以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る製本システム10の模式的な全体構成図である。製本システム10は、給紙装置16、用紙加工装置18、中綴じ折り装置20、小口断裁装置22、および電子制御部30を有する。
電子制御部30は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMを有している。電子制御部30は給紙装置16、用紙加工装置18、中綴じ折り装置20、および小口断裁装置22の各々に接続されており、これらの各々の動作を制御する。
給紙装置16は、Aトレイ36A、Bトレイ36B、分離給送機構40、およびスイッチバック反転機構44を有する。Aトレイ36Aは、Bトレイ36Bよりも上方に設けられ、積載可能な用紙枚数はBトレイ36Bよりも多く設定されている。Aトレイ36AおよびBトレイ36Bは、モータ(図示せず)を作動させることにより各々が昇降可能に設けられている。以下、Aトレイ36AおよびBトレイ36Bを、必要に応じて「トレイ」と総称する。
Aトレイ36AおよびBトレイ36Bの各々には、印刷、電子写真方式、インクジェット方式などによる画像形成方法によって画像が形成された用紙が積載される。このため、Aトレイ36AおよびBトレイ36Bには、画像が形成された用紙が複数重なり合った状態の用紙群が、製本作業者の手によってセットされる。Aトレイ36Aには、通常は表紙以外の冊子の中身の部分である本身を構成する用紙が積載され、Bトレイ36Bには通常は表紙が積載されるが、Aトレイ36AおよびBトレイ36Bに積載される用紙がこれらに限られないことは勿論である。
分離給送機構40は、Aトレイ36AおよびBトレイ36Bの各々に対応して設けられる。分離給送機構40は、Aトレイ36AまたはBトレイ36Bに積載された用紙のうち最上位の用紙を分離して送り出す。第1の実施形態に係る分離給送機構40は、エア吸引式のものが採用されている。エア吸引式の分離給送機構は公知であるため、分離給送機構40の詳細な説明は省略する。
スイッチバック反転機構44は、ソレノイドのオン・オフを切り換えることにより搬送された用紙をスイッチバック反転機構44に搬入し、搬入方向と逆方向にその用紙を搬出することにより、用紙を反転させて搬送方向下流側(以下、単に「下流側」という)へと送り出す。第1の実施形態では、Aトレイ36Aから送り出される用紙の搬送経路にのみスイッチバック反転機構44が設けられている。Aトレイ36AまたはBトレイ36Bから送り出された紙は、給紙装置16内の用紙搬送路を通過して用紙加工装置18に送り出される。電子制御部30は、Aトレイ36AおよびBトレイ36Bの各々の昇降、分離給送機構40による用紙の送り出し、およびスイッチバック反転機構44による用紙の反転をそれぞれ制御することにより、トレイに積載された用紙群から用紙を一枚ずつ用紙加工装置18に送り出す。
用紙加工装置18は、給紙装置16から送り込まれた用紙に、周縁部の切り落とし処理および折り目付け処理を含む用紙加工処理を施す。用紙加工装置18は、周縁部切り落とし機構46および折り目付け機構52を有する。
たとえば、コピー機などで画像形成された用紙は周辺部に余白部分が生じる。このため、予め大きめの用紙を使って用紙に画像を形成し、製本処理時にこのような用紙の周縁部を切り落とす場合がある。周縁部切り落とし機構46は、送り込まれた用紙の周縁部を切り落とすことにより、このような余白の部分を用紙から削除し、見栄えのよい冊子の作成を実現する。
周縁部切り落とし機構46は、位置決めガイド47、両端切り落としスリッタ48、および前後端切り落としカッター50を有する。位置決めガイド47は、各々が装置前後方向に一つずつ配置されるよう一対設けられ、メイン搬送路45に搬送された用紙の搬送方向と平行な両側端と当接し、用紙の搬送方向と垂直な方向への移動を規制する。一対の位置決めガイド47の各々は、モータ(図示せず)を作動させて用紙搬送方向と垂直な方向にそれぞれ移動させることが可能となっている。
両端切り落としスリッタ48は、各々が装置前後方向に一つずつ配置されるよう一対設けられる。一対の両端切り落としスリッタ48の各々は、外周に刃が形成された一対の円盤状のカッターにより構成される。両端切り落としスリッタ48は、位置決めガイド47により両側端が規制された状態で、メイン搬送路45に搬送された用紙の両側端部を用紙の搬送方向と平行な直線で切り落とす。一対の両端切り落としスリッタ48の各々は、モータ(図示せず)を作動させて用紙搬送方向と垂直な方向にそれぞれ移動させることが可能となっている。
前後端切り落としカッター50は両端切り落としスリッタ48の下流側に設けられる。前後端切り落としカッター50は、メイン搬送路45の上方および下方にそれぞれ1つずつ配置されるよう一対設けられ、モータ(図示せず)が作動してメイン搬送路45上方のカッターが下降し、メイン搬送路45下方のカッターが上昇することにより、メイン搬送路45に搬送された用紙の前端部および後端部を、用紙搬送方向と垂直な直線で切り落とす。このように周縁部切り落とし機構46は、両端切り落としスリッタ48および前後端切り落としカッター50により用紙の周縁部を切り落とす。
折り目付け機構52は、メイン搬送路45上方に設けられた折り目付け部材を有する。モータ(図示せず)が作動してこの折り目付け部材が下降し、用紙を押圧することにより、メイン搬送路45に搬送された用紙の中央に、用紙搬送方向と垂直な直線の折り目を付する。
電子制御部30は、用紙加工装置18に設けられた様々なモータなどのアクチュエータの作動を制御して、位置決めガイド47による規制位置、両端切り落としスリッタ48による用紙の両側端部の切り落とし、前後端切り落としカッター50による用紙の前後端部の切り落とし、および折り目付け機構52による用紙への折り目付けなどを制御する。
また、用紙加工装置18には、用紙周縁部の切り落とし処理や折り目付け処理が行われないバイパス搬送路53が形成されている。第1の実施形態では、給紙装置16においてAトレイ36Aにセットされた用紙群から給紙された用紙は、用紙加工装置18ではバイパス搬送路53を通って中綴じ折り装置20に送り出される。また、給紙装置16においてBトレイ36Bにセットされた用紙群から給紙された用紙は、用紙加工装置18ではメイン搬送路45を通って中綴じ折り装置20に送り出される。しかし、用紙加工装置18がこのような態様に限られず、例えばAトレイ36AおよびBトレイ36Bのいずれにセットされた用紙群から給紙された用紙であっても、用紙加工処理が必要な用紙はメイン搬送路45に搬送し、必要ない用紙はバイパス搬送路53に搬送してもよいことは勿論である。
中綴じ折り装置20は、用紙加工装置18から送り込まれた用紙に中綴じ折り処理を施す。中綴じ折り装置20は、綴じ機構57、折り機構59、折り無しスタッカ68を有する。
綴じ機構57は、サイドジョガー54、ステッチャ56、綴じストッパ58、およびバックジョガー55を有する。サイドジョガー54は一対設けられ、各々が綴じ機構57において所定枚数の用紙が重なり合って形成された用紙束の側端部に当接し、用紙搬送方向と垂直な方向である用紙幅方向における用紙束の位置を位置決めする。綴じストッパ58およびバックジョガー55は、綴じ機構57において所定枚数の用紙が重なり合って形成された用紙束の先端部および後端部にそれぞれ当接し、用紙束の用紙搬送方向における位置を位置決めする。サイドジョガー54、綴じストッパ58、およびバックジョガー55の詳細については後述する。ステッチャ56は、綴じストッパ58、サイドジョガー54、およびバックジョガー55によって位置決めされた用紙束に対して綴じ処理を施す。
折り機構59は、綴じ機構57の下流側に設けられており、綴じ機構57によって綴じ処理が実施された用紙束に、綴じた箇所で用紙束を折りたたむ折り処理を実施する。折り機構59は、一対の折りローラ60、折りナイフ61、折りストッパ66を有する。
綴じ機構57にて綴じ処理が実施されると、綴じストッパ58が下方に退避し、綴じられた用紙束が折り機構59に送り込まれる。折り機構59に送り込まれた用紙束は、先端が折りストッパ66に当接したところで用紙搬送方向の位置決めがされる。メイン搬送路62の上方には一対の折りローラ60が、軸方向が用紙搬送方向と垂直な方向に向くよう、用紙搬送方向に並設されている。折りナイフ61は、モータ(図示せず)が作動することにより一対の折りローラ60の間とメイン搬送路62の下方とを上昇および下降することが可能となっている。折りストッパ66により用紙束が用紙搬送方向の位置決めがされた状態で折りナイフ61を上昇させることにより、用紙束が一対の折りローラ60の間に巻き込まれる。第1の実施形態において、折り位置とは、折りナイフ61の先端が上昇して用紙束に当接するときの折りナイフ61の先端位置をいうものとする。折りストッパ66の詳細については後述する。一対の折りローラ60は、強い力で用紙束を挟持しながら用紙束を上方に搬送するよう回転することにより、用紙束に折り目を付ける。一対の折りローラ60によって折り目が付けられた綴じ折り冊子は、一対の折りローラ60のニップ部から上方に向かう綴じ折り冊子搬送路63を通ってベルト搬送機構64に送り込まれ、ベルト搬送機構64は、綴じ折り冊子を小口断裁装置22に送り出す。
なお、折りストッパ66は、ソレノイドをオン・オフすることによりメイン搬送路62に進退可能となっている。中綴じ折り装置20において綴じ処理および折り処理が施されない場合、綴じストッパ58および折りストッパ66はメイン搬送路62から退避した状態となり、用紙加工装置18から搬送された用紙は、折りストッパ66の下流に設けられた折り無しスタッカ68に積載される。
小口断裁装置22は、中綴じ折り装置20から送り込まれた綴じ折り冊子の小口を断裁して、最終的な冊子を作成する。小口断裁装置22は、小口裁断刃70、用紙押さえ部72、および小口断裁ストッパ74を有する。
小口断裁ストッパ74は、ソレノイド(図示せず)をオン・オフすることにより、用紙搬送路75に進退可能とされている。綴じ折り冊子の小口を断裁する場合、小口断裁装置22は、綴じ折り冊子が送り込まれるタイミングで小口断裁ストッパ74を用紙搬送路75に突出させておく。これにより、小口断裁装置22に送り込まれた綴じ折り冊子は先端が小口断裁ストッパ74に当接して用紙搬送方向の位置決めがなされる。
用紙押さえ部72は小口断裁ストッパ74より用紙搬送方向上流側(以下、単に「上流側」という)の用紙搬送路75上方に配置され、モータ(図示せず)が作動することにより下降して用紙搬送路75にある綴じ折り冊子を押さえつけて固定する。小口裁断刃70は用紙押さえ部72のさらに上流の用紙搬送路75上方に配置され、モータ(図示せず)が作動することにより下降する。小口断裁ストッパ74により用紙搬送方向の位置決めがされた状態で、用紙押さえ部72が綴じ折り冊子を押さえつけ、小口裁断刃70がその綴じ折り冊子の小口を断裁する。作成された冊子は綴じ折りスタッカ24に送り出され、綴じ折りスタッカ24上に蓄えられる。
なお、小口断裁装置22に代えて、小口、天地をそれぞれ断裁する断裁刃を備えた三方断裁装置を配置してもよい。また、小口断裁装置22の下流側に、天地を断裁する断裁刃を備えた天地断裁装置が配置され、小口断裁装置22によって小口が断裁された中綴じ折り冊子が天地断裁装置に送り込まれ、天地断裁装置において天地が断裁されてもよい。これによって、トンボマークなどが付された天地の縁部を除去することができ、見栄えのよい中綴じ折り冊子を作成することができる。
図2は、中綴じ折り装置20内部の綴じ機構57および折り機構59の詳細な構成を示す正面図であり、図3は、綴じ機構57の詳細な構成を示す上面図である。以下、図2および図3の双方に関連して綴じ機構57および折り機構59の構成について説明する。
用紙加工装置18から搬入された用紙束2は、ベルト上面がメイン搬送路62を構成するベルト搬送機構102によって、綴じ機構57に送り込まれる。綴じ機構57は、綴じストッパユニット106、綴じストッパ調整機構104、バックジョガーユニット132、バックジョガー調整機構130、およびライン光照射装置150をさらに有する。
綴じストッパユニット106は、綴じストッパ58、進退機構108、および支持プレート110を有する。綴じストッパ58は断面がL字型の細長い部材であり、用紙幅方向に延在するよう配置される。進退機構108はソレノイド(図示せず)を有し、ソレノイドがオンされることにより綴じストッパ58が回動して綴じストッパ58の当接面がメイン搬送路62より上方に突出し、ソレノイドがオフにされることにより綴じストッパ58が逆方向に回動して綴じストッパ58がメイン搬送路62より下方に退避するよう構成されている。電子制御部30は、このソレノイドのオン・オフを制御することにより、綴じストッパ58の進退を制御する。なお、進退機構108は、綴じストッパ58の当接面をメイン搬送路62から上方に突出させるとき、当接面が用紙搬送方向と垂直となるよう綴じストッパ58の回動角度を規制する。支持プレート110は、進退機構108を支持する。
綴じストッパ58の当接面がメイン搬送路62より上方に突出しているときは、ベルト搬送機構102および搬送ローラ124によって搬入された用紙束の先端部が綴じストッパ58の当接面に当接し、用紙束の先端部位置を規制する。したがって、綴じストッパ58は、用紙搬送方向と平行な方向への用紙束の移動を規制する位置決め手段として機能する。
綴じストッパ調整機構104は、ナット112、ボールネジ114、および綴じストッパ移動モータ122を有する。ナット112は綴じストッパユニット106の支持プレート110に固定される。ボールネジ114は、用紙搬送方向に延在してナット112に噛み合いする。ボールネジ114の一端にはローラ116が設けられており、綴じストッパ移動モータ122のモータ軸にはローラ120が設けられている。ベルト118がローラ116およびローラ120の双方に噛み合いしており、綴じストッパ移動モータ122が作動することにより、綴じストッパ移動モータ122のトルクがボールネジ114に伝達され、ボールネジ114が回転する。電子制御部30は、綴じストッパ移動モータ122に駆動信号を供給して綴じストッパ移動モータ122の正転、逆転、および回転角度を制御することにより、綴じストッパユニット106を用紙搬送方向と平行な方向に移動させて綴じストッパ58の当接面の位置を調整する。
バックジョガーユニット132は、バックジョガー55、進退機構134、および支持プレート136を有する。バックジョガー55は用紙搬送方向に垂直な当接面を有するブロック状に形成され、同一平面上に当接面が位置するよう、用紙幅方向に複数(第1の実施形態では3つ)設けられる。進退機構134はモータ(図示せず)を有し、モータが正転することによりバックジョガー55が用紙搬送方向に移動しながら上昇してメイン搬送路62より上面に当接面が突出し、また、モータを逆転することによりバックジョガー55が用紙搬送方向と逆方向に移動しながら下降してメイン搬送路62より下面に当接面が退避するよう構成されている。電子制御部30は、このモータに駆動信号を供給することによりモータの作動を制御し、バックジョガー55の進退を制御する。
バックジョガー55の当接面がメイン搬送路62より上方に突出しているときは、ベルト搬送機構102および搬送ローラ124によって搬入された用紙束の後端部がバックジョガー55の当接面に当接し、用紙束の後端部位置を規制する。したがって、バックジョガー55もまた、用紙搬送方向と平行な方向への用紙束の移動を規制する位置決め手段として機能する。
バックジョガー調整機構130は、ナット138、ボールネジ140、およびバックジョガー移動モータ146を有する。ナット138はバックジョガーユニット132の支持プレート136に固定される。ボールネジ140は、用紙搬送方向に延在してナット138に噛み合いする。ボールネジ140の一端にはローラ142が設けられており、バックジョガー移動モータ146のモータ軸にはローラ144が設けられている。ベルト143がローラ142およびローラ144の双方に噛み合いしており、バックジョガー移動モータ146が作動することにより、バックジョガー移動モータ146のトルクがボールネジ140に伝達され、ボールネジ166が回転する。電子制御部30は、バックジョガー移動モータ146に駆動信号を供給してバックジョガー移動モータ146の正転、逆転、および回転角度を制御することにより、バックジョガーユニット132を用紙搬送方向と平行な方向に移動させてバックジョガー55の当接面の位置を調整する。このように、電子制御部30、綴じストッパ調整機構104、およびバックジョガー調整機構130は、ステッチャ56による綴じ位置と、綴じストッパ58およびバックジョガー55により位置決めされる用紙束の位置との用紙搬送方向における相対的位置を変化させることにより、用紙搬送方向における用紙束への綴じ位置を調整する綴じ位置調整手段として機能する。
なお、一対のサイドジョガー54は、ベルト機構(図示せず)により、相互に近接および離間するように移動可能とされている。電子制御部30は、ベルト機構を駆動するモータ(図示せず)の作動を制御することにより、サイドジョガー54の近接および離間を制御する。
ライン光照射装置150は、ライン状のレーザ光を照射する。ライン光照射装置150は公知の技術であるため、その構成に関する説明は省略する。なお、レーザ光ではないライン状の光を照射するライン光照射装置が採用されてもよい。図4に示すように、ライン光照射装置150はライン状の投影光を、ステッチャ56による綴じ位置176を含む直線に重ね合わせるように用紙束2の上面に照射するよう、一対のステッチャ56の間に配置される。したがって、ライン光照射装置150は、ステッチャ56による綴じ位置を含む直線の位置を表示する綴じ位置表示手段として機能する。電子制御部30は、ライン光照射装置150のスイッチのオン・オフを制御することにより、ライン光照射装置150による用紙束2上面への光の照射を制御する。
綴じ機構57にて中綴じ処理が施された用紙束は、折り機構59内に搬入され、搬送ローラ152によって用紙載置プレート154およびベルト搬送機構156上に載置される。折り機構59は、折りストッパユニット160、および折りストッパ調整機構158を有する。折りストッパユニット160は、折りストッパ66、進退機構161、および支持プレート162を有する。折りストッパ66は断面がL字型の細長い部材であり、用紙幅方向に延在するよう配置される。進退機構161はソレノイド(図示せず)を有し、ソレノイドがオンされることにより折りストッパ66が回動して折りストッパ66の当接面がメイン搬送路62より上方に突出し、ソレノイドがオフにされることにより折りストッパ66が逆方向に回動して折りストッパ66がメイン搬送路62より下方に退避するよう構成されている。電子制御部30は、このソレノイドのオン・オフを制御することにより、折りストッパ66の進退を制御する。なお、進退機構161は、折りストッパ66の当接面をメイン搬送路62から上方に突出させるとき、当接面が用紙搬送方向と垂直となるよう折りストッパ66の回動角度を規制する。支持プレート162は、進退機構161を支持する。
折りストッパ66の当接面がメイン搬送路62より上方に突出しているときは、ベルト搬送機構156および搬送ローラ157によって搬入された用紙束の先端部が折りストッパ66の当接面に当接し、用紙束の先端部位置を規制する。したがって、折りストッパ66は、用紙搬送方向と平行な方向への用紙束の移動を規制する位置決め手段として機能する。なお、搬送ローラ157はスポンジなどの軟らかい部材で外周面が覆われており、ベルト搬送機構156のベルト面に常時圧接している。これにより、用紙束を搬入するときは用紙束に搬送力を与え、用紙束に折り処理を施すときには用紙束を円滑に一対の折りローラ60に送り込むことを可能としている。
折りストッパ調整機構158は、ナット164、ボールネジ166、および折りストッパ移動モータ174を有する。ナット164は折りストッパユニット160の支持プレート162に固定される。ボールネジ166は、用紙搬送方向に延在してナット164に噛み合いする。ボールネジ166の一端にはローラ168が設けられており、折りストッパ移動モータ174のモータ軸にはローラ170が設けられている。ベルト172がローラ168およびローラ170の双方に噛み合いしており、折りストッパ移動モータ174が作動することにより、折りストッパ移動モータ174のトルクがボールネジ166に伝達され、ボールネジ166が回転する。電子制御部30は、折りストッパ移動モータ174に駆動信号を供給して折りストッパ移動モータ174の正転、逆転、および回転角度を制御することにより、折りストッパユニット160を用紙搬送方向と平行な方向に移動させて折りストッパ66の当接面の位置を調整する。このように、電子制御部30、および折りストッパ調整機構158は、折りナイフ61および折りローラ60による折り位置と、折りストッパ66により位置決めされる用紙束の位置との用紙搬送方向における相対的位置を変化させることにより、用紙搬送方向における用紙束への折り位置を調整する綴じ位置調整手段として機能する。
電子写真方式またはインクジェット方式などによって用紙に画像を記録する場合、本来記録すべき位置からずれた位置に画像が記録される場合がある。このため、用紙束の用紙搬送方向長さの中央に綴じ位置を設定するだけでは、記録された画像に対応した適切な位置で用紙束を綴じ、および折りたたむことが困難となる。特に、例えば図5に示すように、綴じられ、および折りたたまれるべき直線である綴じ折りライン2aを境界として左右の各々のページにいっぱいにべた印刷であるグラビア印刷が施され、左右のページの間に余白がないような場合、綴じ位置または折り位置が綴じ折りライン2aからずれることにより見栄えが悪いものとなる。これに対し、用紙束の中央で綴じ処理および折り処理を施して試験的な中綴じ折り冊子を作成し、綴じ折りライン2aから綴じ位置および折り位置がどれほどずれているかをユーザが見て、その後の中綴じ折り処理における綴じ位置および折り位置を調整するのでは、ユーザの工数が増加するだけではなく、試験的に作成した中綴じ折り冊子が無駄になってしまう。なお、ずれた画像位置にあわせて綴じ処理および折り処理を実施した場合、その直後の中綴じ折り冊子は小口がずれたものとなるが、小口断裁装置22にて小口を断裁することにより最終的に小口を揃えることができる。
このため、第1の実施形態に係る製本システム10では、用紙束に綴じ処理を施す前に、ライン光照射装置150を用いてステッチャ56による綴じ位置を含む直線の位置を示す光を用紙束の上面に照射する。以下、図6〜図8に関連して、用紙束への綴じ処理および折り処理の手順を詳細に説明する。
図6は、ユーザによってスタートボタン(図示せず)が押されたときの処理を示すフローチャートである。コントロールパネルには、調整モード選択ボタン(図示せず)が設けられている。ユーザは、調整モード選択ボタンを押すことにより、用紙束への綴じ位置および折り位置を調整するための調整モードを選択することができる。また、調整モードを解除したい場合には、ユーザは、キャンセルボタンを押すことにより調整モードを解除させることができる。電子制御部30は、ユーザによって調整モードが選択された場合、調整モードフラグをオンに設定する。
製本システム10のコントロールパネル(図示せず)には、スタートボタンが設けられている。ユーザによってスタートボタンが押されたとき、電子制御部30は、調整モードフラグがオンに設定されているか否かを判定することにより、調整モードが選択されているか否かを判定する(S10)。調整モードが選択されている場合(S10のY)、電子制御部30は、用紙束への綴じ位置および折り位置を調整する調整処理を実行する(S12)。調整モードが選択されていない場合(S10のN)、電子制御部30は、ユーザによって入力された部数を作成するまで連続的に中綴じ折り冊子を作成する連続中綴じ折り処理を実行する(S14)。調整処理を終了すると、またはユーザによって入力された部数の中綴じ折り冊子の作成が終了すると、本フローチャートにおける処理を終了する。
図7は、図6におけるS12の調整処理の実行手順を示すフローチャートである。調整処理において、電子制御部30は、まず綴じストッパユニット106、バックジョガーユニット132、および折りストッパユニット160を標準的位置に配置する(S20)。ここで、綴じストッパユニット106の標準的位置とは、綴じストッパ58を突出させて当接面に用紙束先端部が当接したとき、用紙束の下面に表された画像がずれることなく記録されているならば用紙束の綴じ折りライン2aと綴じ位置が重なるような綴じストッパユニット106の位置をいう。また、バックジョガーユニット132の標準的位置とは、バックジョガー55を突出させて当接面に用紙束後端部を当接させたとき、用紙束の下面に表された画像がずれることなく記録されているならば用紙束の綴じ折りライン2aと綴じ位置が重なるようなバックジョガーユニット132の位置をいう。また、折りストッパユニット160の標準的位置とは、折りストッパ66を突出させて当接面に用紙束の先端部が当接したとき、用紙束の下面に表された画像がずれることなく記録されているならば用紙束の綴じ折りライン2aと、折りナイフ61および折りローラ60による折り位置が重なるような折りストッパユニット160の位置をいう。
綴じストッパユニット106、バックジョガーユニット132、および折りストッパユニット160が標準的位置に配置されると、電子制御部30は、ソレノイドをオンにして綴じストッパ58を突出させる(S22)。綴じ機構57に用紙が搬入される箇所には、用紙を検知する光センサ(図示せず)が設けられている。電子制御部30は、光センサによって搬入が検知された用紙が、用紙束を形成する所定枚数に達したと判定した場合、一対のサイドジョガー54を近接させる方向に移動させて用紙束の側端部を揃え(S24)、さらにバックジョガー55を突出させて用紙束の後端部を揃える(S26)。バックジョガー55を用紙束の後端部に当接させることにより、用紙束の前端部が綴じストッパ58の当接部に当接し、用紙束の前端部も揃えられることになる。こうして、綴じストッパ58およびバックジョガー55によって用紙束の用紙搬送方向における位置が位置決めされ、一対のサイドジョガー54によって用紙束の用紙幅方向における位置が位置決めされる。
用紙束が位置決めされると、電子制御部30は、ライン光照射装置150のスイッチをオンにして、ステッチャ56による綴じ位置を含む直線の位置を示すライン状の光を用紙束上面に照射させる(S28)。ここで、コントロールパネルには、ステッチャ56による綴じ位置を調整するための綴じ位置調整ボタンが設けられている。綴じ位置調整ボタンは2つのボタンによって構成されており、一方のボタンがユーザによって押されると、電子制御部30は、綴じストッパ移動モータ122およびバックジョガー移動モータ146を作動させて、微小な長さである所定の単位調整量だけ綴じストッパ58およびバックジョガー55の位置を用紙搬送方向に移動させる。他方のボタンがユーザによって押されると、電子制御部30は、微小な長さである所定の単位調整量だけ綴じストッパ58およびバックジョガー55を用紙搬送方向の逆方向に移動させる。ユーザは、ライン状の光の位置と、綴じ折りライン2aの位置がずれていた場合、この綴じ位置調整ボタンを操作することにより(S30)、綴じ折りライン2aに綴じ位置を合わせることができる(S32)。なお、ライン状の光の位置と綴じ折りライン2aの位置がずれていた場合、そのずれ量を補正するための調整値をユーザによって入力することができるようコントロールパネルが構成されていてもよい。この場合、綴じ位置の調整値がユーザによって入力されると、電子制御部30は、入力された調整値だけ綴じストッパ58およびバックジョガー55を移動させ、綴じ折りライン2aに綴じ位置を合わせる。
綴じストッパ58などを標準的位置に配置したときの綴じ折りライン2aと綴じ位置とのずれと、折りストッパ66を標準的位置に配置したときの綴じ折りライン2aと折り位置とのずれは同一と考えられる。このため、電子制御部30は、折りストッパ移動モータ174を作動させて、綴じストッパ58およびバックジョガー55を移動させたときと同じ方向に同じ距離だけ折りストッパユニット160を移動させ、綴じ折りライン2aに折り位置を合わせる(S34)。
製本システム10のコントロールパネルには、調整モードを終了させるための調整終了ボタンが設けられている。綴じ折りライン2aに綴じ位置および折り位置を合わせる調整を終了し、ユーザによってこの調整終了ボタンが押されると(S36)、電子制御部30は、ステッチャ56により綴じ針を用紙束に打ち込ませる中綴じ処理を実施する(S38)。中綴じ処理を終了すると、電子制御部30は、綴じストッパ58およびバックジョガー55をメイン搬送路62の下方に退避させ、綴じ処理を施した用紙束を折り機構59に搬送させる(S40)。
綴じ処理が施された用紙束が折り機構59に搬送されると、用紙束は、すでに用紙搬送方向の位置が調整された折りストッパ66に当接して停止する。電子制御部30は、このように折りストッパ66によって用紙搬送方向の位置決めがされた用紙束に対して、折りナイフ61をメイン搬送路62の上方に突出させて用紙束を一対の折りローラ60の間に巻き込ませることにより用紙束に折り目を付ける中折り処理を実施する(S42)。
折り処理が終了すると、電子制御部30は、作成された中綴じ折り冊子を小口断裁装置22に排出する(S44)。小口断裁装置22に搬入された中綴じ折り冊子は、小口断裁装置22にて小口が断裁され、綴じ折りスタッカ24に排出される。綴じ折りスタッカ24が綴じ折りスタッカ24に排出されると、電子制御部30は調整モードフラグをオフに設定することにより調整モードを終了し、通常モードに戻す(S46)。ユーザは、綴じ折りスタッカ24に排出された中綴じ折り冊子を見て、適切な位置に綴じ処理および折り処理が施されているかを検査する。まだ適切な位置に綴じ処理および折り処理が施されていない場合、ユーザは、再び調整モードを選択してスタートボタンを押すことにより、用紙束への綴じ位置および折り位置を再度調整することができる。適切な位置に綴じ処理および折り処理が施されている場合、ユーザは通常モードのままスタートボタンを押すことにより連続中綴じ折り処理を実行することができる。
図8は、図5におけるS14の連続中綴じ折り処理の実行手順を示すフローチャートである。通常モードのままスタートボタンがユーザに押された場合、綴じストッパ58およびバックジョガー55の用紙搬送方向位置がすでに調整されていると考えられる。このため、連続中綴じ折り処理では、電子制御部30は、綴じストッパユニット106およびバックジョガーユニット132を移動させることなく、ソレノイドをオンにして綴じストッパ58を突出させる(S50)。電子制御部30は、綴じ機構57に搬入された用紙が用紙束を形成する所定枚数に達したと判定した場合、一対のサイドジョガー54を近接させる方向に移動させて用紙束の側端部を揃え(S52)、さらにバックジョガー55を突出させて用紙束の後端部を揃える(S54)。
綴じストッパ58、バックジョガー55、および一対のサイドジョガー54によって用紙束が位置決めされると、電子制御部30は、中綴じ処理を実施する(S56)。中綴じ処理を終了すると、電子制御部30は、綴じストッパ58およびバックジョガー55をメイン搬送路62の下方に退避させ、綴じ処理を施した用紙束を折り機構59に搬送させる(S58)。
電子制御部30は、折りストッパ66に綴じ処理された用紙束が当接した後、中折り処理を実施する(S60)。こうして作成された中綴じ折り冊子は、ベルト搬送機構64によって小口断裁装置22に排出され(S62)、小口断裁装置22において小口が断裁された後、さらに綴じ折りスタッカ24に排出される。
電子制御部30は、綴じ機構57に送り込まれた用紙の枚数を一冊当たりの用紙枚数で割った値と、ユーザによって作成が指示された中綴じ折り冊子の部数とを比較することにより、綴じ処理および折り処理を施した用紙束が、作成を指示した中綴じ折り冊子の部数のうち最後の中綴じ折り冊子となる用紙束か否かを判定する(S64)。最後の用紙束でない場合(S64のN)、電子制御部30は、S50に戻り、再び新たな中綴じ折り冊子の作成を開始する。最後の用紙束の場合(S64のY)、電子制御部30は、中綴じ折り冊子の作成を停止する。
(第2の実施形態)
図9(a)および図9(b)は、第2の実施形態に係る綴じ機構57の右側面図である。なお、特に言及しない限り、第2の実施形態に係る製本システム10の構成および動作は第1の実施形態と同様である。
第2の実施形態に係る綴じ機構57では、ライン光照射装置180が、一対のステッチャ56の間ではなく、一対のステッチャ56の、用紙幅方向の一方側(第2の実施形態では前方)に配置される。ライン光照射装置180と一対のステッチャ56は、相互に固定されており、モータ(図示せず)が作動することによりボールネジ機構またはベルト機構を駆動させて用紙幅方向に移動可能とされている。電子制御部30は、このモータに駆動信号を供給することによりモータの作動を制御し、ライン光照射装置180および一対のステッチャ56の用紙幅方向への移動を制御する。
第2の実施形態に係る製本システム10では、電子制御部30は、は、図6のS12の調整処理の実行時は、ステッチャ56を綴じ処理を実行するための位置から退避させると共にライン光照射装置180を用紙束2の上面に光を照射させるための位置に進出させ、図6のS14の連続中綴じ折り処理の実行時は、ライン光照射装置180を用紙束2の上面に光を照射させるための位置から退避させると共にステッチャ56を綴じ処理を実行するための位置に進出させる。
具体的には、図7のS28において、電子制御部30は、図9(a)に示すように、ライン光照射装置180がサイドジョガー54によって位置決めされた用紙束2の中央部分の上方に位置するよう、ライン光照射装置180および一対のステッチャ56を後方に移動させて、ステッチャ56による綴じ位置を含む直線の位置を示すライン状の光を用紙束上面に照射させることを可能とする。このとき、ライン光照射装置180は、ステッチャ56による綴じ位置を含む直線の位置を表示する綴じ位置表示手段として機能する。また、図7のS38において、電子制御部30は、図9(b)に示すように、一対のステッチャ56をサイドジョガー54によって位置決めされた用紙束2の上方に位置するよう、ライン光照射装置180および一対のステッチャ56を前方に移動させて、一対のステッチャ56の各々が所定の綴じ位置に綴じ処理を施すことを可能とする。電子制御部30は、図6におけるS14の連続中綴じ折り処理を実行する場合、一対のステッチャ56をサイドジョガー54によって位置決めされた用紙束2の上方に位置させたままの状態を維持する。
一対のステッチャ56の間にライン光照射装置180を配置した場合、一対のステッチャ56の相互の距離を短くすることが困難となるため、例えば幅の小さい用紙束に綴じ処理を施すことが困難となる。このようにライン光照射装置180を一対のステッチャ56の間ではなく横に配置することにより、一対のステッチャ56の間の距離を短くすることができ、幅の小さい用紙束にも綴じ処理を施すことが可能となる。
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態に係る綴じ機構57の右側面図である。なお、特に言及しない限り、第3の実施形態に係る製本システム10の構成および動作は第1の実施形態と同様である。
第3の実施形態に係る綴じ機構57では、ライン光照射装置182が、ブラケット184によって、一対のステッチャ56の一方に取り付けられており、これにより、ライン光照射装置182は、一対のステッチャ56の用紙幅方向の一方側(第3の実施形態では前方)に配置される。このとき、ライン光照射装置182は、用紙束2に向かって斜めにライン状の光を照射することができるよう、斜めに傾けられて一方のステッチャ56に取り付けられる。ライン光照射装置182は、ステッチャ56による綴じ位置を含む直線に重なるようにライン状の光を用紙束2の上面に照射する。したがってライン光照射装置182は、テッチャ56による綴じ位置を含む直線の位置を表示する綴じ位置表示手段として機能する。
例えばレーザ光を利用すれば、ライン状の光を斜めに照射しても、ラインの幅をあまり変化させることなく、ライン状の投影像を用紙束2の上面に表すことができる。このようにライン光照射装置180を一対のステッチャ56の間ではなく横に配置することにより、一対のステッチャ56の間の距離を短くすることができ、幅の小さい用紙束にも綴じ処理を施すことが可能となる。また、ライン光照射装置182や一対のステッチャ56を移動させる機構を設けることによるコストの増加を抑制することもできる。
(第4の実施形態)
図11は、第4の実施形態に係る綴じ機構57の上面図である。なお、特に言及しない限り、第4の実施形態に係る製本システム10の構成および動作は第1の実施形態と同様である。
第4の実施形態に係る綴じ機構57は、一対のサイドジョガー54に代えて一対のサイドガイド190を有する。一対のサイドガイド190の各々は、断面がL字状の細長い形状に形成され、L字の内側の2つの面の一方が用紙束の下面に対向し、他方が用紙束の2つの側端部の各々に対向するよう配置される。一対のサイドガイド190は、ベルト機構(図示せず)により、相互に近接および離間するように移動可能とされている。電子制御部30は、ベルト機構を駆動するモータ(図示せず)を作動させ、一対のサイドガイド190を相互に近接させることにより、一対のサイドガイド190の各々の当接面を用紙束の側端部に当接させ、用紙束の幅方向の位置決めを行う。
一対のサイドガイド190の各々は、当接面から相互に離間する方向に伸びるよう形成される綴じライン位置表示部190aを有する。綴じライン位置表示部190aは、ステッチャ56の前方および後方のそれぞれに位置するよう形成される。綴じライン位置表示部190aには、ステッチャ56による綴じ位置を含む直線の位置を表示する綴じライン位置表示マーク190bが上面に付されている。綴じライン位置表示マーク190bは矢印の形状のマークであり、矢印の先端が綴じ位置を含む直線上に位置するよう配置されている。したがって、このように綴じライン位置表示マーク190bが付された綴じライン位置表示部190aは、ステッチャ56による綴じ位置を含む直線の位置を表示する綴じ位置表示手段として機能する。綴じライン位置表示部190aを設けることで、ライン光照射装置などを設けなくてもユーザに綴じ位置を示すことができ、ユーザに綴じ位置を示すためのコストの増大を抑制することができる。
(第5の実施形態)
図12(a)は、第5の実施形態に係る綴じ機構57の上面図であり、図12(b)は、図12(a)の部分Pの拡大図である。なお、特に言及しない限り、第5の実施形態に係る製本システム10の構成および動作は第1の実施形態と同様である。
図12(a)に示すように、第5の実施形態に係る綴じ機構57は、一対のサイドジョガー54に代えて一対のサイドガイドユニット192を有する。一対のサイドガイドユニット192の各々は、サイドガイド194、取付部材196、および綴じライン位置表示部材198を有する。サイドガイド194は、綴じライン位置表示部190aの代わりに、綴じライン位置表示マーク190bが付されていない取付部194aが設けられている以外は、第4の実施形態に係るサイドガイド190と同様の形状を有する。
一対のサイドガイドユニット192は、ベルト機構(図示せず)により、相互に近接および離間するように移動可能とされている。電子制御部30は、ベルト機構を駆動するモータ(図示せず)を作動させ、一対のサイドガイドユニット192を相互に近接させることにより、一対のサイドガイド194の各々の当接面を用紙束の側端部に当接させ、用紙束の幅方向の位置決めを行う。
図12(b)に示すように、綴じライン位置表示部材198は、取付部材196によってサイドガイド194の取付部194aに取り付けられる。綴じライン位置表示部材198は透明な樹脂またはガラスによって形成され、ステッチャ56による綴じ位置を含む直線の位置を示す綴じライン位置表示マーク198aが表面に付されている。綴じライン位置表示マーク198aは細い矢印形状に形成され、矢印の先端部分および胴の部分が綴じ位置を含む直線上に位置するように配置される。したがって、綴じライン位置表示マーク198aが付された綴じライン位置表示部材198は、ステッチャ56による綴じ位置を含む直線の位置を表示する綴じ位置表示手段として機能する。
綴じライン位置表示部材198は、一対のサイドガイド194によって用紙束の幅方向の位置決めが行われたときに用紙束の上面まで突出するよう配置される。このように透明な綴じライン位置表示部材198を利用することで、ユーザは上方から用紙束の綴じ折りライン2aと綴じライン位置表示マーク198aの矢印の先端または胴の部分が重なるように綴じストッパ58およびバックジョガー55の位置を調整すればよいため、用紙束の綴じ折りライン2aとマークが重ならない場合に比べ、簡易に綴じ位置を調整することが可能となる。
(第6の実施形態)
図13は、第6の実施形態に係る折り機構59正面図である。なお、特に言及しない限り、第6の実施形態に係る製本システム10の構成および動作は第1の実施形態と同様である。折り機構59は、一対の折りローラ200、一対のプレスローラ202、ベルト搬送機構204、およびライン光照射装置206を有する。
一対の折りローラ200は、ニップ部が折りナイフ61による折り位置の鉛直上方に位置するよう、用紙搬送方向に並設される。一対のプレスローラ202は、ニップ部が折りナイフ61による折り位置の鉛直上方に位置するよう、一対の折りローラ200のさらに情報において、用紙搬送方向に並設される。
折りナイフ61は、用紙載置プレート154およびベルト搬送機構156に載置され、折りストッパ66によって用紙搬送方向の位置決めがされた用紙束を下方から押し上げながら湾曲させる。一対の折りローラ200は、折りナイフ61によって湾曲された状態で持ち上げられた用紙束を挟持して折りたたむ。一対のプレスローラ202は、一対の折りローラ200によって折りたたまれた用紙束にさらに強い圧力を与え、用紙束の折り目を定着させ、折り目周辺の幅方向への膨らみを減少させる。こうして、用紙束は折りナイフ61、一対の折りローラ200、および一対のプレスローラ202によって折りたたまれ、中綴じ折り冊子が作成される。したがって、折りナイフ61、一対の折りローラ200、および一対のプレスローラ202は、用紙束を折りたたむ折り手段として機能する。
一対のプレスローラ202のさらに上方にはベルト搬送機構204が設けられる。ベルト搬送機構204は、一対の折りローラ200、および一対のプレスローラ202によって折りたたまれて作成された中綴じ折り冊子をベルトによって挟持したまま搬送し、小口断裁装置22へと送り出す。
一対の折りローラ200、および一対のプレスローラ202は、モータ(図示せず)が作動することによりカム機構(図示せず)を介して、対となるローラ同士が離間および圧接する。電子制御部30は、モータに駆動信号を供給することによりモータの作動を制御し、一対の折りローラ200、および一対のプレスローラ202の、対となるローラ同士の離間および圧接を制御する。
ベルト搬送機構204のさらに上方には、ライン光照射装置206が設けられている。ライン光照射装置206は、折りナイフ61が上昇して用紙束2に当接する位置である折り位置208と重なるように、ライン状の光を用紙束2の上面に照射する。したがって、ライン光照射装置206は、折り位置208を表示する折り位置表示手段として機能する。電子制御部30は、ライン光照射装置206のオン・オフを制御することにより、ライン光照射装置206による光の照射を制御する。ライン光照射装置206の構成はライン光照射装置150と同様である。
図14は、図6におけるS12の調整処理の実行手順を示すフローチャートである。S114においてユーザが押すボタンが綴じ位置調整終了ボタンである以外は、S100〜S118の処理は、図7におけるS20〜S32、S36〜S40の処理と同様であることから説明を省略する。
綴じ機構57において綴じ処理が施された用紙束が折り機構59に搬送されると、電子制御部30は、まず一対の折りローラ200の各々、および一対のプレスローラ202の各々を離間させ(S120)、ライン光照射装置206に、折り位置208の位置を示すライン状の光を用紙束2の上面に照射させる(S122)。ここで、コントロールパネルには、折りナイフ61および一対の折りローラ60による折り位置を調整するための折り位置調整ボタンが設けられている。折り位置調整ボタンは2つのボタンによって構成されており、一方のボタンがユーザによって押されると、電子制御部30は、折りストッパ移動モータ174を作動させて、微小な長さである所定の単位調整量だけ折りストッパ66の位置を用紙搬送方向に移動させる。他方のボタンがユーザによって押されると、電子制御部30は、微小な長さである所定の単位調整量だけ折りストッパ66を用紙搬送方向の逆方向に移動させる。ユーザは、ライン状の光の位置と、綴じ折りライン2aの位置がずれていた場合、この折り位置調整ボタンを操作することにより(S124)、綴じ折りライン2aに折り位置を合わせることができる(S126)。なお、ライン状の光の位置と綴じ折りライン2aの位置がずれていた場合、そのずれ量を補正するための調整値をユーザによって入力することができるようコントロールパネルが構成されていてもよい。この場合、折り位置の調整値がユーザによって入力されると、電子制御部30は、入力された調整値だけ折りストッパ66を移動させ、綴じ折りライン2aに折り位置を合わせる。
綴じ折りライン2aに綴じ位置を合わせた後、コントロールパネルに設けられた折り位置調整終了ボタン(図示せず)がユーザによって押されると(S128)、電子制御部30は、一対の折りローラ200の各々および一対のプレスローラ202の各々を再び圧接させる(S130)。S132〜S136の処理は、図7のS42〜S46と同様である。このように、折り位置を示す光を用紙束2に照射することにより、ユーザは綴じ折りライン2aを折り位置に合わせるマニュアル調整を容易に実施することができる。
(第7の実施形態)
図15は、第7の実施形態に係るライン光照射装置210を示す図である。第7の実施形態に係る綴じ機構57では、ライン光照射装置150に代えてこのライン光照射装置210が使用される。なお、特に言及しない限り、第6の実施形態に係る製本システム10の構成および動作は第1の実施形態と同様である。
ライン光照射装置210は、LEDユニット212、および一対の集光板216を有する。LEDユニット212は、プレートの下方に複数のLED214が一列に配置され構成されている。一対の集光板216の各々は、平板が一部斜めに折り曲げられて形成される。一対の集光板216は、折り曲げられた部分の先端同士でライン状の隙間部218が形成するよう配置される。LEDユニット212は、隙間部218の鉛直上方に配置される。こうして、複数のLED214を点灯させたときに隙間部218を通過する光によって、ライン状の投影像220が被照射面に形成される。このような構成を採用することにより、レーザ光などを利用したなくても、簡易な構成でライン状の光を照射させることができ、ライン光照射装置を設けることによるコストの増加を抑制することができる。
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
ある変形例では、ステッチャ56は、モータを作動させることにより用紙搬送方向と平行に移動可能に構成されている。電子制御部30は、特定した綴じ折りライン2aの位置に綴じ位置を合わせるよう、モータの作動を制御してステッチャ56を用紙搬送方向と平行に移動させる。このようにステッチャ56を移動させることによっても、綴じ折りライン2aに綴じ位置を合わせることが可能となる。
ある別の変形例では、折りナイフ61および一対の折りローラ60は、モータを作動させることにより一体的に用紙搬送方向と平行に移動可能に構成されている。電子制御部30は、特定した綴じ折りライン2aの位置に折り位置を合わせるよう、モータの作動を制御して折りナイフ61および一対の折りローラ60を用紙搬送方向と平行に移動させる。このように折りナイフ61および一対の折りローラ60を移動させることによっても、綴じ折りライン2aに折り位置を合わせることが可能となる。
ある別の変形例では、第4の実施形態における綴じライン位置表示部190aや第5の実施形態における綴じライン位置表示部材198は、ステッチャ56に取り付けられる。これによっても、綴じ位置を表示することができる。
ある別の変形例では、給紙装置16および用紙加工装置18に代えて、多段給紙装置が設けられる。多段給紙装置は、縦方向に多段に設けられた複数の給紙部を有し、複数の給紙部の各々から用紙を一枚ずつ送り出し、搬送しながら送り出した用紙を重ね合わせて用紙束を作成する。多段給紙装置は、作成した用紙束を中綴じ折り装置20に搬入する。このように多段給紙装置を用いることにより、形成した用紙束を中綴じ折り装置20に送り込むことができるため、中綴じ折り装置20において迅速に中綴じ折り処理を実施することができる。なお、用紙加工装置18を設けず、給紙装置16と中綴じ折り装置20とが直接連結されてもよい。
ある別の変形例では、給紙装置16に代えて、印刷装置や、電子写真方式やインクジェット方式による画像記録装置が用紙加工装置18に連結される。この場合、用紙加工装置18を設けることなく、印刷装置や画像記録装置が中綴じ折り装置20に直接連結されてもよい。このように画像を記録する装置と、記録された用紙に中綴じ折り処理などの後処理を施す装置とを直結することにより、画像が記録された用紙をユーザの手で後処理装置に搬送する手間を低減させることができる。
10 製本システム、 16 給紙装置、 18 用紙加工装置、 20 中綴じ折り装置、 22 小口断裁装置、 30 電子制御部、 54 サイドジョガー、 55 バックジョガー、 56 ステッチャ、 57 綴じ機構、 58 綴じストッパ、 59 折り機構、 60 折りローラ、 61 折りナイフ、 62 メイン搬送路、 66 折りストッパ、 104 綴じストッパ調整機構、 106 綴じストッパユニット、 122 綴じストッパ移動モータ、 130 バックジョガー調整機構、 146 バックジョガー移動モータ、 150 ライン光照射装置、 158 折りストッパ調整機構、 174 折りストッパ移動モータ。