本発明は、カラー液晶ディスプレイ等に用いることが可能な遮光部を有するカラーフィルタ、およびその製造方法に関するものである。以下、それぞれについて詳しく説明する。
A.カラーフィルタ
まず、本発明のカラーフィルタについて説明する。
本発明のカラーフィルタには、透明基材と、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、その特性変化層の特性が変化したパターンに沿って形成された画素部と、遮光部とを有するカラーフィルタであって、2つの実施態様がある。どちらの実施態様においても、上記遮光部が熱架橋型樹脂を含有するものであることから、熱転写法等により形成されたものとすることができ、遮光部の架橋密度が高く、強度の高いものとすることができる。これにより、遮光部の強度を利用して画素部を形成することが可能となり、画素部が混色等することのない高品質なカラーフィルタとすることができるのである。また、熱架橋型樹脂を含有する遮光部は、例えばポストベーク等を行うことにより、さらに架橋密度の高いものとすることができ、耐衝撃性を有するものとすることができる。またこの場合、上記遮光部中に光重合開始剤や重合性モノマー等を含有する必要がなく、加熱時のオーブン内の汚染等を防ぐことができ、高品質なカラーフィルタとすることができる。
また、本発明のカラーフィルタは、上記特性変化層を有することから、この特性変化層に上記エネルギー照射を行うことによって、例えば濡れ性等の特性が変化したパターンを容易に形成することができる。したがって、この特性変化層の特性が変化した領域と、特性が未変化の領域との特性の差も利用することによっても、画素部を高精細に形成することができ、混色等がなく、高精細な画素部を有する高品質なカラーフィルタとすることができるのである。
このようなカラーフィルタについて、各実施態様ごとにそれぞれ説明する。
1.第1実施態様
まず、本発明のカラーフィルタの第1実施態様について説明する。
本発明のカラーフィルタの第1実施態様は、透明基材と、上記透明基材上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、上記特性変化層上に形成され、熱架橋型樹脂を含有する遮光部と、上記特性変化層の特性が変化したパターンに沿って形成された画素部とを有するものである。
本実施態様のカラーフィルタは、例えば図1に示すように、透明基材1と、その透明基材1上に形成された特性変化層2と、その特性変化層2上に形成された遮光部3と、特性変化層2の特性が変化したパターン4上に形成された画素部5とを有するものである。
本実施態様によれば、上記遮光部が熱架橋型樹脂を含有するものであることから、例えば熱転写法により形成されたものとすることができる。これにより、遮光部を形成する際、透明基材上に形成された遮光部をエネルギー照射により硬化させる必要がない。また、熱架橋型樹脂を含有する遮光部は、例えばポストベーク等を行うことにより、架橋密度の高いものとすることができ、強度が高く、耐衝撃性を有するものとすることができる。
また本実施態様においては、透明基材上に上記特性変化層が形成されていることから、この特性変化層にエネルギーを照射することによって、特性変化層の特性を変化させることができ、この特性の差も利用して、例えばインクジェット法等により、容易に画素部を形成することが可能となるのである。
本実施態様において、画素部が形成されるパターンと、遮光部が形成された領域以外のパターンとが同じである場合には、上記特性変化層の全面に、エネルギーを照射することにより、画素部を形成する特性変化パターンを形成することができる。この場合、例えばエネルギーが照射された領域の液体との接触角が、遮光部の液体との接触角より低いもの等とすることにより、遮光部以外の領域にのみ画素部を形成する画素部形成用塗工液等を塗布することができ、高精細な画素部を形成することが可能となるのである。また、画素部を形成するパターンと、遮光部が形成された以外の領域のパターンとが異なる場合には、フォトマスク等を用いてエネルギーを照射することにより、目的とするパターン状に特性の変化した特性変化パターンを形成することができ、この特性パターンを利用して画素部が形成されたものとすることができるのである。
ここで、熱架橋型樹脂を含有する遮光部は、通常無機材料からなる部材上に形成される場合、密着性が悪く、通常有機材料と無機材料との間に通常プライマー層等が形成されるものである。しかしながら、本実施態様においては、上記特性変化層中に、例えばオルガノポリシロキサンや、シランカップリング剤等が含有されている場合には、特性変化層が、例えば上記透明基材がガラス等の無機材料と、有機材料からなる遮光部との密着性を向上させる層としての機能を果たすことができ、プライマー層等を別途形成する必要がないものとすることができるのである。また、密着性が向上することにより、遮光部が例えば熱転写法により転写されたもの等である場合、転写性が向上するという利点も有する。
以下、上述したようなカラーフィルタの各構成について、それぞれ説明する。
(遮光部)
まず、本実施態様に用いられる遮光部について説明する。本実施態様に用いられる遮光部は、後述する特性変化層上に形成され、熱架橋型樹脂を含有するものであり、カラーフィルタのブラックマトリックスとして用いられるものである。
カラーフィルタの遮光部の形成に一般的に用いられている、感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法や、インクジェット法等では、基板上に遮光部を形成した後、エネルギーを照射することにより、感光性樹脂を硬化させて形成する必要がある。したがって、膜厚を厚くすると、遮光部の内部までエネルギーを到達させることが困難となり、完全に硬化させることができないため、強度が弱くなる場合がある。
一方、本実施態様においては、遮光部が熱架橋型樹脂を含有するものであることから、例えば熱転写法により形成されたものとすることができ、透明基材上に形成した遮光部をエネルギー照射により硬化させる必要がなく、架橋密度が高く強度の高いものとすることができるのである。
このような遮光部の膜厚としては、カラーフィルタの種類や用途等に応じて異なるものであるが、通常0.5μm〜10.0μmの範囲内、特に0.8μm〜5.0μmの範囲内とすることができる。これにより、後述する画素部を形成する際に、混色等を防ぐ機能を果たすことができるからである。ここで、遮光部の膜厚が0.5μmより厚みが薄い場合には、遮光性が低くなるから場合があり、また遮光部の膜厚が10.0μmより厚みが厚い場合には、例えば熱転写法により熱転写される際のエッジの切れが悪くなり、高精細な遮光部とすることが困難となるからである。
ここで、本実施態様に用いられる遮光部は、熱架橋型樹脂を含有するものであれば、特に限定されるものではないが、熱転写法により形成されたものであることが好ましく、遮光材料と結着剤により構成されるものであることが好ましい。これにより、熱転写法により転写されることが可能であり、遮光部としての適性も良好なものとすることができるからである。上記遮光性材料としては、カーボンブラック、チタンブラック等の無機粒子を用いることが好ましい。このような遮光性材料の粒子径としては、0.01μm〜1.0μm、中でも0.03μm〜0.3μmの範囲内であることが好ましい。
また、結着剤としては、熱可塑性と熱硬化性とを有する樹脂組成とすることが好ましく、熱硬化性官能基を有し、かつ軟化点が50℃〜150℃の範囲内、中でも60℃〜120℃の範囲内である樹脂材料および硬化剤等により構成されることが好ましい。このような材料として具体的には、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物またはエポキシ樹脂とその潜在性硬化剤との組み合わせ等が挙げられる。
1分子中にエポキシ基2個以上有するエポキシ化合物としては、1分子中にエポキシ基(オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を示すことができる)を有するモノマーの重合体及び共重合体、あるいはこれらエポキシ基を有するモノマーの少なくとも1種とエポキシ基を有さないモノマーとの共重合体が挙げられる。
エポキシ基を有するモノマーの具体例としては、グリシジルアクリレート,グリシシルメタクリレート,アクリルグリンジルエーテル,4−ビニルシクロヘキサンモノエポキシド等が挙げられる。エポキシ基を有さないモノマーの具体例としては、スチレン,ビニルトルエン,ビニルベンジルクロリド,エチレン,t−ブチルスチレン,メチルメタクリレート,メチルアクリレート,エチルメタクリレート,エチルアクリレート,ヘキシルメタクリレート,ヘキシルアクリレート,ステアリルアクリレート、アクリロニトリル,メタクリロニトリル,ジビニルベンゼン,N.N−メチレンビス(アクリルアミド),エチレンジアクリレート,エチレンジメタクリレート,塩化ビニル,塩化ビニリデン等が挙げられる。
1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基2個以上を有し、カルボン酸により硬化しうる公知の多官能エポキシ樹脂が挙げられる。このような樹脂の具体例としては、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
また、エポキシ樹脂の潜在性硬化剤として、ある一定の温度まではエポキシ基との反応性を有さないが、加熱により活性化温度に達するとエポキシ基との反応性を有する分子構造に変化する硬化剤を用いることができる。具体的には、エポキシ樹脂との反応性を有する酸性または塩基性化合物の中性塩や錯体、ブロック化合物、高融点体、マイクロカプセル封入物が挙げられる。なかでも特にエポキシ樹脂との反応性を有する官能基を2個以上有するカルボキシル基ブロック化合物が好ましい。
本発明に用いられる遮光部における上記遮光性材料と上記結着剤との含有比率は、遮光部内に含有される遮光性材料の重量%を1とした場合に、遮光部内に含有される結着剤の重量%が0.5〜2.4の範囲内であることが好ましい。上記範囲内より上記遮光材料の含有量が多い場合には、熱転写される際の熱転写性が低下して転写感度が低くなったり、遮光部の耐薬品性が低下するため好ましくない。また上記範囲内より上記遮光材料の含有量が少ない場合には遮光性が低下し、遮光部としての機能を十分満足することができないため、好ましくない。
なお、上記遮光部は、上記の材料の他に、離型剤、接着補助剤、酸化防止剤、分散剤等を含有するものであってもよい。
ここで、上記遮光部の遮光性としては、透過濃度で2.5以上、中でも3.0以上とすることが好ましい。上記範囲より低い場合には、コントラストが低くなり、ディスプレイとしての性能が低くなるからである。ここで、上記透過濃度は、GretagMacbeth透過濃度計D200−IIを用いて、光学フィルタ無しの条件下で測定した値である。
なお、上記遮光部の形成方法等については、後述する「B.カラーフィルタの製造方法」における遮光部形成工程の項で詳しく説明するので、ここでの説明は省略する。
(特性変化層)
次に、本実施態様に用いられる特性変化層について説明する。本実施態様に用いられる特性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、特性が変化する層であり、後述する画素部を、その特性が変化した特性変化パターン上に形成可能なものであれば、特に限定されるものではない。
ここで、上述したように、画素部が形成されるパターンが、上記遮光部が形成された領域以外のパターンと同じである場合には、特性変化後の特性変化層の特性と、上記遮光部の特性とが異なるものであることが好ましい。これにより、画素部を形成する際に、特性変化層の特性が変化した領域と、上記遮光部との特性の差を利用して、容易に画素部を形成することができるからである。
本実施態様においては、後述する画素部の形成が容易であるという面から、上記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する層であり、かつ少なくとも光触媒およびバインダを含有する光触媒含有濡れ性変化層(以下、第1の態様とする)、上記特性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、特性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギーが照射されることにより、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層(以下、第2の態様とする)、または、上記特性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、特性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギーが照射されることにより、分解除去される分解除去層(以下、第3の態様とする)のいずれかの層であることが好ましい。以下、上記の各実施態様についてそれぞれ説明する。
(1)第1の態様
まず、本実施態様の特性変化層における第1の態様について説明する。本実施態様の特性変化層における第1の態様は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する層であり、かつ少なくとも光触媒およびバインダを含有する光触媒含有濡れ性変化層である。
本態様に用いられる光触媒含有濡れ性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する層であり、かつ少なくとも光触媒およびバインダを含有する層であれば特に限定されるものではなく、これにより、エネルギー照射された部分を親液性領域、エネルギー照射されていない部分を撥液性領域とすることが可能となる。
本実施態様に用いられる光触媒含有濡れ性変化層は中でも、エネルギー照射していない部分、すなわち撥液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、10°以上、中でも表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上であることが好ましい。これは、エネルギー照射していない部分が、撥液性が要求される部分であることから、上記液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、例えば後述する画素部を形成する画素部形成用塗工液をインクジェット方式等により塗布し、硬化させて形成する場合等に、撥液性領域にも画素部形成用塗工液が付着する可能性があることから、高精細に画素部を形成することが困難となるからである。
また、上記光触媒含有濡れ性変化層は、エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が9°未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下となるような層であることが好ましい。エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高い場合は、例えば画素部を形成する画素部形成用塗工液を、親液性領域においてもはじいてしまう可能性があり、例えばインクジェット法により画素部形成用塗工液を塗布した際に、画素部形成用塗工液が十分に塗れ広がらず、画素部を形成することが難しくなる可能性があるからである。
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
本態様に用いられる光触媒含有濡れ性変化層は、この光触媒含有濡れ性変化層中にフッ素が含有され、さらにこの光触媒含有濡れ性変化層表面のフッ素含有量が、光触媒含有濡れ性変化層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有濡れ性変化層が形成されていてもよく、またエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を含むように形成されていてもよい。
上述したような光触媒含有濡れ性変化層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本態様においては、このキャリアが光触媒含有濡れ性変化層内のバインダ化合物に作用を及ぼし、その表面の濡れ性を変化させるものであると考えられる。
また、本態様においてはさらに、光触媒含有濡れ性変化層中に、後述する密着性向上物質、またはシランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、本態様の光触媒含有濡れ性変化層を、上述した遮光部と、後述する透明基材との密着性を向上させる層としても用いることができるからである。
以下、このような光触媒含有濡れ性変化層を構成する、光触媒、バインダ、およびその他の成分について説明する。
a.光触媒
まず、本態様に用いられる光触媒について説明する。本態様に用いられる光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
本態様においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本態様ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下であることが好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
本態様に用いられる光触媒含有濡れ性変化層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有濡れ性変化層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
b.バインダ
次に、本態様に用いられるバインダについて説明する。本態様においては、光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性の変化をバインダ自体に光触媒が作用することにより行う場合(第1の形態)と、エネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有濡れ性変化層に含有させることにより変化させる場合(第2の形態)と、これらを組み合わせることにより行う場合(第3の形態)の三つ形態に分けることができる。上記第1の形態および第3の形態において用いられるバインダは、光触媒の作用により光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる機能を有する必要があり、上記第2の形態では、このような機能は特に必要ない。
以下、まず第2の形態に用いられるバインダ、すなわち光触媒の作用により光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能を特に必要としないバインダについて説明し、次に第1の形態および第3の形態に用いられるバインダ、すなわち光触媒の作用により光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能を有するバインダについて説明する。
上記第2の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能を特に必要としないバインダとしては、主骨格が上記光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、有機置換基を有しない、もしくは多少有機置換基を有するポリシロキサンを挙げることができ、これらはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を加水分解、重縮合することにより得ることができる。
このようなバインダを用いた場合は、添加剤としてエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有濡れ性変化層中に含有させることが必須となる。
次に、上記第1の形態および第3の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能を必要とするバインダについて説明する。このようなバインダとしては、主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであって、光触媒の作用により分解されるような有機置換基を有するものが好ましく、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
上記の(1)の場合、一般式:
YnSiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基もしくはエポキシ基、またはこれらを含む置換基であり、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでXで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。また、Yで示される置換基全体の炭素数は1〜20の範囲内、中でも5〜10の範囲内であることが好ましい。
これにより、上記濡れ性変化層を形成した際に、オルガノポリシロキサンを構成するYにより表面を撥液性とすることができ、またエネルギー照射に伴う光触媒の作用により、そのYが分解等されることによって、親液性とすることが可能となるからである。
また、特に上記オルガノポリシロキサンを構成するYがフルオロアルキル基であるオルガノポリシロキサンを用いた場合には、エネルギー照射前の光触媒含有濡れ性変化層を、特に撥液性の高いものとすることができることから、高い撥液性が要求される場合等には、これらのフルオロアルキル基を有するオルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。このようなオルガノポリシロキサンとして、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)9CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
CF3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7SO2N(C2H5)C2H4CH2Si(OCH3)3 。
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
ただし、nは2以上の整数であり、R1,R2はそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R1、R2がメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダに混合してもよい。
c.分解物質
上記第2の形態および第3の形態においては、さらにエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有濡れ性変化層に含有させる必要がある。すなわち、バインダ自体に光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能が無い場合、およびそのような機能が不足している場合に、上述したような分解物質を添加して、上記光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性の変化を起こさせる、もしくはそのような変化を補助させるようにするのである。
このような分解物質としては、光触媒の作用により分解し、かつ分解されることにより光触媒含有濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させる機能を有する界面活性剤を挙げることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
また、界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を挙げることができる。
d.フッ素の含有
また、本態様においては、光触媒含有濡れ性変化層がフッ素を含有し、さらにこの光触媒含有濡れ性変化層表面のフッ素含有量が、光触媒含有濡れ性変化層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有濡れ性変化層が形成されていることが好ましい。
このような特徴を有する光触媒含有濡れ性変化層であれば、エネルギーをパターン照射することにより、後述するように容易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。したがって、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親液性領域となっていることを意味する。よって、周囲の表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパターンを形成することは、撥液性域内に親液性領域のパターンを形成することとなる。
したがって、このような光触媒含有濡れ性変化層を用いた場合は、エネルギーをパターン照射することにより、撥液性領域内に親液性領域のパターンを容易に形成することができるので、例えばインクジェット法等により、画素部形成用塗工液を塗布した場合に、高精細な画素部を形成することが可能となるからである。
上述したような、フッ素を含む光触媒含有濡れ性変化層中に含まれるフッ素の含有量としては、エネルギーが照射されて形成されたフッ素含有量が低い親液性領域におけるフッ素含有量が、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下である。
このような範囲内とすることにより、エネルギー照射部分と未照射部分との親液性に大きな違いを生じさせることができる。したがって、このような光触媒含有濡れ性変化層に、例えば画素部形成用塗工液を付着させることにより、フッ素含有量が低下した親液性領域のみに正確に画素部を形成することが可能となり、精度の良いカラーフィルタを得ることができるからである。なお、この低下率は重量を基準としたものである。
このような光触媒含有濡れ性変化層中のフッ素含有量の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いることが可能であり、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)、蛍光X線分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測定できる方法であれば特に限定されるものではない。
また、本態様においては、光触媒として上述したように二酸化チタンが好適に用いられるが、このように二酸化チタンを用いた場合の、光触媒含有濡れ性変化層中に含まれるフッ素の含有量としては、X線光電子分光法で分析して定量化すると、チタン(Ti)元素を100とした場合に、フッ素(F)元素が500以上、このましくは800以上、特に好ましくは1200以上となる比率でフッ素(F)元素が光触媒含有濡れ性変化層表面に含まれていることが好ましい。
フッ素(F)が光触媒含有濡れ性変化層にこの程度含まれることにより、光触媒含有濡れ性変化層上における臨界表面張力を十分低くすることが可能となることから表面における撥液性を確保でき、これによりエネルギーをパターン照射してフッ素含有量を減少させたパターン部分における表面の親液性領域との濡れ性の差異を大きくすることができ、最終的に得られるカラーフィルタの精度を向上させることができるからである。
さらに、このようなカラーフィルタにおいては、エネルギーをパターン照射して形成される親液領域におけるフッ素含有量が、チタン(Ti)元素を100とした場合にフッ素(F)元素が50以下、好ましくは20以下、特に好ましくは10以下となる比率で含まれていることが好ましい。
光触媒含有濡れ性変化層中のフッ素の含有率をこの程度低減することができれば、カラーフィルタを形成するためには十分な親液性を得ることができ、上記エネルギーが未照射である部分の撥液性との濡れ性の差異により、カラーフィルタを精度良く形成することが可能となり、利用価値の高いカラーフィルタを得ることができる。
e.光触媒含有濡れ性変化層の製造方法
上述したようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有濡れ性変化層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより、光触媒含有濡れ性変化層を形成することができる。
f.密着性向上物質またはシランカップリング剤
ここで、本態様においては上述したいずれの形態においても、光触媒含有濡れ性変化層中に密着性向上物質、またはシランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、光触媒含有濡れ性変化層が、上述した遮光部と、後述する透明基材との密着性を向上させる層としての機能も果たすことが可能となり、別途密着性向上層等を設けることなく、透明基材と遮光部との密着性の良い高品質なカラーフィルタとすることができるからである。また、遮光部の転写性が向上するという利点も有するからである。
このような密着性向上物質としては、金属元素を含有する主鎖を有し、かつ側鎖に有機基を有する物質等を用いることができ、金属元素としては、例えばケイ素やチタン等が挙げられる。このような密着性向上物質としては、上記遮光部および上記透明基材の密着性を向上させることが可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば上述したオルガノポリシロキサン等を用いることができる。
また、シランカップリング剤としては、例えば、YnSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基もしくはエポキシ基、またはこれらを含む置換基であり、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の単体、加水分解縮合物、もしくは共加水分解縮合物等を用いることができる。本発明においては、上記の中でも特に、Yがビニル基、アミノ基、またはエポキシ基であることが好ましい。また、ここでXで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。またさらに、Yで示される置換基全体の炭素数は1〜20の範囲内、中でも5〜10の範囲内であることが好ましい。
(2)第2の態様
次に、本実施態様の特性変化層における第2の態様について説明する。本実施態様の特性変化層における第2の態様は、上記特性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記特性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層である。
本態様における濡れ性変化層は、例えば図2に示すように、透明基材1と遮光部3との間に濡れ性変化層2が形成されるものであり、この濡れ性変化層2と、光触媒を含有する光触媒処理層6および基体7とを有する光触媒処理層側基板8における光触媒処理層6とが、所定の間隙となるように配置され、所定の方向からエネルギー9を照射されることにより、濡れ性変化層2におけるエネルギー照射された部分の液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層である。
なお、上記光触媒処理層側基板は、エネルギー照射の間のみ、上記位置に配置されていればよい。以下、本態様に用いられる濡れ性変化層および光触媒処理層側基板について説明する。
a.濡れ性変化層
本態様に用いられる濡れ性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するような層であれば、特に限定されるものではないが、中でも、エネルギー照射していない部分、すなわち撥液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、10°以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上であることが好ましい。これは、エネルギー照射していない部分が撥液性が要求される部分であることから、上記液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、例えば後述する画素部を、画素部形成用塗工液をインクジェット方式等により塗布し、硬化させて形成する場合等に、撥液性領域にも画素部形成用塗工液が付着する可能性があることから、高精細に画素部を形成することが困難となるからである。
また、上記濡れ性変化層は、エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が9°未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下となるような層であることが好ましい。エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高い場合は、例えば画素部を形成する画素部形成用塗工液を、親液性領域においてもはじいてしまう可能性があり、例えばインクジェット法により画素部形成用塗工液を塗布した際に、画素部形成用塗工液が十分に塗れ広がらず、画素部を形成することが難しくなる可能性があるからである。
なお、ここでいう液体との接触角は、第1の態様において説明した方法と同様に測定した値である。
このような濡れ性変化層は、上記光触媒処理層の作用により濡れ性が変化する層であれば、その材料等は特に限定されるものではないが、上述した第1の態様の光触媒含有濡れ性変化層中のバインダと同様の材料で形成された層とすることができる。なお、このように上記第1の態様の光触媒含有濡れ性変化層中のバインダと同様の材料で形成した場合の濡れ性変化層の材料および形成方法に関しては、上記第1の態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、この濡れ性変化層には、上記第1の態様における光触媒含有濡れ性変化層の説明中「フッ素の含有」の項で記載したものと同様にして同様のフッ素を含有させることができる。
本態様において、これらの濡れ性変化層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μmから1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
また、本態様においては、濡れ性変化層を単分子膜とすることができる。上記濡れ性変化層が単分子膜であることにより、上記濡れ性変化層を均一かつ緻密な層とすることができ、後述する画素部を均一かつ高精細に形成することが可能となるからである。このような単分子膜としては、例えば自己組織化単分子膜が挙げられる。
ここで、自己組織化単分子膜とは、固体/液体もしくは固体/気体界面で、有機分子同士が自発的に集合し、会合体を形成しながら自発的に単分子膜を形作っていく有機薄膜である。例として、ある特定の材料でできた基板を、その基板材料と化学的親和性の高い有機分子の溶液または蒸気にさらすと、有機分子は基板表面で化学反応し吸着する。その有機分子が、化学的親和性の高い官能基と、基板との化学反応を全く起こさない有機鎖との2つのパートからなり、親和性の高い官能基がその末端にある場合、分子は反応性末端が基板側を向き、有機鎖が外側を向いて吸着する。有機鎖同士が集合すると、全体として安定になるため、化学吸着の過程で有機分子同士は自発的に集合する。分子の吸着には、基板と末端官能基との間で化学反応が起こることが必要であることから、いったん基板表面が有機分子でおおわれ単分子膜ができあがると、それ以降は分子の吸着は起こらない。その結果、分子が密に集合し、配向性のそろった有機単分子膜ができるものである。
本態様においては、上記濡れ性変化層が上記自己組織化単分子膜である場合、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって、濡れ性変化層表面に存在する撥水性を有する有機鎖が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって除去されることにより、容易に表面を親水性とすることが可能であり、効率的に特性変化パターンの形成を行うことが可能となるのである。
このような上記濡れ性変化層として用いられる単分子膜を構成する材料としては、上述した特性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、本態様においては、有機鎖を有するシラン化合物であることが好ましい。これにより、単分子膜の形成が容易であり、かつ上述した特性を発揮することが可能となるからである。ここで、上記有機鎖を構成する炭素の数は、1〜20の範囲内、中でも5〜10の範囲内であることが好ましい。これにより、エネルギー照射前の濡れ性変化層を撥液性とすることができ、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により上記有機鎖が分解等され、親液性とすることが可能となるのである。
上記有機鎖を有するシラン化合物として、具体的には、上述したオルガノポリシロキサンの項で説明した材料等を用いることができ、中でもフルオロアルキルシランであることが好ましい。
このような単分子膜からなる濡れ性変化層は、熱CVD法やディップコート法、等により形成することができるが、本態様においては、熱CVD法であることが製造効率等の面から好ましい。熱CVD法の好ましい成膜条件としては、後述する透明基材等の耐熱温度以下であれば、原料となる物質の気化温度以上であり、かつ分解温度以下であれば特に限定されるものではないが、通常50℃〜200℃の範囲内であることが好ましい。
また、本態様においては、公知である減圧熱CVD法を用いてもよい。この減圧熱CVD処理時における真空度として、十分な材料の蒸気圧が得られるように設定することができる。この蒸気圧は材料の種類により適宜選択されるものであるが、通常0.01Torr〜10Torr、中でも5Torr以下とすることができる。またこの際、透明基材表面との反応を促進するために、透明基材を加熱しながら減圧CVD法を行い、濡れ性変化層を形成することが好ましい。この場合の加熱温度は、透明基材および濡れ性変化層の材料によって適宜選択されるものではあるが、通常40℃〜100℃の範囲内、中でも80℃以下とされる。
本態様において形成される単分子膜からなる濡れ性変化層の膜厚としては、その単分子膜の種類にもより決定されるものであるが、通常1nm〜50nmの範囲とされる。
なお、本態様においては、濡れ性変化層中に光触媒を含有しないものとすることが好ましい。これにより、経時的に画素部が光触媒の影響を受ける可能性を少なくすることが可能となるからである。
ここで、本態様に用いられる濡れ性変化層中にも、上述した第1の態様と同様に密着性向上物質、またはシランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、濡れ性変化層を、上記遮光部と後述する透明基材との密着性を向上させる層として用いることが可能となるからである。
b.光触媒処理層側基板
次に、本態様に用いられる光触媒処理層側基板について説明する。本態様に用いられる光触媒処理層側基板は、少なくとも光触媒処理層と基体とを有するものであり、通常は基体上に所定の方法で形成された薄膜状の光触媒処理層が形成されてなるものである。また、この光触媒処理層側基板には、パターン状に形成された光触媒処理層側遮光部やプライマー層が形成されたものも用いることができる。
本態様においては、エネルギーを照射する際に、上記濡れ性変化層と、上記光触媒処理層側基板における光触媒処理層とを所定の間隙をおいて対向させ、光触媒処理層側基板の光触媒処理層の作用により、濡れ性変化層の濡れ性を変化させ、エネルギー照射後、光触媒処理層側基板を取り外すことにより濡れ性変化パターンが形成されるのである。
なお、本態様に用いられる光触媒処理層側基板については、後述する「B.カラーフィルタの製造方法」において、詳しく説明するので、ここでの詳しい説明は省略する。
(3)第3の態様
次に、本態様の特性変化層における第3の態様について説明する。本態様における特性変化層は、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記特性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギーが照射されることにより、分解除去される分解除去層であるものである。
本態様に用いられる分解除去層は、透明基材と遮光部との間に形成されるものであり、この分解除去層と、上記光触媒処理層とが、所定の間隙となるように配置され、所定の方向から上記エネルギーを照射されることにより、分解除去層におけるエネルギー照射された部分が分解除去される層である。この際、分解除去層が分解除去されて露出するのは透明基材となる。
ここで、本態様に用いられる光触媒処理層側基板については、第2の態様と同様であるので、ここでの説明は省略し、分解除去層について以下説明する。
本態様に用いられる分解除去層は、エネルギー照射された際に光触媒処理層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された部分の分解除去層が分解除去される層であれば、特に限定されるものではない。
このように分解除去層は、エネルギー照射した部分が光触媒の作用により分解除去されることから、現像工程や洗浄工程を行うことなく分解除去層のある部分と無い部分からなるパターン、すなわち凹凸を有するパターンを形成することができる。
なお、この分解除去層は、エネルギー照射による光触媒の作用により酸化分解され、気化等されることから、現像・洗浄工程等の特別な後処理なしに除去されるものであるが、分解除去層の材質によっては、洗浄工程等を行ってもよい。
また、本態様に用いられる分解除去層は、凹凸を形成するのみならず、この分解除去層が、上記露出した部材表面と比較して、液体との接触角が高いことが好ましい。これにより、分解除去層が分解除去された領域を親液性領域、上記分解除去層が残存する領域を撥液性領域とすることが可能となり、種々の画素部を形成することが可能となるからである。この際、分解除去層が分解除去されて露出する部材は、光触媒処理層である。
ここで、本態様の分解除去層、すなわち撥液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、10°以上、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下となるような層であることが好ましい。これは、分解除去層が本態様においては撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、例えばインクジェット法等により、画素部形成用塗工液を塗布した際に、撥液性領域にまで画素部形成用塗工液が付着する可能性が生じることから、高精細なカラーフィルタとすることが困難となるからである。
また、エネルギー照射により露出した透明基材、すなわち親液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、40mN/mの液体との接触角が9°未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下となるようなものであることが好ましい。これは透明基材、すなわち親液性領域における画素部形成用塗工液との接触角が高い場合は、画素部形成用塗工液を塗布した場合に、親液性領域においても画素部形成用塗工液をはじいてしまう可能性があり、例えばインクジェット法等により親液性領域上に画素部を形成することが難しくなる可能性があるからである。ここで、液体との接触角は、第1の態様において説明した方法により測定した値である。
本態様の分解除去層に用いることができる膜としては、具体的にはフッ素系や炭化水素系の撥液性を有する樹脂等による膜を挙げることができる。これらのフッ素系や炭化水素系の樹脂は、撥液性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、これらの樹脂を溶媒に溶解させ、例としてスピンコート法等の一般的な成膜方法により形成することが可能である。
また、本態様においては、機能性薄膜、すなわち、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜等を用いることにより、欠陥のない膜を形成することが可能であることから、このような成膜方法を用いることがより好ましいといえる。
ここで、本態様に用いられる自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜について具体的に説明する。
(i)自己組織化単分子膜
本態様に用いられる自己組織化膜形成能のある材料としては、例えば、脂肪酸などの界面活性剤分子、アルキルトリクロロシラン類やアルキルアルコキシド類などの有機ケイ素分子、アルカンチオール類などの有機イオウ分子、アルキルフォスフェート類などの有機リン酸分子などが挙げられる。分子構造の一般的な共通性は、比較的長いアルキル鎖を有し、片方の分子末端に透明基材表面と相互作用する官能基が存在することである。アルキル鎖の部分は分子同士が2次元的にパッキングする際の分子間力の源である。もっとも、ここに示した例は最も単純な構造であり、分子のもう一方の末端にアミノ基やカルボキシル基などの官能基を有するもの、アルキレン鎖の部分がオキシエチレン鎖のもの、フルオロカーボン鎖のもの、これらが複合したタイプの鎖のものなど様々な分子から成る自己組織化単分子膜が報告されている。また、複数の分子種から成る複合タイプの自己組織化単分子膜もある。また、最近では、デンドリマーに代表されるような粒子状で複数の官能基(官能基が一つの場合もある)を有する高分子や直鎖状(分岐構造のある場合もある)の高分子が一層透明基材表面に形成されたもの(後者はポリマーブラシと総称される)も自己組織化単分子膜と考えられる場合もあるようである。本態様は、これらも自己組織化単分子膜に含める。
(ii)ラングミュア−ブロジェット膜
本態様に用いられるラングミュア−ブロジェット膜(Langmuir-Blodgett Film)は、基材上に形成されてしまえば形態上は上述した自己組織化単分子膜との大きな相違はない。ラングミュア−ブロジェット膜の特徴はその形成方法とそれに起因する高度な2次元分子パッキング性(高配向性、高秩序性)にあると言える。すなわち、一般にラングミュア−ブロジェット膜形成分子は気液界面上に先ず展開され、その展開膜がトラフによって凝縮されて高度にパッキングした凝縮膜に変化する。実際は、これを適当な基材に移しとって用いる。ここに概略を示した手法により単分子膜から任意の分子層の多層膜まで形成することが可能である。また、低分子のみならず、高分子、コロイド粒子なども膜材料とすることができる。様々な材料を適用した最近の事例に関しては宮下徳治らの総説“ソフト系ナノデバイス創製のナノテクノロジーへの展望” 高分子 50巻 9月号 644-647 (2001)に詳しく述べられている。
(iii)交互吸着膜
交互吸着膜(Layer-by-Layer Self-Assembled Film)は、一般的には、最低2個の正または負の電荷を有する官能基を有する材料を逐次的に基材上に吸着・結合させて積層することにより形成される膜である。多数の官能基を有する材料の方が膜の強度や耐久性が増すなど利点が多いので、最近ではイオン性高分子(高分子電解質)を材料として用いることが多い。また、タンパク質や金属や酸化物などの表面電荷を有する粒子、いわゆる“コロイド粒子”も膜形成物質として多用される。さらに最近では、水素結合、配位結合、疎水性相互作用などのイオン結合よりも弱い相互作用を積極的に利用した膜も報告されている。比較的最近の交互吸着膜の事例については、静電的相互作用を駆動力にした材料系に少々偏っているがPaula T. Hammondによる総説“Recent Explorations in Electrostatic Multilayer Thin Film Assembly”Current Opinion in Colloid & Interface Science, 4, 430-442 (2000)に詳しい。交互吸着膜は、最も単純なプロセスを例として説明すれば、正(負)電荷を有する材料の吸着−洗浄−負(正)電荷を有する材料の吸着−洗浄のサイクルを所定の回数繰り返すことにより形成される膜である。ラングミュア−ブロジェット膜のように展開−凝縮−移し取りの操作は全く必要ない。また、これら製法の違いより明らかなように、交互吸着膜はラングミュア−ブロジェット膜のような2次元的な高配向性・高秩序性は一般に有さない。しかし、交互吸着膜及びその作製法は、欠陥のない緻密な膜を容易に形成できること、微細な凹凸面やチューブ内面や球面などにも均一に成膜できることなど、従来の成膜法にない利点を数多く有している。
また、分解除去層の膜厚としては、照射されるエネルギーにより分解除去される程度の膜厚であれば特に限定されるものではない。具体的な膜厚としては、照射されるエネルギーの種類や分解除去層の材料等により大きく異なるものではあるが、一般的には、0.001μm〜1μmの範囲内、特に0.01μm〜0.1μmの範囲内とすることが好ましい。
(透明基材)
次に、本実施態様に用いられる透明基材について説明する。本実施態様においては、例えば図1に示すように、透明基材1上に、上述した特性変化層2が形成される。
このような透明基材としては、従来よりカラーフィルタに用いられているものであれば特に限定されるものではないが、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。この中で特にコーニング社製7059ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、アクティブマトリックス方式によるカラー液晶表示装置用のカラーフィルタに適している。
本実施態様において、透明基材は通常透明なものを用いるが、反射性の基板や白色に着色した基板でも用いることは可能である。また、透明基材は、必要に応じてアルカリ溶出防止用やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施したものを用いてもよい。
また、本実施態様においては、上述した特性変化層が密着性向上物質、またはシランカップリング剤等を含有している場合には、透明基材は上記の中でも、例えば石英ガラス等の無機材料からなるものであることが好ましい。これは、上記特性変化層が上記遮光部と透明基材との密着性を向上させる機能を果たすという、本実施対応の利点を発揮することが可能となるからである。
(画素部)
次に、本実施態様に用いられる画素部について説明する。本実施態様に用いられる画素部は、上述した特性変化層の特性が変化した特性変化パターンに沿って形成されるものである。本実施態様においては、上記特性変化パターンの特性が変化した領域と特性が未変化の領域との特性の差を利用して、画素部が形成されたものであってもよいが、特性変化層の特性が変化した領域と、上記遮光部との特性の差を利用して画素部が形成されたものであってもよい。
このような画素部は、通常、赤(R)、緑(G)、および青(B)の3色で形成される。この画素部における着色パターン形状は、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の公知の配列とすることができ、着色面積は任意に設定することができる。
本実施態様において、この画素部を形成する材料は、画素部を着色する方法によって異なる。この画素部を着色する方法としては、例えば、公知の塗料をスプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の方法で塗布する塗布方式や、真空薄膜形式等を挙げることができるが、本実施態様においては、インクジェット方式により着色されることが好ましい。
これは、上述したような着色方式は、いずれも赤(R)、緑(G)、および青(B)の3色を着色するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題がある。インクジェット法により画素部を着色することにより、一回で全ての色を着色することが可能であり、このような問題が生じないためである。
このような画素部を形成するインクジェット方式のインクとしては、大きく水性、油性に分類されるが、本実施態様においてはいずれのインクであっても用いることができるが、表面張力の関係から水をベースとした水性のインクが好ましい。
本実施態様で用いられる水性インクには、溶媒として、水単独または水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒を用いることがきる。一方、油性インクにはヘッドのつまり等を防ぐために高沸点の溶媒をベースとしたものが好ましく用いられる。このようなインクジェット方式のインクに用いられる着色剤は、公知の顔料、染料が広く用いられる。また、分散性、定着性向上のために溶媒に可溶・不溶の樹脂類を含有させることもできる。その他、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤;防腐剤;防黴剤;pH調整剤;消泡剤;紫外線吸収剤;粘度調整剤:表面張力調整剤などを必要に応じて添加しても良い。
また、通常のインクジェットインクは適性粘度が低いためバインダ樹脂を多く含有できないが、インク中の着色剤粒子を樹脂で包むかたちで造粒させることで着色剤自身に定着能を持たせることができる。このようなインクも本実施態様においては用いることができる。さらに、所謂ホットメルトインクやUV硬化性インクを用いることもできる。
本実施態様においては、中でも硬化型インクを用いることが好ましく、特にUV硬化性インク、または熱硬化性インクを用いることが好ましい。
UV硬化性インクを用いることにより、インクジェット方式により着色して画素部を形成後、UVを照射することにより、素早くインクを硬化させることができ、すぐに次の工程に送ることができる。したがって、効率よくカラーフィルタを製造することができる。
このようなUV硬化性インクは、プレポリマー、モノマー、光開始剤及び着色剤を主成分とするものである。プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート、シリコンアクリレート等のプレポリマーのいずれかを特に限定することなく用いることができる。
モノマーとしては、スチレン、酢酸ビニル等のビニルモノマー;n−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー;ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピペリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能アクリルモノマーを用いることができる。上記プレポリマー及びモノマーは単独で用いても良いし、2種以上混含しても良い。
光重合開始剤は、イソブチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、1−フェニル−l,2−プロパジオン−2−オキシム、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、塩素置換ベンゾフェノン、ハロゲン置換アルキル−アリルケトン等の中から所望の硬化特性が得られるものを選択して用いることができる。その他必要に応じて脂肪族アミン、芳香族アミン等の光開始助剤;チオキサンソン等の光鋭感剤等を添加しても良い。
また、熱硬化性インクとしては、バインダ、及び、2官能または3官能のエポキシ基含有モノマーを少なくとも含有することを特徴とするものである。また、本実施態様に用いられる熱硬化性インクには、必要に応じて、着色剤、分散剤、硬化促進剤、或いは、その他の添加剤を含有するものであってもよい。ここで、上記熱硬化性インキ組成物に、インクジェット方式に適用するための適切な流動性、吐出性を付与するために、上記の各成分を溶剤(希釈剤)に溶解又は分散させてもよい。また、本実施態様に用いられる熱硬化性インクは、さらに上記熱硬化性インキ組成物に、上記2官能または3官能のエポキシ基含有モノマーと共に、4官能以上のエポキシ基含有樹脂を組み合わせたものであってもよい。
上記バインダとしては、それ自体は重合反応性のない樹脂、及び、それ自体が重合反応性を有する樹脂のいずれを用いてもよく、また、2種以上のバインダを組み合わせて用いても良い。
例えば重合反応性のない樹脂をバインダとして用いる場合には、熱硬化性インキ組成物中の2官能または3官能のエポキシ基含有モノマー、その他の熱硬化性成分等が、加熱により重合して硬化する。このような非重合性バインダとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレン、ポリスチレンマクロモノマー、及びポリメチルメタクリレートマクロモノマーの2種以上からなる共重合体等を用いることができる。
より具体的には、アクリル酸/ベンジルアクリレート共重合体、アクリル酸/メチルアクリレート/スチレン共重合体、アクリル酸/ベンジルアクリレート/スチレン共重合体、アクリル酸/メチルアクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体、アクリル酸/メチルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー共重合体、アクリル酸/ベンジルアクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体、アクリル酸/ベンジルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー共重合体、アクリル酸/2−ヒドロキシエチルアクリレート/ベンジルアクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体、アクリル酸/2−ヒドロキシエチルアクリレート/ベンジルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー共重合体、アクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、アクリル酸/メチルメタクリレート/スチレン共重合体、アクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、アクリル酸/メチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体、アクリル酸/メチルメタクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー共重合体、アクリル酸/ベンジルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体、アクリル酸/ベンジルメタクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー共重合体、アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体、アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー共重合体等のアクリル酸共重合体類を用いることができる。
またさらに、メタクリル酸/ベンジルアクリレート共重合体、メタクリル酸/メチルアクリレート/スチレン共重合体、メタクリル酸/ベンジルアクリレート/スチレン共重合体、メタクリル酸/メチルアクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体、メタクリル酸/メチルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー共重合体、メタクリル酸/ベンジルアクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体、メタクリル酸/ベンジルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー共重合体、メタクリル酸/2−ヒドロキシエチルアクリレート/ベンジルアクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体、メタクリル酸/2−ヒドロキシエチルアクリレート/ベンジルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー共重合体、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、メタクリル酸/メチルメタクリレート/スチレン共重合体、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、メタクリル酸/メチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体、メタクリル酸/メチルメタクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー共重合体、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー共重合体、メタクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体、メタクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー共重合体等のメタクリル酸共重合体類等を挙げることができる。
上記の非重合性バインダの中でも、特に、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、ベンジルメタクリレートマクロモノマー/スチレン共重合体、ベンジルメタクリレート/スチレンマクロモノマー共重合体などが好ましい。
一方、それ自体が重合性を有するバインダとしては、非重合性バインダの分子に、エポキシ基のような熱重合性の官能基を導入してなるオリゴマー又はオリゴマーよりも大分子量のポリマーを用いることができる。重合性バインダの分子は、バインダ同士で重合すると共に、2官能または3官能の多官能モノマー、及びその他の重合性モノマーとも重合して熱硬化する。
熱重合性のバインダとしては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−4,5−エポキシペンチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチルなどの(メタ)アクリレート類;o−ビニルフェニルグリシジルエーテル、m−ビニルフェニルグリシジルエーテル、p−ビニルフェニルグリシジルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどのビニルグリシジルエーテル類;2,3−ジグリシジルオキシスチレン、3,4−ジグリシジルオキシスチレン、2,4−ジグリシジルオキシスチレン、3,5−ジグリシジルオキシスチレン、2,6−ジグリシジルオキシスチレン、5−ビニルピロガロールトリグリシジルエーテル、4−ビニルピロガロールトリグリシジルエーテル、ビニルフロログリシノールトリグリシジルエーテル、2,3−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、3,4−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,4−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、3,5−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,6−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,3,4−トリヒドロキシメチルスチレントリグリシジルエーテル、及び、1,3,5−トリヒドロキシメチルスチレントリグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和結合とエポキシ基を含有するモノマーの1種または2種以上を重合させた単独重合体または共重合体を用いることができる。
また、上記のようなエチレン性不飽和結合とエポキシ基を含有するモノマーの1種または2種以上と、下記のようなエポキシ基を含有しないモノマーを重合させた共重合体も、熱重合性のバインダとして用いることができる。エポキシ基を含有しないモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレン、ポリスチレンマクロモノマー、及びポリメチルメタクリレートマクロモノマー等が挙げられる。
また、バインダは、熱硬化性インキ組成物の固形分全量に対して、通常、1〜50重量%の割合で配合する。ここで、配合割合を特定するための熱硬化性インキ組成物の固形分とは、溶剤を除く全ての成分を含み、液状の重合性モノマーも固形分に含まれるものとする。
ここで、図1等に示す本実施態様のカラーフィルタの例は、赤(R)、緑(G)、および青(B)の画素部を全て一層の特性変化層上に形成した例を示したものであるが、本実施態様はこれに限定されるものでなく、例えば、赤色画素部用の特性変化層、緑色画素部用の特性変化層、青色画素部用の特性変化層といったように複数層の特性変化層上に画素部が形成されたものをも含むものである。
(カラーフィルタ)
次に、本実施態様のカラーフィルタについて説明する。本実施態様のカラーフィルタは、上記透明基材と、その透明基材上に形成された上記特性変化層と、その特性変化層上に形成された遮光部と、上記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンに沿って画素部が形成されたものであれば、特に限定されるものではない。
ここで、本実施態様においては、上記画素部上に電極層や保護層、配向層等、必要に応じて様々な部材を有するものであってもよい。このような電極層や保護層、配向層等は、通常カラーフィルタに用いることが可能な材料を用いることが可能である。
2.第2実施態様
次に、本発明のカラーフィルタの第2実施態様について説明する。本発明のカラーフィルタの第2実施態様は、透明基材と、上記透明基材上に形成され、熱架橋型樹脂を含有する遮光部と、上記透明基材および上記遮光部を覆うように形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、上記特性変化層の特性が変化したパターンに沿って形成された画素部とを有するものである。
本実施態様のカラーフィルタは、例えば図3に示すように、透明基材1と、その透明基材1上に形成された遮光部3と、その遮光部3と透明基材1とを覆うように形成された特性変化層2と、その特性変化層2の特性が変化したパターン4上に形成された画素部5とを有するものである。
本実施態様によれば、上記遮光部が熱架橋型樹脂を含有するものであることから、例えば遮光部を熱転写法等によって形成されたものとすることができ、遮光部形成の際に、エネルギー照射により硬化させる必要がなく、架橋密度が高く強度の高いものとすることができるのである。これにより、画素部が形成される際に、画素部が混色等することを防ぐことができ、高精細な画素部を有するカラーフィルタとすることができるのである。
また本実施態様においては、上記特性変化層が形成されていることから、この特性変化層にエネルギーを照射することによって、特性変化層の特性を変化させることができ、この特性の差を利用して、例えばインクジェット法等により、容易に画素部が形成されたものとすることができるのである。ここで、本実施態様においては、上記特性変化層が上記遮光部を覆うように形成されていることから、上記透明基材側から全面にエネルギーを照射した場合、遮光部が形成された領域以外の特性変化層の特性を変化させることができる。これにより、画素部を形成するパターンと、遮光部が形成された領域以外のパターンとが同じ場合には、フォトマスク等を用いることなく、画素部を形成する領域のみの特性変化層の特性を変化させることができる。また、上記画素部を形成するパターンと、遮光部が形成された以外の領域のパターンとが異なる場合には、フォトマスク等を用いてエネルギーを照射することにより、目的とするパターン状に特性の変化したパターンを形成することができ、このパターンを利用して画素部が形成されたものとすることができる。
上述したようなカラーフィルタの各構成について、以下、それぞれ説明する。
(遮光部)
本実施態様に用いられる遮光部は、後述する透明基材上に形成されるものであり、熱架橋型樹脂を含有するものである。本実施態様においては、この遮光部が熱架橋型樹脂を含有するものであることから、例えば熱転写法により形成されたものとすることができ、架橋密度が高く強度の高い耐衝撃性を有するものとすることが可能となり、画素部の混色等を防ぐことができるのである。
ここで、本実施態様においては、後述する透明基材が例えばガラス等の無機材料からなる場合、遮光部と透明基材との密着性を向上させるために、例えばシランカップリング剤等を含有する密着性向上層が形成されることが好ましい。また、遮光部と透明基材の密着性が向上するからである。
なお、本実施態様に用いられる遮光部については、上述した第1実施態様に用いられる遮光部と同様であるので、ここでの説明は省略する。
(特性変化層)
次に、本実施態様に用いられる特性変化層について説明する。本実施態様に用いられる特性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、特性が変化する層であり、後述する画素部を、その特性が変化した領域と特性が未変化の領域との特性の差によって容易に形成可能なものであれば、特に限定されるものではない。
本実施態様においては中でも、上記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する層であり、かつ少なくとも光触媒およびバインダを含有する光触媒含有濡れ性変化層、上記特性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記特性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層、または、上記特性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記特性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、分解除去される分解除去層のいずれかの層であることが好ましい。これらの層については、上述した第1実施態様で用いられるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(透明基材)
次に、本実施態様に用いられる透明基材について説明する。本実施態様に用いられる透明基材は、例えば図3に示すように、透明基材1上に、上記遮光部3と上記特性変化層2とが形成されるものであり、これらを形成することが可能であれば、その材料等は特に限定されるものではなく、本実施態様において用いられる透明基材は、上述した第1実施態様と同様のものを用いることが可能であるので、ここでの説明は省略する。
ここで、本実施態様においては、上述したように、透明基材が無機材料である場合には、上記遮光部との密着性が悪い場合がある。この場合、透明基材上に密着性向上層を形成することが好ましく、このような密着性向上層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
(画素部)
次に、本実施態様に用いられる画素部について説明する。本実施態様に用いられる画素部は、上記特性変化層の特性が変化したパターンに沿って形成されるものである。本実施態様において用いられる画素部は、上述した第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
(カラーフィルタ)
本実施態様のカラーフィルタは、上記透明基材と、その透明基材上に形成された遮光部と、その遮光部と透明基材を覆うように形成された特性変化層と、その特性変化層の特性が変化したパターンに沿って形成された画素部とを有するものであれば、特に限定されるものではなく、必要に応じて、例えば電極層や保護層、配向膜等を有するものであってもよい。
B.カラーフィルタの製造方法
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法について説明する。本発明のカラーフィルタの製造方法は、4つの実施態様を有するものである。いずれの実施態様においても、熱転写法により遮光部を形成する遮光部形成工程と、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する層に、エネルギー照射を行って特性を変化させる工程と、上記遮光部の強度と上記の層の特性の差を利用して画素部を形成する画素部形成工程とを有するものである。
本発明においては、熱転写法により遮光部を形成することから、架橋密度が高く強度の高い遮光部を形成することが可能となり、この遮光部の強度を利用して、混色等のない画素部を形成することができるのである。また、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、例えば表面の濡れ性等の特性が変化する層を用いることから、エネルギー照射によって、表面の特性が変化したパターンを形成することができ、この特性の差を利用して、画素部を形成することができる。これにより、簡易な工程で高精細な画素部有するカラーフィルタを製造することができるのである。
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法について、各実施態様ごとに説明する。
1.第1実施態様
まず、本発明のカラーフィルタの製造方法における第1実施態様について説明する。本発明のカラーフィルタの製造方法における第1実施態様は、透明基材上に、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有濡れ性変化層を形成する光触媒含有濡れ性変化層形成工程と、
上記光触媒含有濡れ性変化層上に熱転写法により遮光部を形成する遮光部形成工程と、
上記光触媒含有濡れ性変化層にエネルギーを照射することにより、上記光触媒含有濡れ性変化層の濡れ性が変化した濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、
上記濡れ性変化パターン上に画素部を形成する画素部形成工程と
を有するものである。
本実施態様は、例えば図4に示すように、まず、透明基材1上に、光触媒含有濡れ性変化層2を形成する光触媒含有濡れ性変化層形成工程(図4(a))と、その光触媒含有濡れ性変化層2上に遮光部3を形成する遮光部形成工程(図4(b))を行う。続いて、光触媒含有濡れ性変化層2にエネルギー9を照射することによって(図4(c))、遮光部3の形成されていない領域の光触媒含有濡れ性変化層2の濡れ性が変化した濡れ性変化パターン4を形成する(濡れ性変化パターン形成工程(図4(d)))。次に、その濡れ性変化パターン4の濡れ性と、遮光部3の高さを利用して、画素部5を形成する画素部形成工程(図4(e))を行い、カラーフィルタを製造するものである。
本実施態様によれば、上記遮光部を熱転写法により形成することから、遮光部の架橋密度が高く強度を高いものとすることができ、画素部形成工程において、この遮光部の強度を利用して、混色等することのない画素部を形成することができるのである。
また、上記光触媒含有濡れ性変化層が形成されることから、画素部を形成するパターン状に光触媒含有濡れ性変化層の濡れ性を変化させることができ、この濡れ性の差を利用して、画素部形成工程において容易に画素部を形成することができるのである。
また、本実施態様においては、光触媒含有濡れ性変化層が例えばシランカップリング剤やオルガノポリシロキサン等を含有させることにより、光触媒含有濡れ性変化層が、透明基材と遮光部との密着性を向上させる層としての役割を果たすことができ、別途プライマー層等の密着性を向上させる層を形成する必要がないものとすることもできる。
また、本実施態様においては、上記遮光部の形成されていない領域のパターンと、画素部を形成するパターンとが同じ場合、上記光触媒含有濡れ性変化層上に遮光部が形成されていることから、画素部形成工程におけるエネルギー照射の際、全面からエネルギーを照射することにより、フォトマスク等を用いることなく、特性変化パターンを形成することも可能である。
以下、このような本実施態様のカラーフィルタの製造方法の各工程について説明する。
(光触媒含有濡れ性変化層形成工程)
まず、本実施態様の光触媒含有濡れ性変化層形成工程について説明する。本実施態様の光触媒含有濡れ性変化層形成工程は、透明基材上に光触媒含有濡れ性変化層を形成する工程である。
本実施態様において形成される光触媒含有濡れ性変化層は、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層でれば、特に限定されるものではないが、例えばオルガノポリシロキサン等の密着性向上物質、またはシランカップリング剤等を含有するものであることが好ましい。これにより、本工程により形成される光触媒含有濡れ性変化層を、後述する遮光部形成工程により形成される遮光部と、透明基材とを密着させる層として用いることが可能となり、プライマー層等の形成が必要ないものとすることができるからである。また、密着性を向上させることにより、遮光部の転写性も向上するからである。
また、本実施態様においては、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、濡れ性が変化した後の光触媒含有濡れ性変化層の液体との接触角と、後述する遮光部形成工程により形成される遮光部の液体との接触角とが、異なるものであることが好ましい。これにより、後述する画素部形成工程において、画素部を形成する画素部形成用塗工液を塗布した場合に、画素部形成用塗工液が遮光部には付着せず、光触媒含有濡れ性変化層の濡れ性が変化したパターンにのみ付着させることが可能となるからである。
このような光触媒含有濡れ性変化層を形成する工程は、光触媒およびバインダを、必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を透明基材上に塗布することにより行うことができる。塗布液の塗布方法としては、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法が挙げられ、バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合には、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有濡れ性変化層を形成することができる。
ここで本工程に用いられる透明基材、および光触媒含有濡れ性変化層の材料等については、上述した「A.カラーフィルタ」の第1実施態様で説明したものと同様のものを用いることが可能であるので、ここでの説明は省略する。
(遮光部形成工程)
次に、本実施態様における遮光部形成工程について説明する。本実施態様における遮光部形成工程は、上記光触媒含有濡れ性変化層上に熱転写法により遮光部を形成する工程である。
本工程により形成される遮光部は、本発明のカラーフィルタにおいて、ブラックマトリクスとして用いられるものであり、また後述する光触媒含有濡れ性変化パターン形成工程において、照射されるエネルギーを遮蔽する機能を果たすものとしても用いることができる。
本実施態様においては、この遮光部が熱転写法により形成されることにより、遮光部の架橋密度が高く強度を高いものとすることができ、遮光部の強度を利用して、後述する画素部形成工程において、容易に混色等のない画素部を形成することが可能となるのである。
本実施態様において、遮光部を形成する熱転写法としては、まず、熱転写シートを準備する。このような熱転写シートとしては、通常、透明なフィルム基材の片面に光熱変換層と遮光部転写層を設けたもの等が用いられる。また転写性を調整する目的で、光熱変換層と遮光部転写層との間に離型層や剥離層等を設けてもよく、また遮光部転写層上に接着層等を設けたもの等であってもよい。また、遮光部転写層が、転写の際に照射されるレーザー光等を吸収し、光熱変換層の機能を兼ね備える場合には、光熱変換層を省略してもよい。この場合は、フィルム基材と遮光部転写層との間に離型層や剥離層を設けてもよい。
このような熱転写シートに用いられるフィルム基材としては、後述する熱転写の際に照射されるレーザー光等の波長における光線透過率が60%以上、中でも80%以上である透明なフィルム基材であることが好ましい。具体的には、ポリエステルフィルムや、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。このようなフィルム基材の厚みとしては、3μm〜200μm程度、中でも50μm〜125μm程度であることが好ましい。3μmより厚みが薄い場合には、熱転写の際の転写感度が低下するからであり、200μmより厚みが厚い場合には、フィルムの搬送性が悪くなるからである。また、フィルム基材表面に設けられる光熱変換層や、離型層の接着性を上げるために、フィルム基材表面に易接着処理やコロナ処理を施したもの等であってもよい。
また、上記光熱変換層は、熱転写の際に照射されるレーザー光等を吸収して熱変換させる層であり、通常、熱転写の際に照射される波長を吸収する光線吸収材料や、結着剤等を含有する層とすることができる。このような光線吸収材料としては、例えば赤外線吸収剤等が挙げられ、特にカーボンブラックやチタンブラック等の無機粒子を用いることが好ましい。また、結着剤としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアリレート樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂や、これらの共重合樹脂、変性樹脂、電離照射線架橋樹脂、熱硬化樹脂等を用いることができる。本実施態様においては、これらの樹脂の中でも特に、熱分解温度が200℃以上の耐熱性が高い樹脂が、アブレーション耐性が高いことから好ましい。
上記光熱変換層における上記光線吸収材料と上記結着剤との含有比率は、光熱変換層内に含有される光線吸収材料の重量%を1とした場合に、光熱変換層内に含有される結着剤の重量%が0.5〜20の範囲内であることが好ましい。上記範囲内より上記光線吸収材料の含有量が多い場合には、塗膜強度が低下してアブレーションが発生しやすくなり、光熱変換層ごと転写し、転写時に汚れが発生する場合があり好ましくない。また、上記範囲内より光線吸収材料の含有量が少ない場合には、遮光部転写層の転写性が低下し、エッジの切れが悪くなること等から好ましくない。
ここで、上記光熱変換層の熱転写の際に照射される光の吸収率としては、50%以上であることが好ましく、中でも60%〜90%の範囲内であることが好ましい。上記範囲より低い場合には、光熱変換の効率が低くなり、エネルギーのロスが大きくなるからである。また、90%より高すぎる場合には、目標とする遮光部の線幅となる最適な転写エネルギーのマージンが狭くなり、描画精度が低下するからである。上記光の吸収率の測定は、分光光度計 UV−3100PC(島津製作所社製)にて行うことができる。
また、本実施態様においては、上記光熱変換層の膜厚が、0.5μm〜5.0μmの範囲内、中でも1.0μm〜3.0μmの範囲内であることが好ましい。0.5μmより厚みが薄い場合には、熱変換効率が低くなり、エネルギーのロスが大きくなるからである。また、5.0μmより厚みが厚い場合には、熱伝導性が低くなり、転写感度が低下したり、線幅の精度が低下するからである。
なお、上記遮光部転写層については、上述した「A.カラーフィルタ」の第1実施態様の遮光部の項で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記熱転写シートを用いた転写方法としては、上記遮光部転写層が上記光触媒含有濡れ性変化層側となるように配置してロール等による加圧や、真空密着法等によって密着させる。その後、遮光部を形成する領域にのみ、例えばレーザー発振器等によって、フィルム側からレーザー等を照射することにより、レーザー等が照射された部分の遮光部転写層が熱溶融もしくは軟化して転写されることとなる。したがって、レーザー等を照射した後、熱転写シートを剥離すると、レーザー光等が照射された部分の遮光部転写層のみが、光触媒含有濡れ性変化層上に転写されるのである。この方法によれば、あらかじめフィルムや光熱変換層等の上に上記遮光部転写層を形成しておくことから、遮光部形成の際に、遮光部をエネルギー照射により硬化させる必要がなく、架橋密度が高く強度の高い遮光部を容易に形成することができるのである。上記の転写方法として具体的には、例えばレーザー光を照射して光熱変換させるレーザー熱転写法や、発熱素子を設けたサーマルヘッドを用いる方法、ホットスタンピング法等が挙げられるが、解像性や高速転写性といった観点から、レーザー熱転写法を用いることが好ましい。
なお、上記方法により遮光部を形成した後、加熱処理を行うことが好ましい。これにより、転写された遮光部のカラーフィルタ適性を上げるためことができ、この加熱処理で遮光部を熱硬化させ、遮光部の架橋密度、及び光触媒含有濡れ性変化層への密着性を上げることにより、例えばITO成膜時・焼成時の加熱(例えば120℃〜230℃)による熱収縮ダメージを防止する耐熱性や、画素部を形成するためのインク、保護層を形成するための塗工液、ガラス基板の洗浄に用いられる洗浄液(例えばイソプロピルアルコール、γ−ブチルラクトン、N−メチル−ピロリドン、温純水等)といった各種の溶剤に対する耐溶剤性等を上げることができる。
(濡れ性変化パターン形成工程)
次に、本実施態様における濡れ性変化パターン形成工程について説明する。本実施態様における濡れ性変化パターン形成工程は、上記光触媒含有濡れ性変化層にエネルギーを照射することにより、上記光触媒含有濡れ性変化層の濡れ性が変化した濡れ性変化パターンを形成する工程である。本工程において、画素部を形成するパターン状にエネルギーを照射することにより、画素部が形成される領域を親液性領域、画素部が形成されない領域を撥液性領域とすることができ、容易に後述する画素部を形成することができるのである。
本工程において形成される光触媒含有濡れ性変化パターンが、遮光部が形成されていない領域のパターンと同じである場合には、全面からエネルギーを照射することにより、濡れ性変化パターンを形成することができる。これは、本実施態様においては、上記遮光部が光触媒含有濡れ性変化層上に形成されていることによるものであり、エネルギー照射された領域のみを親液性とすることができるのである。したがって、例えば上記光触媒含有濡れ性変化層を、上記遮光部の液体との接触角より小さくなるように、濡れ性が変化するような層とすることにより、例えばインクジェット法等によって、容易に画素部を形成することができる濡れ性変化パターンとすることができるのである。この場合には、エネルギーの照射を光触媒含有濡れ性変化層側から全面に行うものであってもよく、また透明基材側から全面に行うものであってもよい。
また、本工程において形成される濡れ性変化パターンは、例えば上記遮光部が形成されていない領域のパターンと異なるものであってもよく、この場合には、例えばフォトマスク等を用いてエネルギーを照射することにより、濡れ性変化パターンを形成することができるのである。
ここで、本実施態様でいうエネルギー照射(露光)とは、光触媒含有濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
本実施態様においては、エネルギー照射に用いる光の波長は、通常400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒含有濡れ性変化層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
ここで、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、光触媒含有濡れ性変化層表面の特性の変化が行われるのに必要な照射量とする。
またこの際、光触媒含有濡れ性変化層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な特性の変化を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
(画素部形成工程)
次に、本実施態様における画素部形成工程について説明する。本実施態様における画素部形成工程は、上記濡れ性変化パターン形成工程により形成された光触媒含有濡れ性変化層の濡れ性が変化した濡れ性変化パターン上に、画素部を形成する方法である。本実施態様においては、上記光触媒含有濡れ性変化層の濡れ性が変化した濡れ性変化パターンが形成されていることから、容易に画素部を形成することが可能となるのである。また、本実施態様によれば、上記遮光部の強度が高く、例えばインクジェット法等により画素部を形成した際、画素部が混色等することを防ぐことができ、高精細で混色等のない画素部を形成することが可能となるのである。
本工程における画素部の形成は、上記特性変化パターン上に画素部を形成することが可能であれば、特に限定されるものではなく、通常画素部を形成する方法を用いることができるが、本発明においては、インクジェット法を用いることが好ましい。これにより、赤(R)、緑(G)、および青(B)の3色を、一回の工程で容易に形成することができ、また混色等のない高精細な画素部とすることができるからである。この場合、用いるインクジェット装置としては、特に限定されるものではないが、帯電したインクを連続的に噴射し磁場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等の各種の方法を用いたインクジェット装置を用いることができる。
また、この際インクジェット法に用いられるインクの種類としては、UV硬化性インクまたは熱硬化性インク等の硬化型インクを用いることが好ましい。
ここで、本工程において画素部の形成に用いられるインク等については、上述した「A.カラーフィルタ」の画素部の項で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
2.第2実施態様
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法の第2実施態様について説明する。本実施態様のカラーフィルタの製造方法の第2実施態様は、透明基材上に、熱転写法により遮光部を形成する遮光部形成工程と、
上記透明基材および上記遮光部を覆うように、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有濡れ性変化層を形成する光触媒含有濡れ性変化層形成工程と、
上記光触媒含有濡れ性変化層にエネルギーを照射することにより、上記光触媒含有濡れ性変化層の濡れ性が変化した濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、
上記濡れ性変化パターン上に画素部を形成する画素部形成工程と
を有するものである。
本実施態様は、例えば図5に示すように、透明基材1上に、遮光部3を形成する遮光部形成工程(図5(a))と、その透明基材1および遮光部3を覆うように光触媒含有濡れ性変化層2を形成する光触媒含有濡れ性変化層工程(図5(b))を行う。次に、光触媒含有濡れ性変化層2に、例えばフォトマスク11を用いてエネルギー9を照射し(図5(c))、光触媒含有濡れ性変化層2の濡れ性が変化した濡れ性変化パターン4を形成する(濡れ性変化パターン形成工程(図5(d))。続いて、遮光部3の高さと、濡れ性変化層2の濡れ性変化パターン4とを利用して、画素部5を形成する画素部形成工程(図5(e))を行うことにより、カラーフィルタを製造するものである。
本実施態様によれば、上記遮光部を熱転写法により形成することから、遮光部の架橋密度が高く強度を高いものとすることができ、画素部形成工程において、この遮光部の強度を利用して、混色等することのない画素部を形成することができるのである。
また、上記光触媒含有濡れ性変化層が形成されることから、エネルギー照射を行うことにより、画素部を形成するパターン状に光触媒含有濡れ性変化層の濡れ性を変化させることができ、この濡れ性の差を利用して、画素部形成工程において容易に画素部を形成することができるのである。
以下、本実施態様のカラーフィルタの製造方法における各工程について、それぞれ説明する。
(遮光部形成工程)
まず、本実施態様の遮光部形成工程について説明する。本実施態様の遮光部形成工程は、透明基材上に、熱転写法により遮光部を形成する工程である。
本工程により形成される遮光部は、本発明のカラーフィルタにおいて、ブラックマトリクスとして用いられ、また後述する光触媒含有濡れ性変化パターン形成工程において、照射されるエネルギーを遮蔽する機能を果たすものとしても用いることができる。本実施態様においては、この遮光部が熱転写法により形成されることにより、遮光部の架橋密度が高く強度の高いものとすることができ、この遮光部の強度を利用して、後述する画素部形成工程において、容易に混色等のない画素部を形成することが可能となるのである。
なお、本工程における遮光部の形成方法や、透明基材、遮光部の材料等は、上述した第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
ここで、本実施態様においては、上記透明基材が例えばガラス等の無機材料である場合には、上記熱転写法により形成される遮光部との密着性が悪い場合がある。したがって、透明基材上、密着性を向上させる密着性向上層等を形成してもよく、このような密着性向上層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。また、密着性向上層は、遮光部の転写性を向上させる機能も有するものである。
(光触媒含有濡れ性変化層形成工程)
次に、本実施態様の光触媒含有濡れ性変化層形成工程について説明する。本実施態様の光触媒含有濡れ性変化層形成工程は、上記透明基材および上記遮光部を覆うように、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有濡れ性変化層を形成する工程である。
本実施態様において形成される光触媒含有濡れ性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する層であれば、特に限定されるものではない。
なお、本実施態様における光触媒含有濡れ性変化層の形成方法や、材料等は、上述した第1実施態様の光触媒含有濡れ性変化層形成工程で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(濡れ性変化パターン形成工程)
次に、本実施態様の濡れ性変化パターン形成工程について説明する。本実施態様の濡れ性変化パターン形成工程は、上記光触媒含有濡れ性変化層にエネルギーを照射することにより、上記光触媒含有濡れ性変化層の濡れ性が変化した濡れ性変化パターンを形成する工程である。
本実施態様で、エネルギー照射を行い、光触媒含有濡れ性変化層の濡れ性が変化した濡れ性変化パターンを形成することにより、後述する画素部形成工程により、容易にこの濡れ性の差を利用して、高精細な画素部を形成することができるのである。
ここで、本工程において、画素部のパターン状にエネルギーを照射する方法としては、例えば図5に示すように、フォトマスク11等を用いてエネルギー9を照射するものであってもよいが、濡れ性変化パターンが、遮光部が形成されていない領域のパターンと同じである場合には、例えば図6に示すように、上記透明基材側からエネルギーを照射することが好ましい。この透明基材側からエネルギーを照射する場合には、上記遮光部上に、上記光触媒含有濡れ性変化層が形成されていることから、フォトマスク等を用いることなく、上記遮光部が形成された領域以外の、光触媒含有濡れ性変化層の濡れ性を変化させることができるからであり、簡易な工程で濡れ性変化パターンを形成することができるからである。
なお、本実施態様のエネルギー照射の方法や、用いられるエネルギーについては、上述した第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
(画素部形成工程)
次に、本実施態様においては、上記濡れ性変化パターン上に画素部を形成する画素部形成工程が行われる。ここで、本実施態様における画素部形成の方法については、上述した第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
3.第3実施態様
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法における第3実施態様について説明する。本実施態様のカラーフィルタの製造方法は、透明基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、特性が変化する特性変化層を形成する特性変化層形成工程と、
上記特性変化層上に熱転写法により遮光部を形成する遮光部形成工程と、
上記特性変化層と、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板とを、上記光触媒処理層および上記特性変化層を間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射することにより、上記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程と、
上記特性変化パターン上に画素部を形成する画素部形成工程と
を有するものである。
本実施態様のカラーフィルタの製造方法は、例えば図7に示すように、まず透明基材1上に、特性変化層2を形成する特性変化層形成工程(図7(a))と、その特性変化層2上に遮光部3を形成する遮光部形成工程(図7(b))を行う。続いて、光触媒を含有する光触媒処理層6が基体7上に形成された光触媒処理層側基板8を準備する。この光触媒処理層側基板9の光触媒処理層6と、特性変化層2とを所定の間隙をおいて配置し、所定の方向からエネルギー9を照射することによって(図7(c))、遮光部3の形成されていない領域の特性変化層2の特性が変化した特性変化パターン4を形成する(特性変化パターン形成工程(図7(d)))。次に、その特性変化パターン4の特性と、遮光部3の高さを利用して、画素部5を形成する画素部形成工程(図7(e))を行い、カラーフィルタを製造するものである。
本実施態様によれば、上記遮光部を熱転写法により形成することから、遮光部の架橋密度が高く強度の高いものとすることができ、画素部形成工程において、この遮光部の強度を利用して、混色等することのない画素部を形成することができるのである。
また、上記特性変化層が形成されることから、光触媒処理層側基板と特性変化層とを対向させてエネルギーを照射することにより、光触媒処理層中に含有される光触媒の作用により、特性変化層の特性を変化させることができる。これにより、特性変化層の特性の差を利用して、画素部形成工程において容易に画素部を形成することができるのである。
また、本実施態様においては、上記特性変化層上に遮光部が形成されていることから、特性変化パターンとが同じ場合には、画素部形成工程におけるエネルギー照射の際、全面からエネルギーを照射することにより、遮光部が形成された領域以外の特性変化層の特性を変化させることができる。すなわち、フォトマスク等を用いることがなく、またエネルギーの照射方向もどの面からであってもよいことから、効率よく特性変化層の特性を変化させることができるのである。
また、本実施態様においては、特性変化層が例えばシランカップリング剤やオルガノポリシロキサン等を含有する場合には、特性変化層が、透明基材と遮光部との密着性を向上させる層としての役割を果たすことができ、別途プライマー層等の密着性を向上させる層を形成する必要がない、という利点も有する。
以下、本実施態様のカラーフィルタの製造方法の各工程について説明する。
(特性変化層形成工程)
まず、本実施態様の特性変化層形成工程について説明する。本実施態様の特性変化層形成工程は、透明基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、特性が変化する特性変化層を形成する工程である。
本実施態様において形成される特性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する層であれば、特に限定されるものではないが、本実施態様においては、後述する画素部形成工程において、画素部の形成が容易であるという面から、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層、またはエネルギー照射に伴う光触媒の作用により、分解除去される分解除去層であることが好ましい。
なお、上記濡れ性変化層および分解除去層については、上述した「A.カラーフィルタ」の第1実施態様で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本実施態様において、上述したように、上記遮光部が形成された領域以外のパターンと、特性変化パターンが同じである場合には、特性変化後の特性変化層の特性と、上記遮光部の特性とが異なるものであることが好ましい。これにより、遮光部と特性の変化した特性変化層の特性との差を利用して、容易に画素部を形成することができるからである。
また、特性変化層が、上記濡れ性変化層である場合には、濡れ性変化層中に例えばオルガノポリシロキサン等の密着性向上物質、またはシランカップリング剤等を含有するものであることが好ましい。これにより、本工程により形成される濡れ性変化層を、後述する遮光部形成工程により形成される遮光部と、透明基材とを密着させる層として用いることが可能となり、プライマー層等の形成が必要ないものとすることができるからである。また、遮光部の転写性が向上するという利点も有するからである。
(遮光部形成工程)
次に、本実施態様における遮光部形成工程について説明する。本実施態様における遮光部形成工程は、上記特性変化層上に熱転写法により遮光部を形成する工程である。本工程において形成される遮光部は、カラーフィルタにおけるブラックマトリックスとして用いられるものであり、また後述する特性変化パターン形成工程において、照射されるエネルギーを遮蔽する機能を果たすものとしても用いることができる。
本実施態様においては、この遮光部が熱転写法により形成されることにより、遮光部の架橋密度が高く、強度の高いものとすることができ、この遮光部の強度を利用して、後述する画素部形成工程において、容易に混色等のない画素部を形成することが可能となるのである。
なお、本工程における遮光部の形成方法や、透明基材、遮光部の材料等は、上述した第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
(特性変化パターン形成工程)
次に、本実施態様における特性変化パターン形成工程について説明する。本実施態様における特性変化パターン形成工程は、上記特性変化層と、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板とを、上記光触媒処理層および上記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、を照射することにより、上記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する工程である。
本実施態様においては、上記光触媒処理層側基板を上記特性変化層と所定の間隙を置いて配置し、所定の方向からエネルギーを照射することにより、画素部を形成するパターン状に上記特性変化層の特性を変化させる。
ここで、本実施態様においては、上記特性変化層上に、上記透明基材が形成されていることから、遮光部が形成された領域以外の領域と、特性変化パターンとが同じ場合には、全面からエネルギーを照射することにより、遮光部が形成された領域以外の特性変化層の液体との接触角を低下させることができる。すなわち、フォトマスク等を用いることがなく、また効率よく特性変化層の特性を変化させることができるのである。
以下、本工程に用いられる光触媒処理層側基板、およびエネルギーの照射について説明する。
(1)光触媒処理層側基板
まず、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板について説明する。
本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板は、少なくとも光触媒処理層と基体とを有するものであり、通常は基体上に所定の方法で形成された薄膜状の光触媒処理層が形成されてなるものである。また、この光触媒処理層側基板には、パターン状に形成された光触媒処理層側遮光部やプライマー層が形成されたものも用いることができる。
本実施態様においては、エネルギーを照射する際に、上記特性変化層と、上記光触媒処理層側基板における光触媒処理層とを所定の間隙をおいて対向させて配置してエネルギーを照射し、光触媒処理層側基板の光触媒処理層の作用によって特性変化層の特性を変化させた後、光触媒処理層側基板を取り外すことにより特性変化パターンが形成されるのである。以下、この光触媒処理層側基板の各構成について説明する。
a.光触媒処理層
本実施態様に用いられる光触媒処理層は、光触媒処理層中の光触媒が、対向する特性変化層の特性を変化させるような構成であれば、特に限定されるものではなく、光触媒とバインダとから構成されているものであってもよく、光触媒単体で製膜されたものであってもよい。また、その表面の特性は特に親液性であっても撥液性であってもよい。光触媒のみからなる光触媒処理層の場合は、特性変化層上の特性の変化に対する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒処理層の場合は、光触媒処理層の形成が容易であるという利点を有する。
ここで、本実施態様において用いられる光触媒処理層が、バインダを含有する場合は、上述した第1実施態様の光触媒含有濡れ性変化層と同様のものを用いることが可能であるので、ここでの説明は省略する。ただし、光触媒処理層として用いられる場合には、光触媒処理層上の濡れ性は特に変化する必要がないことから、バインダ自体に光触媒が作用することによる濡れ性の変化が生じない場合であっても、第1実施態様のように分解物質を光触媒処理層に含有させる必要がない。
一方、バインダを有さない場合の光触媒処理層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒処理層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒処理層とすることが可能であり、これにより特性変化層上の特性を均一に変化させることが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることが可能となる。
また、光触媒のみからなる光触媒処理層の他の形成方法としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
ここで、本実施態様において用いられる光触媒処理層は、例えば図7に示すように、基体7上に全面に形成されたものであってもよいが、例えば図8に示すように、基体7上に光触媒処理層6がパターン状に形成されたものであってもよい。
本実施態様においては、上記遮光部が上記特性変化層上に形成されていることから、特性変化パターンが、上記遮光部以外の領域全面に形成される場合には、基体全面に形成された光触媒処理層を用いて、全面にエネルギー照射することにより、特性変化パターンを形成することができるが、例えば特性変化パターンが、上記遮光部が形成されていない領域と異なるパターンの場合には、光触媒の作用をパターン状に特性変化層に及ぼす必要がある。そこで、このように光触媒処理層をパターン状に形成することにより、エネルギーを照射する際に、フォトマスク等を用いてパターン照射をする必要がなく、全面に照射することにより、特性変化層上に特性変化パターンを形成することができるのである。
この光触媒処理層のパターニング方法は、特に限定されるものではないが、例えばフォトリソグラフィー法等により行うことが可能である。
b.基体
本実施態様においては、図7に示すように、光触媒処理層側基板8は、少なくとも基体7とこの基体7上に形成された光触媒処理層6とを有するものである。この際、用いられる基体を構成する材料は、後述するエネルギーの照射方向等により適宜選択される。
また本実施態様に用いられる基体は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基材等であってもよい。これは、エネルギー照射方法により適宜選択されるものである。
なお、基体表面と光触媒処理層との密着性を向上させるために、基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
c.光触媒処理層側遮光部
本実施態様においては、上述したように、上記遮光部が形成されていない領域のパターンと、特性変化パターンが異なる場合には、特性変化層に光触媒の作用をパターン状に及ぼす必要がある。この場合、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板には、パターン状に形成された光触媒処理層側遮光部が形成されたものを用いても良い。このように光触媒処理層側遮光部を有する光触媒処理層側基板を用いることにより、エネルギー照射に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行う必要がない。したがって、光触媒処理層側基板とフォトマスクとの位置合わせが不要であることから、簡便な工程とすることが可能であり、また描画照射に必要な高価な装置も不必要であることから、コスト的に有利となるという利点を有する。
このような光触媒処理層側遮光部を有する光触媒処理層側基板は、光触媒処理層側遮光部の形成位置により、下記の二つの態様とすることができる。
一つが、例えば図9に示すように、基体7上に光触媒処理層側遮光部12を形成し、この光触媒処理層側遮光部12上に光触媒処理層6を形成して、光触媒処理層側基板とする態様である。もう一つは、例えば図10に示すように、基体7上に光触媒処理層6を形成し、その上に光触媒処理層側遮光部12を形成して光触媒処理層側基板とする態様である。
いずれの態様においても、フォトマスクを用いる場合と比較すると、光触媒処理層側遮光部が、上記光触媒処理層と特性変化層との配置部分の近傍に配置されることになるので、基体内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができることから、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
さらに、上記光触媒処理層上に光触媒処理層側遮光部を形成する態様においては、光触媒処理層と特性変化層とを所定の位置に配置する際に、この光触媒処理層側遮光部の膜厚をこの間隙の幅と一致させておくことにより、上記光触媒処理層側遮光部を上記間隙を一定のものとするためのスペーサとしても用いることができるという利点を有する。
すなわち、所定の間隙をおいて上記光触媒処理層と特性変化層とを対向させた状態で配置する際に、上記光触媒処理層側遮光部と特性変化層とを密着させた状態で配置することにより、上記所定の間隙を正確とすることが可能となり、そしてこの状態で光触媒処理層側基板からエネルギーを照射することにより、特性変化層上に特性変化パターンを精度良く形成することが可能となるのである。
このような光触媒処理層側遮光部の形成方法は、特に限定されるものではなく、光触媒処理層側遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このよう樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
なお、上記説明においては、光触媒処理層側遮光部の形成位置として、基体と光触媒処理層との間、および光触媒処理層表面の二つの場合について説明したが、その他、基体の光触媒処理層が形成されていない側の表面に光触媒処理層側遮光部を形成する態様も採ることが可能である。この態様においては、例えばフォトマスクをこの表面に着脱可能な程度に密着させる場合等が考えられ、特性変化パターンを小ロットで変更するような場合に好適に用いることができる。
d.プライマー層
次に、本実施態様の光触媒処理層側基板に用いられるプライマー層について説明する。本実施態様において、上述したように基体上に光触媒処理層側遮光部をパターン状に形成して、その上に光触媒処理層を形成して光触媒処理層側基板とする場合においては、上記光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層との間にプライマー層を形成してもよい。
このプライマー層の作用・機能は必ずしも明確なものではないが、光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層との間にプライマー層を形成することにより、プライマー層は光触媒の作用による特性変化層の特性変化を阻害する要因となる光触媒処理層側遮光部および光触媒処理層側遮光部間に存在する開口部からの不純物、特に、光触媒処理層側遮光部をパターニングする際に生じる残渣や、金属、金属イオン等の不純物の拡散を防止する機能を示すものと考えられる。したがって、プライマー層を形成することにより、高感度で特性変化の処理が進行し、その結果、高解像度のパターンを得ることが可能となるのである。
なお、本実施態様においてプライマー層は、光触媒処理層側遮光部のみならず光触媒処理層側遮光部間に形成された開口部に存在する不純物が光触媒の作用に影響することを防止するものであるので、プライマー層は開口部を含めた光触媒処理層側遮光部全面にわたって形成されていることが好ましい。
本実施態様におけるプライマー層は、光触媒処理層側基板の光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層とが接触しないようにプライマー層が形成された構造であれば特に限定されるものではない。
このプライマー層を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、光触媒の作用により分解されにくい無機材料が好ましい。具体的には無定形シリカを挙げることができる。このような無定形シリカを用いる場合には、この無定形シリカの前駆体は、一般式SiZ4で示され、Zはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物であり、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
また、プライマー層の膜厚は、0.001μmから1μmの範囲内であることが好ましく、特に0.001μmから0.1μmの範囲内であることが好ましい。
(2)エネルギー照射
次に、本工程におけるエネルギー照射について説明する。本実施態様においては、上記特性変化層と、上記光触媒処理層側基板における光触媒処理層とを、所定の間隙をおいて配置し、所定の方向からエネルギーを照射することにより、特性変化層の特性が変化したパターンを形成することができる。
上記の配置とは、実質的に光触媒の作用が特性変化層表面に及ぶような状態で配置された状態をいうこととし、実際に物理的に接触している状態の他、所定の間隔を隔てて上記光触媒処理層と特性変化層とが配置された状態とする。この間隙は、200μm以下であることが好ましい。
本実施態様において上記間隙は、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、したがって特性変化層の特性変化の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の特性変化層に対して特に有効である。
一方、例えば300mm×300mm以上といった大面積の特性変化層に対して処理を行う場合は、接触することなく、かつ上述したような微細な間隙を光触媒処理層側基板と特性変化層との間に形成することは極めて困難である。したがって、特性変化層が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して特性変化の効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに特性変化層上の特性変化にムラが発生しないといった効果を有するからである。
このように比較的大面積の特性変化層をエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒処理層側基板と特性変化層との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒処理層側基板と特性変化層とが接触することなく配置することが可能となるからである。
このように光触媒処理層と特性変化層表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より光触媒処理層と特性変化層との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に特性変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が特性変化層に届き難くなり、この場合も特性変化の速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒処理層と特性変化層とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができると共に、このスペーサが接触する部分は、光触媒の作用が特性変化層表面に及ばないことから、このスペーサを上述した特性変化パターンと同様のパターンを有するものとすることにより、特性変化層上に所定の特性変化パターンを形成することが可能となる。
本実施態様においては、このような配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
ここで、照射されるエネルギーの種類や、照射方法等については、上述した第1実施態様における濡れ性変化パターン形成工程の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(画素部形成工程)
次に、本実施態様においては、上記濡れ性変化パターン上に画素部を形成する画素部形成工程が行われる。ここで、本実施態様における画素部形成の方法については、上述した第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
4.第4実施態様
次に、本発明のカラーフィルタの第4実施態様について説明する。本発明のカラーフィルタの第4実施態様は、透明基材上に、熱転写法により遮光部を形成する遮光部形成工程と、
上記透明基材および上記遮光部を覆うように、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、特性が変化する特性変化層を形成する特性変化層形成工程と、
上記特性変化層と、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板とを、上記光触媒処理層および上記特性変化層を間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射することにより、上記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程と、
上記特性変化パターン上に画素部を形成する画素部形成工程と
を有するものである。
本実施態様のカラーフィルタの製造方法は、例えば図11に示すように、まず透明基材1上に、遮光部3を形成する遮光部形成工程(図11(a))と、その遮光部3および透明基材1とを覆うように特性変化層2を形成する特性変化層形成工程(図11(b))を行う。続いて、光触媒を含有する光触媒処理層6が基体7上に形成された光触媒処理層側基板8を準備する。この光触媒処理層側基板9の光触媒処理層6と、特性変化層2とを所定の間隙をおいて配置し、所定の方向からエネルギー9を照射することによって(図11(c))、遮光部3の形成されていない領域の特性変化層2の特性が変化した特性変化パターン4を形成する(特性変化パターン形成工程(図11(d)))。次に、その特性変化パターン4の特性と、遮光部3の高さを利用して、画素部5を形成する画素部形成工程(図11(e))を行い、カラーフィルタを製造するものである。
本実施態様によれば、上記遮光部を熱転写法により形成することから、遮光部の架橋密度が高く、強度の高いものとすることができ、画素部形成工程において、この遮光部の強度を利用して、混色等することのない画素部を形成することができるのである。
また、上記特性変化層が形成されることから、光触媒処理層側基板と特性変化層とを対向させてエネルギーを照射することにより、光触媒処理層中に含有される光触媒の作用により、特性変化層中の特性を変化させることができる。これにより、特性変化層の特性の差を利用して、画素部形成工程において容易に画素部を形成することができる。
以下、本実施態様のカラーフィルタの製造方法の各工程について説明する。
(遮光部形成工程)
まず、本実施態様の遮光部形成工程について説明する。本実施態様の遮光部形成工程は、透明基材上に、熱転写法により遮光部を形成する工程である。
本工程により形成される遮光部は、本発明のカラーフィルタにおいて、ブラックマトリクスとして用いられ、また後述する特性変化パターン形成工程において、照射されるエネルギーを遮蔽する機能を果たすものとしても用いることができる。
本実施態様においては、この遮光部が熱転写法により形成されることにより、遮光部の架橋密度が高く強度の高いものとすることができ、この遮光部の強度を利用して、後述する画素部形成工程において、容易に混色等のない画素部を形成することが可能となるのである。
なお、本工程における遮光部の形成方法や、透明基材、遮光部の材料等は、上述した第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
ここで、本実施態様においては、上記透明基材が例えばガラス等の無機材料である場合には、上記熱転写法により形成される遮光部との密着性が悪い場合がある。したがって、透明基材上、密着性を向上させる密着性向上層等を形成してもよく、このような密着性向上層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。また、密着性向上層は、遮光部の転写性を向上させる機能も有するものである。
(特性変化層形成工程)
次に、本実施態様の特性変化層形成工程について説明する。本実施態様の特性変化層形成工程は、上記透明基材および上記遮光部を覆うように、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、特性が変化する特性変化層を形成する工程である。
本実施態様において形成される特性変化層は、特に限定されるものではないが、本実施態様においては、後述する画素部形成工程において、画素部の形成が容易であるという面から、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層、またはエネルギー照射に伴う光触媒の作用により、分解除去される分解除去層であることが好ましい。
なお、上記濡れ性変化層および分解除去層については、上述した「A.カラーフィルタ」の第1実施態様で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(特性変化パターン形成工程)
次に、本実施態様における特性変化パターン形成工程について説明する。本実施態様における特性変化パターン形成工程は、上記特性変化層と、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板とを、上記光触媒処理層および上記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射することにより、上記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する工程である。
なお、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板や、エネルギーの照射については、上述した第3実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
ここで、本工程において、画素部のパターン状にエネルギーを照射する方法としては、例えば図11に示すように、フォトマスク11等を用いてエネルギー9を照射するものであってもよいが、特性変化パターンが、遮光部が形成されていない領域のパターンと同じである場合には、上記透明基材側からエネルギーを照射することが好ましい。この透明基材側からエネルギーを照射する場合には、上記遮光部上に、上記特性変化層が形成されていることから、フォトマスク等を用いることなく、上記遮光部が形成された領域以外の、特性変化層の濡れ性を変化させることができるからであり、簡易な工程で特性変化パターンを形成することができるからである。
(画素部形成工程)
次に、本実施態様においては、上記濡れ性変化パターン上に画素部を形成する画素部形成工程が行われる。ここで、本実施態様における画素部形成の方法については、上述した第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。