JP2008303975A - クラッチ - Google Patents
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Abstract
【課題】クラッチの長寿命化
【解決手段】このクラッチ10は、クラッチの駆動側を構成する部材に保持された複数のフリクションプレート13と、クラッチの従動側を構成する部材に保持された複数のクラッチプレート14とを備えている。フリクションプレート13とクラッチプレート14は互い違いに重なるように配設されており、フリクションプレート13とクラッチプレート14とが互いに重なり合った部位に油を供給する給油通路20を備えている。当該給油通路20には給油量を制御する弁が設けられている。この場合、クラッチ10は、フリクションプレート13とクラッチプレート14とが互いに重なり合った部位に、油を供給する給油通路20を備え、この給油通路20に弁21を備えているので、フリクションプレート13とクラッチプレート14とが互いに重なり合った部位に供給される油の量を適当な量に制御することができる。
【選択図】図2
【解決手段】このクラッチ10は、クラッチの駆動側を構成する部材に保持された複数のフリクションプレート13と、クラッチの従動側を構成する部材に保持された複数のクラッチプレート14とを備えている。フリクションプレート13とクラッチプレート14は互い違いに重なるように配設されており、フリクションプレート13とクラッチプレート14とが互いに重なり合った部位に油を供給する給油通路20を備えている。当該給油通路20には給油量を制御する弁が設けられている。この場合、クラッチ10は、フリクションプレート13とクラッチプレート14とが互いに重なり合った部位に、油を供給する給油通路20を備え、この給油通路20に弁21を備えているので、フリクションプレート13とクラッチプレート14とが互いに重なり合った部位に供給される油の量を適当な量に制御することができる。
【選択図】図2
Description
本発明は駆動側と従動側との間で回転トルクを断接するクラッチに関し、特に、クラッチへの給油構造に関する。
自動二輪車等においてクラッチは、例えば、エンジン(駆動側)から後輪(従動側)へ回転トルク(動力)を伝達する動力伝達機構の一部に配設され、回転トルクを接続したり、遮断したりする装置である。自動二輪車等には、駆動側に保持された複数の第1摩擦板と、従動側に保持された複数の第2摩擦板とが、互いに違いに重なるように配設された多板クラッチがよく用いられている。かかる多板クラッチは、当該第1摩擦板と第2摩擦板に互いに押し当てる力を作用させ、第1摩擦板と第2摩擦板の間に所用の摩擦力を作用させることによって接続され、当該押し当てる力を解放することにより、動力伝達が遮断される。かかるクラッチは、第1摩擦板と第2摩擦板が摩擦すると発熱する場合がある。第1摩擦板と第2摩擦板の発熱や磨耗を軽減するため、当該第1摩擦板と第2摩擦板が重なりあった部位に適度な油を供給している。
また、減速時にスロットルバルブを閉じる動作によってリヤホイール側から駆動側(エンジン側)にバックトルクが伝達されて所謂エンジンブレーキが掛かった状態となる。このバックトルクが過大であるときには駆動系に作用する負荷も大きくなり、また、乗り心地もよくない。そこで、例えば、バックトルクを有効に解放し得る機構が提案されている。例えば、バックトルクを低減する機構は、カム式の機構や、ワンウェイクラッチ式の機構が知られている。カム式のバックトルクリミッタ機構は、クラッチの従動側の部材に従動側からバックトルクが伝わったときにカム機構によって、クラッチを遮断する(例えば、特開2005−98454号公報)。また、ワンウェイクラッチ式のバックトルクリミッタ機構は、クラッチの従動側の部材に所謂ワンウェイクラッチを設け、従動側から伝達されるバックトルクを低減する(例えば、特開平8−121497号公報)。
特開2005−98454号公報
特開平8−121497号公報
高速走行時に急激にスロットルバルブを閉じるとバックトルクリミッタが作用する。上述したカム式のバックトルクリミッタの場合、カム機構によって、第1摩擦板と第2摩擦板とを押し当てる力が開放されて、第1摩擦板と第2摩擦板を滑らせることによって、クラッチが切られ、動力伝達が遮断される。
本発明者は、斯かるクラッチにおいて、バックトルクリミッタが作動することにより、クラッチが損傷する事象を発見した。斯かるクラッチの損傷は軽微であるので、車両に重大な不具合や運転走行性能に重大な影響は通常考えられない。しかし、本発明者は、クラッチのさらなる長寿命化やドライバビリティのさらなる向上を図るため、クラッチや駆動装置に掛かる負荷を低減したいと考えた。
本発明者は、斯かるクラッチにおいて、バックトルクリミッタが作動することにより、クラッチが損傷する事象を発見した。斯かるクラッチの損傷は軽微であるので、車両に重大な不具合や運転走行性能に重大な影響は通常考えられない。しかし、本発明者は、クラッチのさらなる長寿命化やドライバビリティのさらなる向上を図るため、クラッチや駆動装置に掛かる負荷を低減したいと考えた。
本発明に係るクラッチは、駆動側を構成する部材に保持された複数の第1摩擦板と、従動側を構成する部材に保持された複数の第2摩擦板とを備えている。第1摩擦板と第2摩擦板は互い違いに重なるように配設されており、第1摩擦板と第2摩擦板とが互いに重なり合った部位に油を供給する給油通路を備えている。当該給油通路には給油量を制御する弁が設けられている。
ある実施形態において、弁は、例えば、弁の開閉を制御する制御装置を備えていてもよい。この場合、制御装置は、従動側からクラッチにトルクが入力された場合に弁を開く構成を備えていてもよい。
また、他の実施形態において、前記従動側を構成する部材は回転し、給油通路は当該従動側を構成する部材を通るように形成されており、弁は当該従動側を構成する部材に配設され、当該従動側を構成する部材の回転に応じた遠心力によって開閉が制御されてもよい。例えば、弁は、従動側を構成する部材に径方向に移動可能に配設された弁部材と、弁部材を径方向内側へ付勢するばねを備えていてもよい。この場合、弁部材が、従動側を構成する部材の回転速度に応じて遠心力を受け、ばねの弾性反力に抗して、径方向外側へ移動することができ、弁部材が径方向内側に移動しているときに給油通路が絞られ、径方向外側に移動することによって給油通路が広げられる構造であってもよい。
また、他の実施形態において、クラッチは、第1摩擦板と第2摩擦板が重なった方向の両端に配設されたプレッシャープレートと、両端のプレッシャープレートの間隔を狭めるようにプレッシャープレートを押圧する押圧機構と、従動側からのトルク入力に基づいて、押圧機構の押圧力に抗して両端のプレッシャープレートの間隔を広げるカム機構とを備え、弁はカム機構の動作に応じて開閉が制御される構造でもよい。
この場合、カム機構は、例えば、互いに重なり合った第1部材と第2部材とを備え、第1部材は一方のプレッシャープレートに係合し、第2部材は他方のプレッシャープレートに係合しており、第1部材と第2部材は従動側からのトルク入力に基づいて間隔が広げられるとともに両端のプレッシャープレートの間隔を広げる機構を備え、給油通路は、当該カム機構の第1部材と第2部材の隙間を含み、弁は当該第1部材と第2部材の重合部位に設けられ、第1部材と第2部材の動作に応じて開閉される。この場合、例えば、第1部材と第2部材の少なくとも何れか一方に、第1部材と第2部材が対向する面に油を流通させる溝が形成されていてもよい。
本発明に係るクラッチは、第1摩擦板と第2摩擦板とが互いに重なり合った部位に、油を供給する給油通路を備え、この給油通路に弁を備えているので、第1摩擦板と第2摩擦板とが互いに重なり合った部位に供給される油の量を適当な量に制御することができる。
本発明者は、クラッチの長寿命化やドライバビリティの向上を図るべく、上述したクラッチが損傷する事象について、その原因を鋭意研究した。その結果、斯かる損傷は、例えば、高速走行中に、スロットルバルブを急激に緩める急減速時などでバックトルクリミッタが作動するときに、高速回転中に第1摩擦板と第2摩擦板とが摩擦することによって起こっていることがわかった。
このような急減速時においては、半クラッチで第1摩擦板と第2摩擦板とが摩擦する場合に比べて、第1摩擦板と第2摩擦板とに掛かる熱負荷が大きい。この際、第1摩擦板と第2摩擦板が摩擦する部分に供給されている油の量が少な過ぎると、摩擦板が焼けて損傷することがある。これに対し、第1摩擦板と第2摩擦板が摩擦する部分に供給されている油の量が多すぎると、当該摩擦板の損傷は防止できるが、油の粘性により、クラッチの応答性が悪くなる。すなわち、発進時など油が冷えている状態においては油の粘性が高いので、第1摩擦板と第2摩擦板の間に供給されている油が多過ぎると、第1摩擦板と第2摩擦板が離れていても油のせん断力によって、第1摩擦板の回転に対して第2摩擦板が連れ回ってしまう場合がある。このため、バックトルクリミッタが作動しても、従動側からのトルクが駆動側に伝達されてしまう。また、通常走行時にも、給油量が多過ぎる状態では、上述した油のせん断力によって、シフトチェンジをする際にクラッチが切れない事象が生じ、そのままの状態でシフトチェンジが行われると、トランスミッションを傷めてしまう場合がある。
本発明者は、クラッチが損傷する事象について上述した知見を得、これを基に本発明を創案した。
このような急減速時においては、半クラッチで第1摩擦板と第2摩擦板とが摩擦する場合に比べて、第1摩擦板と第2摩擦板とに掛かる熱負荷が大きい。この際、第1摩擦板と第2摩擦板が摩擦する部分に供給されている油の量が少な過ぎると、摩擦板が焼けて損傷することがある。これに対し、第1摩擦板と第2摩擦板が摩擦する部分に供給されている油の量が多すぎると、当該摩擦板の損傷は防止できるが、油の粘性により、クラッチの応答性が悪くなる。すなわち、発進時など油が冷えている状態においては油の粘性が高いので、第1摩擦板と第2摩擦板の間に供給されている油が多過ぎると、第1摩擦板と第2摩擦板が離れていても油のせん断力によって、第1摩擦板の回転に対して第2摩擦板が連れ回ってしまう場合がある。このため、バックトルクリミッタが作動しても、従動側からのトルクが駆動側に伝達されてしまう。また、通常走行時にも、給油量が多過ぎる状態では、上述した油のせん断力によって、シフトチェンジをする際にクラッチが切れない事象が生じ、そのままの状態でシフトチェンジが行われると、トランスミッションを傷めてしまう場合がある。
本発明者は、クラッチが損傷する事象について上述した知見を得、これを基に本発明を創案した。
以下、本発明の一実施形態に係るクラッチを図面に基づいて説明する。なお、図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、本発明は以下の実施形態に限定されない。
クラッチ10は、例えば図1に示すように、自動二輪車1000に搭載されている。このクラッチ10は、図2に示すように、クラッチの駆動側を構成する部材に保持された複数の第1摩擦板13と、クラッチの従動側を構成する部材に保持された複数の第2摩擦板14とを備え、第1摩擦板13と第2摩擦板14が互い違いに重なるように配設されている。このクラッチ10は、第1摩擦板13と第2摩擦板14とが互いに重なり合った部位に油を供給する給油通路20を備えており、当該給油通路20に給油量を制御する弁21が設けられている。
以下、このクラッチ10の構造を説明する。このクラッチ10は、図2および図3に示すように、クラッチハウジング11と、クラッチボス12と、フリクションプレート13(第1摩擦板)と、クラッチプレート14(第2摩擦板)と、プレッシャープレート15、16と、押圧機構17と、レリーズ機構18と、バックトルクリミッタ機構19と、給油通路20と、弁21を備えている。このクラッチ10は、駆動源としてのエンジン26と、トランスミッション機構27との間に配設されている。この実施形態では、具体的には、エンジン26のクランク軸28から動力(回転トルク)が入力され、トランスミッション機構27のメイン軸29に動力を出力するように配設されている。
クラッチハウジング11は、図3および図4に示すように、クラッチ10の各構成要素を収容する外装部材である。この実施形態では、クラッチハウジング11は、有底筒状の部材であり、底部31の中央にトランスミッション機構27のメイン軸29を挿通させる開口32が形成されている。クラッチハウジング11の側面33には、図4に示すように、フリクションプレート13を保持する溝34が形成されている。当該溝34はクラッチハウジング11の側面33に軸方向に沿って、かつ、周方向に複数形成されている。また、クラッチハウジング11の底部31の外側には、クランク軸28に配設された出力ギヤ35に噛合する減速ギヤ36(一次減速ギヤ)が配設されている。この実施形態では、メイン軸29にニードルベアリング41を介してハブ部材42が回転自在に装着されている。当該ハブ部材42は外径方向に突出したフランジ部43を備えている。当該フランジ部43は締結部材45(この実施形態では、リベット)によってクラッチハウジング11の底部31に締結されている。また、フランジ部43の外側には、衝撃を吸収するアブソーバスプリング44が配設されており、当該アブソーバスプリング44を介在させて減速ギヤ36が取り付けられている。
クラッチボス12は、図4に示すように、クラッチハウジング11の内側に収容された略円筒状の部材である。クラッチボス12の側面51は、クラッチハウジング11の側面33に対向しており、クラッチプレート14を保持する溝52が形成されている。当該溝52はクラッチボス12の側面51に軸方向に沿って、かつ、周方向に複数形成されている。このクラッチボス12は、後述するバックトルクリミッタ機構19および押圧機構17の部材を介在させてメイン軸29に連結されている。クラッチボス12の内側には、内側に延びた連結部53が設けられている。
フリクションプレート13(第1摩擦板)は、図2に示すように、クラッチの駆動側を構成する部材に保持されている。この実施形態では、フリクションプレート13(第1摩擦板)は、図2に示すように、クラッチハウジング11に保持されている。当該クラッチハウジング11は、駆動源としてのエンジン26のクランク軸28に連結されており、クラッチの駆動側を構成する部材の一つである。
詳しくは、この実施形態では、フリクションプレート13は、円環形状のプレートである。このフリクションプレート13の内側には、クラッチボス12が配設されている。フリクションプレート13の外側には、外径方向に突出した係合片61が周方向に複数形成されており、当該係合片61をクラッチハウジング11の側面33に形成された溝34に嵌めた状態でクラッチハウジング11に保持されている。フリクションプレート13は、クラッチハウジング11の内側において軸方向に複数枚配設されている。
詳しくは、この実施形態では、フリクションプレート13は、円環形状のプレートである。このフリクションプレート13の内側には、クラッチボス12が配設されている。フリクションプレート13の外側には、外径方向に突出した係合片61が周方向に複数形成されており、当該係合片61をクラッチハウジング11の側面33に形成された溝34に嵌めた状態でクラッチハウジング11に保持されている。フリクションプレート13は、クラッチハウジング11の内側において軸方向に複数枚配設されている。
クラッチプレート14(第2摩擦板)は、クラッチの従動側を構成する部材に保持されている。この実施形態では、クラッチプレート14(第2摩擦板)は、クラッチボス12に保持されている。クラッチボス12は、トランスミッション機構27のメイン軸29にバックトルクリミッタ機構19を介して連結されており、クラッチの従動側を構成する部材の一つである。
詳しくは、この実施形態では、クラッチプレート14は円環形状のプレートである。クラッチプレート14の内側には、内径方向に突出した係合片62が周方向に複数形成されており、当該係合片62をクラッチボス12の外側面に形成された溝52に嵌めた状態でクラッチボス12に保持されている。このクラッチプレート14は、クラッチボス12に複数枚配設されている。フリクションプレート13とクラッチプレート14は、クラッチハウジング11の側面33とクラッチボス12の側面51の間で、互い違いに重ねられている。フリクションプレート13(第1摩擦板)とクラッチプレート14(第2摩擦板)が重なった方向の両端には、プレッシャープレート15、16が配設されている。
詳しくは、この実施形態では、クラッチプレート14は円環形状のプレートである。クラッチプレート14の内側には、内径方向に突出した係合片62が周方向に複数形成されており、当該係合片62をクラッチボス12の外側面に形成された溝52に嵌めた状態でクラッチボス12に保持されている。このクラッチプレート14は、クラッチボス12に複数枚配設されている。フリクションプレート13とクラッチプレート14は、クラッチハウジング11の側面33とクラッチボス12の側面51の間で、互い違いに重ねられている。フリクションプレート13(第1摩擦板)とクラッチプレート14(第2摩擦板)が重なった方向の両端には、プレッシャープレート15、16が配設されている。
プレッシャープレート15、16は、上述したフリクションプレート13とクラッチプレート14が重なり合った部位を押圧する部材であり、この実施形態では、クラッチハウジング11の底部側に配設された第1プレッシャープレート15と、クラッチハウジング11の開放側に配設された第2プレッシャープレート16で構成されている。
第1プレッシャープレート15は、図4に示すように、中央に穴71が形成された略円板状の部材で構成されている。第1プレッシャープレート15は、上述したフリクションプレート13およびクラッチプレート14が重なる部位を押圧する押圧部72を備えている。当該押圧部72の内径側には、クラッチボス12の軸方向端部が収まる溝73が周方向に連続して形成されている。後述するが第1プレッシャープレート15の内側には、バックトルクリミッタ機構19を構成する第1プレート部材101が取り付けられている。
第2プレッシャープレート16は、略円板状の部材であり、クラッチハウジング11の開放側に配設されている。この実施形態では、第2プレッシャープレート16は、上述したフリクションプレート13およびクラッチプレート14が重なる部位を押圧する押圧部76を備えている。当該押圧部76の内径側には、クラッチボス12の軸方向端部が収まる溝77が形成されている。この溝77の内側面には、クラッチボス12の外側面に形成された溝52が嵌る突起78が周方向に複数形成されている。当該溝77の内側には、クラッチハウジング11の底側へ窪んだ窪み79が周方向に複数個形成されている。当該窪み79には挿通穴80が形成されている。また、第2プレッシャープレート16の中央には、後述するレリーズ機構18を取り付ける取付穴81が形成されている。
第1プレッシャープレート15は、図4に示すように、中央に穴71が形成された略円板状の部材で構成されている。第1プレッシャープレート15は、上述したフリクションプレート13およびクラッチプレート14が重なる部位を押圧する押圧部72を備えている。当該押圧部72の内径側には、クラッチボス12の軸方向端部が収まる溝73が周方向に連続して形成されている。後述するが第1プレッシャープレート15の内側には、バックトルクリミッタ機構19を構成する第1プレート部材101が取り付けられている。
第2プレッシャープレート16は、略円板状の部材であり、クラッチハウジング11の開放側に配設されている。この実施形態では、第2プレッシャープレート16は、上述したフリクションプレート13およびクラッチプレート14が重なる部位を押圧する押圧部76を備えている。当該押圧部76の内径側には、クラッチボス12の軸方向端部が収まる溝77が形成されている。この溝77の内側面には、クラッチボス12の外側面に形成された溝52が嵌る突起78が周方向に複数形成されている。当該溝77の内側には、クラッチハウジング11の底側へ窪んだ窪み79が周方向に複数個形成されている。当該窪み79には挿通穴80が形成されている。また、第2プレッシャープレート16の中央には、後述するレリーズ機構18を取り付ける取付穴81が形成されている。
押圧機構17は、この実施形態では、軸部材85とコイルばね86で構成されている。軸部材85は、図2に示すように、上述した第2プレッシャープレート16の窪み79に形成された挿通穴80に挿通されている。軸部材85は、バックトルクリミッタ機構19を介在させて第1プレッシャープレート15に取り付けられている。軸部材85の先端には座金87が取り付けられている。コイルばね86は、第2プレッシャープレート16の窪み79において軸部材85に装着されており、窪み79の底部と座金87との間に圧縮された状態で配設されている。かかる押圧機構17は、周方向に複数設けられている。この押圧機構17は、このコイルばね86の弾性反力によって、第1プレッシャープレート15と第2プレッシャープレート16の間隔を狭めて、フリクションプレート13とクラッチプレート14を押圧する。フリクションプレート13とクラッチプレート14が押圧される力は、フリクションプレート13とクラッチプレート14に動力伝達に要する所要の摩擦力を作用させるのに十分な大きさを有する。クラッチ10の動力伝達を遮断する際は、レリーズ機構18の操作によって、押圧機構17の押圧力が開放される。
レリーズ機構18は、図3に示すように、クラッチの接続と遮断を操作する機構であり、この実施形態では、ラックピニオン式のレリーズ機構18が用いられており、ラック部材91とピニオン部材92を備えている。ラック部材91は、基部91aと軸部91bを備えている。基部91aは第2プレッシャープレート16の取付穴81にベアリングを介して取り付けられている。軸部91bは、基部91aから第2プレッシャープレート16の外側に延びている。当該軸部91bにはラックが形成されている。ピニオン部材92は、操作シャフト93に取り付けられている。操作シャフト93は、クランクケース94に回動自在に軸支されている。操作シャフト93の一端には操作レバー95が取り付けられている。ピニオン部材92は、操作シャフト93に取り付けられた操作レバー95を操作することによって回転する。ピニオン部材92が所定の方向に回転すると、ラック部材91とのラックピニオン機構によって、第2プレッシャープレート16が第1プレッシャープレート15から離れる方向に引き上げられる。第2プレッシャープレート16を第1プレッシャープレート15から離れる方向に引き上げることによって、フリクションプレート13とクラッチプレート14が、第1プレッシャープレート15と第2プレッシャープレート16によって挟まれた状態から開放される。
次に、バックトルクリミッタ機構19を説明する。この実施形態では、バックトルクリミッタ機構19は、所謂カム式の機構を備えており、重なり合う第1プレート部材101(第1部材)と第2プレート部材102(第2部材)で構成されている。
第1プレート部材101は、図2および図4に示すように、クラッチハウジング11の底部側に配設されている。第1プレート部材101は、図2に示すように、メイン軸29に装着される部材であり、ボス部111と、半径方向に延在したフランジ部112とを備えている。この実施形態では、メイン軸29には、外周面にスプライン29aが形成されている。ボス部111は、内周面にスプライン113が形成されており、メイン軸29に形成されたスプライン29aに装着されている。フランジ部112は、図4に示すように、締結具114(この実施形態では、リベット)によって上述した第1プレッシャープレート15に締結されている。また、フランジ部112には、押圧機構17の軸部材85の端部が連結されている。
第2プレート部材102は、第1プレート部材101に対してクラッチハウジング11の開口側に重ねられている。この第2プレート部材102は、図4に示すように、クラッチボス12に締結具116(この実施形態では、リベット)によって、クラッチボス12の内側面に形成された連結部53に固定されている。なお、図5は、この第2プレート部材102が、第1プレート部材101に対向する面を示している。当該締結具116が取り付けられる取付孔116aは、図5に示すように、周方向の複数個所に設けられている。この第2プレート部材102には、図2に示すように、上述した押圧機構17の軸部材85が挿通する挿通穴117が形成されている。この挿通穴117は、周方向に長い横穴で形成されている(図5参照)。これにより、軸部材85が挿通されている位置に対して、第2プレート部材102が相対回転することが許容されている。
第1プレート部材101は、図2および図4に示すように、クラッチハウジング11の底部側に配設されている。第1プレート部材101は、図2に示すように、メイン軸29に装着される部材であり、ボス部111と、半径方向に延在したフランジ部112とを備えている。この実施形態では、メイン軸29には、外周面にスプライン29aが形成されている。ボス部111は、内周面にスプライン113が形成されており、メイン軸29に形成されたスプライン29aに装着されている。フランジ部112は、図4に示すように、締結具114(この実施形態では、リベット)によって上述した第1プレッシャープレート15に締結されている。また、フランジ部112には、押圧機構17の軸部材85の端部が連結されている。
第2プレート部材102は、第1プレート部材101に対してクラッチハウジング11の開口側に重ねられている。この第2プレート部材102は、図4に示すように、クラッチボス12に締結具116(この実施形態では、リベット)によって、クラッチボス12の内側面に形成された連結部53に固定されている。なお、図5は、この第2プレート部材102が、第1プレート部材101に対向する面を示している。当該締結具116が取り付けられる取付孔116aは、図5に示すように、周方向の複数個所に設けられている。この第2プレート部材102には、図2に示すように、上述した押圧機構17の軸部材85が挿通する挿通穴117が形成されている。この挿通穴117は、周方向に長い横穴で形成されている(図5参照)。これにより、軸部材85が挿通されている位置に対して、第2プレート部材102が相対回転することが許容されている。
この実施形態では、図6(a)に示すように、第1プレート部材101と第2プレート部材102の間にカム機構120を備えている。このカム機構120は、従動側からのトルク入力に基づいて、押圧機構17の押圧力に抗して両端のプレッシャープレート15、16の間隔を広げる機構である。この実施形態では、第2プレート部材102には、第1プレート部材101に対向する面に楔形状の突起121が形成されており、第1プレート部材101には、当該突起121が嵌り得る窪み122が形成されている。第1プレート部材101と第2プレート部材102は、第1プレート部材101に形成された窪み122に、第2プレート部材102に設けられた突起121を嵌め合わせた状態で重ね合わされて配設されている。
この実施形態では、第1プレッシャープレート15と第2プレッシャープレート16は、押圧機構17の作用によって、間隔が狭くなるように押圧されている。第1プレート部材101は、図2に示すように、スプライン29a、113によってメイン軸29に連結されているので、メイン軸29からトルクが入力されると回転する。この際、第1プレート部材101は、図6(a)中の矢印aで示す方向に、第2プレート部材102に対して相対的に回動する。この実施形態では、カム機構120を構成する突起121と窪み122には、当該回転方向aにおいて対向する斜面121a、122aが形成されている。これにより、メイン軸29からトルクが入力されると、図6(b)に示すように、突起121と窪み122の斜面121a、122aが接し、当該斜面121a、122aが滑り、第2プレート部材102と第1プレート部材101が軸方向に離れる。
図2に示すように、第1プレート部材101は第1プレッシャープレート15に連結されており、第2プレート部材102はクラッチボス12に連結されている。第2プレート部材102と第1プレート部材101が軸方向に離れると、図7に示すように、第1プレッシャープレート15とクラッチボス12とが相対的に離れるように軸方向に動く。クラッチボス12が動く方向には第2プレッシャープレート16が隣接している。クラッチボス12が当該方向に所定の距離以上動くと、クラッチボス12が第2プレッシャープレート16を押し上げ、第1プレッシャープレート15と第2プレッシャープレート16の隙間133が広がる。このバックトルクリミッタ機構19は、第1プレッシャープレート15と第2プレッシャープレート16によって挟まれた状態から、フリクションプレート13とクラッチプレート14を開放し、半クラッチの状態を生じさせる。
このクラッチ10は、フリクションプレート13(第1摩擦板)とクラッチプレート14(第2摩擦板)とが互いに重なり合った部位130に、油を供給する給油通路20を備えている。さらに、この給油通路20に弁21を備えている。
この実施形態では、給油通路20は、図2に示すように、メイン軸29の中空部29bと、中空部29bに形成した開口131、第1プレート部材101のボス部111に形成された通路132、給油通路20は、第1プレート部材101と第2プレート部材102の隙間133、さらに、クラッチボス12とプレッシャープレート15、16の隙間134を通して、フリクションプレート13(第1摩擦板)とクラッチプレート14(第2摩擦板)とが互いに重なり合った部位130に油を供給している。
また、この実施形態では、弁21は、上述したカム機構120の第1プレート部材101(第1部材)と第2プレート部材102(第2部材)が重なり合った部位に形成されている。当該弁21は、上述したカム機構120の第1プレート部材101と第2プレート部材102の動作に応じて開閉が制御される。すなわち、この実施形態では、給油通路20には、第1プレート部材101と第2プレート部材102の隙間133が含まれている。第1プレート部材101と第2プレート部材102の隙間133には、第2プレート部材102に径方向に通じた溝135が形成されている。詳しくは、この実施形態では、図4に示すように、第2プレート部材102は、円形のプレートであり、中央部に第1プレート部材101のボス部111が挿通する挿通穴126が形成されている。当該挿通穴126の周縁部には周方向に連続して立ち上がった立ち上がり部127を有している。当該立ち上がり部127は上述した給油通路20の一部をなす溝135が形成されている。当該溝135は、第1プレート部材101のボス部111に形成された通路132に周方向の位置が合うように形成されている。
図2に示すように、上述したバックトルクリミッタ機構19が作動しておらず、第1プレート部材101と第2プレート部材102の隙間133が狭い場合には、立ち上がり部127が第1プレート部材101に近接する。この際、第1プレート部材101と第2プレート部材102の隙間133が狭くなるので、油は主として溝135を通って流通する。これに対し、図7に示すように、バックトルクリミッタ機構19が作動すると、第1プレート部材101と第2プレート部材102の隙間133が広がる。この場合には、油は溝135だけでなく当該隙間133全体を通って流通する。溝135に比べて、バックトルクリミッタ機構19が作動した際の隙間133は十分に広い。このため、バックトルクリミッタ機構19が作動すると、フリクションプレート13とクラッチプレート14が互いに重なり合った部位に供給される油の量は多くなる。
図2に示すように、上述したバックトルクリミッタ機構19が作動しておらず、第1プレート部材101と第2プレート部材102の隙間133が狭い場合には、立ち上がり部127が第1プレート部材101に近接する。この際、第1プレート部材101と第2プレート部材102の隙間133が狭くなるので、油は主として溝135を通って流通する。これに対し、図7に示すように、バックトルクリミッタ機構19が作動すると、第1プレート部材101と第2プレート部材102の隙間133が広がる。この場合には、油は溝135だけでなく当該隙間133全体を通って流通する。溝135に比べて、バックトルクリミッタ機構19が作動した際の隙間133は十分に広い。このため、バックトルクリミッタ機構19が作動すると、フリクションプレート13とクラッチプレート14が互いに重なり合った部位に供給される油の量は多くなる。
この給油通路20によれば、バックトルクリミッタ機構19が機能していない状態では、フリクションプレート13とクラッチプレート14が互いに重なり合った部位に供給される油の量を少なくすることができ、バックトルクリミッタ機構19が機能すると、フリクションプレート13とクラッチプレート14が互いに重なり合った部位に供給される油の量を多くすることができる。発進時等では、バックトルクリミッタ機構19が機能しないので、給油通路20は絞られており、フリクションプレート13とクラッチプレート14に供給される油の量が多くなりすぎないように、適度な油を供給することができる。そして、急減速時などは、後輪からトルクが逆入力されるが、この場合、バックトルクリミッタ機構19が機能するので、給油通路20が広がり、フリクションプレート13とクラッチプレート14に供給される油の量が多くなる。これにより、フリクションプレート13とクラッチプレート14の摩擦を軽減し、フリクションプレート13とクラッチプレート14の損傷を抑制することができる。
このように、この実施形態では、クラッチ10は、フリクションプレート13とクラッチプレート14とが互いに重なり合った部位130に、油を供給する給油通路20を備え、この給油通路20に弁21を備えているので、フリクションプレート13とクラッチプレート14とが互いに重なり合った部位130に供給される油の量を適当な量に制御することができる。
≪請求項6の作用≫
また、この実施形態では、クラッチ10は、フリクションプレート13とクラッチプレート14が重なった方向の両端にプレッシャープレート15、16が配設されており、両端のプレッシャープレート15、16の間隔を狭めるようにプレッシャープレート15、16を押圧する押圧機構17を備えている。そして、メイン軸29(従動側)からのトルク入力に基づいて、押圧機構17の押圧力に抗して両端のプレッシャープレート15、16の間隔を広げるバックトルクリミッタ機構19(カム機構120)を備えている。弁21はバックトルクリミッタ機構19(カム機構120)の動作に応じて開閉が制御される。このため、バックトルクリミッタ機構19の動作に応じて油を制御することができ、急減速時など、バックトルクリミッタ機構19が機能するときに、自動的に給油通路20が広がり、フリクションプレート13とクラッチプレート14が重なり合う位置に供給される油の量を多くすることができる。これにより、フリクションプレート13とクラッチプレート14の摩擦を軽減し、フリクションプレート13とクラッチプレート14の損傷を抑制することができる。
また、この実施形態では、クラッチ10は、フリクションプレート13とクラッチプレート14が重なった方向の両端にプレッシャープレート15、16が配設されており、両端のプレッシャープレート15、16の間隔を狭めるようにプレッシャープレート15、16を押圧する押圧機構17を備えている。そして、メイン軸29(従動側)からのトルク入力に基づいて、押圧機構17の押圧力に抗して両端のプレッシャープレート15、16の間隔を広げるバックトルクリミッタ機構19(カム機構120)を備えている。弁21はバックトルクリミッタ機構19(カム機構120)の動作に応じて開閉が制御される。このため、バックトルクリミッタ機構19の動作に応じて油を制御することができ、急減速時など、バックトルクリミッタ機構19が機能するときに、自動的に給油通路20が広がり、フリクションプレート13とクラッチプレート14が重なり合う位置に供給される油の量を多くすることができる。これにより、フリクションプレート13とクラッチプレート14の摩擦を軽減し、フリクションプレート13とクラッチプレート14の損傷を抑制することができる。
この実施形態では、弁21は、上述したカム機構120の第1プレート部材101(第1部材)と第2プレート部材102(第2部材)が重なり合った部位に形成されており、上述したカム機構120の第1プレート部材101と第2プレート部材102の動作に応じて開閉が制御される。かかる構造によれば、給油量を増減させるタイミングについても、機械的な動作に連動させることができ、複雑な制御を必要とせず、簡単な構造によって、給油量の制御を実現することができる。
また、この実施形態では、第1プレート部材101(第1部材)と第2プレート部材102(第2部材)の少なくとも何れか一方に、第1プレート部材101と第2プレート部材102が対向する面に油を流通させる溝135が形成されている。当該溝135により、弁21が絞られている状態での給油量を調整している。このように、この実施形態では、複雑な制御を必要とせず、簡単な構造によって、給油量の制御を実現することができる。
以上、本発明の一実施形態に係るクラッチを例示したが、本発明に係るクラッチは上述した実施形態に限定されない。以下に本発明の他の実施形態を説明する。
例えば、給油通路20は、従動側からのトルク入力に基づいて油の給油量を制御できるとよい。上述した実施形態では、従動側からのトルク入力に応じて動作するカム式のバックトルクリミッタ機構19のカム機構120の動作に応じて、給油通路20が絞られたり、広げられたりする構造を例示した。これに代えて、給油通路20は、図8に示すように、フリクションプレート13(第1摩擦板)とクラッチプレート14(第2摩擦板)が互いに重なり合った部位に、油を供給する給油通路20と、給油通路20に設けた弁21aと、弁21aの開閉を制御する制御装置22とを備えた構造としてもよい。
例えば、図8に示す実施形態では、給油通路20は、メイン軸29の中空部29bへ油を供給する管路23を備えている。そして、油は、当該管路23と、メイン軸29の中空部29bと、中空部29bに形成した開口131と、第1プレート部材101に形成された通路132と、第1プレート部材101と第2プレート部材102の隙間133、さらに、クラッチボス12とプレッシャープレート15、16の隙間134を通って、フリクションプレート13(第1摩擦板)とクラッチプレート14(第2摩擦板)とが互いに重なり合った部位130に供給される。管路23には制御装置22で開閉が制御される電磁弁21aが設けられている。制御装置22は、例えば、種々の車両情報をセンシングして、適当なタイミングで当該電磁弁21aが開閉するように制御する。この場合、車両状態に応じて適当なタイミングで給油量を増減させることができる。
なお、この場合、給油通路20は、上記に限定されない。例えば、図9に示すように、レリーズ機構18のラック部材91を通して、第2プレッシャープレート16の内側を通ってフリクションプレート13とクラッチプレート14とが互いに重なり合った部位130へ油を供給する管路24を備え、当該管路24に電磁弁21aを設け、制御装置22によって当該電磁弁21aの開閉を操作して給油量を制御してもよい。
なお、この場合、給油通路20は、上記に限定されない。例えば、図9に示すように、レリーズ機構18のラック部材91を通して、第2プレッシャープレート16の内側を通ってフリクションプレート13とクラッチプレート14とが互いに重なり合った部位130へ油を供給する管路24を備え、当該管路24に電磁弁21aを設け、制御装置22によって当該電磁弁21aの開閉を操作して給油量を制御してもよい。
かかる実施形態によれば、制御装置22の制御によって、適当なタイミングで、適当な量、給油量を増減させることができるので、発進時等では、フリクションプレート13とクラッチプレート14に供給される油の量が多くなり過ぎないように、適度な油を供給することができる。また、急減速時などは、後輪からトルクが逆入力されるが、このような場合に、フリクションプレート13とクラッチプレート14に供給される油の量を多くすることができる。これにより、フリクションプレート13とクラッチプレート14の摩擦を軽減し、フリクションプレート13とクラッチプレート14の損傷を抑制することができる。また、バックトルクリミッタ機構19の動作に関わらず、車両状態をセンシングして、適当なタイミングで給油量を増減させることができる。例えば、制御装置22の制御によって、従動側からクラッチ10にトルクが入力された場合に弁21aを開くように構成することができる。
さらに、他の実施形態を説明する。図10に示すように、給油通路20は、フリクションプレート13とクラッチプレート14とが互いに重なり合った部位に、油を供給する給油通路20を備えている。当該給油通路20は従動側の部材(例えば、メイン軸29および第1プレート部材101)を通るように形成されており、当該従動側の部材に遠心力によって給油通路20の開閉を制御する開閉する弁21bを設けてもよい。
図10に示す例では、弁21bは、従動側を構成する部材101に径方向に移動可能に配設された弁部材201と、弁部材201を径方向内側へ付勢するばね202で構成されている。詳しくは、図10に示す例では、メイン軸29および第1プレート部材101のボス部111に形成された給油通路20に弁部材201が着座する着座部203を設けている。弁部材201はボール形状の部材であり、当該着座部203の外径側に配設されている。ばね202は、弁部材201を内径側に付勢するように、弁部材201と第2プレート部材102の間に圧縮させた状態で配設されている。
この実施形態では、弁部材201は、所要の質量を有している。そして、従動側の部材(例えば、メイン軸29)が回転すると、図11に示すように、従動側の部材の回転速度に応じて遠心力を受け、ばね202の弾性反力に抗して、径方向外側へ移動する構造を有している。この場合、従動側の部材の回転速度が遅いときは、図10に示すように、弁部材201は、ばね202の弾性反力によって内径側に移動するので、給油通路20が絞られ、給油量が減少する。これに対し、従動側の部材の回転速度が所定以上に速くなると、図11に示すように、弁部材201は遠心力を受けて、ばね202の弾性反力に抗して外径側に移動し、着座部203から離れ、弁21bが開き、給油量が多くなる。従って、発進時等、従動側の部材の回転速度が遅いときには、フリクションプレート13とクラッチプレート14に供給される油の量が多くなりすぎないように、適度な油を供給することができる。また、急減速時などは、後輪からトルクが逆入力されるが、このような場合には、従動側の部材の回転速度が速く、フリクションプレート13とクラッチプレート14に供給される油の量を多くすることができる。これにより、フリクションプレート13とクラッチプレート14の摩擦を軽減し、フリクションプレート13とクラッチプレート14の損傷を抑制することができる。
以上、給油通路の変形例を例示したが、給油通路は、上述した種々の実施形態に限定されない。また、第1摩擦板と第2摩擦板とが互いに重なり合った部位に、油を供給する給油通路を備え、当該給油通路が従動側からのトルク入力に基づいて油の給油量を制御できる構造を備えていれば良い。このため、クラッチの構造や、押圧機構の構造や、レリーズ機構の構造や、バックトルクリミッタ機構の構造などにおいて、種々の変更が可能である。
例えば、押圧機構では、コイルばねを用いた形態を例示したが、ダイヤフラム型ばね(皿ばね)を用いた形態でもよい。また、レリーズ機構は、いわゆるアウタープル式、すなわち、プレッシャープレートの外側からプレッシャープレートを引き上げる動作をさせる機構を備えた形態を例示したが、いわゆるインナープッシュ式、プレッシャープレートの外側からプレッシャープレートを押し上げる動作をさせる機構を備えた形態でもよい。本発明の上述した種々の実施形態に限らず、種々の変形が可能である。
例えば、押圧機構では、コイルばねを用いた形態を例示したが、ダイヤフラム型ばね(皿ばね)を用いた形態でもよい。また、レリーズ機構は、いわゆるアウタープル式、すなわち、プレッシャープレートの外側からプレッシャープレートを引き上げる動作をさせる機構を備えた形態を例示したが、いわゆるインナープッシュ式、プレッシャープレートの外側からプレッシャープレートを押し上げる動作をさせる機構を備えた形態でもよい。本発明の上述した種々の実施形態に限らず、種々の変形が可能である。
本発明に係るクラッチは、自動二輪車に採用したものを例示したが、自動二輪車に限らず、種々の車両のクラッチに適用することができ、例えば、スクータ型車両、小型車両、スノーモービルなどに広く適用できる。
10 クラッチ
11 クラッチハウジング(クラッチの駆動側を構成する部材)
12 クラッチボス(クラッチの従動側を構成する部材)
13 フリクションプレート(第1摩擦板)
14 クラッチプレート(第2摩擦板)
15 第1プレッシャープレート
16 第2プレッシャープレート
17 押圧機構
18 レリーズ機構
19 バックトルクリミッタ機構
20 給油通路
21 弁
21a 電磁弁
21b 弁
22 制御装置
23 管路
24 管路
26 エンジン
27 トランスミッション機構
28 クランク軸(駆動側の部材)
29 メイン軸(従動側の部材)
35 出力ギヤ
36 減速ギヤ
101 第1プレート部材(第1部材)
102 第2プレート部材(第2部材)
120 カム機構
133 第1プレート部材(第1部材)と第2プレート部材(第2部材)の隙間
135 溝
201 弁部材
202 ばね
1000 自動二輪車
11 クラッチハウジング(クラッチの駆動側を構成する部材)
12 クラッチボス(クラッチの従動側を構成する部材)
13 フリクションプレート(第1摩擦板)
14 クラッチプレート(第2摩擦板)
15 第1プレッシャープレート
16 第2プレッシャープレート
17 押圧機構
18 レリーズ機構
19 バックトルクリミッタ機構
20 給油通路
21 弁
21a 電磁弁
21b 弁
22 制御装置
23 管路
24 管路
26 エンジン
27 トランスミッション機構
28 クランク軸(駆動側の部材)
29 メイン軸(従動側の部材)
35 出力ギヤ
36 減速ギヤ
101 第1プレート部材(第1部材)
102 第2プレート部材(第2部材)
120 カム機構
133 第1プレート部材(第1部材)と第2プレート部材(第2部材)の隙間
135 溝
201 弁部材
202 ばね
1000 自動二輪車
Claims (9)
- 駆動側と従動側との間で回転トルクを断接するクラッチであって、
クラッチの駆動側を構成する部材に保持された複数の第1摩擦板と、
クラッチの従動側を構成する部材に保持された複数の第2摩擦板とを備え、
前記第1摩擦板と第2摩擦板は互い違いに重なるように配設されており、
前記第1摩擦板と第2摩擦板とが互いに重なり合った部位に油を供給する給油通路を備えており、当該給油通路に給油量を制御する弁が設けられているクラッチ。 - 前記弁の開閉を制御する制御装置を備えた、請求項1に記載のクラッチ。
- 前記制御装置は、前記従動側からクラッチにトルクが入力された場合に前記弁を開く、請求項2に記載のクラッチ。
- 前記従動側を構成する部材は回転し、前記給油通路は当該従動側を構成する部材を通るように形成されており、前記弁は当該従動側を構成する部材に配設され、従動側を構成する部材の回転に応じた遠心力によって開閉が制御される、請求項1に記載のクラッチ。
- 前記弁は、前記従動側を構成する部材に径方向に移動可能に配設された弁部材と、前記弁部材を径方向内側へ付勢するばねを備え、
前記弁部材は、前記従動側を構成する部材の回転速度に応じて遠心力を受け、前記ばねの弾性反力に抗して、径方向外側へ移動することができ、前記弁部材が径方向内側に移動しているときに給油通路が絞られ、径方向外側に移動することによって給油通路が広げられる、請求項4に記載のクラッチ。 - 前記クラッチは、
前記第1摩擦板と第2摩擦板が重なった方向の両端に配設されたプレッシャープレートと、
前記両端のプレッシャープレートの間隔を狭めるように前記プレッシャープレートを押圧する押圧機構と、
前記従動側からのトルク入力に基づいて、前記押圧機構の押圧力に抗して前記両端のプレッシャープレートの間隔を広げるカム機構とを備え、
前記弁は前記カム機構の動作に応じて開閉が制御される、請求項1に記載のクラッチ。 - 前記カム機構は、互いに重なり合った第1部材と第2部材とを備え、
前記第1部材は一方のプレッシャープレートに係合し、前記第2部材は他方のプレッシャープレートに係合しており、
前記第1部材と第2部材は従動側からのトルク入力に基づいて間隔が広げられるとともに前記両端のプレッシャープレートの間隔を広げる機構を備え、
前記給油通路は、当該カム機構の第1部材と第2部材の隙間を含み、
前記弁は当該第1部材と第2部材の重合部位に設けられ、前記第1部材と第2部材の動作に応じて開閉される、請求項6に記載のクラッチ。 - 前記第1部材と第2部材の少なくとも何れか一方に、前記第1部材と第2部材が対向する面に油を流通させる溝が形成された、請求項7に記載のクラッチ。
- 請求項1から8の何れかに記載のクラッチを備えた車両。
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- 2007-06-07 JP JP2007151654A patent/JP2008303975A/ja not_active Withdrawn
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