JP2009007272A - 3−o−置換−カテキン類誘導体の新規製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
カテキン類には、抗酸化作用、抗菌作用、消臭作用、血中コレステロール抑制作用、α−アミラーゼ活性阻害作用等の様々な化学的・生理的活性作用が知られている。また、最近、3−アシルカテキン類に子宮頸ガンの抑制作用(特許文献1)、DNA合成阻害作用(特許文献2)があることが開示された。しかし、これらカテキン類は難溶性物質であるため、注射剤として開発することが困難であり、吸収効率の向上を目的にDPI製剤化を検討する場合、大量の化合物が必要となるため大量合成が可能な3−O−置換−カテキン類誘導体の新規な合成法の開発が望まれていた。
このシリル化物、例えば、3’,4’,5,7−テトラ−t−ブチルジメチルシリル−(+)−カテキンは、文献公知の化合物である(特許文献7)が、その製造方法は、最初に(−)エピカテキン ガレートの水酸基を全てシリル基で保護し、次いで、テトラヒドロフラン溶媒中、水素化リチウムアルミニウムを反応させ、3位のみのシリル基を脱離して得る方法であり、フェノール性水酸基のみに、選択的に直接シリル保護基を導入することについては記載がない。
で表されるカテキン類に、塩基の存在下、次式:
A−X
(式中、Aは水酸基の保護基を表し、Xは活性残基を表す)
で示される化合物と反応させ、式(I)のフェノール性水酸基に選択的に保護基を導入した次式(II):
で表される化合物とし、次いで下記式(V):
R−Y (V)
[式中、Rは炭素数1〜22の置換されていてもよいアルキル基、又はRbC(=O)−基で表されるアシル基(Rbは炭素数1〜22の置換されていてもよいアルキル基を表す)を表し、Yは活性残基を表す]
で表される化合物と反応させ、下記式(III):
で表される化合物とした後、脱保護をすることを特徴とする下記式(IV):
で表される3−O−アシル又はアルキル置換−カテキン類誘導体の製造方法である。
本発明が提供する製造方法において、出発原料として用いるカテキン類(I)としては、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン等が挙げられ、天然又は合成品として文献公知の方法により、例えばカテキンは茶樹より得ることができる。
また、茶以外の植物からも、茶の場合と同様の方法により製造することができる。
これらのカテキン類は市販されており、例えば三井農林(株)製「ポリフェノン」、太陽化学(株)製「サンフェノン」、(株)伊藤園製「テアフラン」等を挙げることができる。
「X」は活性残基を示し、具体的にはハロゲン原子、トリフラート、N−メチルトリフルオロアセトアミド、イミダゾール等の、常法として用いられる活性残基を挙げることができる。そのなかでも、ハロゲン原子が好ましい。
したがって、式A−Xで表される化合物としては、例えば、市販のt−ブチルジメチルシリルクロライド(式:TBDM−Xで表される)を好ましく使用することができる。
なお、式(I)のカテキン類において置換基Raが水酸基の場合には、当該水酸基はフェノール水酸基であることから、上記の反応により、シリル保護基で保護されることとなる[式(II)の化合物において、置換基Rcが基:−OAである化合物]。
R−Y (V)
で示される化合物において、例えば、式:
Rb(=CO)−Y
で表されるアシル活性体としては、Rbが炭素数2〜22であるものであり、例えばブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、ベヘノイル等のアシル基又はRbが鎖上に複数の不飽和結合を有していてもよい炭素数が2〜22の不飽和脂肪酸基、例えばオレイル、ゲラニル又は飽和脂肪酸基が炭素数1〜4のアルキルで置換されていてもよいイソステアロイル等のアシル基である活性体を挙げることができる。
具体的には、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸等の酸性条件下に式(III)の化合物を脱保護試薬、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリド[テトラヒドロフラン(以下THFという)1M溶液]と処理することにより、行うことができる。
反応は、溶媒の存在下に行うことが好ましく、そのような溶媒としては、反応に関与しないものであれば如何なるものも使用でき、好ましくは、THF、トルエン等が用いられる。当該脱保護反応は、−20℃から100℃の範囲で円滑に進行する。
なお、下記各製造工程で使用する反応溶媒、例えばTHF、ジクロロメタン、酢酸エチル等は、特に断らない限り常法により乾燥したものを用いた。
本発明の製造方法は、以下の3工程からなる製造方法であるが、以下は、式(I)で示されるカテキン類として、次式:
THF−ジクロロメタン混合溶媒100重量部あたりのTHFの含量(重量部)は、好ましくは37〜99.9重量部であり、より好ましくは42〜99.9重量部、さらに好ましくは60〜90重量部、特に好ましくは、70〜80重量部である。
具体的に設定する使用量は、水酸基の数1に対し、1〜1.1倍量の範囲である。例えば、置換されていないフェノール性水酸基4個を有するカテキンの場合、シリル化剤の使用量は少なくとも4モルである。シリル化は乾燥状態で、例えば乾燥した不活性気体で置換された雰囲気下の反応容器で行う方が好ましい。
反応収率は、例えばカテキン1モルに対し、4.4モルのシリル化剤を用いた場合、シリル化物を単離精製した場合でも収率良く得ることができる。実用上は、カテキン1モルに対し、シリル化剤を4モルとし、さらに得られるシリル化物を単離精製しないで、例えば減圧下濃縮し、残分をそのまま次の製造工程に用いることによりさらに収率を向上させることができる。
さらにこの製造工程に用いられる溶媒としては、前記した溶媒以外にも、反応に関与しないものであれば特に制限はなく用いることができる。例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、好ましくはジクロロメタンが用いられる。
具体的には、例えば、3’,4’,5,7−テトラ−O−t−ブチルジメチルシリル−(+)−カテキン−3−ミリストエート(化合物3)を製造する工程で説明する。
反応終了後、常法に従って、例えばジクロロメタン等で抽出し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル)で分離精製し、目的とする3’,4’,5,7−テトラ−O−t−ブチルジメチルシリル−(+)−カテキン−3−ミリストエート(化合物3)を得ることができる。
また、この製造工程に用いられる溶媒としては、前記極性溶媒の他にも、反応に関与しないものであれば特に制限されない。例えば、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;DMF、DMSO等が用いられ、好ましくは、THF、ジオキサン、ジクロロメタン又はこれらの混合溶媒である。反応温度は、特に制限はないが、好ましくは氷冷下〜室温である。
当該製造工程は、例えば、製造工程1で得られたフェノール性水酸基が保護された式(II)で示されるカテキン類を、ジメチルホルムアミド等の極性溶媒中に溶解させ、水素化ナトリウム又は水素化カリウム等の塩基の存在下、アルキルハライドと反応させることにより実施される。
反応時間は、反応させる量、溶媒等により異なり特に限定されないが、通常、1〜5時間であり、反応終了後、自体公知の方法により処理され、式(III)で示されるカテキン類の3−位の水酸基にアルキル基を導入した化合物を得ることができる。
具体的には、本製造工程は、例えば、前記製造工程2で得られた3’,4’,5,7−テトラ−t−ブチルジメチルシリル−(+)−カテキン−3−ミリストエート(化合物3)を、適当な溶媒、例えばTHF等に溶解させ、酢酸を加え、撹拌後、氷冷下、撹拌しながらテトラブチルアンモニウムフルオリド(THF−1M溶液)を加え、室温で1〜4時間撹拌することにより実施される。
したがって、より少ない製造工程数、反応操作により、高収率かつ高純度で簡便に製造することができる利点を有している。
なお、以下の実施例を図1に化学反応式で示した。
(製造工程1)3’,4’,5,7−テトラ−O−t−ブチルジメチルシリル−(+)−カテキン;[(2R,3S)−3’,4’,5,7−テトラ−O−t−ブチルジメチルシリルフラバン−3−オール](化合物2)の製造方法:
前記製造工程1で得た3’,4’,5,7−テトラ−O−t−ブチルジメチルシリル−(+)−カテキン(化合物2)(73.8g,0.099mol)をジクロロメタン200mLに溶かし、氷冷下トリエチルアミン(30.0g,0.296mol)、ミリストイルクロライド(36.6g,0.148mol)、及び、N,N−ジメチルアミノピリジン(50mg)を加え、室温下3時間攪拌した。反応終了後ジクロロメタンで抽出し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル/3:1)で分離精製し、3’,4’,5,7−テトラ−O−t−ブチルジメチルシリル−(+)−カテキン−3−ミリストエート(化合物3)を黄色液体として得た(93.0g,0.097mol、収率98.3%)。
前記製造工程2で得られた3’,4’,5,7−テトラ−t−ブチルジメチルシリル−(+)−カテキン−3−ミリストエート(化合物3)(93.0g,0.097mol)をTHF100mLに溶かし、酢酸(35.0g,0.583mol)を加え、5分間撹拌した後、氷冷下、撹拌しながらテトラブチルアンモニウムフルオリド(THF−1M溶液)(466mL,0.466mol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後ジエチルエーテルで抽出し、有機層を1規定塩酸、水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル/1:1)で分離精製し、濃縮残分をn−ヘキサン、酢酸エチル混液を用いて再結晶することにより、(+)−カテキン−3−ミリストエート(化合物4)を白色固体として得た(25.8g,0.052mol、収率53.3%)。
前記実施例1の各製造工程に準拠して、下記化合物を合成した。
置換基Rが、−C(O)(CH2)8=(CH2)8CH3 (cis体)で表される化合物。
(1)製造工程2の収率(100.0%)、
(2)製造工程3の収率(36.4%)(酢酸添加し、反応させた)。
製造工程3で得られた化合物は1H−NMRにて同定した。
前記実施例1の各製造工程に準拠して、下記化合物を合成した。
置換基Rが、−C(O)(CH2)9CH3 で表される化合物。
(1)製造工程2の収率(86.9%)、
(2)製造工程3の収率(16.6%)(酢酸無添加の条件下で反応させた)。
製造工程3で得られた化合物は1H−NMRにて同定した。
(製造工程1)
前記実施例1の製造工程1で得られた化合物を出発原料として用いた。
前記製造工程1で得られた3’,4’,5,7−テトラ−O−t−ブチルジメチルシリル−(+)−カテキン(3.0g,0.004mol)をDMF50mLに溶かし、氷冷下60%NaH(0.250g,0.006mol)、テトラデカンクロライド(1.191g,0.006mol)を加え、室温下3時間攪拌した。反応終了後ジクロロメタンを加え、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。有機層から得られた生成物、及び析出した固体の精製は行わず、黒色固体を得た(収量8.12g)
前記製造工程2で得られた黒色固体をTHF100mL、酢酸(3.10g,0.052mol)を加え、5分間撹拌した後、氷冷下、撹拌しながらテトラブチルアンモニウムフルオリド(THF−1M溶液)(41.3mL,0.413mol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後ジエチルエーテルで抽出し、有機層を1規定塩酸、水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル/1:1)で分離精製し、濃縮残分をn−ヘキサン、酢酸エチル混液を用いて再結晶することにより、(+)−カテキン−3−テトラデカンエーテルを黒色固体として得た(0.447g,0.002mol、製造工程2〜3の収率50.0%)。
前記実施例1の製造工程1において反応溶媒の種類と組合せを変化させた以外は実施例1の製造工程に準拠して3’,4’,5,7−テトラ−O−t−ブチルジメチルシリル−(+)−カテキン(化合物2)を調製した。
その結果は表1に示すとおりであった。
3’,4’,5,7−テトラ−O−t−ブチルジメチルシリル−(+)−カテキン−3−ミリストエート(化合物3)の製造方法:
(+)−カテキン:[(2R,3S)−3’,4’,5,7−テトラヒドロキシフラバン−3−オール](化合物1)(50g、0.172mol)とイミダゾール(104.5g、1.519mol)をTHF200mLに溶かし、氷冷下、t−ブチルジメチルシリルクロライド(114.4g、0.759mol)をTHF100mLに溶かした溶液を撹拌しながら滴下した。生じた沈殿をジクロロメタン100mLに溶かし、18時間室温で撹拌した(このときの3’,4’,5,7−テトラ−t−ブチルジメチルシリル−(+)−カテキンの収率94.6%)。次いで、氷冷下トリエチルアミン(17.4g,0.172mol)、ミリストイルクロライド(42.5g,0.172mol)、及び、N,N−ジメチルアミノピリジン(50mg)を加え、室温下3時間攪拌した。反応終了後ジクロロメタンで抽出し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル/3:1)で分離精製し、3’,4’,5,7−テトラ−O−t−ブチルジメチルシリル−(+)−カテキン−3−ミリストエート(化合物3)を黄色液体として得た(収率93%)。
好ましくは、THF、THF−ジクロロメタン混合溶媒であり、より好ましくは、THF−ジクロロメタン混合溶媒である。
THF−ジクロロメタン混合溶媒の場合には、混合溶媒100重量部あたりのTHFの含量(重量部)は、好ましくは37〜99.9重量部であり、より好ましくは42〜99.9重量部、さらに好ましくは60〜90重量部、特に好ましくは、70〜80重量部である。
そのTHF−ジクロロメタンの混合相関を図2に示した。
本発明の製造方法は、脱保護基の製造工程で従来のような還元設備等特別の装置を用いることなく、目的物を得ることができるので、産業上極めて有用である。
Claims (8)
- 下記式(I):
で表されるカテキン類に、塩基の存在下、次式:
A−X
(式中、Aは水酸基の保護基を表し、Xは活性残基を表す)
で示される化合物と反応させ、式(I)のフェノール性水酸基に選択的に保護基を導入した次式(II):
で表される化合物とし、次いで下記式(V):
R−Y (V)
[式中、Rは炭素数1〜22の置換されていてもよいアルキル基、又はRbC(=O)−基で表されるアシル基(Rbは炭素数1〜22の置換されていてもよいアルキル基を表す)を表し、Yは活性残基を表す]
で表される化合物と反応させ、下記式(III):
で表される化合物とした後、脱保護をすることを特徴とする下記式(IV):
で表される3−O−アシル又はアルキル置換−カテキン類誘導体の製造方法。 - 式中、Aがシリル保護基である請求項1〜4に記載の製造方法。
- シリル保護基が、t−ブチルジメチルシリル基である請求項5記載の製造方法。
- 式(III)の化合物から式(IV)の化合物への脱保護を、溶媒中、酢酸の存在下、テトラブチルアンモニウムフルオリドを用いて行うことを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
- 式(II)の化合物を単離することなく式(III)への誘導をワンポットで反応させる請求項1又は3に記載の製造方法。
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