本実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、本実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、本実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、本実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、本実施の形態においては、電界効果トランジスタを代表するMIS・FET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)をMISと略し、pチャネル型のMIS・FETをpMISと略し、nチャネル型のMIS・FETをnMISと略す。また、便宜的にMOSと記載しても非酸化膜を除外するものではない。また、本実施の形態において、ウエハと言うときは、Si(Silicon)単結晶ウエハを主とするが、それのみではなく、SOI(Silicon On Insulator)ウエハ、集積回路をその上に形成するための絶縁膜基板等を指すものとする。その形も円形またはほぼ円形のみでなく、正方形、長方形等も含むものとする。また、シリコン膜、シリコン部、シリコン部材等というときは、明らかにそうでないときまたはそうでない旨明示されているときを除き、純粋なSiばかりでなく、不純物を含むもの、SiGeまたはSiGeC等のSiを主要な成分の一つとする合金等(歪Siを含む)、添加物を含むものを含むことはいうまでもない。また、多結晶シリコン等というときも、明らかにそうでないときまたはそうでない旨明示されているときを除き、典型的なものばかりでなく、アモルファスSi等も含むことはいうまでもない。
また、本実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
また、ドライクリーニング技術に関しては、一之瀬らの日本国特許出願第2006−3704号(2006.1.11出願)、日本国特許出願第2006−12355号(2006.1.20出願)、二瀬らの日本国特許出願第2006−107780(2006.4.10出願)に開示されているので、それと重複する部分については、原則として繰り返さないこことする。また、サリサイド技術において、応力制御膜(半導体基板の活性領域の応力を制御する膜)および酸素の透過を防止する膜として機能し、サリサイド材料膜の上に形成されるバリア膜の効果等に関しては、二瀬らの日本国特許出願第2007−81147(2007.3.27出願)に開示されているので、それと重複する部分については、原則として繰り返さないこととする。
(実施の形態1)
本実施の形態1による半導体装置の製造工程を図1から図7の図面を参照して説明する。図1から図7は、本実施の形態1である半導体装置、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)デバイスの製造工程中の要部断面図である。
まず、図1に示されるように、例えば1から10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶Siなどからなる半導体基板(この段階では半導体ウエハと称する平面略円形状の半導体の薄板)1を準備する。次に、この半導体基板1を熱酸化してその表面に、例えば厚さ10nm程度の絶縁膜2を形成した後、その上層にCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより、例えば厚さ100nm程度の絶縁膜3を堆積する。絶縁膜2は酸化シリコンなどからなり、絶縁膜3は窒化シリコンなどからなる。
それから、フォトレジスト膜をマスクとして絶縁膜3、絶縁膜2および半導体基板1を順次ドライエッチングすることにより、素子分離形成予定領域の半導体基板1に、例えば深さ300nm程度の溝(素子分離用の溝)4aを形成する。
次に、図2に示されるように、熱リン酸などを用いたウェットエッチングにより絶縁膜3を除去した後、溝4aの内部(側壁および底部)を含む半導体基板1上に、例えば厚さ10nm程度の絶縁膜4bを形成する。それから、半導体基板1上(すなわち絶縁膜4b上)に、溝4a内を埋めるように、絶縁膜4cをCVD法などにより堆積する。
絶縁膜4bは、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる。絶縁膜4bが酸窒化シリコン膜の場合には、絶縁膜4bを形成した後の熱処理によって溝4aの側壁が酸化することによる体積膨張を防止でき、半導体基板1に働く圧縮応力を低減できる効果がある。絶縁膜4cは、HDP−CVD(High Density Plasma CVD:高密度プラズマCVD)法により成膜された酸化シリコン膜、またはO3−TEOS酸化膜などである。なお、O3−TEOS酸化膜とは、O3(オゾン)およびTEOS(Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン、Tetra Ethyl Ortho Silicateとも言う)を原料ガス(ソースガス)として用いて熱CVD法により形成した酸化シリコン膜である。絶縁膜4cがHDP−CVD法により成膜された酸化シリコン膜の場合、絶縁膜4bは、絶縁膜4cを堆積する際の半導体基板1へのダメージ防止の効果がある。
次に、絶縁膜4cをCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨して、溝4aの外部の絶縁膜4cを除去し、溝4aの内部に絶縁膜4b,4cを残すことにより、素子分離領域4を形成する。
それから、半導体基板1を、例えば1000℃程度で熱処理することにより、溝4aに埋め込んだ絶縁膜4cを焼き締める。焼き締め前の状態では、O3−TEOS酸化膜よりもHDP−CVD法により成膜された酸化シリコン膜の方が緻密である。このため、絶縁膜4cがO3−TEOS酸化膜の場合、焼き締めによる絶縁膜4cの収縮により、半導体基板1に働く圧縮応力を低減できる効果がある。一方、絶縁膜4cがHDP−CVD法により成膜された酸化シリコン膜の場合には、絶縁膜4cがO3−TEOS酸化膜の場合に比べて、焼き締め時の絶縁膜4cの収縮が少ないため、素子分離領域4によって半導体基板1に働く圧縮応力が大きくなる。
このようにして、溝4a内に埋め込まれた絶縁膜4b,4cからなる素子分離領域4が、STI(Shallow Trench Isolation)法により形成される。すなわち、本実施の形態1の素子分離領域4は、半導体基板1に形成された素子分離用の溝4a内に埋め込まれた絶縁体(ここでは絶縁膜4b,4c)からなる。後述するnMIS(すなわちnMISを構成するゲート絶縁膜7、ゲート電極8a、ソース・ドレイン用のn−型半導体領域9aおよびn+型半導体領域9b)は、素子分離領域4で規定された(囲まれた)活性領域に形成される。また、後述するpMIS(すなわちpMISを構成するゲート絶縁膜7、ゲート電極8b、ソース・ドレイン用のp−型半導体領域10aおよびp+型半導体領域10b)も、素子分離領域4で規定された(囲まれた)活性領域に形成される。
次に、図3に示されるように、半導体基板1の表面から所定の深さに渡ってp型ウエル5およびn型ウエル6を形成する。p型ウエル5は、pMIS形成予定領域を覆うフォトレジスト膜をイオン注入阻止マスクとして、nMIS形成予定領域の半導体基板1に、例えばB(ホウ素)などのp型の不純物をイオン注入することなどによって形成することができる。また、n型ウエル6は、nMIS形成予定領域を覆う他のフォトレジスト膜をイオン注入阻止マスクとして、pMIS形成予定領域の半導体基板1に、例えばP(リン)またはAs(ヒ素)などのn型の不純物をイオン注入することなどによって形成することができる。
次に、例えばHF(フッ酸)水溶液を用いたウェットエッチングなどにより半導体基板1の表面を清浄化(洗浄)した後、半導体基板1の表面(すなわちp型ウエル5およびn型ウエル6の表面)上にゲート絶縁膜7を形成する。ゲート絶縁膜7は、例えば薄い酸化シリコン膜などからなり、例えば熱酸化法などによって形成することができる。
次に、半導体基板1上(すなわちp型ウエル5およびn型ウエル6のゲート絶縁膜7上)に、ゲート電極形成用の導体膜として、多結晶シリコン膜のようなシリコン膜8を形成する。シリコン膜8のうちのnMIS形成予定領域(後述するゲート電極8aとなる領域)は、フォトレジスト膜をマスクとして用いてリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することなどにより、低抵抗のn型半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とされている。また、シリコン膜8のうちのpMIS形成予定領域(後述するゲート電極8bとなる領域)は、他のフォトレジスト膜をマスクとして用いてホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することなどにより、低抵抗のp型半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とされている。また、シリコン膜8は、成膜時にはアモルファスシリコン膜であったものを、成膜後(イオン注入後)の熱処理により多結晶シリコン膜に変えることもできる。
次に、図4に示されるように、シリコン膜8をフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いてパターニングすることにより、ゲート電極8a,8bを形成する。nMISのゲート電極となるゲート電極8aは、n型の不純物を導入した多結晶シリコン膜(n型半導体膜、ドープトポリシリコン膜)からなり、p型ウエル5上にゲート絶縁膜7を介して形成される。すなわち、ゲート電極8aは、p型ウエル5のゲート絶縁膜7上に形成される。また、pMISのゲート電極となるゲート電極8bは、p型の不純物を導入した多結晶シリコン膜(p型半導体膜、ドープトポリシリコン膜)からなり、n型ウエル6上にゲート絶縁膜7を介して形成される。すなわち、ゲート電極8bは、n型ウエル6のゲート絶縁膜7上に形成される。ゲート電極8a,8bのゲート長は、必要に応じて変更できるが、例えば50nm程度とすることができる。
次に、図5に示されるように、p型ウエル5のゲート電極8aの両側の領域にPまたはAsなどのn型の不純物をイオン注入することにより、一対のn−型半導体領域9aを形成し、n型ウエル6のゲート電極8bの両側の領域にBなどのp型の不純物をイオン注入することにより、(一対の)p−型半導体領域10aを形成する。n−型半導体領域9aおよびp−型半導体領域10aの深さ(接合深さ)は、例えば30nm程度とすることができる。
次に、ゲート電極8a,8bの側壁上に、絶縁膜として、例えば酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれら絶縁膜の積層膜などからなる側壁スペーサまたはサイドウォール(側壁絶縁膜)11を形成する。サイドウォール11は、例えば半導体基板1上に酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜を堆積し、この酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜をRIE(Reactive Ion Etching)法などにより異方性エッチングすることによって形成することができる。
サイドウォール11の形成後、一対のn+型半導体領域9bを、例えばp型ウエル5のゲート電極8aおよびサイドウォール11の両側の領域にPまたはAsなどのn型の不純物をイオン注入することにより形成する。また、一対のp+型半導体領域10bを、例えばn型ウエル6のゲート電極8bおよびサイドウォール11の両側の領域にBなどのp型の不純物をイオン注入することにより形成する。n+型半導体領域9bを先に形成しても、あるいはp+型半導体領域10bを先に形成してもよい。イオン注入後、導入した不純物の活性化のための熱処理を行うこともできる。n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの深さ(接合深さ)は、例えば80nm程度とすることができる。
n+型半導体領域9bは、n−型半導体領域9aよりも不純物濃度が高く、p+型半導体領域10bは、p−型半導体領域10aよりも不純物濃度が高い。これにより、nMISのソースまたはドレインとして機能するn型の半導体領域(不純物拡散層)が、n+型半導体領域(不純物拡散層)9bおよびn−型半導体領域9aにより形成され、pMISのソースまたはドレインとして機能するp型の半導体領域(不純物拡散層)が、p+型半導体領域(不純物拡散層)10bおよびp−型半導体領域10aにより形成される。従って、nMISおよびpMISのソース・ドレインは、LDD(Lightly doped Drain)構造を有している。n−型半導体領域9aは、ゲート電極8aに対して自己整合的に形成され、n+型半導体領域9bは、ゲート電極8aの側壁上に形成されたサイドウォール11に対して自己整合的に形成される。p−型半導体領域10aは、ゲート電極8bに対して自己整合的に形成され、p+型半導体領域10bは、ゲート電極8bの側壁上に形成されたサイドウォール11に対して自己整合的に形成される。このようにして、p型ウエル5にnMIS(Qn)が形成され、n型ウエル6にpMIS(Qp)が形成され、図5の構造が得られる。なお、n+型半導体領域9bは、nMIS(Qn)のソースまたはドレイン用の半導体領域とみなすことができ、p+型半導体領域10bは、pMIS(Qp)のソースまたはドレイン用の半導体領域とみなすことができる。
次に、サリサイド技術により、nMIS(Qn)のゲート電極8aおよびソース・ドレイン(ここではn+型半導体領域9b)の表面と、pMIS(Qp)のゲート電極8bおよびソース・ドレイン(ここではp+型半導体領域10b)の表面とに、低抵抗の金属シリサイド層(後述の金属シリサイド層41aに対応)を形成する。以下に、この金属シリサイド層の形成工程について説明する。
図6は、図5に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。図7は、本実施の形態1の半導体装置の製造工程の一部を示す製造プロセスフロー図であり、図5の構造が得られた後、サリサイドプロセスによりゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面に金属シリサイド層(金属・半導体反応層)を形成する工程の製造プロセスフローが示されている。図8はシリサイド材料(金属シリサイド層41形成用の材料膜、ここでは金属膜12およびバリア膜13に対応)の成膜装置の概略平面図、図9はシリサイド材料の成膜工程図、図10はシリサイド材料の成膜装置に備わるドライクリーニング処理用チャンバの概略断面図、図11はシリサイド材料の成膜装置に備わるドライクリーニング処理用チャンバにおける半導体ウエハの処理工程を説明するためのチャンバの概略断面図である。さらに、図12は、図6に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。なお、図7は、図6および図12の工程の製造プロセスフローに対応し、図9は図6の工程の製造プロセスフローに対応する。
上記のようにして図5の構造が得られた後、図6に示されるように、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面を露出させてから、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b上を含む半導体基板1上に金属膜12を、例えばスパッタリング法を用いて堆積する(図7のステップS1)。それから、金属膜12上にバリア膜(第1バリア膜、応力制御膜、酸化防止膜、キャップ膜)13を堆積する(図7のステップS2)。また、ステップS1(金属膜12堆積工程)の前に、HFガス、NF3ガス、NH3ガス又はH2ガスのうち少なくともいずれか一つを用いたドライクリーニング処理(後述する工程P2に対応)を行って、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9b及びp+型半導体領域10bの表面の自然酸化膜を除去した後、半導体基板1を大気中(酸素含有雰囲気中)にさらすことなく、ステップS1およびステップS2を行えば、より好ましい。金属膜12は、例えばNi膜からなり、その厚さ(堆積膜厚)は、例えば10nm程度とすることができる。Ni膜以外にも、例えばNi−Pt(白金)合金膜(NiとPtの合金膜)、Ni−Pd(パラジウム)合金膜(NiとPdの合金膜)、Ni−Yb(イッテルビウム)合金膜(NiとYbの合金膜)またはNi−Er(エルビウム)合金膜(NiとErの合金膜)のようなニッケル合金膜などを金属膜12として用いることができる。また、Pt膜を金属膜12として用いることもできる。バリア膜13は、例えばTiN(窒化チタン)膜またはTi(チタン)膜からなり、その厚さ(堆積膜厚)は、例えば15nm程度とすることができる。バリア膜13は、応力制御膜(半導体基板の活性領域の応力を制御する膜)および酸素の透過を防止する膜として機能し、半導体基板1に働く応力の制御や金属膜12の酸化防止などのために金属膜12上に設けられる。以下に、金属膜12およびバリア膜13の好ましい形成方法の一例について説明する。
金属膜12およびバリア膜13の成膜には、図8に示されるシリサイド材料の成膜装置20が用いられる。
図8に示されるように、成膜装置20は、第1搬送室21aと第2搬送室21bの2つの搬送室が配置され、第1搬送室21aの周囲に開閉手段であるゲートバルブ22を介してロードロック室23,24および3つのチャンバ25,26,27が備わり、第2搬送室21bの周囲に開閉手段であるゲートバルブ22を介して2つのチャンバ28,29が備わったマルチチャンバタイプである。さらに、第1搬送室21aと第2搬送室21bとの間には2つの搬送用のチャンバ30,31が備わっている。第1搬送室21aは排気機構等により所定の真空度に保持され、その中央部には半導体ウエハSWを搬送するための多関節アーム構造の搬送用ロボット32aが設けられている。同様に、第2搬送室21bは排気機構等により所定の真空度に保持され、その中央部には半導体ウエハSWを搬送するための多関節アーム構造の搬送用ロボット32bが設けられている。
第1搬送室21aに備わるチャンバ25,26は相対的に高温の加熱処理を行う加熱処理用チャンバ、チャンバ27はドライクリーニング処理用チャンバである。第2搬送室21bに備わるチャンバ28はスパッタリング法により金属膜12(例えばNi膜)を成膜する成膜用チャンバ、チャンバ29はスパッタリング法によりバリア膜13(例えばTiN膜)を成膜する成膜用チャンバである。また、バリア膜13をプラズマCVD法で成膜する場合は、チャンバ29はプラズマCVD法によりバリア膜13(例えばTi膜)を成膜する成膜用チャンバとなる。
第1搬送室21aと第2搬送室21bとの間に備わるチャンバ30,31は第1搬送室21aと第2搬送室21bとの間での半導体ウエハSWの受け渡しを行う受渡用チャンバであり、また半導体ウエハSWの冷却にも用いられる冷却用チャンバである。なお、成膜装置20では、第1搬送室21aのみに備わるチャンバを3つとし、第2搬送室21bのみに備わるチャンバを2つとしたが、これに限定されるものではなく、同じ用途のチャンバまたは他の用途のチャンバを追加することも可能である。
まず、1枚の半導体ウエハSWをウエハ搬入出室33内に設置された搬送用ロボット36によっていずれかのフープ34から取り出し(図9の工程P1)、いずれかのロードロック室23,24へ搬入する。フープ34は半導体ウエハSWのバッチ搬送用の密閉収納容器であり、通常25枚、12枚、6枚等のバッチ単位で半導体ウエハSWを収納する。フープ34の容器外壁は微細な通気フィルタ部を除いて機密構造になっており、塵埃はほぼ完全に排除される。従って、クラス1000の雰囲気で搬送しても、内部はクラス1の清浄度が保てるようになっている。成膜装置20とのドッキングは、フープ34の扉をポート35に取り付けて、ウエハ搬入出室33の内部に引き込むことによって清浄さを保持した状態で行われる。続いてロードロック室23内を真空引きした後、搬送用ロボット32aによって半導体ウエハSWを第1搬送室21aからドライクリーニング処理用のチャンバ27へ真空搬送する(図9の工程P2)。図10にチャンバ27の概略断面図が示されている。図10に示されるように、チャンバ27は主としてウエハステージ27a、ウエハリフトピン27b、シャワーヘッド27cおよびリモートプラズマ発生装置27dによって構成される。ウエハステージ27aおよびウエハリフトピン27bは独立した昇降機構を持ち、シャワーヘッド27cと半導体ウエハSWとの距離および半導体ウエハSWとウエハステージ27aとの距離を任意に制御することができる。また、ウエハステージ27aの上方に設置されたシャワーヘッド27cは常に一定温度に維持されており、その温度は、例えば180℃である。
チャンバ27へ半導体ウエハSWを搬入する時は、図11(a)に示されるように、ウエハステージ27aを下降させ、ウエハリフトピン27bを上昇させて、ウエハリフトピン27b上に半導体ウエハSWを載せる。シャワーヘッド27cと半導体ウエハSWとの距離は、例えば16.5±12.7mm、半導体ウエハSWとウエハステージ27aとの距離は、例えば25.4±17.8mmに設定される。
続いて、半導体ウエハSWの主面上をドライクリーニング処理する時は、図11(b)に示されるように、ウエハステージ27aを上昇させ、ウエハリフトピン27bを下降させて、ウエハステージ27a上に半導体ウエハSWを載せる。シャワーヘッド27cと半導体ウエハSWとの距離は、例えば17.8±5.1mmに設定される。
ドライクリーニング処理時には、リモートプラズマ発生装置27dにおいて還元ガス、例えばNF3ガスおよびNH3ガスを添加したArガスを励起させてプラズマを生成し、このプラズマをチャンバ27内へ導入する。チャンバ27内に導入されたプラズマをシャワーヘッド27cを介して半導体ウエハSWの主面上に供給することにより、プラズマとシリコン(ゲート電極8a,8bを構成する多結晶シリコン膜とn+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bが形成された半導体基板1を構成する単結晶シリコン)の表面に形成された自然酸化膜との間で起きる、例えば式(1)に示す還元反応によって自然酸化膜が除去される。ドライクリーニング処理時におけるプロセス条件は、例えばシャワーヘッド27cの温度は、180℃、NF3ガス流量は、14sccm、NH3ガス流量は、70sccm、圧力は、400Pa、プラズマパワーは、30Wである。
SiO2+NF3+NH3→ (NH4)2SiF6+O2 式(1)
この時、還元反応により生成された生成物((NH4)2SiF6)が半導体ウエハSWの主面上に残留する。さらに、半導体ウエハSWはウエハステージ27a上に載せてあるだけであり、上記生成物は半導体ウエハSWの側面および裏面の一部にも残留する。半導体ウエハSWの側面および裏面の一部に残留する生成物は、半導体ウエハSWを他のチャンバへ搬送する場合などにおいて剥がれ、汚染や発塵の原因となる。そこで、ドライクリーニング処理に続いて、チャンバ27内において半導体ウエハSWに熱処理を施すことにより、半導体ウエハSWの主面上に残留する生成物を除去すると同時に、半導体ウエハSWの側面および裏面の一部に残留する生成物を除去する。
続いて、半導体ウエハSWを熱処理する時は、図11(c)に示されるように、ウエハステージ27aを下降させ、ウエハリフトピン27bを上昇させて、半導体ウエハSWを温度180℃に設定されたシャワーヘッド27cへ近づける。シャワーヘッド27cと半導体ウエハSWとの距離は、例えば3.8±2.6mm、半導体ウエハSWとウエハステージ27aとの距離は、例えば5.9mm以上に設定される。
熱処理時には、シャワーヘッド27cの加熱温度(180℃)を利用して半導体ウエハSWが加熱される。半導体ウエハSWの温度は100から150℃となり、上記ドライクリーニング処理時に半導体ウエハSWの主面上に形成された生成物((NH4)2SiF6)が、例えば式(2)に示す反応によって昇華し除去される。さらに、この熱処理によって半導体ウエハSWの側面および裏面も加熱されて、側面および裏面の一部に残留した生成物も除去される。
(NH4)2SiF6→ SiF4+2NH3+2HF 式(2)
しかしながら、上記ドライクリーニング処理時に半導体ウエハSWに形成された生成物の組成が(NH4)2SiF6から僅かでもずれていると、温度100から150℃の熱処理では式(2)の反応が起こり難く、完全に生成物を除去することができなくなり、極微少の生成物が半導体ウエハSWの主面上に残留する。半導体ウエハSWの主面上に微少な生成物が残留していると、その後半導体ウエハSWの主面上に形成される金属シリサイド層(例えばニッケルシリサイド層)の電気抵抗にばらつきが生じる。そこで、次工程において、半導体ウエハSWに150℃よりも高い温度の熱処理を施して、半導体ウエハSWの主面上に残留した微少の生成物を除去する。
次に、搬送用ロボット32aによって半導体ウエハSWをドライクリーニング処理用のチャンバ27から加熱処理用のチャンバ25(またはチャンバ26)へ第1搬送室21aを介して真空搬送し、チャンバ25(またはチャンバ26)に備わるステージ上に載せる(図9の工程P3)。チャンバ25(またはチャンバ26)のステージ上に半導体ウエハSWを載せることにより、半導体ウエハSWを所定の温度で加熱し、100から150℃の温度では昇華せずに半導体ウエハSWの主面上に残留した生成物を昇華させて除去する。半導体ウエハSWの主面上での温度は、例えば150から400℃が適切な範囲と考えられる(他の条件によってはこの範囲に限定されないことはもとよりである)。また、量産に適した範囲としては165から350℃が考えられるが、さらに180から220℃等の200℃を中心値とする範囲が最も好適と考えられる。
次に、搬送用ロボット32aによって半導体ウエハSWを加熱処理用のチャンバ25(またはチャンバ26)から冷却・受渡用のチャンバ30(またはチャンバ31)へ第1搬送室21aを介して真空搬送し、チャンバ30(またはチャンバ31)に備わるステージ上に載せる(図9の工程P4)。チャンバ30(またはチャンバ31)のステージ上に半導体ウエハSWを載せることにより、半導体ウエハSWは冷却される。
次に、搬送用ロボット32bによって半導体ウエハSWを冷却・受渡用のチャンバ30(またはチャンバ31)から金属膜12成膜用のチャンバ28へ第2搬送室21bを介して真空搬送する(図9の工程P5)。チャンバ28内を排気機構により所定の真空度、例えば1.33×10−6Pa程度とした後、半導体ウエハSWを所定の温度に加熱し、チャンバ28内へArガスを所定の流量により導入してスパッタリング法により半導体ウエハSWの主面上へ金属膜12(例えばNi膜)を堆積する。この金属膜12の堆積工程が、上記ステップS1(図7のステップS1)に対応する。金属膜12の厚さは、例えば9nmであり、成膜時におけるスパッタリング条件は、例えば成膜温度40℃、Arガス流量13sccmである。
次に、搬送用ロボット32bによって半導体ウエハSWを金属膜12成膜用のチャンバ28からバリア膜13成膜用のチャンバ29へ第2搬送室21bを介して真空搬送する(図9の工程P6)。チャンバ29内を排気機構により所定の真空度とした後、半導体ウエハSWを所定の温度に加熱し、チャンバ29内へArガスおよびN2ガスを所定の流量により導入してスパッタリング法により半導体ウエハSWの主面上へ窒化チタン膜などからなるバリア膜13を堆積する。このバリア膜13の堆積工程が、上記ステップS2(図7のステップS2)に対応する。バリア膜13の厚さは、例えば15nmであり、成膜時におけるスパッタリング条件は、例えば成膜温度40℃、Arガス流量28sccm、窒素ガス流量80sccmである。
次に、搬送用ロボット32bによって半導体ウエハSWをバリア膜13成膜用のチャンバ29から冷却・受渡用のチャンバ30(またはチャンバ31)へ第2搬送室21bを介して真空搬送する(図9の工程P7)。
次に、搬送用ロボット32aによって半導体ウエハSWを冷却・受渡用のチャンバ30(またはチャンバ31)からいずれかのロードロック室23,24へ真空搬出し、さらに搬送用ロボット36によって半導体ウエハSWをロードロック室23,24からウエハ搬入出室33を介していずれかのフープ34へ戻す(図11の工程P8)。
なお、上記ドライクリーニング処理では、リモートプラズマ発生装置27dにおいて還元ガス、例えばNF3ガスおよびNH3ガスを添加したArガス(プラズマ励起用のガスとしてはArガスが多用されるが、その他の希ガスまたはそれらの混合ガスでもよい)を励起させてプラズマを生成し、このプラズマをチャンバ27内へ導入して自然酸化膜を還元反応により除去した。他の形態として、プラズマを用いずに、HFガスとNH3ガスまたはNF3ガスとNH3ガス等の還元ガスをチャンバ27内へ導入して自然酸化膜を還元反応により除去してもよい。
また、リモートプラズマ装置に限定されるものではなく、その他の特性に問題がなければ、通常のプラズマ装置を用いても問題はない。リモートプラズマは基板に損傷を与えない利点がある。
また、プラズマを用いて処理する場合は、上記ガスの組み合わせに限らず、N(窒素)、H(水素)、F(フッ素)(これらの複合ラジカルを含む)のそれぞれのラジカルまたは反応種を生成するものであれば、特にこのプロセスに対して有害なものでなければ、その他のガスの組み合わせでもよい。すなわち、N、HおよびFラジカル生成ガス(混合ガス含む)とプラズマ励起ガスとその他の添加ガス等との混合ガス雰囲気を適宜用いればよい。
また、還元ガス等の反応ガスは上記ガスに限らず、Si表面の酸化膜と比較的低温で反応して気化する反応種を生成するものであればよい。
このようにして、金属膜12およびバリア膜13を形成した後、半導体基板1に第1の熱処理を施す(図7のステップS3)。ステップS3の第1の熱処理は、不活性ガス(例えばAr(アルゴン)ガスまたはHe(ヘリウム)ガス)またはN2(窒素)ガス雰囲気で満たされた常圧下で行うことが好ましい。ステップS3の第1の熱処理により、図12に示されるように、ゲート電極8a,8bを構成する多結晶シリコン膜と金属膜12、およびn+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bを構成する単結晶Siと金属膜12とを選択的に反応させて、金属・半導体反応層である金属シリサイド層41を形成する。
本実施の形態1では、ステップS3の第1の熱処理は、金属膜12を構成する金属元素Mとp+型半導体領域10bを構成するSiとを反応させたときの金属膜12の反応率が、金属膜12を構成する金属元素Mとn+型半導体領域9bを構成するSiとを反応させたときの金属膜12の反応率よりも低くなる温度範囲において行う。
すなわち、ステップS3の第1の熱処理の段階における金属膜12を構成する金属元素Mとn+型半導体領域9bを構成するSiとの反応では、金属元素Mを全て消費させてn+型半導体領域9bの表面上(n+型半導体領域9bの上層部)に金属シリサイド層41を形成する、あるいは金属元素Mを全て消費させずにn+型半導体領域9bの表面上(n+型半導体領域9bの上層部)に未反応の金属元素Mを残存して金属シリサイド層41を形成する。これに対して、ステップS3の第1の熱処理の段階における金属膜12を構成する金属元素Mとp+型半導体領域10bを構成するSiとの反応では、金属元素Mの全てを消費させずにp+型半導体領域10bの表面上(p+型半導体領域10bの上層部)に未反応の金属元素Mを残存して金属シリサイド層41を形成する。ここで、上述したように、金属膜12を構成する金属元素Mとp+型半導体領域10bを構成するSiとを反応させたときの金属膜12の反応率が、金属膜12を構成する金属元素Mとn+型半導体領域9bを構成するSiとを反応させたときの金属膜12の反応率よりも低い温度範囲で第1の熱処理を行う。これにより、ステップS3の第1の熱処理を行った段階でのn+型半導体領域9bの表面上(n+型半導体領域9bの上層部)には第1の厚さの金属シリサイド層41が形成され、ステップS3の第1の熱処理を行った段階でのp+型半導体領域10bの表面上(p+型半導体領域10bの上層部)には上記第1の厚さよりも薄い第2の厚さの金属シリサイド層41が形成される。
さらに、本実施の形態1では、ステップS3の第1の熱処理により、金属膜12を構成する金属元素Mのダイメタルシリサイド(すなわちM2Si)からなる金属シリサイド層41が形成される。
すなわち、ステップS3の第1の熱処理により、金属膜12を構成する金属元素Mとゲート電極8a,8bを構成する多結晶シリコン膜のSiとを反応させてゲート電極8a,8bの表面上(ゲート電極8a,8bの上層部)にM2Siからなる金属シリサイド層41が形成される。また、ステップS3の第1の熱処理により、金属膜12を構成する金属元素Mとn+型半導体領域9bのSiとを反応させてn+型半導体領域9bの表面上(n+型半導体領域9bの上層部)にM2Siからなる金属シリサイド層41が形成される。また、ステップS3の第1の熱処理により、金属膜12を構成する金属元素Mとp+型半導体領域10bのSiとを反応させてp+型半導体領域10bの表面上(p+型半導体領域10bの上層部)にM2Siからなる金属シリサイド層41が形成される。
例えば金属膜12がNi膜の場合には、ステップS3の第1の熱処理は、例えば260℃以上、320℃未満の温度範囲が適切であると考えられる(他の条件によってはこの温度範囲に限定されないことはもとよりである)。また、290℃を中心値とする270から310℃の温度範囲が最も好適であると考えられる。以下に、金属膜12がNi膜の場合、本実施の形態1によるステップS3の第1の熱処理の熱処理温度を260℃以上、320℃未満とした理由について、図13から図15を用いて詳細に説明する。
図13は、半導体基板にp+型シリコン領域およびn+型シリコン領域を形成し、その上にNi膜を10nm程度およびTiN膜を15nm程度形成してから、熱処理によりNi膜とp+型シリコン領域、またはNi膜とn+型シリコン領域とを反応させてニッケルシリサイド層を形成し、未反応NiおよびTiN膜を除去したときの、形成されたニッケルシリサイド層のシート抵抗の熱処理温度依存性を示すグラフである。図13のグラフの横軸は、熱処理によりNi膜とp+型シリコン領域、またはNi膜とn+型シリコン領域とを反応させるための熱処理温度に対応し、図13のグラフの縦軸は、その熱処理によって形成されたニッケルシリサイド層のシート抵抗値に対応する。図13の場合に行った熱処理はRTAで30秒程度である。また、図13のグラフには、熱処理によりNi膜とp+型シリコン領域とを反応させて形成されたニッケルシリサイド層のシート抵抗値を白丸で示し、熱処理によりNi膜とn+型シリコン領域とを反応させて形成されたニッケルシリサイド層のシート抵抗値を黒丸で示してある。
図13に示されるように、熱処理温度が低いと、形成されるニッケルシリサイド層は高抵抗のNi2Si相(Ni2Si相だと30Ω/□程度)であるが、熱処理温度が高いと、形成されるニッケルシリサイド層は低抵抗のNiSi相(NiSi相だと10Ω/□程度)となる。しかし、Ni2Si相からNiSi相へ変化する温度は、Ni膜とn+型シリコン領域との反応の場合と、Ni膜とp+型シリコン領域との反応の場合とでは異なる。例えばNi膜とn+型シリコン領域とを反応させた場合は、300℃未満の温度範囲の熱処理によりNi膜が全て消費されずに、未反応のNiを残してNi2Si相のニッケルシリサイド層が形成され、300℃以上、360℃以下の温度範囲の熱処理によりNi膜が全て消費されたNi2Si相のニッケルシリサイド層が形成され、さらに390℃以上の温度範囲の熱処理によりNiSi相のニッケルシリサイド層が形成される。一方、Ni膜とp+型シリコン領域とを反応させた場合は、320℃未満の温度範囲の熱処理によりNi膜が全て消費されずに、未反応のNiを残してNi2Si相のニッケルシリサイド層が形成され、320℃以上、340℃未満の温度範囲の熱処理によりNi膜が全て消費されたNi2Si相のニッケルシリサイド層が形成され、さらに360℃以上の温度範囲の熱処理によりNiSi相のニッケルシリサイド層が形成される。
図14は、半導体基板にp+型シリコン領域およびn+型シリコン領域を形成し、その上にNi膜を10nm程度およびTiN膜を15nm程度形成してから、熱処理によりNi膜とp+型シリコン領域、またはNi膜とn+型シリコン領域とを反応させたときの、Ni膜の反応率を示すグラフである。図14のグラフの横軸は、熱処理によりNi膜とp+型シリコン領域、またはNi膜とn+型シリコン領域とを反応させるための熱処理温度に対応し、図14のグラフの縦軸は、Ni膜の反応率に対応する。図14の場合に行った熱処理はRTAで30秒程度である。また、図14のグラフには、熱処理によりNi膜とp+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率を白丸で示し、熱処理によりNi膜とn+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率を黒丸で示してある。
図14に示されるように、熱処理温度が320℃以上であると、Ni膜とp+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率と、Ni膜とn+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率とがほぼ同じ100%となっており、Niが全て消費されていることが分かる。また、Niが全て消費されていることから、熱処理温度が320℃以上の場合は、p+型シリコン領域の表面上(p+型シリコン領域の上層部)に形成されるニッケルシリサイド層(Ni2Si相)の厚さと、n+型シリコン領域の表面上(n+型シリコン領域の上層部)に形成されるニッケルシリサイド層(Ni2Si相)の厚さとは同じであると考えられる。
これに対して、熱処理温度が320℃未満であると、Ni膜とp+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率と、Ni膜とn+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率とが異なる。Ni膜とn+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率は、熱処理温度が300℃以上、320℃以下の範囲ではほぼ100%であり、Niが全て消費されて、n+型シリコン領域の表面上(n+型シリコン領域の上層部)にはニッケルシリサイド層(Ni2Si相)が形成される。熱処理温度が300℃未満の範囲では、熱処理温度が低くなるに従いNi膜とn+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率は低下して、例えば熱処理温度が290℃で約98%、熱処理温度が270℃で約60%となる。すなわち、この熱処理温度範囲(300℃未満)ではNiが全て消費されず、n+型シリコン領域の表面上(n+型シリコン領域の上層部)には、未反応のNiを残存してニッケルシリサイド層(Ni2Si相)が形成され、その厚さも熱処理温度が低くなるに従い薄くなることが分かる。
一方、Ni膜とp+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率は、熱処理温度が320℃未満の範囲では、熱処理温度が低くなるに従い低下して、例えば熱処理温度が310℃で約80%、熱処理温度が270℃で約40%となる。すなわち、この熱処理温度範囲(320℃未満)ではNiが全て消費されず、p+型シリコン領域の表面上(p+型シリコン領域の上層部)には、未反応のNiを残存してNi2Si相のニッケルシリサイド層が形成され、その厚さも熱処理温度が低くなるに従い薄くなることが分かる。
さらに、熱処理温度が320℃未満であると、Ni膜とp+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率が、Ni膜とn+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率よりも低くなる。このNi膜とp+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率とNi膜とn+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率との違いから、Ni膜とn+型シリコン領域とを反応させたときのn+型シリコン領域の表面上(n+型シリコン領域の上層部)に形成されるニッケルシリサイド層の厚さよりも、Ni膜とp+型シリコン領域とを反応させたときのp+型シリコン領域の表面上(p+型シリコン領域の上層部)に形成されるニッケルシリサイド層の厚さの方が薄くなることが分かる。
図15は、前記図14に示された熱処理によりNi膜とn+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率と、熱処理によりNi膜とp+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率との差を示すグラフ図である。
熱処理によりNi膜とn+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率と熱処理によりNi膜とp+型シリコン領域とを反応させたときのNi膜の反応率との差は、熱処理温度が290℃において最も大きく、約45%である。熱処理温度が290℃よりも高い温度範囲では、熱処理温度が高くなるに従って、その反応率の差は減少するが、熱処理温度が310℃では約20%の反応率の差がある。また、熱処理温度が290℃よりも低い温度範囲では、熱処理温度が低くなるに従って、その反応率の差は減少するが、熱処理温度が270℃では約22%の反応率の差がある。
図13から図15に示されたデータから、260℃以上、320℃未満の温度範囲の熱処理によりNi膜とn+型シリコン領域およびNi膜とp+型シリコン領域とを反応させると、p+型シリコン領域の表面上(p+型シリコン領域の上層部)には、n+型シリコン領域の表面上(n+型シリコン領域の上層部)に形成されるNi2Si相のニッケルシリサイド層よりも薄いNi2Si相のニッケルシリサイド層が形成されると考えられる。例えば半導体基板にp+型シリコン領域およびn+型シリコン領域を形成し、その上にNi膜を10nm程度およびTiN膜を15nm程度形成してから、熱処理温度が310℃、熱処理時間が30秒の熱処理によりNi膜とp+型シリコン領域およびn+型シリコン領域とを反応させると、n+型シリコン領域の表面上(n+型シリコン領域の上層部)には、厚さ15nm(反応率を100%とする)のNi2Si相のニッケルシリサイド層が形成され、p+型シリコン領域の表面上(p+型シリコン領域の上層部)には、厚さ12nm(反応率を80%とする)のNi2Si相のニッケルシリサイド層が形成される(第1の熱処理における反応率が100%の場合、Ni2Si膜の厚さはNi膜の厚さの約1.5倍となる)。
このように、金属膜12を構成する金属元素Mとp+型半導体領域10bのSiとを反応させたときの金属膜12の反応率が金属膜12を構成する金属元素Mとn+型半導体領域9bのSiとを反応させたときの金属膜の反応率よりも低い温度(金属膜12がNi膜の場合は260℃以上、320℃未満)でステップS3の第1の熱処理を行うことにより、ステップS3の第1の熱処理の段階におけるp+型半導体領域10bの表面上(p+型半導体領域10bの上層部)に形成される金属シリサイド層(M2Si)41の厚さ(前述した第2の厚さ)を、ステップS3の第1の熱処理の段階におけるn+型半導体領域9bの表面上(n+型半導体領域9bの上層部)に形成される金属シリサイド層(M2Si)41の厚さ(前述した第1の厚さ)よりも薄くすることができる。
なお、本実施の形態1および以下の実施の形態2では、金属膜12を構成する金属元素を化学式ではM、カタカナ表記では「メタル」と表記している。例えば金属膜12がNi膜である場合は、上記M(金属膜12を構成する金属元素M)はNiであり、上記MSi(メタルモノシリサイド)はNiSi(ニッケルモノシリサイド)であり、上記M2Si(ダイメタルシリサイド)はNi2Si(ダイニッケルシリサイド)であり、上記MSi2(メタルダイシリサイド)はNiSi2(ニッケルダイシリサイド)である。また、例えば金属膜12が、Niが99原子%でPtが1原子%のNi−Pt合金膜の場合は、上記M(金属膜12を構成する金属元素M)はNiおよびPt(但しNiとPtの組成比を勘案すると上記MはNi0.99Pt0.01)であり、上記MSiはNi0.99Pt0.01Siであり、上記M2Siは(Ni0.99Pt0.01)2Siであり、上記MSi2はNi0.99Pt0.01Si2である。また、例えば金属膜12が、Niが98原子%でPdが2原子%のNi−Pd合金膜の場合、上記M(金属膜12を構成する金属元素M)はNiおよびPd(但しNiとPdの組成比を勘案すると上記MはNi0.98Pd0.02)であり、上記MSiはNi0.98Pd0.02Siであり、上記M2Siは(Ni0.98Pd0.02)2Siであり、上記MSi2はNi0.98Pd0.02Si2である。金属膜12が他の組成の合金膜の場合も、同様に考えることができる。
次に、ウェット洗浄処理を行うことにより、バリア膜13と、未反応の金属膜12を構成する金属元素M(すなわちゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bまたはp+型半導体領域10bと反応しなかった金属膜12を構成する金属元素M)とを除去する(図7のステップS4)。この際、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面上に金属シリサイド層41を残存させる。ステップS4のウェット洗浄処理は、硫酸を用いたウェット洗浄、または硫酸と過酸化水素水とを用いたウェット洗浄などにより行うことができる。
次に、半導体基板1に第2の熱処理を施す(図7のステップS5)。ステップS5の第2の熱処理は、不活性ガス(例えばArガスまたはHeガス)またはN2ガス雰囲気で満たされた常圧下で行うことが好ましい。また、ステップS5の第2の熱処理は、上記ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度よりも高い熱処理温度で行う。金属膜12がNi膜であった場合には、ステップS5の第2の熱処理は、例えば550℃程度とすることができる。例えば不活性ガス(例えばArガスまたはHeガス)またはN2ガス雰囲気で満たされた常圧下で半導体基板1にRTA法を用いて温度550℃程度の熱処理を30秒程度施すことにより、ステップS5の第2の熱処理を行うことができる。ステップS5の第2の熱処理を行うことにより、ステップS3の第1の熱処理で形成されたM2Si相の金属シリサイド層41は、MSi相に変わり、金属元素MとSiとの組成比が1:1の化学量論比により近い、安定な金属シリサイド層41aが形成される。なお、MSi相は、M2Si相およびMSi2相よりも低抵抗率であり、ステップS5以降も(半導体装置の製造終了まで)金属シリサイド層41aは低抵抗のMSi相のまま維持され、製造された半導体装置では(例えば半導体基板1を個片化して半導体チップとなった状態でも)、金属シリサイド層41aは低抵抗のMSi相となっている。
また、ステップS5の第2の熱処理により、M2Si相の金属シリサイド層41からMSi相の金属シリサイド層41aへ変わると膜厚も増加する。しかし、n+型半導体領域9bの表面上(n+型半導体領域9bの上層部)に形成された金属シリサイド層(M2Si相)41が金属シリサイド層(MSi相)41aへ変わる際の膜厚の増加率と、p+型半導体領域10bの表面上(p+型半導体領域10bの上層部)に形成された金属シリサイド層(M2Si相)41が金属シリサイド層(MSi相)41aへ変わる際の膜厚の増加率とは同じである。従って、ステップS3の第1の熱処理の段階におけるn+型半導体領域9bの表面上(n+型半導体領域9bの上層部)に形成された金属シリサイド層(M2Si相)41の厚さと、ステップS3の第1の熱処理の段階におけるp+型半導体領域10bの表面上(p+型半導体領域10bの上層部)に形成された金属シリサイド層(M2Si相)41の厚さとの比を維持して、ステップS5の第2の熱処理によりp+型半導体領域10bの表面上(p+型半導体領域10bの上層部)およびn+型半導体領域9bの表面上(n+型半導体領域9bの上層部)に金属シリサイド層41aが形成される。
例えば半導体基板にp+型シリコン領域およびn+型シリコン領域を形成し、その上にNi膜を10nm程度およびTiN膜を15nm程度形成してから、熱処理温度が310℃、熱処理時間が30秒の第1の熱処理によりNi膜とp+型シリコン領域およびn+型シリコン領域とを反応させると、n+型シリコン領域の表面上(n+型シリコン領域の上層部)には、厚さ15nm(反応率を100%とする)のNi2Si相のニッケルシリサイド層が形成され、p+型シリコン領域の表面上(p+型シリコン領域の上層部)には、厚さ12nm(反応率を80%とする)のNi2Si相のニッケルシリサイド層が形成される。それから、ウェット洗浄処理を行うことにより、TiN膜および未反応のNiを除去した後、熱処理温度が550℃、熱処理時間が30秒の第2の熱処理を行うと、n+型シリコン領域の表面上(n+型シリコン領域の上層部)には、厚さ21nm(第1の熱処理における反応率が100%の場合、NiSi膜の厚さはNi膜の厚さの約2.1倍となる)のNiSi相のニッケルシリサイド層が形成され、p+型シリコン領域の表面上(p+型シリコン領域の上層部)には、厚さ16.8nmのNiSi相のニッケルシリサイド層が形成される。
図16は、本実施の形態1のステップS1からS5に従って形成したニッケルシリサイド層(図16のグラフで「本実施の形態1」として示されている)と比較例のステップに従って形成したニッケルシリサイド層(図16のグラフで「比較例」として示されている)のリーク電流の分布(ばらつき)を示すグラフである。図16のグラフの横軸はリーク電流に対応し、図16のグラフの縦軸は、確率分布に対応する。比較例のステップは、本実施の形態1のステップS1からS5のうち、ステップS3の第1の温度を320℃とするものである。
図16に示されるように、上記比較例のステップに従って形成したニッケルシリサイド層に比べて、本実施の形態1のステップS1からS5に従って形成したニッケルシリサイド層の方が、ニッケルシリサイド層のリーク電流のばらつきが小さい。これは、比較例では、p+型シリサイド領域の表面上(p+型シリサイド領域の上層部)およびn+型シリサイド領域の表面上(n+型シリサイド領域の上層部)には、ほぼ同じ厚さのニッケルシリサイド層が形成される。しかし、p+型シリサイド領域の方がn+型シリサイド領域よりもNiが拡散しやすいため、p+型シリサイド領域の表面上(p+型シリサイド領域の上層部)に形成されるニッケルシリサイド層が異常成長しやすい。このため、同じ厚さのニッケルシリサイド層が形成されているにもかかわらず、p+型シリサイド領域の方が、n+型シリサイド領域よりも接合リーク電流にばらつきが生じやすい。
これに対して、本実施の形態1では、p+型シリサイド領域の表面上(p+型シリサイド領域の上層部)に形成されるニッケルシリサイド層の厚さが、n+型シリサイド領域の表面上(n+型シリサイド領域の上層部)に形成されるニッケルシリサイド層の厚さよりも薄く形成されるので、p+型シリサイド領域における接合リーク電流のばらつきを低減することができる。
本実施の形態1では、ステップS1で形成される金属膜12の膜厚(堆積膜厚、半導体基板1の主面に垂直な方向の厚み)は、4から33nmであることが好ましい。金属膜12が薄すぎると金属シリサイド層41aの厚みが薄くなりすぎて抵抗が増大する。金属シリサイド層41aの厚さは、設計から要求される金属シリサイド層41aのシート抵抗とシリサイド材料の比抵抗とから求められ、金属膜12がNi膜の場合は、8.4nm以上の厚さのニッケルシリサイド層(NiSi相)が必要とされることから、Ni膜の下限膜厚は4nmとなる。また、金属膜12が厚すぎると金属シリサイド層41aの厚みが厚く成りすぎて、リーク電流の増加を招く可能性があり、また、MISの微細化にも不利となる。金属膜12がNi膜の場合は、ニッケルシリサイド層(NiSi相)の厚さを21nm以下とする必要があり、ステップS3の第1の熱処理の下限温度(260℃)での反応率が30%であることから、Ni膜の上限膜厚は33nmとなる。
サリサイド技術により、nMIS(Qn)のゲート電極8aおよびソース・ドレイン(ここではn+型半導体領域9b)の表面と、pMIS(Qp)のゲート電極8bおよびソース・ドレイン(ここではp+型半導体領域10b)の表面とに、低抵抗の金属シリサイド層41aを形成した後は、配線を形成する。この配線の形成工程について、図17から図19を用いて説明する。図17から図19は、図12に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
図17に示されるように、半導体基板1の主面上に絶縁膜42を形成する。すなわち、ゲート電極8a,8bを覆うように、金属シリサイド層41a上を含む半導体基板1上に絶縁膜42を形成する。絶縁膜42は、例えば窒化シリコン膜からなり、450℃程度のプラズマCVD法などにより形成することができる。それから、絶縁膜42上に絶縁膜42よりも厚い絶縁膜43を形成する。絶縁膜43は、例えばO3−TEOS酸化膜のような酸化シリコン膜などからなる。これにより、絶縁膜42,43からなる層間絶縁膜が形成される。その後、絶縁膜43の表面をCMP法により研磨するなどして、絶縁膜43の上面を平坦化する。下地段差に起因して絶縁膜42の表面に凹凸形状が形成されていても、絶縁膜43の表面をCMP法により研磨することにより、その表面が平坦化された層間絶縁膜を得ることができる。
次に、図18に示されるように、絶縁膜43上に形成したフォトレジスト膜をマスクとして用いて、絶縁膜43,42をドライエッチングすることにより、絶縁膜42,43にコンタクトホール(貫通孔、孔)44を形成する。この際、まず絶縁膜42に比較して絶縁膜43がエッチングされやすい条件で絶縁膜43のドライエッチングを行い、絶縁膜42をエッチングストッパ膜として機能させることで、絶縁膜43にコンタクトホール44を形成してから、絶縁膜43に比較して絶縁膜42がエッチングされやすい条件でコンタクトホール44の底部の絶縁膜42をドライエッチングして除去する。コンタクトホール44の底部では、半導体基板1の主面の一部、例えばn+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面上の金属シリサイド層41aの一部、ゲート電極8a,8bの表面上の金属シリサイド層41aの一部などが露出される。
次に、コンタクトホール44内に、W(タングステン)などからなるプラグ(接続用導体部)45を形成する。プラグ45を形成するには、例えばコンタクトホール44の内部(底部および側壁上)を含む絶縁膜43上にバリア導体膜45a(例えばTiN膜またはTi膜とTiN膜との積層膜)を450℃程度のプラズマCVD法などにより形成する。それから、W膜などからなる主導体膜45bをCVD法などによってバリア導体膜45a上にコンタクトホール44を埋めるように形成し、絶縁膜43上の不要な主導体膜45bおよびバリア導体膜45aをCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより、プラグ45を形成することができる。ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bまたはp+型半導体領域10b上に形成されたプラグ45は、その底部でゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bまたはp+型半導体領域10bの表面上の金属シリサイド層41aと接して、電気的に接続される。
次に、図19に示されるように、プラグ45が埋め込まれた絶縁膜43上に、第1層配線として、例えばタングステンなどからなる配線46を形成する。配線46は、絶縁膜43上にW膜などの導体膜を形成し、この導体膜をフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法によってパターニングすることにより形成することができる。配線46は、プラグ45を介してnMIS(Qn)およびpMIS(Qp)のソースまたはドレイン用のn+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bやゲート電極8a,8bと電気的に接続されている。配線46は、W膜に限定されず種々変更可能であり、例えばAl(アルミニウム)膜またはAl合金膜などの単体膜あるいはこれらの単体膜の上下層の少なくとも一方にTi膜やTiN膜などのような金属膜を形成した積層金属膜により形成しても良い。また、配線46をダマシン法により形成した埋込配線(例えば埋込銅配線)とすることもできる。
次に、絶縁膜43上に、配線46を覆うように、絶縁膜47が形成される。その後、コンタクトホール44と同様にして、絶縁膜47に配線46の一部を露出するビアまたはスルーホールが形成され、プラグ45や配線46と同様にして、スルーホールを埋めるプラグや、プラグを介して配線46に電気的に接続する第2層配線が形成されるが、ここでは図示およびその説明は省略する。第2層配線以降はダマシン法により形成した埋込配線(例えば埋込銅配線)とすることもできる。
すなわち、図7のステップS5の第2の熱処理よりも後の種々の加熱工程(例えば種々の絶縁膜や導体膜の成膜工程のように半導体基板1の加熱を伴う工程)で、半導体基板1の温度がステップS5の第2の熱処理の熱処理温度よりも高い温度にならないようにする。これにより、ステップS5よりも後の工程での熱印加(例えば種々の絶縁膜や導体膜の成膜工程)によって金属シリサイド層(MSi相)41aを構成する金属元素Mが半導体基板1(ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10b)中に拡散してnMIS(Qn)およびpMIS(Qp)の特性変動を招くのを防止することができる。
このように、本実施の形態1によれば、nMIS(Qn)のゲート電極8aおよびpMIS(Qp)のゲート電極8bの表面上、ならびにnMIS(Qn)のソース・ドレイン用のn+型半導体領域9bの表面上に形成される金属シリサイド層41aの厚さを変えることなく、pMIS(Qp)のソース・ドレイン用のp+型半導体領域10bの表面上に形成される金属シリサイド層41aの厚さのみを薄く形成することができるので、nMIS(Qn)のゲート電極8aおよびpMIS(Qp)のゲート電極8bの抵抗値の増加、およびnMIS(Qn)のソース・ドレイン用のn+型半導体領域9bの接合リーク電流や抵抗の増加を招くことなく、pMIS(Qp)のソース・ドレイン用のp+型半導体領域10bの接合リーク電流のばらつきを低減することができる。従って、pMIS(Qp)の特性の変動を防止することができて、半導体装置の性能を向上させることができる。
なお、本実施の形態1では、金属膜12を構成する金属元素M(例えばNi)がソースまたはドレイン用の半導体領域(ここではn+型半導体領域9b、p+型半導体領域10b)に拡散してMSiからなる金属シリサイド層41aを形成する。このため、半導体基板1は、Si含有材料により構成されていることが好ましく、例えば単結晶Si、不純物をドープしたSi、多結晶Si、アモルファスSi、SixGe1−x(シリコンゲルマニウム、ここで0<x<1)またはカーボンドープシリコン(SixC1-x、ここで0.5<x<1)などにより構成することができるが、単結晶シリコンであれば最も好ましい。また、SOI基板のように、絶縁基板上にSi含有材料層を形成したものを半導体基板1に用いることもできる。これは、以下の実施の形態2についても同様である。
(実施の形態2)
図20は、本実施の形態2による半導体装置の製造工程の一部を示す製造プロセスフロー図であり、上記実施の形態1の図7に対応するものである。図20には、上記図5の構造が得られた後、サリサイドプロセスによりゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面に金属シリサイド層(金属・半導体反応層)を形成する工程の製造プロセスフローが示されている。図21から図24は、本実施の形態2による半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
本実施の形態2による半導体装置の製造工程は、上記ステップS4でウェット洗浄処理を行うことによりバリア膜13と、未反応の金属膜12とを除去する工程までは、上記実施の形態1と同様であるので、ここではその説明を省略し、上記ステップS4に続く工程について説明する。
上記実施の形態1と同様にして上記ステップS4までの工程を行って、上記図12にほぼ相当する図21の構造を得た後、図22に示されるように、金属シリサイド層41上を含む半導体基板1上にバリア膜(第2バリア膜、応力制御膜、キャップ膜)13aを堆積する(図20のステップS11)。
次に、上記実施の形態1と同様のステップS5の第2の熱処理を行う。本実施の形態2では、ステップS5の第2の熱処理は、バリア膜13aが形成されている状態で行われるが、ステップS5の第2の熱処理の条件や役割については上記実施の形態1と同様である。
本実施の形態2でも、ステップS5の第2の熱処理は、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度よりも高い熱処理温度で行い、例えば金属膜12がNiの場合には550℃程度とすることができる。また、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態2においても、ステップS5の第2の熱処理の後は、半導体装置の製造終了(例えば半導体基板1を切断して半導体チップに個片化する)まで、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度よりも高い温度に半導体基板1がならないようにする。
ステップS5の第2の熱処理の後、ウェット洗浄処理などを行うことにより、図23に示されるように、バリア膜13aを除去する(図20のステップS12)。この際、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9bおよびp+型半導体領域10bの表面上に金属シリサイド層41bを残存させる。ステップS12のウェット洗浄処理は、硫酸を用いたウェット洗浄、または硫酸と過酸化水素水とを用いたウェット洗浄などにより行うことができる。
それ以降の工程は、上記実施の形態1と同様である。すなわち、上記実施の形態1と同様にして、図24に示されるように、絶縁膜42および絶縁膜43を形成し、絶縁膜43,42にコンタクトホール44を形成し、コンタクトホール44内にプラグ45を形成し、プラグ45が埋め込まれた絶縁膜43上に配線46および絶縁膜47を形成する。
バリア膜13aは、バリア膜13と同様に、応力制御膜(半導体基板の活性領域の応力を制御する膜)および酸素の透過を防止する膜として機能し、半導体基板1に働く応力の制御や金属膜12の酸化防止などのために金属膜12上に設けられる。このため、バリア膜13と同様の膜を、バリア膜13aとして用いることができ、好ましくは、TiN膜またはTi膜を用いることができる。
本発明者らは、サリサイド技術によりニッケルシリサイド層を形成する製造過程において、ニッケルシリサイド層からNiSi2がMISのチャネル部に異常成長し易いことを見いだした。このようなNiSi2の異常成長の発生は、本発明者の実験(半導体装置の断面観察および断面の組成分析など)により確認された。そして、ニッケルシリサイド層からチャネル部にNiSi2が異常成長していると、MISのソース・ドレイン間のリーク電流の増大を招いたり、ソース・ドレイン領域の拡散抵抗の増大を招いたりすることも分かった。
そこで、ニッケルシリサイド層からチャネル部にNiSi2が異常成長する原因を調べたところ、主に次の2つに起因していることが分かった。第1の原因は、ニッケルシリサイド層の形成時にシリコン領域(Niが拡散し得るシリコン領域)に圧縮応力が働いていることである。第2の原因は、ニッケルシリサイド層の形成時に表面に酸素が存在することである。第1の原因と第2の原因では、第1の原因の方が影響は大きい。
MISは素子分離領域4で規定された半導体基板1の活性領域に形成されるが、第1の原因のように、MISを形成する活性領域に圧縮応力が生じている状態で、Niが拡散(移動)する反応を伴う熱処理を行うと、圧縮応力がNiの異常拡散を助長し、ニッケルシリサイド層からチャネル部へのNiSi2の異常成長が生じ易くなる。これは、半導体基板1に圧縮応力が働くと半導体基板1(活性領域)を構成するSiの格子間隔が小さくなり、Siより格子間隔の小さいNiSi2の格子間隔に近づくことで、NiとSiの格子間での置換が生じやすくなるためであると考えられる。また、第2の原因のように酸素が存在していると、酸素に起因した欠陥が増えて、NiSi2の異常成長を促進する。これは、生じた欠陥を通してNiが拡散しやすくなるためであると考えられる。
本実施の形態1、2の場合のように、半導体基板1に形成した溝4a内を絶縁体材料(絶縁膜4b,4c)で埋め込むことで素子分離領域4を形成した場合、すなわち、STI法により素子分離領域4を形成した場合、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法により素子分離領域を形成した場合に比べて、素子分離領域4の間の活性領域に作用する圧縮応力が大きくなる。これは、半導体基板1に形成した溝4aの側壁が活性領域側を押すような圧縮応力が素子分離領域4の間の活性領域に作用するためである。また、特に、溝4a内を埋める素子分離領域4用の絶縁体材料(ここでは絶縁膜4c)がプラズマCVD法(特にHDP−CVD法)により成膜された絶縁膜(例えば酸化シリコン膜)の場合には、O3−TEOS酸化膜(熱CVD法で形成された絶縁膜)の場合などに比べて、焼き締め時の収縮が少ないため、MISを形成する活性領域に素子分離領域4により働く圧縮応力が大きくなる。
本実施の形態2では、素子分離領域4に起因した圧縮応力(MISを形成する活性領域に素子分離領域4が作用させている圧縮応力)を、半導体基板1に引張応力を生じさせるバリア膜13aによって相殺した状態でステップS5の第2の熱処理を行って金属シリサイド層41bを安定化させる。これにより、ステップS5の第2の熱処理中の金属シリサイド層41,41bからチャネル部へのMSi2の異常成長を圧縮応力が促進するのを防止できる。従って、本実施の形態2では、上記実施の形態1の効果を得られるのに加えて、ステップS5の第2の熱処理中の金属シリサイド層41,41bからチャネル部へのMSi2の異常成長を防止できる。従って、半導体装置の性能や信頼性をさらに向上させることができる。
本実施の形態2では、ステップS3の第1の熱処理工程を行い、それからステップS4のウェット洗浄処理工程を行った後、ステップS11で金属シリサイド層41上を含む半導体基板1上にバリア膜13aを形成しているが、バリア膜13aを形成する前に、ステップS1のドライクリーニング処理と同様のドライクリーニング処理を行ってもよい。金属シリサイド層41の表面に自然酸化膜がある状態でバリア膜13aを形成し、ステップS5の第2の熱処理を行うと、自然酸化膜に含まれる酸素が金属シリサイド層41の中に取り込まれてしまう。この状態で、ステップS5の第2の熱処理を行うと、金属シリサイド層41の抵抗値が高くなる、抵抗値のばらつきが大きくなるなどの不具合が生じる。このため、ステップS11のバリア膜13aを形成する前に、金属シリサイド層41の表面の自然酸化膜を除去することが好ましい。従って、ステップS4のウェット洗浄処理工程を行った後、ドライクリーニング処理工程を行い、自然酸化膜を除去した状態で、ステップS11のバリア膜13aの堆積工程を行ってもよい。
また、ステップS11のバリア膜13aの堆積工程で、バリア膜13aの下層にTi膜を形成することもできる。Ti膜は酸素を取り込み易い性質を有することから、ステップS4のウェット洗浄処理の後に、金属シリサイド層41の表面に自然酸化膜が形成されていても、Ti膜がこの自然酸化膜に含まれる酸素を取り込むことにより、自然酸化膜を除去することができる。従って、ステップS11のバリア膜13aの堆積工程では、まず、金属シリサイド層41上を含む半導体基板1上にTi膜を堆積し、その後、バリア膜13aを堆積してもよい。なお、前述したステップS4のウェット洗浄処理工程とステップS11のバリア膜13aの堆積工程との間に、前述したドライクリーニング処理工程を行い、さらに、バリア膜13aの下にチタン膜を堆積してもよい。これにより、ステップS3の第1の熱処理工程およびステップS4のウェット洗浄処理工程により、ゲート電極8a,8b、n+型半導体領域9b、p+型半導体領域10bの表面に形成された金属シリサイド層41の表面の自然酸化膜を的確に除去することができて、ステップS5の第2の熱処理により形成される金属シリサイド層41の抵抗値が高くなる、抵抗値のばらつきが大きくなるなどの不具合を防止することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。