本実施形態の導光板の成形金型と射出成形機について、図1ないし図7を参照して説明する。図1は、本実施形態の導光板の射出成形機の正面図である。図2は、本実施形態の導光板の成形金型の断面図であって射出開始前の位置に可動金型が停止された状態を示す図である。図3は、本実施形態の導光板の成形金型の断面図であってキャビティ内の樹脂を圧縮された状態を示す図である。図4は、本実施形態の導光板の成形金型の断面図であってゲートカットされた状態を示す図である。図5は、図4におけるスプルブッシュの要部拡大図である。図6は、本実施形態の導光板の成形方法を示すチャート図である。図7は、本実施形態の導光板の成形方法により得られるスプルおよびランナの斜視図である。図9は、本実施形態の導光板の成形方法により得られるスプルの拡大側面図である。
本実施形態の射出成形機1は、射出後に容積可変に形成されたキャビティにより成形する射出圧縮成形やその一分野である射出プレス成形が可能な成形機である。射出成形機1は、スクリュが内蔵された加熱筒2aとノズル2bが備えられた射出装置3が、ベッド4上に配設されている。本実施形態ではノズル2bのノズル孔の直径は、1.5mmとなっている。射出装置3は、図示しない計量機構の計量用サーボモータおよび射出機構の射出用サーボモータにより制御され、射出速度、保圧切替位置、保圧時の圧力、射出量等が制御される。型締装置5は、ベッド4に固定される固定盤6と、ベッド4に配設された受圧盤7の間に4本のタイバ8が配設され、前記タイバ8には可動盤9が移動可能に挿通されている。また受圧盤7には型開閉と型締を行う型開閉・型締機構である型締シリンダ10が配設され、前記型締シリンダ10のラム10aが可動盤9の背面に固定されている。そして型開閉・型締機構である型締シリンダ10により、型締時の型締速度、型締力が制御される。本実施形態では型開閉・型締機構は、サーボバルブにより制御される型締シリンダ10の例を示すが、サーボモータとボールネジ機構等により作動されるトグル機構でも良い。
導光板の成形金型11は、平面方向の対角寸法4インチ(有効面積3.5インチ)、板厚0.38mmで均等板厚の携帯電話用導光板を射出プレス成形によって2個取りで成形する成形金型11である。(以下携帯電話用導光板については、単に導光板Pと略す。)射出プレス成形は、射出開始前に固定金型13のキャビティ形成部42aと可動金型12のキャビティ形成部16aとの距離が導光板Pの板厚Bに所定量を加算した値となる位置A(一定の型開量が確保された位置)で可動金型12を停止させ、射出開始とともに、または射出開始後、または射出完了後にキャビティ14内の溶融樹脂を圧縮して成形を行う方法である。射出プレス成形は、成形完了時に対してキャビティ14が僅かに開いた状態で射出を行うので一般的な射出成形と比較して流動損失が少ない。従って高速射出能力を有する射出装置が必要なく、溶融樹脂を比較的低速・低圧で射出することができる。また上記により射出速度が比較的遅いことから、板厚が薄い導光板PをゲートP3近傍の残留応力を極力小さくして成形することが可能である。そしてその結果、成形後の反りが極めて少なく、輝度バランスが優れた導光板を成形することができる。更には高速射出により成形した際のようなシルバーや焼けの問題が解消でき、スプルやランナも断面積が小さいものを使用できるので、冷却時間が短縮できるという利点がある。更にまた射出開始とともにまたは射出開始後に可動金型12を型締方向に移動させて溶融樹脂に圧縮を加えることから、キャビティ14のゲート部から遠い位置において溶融樹脂の流れを速くし充填不足をなくすとともに、微細な転写を良好に行うことができるという利点もある。そしてまたゲートP3を切断した後については、通常の射出成形金型では、射出装置から保圧を及ぼすことはできないが、射出プレス成形の場合は、キャビティ14内の溶融樹脂を圧縮して冷却固化による収縮に対応することができる。なお射出プレス成形に用いられる成形金型11は、型締完了位置から射出によりキャビティ14が僅かに開き再び圧縮される射出圧縮成形にも用いることができ、本発明はその両方を対象とする。
図2ないし図4は、本実施形態の成形金型11の断面である。成形金型11は、第1の金型である可動金型12と第2の金型である固定金型13とからなり、型合わせされた両金型12,13の間には容積および厚さが可変のキャビティ14が2個形成されるようになっている。なお本実施形態では2個取り成形金型11の例を示すが、1個取りの場合もスプルP1の形状等が同じ成形金型により成形が可能である。射出成形機1の可動盤9に取付けられる可動金型12には、金型本体部15とコア部16と可動枠部19等が設けられている。金型本体部15の固定金型側の面における略中央には、コア部16が固着されている。コア部16の固定金型13と対向する面は、鏡面からなり出光面を形成するキャビティ形成部16aとなっており、導光板Pの形状に略一致した突起部等を含む略四角形をしている。またコア部16の内部には、前記キャビティ形成部16aと平行に複数本の冷却媒体流路17が形成されている。なおコア部のキャビティ形成部を形成する部分と他の部分は、別体のブロックからなるものでもよい。またキャビティ形成部16aは鏡面の例を示したが、ドット、グルーブ、ホログラム等のパターン加工や粗面加工等がなされたものでもよく、スタンパが取付けられたものを除外しない。
前記金型本体部15の固定金型側の面における上下4箇所には、凹部が形成され、該凹部内にはバネ18が前記固定金型側に向けて取付けられている。そして前記バネ18の前記固定金型側は、前記コア部16の周囲を囲むよう配設された可動枠部19に当接されている。従って換言すれば可動枠部19によって形成された空洞部の中にコア部16が配設されている。そして可動枠部19全体が前記バネ18により金型本体部15およびコア部16に対して型開閉方向に移動可能となっている。そして可動枠部19の固定金型13と対向する面は当接面19aとなっている。また可動枠部19のゲートと反対側には入光面を形成するための入光面形成ブロック20が着脱自在にそれぞれ配設されている。そして入光面形成ブロック20を含む可動枠部19の前方内側部分もキャビティ形成部16aとともにキャビティ14を形成するキャビティ形成部を構成する。なお図2は、射出開始前の位置に可動金型12が停止された状態を示す。また図3は、射出開始後にキャビティ14,14内の溶融樹脂(図示せず)が圧縮された状態を示す。更に図4は、更に圧縮されゲートカットされた状態を示す。なお、図2〜図4は、いずれもスプルP1の形状や、コア部16と可動枠部19の位置関係やバネの収縮等は実際より誇張して描写してある。
金型本体部15の可動盤9側には、断熱板21が取付けられ、内部の空間および孔にはエジェクタ装置のエジェクタプレートを介して前後進される突き出しピン23が配設されている。突き出しピン23は、金型本体部15とコア部16の内部に亘って形成された孔内に配設され、その先端はランナ形成部32に臨み、スプルP1とランナP2が保持しやすいよう断面Z字状に食い込み部23aが設けている。突き出しピン23を駆動するのは、可動盤9内または可動盤9から型締シリンダ10のラム10a側に配設されたエジェクタ駆動装置である。
また金型本体部15の内部にはゲートカッタ部材24,24が配設されている。それぞれのゲートカッタ部材24は、長方形の薄板からなり、その前面はゲート形成部となっており、ゲート形成部のキャビティ側の角部が溶融状態のゲートを切断するためのゲートカッタ24aとなっている。そして図4に示されるように、前記ゲートカッタ部材24におけるキャビティ側の側面の一部は、ゲートカット後にキャビティ形成部を構成する。またゲートカッタ部材24の寸法は、溶融樹脂の流動方向と直交する方向の幅(ゲートの幅)が12mmとなっている。なお10〜20mm、溶融樹脂の流動方向の厚みが1.2〜2.0mm程度とすることが、本実施形態の大きさの導光板Pを成形する場合に望ましい。
またゲートカッタ部材24を駆動するのは、可動盤9内または可動盤9からラム10a側に配設されたゲートカッタ駆動装置である。ゲートカッタ駆動装置は、サーボバルブにより制御される油圧シリンダ、またはサーボモータとボールネジ機構が用いられる。サーボバルブにより制御される油圧シリンダの場合は、速度制御または圧力制御によりゲートカッタ部材24の前進時のクローズドループ制御を行う。またゲートカッタ部材24は、バネ25によりそれぞれ後退可能となっている。
またコア部16において、後述する固定金型13のスプルブッシュ44やインサートブロック43と対向する面は、ランナ形成部32となっている。ランナ形成部32については、ゲートカッタ部材24から突き出しピン23側に隣接する部分に、凸部が形成され、スプルブッシュ44と対向し突き出しピン23が臨む部分が凹部となっている。そしてゲートカッタ部材24のゲート形成部は突出時以外は、前記凸部よりも低い位置(可動盤9側)に位置している。その理由は射出時に、射出装置のノズルの通路先端で固まった樹脂がコールドスラグウエル状となっている凹部によって受け止められることによりキャビティ14,14へ流入しないためと、射出圧がゲートカッタ部材24の前面にかかり過ぎ、バリ等が発生することを防止するためである。
またランナ形成部32は、図7に示されるスプルP1およびランナP2(導光板P,Pとはゲートカットされ分離)を見て理解されるように、スプルP1との接続部P2aからゲートP3の切断部P2b,P2bに向けて幅が広くなるように形成されているが、スプルP1との接続部P2a(突き出しピン23の直径に略等しい)では7mm程度であり、ゲートP3の切断部P2bでは前述のように12mmであるから5mm広がっている。なおスプルP1の接続部P2aの幅は3〜9mm程度が望ましい。そしてランナP2の板厚P2cは、0.6〜1.5mm程度が冷却時間の短縮と樹脂の流動性の確保を両立させる点から望ましい。本実施形態ではランナ形成部32は、コア部16の一部として設けられており、ランナP2およびゲートP3も断面積が射出後に可変となるように設けられているが、ランナ形成部が可動枠部の一部となるようにして、ランナおよびゲートの断面積が変更不能に設けてもよい。またランナとゲートは直線的にキャビティに接続されるものでもよく、ランナの幅、長さも適宜のものが選択されるが、フィルムゲートを用いることが望ましい。
突き出しピン23の周囲でありゲートカッタ部材24の近傍には冷却媒体流路33が形成されており、ランナP2の冷却が促進されるようになっている。そして離型時に吹出されるエア通路34が、コア部16と可動枠部19の間に形成されている。なおエア通路は、ゲートカッタ部材24と孔の間にも設けてもよい。なお導光板とスプル等を一体のままスプルを把持して取出す際には、ゲートカッタ部材は不要であり、ゲートカッタ部材は本発明において必須のものではない。
次に固定金型13について説明すると、図2〜図4に示されるように、射出成形機1の固定盤6に取付けられる固定金型13には、金型本体部41、キャビティ形成ブロック42、インサートブロック43、スプルブッシュ44、ゲートカッタ部材45,45、当接ブロック46等から形成されている。そして金型本体部41の固定盤側には、断熱板47が取付けられるとともに、射出装置3のノズル2bが挿入される穴48が形成され、その周囲にはロケートリング49が取付けられている。金型本体部41の可動金型側にはキャビティ形成ブロック42が取付けられ、該キャビティ形成ブロック42の可動金型12と対向する面は、キャビティ形成部のうちの主要部形成部42aとなっている。本実施形態においてこの主要部形成部42aは、反射面を形成する部分であり、微細なドットが刻設されている。またキャビティ形成ブロック42の内部には、前記キャビティ形成部の主要部形成部42aと平行に、冷却媒体流路50が複数形成されている。またキャビティ形成ブロック42およびインサートブロック43と、当接ブロック46との間には離型時にエアを噴出するためのエア通路53が形成されている。
更に金型本体部41には、キャビティ形成ブロック42とともにインサートブロック43が配設されている。図4の二点鎖線部分を拡大した図5に示されるように、インサートブロック43の中央の孔には、スプルブッシュ44が配設されている。スプルブッシュ44は、可動金型12側の小径部とノズルタッチ面44b側に大径部とが段部を境に形成されており、中心軸にスプルP1を成形する内孔44aが設けられている。またスプルブッシュ44は、ステンレス鋼であるマルテンサイト系のSUS420J2またはそれに類する硬度を有する鋼からなっている。なおSUS420J2の熱伝導率は、24.9W/m℃であるが、あまりに熱伝導率が良すぎるものをスプルブッシュ44に使用すると、ノズル先端が冷えすぎて射出に支障をきたすとともに、スプルブッシュ44内の溶融樹脂の冷却固化が進みすぎるので、各種ステンレス鋼の熱伝導率の幅(13〜30W/m℃)程度が必須ではないが望ましい。またステンレス鋼のヤング率は、180〜210kN/mm2であり、ヤング率があまりに低いものでは、ノズルタッチ力を受け続けている状態で問題が起きる可能性がある。
そしてスプルブッシュ44の内孔44aは、ノズルタッチ面44bに臨む注入孔44cからランナ接続部44dに向けてテーパ状に拡径されている。本実施形態で抜き勾配(スプルを引き抜くために必要な傾斜なので抜き勾配という)の角度θは、図5の断面に示されるように中心線Lに対して各1°であり、両側で2°となっている。しかし前記角度θは各0.5〜2.0°(両側で1〜4°)が望ましく、更に前記角度θは、各0.8〜1.4°がランナ接続部44dの直径を最適にできるので更に望ましく、1°が最も望ましい。なぜなら0.5°より小さい抜き勾配の角度θの場合には、内孔との摩擦が大きくなり過ぎてスプルP1を離型する際にスプルP1が切れてしまう場合があるとともに糸引きが発生しやすくなる。また2.0°より大きい抜き勾配の角度θの場合には、ランナ接続部近傍の直径が太くなりすぎ、スプルP1を離型する際にランナ接続部近傍の冷却が遅れてランナ接続部近傍でスプルP1が切れてしまうという問題が発生する。ただし抜き勾配の角度θが2°または2°近傍の場合であっても、スプルP1のランナ接続部44dの直径P1bが一定以上であると冷却時間が掛かりすぎるという問題がある。
本実施形態におけるスプルブッシュ44の内孔44aにおける注入孔44cの直径P1aは、2.0mm(断面積3.14mm2:以下を四捨五入)、ランナ接続部44dの直径P1bは、約2.87mm(断面積6.47mm2:以下を四捨五入)となっている。前記注入孔44cの直径P1aは、ノズル2bのノズル孔の直径(本実施形態では1.5mm)よりも大きく設けられる。そして注入孔44cの直径P1aが小さすぎると溶融樹脂の流動損失やスプルの冷えすぎによる不良を招き、大きすぎると成形サイクル時間が長くなり、またスプル切れや糸引きの原因となる。なお本実施形態においてスプルブッシュ44の内孔44aの断面形状は真円形であるが、真円以外のものを除外するものではないので、直径P1a,P1bについては有効直径である。例えば注入孔およびランナ接続部の少なくとも一方は、非真円形状(楕円形、多角形、円弧と直線の組合せ、異なる円弧同士の組合せからなる形状等でもよく、その場合、図9において最大、最小が示されるスプルブッシュ44の注入孔44c,ランナ接続部44dの断面積の範囲内を満たすものであればよい。
そしてスプルブッシュ44の内孔44aの全長P1cは、25mmが最適値として採用されている。スプルブッシュ44の内孔44aの全長P1cは短いと溶融樹脂の流動損失を防止する点からは有利であるが、固定金型13に冷却媒体流路50等を設けるためと、インサートブロック43がノズルタッチ圧を受けるため必要な厚みを勘案すると20mm以上必要である。またスプルブッシュ44の内孔44aの全長P1cは、溶融樹脂の流動損失を減少させる意味から30mm以下とすることが望ましい。そしてスプルブッシュ44の内孔44aの表面は、サンドブラストにより粗面加工がなされているが、その理由はスプルブッシュ44の離型を容易にするためである。
従って本実施形態において、図5において一点鎖線でランナP2と区分され内孔44a内で成形されるスプルP1の容積は、僅かに発生するヒケや粗面による部分を考慮せずに116.6mm3(以下を四捨五入)であり、成形に使用されるポリカーボネートの比重1.2を乗算すると、スプルP1の重量g2は0.14g(以下を四捨五入)となっている。また図7に示されるスプルP1とランナP2を加えた重量(実測値の平均値)は、0.50gであり、比重で除算して容積を求めると約416.7mm3(以下を四捨五入)となっている。従って本実施形態のランナP2,P2の重量は両側分で0.36g(計算値)であり、その容積は300.0mm3(演算値)となっている。また対角寸法3インチ、板厚0.3mmで均等板厚の導光板Pの1枚の成形品重量g1(実測値の平均値)は、2.20gであり、その容積は約1,833.3mm3(以下を四捨五入)であった。従って本実施形態では、2枚の導光板が同時に成形されるので、2枚分の導光板Pの成形品重量g1は、4.40gであり、その容積は、3,666.6mm3(容積3.7cm3:以下を四捨五入)となる。よって導光板Pの成形品重量g1に対する前記スプルブッシュ44により成形されるスプルP1の重量g2の重量%(計算式はg2/g1)が、3.2%(以下を四捨五入)となっている。なおこの値は、従来の射出成形(キャビティの容積固定)により導光板Pを成形する場合の導光板Pに対するスプルP1の重量%と比較すると1/3程度〜1/6程度であり、画期的なスプルP1の小型化と容積の削減が実現された。
図9において実線で示されるのは、本実施形態の導光板の成形方法により得られるスプルの拡大側面図である。また図9において破線で示されるのは、本発明で得られるスプルP1の最小の場合と、最大の場合を示している。更に図9において、二点鎖線で示されるのが、従来の導光板の成形方法によって得られるスプルであり、本発明のスプルP1がいかに小容量であるかがよく解る。なお、対角寸法(実寸法)5インチ、板厚0.5mmの導光板(容積3,876mm3、重量4.65g)を2個取りする場合(容積7,752mm3(7.8cm3(小数点第3位四捨五入)),重量9.3g)か、または対角寸法(実寸法)7インチ、板厚0.5mmの導光板(容積7,526mm3(7.5cm3(小数点第3位四捨五入))、重量9.03g)を1個取りする場合までが本発明のスプルブッシュ44により成形可能であることが確認された。
上記のように、本発明において成形サイクル時間のうち冷却時間を決める要素として最も影響があるのは、図5に示されるようなスプルP1の直径およびテーパー角度(抜き勾配の角度)θである。射出装置のノズルのノズル孔(図示せず)の直径は1.5mmとなっている。スプル引き抜き時にノズル先端の樹脂が良好に除去されるためにも、スプルブッシュ44のノズル孔側の注入孔44cの直径はノズル孔の直径よりも大きくする必要があるが、1.6mm以上の注入孔とすることが望ましい。図10ないし図14は、対角寸法2.8インチ、板厚0.4mm、容積0.94cm3の小型導光板Pを2個取りする小型導光板の射出圧縮成形金型(スプルブッシュ44の構造は図5と同じ)を使用し、キャビティ形成面を冷却する冷却媒体流路の冷却水の温度を各90℃とし、ノズル温度325℃、加熱筒前部温度355℃、加熱筒中部温度370℃、加熱筒後部温度360℃、射出速度300mm/secにてテストを行った結果である。
図10は、注入孔44cの直径が1.6mm(断面積2.01mm2:以下を四捨五入)、図5に示されるようなテーパー角度θが1°、ランナ接続部44dの直径が2.5mm、長さ25mmのスプルブッシュ44を用いた際のデータであり、成形されるスプルP1は、図9において一番内側の破線で記載されたものである。この例では、スプルブッシュ44の冷却温度が70℃、80℃の場合に、成形サイクル時間が長くなる(5秒以上となる)とスプルブッシュ44の注入孔44cおよびノズルのノズル孔が冷却されすぎて次回の射出ができなかったり成形品にコールドスラグが混ざるという不良が発生した。そしてスプルブッシュ44の冷却温度が90℃の際も6秒以上で不良となった。従ってスプルブッシュ44の注入孔44cの直径は、1.6mmの場合は実用域が極めて狭いものであり、それ以下であると実用的な設定調整ができなくなるという問題が判明した。
図11は、注入孔44cの直径が2.0mm、テーパー角度θが1°、ランナ接続部44dの直径が2.9mm、長さ25mmのスプルブッシュ44を用いた際のデータであり、成形されるスプルP1は、図9において実線で記載されたものである。この例では各冷却温度の場合も、成形サイクル時間が2秒となるとスプルP1の冷却が追いつかなくなりスプル切れが発生する場合があるが、それ以外では良好な結果を示した。ただし必要以上に成形サイクル時間を延ばすことは経済的とは言えない。そしてまた成形サイクル時間が余りに延長されるとノズルが冷やされ溶融樹脂の流動性が低下する問題や、加熱筒内での溶融樹脂の滞留が長くなりすぎ樹脂が劣化(黄変や黒点)するという問題も発生する。そして冷却水の温度については、40℃の場合は、成形品にコールドスラグが交じり始めるので、成形に用いる冷却温度としては50℃以上とすることが望ましい。また120℃の場合は、スプル切れが4秒で発生するので、成形に用いる冷却温度としては110℃以下(特にはキャビティ形成面の冷却温度以下)とすることが望ましい。
図12は、注入孔44cの直径が2.3mm、テーパー角度θが1°、ランナ接続部44dの直径が3.2mm、長さ25mmのスプルブッシュ44を用いた際のデータである。この例では冷却温度が70℃の場合に、成形サイクル時間が3秒となるとスプル切れが発生し、冷却温度が80℃、90℃の場合では成形サイクル時間が5秒でもスプル切れが発生した。
図13は、注入孔44cの直径が2.6mm、テーパー角度θが1°、ランナ接続部44dの直径が3.5mm、長さ25mmのスプルブッシュ44を用いた際のデータである。この例では、ランナ接続部44dの直径は3.47mmとなりこの部分の冷却固化に時間を要する。そしてこの例では冷却温度が70℃の場合に、成形サイクル時間が5秒となるとスプル切れや糸引きが発生し、冷却温度が80℃、90℃の場合では成形サイクル時間が6秒でもスプル切れや糸引きが発生した。従って注入孔の直径が2.6mmの場合は、上記のように望ましい成形サイクル時間を6秒以内とした場合、それを達成することができる中で、上限の直径であると言える。
また図14は、注入孔44cの直径がそれぞれ1.6mm、2.0mm、2.3mm、2.6mmであって、テーパー角度θが1.5°、長さ25mmのスプルブッシュ44を用い、冷却温度を70℃としてテストした際のデータである。この例では、ランナ接続部の直径は、それぞれ前記に対応して2.9mm、3.3mm、3.6mm、3.9mmとなり、最も肉厚なこの部分の冷却固化が特に遅れるという問題がある。そして注入孔44cの直径2.6mm、テーパー角度θが1.5°の例では、冷却温度が70℃の場合に、成形サイクル時間が5秒となるとスプル切れが発生し、6秒でもスプルの伸びや曲がりが見られた。また他の注入孔44cの直径のものもスプルブッシュ44の内孔44aのテーパー角度θが1°の場合と比較して、最短となる成形サイクル時間を延長しないと成形不良が発生した。従って最も冷却が遅れるスプルブッシュ44のランナ接続部44dの直径は、3.6mmのものが実用領域で最大直径のものと判断された。
従って前記図13にも示される、注入孔44cの直径が2.6mmのものであっても、ランナ接続部44dの直径は、図14に示されるように3.6mmが上限となることが想定される。よって図9に実線の外側に破線で表わされるように、注入孔44cの直径2.6mm(断面積5.31mm2:以下を四捨五入)、ランナ接続部44dの直径3.6mm(断面積10.17mm2:以下を四捨五入)のスプルP1が本発明の中で最大容量のスプルP1となる。
そしてスプルブッシュ44の内孔44aの好ましいテーパー角度θは、注入孔44cからランナ接続部44dに向けて0.5〜2.0°拡径されていることが好ましい。しかしランナ接続部44dの直径が3.6mmを超えると、成形サイクル時間6秒(冷却時間3.9秒)としても、ランナ接続部44d近傍の冷却固化が遅れ、型開時にスプルP1の切れが発生する可能性がある。一度スプルP1がスプルブッシュ44内に残留してしまうと連続成形が中断される上に、熟練した作業者が狭い空間内で作業してスプルP1を取り出す必要があり、金型を痛める可能性もある。
上記の例を踏まえて、本実施形態の2枚で4.40g(容積3.7cm3)の導光板PとスプルP1の重量および容積について記載する。スプルP1が最小の場合としては、注入孔44cの直径P1aが1.6mm、抜き勾配の角度θ:中心線に対して各0.5°、全長P1cが20mmの内孔44aを有するスプルブッシュ44によって成形されるスプルP1の容積は、49.5mm3(以下を四捨五入)であり、スプルP1の重量g2が0.06g(以下を四捨五入)となる。そして成形品である導光板Pの成形品重量g1である4.40gに対するスプルP1の重量g2の重量%は、1.4%(以下を四捨五入)(容積比も同じ)となる。また上記の中でスプルP1の重量および容積が最大の場合としては、注入孔44cの直径P1aが2.6mm、ランナ接続部44dの直径P1bが3.6mm、全長P1cが30mmの内孔44aを有するスプルブッシュ44によって成形されるスプルP1の容積は、226.3mm3(以下を四捨五入)であり、スプルP1の重量g2が0.27g(以下を四捨五入)となる。そして導光板Pの成形品重量g1である4.40gに対するスプルP1の重量g2の重量%は、6.1%(以下を四捨五入)となる。よって導光板Pに対するスプルP1の重量%は、冷却効率と成形品の状態を満たす範囲として前記の1.4〜6.1%の範囲内となる。
更には抜き勾配の角度θやスプルP1の全長(内孔44aの全長P1cと一致)等がより一層望ましい場合として、注入孔44cの直径P1aが1.6mm、抜き勾配の角度θが、図5において一点鎖線で表わされる中心線Lに対して各1°、全長P1cが25mmの内孔44aを有するスプルブッシュ44を選択した場合は、スプルP1の容積は、81.4mm3(以下を四捨五入)であり、スプルP1の重量g2が0.10g(以下を四捨五入)となる。そして導光板Pの成形品重量g1である4.40gに対するスプルP1の重量g2の重量%は、2.3%(以下を四捨五入)となる。また上記の中で注入孔44cの直径P1aが2.6mm、抜き勾配の角度θが前記中心線Lに対して各1°、全長P1cが25mmの内孔44aを有するスプルブッシュ44を選択した場合は、スプルP1の容積は、181.0mm3(以下を四捨五入)であり、スプルP1の重量g2が0.22g(以下を四捨五入)となる。そして導光板Pの成形品重量g1である4.40gに対するスプルP1の重量g2の重量%は、5.0%(以下を四捨五入)となる。よって導光板Pに対するスプルP1の重量%は、上記の範囲である2.3〜5.0%とすることがスプルP1が離型可能となるまでの冷却速度、溶融樹脂の流動、および成形性の観点からより一層望ましい。
なお対角寸法(実寸法)5インチ、板厚0.5mmの導光板(容積3,876mm3、重量4.65g)を2個取りする場合、注入孔44cの直径P1aが2.6mm、抜き勾配の角度θが前記中心線Lに対して各1°、全長P1cが25mmの内孔44aを有するスプルブッシュ44を選択した場合は、前記のようにスプルP1の重量g2が0.22gであり、スプルP1は2.4重量%となる。
このスプルP1およびランナP2の小型軽量化は、前記のように射出プレスや射出圧縮成形を行うことにより、射出速度が比較的遅くてよいので、溶融樹脂の流動損失が小さくなるようスプルP1の断面積を大きくする必要がなくなったことが大きい。更にまた射出プレスや射出圧縮成形においては、キャビティ14,14内の樹脂に対して型開閉・型締機構により圧縮を加えることによってキャビティ14,14内の樹脂のヒケを無くすことができ、射出装置側から強力に保圧を及ぼす必要がないので、スプルP1が先に冷却固化してもよく、その結果スプルP1の断面積を大きくする必要がなくなった。特にゲートカットを行うタイプにおいては、ゲートカット前までスプルP1を介して保圧を加え、ゲートカット後には保圧を停止することにより、スプルP1の内圧を下げ、スプルP1に僅かにヒケを起こすようにすることにより、スプルP1をスプルブッシュ44の内孔44aからより容易に離型することができる。
そして前記スプルブッシュ44の小径部の周囲にはスプルP1およびランナP2を冷却する冷却媒体流路51が形成されている。具体的にはインサートブロック43のスプルブッシュ44と対向する部分に冷却媒体流路51がスプルP1の長手方向5〜10mm、長手方向に直交する方向の幅3〜6mmに凹部状に形成され、スプルブッシュ44とインサートブロック43の間にはそれぞれ冷却媒体の漏れを防ぐためにOリング51a,51aが嵌めこまれている。なお本実施形態ではスプルP1の全長が25mmと短いので一箇所に冷却媒体流路51が形成されているが、注入孔側とランナ接続部側を別個に冷却するようにしてもよい。なお本実施形態では冷却媒体は温度制御された水が使用されるが油を使用してもよい。
また図2ないし図4に示されるように、スプルブッシュ44のランナ接続部44dからキャビティ形成部に向けて、インサートブロック43の可動金型12と対向する面には、ランナ形成部54が接続されて形成されている。そして前記ランナ形成部54は当接ブロック46の当接面46aに対して溝状に一段低い位置(固定盤側の位置)に形成され、固定金型13側のランナP2を形成する面を構成する。そしてランナ形成部54の溶融樹脂の流動方向と直交する方向の幅は、スプルブッシュ44に隣接する部分からキャビティ14,14に向けて徐々に広くなっている。そしてランナ形成部54についても可動金型12のランナ形成部32と等間隔を保つように、凹部に対向して凸部が形成され、凸部に対向して凹部が形成されている。
そしてランナ形成部54の凹部の部分は、ゲート形成部へ連続する同一面で接続されている。従ってランナP2とゲートP3やその形成部に明確な区別がある訳ではない。またコア部16のランナ形成部32に連続してゲートカッタ部材24の端面からなるゲート形成部が形成されている。そしてゲート形成部の溶融樹脂の流動方向と直交する方向の幅(ゲートカッタ部材24の幅)は、スプルP1の直径よりも幅広に設けられている。従って本実施形態のゲートP3は、フィルムゲートの一種であって、導光板の側面(入光面とは反対側の側面)の長さの2/3〜1/4程度の長さ(幅)となっており、前記フィルムゲートを介してランナとキャビティが接続されている。
そしてインサートブロック43のランナ形成部54と、キャビティ形成ブロック42のキャビティ形成部の主要部形成部42aとの間には、ゲートカッタ部材45が固定されている。ゲートカッタ部材45は、ロックウエルCスケール硬度が55〜63HRCの合金工具鋼(SKD鋼)等の硬質金属部材からなる長方形の薄板であり、キャビティ形成部の主要部形成部42aを形成する部材よりも前記硬度が高い金属が使用されている。そしてゲートカッタ部材45の溶融樹脂の流動方向と直交する方向の幅は、ゲート形成部と同じか僅かに幅広に形成されている。またゲートカッタ部材45の厚みは、0.4〜0.8mm程度である。そしてゲートカッタ部材45の前面は、キャビティ形成部16aと対向しており、キャビティ形成部の一部となっている。またゲートカッタ部材45のゲート部側の角部が刃であるゲートカッタ45aを形成している。またゲート部側の面は可動金型12のゲートカッタ部材24が前進時に僅かな間隔を隔てて対向する面となっている。
次に図6のチャート図により、本実施形態の成形金型11による成形方法(射出プレス成形方法)について説明する。そして本実施形態では平面方向の対角寸法4インチ、板厚0.38mmの均等板厚の導光板を4.2秒の成形サイクル時間で成形している。その内訳は、型開閉時間(型開時間、取出時間、型閉時間を含む)1.4秒、中間時間(減圧時間を含む)0.1秒、射出時間0.05秒、保圧時間0.45秒、冷却時間2.2秒(実質的に冷却は射出開始から始まっている)である。このため本実施形態では、可動金型12のキャビティ形成部16aを冷却する冷却媒体流路17、突き出しピン23およびランナ形成部32近傍を冷却する冷却媒体流路33、固定金型13のキャビティ形成部の主要部形成部42aを冷却する冷却媒体流路50へ、温調器により成形される樹脂であるポリカーボネートのガラス転移温度Tgより30〜70℃低い、80〜120℃程度に温度制御された冷却媒体(冷却水)を流している。またスプルブッシュ44近傍およびランナ形成部54近傍を冷却する冷却媒体流路51へ、温調器により成形される樹脂であるポリカーボネートのガラス転移温度Tgより30〜100℃低い、50〜120℃程度に温度制御された冷却媒体(冷却水)を流している。なお前記冷却媒体流路51へ送られる冷却媒体の温度は、冷却媒体流路50に対して送られる冷却媒体の温度以下であることが望ましい。即ち図11にも示されるように、スプルブッシュ44の冷却媒体流路51への冷却水の温度が40℃の場合、7秒以上の成形サイクル時間ではスプルブッシュ44が冷えすぎて成形品にコールドスラグが混じる不良が発生した。また固定金型13におけるキャビティ形成ブロック42と温度差が有り過ぎると各部の熱膨張差が発生して好ましくなく、転写に関する問題もあるので、40℃以下では成形を行うことは望ましくない。また前記冷却媒体流路51への冷却水の温度が120℃の場合は、4秒でスプル切れが発生し、実施的にはそのような温度でスプル切れのリスクを犯して成形を行う意味がない。
また射出装置の前部ゾーン(最もノズルに近いゾーン)は350℃に温度設定され、ポリカーボネートの溶融樹脂が計量されている。なおポリカーボネートを用いた場合の前記射出装置の前部ゾーンの温度設定は、320〜380℃と比較的高温に温度設定されることが溶融樹脂の流動の点から望ましい。そして型締シリンダ10が作動され、固定盤6に取付けられた固定金型13に対して可動盤9に取付けられた可動金型12を当接させることにより型閉が行われる。この際一旦コア部16が最前進位置まで前進され、バネ18が収縮して可動枠部19と金型本体部15が当接される型閉完了位置(0位置)まで可動盤9等を前進させてから、再び型締シリンダ10により可動盤9等を微量後退させ、図2における射出開始時の位置Aに位置制御して停止させる。そのことにより成形完了位置より型開方向の位置に可動金型12のコア部16を停止させることができる。なお可動盤の位置がサーボモータ等により更に高精度に決められる場合は、最初から可動盤を射出開始時の位置Aに移動させてもよい。
その際の可動盤9および可動金型12のコア部16の射出開始時の位置Aは、固定金型13のキャビティ形成部42aに対する可動金型12のキャビティ形成部16aの距離が成形される導光板Pの板厚に0.1〜0.3mmを加算した位置となるように制御される。更には導光板Pの板厚に対して前記キャビティ形成部42aとキャビティ形成部16aの距離は、120%〜200%となる位置が望ましく、板厚が薄い場合は、前記比率の中で高い数値、板厚が厚い場合は低い数値が望ましい。この射出開始時の位置Aに停止時には、型開閉・型締機構である型締シリンダ10により前記位置が変更されない程度に僅かに型締力が及ぼされている。またサーボモータを用いる場合は、前記停止位置に停止されるよう位置制御がなされる。
そして可動金型12が停止され、厚さ可変のゲートを含むランナに接続された厚さ可変のキャビティ14,14が形成されると、前記キャビティ14,14内のエアの吸引を行う。エアの吸引は、図示しないバキューム装置とエア通路34,53との間の電磁開閉バルブを開き、エア通路34とそれに接続されるコア部16と可動枠部19の間隙、エア通路53とそれに接続されるキャビティ形成ブロック42と当接ブロック46との間隙等からキャビティ14,14内のエアを吸引する。射出開始前にキャビティ14,14内を減圧状態とするのは、射出の際に溶融樹脂がキャビティ14,14内で空気の抵抗を受けずに速やかに入光面形成ブロック20側の端部まで流動可能とするためであり、特に0.2〜1.0mmの板厚の薄い導光板Pを成形する際に有効である。なお本実施形態では、常時ノズル2bがスプルブッシュ44に当接されているから、減圧時にスプルブッシュ44側からエアが吸引されることはない。
次に所定の中間時間(減圧時間)が経過すると射出装置3の図示しない射出機構を作動させ、加熱筒2a内のスクリュを前進させて溶融樹脂の射出を行う。そして前記ノズル2bのノズル孔、スプルブッシュ44の内孔44aにより形成されるスプルP1、ランナP2、およびゲートP3を介してキャビティ14内に溶融樹脂が射出される。本実施形態では、射出速度はピークにおいて200mm/secとなるよう設定され、射出機構の射出用サーボモータによりスクリュの前進速度が制御される。しかし射出速度は150〜400mm/secが望ましい。また射出圧縮成形により板厚0.4〜1.0mmの導光板を成形する際にも同様の射出速度が適用される。前記射出速度150〜400mm/secは、一般的な射出成形で同様の成形を行う場合に500mm/sec以上とすることが望ましいのと比較して低い値である。このように比較的低い射出速度でキャビティ14,14内に射出充填できるので、上記のようにスプルP1およびランナP2の重量および容積を小さくすることができ、成形される導光板Pのゲート近傍の内部応力を小さくすることができる
そして射出がなされた際に、前記のように型締力は0に近い値となっているので、射出圧により可動金型12のコア部16および可動盤9等が後退し、キャビティ14,14の間隔が広げられる。射出後(射出完了と略同時)に、型締装置5側では型開閉・型締機構である型締シリンダ10を作動させ、可動盤9および可動金型12を型閉方向へ移動させる。このことにより可動枠部19に対してコア部16が相対的に前進され、キャビティ14,14の固定金型13のキャビティ形成部42aに対する可動金型12のキャビティ形成部16aの距離が短くなるので、キャビティ14,14内の溶融樹脂が圧縮される。この際型締シリンダ10は圧力制御されており、設定400KNとなるよう油圧が検出され制御される。なおこの値はキャビティ14,14内の樹脂圧換算では150MPa程度である。この際の昇圧速度は、設定値まで0.03秒で高速昇圧される。なお昇圧速度は速い方が望ましく、0.02〜0.05秒で昇圧されることが望ましい。また型締速度についても速い方が望ましく、ピーク時において300〜600mm/secが出力されるよう制御される。なおサーボモータを用いた機構よりも型締シリンダ10を用いた機構の方が、略同一スケールの場合では、立上がりが速く、高速の型締速度を達成することができる。そして本実施形態の対角寸法4インチの導光板の成形の例では、300KNで型締が行われる。なお場合によっては射出開始とともにまたは射出中(射出開始後)に型締を開始するようにしてもよく、その場合、キャビティ14,14の間隔がほとんど或いはまったく広がらない場合もありえる。また型開閉・型締機構の作動開始から圧縮を開始する所定位置、或いは所定型締力(または検出樹脂圧)となるまで位置制御により可動盤を移動させ、その後圧力制御に変更するようにしてもよい。
射出装置によりスクリュ位置が所定の保圧切換位置に到達すると、射出制御から圧力制御による保圧制御に切換えられる。なお保圧は5〜20MPa(樹脂圧)が望ましいが、クッション量をほとんどなくした射出および保圧が行われる。本実施形態では、所定時間が経過すると、図示しないゲートカッタ部材駆動装置により、可動金型12の各ゲートカッタ部材24を0.45〜0.8mm前進させ、ゲートP3,P3の切断を行う。この際、可動金型12のゲートカッタ部材24の刃であるゲートカッタ24aと固定金型13のゲートカッタ部材45の刃であるゲートカッタ45aの間でゲートP3,P3の切断がそれぞれ行われる。なおゲートカットの際、ゲートP3の溶融樹脂は完全に固化した状態でないことは言うまでもない。
そしてゲートカッタ部材24によりゲートP3の切断が行われた後は、ゲートカッタ部材24は前進位置に保持される。しかし本発明では、射出装置から保圧が及ばなくなっても、型開閉・型締機構である型締シリンダ10の駆動によって可動金型12のコア部16が前進されることによりキャビティ14,14内の溶融樹脂の圧縮を行うことができるので、冷却による収縮があっても、ヒケが発生せず、良好な転写成形ができる。そしてコア部16が前進され、最終的に導光板Pの板厚Bの位置で前進が停止された状態となる。一方射出装置の側は、保圧を停止し、所定時間後に計量を開始することができる。またスプルP1の側は、射出装置3から保圧が及ばなくなるので、スプルP1内の圧力を低下させることができる。そしてスプルP1は冷却媒体により冷却収縮が進行して僅かにヒケを生じ、スプルブッシュ44の内孔44aとの間に間隙が出来やすくなり、内孔44aが粗面加工されていることと相俟ってスプルP1が抜き取りやすくなる。
また本実施形態では、スプルP1に前記中心線Lに対して各1°の抜き勾配の角度θが設けられているので、スプルP1をより抜き取りやすくなっている。抜き勾配の角度θが小さすぎる場合(各0.5°より小)ではスプルP1が抜けず、抜き勾配の角度θが大きすぎる場合(各2°より大)では、注入孔44c近傍のスプルP1の冷却固化の進行に対してランナ接続部44d近傍のスプルP1の冷却固化の進行が遅れるので、スプルP1を無理に引き抜くとスプルP1がランナP2の近傍で切断される可能性が高くなる。また注入孔44cの直径P1aが2.0mmとなっており、スプルP1を引き抜いた際の糸引きを防止している。注入孔44cの直径が3.0mmを超えると、糸引きが発生し、1.6mmより小さくすると樹脂の流動損失が大きくなるので、本実施形態の数値よりも更に高い射出速度が求められることになり、導光板Pに不良品が発生する可能性が高くなる。
そして所定時間が経過すると型締力を低下させるとともに可動金型12の可動枠部19とコア部16の間のエア通路34、および固定金型13の当接ブロック46と、キャビティ形成ブロック42およびインサートブロック43との間のエア通路53等からキャビティ14,14およびランナP2へ離型用エアを及ぼす。次に型締装置を作動させ圧抜、型開を順に行う。その際、スプルP1は、食い込み部23aにスプルPと一体となっているランナP2が食い込んでいることから、スプルブッシュ44から引き抜かれ、ランナP2とともに可動金型12側に保持された状態で取出される。またゲートカットされた導光板P,Pも金型形状から可動金型12側に保持された状態で取出される。
また可動金型12が型開完了位置に停止するのとほぼ同時に、図示しない取出用ロボットが作動されるととともに、エジェクタ装置の突き出しピン23の前進が行なわれる。本実施形態に使用される取出用ロボットは、スプルP1およびランナP2の把持と、導光板の吸着が別個に保持可能となっている。なお前記取出時に、ゲートカッタ部材24は前進位置で停止した状態にある。なお本実施形態の導光板のゲートP3は、入光面になる部分ではないので、このまま仕上げ処理しないでも導光板として使用することができる。またスプルP1およびランナP2は、上記のように極めて重量%が小さいが、別途リサイクルして利用することも可能である。そしてその場合もスプルP1の直径が細いことから、小型の粉砕機で粉砕することができ、バージン材の比率を高めることができる。
次に導光板の対角寸法および板厚と成形条件の関係について記載する。導光板の対角寸法および板厚の関係は、樹脂やその成形条件によりカバーできる部分もあるので、厳密な区分はないが概略は次のように区分される。対角寸法2〜5インチの導光板は、板厚は0.3〜0.5mmの自由な範囲で成形が可能であり、条件次第では0.2mm以上のものも成形できる。因みに対角寸法2インチ、板厚0.3mmの導光板を2個取りした場合、容積は744mm3であり、成形品重量g1は0.89gである。
そして対角寸法5〜6インチの導光板では板厚は0.3〜0.6mmが樹脂流動と冷却速度の関係から特に望ましく、対角寸法6〜7インチの導光板では板厚0.4〜0.6mmが特に望ましい。そして例えば7インチの導光板ではゲートからゲートとは最遠方の角部までの距離は、約15cmであるので、大型の導光板ほど高い射出速度や高い型締速度が要求されることになる。また大型の導光板ほど樹脂の流動をよくするためには溶融樹脂の温度は高めであることが望ましい。また型締力については対角寸法2〜5インチの1個取りまたは2個取りの場合では200〜500KN、6インチ以上の導光板の1個取りの場合では500〜1000KNが望ましい。型締力は導光板の投影面積を勘案して所望の型締速度ピーク時において300〜600mm/secが実現できるよう決定される。
導光板の成形サイクル時間は、次のような時間を要する。対角寸法2〜5インチ、板厚0.2〜0.5mmの導光板を2個取りする場合、対角寸法5〜7インチ、板厚0.4〜0.6mmの導光板を1個取りする場合については、型閉完了から射出を経て型開開始までの時間(成形時間)が1.75〜4.0秒であり、型開開始から導光板の取出しを経て型閉完了までの時間(型開閉時間)を0.75〜2.2秒、トータルの成形サイクル時間を6.2秒以内で行うことが可能である。なお図15は、本発明に含まれる射出圧縮成形により導光板を成形するサイクル時間を最短の2.5秒で行う場合のチャート図である。その際の内訳は、型開閉時間(取出時間、中間時間)0.75秒と、射出遅延時間(増圧時間)0.1秒、射出時間0.05秒、保圧時間0.4秒、冷却時間1.2秒である。なお本発明の導光板の成形において、導光板の板厚は最高でも1.0mm以下であり、導光板の平面方向のサイズはさほど成形サイクル時間に影響を与えない。成形サイクル時間に最も影響を与えるのは、最も肉厚なスプルP1(その中でも特にランナ接続部)であり、これ以上成形サイクル時間を短縮しようとすると、スプルP1の冷却時間が不足して固化不足から、スプルP1の切れが発生する。図16のチャート図に示されるように対角寸法3インチ、板厚0.6mm(均等板厚)の転写パターンを有する導光板を成形サイクル時間6.0秒で射出圧縮成形により成形することもでき、この場合の冷却時間は3.9秒である。成形される導光板の面積や板厚が大きいものほど成形サイクル時間が長くなる傾向はあるが、これ以上成形サイクル時間を延長することは経済性等から問題があり、更に例えば9〜10秒を超えてくるとノズル冷却や加熱筒内の樹脂の劣化からも問題が発生する。
更に本発明は、図8に示されるような更に別の実施形態の導光板の成形金型61により射出圧縮成形や射出プレス成形を行ってもよい。この成形金型61は、所謂インロー金型と呼ばれるものである。具体的には可動金型62の金型本体部63には、前面にキャビティ形成部64a、側面に嵌合面64bが形成されたキャビティ形成ブロック64が固定されている。また金型本体部63にはエジェクタの突き出しピン等が配設されるランナ形成ブロック65が固着されており、ランナ形成ブロック65の側面も嵌合面65aとなっている。またキャビティ形成ブロック64とランナ形成ブロック65はぞれぞれ別系統の冷却媒体流路により冷却され、キャビティ形成ブロック64とランナ形成ブロック65の間には、可動ゲートカッタ部材が配設されている。そして前記キャビティ形成ブロック64とランナ形成ブロック65により固定金型66側に向けて凸部が形成されている。
一方固定金型66は、金型本体部67に対して、前面にキャビティ形成部68aが形成されたキャビティ形成ブロック68と、中央部にスプルブッシュ69が配設されたインサートブロック70が固定されている。また前記キャビティ形成ブロック68およびインサートブロック70の周囲を取囲むように枠形成ブロック71が固定されている。そして前記枠形成ブロック71の可動金型62側の内側は、キャビティ側面形成部71aとなっている。またキャビティ形成ブロック68とインサートブロック70の間には、固定ゲートカッタ部材が配設されている。そして前記キャビティ形成ブロック68のキャビティ形成部68aと枠形成ブロック71のキャビティ側面形成部71aとにより可動金型62に向けて凹部が形成されている。
そして固定金型66のスプルブッシュ69の周囲にもキャビティ形成ブロック68の冷却媒流路68bとは、別系統の冷却媒体流路70aが形成されている。また本実施形態においてもスプルP1の注入孔69aの直径P1aは20mm、抜き勾配の角度θは各1°であり、内孔44aの全長P1cは25mmである。そして成形される導光板Pの成形品重量g1に対して、スプルP1およびランナP2の重量g2も、図2等に示される実施形態と同じ関係のものが適用できる。
そして前記固定金型66の凹部に可動金型62の凸部を嵌合しても、嵌合面64b,65aとキャビティ側面形成部71aは溶融樹脂が漏れない僅かな間隙となっており、両金型62,66の間にキャビティ72が形成される。そして固定金型66の枠形成ブロック71と可動金型62の金型本体部63が当接しない状態で、固定金型66のキャビティ形成部68aと可動金型62のキャビティ形成部64a間の距離およびキャビティ72(キャビティ形成部)の容積が可変となっている。
従って図8に示される別の実施形態により射出プレス成形を行う際には、まず最初に前記固定金型66のキャビティ形成部68aに対する可動金型62のキャビティ形成部64aの間隔が、成形時に変更されることにより、射出速度を150〜400mm/secとしても射出充填が可能であり、またゲートカット後もキャビティ72内の溶融樹脂を圧縮して板厚0.3〜0.5mm、対角寸法2〜7インチの導光板を成形することが可能である。そして上記のようにスプルP1の直径が比較的小さくてよく、スプルP1を独立した冷却媒体流路70aにより冷却することにより、スプルP1を早期に冷却でき、成形サイクル時間を短縮することができる。
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。本実施形態では対角寸法4インチの携帯電話用の導光板の成形金型11について説明したが、導光板の形状や種類を選ばない。従って板厚が均厚な導光板でも、板厚が入光面側から他側に向けて薄くなる楔型導光板であってもよい。楔型導光板は、入光面以外の部分にゲートが形成され、薄肉部の板厚が上記の0.2〜0.6mmであるものが成形可能である。また光の入光については、側面から入光されるサイドライト型導光板や背面から入光され前面に出光するバックライト型導光板(光拡散板と呼ばれるものを含む)や外光を反射するものでもよい。また反射面と出光面の形状も鏡面、ドット、グルーブ、およびホログラム等各種の組合せが考えられる。更には入光および出光を伴うレンズやその他の薄板を本発明で行うことも想定される。いずれにしても、少なくとも一方が転写面であるものが本発明の射出プレス成形や射出圧縮成形に有効である。
また本実施形態では水平方向に型開閉が行われる射出成形機に取付けられる成形金型11について説明したが、垂直方向に型開閉が行われるものでもよい。更に上記実施形態では射出成形機の型開閉・型締機構により固定金型のキャビティ形成部と可動金型のキャビティ形成部の距離を変更して溶融樹脂を圧縮するものについて説明したが、可動盤または可動金型内に射出プレス用の油圧シリンダを設け、該油圧シリンダによりコア部を移動させて溶融樹脂を圧縮させるものでもよい。
更に成形に使用される樹脂については、ポリカーボネート(一例として出光興産のタフロンLC1500)について記載したが、光学性能と流動性に優れた樹脂なら他の樹脂でもよく、例としては、メタクリル樹脂(比重1.2)、シクロオレフィンポリマー樹脂(比重1.0)などが挙げられる。また本発明において導光板の範疇に含まれるものとしては、光拡散板等の透光性を有する樹脂板であってもよい。