JP2009004022A - 磁気データ消去装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ハードディスク51を格納するための格納部15と、磁気記録媒体の磁気データを消去するための磁場を発生する2つのコイル1,61と、1つまたは2つ以上のコンデンサ2と、1つの操作スイッチ45とを備え、操作スイッチの1回のオン操作によって、コンデンサに蓄積された電荷を放出して、2つコイルに、格納部に格納された磁気記録媒体の板面水平方向および板面垂直方向の両方に、磁気データを消去するためのパルス磁場を生じ、2つのコイルが、板面平行方向に磁場を発生する平行方向磁場コイルと、板面垂直方向に磁場を発生する垂直方向磁場コイルとから形成されることを特徴とする。
【選択図】 図22
Description
(1)磁気記録媒体
図1は、磁気記録媒体であるハードディスクを示す図である。ハードディスク51では、渦巻状のトラック58に沿って磁気データの磁化配列が形成されている。渦巻状のトラック58は、回転軸57の回りに回転する円板に形成されている。円板の回転に合わせて磁気ヘッド59が、トラックを追尾して磁気データの書込みおよび読出しを行う。磁気データの書込みは、磁化容易軸方向に沿って、単位領域ごとに平行磁化(たとえば0に対応)または反平行磁化(平行が0の場合は1に対応)の配列を形成することと同じである。また、読出しは、上記の磁化配列の配列を検知することと同じである。図1に示すハードディスク51は、垂直記録方式にもまた水平記録方式にも用いられる一般的な構造である。水平記録方式の場合は、トラック58に沿って形成される平行または反平行の磁化の方向が、x−y面内のトラックの方向に沿っている。一方、垂直記録方式の場合は、上記の平行または反平行の磁化の方向はz方向すなわちトラック面に垂直方向である。
上記の水平記録方式のハードディスク(水平方式HDD)および垂直記録方式のハードディスク(垂直方式HDD)は、いずれも型式記号等で表示され、水平記録方式なのか垂直記録方式なのか、特定が困難な場合が多い。また、磁気記録データを消去する立場から、たとえ水平記録方式または垂直記録方式の別が分かったとしても、従来の水平方式HDDの磁気データを消去する消去装置を用いるだけでは、垂直方式HDDの磁気データを消去することはできない。また、仮に垂直方式HDD用の磁気データ消去装置があれば、水平方式HDDと垂直方式HDDとに応じて、2種類の磁気データ消去装置を使い分けることによって、水平方式HDDと垂直方式HDDの両方の磁気データを消去することができる。
上記のように消去対象のハードディスクが水平記録方式か垂直記録方式かを判別したり(調べても分からない場合もある)、2種類の磁気データ消去装置を使い分けることは、は作業能率を阻害し、磁気データ未消去のミスを発生しやすい。銀行、保険、通信販売、その他の個人情報を扱う企業は、個人情報の漏洩の防止には細心の注意を払っており、消去に不安を残す消去作業は、大きなリスクと隣り合わせにあるといわなければならない。上記の企業では膨大な数の磁気記録媒体をパソコンその他の事務処理器に使用しており、保管期限の過ぎた磁気記録媒体を大量に処分しなければならない。その処分に際して、膨大な数のハードディスク等の磁気データの消去が必要となる。
(1)装置の概要
本発明の実施の形態1における磁気データ消去装置10を図5(a)及び(b)に示す。図5(a)及び(b)の磁気データ消去装置10は、ハードディスク51の水平方向及び垂直方向の磁場を同時に発生するように、ハードディスク51の板面に斜めに磁場を発生する。磁場の強さを、水平方向及び垂直方向に均等にするために、コイル1の軸芯方向と、ハードディスク51の板面垂直方向とは45°になるように設定するのがよい。しかし、このあと説明するように、断定的な理由は不明であるが、板面垂直方向又は板面平行方向からわずかに傾けただけでも、本発明の目的を達成することができるので、45°方向にこだわる必要はない。
図11は、コンデンサを充電後に放電して、コイルを流れる電流および上記格納部の中央での磁束密度の測定データを示す図である。この磁束密度は、図6〜図8の磁場Hに対応する磁束密度である。図11より、電流の変化と磁場の変化とは、ほぼ1対1に対応していることが分かる。本発明の実施の形態では、減衰する交番磁界を用いることはせず、最初(1発目)のパルス磁場によって磁気データを消去する。図11では、最初のピークの磁束密度は0.95Tであるが、本発明の実施の形態では、最初のパルス磁場の磁束密度のピーク値は0.4T〜1.2Tの範囲内にあればよい。また、磁束密度0.4T以上の継続時間は30ms強あるが、本発明の実施の形態では4ms〜45msの範囲にあればよい。
最初のパルス磁場が上記の条件:(1)最初のパルス磁場の磁束密度ピーク値が0.4T〜1.2T、(2)磁束密度0.4T以上の継続時間が4ms〜45ms、を満たす限り、どのような回路構成で実現してもよい。たとえば、コンデンサの容量CおよびコイルのキャパシタンスLを大きくすることにより、上記(1)および(2)を満たすことができる。また、パルス磁場のピークを平坦にして継続時間を長くする場合には、コンデンサ(容量C)とコイル(インダクタンスL)とを直列接続したLC部を1単位として、そのLC部をm段重ねて、パルス磁場発生コイルに接続する。この回路構成によりパルス磁場のピークを平坦にしてその平坦部の継続時間を2m(LC)1/2とすることができる。そして、ピーク部分から裾を引くより低い磁場の強さの場合、さらに継続時間を伸ばすことができる。
図16は、コイル1の空芯部に生成するパルス磁場の継続時間を長くするための回路構成を示す図である。ポイントは、コイル1のマイナス側からプラス側に向けて順方向のダイオード7を配置することにある。放電素子であるサイリスタ5は、ゲートGに電圧が印加されると、カソードKとアノードAとが導通されてオン状態となる。ゲートGへの電圧印加は、このあと説明する制御部からの電圧信号によりなされる。コンデンサ2の電圧は検知されており、充電されて所定電圧に到達すると、サイリスタ5のゲートに電圧が印加される。この結果、コンデンサ2は放電を開始してコイル1に電流を流す。
上記したように、磁気データ消去作業は、通常、非常に多数の廃棄処分になったハードディスクを対象とするため、高い作業能率が重要であり、とくに上記のコンデンサへの充電時間の短縮が重要である。図17は、一般のコンセント33から給電するためにトライアック18を用いた充電回路を示す図である。一般のコンセント33から給電された電力は、給電に対してオン状態とされたトライアック18を経て倍圧整流部Sで昇圧されてコンデンサ2を充電する。制御部19は、コンデンサ2の電圧を検知して、コンデンサ2の充電が遂行されたか否かを判断する。コンデンサ2への充電が必要な場合は、トライアック18を給電オンとして、倍圧整流部Sからコンデンサ2へと電流を導入する。コンデンサ2の充電が完了して、外部から磁場発生のスイッチ(図示せず)が押されるとサイリスタ5のゲートに5V程度の信号を加えてサイリスタ5の導通をオンにして、コンデンサ2からの放電をスタートさせ、コイル1の空芯部(格納部)にパルス磁場を生成する。
コイル1にコンデンサ2からの電流が一気に流れるとき、コイル1に大きな電磁力が瞬間的に発生する。このためコイル1の巻線が巻き付けられるボビン11に大きな衝撃が加わり、金属などを用いた剛構造体では変形や亀裂が生じ、多数回の使用に耐えられない。弾性変形が可能であり、かつ十分な強度を持つ樹脂板を組み合わせることにより、ボビンの耐久性を向上させることができる。一般の樹脂板を用いてもよいが、より好ましくは強度が高い樹脂板、たとえばABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂板を用いるのがよい。図21は、ABS樹脂板の端部を相互に嵌め込み形状にレーザ加工して、組み上げたボビン11を示す斜視図である。組み上げた後に接着剤を隙間に注入して強固に接着している。このような樹脂板を組み上げたボビン11は、衝撃に対して変形後、復元するので、多数回の衝撃にも問題なく耐えることができる。
図22は、本発明の実施の形態2における磁気データ消去装置10を示す斜視図である。本実施の形態における磁気データ消去装置10では、間をあけた2つのコイル部分1a,1bからなるコイル1と、コイル61とが組み合わされている点に特徴を有する。磁気データ消去装置10に付随する座標軸XYZにおいて、コイル1の軸芯はZ方向に平行であり、コイル61の軸芯はX方向に平行である。
次に、コイル1の負側から正側に向かって順方向にダイオード7を配置した場合(図16参照)および配置しない場合について、パルス磁場/時間および電流/時間の測定を行った結果を示す。磁気データ消去装置には、図9に示すタイプの装置を用いた。そのコイルには、3mm×9mmの平角エナメル線を68ターン巻いたものを用いた。コイルのインダクタンスLは0.46mHであり、抵抗Rは36mΩである。コンデンサは容量10000μFのものを1個用いた。充電回路にはトライアックを用いた。磁場の測定は、格納部の中央部と、入口から20mm入った位置の下部(床面位置)との2地点にホール素子を配置して、ホール素子からの信号を増幅器(ホール素子とセット:GAUSS METER MODEL HGM 8300P3:ADS社製)を経てオシロスコープ(TDS3012:Tektronix社製)に入力した。また電流は、電流測定用のコイルをコンデンサ−コイル間の配線に周回させるように取り付け、その信号を増幅器(電流測定用コイルとセット:ピーク電流計PHS−CO:株式会社アイエムエス製)を経てオシロスコープに入力した。オシロスコープ上で、時間軸(横軸)に同期させて、磁場と電流とを縦軸に表示した。
次の試験体(本発明例A及びB)を用いて、磁場の測定を行った。
(本発明例A):コンデンサ容量
9000μF;コイル 巻線 3×9の平角線 67ターン、インダクタンス 0.79mH、巻線の電気抵抗 33mΩ、ダイオード配置
充電時のコンデンサ電圧は680Vであり、放電時のピーク電流は1.81kAであった。
(本発明例B):コンデンサ容量
11000μF、;コイル 巻線 3×9の平角線 67ターン、インダクタンス 0.79mH、巻線の電気抵抗 33mΩ、ダイオード配置
充電時のコンデンサ電圧は680Vであり、放電時のピーク電流は1.47kAであった。
図22又は図23に示す磁気データ消去装置において、コイル1のコイル部分1aとコイル部分1bとの間のスペースでの磁場測定を行った。試験体は次のとおりである。
(本発明例C):コンデンサ容量
10000μF;コイル 巻線 3×9の平角線 コイル部分1a 97ターン、コイル部分1b 97ターン、インダクタンス 0.79mH、巻線の電気抵抗 33mΩ、ダイオード配置
充電時のコンデンサ電圧は390Vであり、放電時のピーク電流は1.2kAであった。
(本発明例D)コンデンサ容量
9000μF、;コイル 巻線 3×9の平角線 コイル部分1a 97ターン、コイル部分1b 97ターン、インダクタンス 0.79mH、巻線の電気抵抗 33mΩ、ダイオード配置
充電時のコンデンサ電圧は650Vであり、放電時のピーク電流は1.86kAであった。
Claims (12)
- 水平方式及び垂直方式の磁気記録媒体の磁気データを消去するための磁気データ消去装置であって、
前記磁気記録媒体を格納するための格納部と、
前記格納部を含むように位置し、前記磁気データを消去するための磁場を発生する1つ又は2つのコイルと、
前記1つ又は2つのコイルに電流を供給するための電荷を蓄積する1つまたは2つ以上のコンデンサと、
前記磁気データ消去装置を作動させるための1つの操作スイッチとを備え、
前記操作スイッチの1回のオン操作によって、前記1つ又は2つ以上のコンデンサに蓄積された電荷を放出して、前記1つ又は2つのコイルに、前記格納部に格納された前記磁気記録媒体の板面平行方向および板面垂直方向の両方に、前記磁気データを消去するためのパルス磁場を生じることを特徴とする、磁気データ消去装置。 - 前記格納部に格納された磁気記録媒体の板面平行方向に磁場を発生する平行方向磁場コイルと、該平行方向磁場コイルの軸芯と直交する軸芯を有し、前記磁気記録媒体の板面垂直方向に磁場を発生する垂直方向磁場コイルとを備えることを特徴とする、請求項1に記載の磁気データ消去装置。
- 前記垂直方向磁場コイルは、第1の部分と、該第1の部分に電気的に直列接続し、該第1の部分と同じ軸芯方向を持ち、該第1の部分から間をあけて位置する第2の部分とを有し、前記格納部が、前記コイルの第1の部分と第2の部分との間に設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の磁気データ消去装置。
- 前記コンデンサは、前記平行方向磁場コイルに並列接続される平行磁場用コンデンサと、前記垂直方向磁場コイルに並列接続される垂直磁場用コンデンサとから構成され、該平行磁場用及び垂直磁場用コンデンサから電荷を放出するための放電素子として、前記平行磁場用コンデンサから前記平行方向磁場コイルに電荷を流すための平行磁場用サイリスタと、前記垂直磁場用コンデンサから前記垂直方向磁場コイルに電荷を流すための垂直磁場用サイリスタとを備えることを特徴とする、請求項2又は3に記載の磁気データ消去装置。
- 前記平行方向及び垂直方向磁場コイルに前記電流を流すための制御を行う制御部を備え、前記制御部は、前記操作スイッチの1回のオン操作によって、前記平行磁場用サイリスタと前記垂直磁場用サイリスタとが、所定の時間をあけて又は同時に、導通するように制御することを特徴とする、請求項4に記載の磁気データ消去装置。
- 1つのコイルを備え、前記コイルの軸芯方向が、前記格納部に収納された磁気記録媒体の板面垂直方向と、0°超え90°未満の角度をなすように配置されてなることを特徴とする、請求項1に記載の磁気データ消去装置。
- 前記コイルの軸芯方向が前記板面垂直方向に対して45°±35°の範囲内の角度をなすように配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の磁気データ消去装置。
- 前記コイルの外において前記磁気記録媒体を装着する際の前記格納部の装着位置と、前記コイルに含まれて前記パルス磁場を加えられる際の前記格納部の消去位置とを、前記格納部が移動できるように、格納部移動機構を備えていることを特徴とする、請求項6又は7に記載の磁気データ消去装置。
- 前記1つ又は2つのコイルは、いずれも、軸芯の中央部において、磁束密度のピーク値が0.4T〜1.2Tであり、かつ磁束密度0.4T以上の継続時間が4ms〜45msであるパルス磁場を形成することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の磁気データ消去装置。
- 前記1つ又は2つのコイルに、並列に順方向にダイオードが配置されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の磁気データ消去装置。
- 前記1つ又は2つのコイルは、いずれも、電気抵抗が0.2mΩ〜150mΩ、インダクタンスが0.3mH〜1.3mH、1/(L・C)1/2が250(1/秒)〜650(1/秒)の範囲内にあり、前記1つ又は2つ以上のコンデンサの容量が、7000μF以上であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の磁気データ消去装置。
- 前記コンデンサの充電のための電流経路に、トライアックを用いることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の磁気データ消去装置。
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