JP2009001805A - ポリアミド系電子写真用部材 - Google Patents

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重利 武智
Takushi Yokota
卓士 横田
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Abstract

【課題】プラス帯電するという特性を有し、1×10〜1×1014Ω・cmの体積抵抗率の範囲において、体積抵抗率を安定して精度良く発現することができ、さらに表面平滑性、機械的特性に優れたポリアミド系電子写真用部材の提供。
【解決手段】ポリアミド(A)100重量部に対し、変性ポリオレフィン(B)と必要により含まれるポリオレフィン(C)が合計で10〜100重量部含まれるとともに、変性ポリオレフィン(B)とポリオレフィン(C)の重量比((B):(C))が100:0〜2:98であり、しかもポリアミド(A)、変性ポリオレフィン(B)、およびポリオレフィン(C)の合計量100重量部に対しカーボンブラック(D)が2〜30重量部含まれてなり、且つ同一面内における体積抵抗率の最大値と最小値との比が10倍以下であることを特徴とするポリアミド系電子写真用部材。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真方式の複写機、プリンター、ファックス等に用いられる、プラス帯電特性を有するとともに、均一な体積抵抗率、良好な表面平滑性、良好な機械的特性を示すポリアミド系電子写真用部材に関するものである。
電子写真方式の複写機、プリンター、ファックス等に使用される中間転写ベルト、転写搬送ベルト、クリーニングロール、帯電ロール、現像ロール、転写ロール等の電子写真用部材は半導電性であることが求められており、従来から合成樹脂へカーボンブラックや金属酸化物等の電子伝導性材料を配合することにより、体積抵抗率が所定の範囲に調整された電子写真用部材が開発されてきた。
しかしながら、これらの電子伝導性材料を配合した電子写真用部材は、使用環境の変化に対して電気抵抗の変化が少ないという特長を有するものの、電子伝導性材料の接触によって導電性を発現させているため、電子伝導性材料の合成樹脂中への分散が特に重要で、僅かの加工条件や配合量の違いにより電気抵抗が大きく変動するという問題があった。このため同一部材でも位置により電気抵抗が大きく異なったり、また、同一組成で製造された部材であってもロット間による電気抵抗のバラツキが大きいという問題があった。
一方、電子写真方式は静電気を帯びたトナーを静電的な力によって感光体、中間転写体、被印刷物へ授受、移動を行うものであり、トナーがプラスに帯電しているか、マイナスに帯電しているかによって、感光体周辺の部品に要求される帯電特性が異なってくる。すなわち、プラス帯電する合成樹脂とマイナス帯電する合成樹脂とを適宜使い分ける必要がある。
一般に合成樹脂同士を摩擦すると合成樹脂表面が帯電するが、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン等多くの合成樹脂はマイナスに帯電する特性を有している。一方、プラスに帯電する合成樹脂は少なく、ポリアミドはプラス帯電する数少ない合成樹脂の一つである。
このようななか、導電性フィラーを配合したナイロン樹脂よりなるシームレス状半導電性ベルトが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、ポリアミドへ半導電性を付与する目的でカーボンブラックを添加して得られるシームレス状半導電性ベルトは、ポリアミドの結晶性が強いという特性からか電気抵抗のバラツキが大きく、半導電性領域で特定の電気抵抗が要求される用途には不向きであった。
しかるところ特許文献1には、ナイロン樹脂へ導電性フィラーを配合するという記述があるのみで、シームレス状半導電性ベルトの電気抵抗の面内バラツキを抑える具体的方法についての記述は見られない。
特開平11−352796号公報(第1−4頁)
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであり、プラス帯電するという特性を有し、1×10〜1×1014Ω・cmの体積抵抗率の範囲において、体積抵抗率を安定して精度良く発現することができ、さらに表面平滑性、機械的特性に優れたポリアミド系電子写真用部材を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意研究を行った。本発明者らは鋭意研究を行った。この結果まず、ポリアミド、変性ポリオレフィン、カーボンブラックを必須とし、そして必要によりポリオレフィンを含む組成物からなるポリアミド系電子写真用部材がプラス帯電し、ポリアミドに単にカーボンブラックを配合しただけのポリアミド系電子写真用部材よりも体積抵抗率が均一であることを見いだした。次いで前記ポリアミド系電子写真用部材の体積抵抗率をよりいっそう均一とするためにさらに研究を行った。この結果意外にも、前記組成物からなるポリアミド系電子写真用部材を微視的に観察した際に見られる海島構造における島部分の平均径が、ポリアミド系電子写真用部材の表面平滑性や機械的特性のみならず、体積抵抗率の均一性に相関があることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
(1)ポリアミド(A)100重量部に対し、変性ポリオレフィン(B)と必要により含まれるポリオレフィン(C)が合計で10〜100重量部含まれるとともに、変性ポリオレフィン(B)とポリオレフィン(C)の重量比((B):(C))が100:0〜2:98であり、しかもポリアミド(A)、変性ポリオレフィン(B)、およびポリオレフィン(C)の合計量100重量部に対しカーボンブラック(D)が2〜30重量部含まれてなり、且つ同一面内における体積抵抗率の最大値と最小値との比が10倍以下であることを特徴とするポリアミド系電子写真用部材;
(2)変性ポリオレフィンおよび変性ポリオレフィン(B)が、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、エステル基およびエポキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも一種の官能基により変性されたポリオレフィンから選ばれた一種以上であることを特徴とする(1)に記載のポリアミド系電子写真用部材;
(3)厚みが30〜1000μmであり、シームレスベルト状に成形されてなることを特徴とする(1)又は(2)に記載のポリアミド系電子写真用部材;
(4)10点平均表面粗さRtmが1μ以下であることを特徴とする(1)乃至(3)に記載のポリアミド系電子写真用部材;
である。
前記したように本発明のポリアミド系電子写真用部材は、ポリアミド(A)、変性ポリオレフィン(B)、カーボンブラック(D)を必須とし、そして必要によりポリオレフィン(C)を含む組成物からなり、ポリアミド(A)100重量部に対し、変性ポリオレフィン(B)と必要により含まれるポリオレフィン(C)が合計で10〜100重量部含まれるとともに、変性ポリオレフィン(B)とポリオレフィン(C)の重量比((B):(C))が100:0〜2:98であり、しかもポリアミド(A)、変性ポリオレフィン(B)、およびポリオレフィン(C)の合計量100重量部に対しカーボンブラック(D)が2〜30重量部含まれてなり、且つ同一面内における体積抵抗率の最大値と最小値との比が10倍以下としたものである。このような要件を備えた本発明のポリアミド系電子写真用部材は、プラス帯電特性を有するとともに、体積抵抗率のバラツキが少なく、良好な表面平滑性、良好な機械的特性を示す。以下本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるポリアミド(A)としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6とナイロン12との共重合体等の脂肪族ポリアミドを挙げることができる。これらのうちでも、加工温度を低く設定できることから、融点が230℃以下、さらには200℃以下のポリアミドが好ましく、この意味からナイロン11、ナイロン12、ナイロン6とナイロン12との共重合体から選ばれる1種以上の組み合わせが最適である。本発明のポリアミド系電子写真用部材は比較的加工温度が低い変性ポリオレフィン、ブタジエン・スチレン系共重合体の水素添加物、さらにポリオレフィンを用いている。このため、加工温度が250℃以上と高くなると成形加工時においてこれらの合成樹脂の溶融張力が小さくなり、とりわけ環状ダイスから押出す成形法、所謂、インフレーション成形の場合においては加工性が悪くなり、また熱劣化も起こる傾向があり、良好な表面平滑性、良好な機械的特性を有するポリアミド系電子写真用部材が得られないことがある。
本発明で用いられる変性ポリオレフィン(B)とは、カルボキシル基、カルボン酸金属塩基、酸無水物基、エステル基およびエポキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するものである。かかる変性ポリオレフィンの具体例としてはエチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・フマル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル・アクリル酸共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・プロピレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン・酢酸ビニル・グリシジルメタクリレート共重合体などに代表されるところの、オレフィン系単量体とカルボキシル基、カルボン酸金属塩基(カルボン酸金属塩基を含む変性ポリオレフィンはカルボキシル基を含む変性ポリオレフィンとNaOHやKOHに代表されるアルカリとを反応させることにより得ることができる。)、酸無水物基、エステル基およびエポキシ基から選ばれる官能基を有するビニル系単量体との共重合体がある。
さらにエチレン−g−無水マレイン酸共重合体(gはグラフトを表わす。以下同じ。)、エチレン・プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン・プロピレン−g−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン−g−アクリル酸共重合体、エチレン・1−ブテン−g−フマル酸共重合体、エチレン・1−ヘキセン−g−イタコン酸共重合体、エチレン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン−g−フマル酸共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル−g−アクリル酸共重合体、スチレン・ブタジエン−g−無水マレイン酸共重合体、およびこれらの誘導体などに代表されるところの、ポリオレフィンにカルボキシル基または酸無水物基などを有するビニル系単量体をグラフトした変性ポリオレフィンが挙げられる。
一方、本発明に用いられるポリオレフィン(C)としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いて合成されたポリエチレン、メタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
次いで本発明に用いられるカーボンブラック(D)としては、通常のファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等を挙げることができ、特に平均粒子径40nm以下のカーボンブラックが少量の配合で組成物の電気抵抗を下げることができるので好ましい。さらに、本発明では、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、オキサゾリン基から選ばれる一種以上の官能基を有するポリマーがグラフト付加されたグラフト化カーボンブラック、あるいは低分子量化合物で表面処理したカーボンブラックも用いることができる。
次いで本発明のポリアミド系電子写真用部材を構成する各成分の好ましい重量割合について説明する。本発明においてはポリアミド(A)100重量部に対し、変性ポリオレフィン(B)とポリオレフィン(C)が合計で10〜100重量部、より好ましくは15〜80重量部含まれるのが好ましい。そしてポリアミドに配合される変性ポリオレフィン(B)とポリオレフィン(C)は、その重量比((B):(C))が、100:0〜2:98、より好ましくは、100:0〜5:95となるようにする。ポリアミド(A)100重量部に対する変性ポリオレフィン(B)とポリオレフィン(C)の配合量が合計で10重量部未満である場合には得られるポリアミド系電子写真用部材の電気抵抗のバラツキが大きくなりやすく、また、100重量部を越えて含まれると、ポリアミドが島部分を形成しやすく、ポリアミド系電子写真用部材がプラス帯電しにくくなりやすい。
さらに、ポリアミド(A)に配合される変性ポリオレフィン(B)とポリオレフィン(C)の重量比((B):(C))が、2:98を越えてポリオレフィン(C)の割合が増すと、後述するごとく、複数の合成樹脂により形成される海島構造における島部分の平均径を5μm以下とすることが困難となりやすく、成形加工性が低下し、良好な表面平滑性、良好な機械的特性を有するポリアミド系電子写真用部材が得られない傾向がある。
なお上に示した各成分の重量的な割合は、ポリアミド(A)にポリオレフィン(C)は必ずしも配合する必要がないことを意味するが、変性ポリオレフィンやブタジエン・スチレン系共重合体の水素添加物は一般にポリオレフィンに比較して高価なものであることから、コストパフォーマンスが要求される場合には必須成分とするのが好ましい。
一方、カーボンブラック(D)の配合量は、ポリアミド(A)、変性ポリオレフィン(B)、ポリオレフィン(C)の合計量100重量部に対し、2〜30重量部、さらには3〜25重量部とするのが好ましい。カーボンブラックの配合割合が2重量部未満の場合は、得られたポリアミド系電子写真用部材の体積抵抗率が高くなり、30重量部を超えると得られたポリアミド系電子写真用部材の体積抵抗率が低くなりすぎるばかりでなく、溶融粘度が高くなり成形加工が困難となり、良好な表面平滑性、良好な機械的特性を有するポリアミド系電子写真用部材が得られない傾向がある。
また、本発明の半導電性ポリアミド組成物は、上記した組成の他に電気特性や機械特性に悪影響を及ぼさない範囲で合成樹脂の加工の際通常用いられる酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、発泡剤、加工助剤、顔料等を配合することができる。さらにカーボンブラックに追加してイオン導電材料を併用することもできる。また、必要に応じて、他の合成樹脂を少量配合することもできる。
さらに、本発明のポリアミド系電子写真用部材は、複数の合成樹脂により形成される海島構造における島部分の平均径が5μm以下、より好ましくは3μm以下であることが重要である。本発明のポリアミド系電子写真用部材は複数の合成樹脂のうち、ポリアミドが海部分を形成し、それ以外の合成樹脂が島部分を形成しているが、この島部分の平均径が5μm以下であるとポリアミド系電子写真用部材の表面平滑性や機械的特性が向上するのみならず、その理論的な理由は定かでないが体積抵抗率の均一性も向上する。一方、島部分の平均径が5μmを超えると表面平滑性や機械的特性のみならず、体積抵抗率の均一性が低下する。このように海島構造における島の平均粒径を5μm以下にするためには、上記したような樹脂を上記した割合で用いるようにするほか、ニーダー、ロール、バンバリーミキサー、二軸混練機等を用いての加熱混練時の混練温度、混練装置の混練トルク等に留意することが望ましい。混練温度は複数の合成樹脂の溶融粘度が近接する温度に設定することが好ましい。
本発明のポリアミド系電子写真用部材は、押出成形加工、とりわけも環状ダイスから押し出す成形方法、所謂インフレーション押出成形方法により得ることができる。この方法で厚み30〜1000μm、のシームレスベルト状に成形された任意口径のポリアミド系電子写真用部材は継ぎ目を有さないものであり、電子写真方式の複写機、プリンター、ファックス等に使用される中間転写ベルト、転写搬送ベルト等として有用である。さらに同様にシームレスベルト状に成形されたポリアミド系電子写真用部材を導電性支持体上に被覆し加熱、融着させることにより半導電性ロールとすることができる。あるいは、パイプコーティングダイを付けた押出し機で導電性支持体上に半導電性ポリアミド組成物を溶融被覆することにより半導電性ロールとすることもできる。半導電性ロールは例えばクリーニングロール、帯電ロール、現像ロール、転写ロールとして有用である。
さらに前記した厚みが30〜1000μmで、シームレスベルト状に成形された本発明のポリアミド系電子写真用部材は、10点平均表面粗さRtmが1μm以下であり、同一面内における体積抵抗率の最大値と最小値との比が10倍以下であることが望ましい。10点平均表面粗さRtmが1μm以下であることにより本発明の電子写真用部材を中間転写ベルト、帯電ロール、現像ロール、転写ロール等に使用した場合、生成画像の鮮明さが格段に向上する。また、同一面内における体積抵抗率の最大値と最小値との比が10倍以下であることにより本発明のポリアミド系電子写真用部材はトナーや紙を引き付ける力が均一となり、中間転写ベルト、転写搬送ベルト、クリーニングロール、帯電ロール、現像ロール、転写ロール等の電子写真用部品としてより好適に用いることができるようになる。
ポリアミド系電子写真用部材の10点平均表面粗さRtmを1μm以下とするためには、成形時において環状ダイスの樹脂吐出部近傍の温度をやや高めに設定するのが有効である。10点平均表面粗をさらに低く抑えるには、例えば、(1)チューブの内径より外径が若干大きい円筒状の金型へ多層チューブを伸ばしつつ被せるとことによりチューブに張力をかけ、加熱する方法、(2)円筒状の金型へチューブを被せ、加熱したローラで外周面を処理しつつ平滑化させる方法、(3)円筒状金型に被せたチューブへ熱風を吹付けて加熱した後、コールドロールでチューブ表面の平滑化と冷却を行う方法、(4)複数の支持ロールで保持したチューブを加熱する方法、(5)複数の支持ロールで保持したチューブを回転させながら加熱したロールを当て、ベルトを加熱し平滑化する方法等がある。
また、ポリアミド系電子写真用部材の同一面内における体積抵抗率の最大値と最小値との比を10倍以下に抑えるには前記したように、複数の合成樹脂により形成される海島構造における島部分の平均径を小さく抑えるのが効果的であり、具体的には島部分の平均径を3μm以下、より好ましくは2μm以下となるように成形する方法が有効である。
なお、カーボンブラックを含有する熱可塑性樹脂の成形品は、(1)所定の熱可塑性樹脂へカーボンブラックを高濃度に配合するカーボンブラックのマスターバッチを製造する工程、(2)所定の電気抵抗を発現するよう該カーボンブラックのマスターバッチを熱可塑性樹脂で希釈、所定濃度とするコンパウンド化の工程、(3)上記コンパウンドを所定の形状に成形する工程、を必要とし、計三回の加熱溶融工程が必要であった。熱可塑性樹脂としてポリアミドを選択した場合、同樹脂は吸湿し易く、これを溶融加工すると分子量の低下を招き溶融粘度の低下により加工性の低下や部材の物性の低下を招く等の問題があった。本発明においては、変性ポリオレフィンおよび/またはブタジエン・スチレン系共重合体の水素添加物(B)、ポリオレフィン(C)のいずれか一種以上をベース樹脂としてカーボンブラックをマスターバッチ化することができる。このようにすればポリアミドを加熱溶融する工程を一つ減らすことができ、それだけ加熱による分子量低下を抑えることができ加工性の低下や、部材の物性の低下を抑制することができる。
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明する。なお、ポリアミド系電子写真用部材につき以下のようにして、海島構造の島部分の平均径、体積抵抗率およびそのバラツキ、帯電特性、表面粗さ、製膜性を評価した。
<海島構造の島部分の平均径>
シームレスベルト状に成形されてなるポリアミド系電子写真用部材の断面を、走査型電子顕微鏡で観察し、海島構造の島の径を測定し、その平均を求めた。
<体積抵抗率およびそのバラツキ>
シームレスベルト状に成形されてなるポリアミド系電子写真用部材の体積抵抗率を三菱化学(株)製ハイレスタを用い、HRSプローブで測定した。なお測定は、印加電圧10V、23℃、50%RH条件下で行った。また体積抵抗率のバラツキは、シームレスベルトの10箇所の体積抵抗率を測定し、その最大値と最小値との比で表した。
<帯電特性>
シームレスベルト状に成形されてなるポリアミド系電子写真用部材をロール間に張架、回転させ、表面電位計MODEL344(TREK社製)を用いてベルト表面の電位を測定した。
<製膜性>
二軸混練機にて混練して得られたシームレスベルト状に成形する前の組成物を、直径100mmの環状ダイスを付けた押出し機より押出して折径192mmのチューブ状に溶融加工(BUR:1.22)してシームレスベルトを成形する際、厚さ70μmまで引伸ばせれば○、厚さ71〜200μmに引伸ばせれば△、厚さ200μm以下に引伸ばすとチューブに穴が開く場合を×とした。
<表面粗さ>
実施例5に示された半導電性ロールの表面粗さRtmは、表面粗さ形状測定機サーフコム570A(東京精密社製)を用いて測定した。
以下の実施例、比較例においては次の合成樹脂、およびカーボンブラックを用い、記載のごとく略称する。
<ポリアミド>
Ny1:宇部興産社製「共重合ナイロン7028B」(ナイロン6・ナイロン12共重合体、融点170〜180℃)
<変性ポリオレフィン>
MPO1:三井・デュポン社製「ニュクレルN0943」(エチレン・メタクリル酸共重合体)
MPO2:住友化学工業社製「ボンドファーストE」(エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体)
MPO3:日本油脂社製「モディパーA8200」(エチレン・エチルアクリレート・無水マレイン酸共重合体)
<ポリオレフィン>
PO1:住友化学工業社製「スミカセンF208」(低密度ポリエチレン)
<カーボンブラック>
CB1:電気化学工業社製「デンカブラック」(アセチレンブラック)
[製造例1]
PO1:60重量部、CB1:40重量部を二軸混練機を用いて混練造粒し、カーボンブラックマスターバッチA(以下CB・MB−Aと表す)を調製した。
[製造例2]
Ny1:80重量部、およびCB1:20重量部を二軸混練機を用いて混練造粒し、カーボンブラックマスターバッチB(以下CB・MB−Bと表す)を調製した。
[実施例1〜3]
Ny1、製造例1で得られたCB・MB−A、およびMOP1、MOP2、MOP3を、表1に示す割合で混合し、二軸混練機を用いて混練造粒して半導電性ポリアミド組成物のペレットを得た。その後このペレットを、直径100mmの環状ダイスより押出し、厚さ150μm、折径192mmのチューブ状フィルムを得た(BUR:1.22、また、押出し機より押出された組成物は70μm以下にまで引き伸ばすことができるものであった)。このチューブ状フィルムを所定の長さに切断し、シームレスベルトを得た。
得られたシームレスベルトの、海島構造における島の平均径、体積抵抗率ならびにそのバラツキおよび帯電特性等を表2に示す。
Figure 2009001805
[比較例1]
Ny1、および製造例1で得られたCB・MB−Aを、表1に示す割合で混合し、二軸混練機を用いて混練造粒してペレットを得た。その後、実施例1〜3と同様にして、このペレットを、直径100mmの環状ダイスより押出し、厚さ150μm、折径192mmのチューブ状フィルムを得ようと試みたが(BUR:1.22)、空気を送り込みチューブを膨らませる際にチューブが裂けやすく、厚さ300μm、折径145mmのチューブ状フィルムしか得られなかった。このチューブ状フィルムを所定の長さに切断し、シームレスベルトを得た。
得られたシームレスベルトの、海島構造における島の平均径、体積抵抗率ならびにそのバラツキおよび帯電特性等を表2に示す。
[比較例2]
実施例1〜3と同様にして、製造例2で得られたCB・MB−Bを直径100mmの環状ダイスより押出し、厚さ150μm、折径192mmのチューブ状フィルムを得た(BUR:1.22、また、押出し機より押出された組成物は70μm以下にまで引き伸ばすことができるものであった)。このチューブ状フィルムを所定の長さに切断し、シームレスベルトを得た。
得られたシームレスベルトの、海島構造における島の平均径、体積抵抗率ならびにそのバラツキおよび帯電特性等を表2に示す。
Figure 2009001805
[比較例3]
PO1、および製造例1で得られたCB・MB−Aを、表1に示す割合で混合し、二軸混練機を用いて混練造粒してペレットを得た。その後、実施例1〜3と同様にして、直径100mmの環状ダイスより押出し、厚さ150μm、折径192mmのチューブ状フィルムを得た(BUR:1.22、また、押出し機より押出された組成物は70μm以下にまで引き伸ばすことができるものであった)。このチューブ状フィルムを所定の長さに切断し、シームレスベルトを得た。
得られたシームレスベルトの、海島構造における島の平均径、体積抵抗率ならびにそのバラツキおよび帯電特性等を表2に示す。
[製造例3]
Ny1:30重量部、MOP1:42重量部、およびCB1:28重量部とを二軸混練機を用いて混練造粒し、カーボンブラックマスターバッチC(以下CB・MB−Cと表す)を調製した。
[実施例4]
Ny1:72.5重量部、製造例3で得られたCB・MB−C:27.5重量部を混合し、二軸混練機にて混練造粒してペレットを得た。なおこのペレットは表1で示された比率1が14:100、比率2が100:0、比率3が8:100となるものであった。
その後このペレットを、直径100mmの環状ダイスより押出し、厚さ150μm、折径192mmのチューブ状フィルムを得た(BUR:1.22、また、押出し機より押出された組成物は70μm以下にまで引き伸ばすことができるものであった)。このチューブ状フィルムを所定の長さに切断し、シームレスベルトを得た。
得られたシームレスベルトの、海島構造における島の平均径、体積抵抗率ならびにそのバラツキおよび帯電特性を表2に示す。
表2から明らかなように、比較例1は変性ポリオレフィンを用いていないためポリアミドとポリオレフィンとの相溶性が悪く、海島構造における島の平均径が6.5μmあり、インフレーション法による厚さ300μm以下のチューブの製膜が困難であった。また、比較例2で得られたシームレスベルトはベース樹脂がポリアミドだけからなるため体積抵抗率が3.4×10〜2.1×1010Ω・cmと60倍のバラツキがあり、実用に適さないものであった。比較例3はベース樹脂に、CB・MB−Aのベース樹脂と同じ低密度ポリエチレンを用いているため変性ポリオレフィンが不要で、インフレーション法によって容易にチューブを得ることができたが、体積抵抗率のバラツキが大きく、帯電させるとマイナスに帯電した。これに対し、実施例1〜4で得られたシームレスベルトは、いずれも海島構造における島の平均径が5μm以下であり、またシームレスベルト1本の中で体積抵抗率の最大値と最小値との比は10倍以下であり、電子写真用の部材として優れた特性を有することがわかる。
[実施例5]
Ny1:70重量部、および製造例3で得られたCB・MB−C:30重量部を二軸混練機を用いて混練造粒してペレットを得た。なおこのペレットは表1で示された比率1が16:100、比率2が100:0、比率3が9:100となるものであった。
その後このペレットを、直径10mmの環状ダイスより押出し、厚さ150μm、折径18mmのチューブ状フィルムを得た(BUR:1.15、また、押出し機より押出された組成物は70μm以下にまで引き伸ばすことができるものであった)。得られたチューブを所定の長さに切断し、これを直径12mmの鉄製芯金上へ被せ、170℃で40分間加熱融着することにより半導電性ロールを得た。得られた半導電性ロールの抵抗値は3.8×10Ω、そのバラツキは3.2倍、10点平均表面粗さRtmは0.3μm、電圧印加時にプラス帯電を示すという半導電性ロールとして優れた特性を示した。
本発明のポリアミド系電子写真用部材は、ポリアミドと他の樹脂との相溶性が改善されているため、本発明のポリアミド系電子写真用部材は表面平滑性が良好であるとともに機械的特性にも優れる。そしてインフレーション押出成形法を用いて厚みが30〜1000μmのシームレスベルト状に成形されてなるポリアミド系電子写真用部材は、継ぎ目を有さないという特長を生かして中間転写ベルト、転写搬送ベルト、半導電性シームレスベルト、クリーニングロール、帯電ロール、現像ロール、転写ロールへの応用が可能である。 さらに、このようにして得られたポリアミド系電子写真用部材は電気抵抗のバラツキが小さく静電容量が大きいという特徴をも有している。従って、本発明のポリアミド系電子写真用部材は紙等の被印刷物やトナー等の吸着力が大きくて均一であるため、特に正確な半導電性領域の電気抵抗が要求されるカラーコピー、カラープリンター等の部材として好適に使用されるものである。

Claims (4)

  1. ポリアミド(A)100重量部に対し、変性ポリオレフィン(B)と必要により含まれるポリオレフィン(C)が合計で10〜100重量部含まれるとともに、変性ポリオレフィン(B)とポリオレフィン(C)の重量比((B):(C))が100:0〜2:98であり、しかもポリアミド(A)、変性ポリオレフィン(B)、およびポリオレフィン(C)の合計量100重量部に対しカーボンブラック(D)が2〜30重量部含まれてなり、且つ同一面内における体積抵抗率の最大値と最小値との比が10倍以下であることを特徴とするポリアミド系電子写真用部材。
  2. 変性ポリオレフィンおよび変性ポリオレフィン(B)が、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、エステル基およびエポキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも一種の官能基により変性されたポリオレフィンから選ばれた一種以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド系電子写真用部材。
  3. 厚みが30〜1000μmであり、シームレスベルト状に成形されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアミド系電子写真用部材。
  4. 10点平均表面粗さRtmが1μ以下であることを特徴とする請求項1乃至3に記載のポリアミド系電子写真用部材。

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