以下、本発明の一実施形態に係るカラーフィルタアレイ製造方法について説明する。本方法によれば、LCD等で使用できるカラーフィルタアレイを効率的に製造できる。本件技術分野において習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)であれば、以下の説明の趣旨に沿ってまた以下の説明で示す条件に従い本発明を実施することができよう。また、本願では方向表現に「より上の」「より下の」「下向きに」「手前の」「奥の」等の用語を使用しているが、これは相対的な位置関係をわかりやすく示すためであり、絶対的な方向、基準となる座標系等を定義する趣旨ではない。更に、いわゆる当業者であれば本願記載の実施形態を適宜変形することができ、また本発明の基本的な仕組みを利用し他の形態を想到することができよう。従って、本発明の技術的範囲は本願記載の実施形態に限定されるわけではなく、本発明の思想に準拠し本発明の新規な特徴を備えるものは例外なく本発明の技術的範囲に含まれる。
図1(A)及び図1(B)に、本発明の一実施形態に係る方法のあらましを製品たるカラーフィルタアレイ100の仕掛段階及び仕上がり段階切断端面により示す。本方法では、後述の通り基礎構造たるBMガラス110上に複数個の窪み即ちウェル130−1〜130−3を形成し、次いで図1(A)に示すようにR,G,B各色のカラーフィルタインク滴255−1〜255−3を対応するウェル130−1〜130−3内に印刷例えば吐出によって導入し、そして図1(B)に示すようにインク滴255−1〜255−3を乾燥例えば硬化させることにより、R,G,B各色のカラーフィルタ150−1〜150−3をBMガラス110上に形成する。また、本方法ではウェル形成後インク滴導入前に疎水層形成を実施する。これは、各種表面処理、マスキング技術等を用いBMガラス110上に疎水物を堆積させることで、隣接ウェル間インク混合を妨げる疎水層140−1〜140−4をウェル間隔壁上に形成する処理である。これについては後により詳細に説明する。
BMガラス110は、図2(A)及び図2(B)に示す通り本件技術分野で周知の手法の応用で製造できる。本工程では、図2(A)に示すように、ガラス等の透明素材からなる基板111上にポリイミド系樹脂等により不透明なBM層220を形成し、次いで、フォトリソグラフィによるパターニング及びエッチングで図2(B)に示すようにBM層220を部分除去し細長い壁120を格子状に形成する。これによって、壁120により囲まれた開口部分即ちウェル130を複数個有するBMガラス110が得られる。図3に、BMガラス110上のウェル130のうち、代表としてウェル130−1及びその周辺部分を示す。本実施形態におけるウェル130は基板表面112の一部を壁120の一部で囲んだ略直方体の窪みであり、例えばウェル130−1は、基板表面112の一部であるウェル底112−1と、壁120のうちウェル底112−1を囲む部分であるウェル壁120−1、120−2、120−5及び120−6とで形成されている。また、ウェル壁120は、ウェル130内に面するウェル壁側面122と、壁120のほぼ頂に位置するウェル壁頂面125とを有している。例えば図中の122−2はウェル130−1の壁側面122の一つ、125−2はウェル130−1の壁頂面125の一つであり、それらはウェル底112−1を囲んでいる。
壁頂面125は疎水層形成(後述)対象部分であり概ね壁120の頂に位置している。本願では「壁頂面」と称しているが、平坦面になっていない場合もあるし、またウェル内に向け若干下った場所までを含める場合もある。例えば図3では、壁120の表面のうち壁側面122に陰影線を付してあり、壁頂面125には付していない。即ち、図示例では、壁120の頂に位置する平坦部と、壁120沿いに若干(例えば斜面長の1/3程度)下ったところまで延びる上部縁取り部分とを併せて、壁頂面125として扱っており、壁頂面125と基板表面112の間を占める面を壁側面122として扱っている。
また、壁頂面125上への疎水層形成やそのためのマスキング(後述)は、図3に示す通りBMガラス110が立体構造であるので立体的な処理になる。即ち、以下の記述では説明を簡略化するため壁120−1、120−2等の端面を含む切断端面を示しそれらの壁上への処理等について説明しているが、BMガラス110は立体であるので他の壁例えば120−5、120−6等の上にも同様の処理が施される。
ウェル130を形成した後は、図1(A)の上部に示すインクジェットヘッド200を用い各ウェル130−1〜130−3内に対応色のインク滴255−1〜255−3を導入する。この図では説明の都合上簡略化して描いてあるが、ヘッド200内には流路210−1〜210−3が形成されているので、対応する流路210−1〜210−3を介し各ノズル215−1〜215−3に対応色のインクを送ることができる。インク滴導入に当たっては、まず各ウェル130−1〜130−3上に対応するノズル215−1〜215−3が位置することとなるよう既知技術によりBMガラス110上にヘッド200を位置決めする。次いで、そのヘッド200を既知手法で作動させ、所定量のカラーフィルタインクを図中の矢印250−1〜250−3に沿って吐出させる。このインクはインク滴255−1〜255−3となって対応するウェル130−1〜130−3内を満たす。ウェル130−1〜130−3内のインク滴255−1〜255−3を乾燥例えば硬化させると、その滴255−1〜255−3中のカラーフィルタ素材により、図1(B)に示した通りそのウェル130−1〜130−3内に対応色のカラーフィルタ150−1〜150−3が形成される。
このように図1(A)及び図1(B)に示したカラー印刷手順でアレイ100を製造する場合、乾燥に伴い収縮するため図1(B)に示すフィルタ150−1〜150−3の体積が図1(A)に示すインク滴255−1〜255−3の20%程になるのが普通である。従って、図1(B)の左端に示したフィルタ厚Tを壁120−1〜120−4の高さHに匹敵する厚み(できれば等しい厚み)例えば約1.5〜2μmにするには、BMガラス110上のウェル130−1〜130−3の容積よりも大きなインク滴255−1〜255−3を導入しなければならない。しかしながら、それではインク滴255−1〜255−3が盛り上がってしまい、ウェル130−1〜130−3から溢れて別のインク滴255に混ざる可能性がある。
本方法では、インクの溢れや混合を防ぐため、BMガラス110の表面エネルギ(電気陰性度)を制御し部位毎に差を付けている。即ち、ウェル130内にインク滴を入れるとウェル底及びウェル壁側面は濡れる(そのインクを吸引する)がウェル壁頂面は濡れることがない(そのインクを斥ける)よう、ウェル表面全体又はその一部を化学的に処理するようにしている。図1(A)に示したウェル130−1〜130−3を例として言えば、それらを囲む壁頂面125−1〜125−4を化学的に処理し疎水層140−1〜140−4を形成することによって、その面125−1〜125−4の表面エネルギを相対的に低くする一方、各ウェル130−1〜130−3の内面(ウェル130−1ならウェル底112−1、壁側面122−1、122−2等)の表面エネルギを相対的に高くしている。疎水層140−1〜140−4は例えばOTS(octadecyl-trichlorosilane)によるSAM(self-assembling monolayer:自己集積性単分子膜)として形成できる。各インク滴255−1〜255−3は、対応するウェル130−1〜130−3の表面のうち比較的表面エネルギが高い内面に吸い付くが比較的表面エネルギが低い壁頂面125−1〜125−4からははじかれるので、そのウェル130−1〜130−3内に閉じこめられることとなる。即ち、各インク滴255−1〜255−3は、図1(A)に示した通り対応するウェル130−1〜130−3内でドーム状のビーズを形成する。
次に、こうした表面エネルギ制御の実現手法について、具体例を示してより詳細に説明する。いずれの例も化学的処理によりBMガラス110の表面エネルギを制御する例であり、その説明に当たっては実験で使用した物質名を列記するが、それら以外にも本方法を実施可能な物質はある。また、これから説明する例では浸漬により被覆材を堆積させて層を形成しているが、それ以外にも使用できる方法はある。例えば気相成長法その他の手法で層を成長させても、本質的には同様の結果を得ることができる。
図4に、これから説明する具体例のうち幾つかで疎水層形成工程の前処理として実施すべき表面活性化工程を示す。この工程では、BMガラス110の表面を随所に亘り活性化することによってウェル表面の表面エネルギを上昇させる。即ち、各ウェル130−1〜130−3の底112、壁側面122及び壁頂面125を処理することによって、そのウェル130−1〜130−3の表面エネルギを上昇させる。例えば、ウェル130−1〜130−3それぞれの底112−2〜112−3や、壁120−1、120−2等の側面122−1、122−2等や、同じく壁120−1、120−2等の頂面125−1、125−2等の表面エネルギを表面活性化により上昇させる。表面活性化は例えば酸素(O2)雰囲気中でBMガラス110を無線周波数(RF)プラズマ400に露出させることで行う。表面活性化には二通りの役割があり、そのうち一つはウェル内面(ウェル底112及び壁側面122)を活性化させ後に導入されるカラーフィルタインクに対する濡れ性を高めることである。もう一つは、壁頂面125を活性化させることで後に被着させる疎水物に対する接着性を高めることである。即ち、図1(A)に示すインク滴255−1〜255−3に対する濡れ性を高めるための表面活性化を壁頂面125(125−1、125−2等)にも及ぼすと、その面125の官能性が高まり(ファンクショナライズされ)疎水物が接着しやすくなるので、剥がれにくい疎水層140−1〜140−4を形成することができる。
また、疎水物を堆積させ図1(A)に示す疎水層140−1〜140−4を形成するには、疎水層形成工程の具体例に関する以下の説明で示す通り、図4に示した表面活性化工程とは別に表面処理やマスキング処理を実施する必要がある。即ち、各ウェル130を取り巻く壁120の頂面125のみに疎水層が形成され、各ウェル130の内面(ウェル底112や壁側面122)では相対的に表面エネルギが高い状態例えば表面活性化工程でもたらされた状態が保たれるようにする必要がある。
図5(A)〜図5(C)に、疎水層形成工程の第1例を仕掛品切断端面により示す。この例では、エラストマ製の平版スタンプ500を用い疎水物例えばOTSを被着させてSAMを形成する。そのスタンプ500としては、例えば、PDMS(polydimethylsiloxane)等で形成された適当なベース510の上に疎水層540例えばOTSのヘキサデカン溶液の層を配したものを使用する。本工程実施時には、前処理として図4に示した表面活性化工程を実施しBMガラス110の表面を活性化させた上で、図5(A)に示すようにそのしなりを利用しスタンプ500を壁120−1〜120−4に接触させる。層540に接触するのはウェル130−1〜130−3間を仕切る壁120−1〜120−4の頂面125−1〜125−4だけであるので、疎水物はその面125−1〜125−4上だけに被着する。表面活性化工程で面125−1〜125−4の表面エネルギを高めてあるため、層540のうち面125−1〜125−4に接触した部分はその面125−1〜125−4に強く接着する。接着力が十分強いので、図5(B)に示す通り、BMガラス110上で各ウェル130を囲んでいる各面125−1〜125−4上には疎水物が接着して残り、図中の140−3、140−4等のような疎水層が形成される。図5(C)に、スタンプ500による疎水層形成形成を実施した後のBMガラス110を示す。このBMガラス110においては、先の表面活性化工程にて表面エネルギを高めた面のうち、ウェル壁120−1〜120−4の側面122及びウェル底112−1〜112−3が表出している。また、壁頂面125−1〜125−4は、OTSによるSAM等の疎水層140−1〜140−4で覆われているので、その表面エネルギが相対的に低くなっている。従って、このBMガラス110上にカラーフィルタインクを吐出すると、表面エネルギが低い壁頂面125−1〜125−4に対するインクの接触角が大きくなり、それらの面125−1〜125−4からインクが斥けられるので、隣接ウェルへのインク漏出は生じにくい。反面、壁側面122及びウェル底112の表面エネルギはO2雰囲気プラズマ処理等によって相対的に高まっているので、それらの面はインクで濡れやすい。なお、OTSは疎水物の一例に過ぎず、またそれによるSAMも疎水層の一例に過ぎない。即ち、BMガラス110の活性化面に結合可能で、結合状態における表面エネルギが低くなる物質乃至形態ならどのようなものも使用できる。
図6(A)〜図6(D)、図7及び図8(A)〜図8(E)に疎水層形成工程の第2例〜第4例を示す。これらの例では、まずBMガラス110を槽に入れてその片面全体に疎水物被覆を成長させ、その被覆のうちウェル底112及び壁側面122上の部分を表面処理、マスキング等で部位選択的に除去して表面エネルギが高い面を形成乃至表出させることにより、BMガラス110上の随所に疎水層を形成する。
まず第2例では、図4に示したO2雰囲気プラズマ処理等によりその表面を活性化したBMガラス110を、図6(A)に示すように槽610内の疎水物溶液620例えばOTS溶液に浸して疎水層640例えばOTS層を形成する。図6(B)に示すように、この疎水層640には、ウェル底121−1〜121−3上に位置する部分641、壁側面122(例えば122−1及び122−2)上に位置する部分642、並びに壁頂面125(例えば125−1及び125−2)上に位置する部分645がある。次いで、図6(C)に示すようにBMガラス110を裏返してシート650に載せ、層640の壁頂面上部分645をシート650に押しつける。層640のウェル底上部分641及び壁側面上部分642はシート650から離れているので、シート650付BMガラス110をO2雰囲気に入れるとそれらの部分641及び642がO2にふれる。その状態で紫外線655を基板111越しに層640下面に入射すると、O2及び紫外線655双方にさらされる部分641及び642でエッチングが進行してそれらの部分641及び642が除去される。これは、O2を紫外線655にさらすとO3が発生し、そのO3がマイクロリアクタとなりエッチングプロセスを進行させるからである。そのマイクロリアクタの発生個所は各ウェル130−1〜130−3の底112及び壁側面122のそばであるので、層640のウェル底上部分641及び壁側面上部分642が除去されてその下の親水性部分が表出する。他方で、マイクロリアクタにふれない壁頂面上部分645ではエッチングプロセスが進行せず疎水層640−1〜640−4が残存する。図6(D)に示す通り、ここまでの処理を経たBMガラス110の基板111、特にその上にあるウェル壁120−1〜120−4の頂面125−1〜125−4上には、OTS等による疎水層140−1〜140−4が形成されている。
しかしながら、図6(A)〜図6(D)に示した第2例では、基板111によって紫外線655の一部が吸収されるためエッチングプロセスに些か時間がかかる。
図7に示す第3例では、図6(A)〜図6(D)に示した第2例に潜むこうした短所を解消乃至緩和するため、表面活性化済BMガラス110の壁頂面125−1〜125−4上に透明カバーシート657を配置し、BMガラス110の前面側からシート657越しに紫外線655を照射するようにしている。シート657は紫外線655を通す吸収スペクトラムを呈するよう水晶等で形成されているので、O2雰囲気にシート657付BMガラス110を入れて紫外線655を照射すると、好適にマイクロリアクタが発生してエッチングが速く進行する。疎水層640の壁頂面上部分645は、紫外線655にさらされるもののO2に接していないので第2例と同じくエッチングが進行せず、従ってこの部分645はウェル壁120−1〜120−4に固着したままとなる。
更に、図8(A)〜図8(E)に示す第4例では、図4に示した表面活性化工程及び図6(A)に示した浸漬副工程を実施した後、既知手法を用いOTS等による疎水層640上に図8(A)に示す通りフォトレジスト層710を塗布する。次いで、図8(B)に示す通りBMガラス110背面からの露光/現像副工程を実施する。この副工程では、基板111及び疎水層640越しに光715を入射させることにより、層710のうちウェル底121−1〜121−3上に位置し壁120−1〜120−4間に位置する部分710−11〜710−13を部位選択的に露光させる。壁120−1〜120−4がマスクとして機能するので、層710のうち入射側から見て壁120−1〜120−4の向こうにある部分710−21〜710−24は露光しない。従って、層710の露光部分710−11〜710−13を剥がして取り除くと、図8(C)に示すように層640のウェル底上部分641及び壁側面上部分642が表出し、また層640のうち壁120−1〜120−4上にある部分645の上に未露光部分710−21〜710−24が残る。更に、図8(D)中に矢印で示す通りRFプラズマ750への露出による表面処理をO2雰囲気中で施すと、層640のうちそのプラズマ750にさらされる部分641及び642が除去されるので、基板111の表面112−1〜112−3及びウェル壁120−1〜120−4の側面122(122−1、122−2等)が表出し、プラズマ750の作用でその部分の表面エネルギが調整される。そして、フォトレジスト層710のうち残っていた部分710−21〜710−24を壁120−1〜120−4上から除去すると、図8(E)に示すように層640の頂面上部分645が疎水層140−1〜140−4として壁頂面125−1〜125−4上に残る。なお、この例には、壁120−1〜120−4に対する疎水層640の接着があまり強くないため、幾分うまくいかない可能性があるという短所がある。即ち、層710の未露光部分710−21〜710−24を剥がすときに壁頂面125−1〜125−4上の疎水物例えばOTSも部分的に剥がれてしまう可能性がある。
図9(A)〜図9(F)、図10(A)〜図10(C)及び図11(A)〜図11(C)に疎水層形成工程の第5例〜第7例を示す。これらの例では、まず各ウェル130−1〜130−3の底112(例えば112−1)及び壁側面122(例えば122−1や122−2)の上に親水層820又はフォトレジスト層910を形成し、次いで壁120−1〜120−4の頂面125−1〜125−4即ちあらわになっている面の上に、前述した浸漬副工程によって疎水物を堆積させて疎水層140を形成する。これらの例では、剥離によるフォトレジスト除去の際に疎水物例えばOTSが部分的に剥がれてしまうことがない。
まず、図9(A)〜図9(F)に示す第5例ではフォトレジスト層形成、背面露光/現像並びに二種類の表面処理を実施する。即ち、まず図9(A)に示すようにBMガラス110上にフォトレジスト層810を形成し、次いで図9(B)に示すように基板111越しに光を入射してBMガラス110の背面側から露光/現像することにより、層810のうちウェル底112及び壁側面122上の部分810−11〜810−13を部位選択的に露光/現像する。先の例と同じくウェル壁120−1〜120−4がマスクになるので、層810の残りの部分810−21〜810−24の露光は妨げられる。従って、層810の露光部分810−11〜810−13を除去すると、図9(C)に示す通り各ウェル130−1〜130−3の底112−1〜112−3及び壁側面122(例えば122−1や122−2)があらわになる一方、壁120−1〜120−4の頂面125−1〜125−4は層810の未露光部分810−21〜810−24によって覆われたままになる。この状態から、ウェル底112−1〜112−3等を形成する素材例えばガラスに接着する親水物をBMガラス110上に堆積させると、それまであらわになっていたウェル底112−1〜112−3や壁120−1〜120−4の側面122の上に、図9(D)に示すように親水層820が形成される。例えば基板111がガラス製である場合、フォトレジスト剥離副工程で親水層820が脱落することがないよう、ガラスに強く接着する親水物例えばPETS(phen-ethyl-trichlorosilane)を使用するとよい。次いで、層810の未露光部分810−21〜810−24を剥がし頂面125−1〜125−4をあらわにした上で、図9(E)に示すように、先の例に倣いBMガラス110を疎水物溶液620例えばOTS溶液中に浸漬する。この副工程を実施するとBMガラス110の表面のうち壁頂面125−1〜125−4上に疎水物溶液620が被着し、図9(F)に示すようにその溶液620中の疎水物からなる好適な疎水層140−1〜140−4例えばOTS層が形成される。他方、BMガラス110表面の他の部位には、親水層820例えばPETS層があるため疎水物は被着しない。
次に、図10(A)〜図10(C)に示す第6例及び図11(A)〜図11(C)に示す第7例はいずれも反転現像を実施する例である。まず第6例では、図9(A)に示した手順と同様の手順でフォトレジスタ層910を形成した後、図9(B)に示した手順と同様の手順で背面露光/現像副工程を実施することでフォトマスクを形成する。但し、この例ではポジティブトーンレジストを用いて濃淡反転画像を生成する。即ち、未露光部分を剥離させうるフォトレジストを使用して層910を形成し、それを露光させた上で未露光部分を剥離することにより、図10(A)に示す通り露光部分910−11〜910−13をフォトマスクとして残して、壁頂面125−1〜125−4をあらわにする。第7例でも、図11(A)に示すようにフォトレジスト層1010の一部1010−11〜1010−13をフォトマスクとして残存させる。但し、BMガラス110の各部寸法は、反転現像及びフォトレジスト剥離を実行することによる解像度損失が問題にならないように設定する。また、両例間の違いは、壁頂面125−1〜125−4上だけがあらわになるよう露光/現像時間を制御するのか(図10(A)の場合)それとも壁側面122(例えば122−1や122−2)の一部もあらわになるよう露光/現像時間を制御するのか(図11(A))という点にある。こうしてフォトマスクを形成したBMガラス110を、図10(B)及び図11(B)に示すように前述の幾つかの例と同じく疎水物溶液620例えばOTS溶液に浸漬すると、フォトマスク部分910−11〜910−13(第6例)又は1010−11〜1010−13(第7例)では堆積が妨げられるため、OTS等の疎水物は露出している壁頂面125−1〜125−4(第6例及び第7例)或いは更に壁側面122の一部(第7例)だけに堆積する。そして、残っているフォトレジストを除去すると、図10(C)及び図11(C)に示すように、ウェル底112−1〜121−3や壁側面122(例えば122−1や122−2)の一部があらわになる。先に示した幾つかの例では剥離実施時にフォトマスク下に疎水物例えばOTSが存在していたが、両例ではフォトマスク下に疎水物が入り込まないので、BMガラス110に対する疎水物例えばOTSの接着性が弱くても問題にならない。
図12(A)〜図12(C)に疎水層形成工程の第8例を示す。この例においては、紫外線照射によってその疎水度(phobicity)が変化する性質を有するフォトデファイナブル表面処理剤、例えば旭硝子株式会社又はその関連企業から入手可能な疎水性フルオロポリマ添加剤をBMガラス110上に堆積させ、それによって図12(A)に示すフォトデファイナブル層1110を形成する。例えば、BMガラス110の片面全体にその表面エネルギが低い(即ち疎水度が高い)フォトデファイナブル層1110を形成し、そのBMガラス110を図12(B)に示すように前記同様の背面露光/現像に供すると、層1110のうち露光した部分の表面エネルギが上昇する。即ち、層1110のうちウェル底112−1〜121−3上の部分1110−11〜1110−13が露光してその表面エネルギが上昇する一方、ウェル壁120−1〜120−4によって隠される部分1110−21〜1110−24が元の低い表面エネルギ(高い疎水度)に保たれるので、BMガラス110の表面エネルギを所望の通り制御することができる。図12(C)に、以上の処理を経たBMガラス110を示す。このBMガラス110では、層1110のうち露光・活性化しなかった部分1110−21〜1110−24が疎水層140−1〜140−4となり、露光・活性化した部分1110−11〜1110−13が所望の親水性を呈する。先に示した幾つかの例と異なり、この例ではフォトクリーブ(光劈開)性の反応により疎水度を変化させているので、O2もエッチング反応も必要ない。
以上、本発明について幾つかの実施形態を例に説明を行ったが、いわゆる当業者には明らかな通り、本発明に係る思想は他の形態でも好適に実施することができ、本発明の技術的範囲にはそれらも包含される。例えば、本願で説明に使用したBMガラス以外の基礎構造を用いて本発明を実施することもできる。
100 カラーフィルタアレイ、110 BMガラス、111 ガラス基板、112−1〜112−3 ウェル底、120,120−1〜120−6 ウェル壁、122,122−1〜122−2 ウェル壁側面、125,125−1〜125−4 ウェル壁頂面、130,130−1〜130−3 ウェル、140−1〜140−4,540,640,640−1〜640−4,641,642,645 疎水層、150−1〜150−3 カラーフィルタ、200 インクジェットヘッド、220 BM(ブラックマトリクス)層、255−1〜255−3 カラーフィルタインク滴、620 疎水物溶液。