応する。
本実施の形態とは異なり、ステップS5の第2の熱処理を省略した場合、ニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41)が不安定なNiSi(MSi)相となっていると考えられ、図26のグラフにも示されるように、リーク電流が増加する可能性が高くなる。このようなリーク電流の増加は、p+型シリコン領域上にNi膜を成膜してニッケルシリサイド層を形成した場合よりも、n+型シリコン領域上にNi膜を成膜してニッケルシリサイド層を形成した場合に顕著であるが、これは、上記図23からも分かるように、p+型シリコン領域よりもn+型シリコン領域の方が、NiSi相が形成される温度が高いため、形成されるNiSi層が不安定になり易いためと考えられる。
それに対して、本実施の形態のようにステップS5の第2の熱処理を行った場合、ニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41)内の組成がより均一化され、ニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41)内のNi(金属元素M)とSiとの組成比が1:1の化学量論比により近くなるなどして、ニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41)を安定化できる。ステップS5の第2の熱処理によりニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41)を安定化したことにより、図26のグラフにも示されるように、リーク電流が増加してしまうのを防止できる。従って、MISFET毎の特性変動を防止でき、半導体装置の性能を向上することができる。
図27は、本実施の形態のステップS1〜S5に従って形成したニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41に対応するもの)のシート抵抗の分布(ばらつき)を示すグラフである。なお、図27のグラフは、p+型シリコン領域上にNi膜を成膜してニッケルシリサイド層を形成した場合である。図27のグラフの横軸はシート抵抗値に対応し、図27のグラフの縦軸は、確率分布に対応する。また、図27のグラフには、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を550℃にした場合(図27のグラフの丸印で示されている)と、600℃にした場合(図27のグラフでは四角印で示されている)とが示されている。
上述のように、単結晶シリコン(Si)とNiSi2の格子サイズが一致する温度T4は、約590℃である(T4=590℃)。このため、図27のグラフに示されるステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を550℃にした場合は、本実施の形態のようにステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、NiSi2(MSi2)の格子サイズと半導体基板1の格子サイズとが一致する温度T4(T3)よりも低く(T2<T4すなわちT2<T3)した場合(第2の熱処理の熱処理温度T2を上記温度T7よりも若干低くした場合)に対応する。一方、図27のグラフに示されるステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を600℃にした場合は、本実施の形態とは異なり、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、NiSi2(MSi2)の格子サイズと半導体基板1の格子サイズとが一致する温度T4(T3)よりも高く(T2>T4すなわちT2>T3)した場合に対応する。
図27のグラフからも分かるように、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を600℃にした場合に比べて、550℃にした場合の方が、ニッケルシリサイド層のシート抵抗値のばらつきが小さい。すなわち、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を600℃にした場合に比べて、550℃にした場合の方が、ニッケルシリサイド層が高抵抗(高シート抵抗)になってしまう割合が低い。
この理由は、次のように考えられる。すなわち、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を600℃にした場合には、熱処理温度T2が、NiSi2(MSi2)の格子サイズと半導体基板1の格子サイズとが一致する温度T4(T3)よりも高くなるため、ステップS5の第2の熱処理中にニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41に対応するもの)中に高抵抗のNiSi2部分が生じてシート抵抗が高くなってしまう可能性が高くなる。それに対して、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を550℃にした場合には、熱処理温度T2が、NiSi2(MSi2)の格子サイズと半導体基板1の格子サイズとが一致する温度T4(T3)よりも低くなるため、ステップS5の第2の熱処理を行っても、ニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41に対応するもの)中に高抵抗のNiSi2部分が生じるのが抑制または防止されるためと考えられる。
本実施の形態では、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2をMSi2(NiSi2)の格子サイズと半導体基板1の格子サイズとが一致する温度T3(T4)よりも低くする(T2<T3)ことにより、金属シリサイド層41中にMSi2部分(NiSi2部分)が生じるのを抑制または防止できる。このため、金属シリサイド層41の抵抗を、低抵抗のMSi相の抵抗値にするだけでなく、各金属シリサイド層41の抵抗のばらつきを低減できる。従って、半導体基板1に複数のMISFETを形成して各MISFETに金属シリサイド層41を形成した際に、各MISFETの金属シリサイド層41の抵抗を均一にでき、MISFETの特性の変動を防止できる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。
このように、本実施の形態では、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、MSi2の格子サイズと半導体基板1の格子サイズとが一致する(すなわち上記ミスマッチαがゼロ%となる)温度T3よりも低く(T2<T3)、より好ましくは、上記ミスマッチαが0.01%となる温度T6以下(T2≦T6)、更に好ましくは、上記ミスマッチαが0.02%となる温度T7以下(T2≦T7)とする。このようにすることで、上記図22に示されるNiSi2異常成長領域141cのようなMSi2の異常成長を抑制または防止することができ、これは、本発明者の実験(半導体装置の断面観察および断面の組成分析など)により確認された。また、MSi2の異常成長に起因したMISFETのソース・ドレイン間のリーク電流の増大やソース・ドレイン領域の拡散抵抗の増大を抑制または防止することができる。また、本実施の形態では、ステップS5の第2の熱処理を行うことで、金属シリサイド層41を安定化できるので、MISFETの特性変動(MISFET毎の特性変動)を防止することができる。従って、半導体装置の性能を向上することができる。
また、本実施の形態では、バリア膜13を形成した状態でステップS3の第1の熱処理を行って金属膜12を基板領域などと反応させて、MSi相の金属シリサイド層41を形成しているが、上記のように、バリア膜13は、半導体基板1に引張応力を生じさせる膜であることが好ましい。すなわち、バリア膜13は、膜応力(膜自身の応力)は圧縮応力(スパッタリング法で成膜した窒化チタン膜の場合で例えば2GPa(ギガパスカル)程度の圧縮応力)が働き、作用・反作用で半導体基板1(MISFETを形成する活性領域)に引張応力を生じさせる。このような半導体基板1に引っ張り応力を生じさせる膜(ここではバリア膜13)として好ましいのは、窒化チタン(TiN)膜またはチタン(Ti)膜である。
バリア膜13が半導体基板1に生じさせる応力の方向や大きさは、膜の材料だけでなく成膜法にも依存する。バリア膜13が窒化チタン(TiN)膜の場合、プラズマCVD法で成膜すると、バリア膜13が半導体基板1に圧縮応力を生じさせる膜となる可能性があるが、スパッタリング法(PVD法:Physical Vapor Deposition)で成膜することで、バリア膜13を半導体基板1に引張応力を生じさせる膜とすることができる。一方、バリア膜13がチタン(Ti)膜の場合、スパッタリング法で成膜すると、バリア膜13が半導体基板1に圧縮応力を生じさせる膜となる可能性があるが、プラズマCVD法で成膜することで、バリア膜13を半導体基板1に引張応力を生じさせる膜とすることができる。このため、バリア膜13が窒化チタン(TiN)膜の場合は、スパッタリング法(PVD法)で形成することが好ましく、バリア膜13がチタン(Ti)膜の場合は、プラズマCVD法で形成することが好ましい。
また、バリア膜13が半導体基板1に生じさせる応力の方向や大きさは、成膜温度にも依存する。バリア膜13がスパッタリング法(PVD法)を用いた窒化チタン(TiN)膜の場合は、成膜温度が低いほどバリア膜13が半導体基板1に生じさせ得る引張応力が大きくなり、逆に成膜温度が高くなり過ぎると、バリア膜13が半導体基板1に圧縮応力を生じさせる膜となる可能性がある。このため、バリア膜13がスパッタリング法(PVD法)を用いた窒化チタン(TiN)膜の場合は、バリア膜13の成膜温度(基板温度)は300℃以下であることが好ましく、これにより、バリア膜13を半導体基板1に的確に引張応力を生じさせる膜とすることができる。また、成膜温度(基板温度)は、成膜装置に冷却機構を設けることで、室温以下とすることも可能である。
一方、バリア膜13がプラズマCVD法を用いたチタン(Ti)膜の場合も、成膜温度が低いほどバリア膜13が半導体基板1に生じさせ得る引張応力が大きくなり、逆に成膜温度が高くなり過ぎると、バリア膜13が半導体基板1に圧縮応力を生じさせる膜となる可能性がある。また、成膜温度が高すぎると、バリア膜13成膜時に金属膜12とゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b(を構成するシリコン)とが過剰に反応する可能性がある。このため、バリア膜13がプラズマCVD法を用いたチタン(Ti)膜の場合は、バリア膜13の成膜温度(基板温度)は450℃以下であることが好ましい。これにより、バリア膜13を半導体基板1に的確に引張応力を生じさせる膜とすることができるとともに、バリア膜13成膜時に金属膜12とゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b(を構成するシリコン)とが過剰に反応するのを抑制または防止できる。
また、窒化タンタル(TaN)膜またはタンタル(Ta)膜も半導体基板1に引張応力を生じさせる膜とすることができるので、バリア膜13として用いることが可能である。但し、窒化タンタル(TaN)膜またはタンタル(Ta)膜を用いた場合は、ステップS4のウェット洗浄処理の際にフッ酸(HF)を用いる必要が生じ、ウェット洗浄時にバリア膜13および金属膜12以外の部分までエッチングされてしまう可能性がある。このため、バリア膜13としては、窒化タンタル(TaN)膜やタンタル(Ta)膜よりも、ステップS4のウェット洗浄処理による除去が容易な窒化チタン(TiN)膜またはチタン(Ti)膜を用いることがより好ましい。
また、バリア膜13は、金属膜12と反応しがたい膜であり、ステップS3の第1の熱処理を行っても金属膜12と反応しない膜であることが望ましい。ステップS3の第1の熱処理でバリア膜13が金属膜12と反応してしまうと、金属シリサイド層41の形成が阻害されたり、金属シリサイド層41の組成が変動してしまう可能性がある。本実施の形態では、バリア膜13を金属膜12と反応しがたい膜とすることで、ステップS3の第1の熱処理で金属膜12とバリア膜13とが反応するのを防止することができ、ステップS3の第1の熱処理で金属シリサイド層41を的確に形成できるようになる。このような金属膜12と反応しがたいバリア膜13として、窒化チタン(TiN)膜やチタン(Ti)膜は好ましい。
また、形成された金属シリサイド層41の厚みが厚すぎると、リーク電流の増加を招く可能性があり、また、MISFETの微細化にも不利となる。このため、本実施の形態では、金属膜12の膜厚をあまり厚くしない方がより好ましい。すなわち、本実施の形態では、ステップS1で形成される金属膜12の膜厚(堆積膜厚、半導体基板1の主面に垂直な方向の厚み)は、15nm以下であることが好ましい。また、金属膜12が薄すぎると金属シリサイド層41の厚みが薄くなりすぎて拡散抵抗が増大する。このため、ステップS1で形成される金属膜12の膜厚(堆積膜厚、半導体基板1の主面に垂直な方向の厚み)は、3〜15nmであればより好ましく、6〜12nmであれば更に好ましく、例えば9nmとすることができる。
また、半導体基板1表面(ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面)に自然酸化膜がある状態で金属膜12を形成した場合、この自然酸化膜が金属膜12とシリコン(ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bのシリコン)との反応を阻害するように作用する。このため、半導体基板1表面に自然酸化膜がある状態で金属膜12を形成する場合には、金属膜12を厚く形成して金属膜12の金属元素Mがシリコン領域(ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b)中に拡散しやすくする必要があるが、本実施の形態では、上記のように金属膜12をあまり厚くしない方がよい。従って、本実施の形態では、半導体基板1表面(ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面)に自然酸化膜がない状態で金属膜12を形成することが好ましい。このため、半導体基板1の主面のゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面をドライクリーニングする工程(上記図11の工程P2に対応)を行ってそれら表面の自然酸化膜を除去し、その後、半導体基板1を大気中(酸素含有雰囲気中)にさらすことなくステップS1(金属膜12の堆積工程)およびステップS2(バリア膜13の堆積工程)を行うことが好ましい。これにより、自然酸化膜がない状態で金属膜12を形成でき、金属膜12が厚くなくとも、MSiからなる金属シリサイド層41を的確に形成できるようになる。従って、金属シリサイド層41の厚みが厚くなり過ぎてリーク電流が増加するのを防止することができる。また、MISFETの微細化にも有利となる。
また、本実施の形態では、上記のように、ドライクリーニング処理の工程(上記図11の工程P2)と半導体基板1の主面上に金属膜12を堆積する工程(図9のステップS1すなわち図11の工程P2)との間に、ドライクリーニング処理(処置)時に生成された生成物を除去することを目的とした150〜400℃の熱処理が半導体基板1に施されている(図11の工程P3)。このため、半導体基板1の主面上に堆積された金属膜12の自己整合反応(ステップS3の第1の熱処理によるM+Si→MSiの反応)が、上記生成物によって阻害されることがなく、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面で均一に起こり、電気抵抗のばらつきの小さい金属シリサイド層41を得ることができる。
また、ドライクリーニング処理工程(上記図11の工程P2)と金属膜12堆積工程(図9のステップS1、図11の工程P5)との間に、ドライクリーニング処理(処置)時に生成された生成物を除去することを目的とした熱処理が施されている(図11の工程P3)ので、金属膜12の自己整合反応が上記生成物によって阻害されることがなく、金属膜12が厚くなくとも、MSiからなる金属シリサイド層41を的確に形成できるようになる。従って、金属シリサイド層41の厚みが厚くなり過ぎてリーク電流が増加するのを防止することができる。また、MISFETの微細化にも有利となる。
本実施の形態では、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9b、p+型半導体領域10bの表面に金属シリサイド層41を形成する工程において、ドライクリーニング処理(処置)により半導体基板1の主面上に残留する生成物が150℃よりも高い温度の熱処理により除去されている。このため、シリコン(ゲート電極8aを構成するn型多結晶シリコン、ゲート電極8bを構成するp型多結晶シリコン、n+型半導体領域9b、p+型半導体領域10bが形成された半導体基板1を構成する単結晶シリコン)と金属膜12との自己整合反応が生成物により阻害されることなく均一に起こり、電気的抵抗のばらつきの小さい金属シリサイド層41を得ることができる。
また、本実施の形態では、半導体装置の製造終了(例えば半導体基板1をダイシングなどにより個片化して半導体チップを形成した段階)まで、金属シリサイド層41は、MSi(メタルモノシリサイド)相のままとされている。これは、製造された半導体装置において、金属シリサイド層41を、MSi2相およびM2Si相よりも低抵抗率のMSi相とすることで、金属シリサイド層41を低抵抗とし、コンタクト抵抗や、ソース・ドレインの拡散抵抗を低減でき、MISFETが形成された半導体装置の性能を向上できるためである。このため、本実施の形態は、第1の条件として、MSi2(メタルダイシリサイド)相およびM2Si(ダイメタルシリサイド)相よりも、MSi(メタルモノシリサイド)相の方が低抵抗率であるような金属シリサイドにより、金属シリサイド層41を形成する場合に適用すれば、効果が大きい。
また、本実施の形態は、MSi2の異常成長を抑制または防止しながらMSi相の金属シリサイド層41を形成できるので、第2の条件として、MSi2(メタルダイシリサイド)相が存在可能なシリサイドにより、金属シリサイド層41を形成する場合に適用すれば、効果が大きい。
また、本実施の形態は、熱処理工程での金属元素Mの不要(過剰)な拡散(移動)を防止してMSi2の異常成長を抑制または防止しながらMSi相の金属シリサイド層41を形成できるので、第3の条件として、金属シリサイド形成時にSi(シリコン)ではなく金属元素Mが拡散種となる場合に、本実施の形態を適用すれば、効果が大きい。
これら第1〜第3の条件を勘案すると、金属膜12が、Ni(ニッケル)膜、Ni−Pt(ニッケル−白金)合金膜、Ni−Pd(ニッケル−パラジウム)合金膜、Ni−Yb(ニッケル−イッテルビウム)合金膜、またはNi−Er(ニッケル−エルビウム)合金膜である場合に本実施の形態を適用すれば、効果が大きい。金属膜12が、Ni膜、Ni−Pt合金膜、Ni−Pd合金膜、Ni−Yb合金膜、またはNi−Er合金膜であれば、金属シリサイド形成時にSi(シリコン)ではなく金属元素Mが拡散種となり、MSi2相が存在し、MSi2相およびM2Si相よりもMSi相の方が低抵抗率となる。但し、金属シリサイド層からチャネル部へのMSi2の異常成長の問題や、金属シリサイド層中のMSi2部分の形成による抵抗ばらつき増大の問題は、金属膜12がNi膜、Ni−Pt合金膜、Ni−Pd合金膜、Ni−Yb合金膜またはNi−Er合金膜のいずれの場合にも生じるが、特に金属膜12がNi(ニッケル)膜の場合に最も顕著に現れる。このため、金属膜12がNi(ニッケル)膜である場合に本実施の形態を適用すれば、最も効果が大きい。これは、以下の実施の形態2についても同様である。
また、上記図22に示されるようなNiSi層141bからチャネル部へのNiSi2(ニッケルダイシリサイド)異常成長領域141cは、pチャネル型のMISFETよりもnチャネル型のMISFETで形成されやすい。上記図23からも分かるように、n型シリコン領域よりもp型シリコン領域の方が、より低い温度でNiとSiの反応が進んでおり、n型シリコン領域よりもp型シリコン領域の方が、Niが拡散しやすいと考えられる。このため、NiSi2異常成長領域141cはn型ウエル6よりもNiが拡散しやすいp型ウエル5で生じ易い。このため、本実施の形態を適用したときの金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2の異常成長を防止できる効果は、pチャネル型MISFETQpよりもnチャネル型MISFETQnにおいて、より大きくなる。これは、以下の実施の形態2についても同様である。
また、上記図27に関連して説明したように、ニッケルシリサイド層のシート抵抗がばらつきやすいのは、n型シリコン領域上にNi膜を成膜して熱処理することでニッケルシリサイド層を形成した場合よりも、p型シリコン領域上にNi膜を成膜して熱処理することでニッケルシリサイド層を形成した場合である。これも、n型領域よりもp型領域の方が、Niが拡散しやすく、NiとSiの反応が進み易いため、形成されたNiSi相のニッケルシリサイド層中に高抵抗のNiSi2部分が生じやすいためと考えられる。このため、本実施の形態を適用したときの金属シリサイド層41の抵抗のばらつきを低減できる効果は、nチャネル型MISFETQnよりもpチャネル型MISFETQpにおいて、より大きくなる。これは、以下の実施の形態2についても同様である。
また、本実施の形態では、ソースまたはドレイン用の半導体領域(9b,10b)上とゲート電極(8a,8b)上とに金属シリサイド層41を形成する場合について説明したが、他の形態として、ゲート電極8a,8b上には金属シリサイド層41を形成せずに、ソースまたはドレイン用の半導体領域(ここではn+型半導体領域9b、p+型半導体領域10b)上に金属シリサイド層41を形成することもできる。これは、以下の実施の形態2についても同様である。
また、本実施の形態では、最良の形態として、半導体基板1に形成したソースまたはドレイン用の半導体領域(ここではn+型半導体領域9b、p+型半導体領域10b)上に金属シリサイド層41を形成する場合について説明したが、他の形態として、半導体基板1に形成したソースまたはドレイン用以外の半導体領域上に、本実施の形態と同様の手法で金属シリサイド層41を形成することもできる。その場合にも、本実施の形態のような金属シリサイド層41形成法を用いたことにより、形成した金属シリサイド層中にMSi2部分が形成されるのを防止でき、金属シリサイド層の抵抗のばらつき低減効果を得ることができる。但し、本実施の形態のように、半導体基板1に形成したソースまたはドレイン用の半導体領域(ここではn+型半導体領域9b、p+型半導体領域10b)上に金属シリサイド層41を形成する場合であれば、金属シリサイド層41中にMSi2部分が形成されるのを防止して金属シリサイド層41の抵抗のばらつきを低減する効果に加えて、チャネル領域へのMSi2の異常成長防止効果を得ることができるので、効果が極めて大きい。
また、本実施の形態では、金属膜12を構成する金属元素M(例えばNi)がソースまたはドレイン用の半導体領域(ここではn+型半導体領域9b、p+型半導体領域10b)に拡散してMSiからなる金属シリサイド層41を形成する。このため、半導体基板1は、シリコン(Si)含有材料により構成されていることが好ましく、例えば単結晶シリコン、不純物をドープしたシリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、シリコンゲルマニウム(SixGe1−x、ここで0<x<1)またはカーボンドープシリコン(SixC1-x、ここで0.5<x<1)などにより構成することができるが、単結晶シリコンであれば最も好ましい。また、SOI(Silicon On Insulator)基板のように、絶縁基板上にシリコン(Si)含有材料層を形成したものを半導体基板1に用いることもできる。これは、以下の実施の形態2についても同様である。
また、本実施の形態は、素子分離領域4が、半導体基板1(素子分離領域4で規定された活性領域であり、MISFETが形成される活性領域)に圧縮応力を生じさせるように作用する場合に適用すれば、効果が大きい。これは、以下の実施の形態2についても同様である。その理由は次の通りである。
素子分離領域4が半導体基板1に圧縮応力を生じさせると、この圧縮応力は、半導体基板1(活性領域)の格子サイズを小さくし、MSi2の格子サイズに近づけるように作用する。このため、素子分離領域4に起因して半導体基板1に圧縮応力が生じた状態で熱処理を行うと、その圧縮応力によって半導体基板1の格子サイズが小さくなってMSi2の格子サイズに近くなった状態で熱処理が行われることになり、熱処理中に金属元素Mが拡散(移動)しやすくなるので、金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2の異常成長が生じやすくなる。
それに対して、本実施の形態では、半導体基板1に引張応力を生じさせる膜であるバリア膜13を金属膜12上に設けた状態で、ステップS3の第1の熱処理を行って、金属膜12とシリコン領域(ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b)とを反応させて、MSi相の金属シリサイド層41を形成している。このため、バリア膜13が、素子分離領域4に起因した圧縮応力(MISFETを形成する活性領域に素子分離領域4が作用させている圧縮応力)を相殺するように作用する。バリア膜13の引張応力により、素子分離領域4に起因する圧縮応力が半導体基板1の格子サイズを小さくするよう作用するのを抑制または防止できるので、ステップS3の第1の熱処理時に金属シリサイド層41からチャネル部へMSi2の異常成長が生じるのを抑制または防止することができる。
更に、本実施の形態では、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を、MSi2の格子サイズと半導体基板1の格子サイズとが一致する(すなわち上記ミスマッチαがゼロ%となる)温度T3未満(T2<T3)とし、より好ましくは上記ミスマッチαが0.01%となる温度T6以下(T2≦T6)、更に好ましくは上記ミスマッチαが0.02%となる温度T7以下(T2≦T7)としている。このため、素子分離領域4に起因した圧縮応力が半導体基板1(活性領域)の格子サイズを小さくするように作用したとしても、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を上記のような温度に制御することにより、ステップS5の第2の熱処理中に金属シリサイド層41からチャネル部へMSi2(メタルダイシリサイド)が異常成長するのを抑制または防止することができる。
また、本実施の形態の場合のように、半導体基板1に形成した溝4a内を絶縁体材料(絶縁膜4b,4c)で埋め込むことで素子分離領域4を形成した場合、すなわち、STI法により素子分離領域4を形成した場合、LOCOS法により素子分離を形成した場合に比べて、素子分離領域4の間の活性領域に作用する圧縮応力が大きくなる。これは、半導体基板1に形成した溝4aの側壁が活性領域側を押すような圧縮応力が素子分離領域4の間の活性領域に作用するためである。また、特に、溝4a内を埋める素子分離領域4用の絶縁体材料(ここでは絶縁膜4c)がプラズマCVD法(特にHDP−CVD法)により成膜された絶縁膜(例えば酸化シリコン膜)の場合には、O3−TEOS酸化膜(熱CVD法で形成された絶縁膜)の場合などに比べて、焼き締め時の収縮が少ないため、MISFETを形成する活性領域に素子分離領域4により働く圧縮応力が大きくなる。このように、MISFETを形成する活性領域に素子分離領域4により働く圧縮応力が大きい場合に本実施の形態を適用すれば、効果が大きく、これは、以下の実施の形態2についても同様である。
また、STI法により形成した素子分離領域4が半導体基板1(活性領域のうちの素子分離領域4に近い領域)に作用させる圧縮応力は、CBED(収束電子線回折)法を用いた測定によると、−0.035GPa程度であった。このため、バリア膜13が半導体基板1に生じさせる引張応力は、0.035GPa(ギガパスカル)以上であればより好ましく、これにより、ステップS3の第1の熱処理の際に、素子分離領域4に起因した圧縮応力の影響(MSi2の異常成長など)を、的確に防止できる。また、バリア膜13が半導体基板1に生じさせる引張応力が、2.5GPa(ギガパスカル)以下であれば更に好ましく、バリア膜13の成膜が容易になる。従って、バリア膜13が半導体基板1に生じさせる引張応力は、0.035〜2.5GPa(ギガパスカル)程度であれば、より好ましい。但し、バリア膜13が半導体基板1に生じさせる引張応力の上記数値(上記0.035GPa〜2.5GPa)は、半導体基板1単体(ゲート電極や不純物拡散層のような構成物を形成していない状態の半導体基板)の一方の主面全面上にバリア膜13を成膜したときの、半導体基板1とバリア膜13全体の反り量(室温での反り量)から計算した値である。なお、バリア膜13成膜面側を上に向けた状態で半導体基板1が上に凸型に反ったときに、半導体基板1には引張応力が生じている。
また、素子分離用の溝4a内に埋め込まれた絶縁体が、主としてプラズマCVD法(特にHDP−CVD法)で形成されている場合(すなわち絶縁膜4cがプラズマCVD法(特にHDP−CVD法)で形成されている場合)、成膜した段階で緻密な膜が形成され、成膜後の焼き締め時の収縮が少ない。このため、素子分離領域4が半導体基板1(素子分離領域4で規定された活性領域)に作用させる圧縮応力が大きくなり、この圧縮応力が金属シリサイド層形成時に影響を及ぼしやすくなる。本実施の形態は、素子分離領域4が半導体基板1に作用させる圧縮応力が大きくても、それが金属シリサイド層41形成時に悪影響(例えばMSi2の異常成長)を及ぼすのを防止できる。このため、本実施の形態は、素子分離用の溝4a内に埋め込まれた絶縁体(素子分離領域4を構成する絶縁体、ここでは絶縁膜4b,4c)が、主としてプラズマCVD法(特にHDP−CVD法)で形成された絶縁膜(ここでは絶縁膜4c)からなる場合に適用すれば、その効果は極めて大きい。これは、以下の実施の形態2についても同様である。
次に、MSi2(メタルダイシリサイド)の異常成長と結晶構造の関係について説明する。
半導体基板1がシリコン(単結晶シリコン)の場合、シリコンの結晶構造は、ダイヤモンド構造であり、結晶系は立方晶系であり、空間群はFd3m(227)であり、この結晶構造の単位格子の長さが格子定数、すなわち格子サイズに対応する。
図28はシリコン(Si)の結晶構造であるダイヤモンド構造を示す説明図(斜視図)である。図28で示される立方体が、シリコン(Si)の単位結晶となり、この立方体の一辺(単位格子)の長さL1が、シリコン(Si)の格子定数、すなわちシリコン(Si)の格子サイズとなる。従って、この長さL1が、半導体基板1がシリコン(単結晶シリコン)の場合の上記LSに対応する(L1=LS)。図28において、球が配置された位置にSi原子が配置される。
一方、MSi2(メタルダイシリサイド)がNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の場合、NiSi2(ニッケルダイシリサイド)の結晶構造は、蛍石構造(CaF2型構造)であり、結晶系は立方晶系であり、空間群はFm3m(225)であり、この結晶構造の単位格子の長さが格子定数、すなわち格子サイズに対応する。
図29はNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の結晶構造である蛍石構造を示す説明図(斜視図)である。図29で示される立方体が、NiSi2(ニッケルダイシリサイド)の単位結晶となり、この立方体の一辺(単位格子)の長さL2が、NiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子定数、すなわちNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子サイズとなる。従って、この長さL2が、上記MSi2がNiSi2の場合の上記LMに対応する(L2=LM)。図29において、球が配置された位置にNi原子またはSi原子が配置される。
図29に示される蛍石構造は、AB2(A,Bはそれぞれ異なる元素)の組成を持つ化合物の構造であり、NiSi2は、前記AB2において、A=Ni,B=Siに対応する。この蛍石構造は、A元素(NiSi2の場合はNi)の面心立方構造(図30(a)の構造)と、B元素(NiSi2の場合はSi)の単純立方構造(図30(b)の構造)の組み合わせとなっている。
図30の(a)は、AB2の組成を持つ蛍石構造におけるA元素(NiSi2の場合はNi)の結晶構造を示し、図30の(b)は、AB2の組成を持つ蛍石構造におけるB元素(NiSi2の場合はSi)の結晶構造を示す説明図(斜視図)である。
図30(a)に示される立方体において、球の位置にNi元素が配置される。すなわち、図30(a)は、立方体の各頂点と、立方体の各面の中心にNi元素が配置する面心立方構造となっている。図30(a)の面心立方構造の一辺(単位格子)の長さは、上記L2と同じであり、NiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子定数、すなわちNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子サイズと同じになる。
また、図30(b)に示される立方体において、球の位置にSi元素が配置される。すなわち、図30(b)は、立方体の各頂点にSi元素が配置する単純立方構造となっている。図30(b)の単純立方構造の一辺(単位格子)の長さL3は、上記の長さL2の半分であり、L2=2L3の関係が成り立つ。
図30(a)の構造(面心立方構造)と図30(b)の構造(単純立方構造)とが、それぞれの重心が一致するように組み合わさって、図29の蛍石構造が構成される。
半導体基板1を構成する単結晶Si(シリコン)の格子サイズとNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子サイズが一致した状態とは、シリコン(Si)の格子定数である上記長さL1と、NiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子定数である上記長さL2とが等しく(すなわちL1=L2)なった状態に対応する。また、半導体基板1を構成する単結晶シリコン(Si)の格子サイズとNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子サイズとが一致する上記温度T4は、シリコン(Si)の格子定数である上記長さL1とNiSi2(ニッケルダイシリサイド)の格子定数である上記長さL2とが一致する(等しくなる、すなわちL1=L2になる)温度に対応する。
図28のダイヤモンド構造と図29の蛍石構造とは、類似性が高い。すなわち、図29の蛍石構造において、面心立方構造のNiのサイトにNiではなくSiを配置し、かつ、単純立方構造の8つのSiのサイトのうち、4つのサイト(図30(b)において符号51で示される4つのサイト)にはSiを配置するが、残りの4つのサイト(図30(b)において符号52で示される4つのサイト)にはSiを配置しないようにすれば、図28のダイヤモンド構造と同じ構造になる。
また、図28のシリコンのダイヤモンド構造におけるSiの配置と図29のNiSi2の蛍石構造におけるSiの配置とに注目してみると、図28のシリコンのダイヤモンド構造において、{400},{200},{100}面に位置する[110]方向の2個のSi原子の間の距離は(1/2)0.5×L1となる。一方、NiSi2の蛍石構造において、図30(b)のSiの単純立方構造の各面の対角線の距離(すなわち[110]方向のSi原子間の距離)は、(2)0.5×L3=(1/2)0.5×L2となる。L1=L2の場合は、両者は一致する(等しくなる)。
熱処理を施すことによりSiとNiが相互拡散する。ステップS5の第2の熱処理温度T2が、半導体基板1を構成する単結晶シリコン(Si)の格子サイズとNiSi2の格子サイズとが一致する上記温度T4に近いと、ステップS5の第2の熱処理の際に、ダイヤモンド構造と蛍石構造との高い類似性により、ダイヤモンド構造のSiがNiSi2の蛍石構造内のSiと同じような配置をとる(特に{400}面のSi)。このため、ステップS5の第2の熱処理でNiとSiの格子間で置換が生じやすくなってNiSi2部分が生成されやすくなると考えられる。
従って、半導体基板1の結晶構造とMSi2(メタルダイシリサイド)の結晶構造の類似性が高い場合、特に、半導体基板1の結晶構造がダイヤモンド構造をとり、MSi2(メタルダイシリサイド)の結晶構造が蛍石構造をとる場合には、上述したような金属シリサイド層からチャネル部へのMSi2の異常成長の問題や、金属シリサイド層中のMSi2部分の形成による抵抗ばらつき増大の問題が顕著に発生することになる。
このため、半導体基板1の結晶構造とMSi2(メタルダイシリサイド)の結晶構造の類似性が高い場合、特に、半導体基板1の結晶構造がダイヤモンド構造をとり、MSi2(メタルダイシリサイド)の結晶構造が蛍石構造をとる場合に、本実施の形態を適用すれば、効果が大きい。従って、半導体基板1に単結晶シリコンを用いれば最も好ましいが、単結晶シリコン以外であっても、単結晶シリコンと同様にダイヤモンド構造型の結晶構造を有するものであれば、半導体基板1に好適に用いることができる。これは、以下の実施の形態2についても同様である。
また、金属膜12としてNi膜を用いれば、形成され得る上記MSi2が蛍石構造のNiSi2となるので、本実施の形態を適用する効果が大きいが、Ni膜以外であっても、形成され得るMSi2が蛍石構造型の結晶構造をとるような金属または合金を、金属膜12に用いる場合にも、本実施の形態は有効である。例えば、金属膜12が、ニッケル合金膜、特にNi−Pt(ニッケル−白金)合金膜、Ni−Pd(ニッケル−パラジウム)合金膜、Ni−Yb(ニッケル−イッテルビウム)合金膜、またはNi−Er(ニッケル−エルビウム)合金膜である場合には、形成されるMSi2が蛍石構造(但し、図30(a)の面心立方構造のNiサイトの一部が、合金を構成する他の金属に置換される)となり得るので、本実施の形態を適用して、好適である。これは、以下の実施の形態2についても同様である。
(実施の形態2)
図31は、本実施の形態の半導体装置の製造工程の一部を示す製造プロセスフロー図であり、上記実施の形態1の図9に対応するものである。図31には、上記図7の構造が得られた後、サリサイドプロセスによりゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面に金属シリサイド層(金属・半導体反応層)を形成する工程の製造プロセスフローが示されている。図32〜図35は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
本実施の形態の半導体装置の製造工程は、上記ステップS4でウェット洗浄処理を行うことによりバリア膜13と、未反応の金属膜12とを除去する工程までは、上記実施の形態1と同様であるので、ここではその説明を省略し、上記ステップS4に続く工程について説明する。
上記実施の形態と同様にして上記ステップS4までの工程を行って、上記図14にほぼ相当する図32の構造を得た後、図33に示されるように、金属シリサイド層41上を含む半導体基板1の主面(全面)上にバリア膜(第2バリア膜、応力制御膜、キャップ膜)13aを形成(堆積)する(図31のステップS11)。
次に、上記実施の形態1と同様のステップS5の第2の熱処理を行う。本実施の形態では、ステップS5の第2の熱処理は、バリア膜13aが形成されている状態で行われるが、ステップS5の第2の熱処理の条件や役割については上記実施の形態1と同様である。
従って、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態においても、ステップS5の第2の熱処理は、金属シリサイド層41の相変化(M2Si相からMSi相への相変化)のために行うのではなく、金属シリサイド層41の安定化のために行われる安定化アニールである。本実施の形態のステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2については、上記実施の形態1におけるステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2と同様であるので、ここではその説明は省略する。また、本実施の形態のステップS5の第2の熱処理時の雰囲気も上記実施の形態1と同様である。また、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態においても、ステップS5の第2の熱処理の後は、半導体装置の製造終了(例えば半導体基板1を切断して半導体チップに個片化する)まで、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度よりも高い温度に半導体基板1がならないようにする。
ステップS5の第2の熱処理の後、ウェット洗浄処理などを行うことにより、図34に示されるように、バリア膜13aを除去する(図31のステップS12)。この際、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面上に金属シリサイド層41を残存させる。ステップS12のウェット洗浄処理は、硫酸を用いたウェット洗浄、または硫酸と過酸化水素水とを用いたウェット洗浄などにより行うことができる。
それ以降の工程は、上記実施の形態1と同様である。すなわち、上記実施の形態1と同様にして、図35に示されるように、絶縁膜42および絶縁膜43を形成し、絶縁膜43,42にコンタクトホール44を形成し、コンタクトホール44内にプラグ45を形成し、プラグ45が埋め込まれた絶縁膜43上にストッパ絶縁膜51および絶縁膜52を形成し、配線溝53を形成し、配線溝内53にバリア導体膜54および銅膜を埋め込んで配線55を形成する。
バリア膜13aは、バリア膜13と同様に、半導体基板1に引張応力を生じさせる膜である。このため、バリア膜13と同様の膜を、バリア膜13aとして用いることができ、好ましくは、窒化チタン(TiN)膜またはチタン(Ti)膜を用いることができる。本実施の形態では、半導体基板1の活性領域に素子分離領域4が生じさせている圧縮応力を相殺するために、半導体基板1に引張応力を生じさせるバリア膜13aを形成するので、バリア膜13aは応力制御膜(半導体基板1の活性領域の応力を制御する膜)とみなすこともできる。
また、上記実施の形態1でバリア膜13について説明したように、半導体基板1に生じさせる応力の方向や大きさは、膜の材料だけでなく成膜法にも依存するため、バリア膜13と同様の理由により、バリア膜13aが窒化チタン(TiN)膜の場合は、スパッタリング法(PVD法)で形成することが好ましく、バリア膜13aがチタン(Ti)膜の場合は、プラズマCVD法で形成することが好ましい。また、バリア膜13と同様の理由により、バリア膜13aがスパッタリング法(PVD法)を用いた窒化チタン(TiN)膜の場合は、バリア膜13aの成膜温度(基板温度)は300℃以下であることが好ましく、バリア膜13aがプラズマCVD法を用いたチタン(Ti)膜の場合は、バリア膜13aの成膜温度(基板温度)は450℃以下であることが好ましい。
また、窒化タンタル(TaN)膜またはタンタル(Ta)膜も半導体基板1に引張応力を生じさせる膜とすることができるので、バリア膜13aとして用いることが可能である。但し、窒化タンタル(TaN)膜またはタンタル(Ta)膜を用いた場合は、ステップS12のウェット洗浄処理の際にフッ酸(HF)を用いる必要が生じ、ウェット洗浄時にバリア膜13a以外の部分までエッチングされてしまう可能性がある。このため、バリア膜13aとしては、窒化タンタル(TaN)膜やタンタル(Ta)膜よりも、ステップS12のウェット洗浄処理による除去が容易な窒化チタン(TiN)膜またはチタン(Ti)膜を用いることがより好ましい。また、バリア膜13aの引張応力の好ましい範囲も、バリア膜13と同様である。
また、バリア膜13と同様に、バリア膜13aも、酸素(O)を透過しない(透過しにくい)膜である。すなわち、バリア膜13aは酸素透過性が無い膜である。バリア膜13aが酸素(O)の透過を防止するので、ステップS5の第2の熱処理時に、金属シリサイド層41に酸素(O)が供給されるのを防止できる。これにより、酸素に起因した欠陥が生成されるのを抑制または防止でき、酸素に起因した欠陥を通して金属元素Mが拡散するのを抑制または防止して、ステップS5の第2の熱処理時に金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2の異常成長が生じるのを更に的確に抑制または防止することができる。このような酸素(O)を透過しないバリア膜13aとして、窒化チタン(TiN)膜やチタン(Ti)膜は好ましい。
また、バリア膜13aは、金属シリサイド層41と反応しがたい膜であり、ステップS5の第2の熱処理を行っても金属シリサイド層41と反応しない膜である。ステップS5の第2の熱処理でバリア膜13aが金属シリサイド層41と反応してしまうと、金属シリサイド層41の組成が変動してしまう可能性があるが、本実施の形態では、バリア膜13aを金属シリサイド層41と反応しがたい膜とすることで、ステップS5の第2の熱処理で金属シリサイド層41とバリア膜13aとが反応するのを防止することができ、金属シリサイド層41を的確に形成できるようになる。このような金属シリサイド層41と反応しがたいバリア膜13aとして、窒化チタン(TiN)膜やチタン(Ti)膜は好ましい。
上記実施の形態1では、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を制御することで、ステップS5の第2の熱処理中に金属シリサイド層41からチャネル部へMSi2(メタルダイシリサイド)が異常成長するのを抑制または防止していた。しかしながら、半導体装置の更なる高性能化や高信頼性化を考えると、金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2の異常成長は可能な限り少なくすることが望ましい。このため、本実施の形態では、バリア膜13および金属膜12を除去して金属シリサイド層41の表面を露出した後、ステップS11として金属シリサイド層41上を含む半導体基板1の主面(全面)上にバリア膜13aを形成してから、金属シリサイド層41がバリア膜13aで覆われた状態でステップS5の第2の熱処理を行っている。このバリア膜13aは、バリア膜13同様、半導体基板1に引張応力を生じさせる膜である。
本実施の形態では、半導体基板1に引張応力を生じさせるバリア膜13aを形成した状態でステップS5の第2の熱処理を行うことで、バリア膜13aが作用させる引張応力に起因して、バリア膜13aが無い場合に比べて半導体基板1の格子サイズを大きくすることができ、半導体基板1の格子サイズとMSi2の格子サイズとの差を大きくして、金属元素Mの異常拡散をより的確に防止できる。これにより、ステップS5の第2の熱処理中に金属シリサイド層41からチャネル部へMSi2が異常成長するのを、より的確に防止できる。
また、本実施の形態では、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度T2を上記実施の形態1で説明したような温度に制御するだけでなく、半導体基板1に引張応力を生じさせるバリア膜13aを形成した状態でステップS5の第2の熱処理を行うので、バリア膜13aが、素子分離領域4に起因した圧縮応力を相殺するように作用する。素子分離領域4に起因する圧縮応力が半導体基板1の格子サイズを小さくするよう作用するのを、バリア膜13aの引張応力により抑制または防止できるので、たとえ素子分離領域4が半導体基板1(活性領域)に圧縮応力を生じさせるように作用していても、ステップS5の第2の熱処理時に金属シリサイド層41からチャネル部へMSi2の異常成長が生じるのを、より的確に防止できる。
このように、本実施の形態では、上記実施の形態1の効果を得られるのに加えて、ステップS5の第2の熱処理中の金属シリサイド層41からチャネル部へのMSi2の異常成長を更に的確に防止できる。また、金属シリサイド層41中に高抵抗のNiSi2部分が生じるのを更に的確に防止して、金属シリサイド層41の抵抗のばらつきを更に的確に低減できる。従って、半導体装置の性能や信頼性を更に向上させることができる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。