JP2008297132A - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】原料調達を安価で安定して行え、不純物濃度の低い高品質のシリコン単結晶を製造できるシリコン単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】シリコン単結晶製造用の原料として使用されないシリコン原料であるルツボ残シリコン塊8を石英ルツボ1a内に投入(a)したあと、溶融し(b)、この融液9からCZ法により原料シリコンインゴット10を引き上げる(c)、(d)。石英ルツボ1a内に残存している残存融液9aを石英ルツボ1aから排出する(e)。シリコン単結晶製造用に通常用いるシリコン原料11を石英ルツボ1a内に投入して溶融させる(f)。上記原料シリコンインゴット10を吊下げ支持して石英ルツボ1a内の初期シリコン融液に上方から供給して溶融する。原料シリコンインゴット10を保持していた種結晶7は、シリコン融液3の表面近傍で待機する(g)。上記種結晶7を浸漬して、シリコン融液3からシリコン単結晶4を引き上げる(h)、(i)。
【選択図】図5

Description

本発明は、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を製造するシリコン単結晶の製造方法に関し、特に、チョクラルスキー法によって引き上げた原料シリコンインゴットを原料として用いるシリコン単結晶の製造方法に関する。
半導体基板に用いられるシリコン単結晶を製造するには種々の方法があるが、その中でもチョクラルスキー法(以下、「CZ法」と記す)が広く採用されている。
図1は、CZ法によるシリコン単結晶の引き上げを実施するのに適した引き上げ装置の要部構成を模式的に示す図である。引き上げ装置はその外郭が図示しないチャンバで構成され、その中心部にルツボ1が配置されている。ルツボ1は二重構造になっており、有底円筒状をなす石英製の内層側容器(以下、「石英ルツボ」と記す)1aと、その石英ルツボ1aの外側を保持すべく嵌合された有底円筒状の黒鉛製の外層側容器(以下、「黒鉛ルツボ」と記す)1bとから構成されている。
ルツボ1は、回転及び昇降が可能な支持軸6の上端部に固定されている。ルツボ1の外側には、ルツボ1を取り囲むように抵抗加熱式のヒータ2が概ね同心円状に配設されている。ルツボ1の上方には、支持軸6と同一軸上で逆方向又は同一方向に所定の速度で回転するワイヤ等の引き上げ軸5が配設されており、引き上げ軸5の下端には種結晶7が取り付けられている。
このような引き上げ装置を用いて半導体用のシリコン単結晶の引き上げを行う際には、シリコン単結晶製造用の原料として使用されるロッド状、塊状又は粒状といった種々の形状の多結晶のシリコン原料を石英ルツボ1a内に所定量投入し、減圧下の不活性ガス雰囲気中でヒータ2による加熱により、そのシリコン原料をルツボ1内で溶融させる。これにより、ルツボ1内に融液3が貯留される。その後、ルツボ1内の融液3の表面に、引き上げ軸5の下端に保持された種結晶7を浸漬し、ルツボ1及び引き上げ軸5を回転させながら、引き上げ軸5を徐々に上方に引き上げる。これにより、種結晶7の下方にシリコン単結晶4が成長していき、概ね円柱状に育成した半導体用のシリコン単結晶4が得られる。
上記CZ法によって得られたシリコン単結晶4のインゴットについては、所定のブロックに切断される。この切断処理により発生した端材は、それ自体が高純度であることから、再び、半導体用のシリコン原料として再利用される。
一方、シリコン単結晶4を引き上げた後に石英ルツボ1aの底に残存するシリコン融液の凝固物(以下、「ルツボ残シリコン塊」と記す)は、太陽電池用のシリコン原料として利用される。この利用に際しては、太陽電池にとって有害な不純物である付着石英片を取り除くために、例えば、特許文献1では、石英が付着したルツボ残シリコン塊のようなシリコンを、回転式粉砕機を用いて所定の条件で粉砕した後、石英の多い粒度の小さい部分を篩い分けや比重分離により除去する石英除去方法が提案されている。
太陽電池用のシリコン原料としては、ルツボ残シリコン塊の他に、不純物濃度が高く半導体用のシリコン原料として要求される純度を満たさないもの等も使用される。これは、太陽電池用原料の品質規格が半導体用原料のそれに比べて大幅に緩く、シリコン原料中の不純物濃度が多少高くても支障がないことによるものである。
特開2002−37617号公報
ところで、半導体用のシリコン原料としては、不純物濃度の極めて低い高純度のものが必要であるが、近年、急激に需要が増大している太陽電池用のシリコン原料との取り合い等から、半導体用のシリコン原料が不足気味となり、その安定的な原料調達が困難な状況にある。
このような状況下において、半導体用のシリコン原料として、上記したシリコン単結晶インゴットの端材の再使用だけでは十分とは言えず、通常では使用されないルツボ残シリコン塊や不純物濃度の高い規格外原料等を使用できれば、安価で安定的な原料調達が可能となり、製造コスト低減の観点からも望ましいと言える。
しかし、それらルツボ残シリコン塊等をそのまま半導体用原料として使用した場合、以下のような問題を引き起こす。シリコン単結晶中の金属等の不純物濃度が極端に上がるだけでなく、カーボン濃度やライフタイム値が上昇して、規格を満たさない部位が発生する。更に、不純物濃度の著しく高いシリコン単結晶が後工程へ流れた場合、特にウェーハ加工工程等においてはその工程のライン全体が汚染され、ウェーハラインや工場全体にも汚染が広がるおそれもある。
そこで本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、原料調達を安価で安定して行え、不純物濃度の低い高品質のシリコン単結晶を製造できるシリコン単結晶の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ね、その過程で、CZ法による結晶育成中における不純物元素の偏析という現象に着目した。すなわち、引き上げ前のシリコン融液中に含まれる不純物は、引き上げの過程で固相のシリコン結晶と液相のシリコン融液とに振り分けられるが、シリコン結晶中ではシリコン融液中と比較して不純物濃度が極めて低くなる。最終的にルツボ内に残存したシリコン融液は、凝固してルツボ残シリコン塊となり、このルツボ残シリコン塊中では不純物濃度が極めて高くなる。
これは、固相のシリコン結晶及び液相のシリコン融液における不純物の溶解度が互いに異なることによるもので、その比である「固相中の溶解度/液相中の溶解度」は、偏析係数と称され、不純物濃度が小さいときは一定となる。
例えば、不純物が銅、アルミニウム、カーボンの場合、それぞれの偏析係数は下記の表1に示すとおりである。
Figure 2008297132
銅は、引き上げ装置の一部に使用されている元素であり、アルミニウムは、石英ルツボに不純物として含まれている元素である。また、カーボンは、石英ルツボを支える黒鉛ルツボや、ルツボの周囲に配設されたヒータ等といった引き上げ装置内のホットゾーンの部品として使用されている。これらの元素はいずれも不純物としてシリコン単結晶中に混入し易い。
図2は、シリコン単結晶育成における固化率と不純物濃度の関係を示す図である。不純物を銅、アルミニウム、カーボンとし、固化率gのときの固相中の不純物濃度〔C〕Sを与える公知の下記(1)式から求めたものである。「固化率」とは、結晶引き上げ前の石英ルツボ内のシリコン融液量に対するシリコン単結晶の質量比での比率である。
〔C〕S=k0〔C〕0(1−g)k0-1 ・・・(1)式
不純物の固相中での拡散を無視しているので、この(1)式から固化率の変化に対応した固相中の不純物濃度が得られる。(1)式において、k0は、各不純物の偏析係数、〔C〕0は、固化が始まる前の液相(石英ルツボ内のシリコン融液)中の不純物の初期濃度であり、銅、アルミニウム、カーボンのいずれについても、1×1015atoms/cm3とした。
図2中、縦軸はシリコン単結晶の不純物濃度であり、横軸は固化率である。
図2から明らかなように、固相すなわちシリコン結晶中における不純物濃度は、シリコン融液中での不純物濃度(1×1015atoms/cm3)に比べて著しく低い。また、銅、アルミニウム、カーボンのいずれについても、不純物濃度は、シリコン結晶のトップ側(固化率が0に近い側)では低く、固化率の上昇に従って徐々に高くなり、ボトム側(固化率が1.0に近い側)では急激に高くなっている。
そうすると、CZ法により結晶育成することによって、得られる結晶シリコンインゴット中の不純物濃度を低下させることができ、特に、固化率が1.0に近いボトム側を除けば、結晶シリコンインゴット中の平均不純物濃度を極めて低い値にすることができる。
このような不純物の偏析現象を踏まえて、ルツボ残シリコン塊や、その他の不純物濃度が高くて通常半導体用のシリコン原料として使用されていないシリコン原料を用いれば、不純物濃度の低下した結晶シリコンインゴットを得ることができる。つまり、半導体用原料すなわちシリコン単結晶製造用のシリコン原料として通常では使用されないシリコン原料を石英ルツボ内で溶融して、この融液からCZ法により結晶引き上げを行うことにより、当該原料からシリコン単結晶製造用のシリコン原料と同等の結晶シリコンインゴットを精製することができる。
そして、シリコン単結晶製造用のシリコン原料としてその結晶シリコンインゴット(以下、「原料シリコンインゴット」と記すことがある)を石英ルツボ内で溶融して、このシリコン融液からCZ法により結晶引き上げを行うことにより、不純物濃度の低い高品質のシリコン単結晶を得ることができる。
例えば、CZ法による結晶引き上げを2回行うこととし、1回目の引き上げで原料の精製を行い、得られた原料シリコンインゴットを再度、石英ルツボ内で溶融して、2回目の引き上げで製品となるシリコン単結晶を得るという操業方法を採用することが可能となる。この操業方法によれば、初段階で、半導体用原料としては使用されていないシリコン原料を用いて、高純度の原料シリコンインゴットを精製でき、次段階で、その原料シリコンインゴットを用いて、高品質のシリコン単結晶を製造することができる。
本発明はこのような技術思想に基づくものであり、その要旨は、以下のとおりである。
本発明によるシリコン単結晶の製造方法は、シリコン単結晶製造用の原料として使用されないシリコン原料を溶融し、この融液からCZ法により原料シリコンインゴットを引き上げる原料インゴット育成工程と、原料インゴット育成工程で得られた原料シリコンインゴットを吊下げ支持してルツボ内に上方から供給して溶融した後、このシリコン融液からCZ法によりシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶育成工程と、を含む。
このような構成にすれば、原料インゴット育成工程により、半導体用すなわちシリコン単結晶製造用の原料としては本来不適で使用されないシリコン原料を用いて、シリコン単結晶製造用の原料となる高純度の原料シリコンインゴットを精製でき、シリコン単結晶育成工程により、その原料シリコンインゴットを原料として用いて、不純物濃度の低い高品質のシリコン単結晶を製造できる。その際、原料インゴット育成工程でのシリコン原料に関しては、シリコン単結晶製造用のシリコン原料に限定されないため、原料調達を安価に安定して行える。しかも、シリコン単結晶育成工程では、原料シリコンインゴットを破砕等することなく吊下げ支持して溶融させるため、それに先駆けて原料シリコンインゴットの破砕工程や洗浄工程といった生産効率の低下要因となる工程が不要である。
ここで、シリコン単結晶育成工程での生産効率を高める観点から、前記シリコン単結晶育成工程において、前記原料シリコンインゴットを種結晶を介して吊下げ支持し、前記ルツボ内の前記シリコン融液に前記種結晶を引き続き浸漬して前記シリコン単結晶を引き上げることが好ましい。
更に、全体としての生産効率を高める観点から、前記原料シリコンインゴットは、前記原料インゴット育成工程の後において、種結晶を切り離さずに一体のまま構成されることが好ましい。
シリコン単結晶の生産性を向上させるためのいわゆるリチャージとして、前記シリコン単結晶育成工程において、予めチョクラルスキー法によりシリコン単結晶を引き上げ、その後、ルツボ内に残存している残存シリコン融液に前記原料シリコンインゴットを供給して溶融し、前記シリコン単結晶を引き上げることができる。
シリコン単結晶の生産性を向上させるためのいわゆる追加チャージとして、前記シリコン単結晶育成工程において、予めルツボ内に投入されて溶融している初期シリコン融液に前記原料シリコンインゴットを供給して溶融し、前記シリコン単結晶を引き上げることができる。
また、シリコン単結晶育成工程での生産効率を一層高める観点から、前記原料インゴット育成工程において、所定の重量別に分類された前記原料シリコンインゴットを作製し、前記シリコン単結晶育成工程において、前記シリコン単結晶の重量に応じた前記原料シリコンインゴットを選択して用いることが好ましい。
本発明のシリコン単結晶の製造方法によれば、原料調達を安価で安定して行え、不純物濃度の低い高品質のシリコン単結晶を製造できる。
以下に、本発明のシリコン単結晶の製造方法について、図面を参照しながら詳述する。
本発明のシリコン単結晶の製造方法は、大きくは、初段階の原料インゴット育成工程と、次段階のシリコン単結晶育成工程と、を含むものである。原料インゴット育成工程では、シリコン単結晶製造用の原料として使用されないシリコン原料を溶融し、この融液からCZ法により原料シリコンインゴットを引き上げる。シリコン単結晶育成工程では、原料インゴット育成工程で得られた原料シリコンインゴットを吊下げ支持してルツボ内に上方から供給して溶融した後、このシリコン融液からCZ法によりシリコン単結晶を引き上げる。
簡潔な例で言えば、CZ法による結晶引き上げを2回行うこととし、1回目の引き上げで原料の精製を行い、得られた原料シリコンインゴットを石英ルツボ内で溶融して、2回目の引き上げで製品となるシリコン単結晶を得るという製造方法である。
先ず、原料インゴット育成工程について説明する。
図3は、本発明のシリコン単結晶の製造方法における原料インゴット育成工程の流れを模式的に例示する図である。図3(a)に示すように、石英ルツボ1a内にシリコン単結晶製造用の原料として使用されないシリコン原料であるルツボ残シリコン塊8を投入し、図3(b)に示すように、そのシリコン原料を溶融させて融液9を得る。
続いて、図3(c)に示すように、石英ルツボ1a内の融液9の表面に種結晶7を浸漬して上方に引き上げる。これにより、図3(d)に示すように、種結晶7の下方にシリコン結晶が成長し、結晶シリコンインゴット10が得られる。
この結晶シリコンインゴット10は、前述したように、CZ法により結晶育成することによって精製されるため、不純物濃度が低く、シリコン単結晶製造用のシリコン原料と同等になっている。本発明のシリコン単結晶の製造方法では、こうして得られた結晶シリコンインゴット10を次段階のシリコン単結晶育成工程での原料として用いて、CZ法によりシリコン単結晶を製造する。その意味で、以下、その結晶シリコンインゴット10を原料シリコンインゴット10と記す。
ここで、原料インゴット育成工程で用いられる、シリコン単結晶製造用の原料として使用されないシリコン原料としては、図3で例示したルツボ残シリコン塊8の他に、不純物濃度が高くて要求純度を満たさない多結晶シリコン塊や、その他シリコン単結晶製造用の原料として直接使用できない様々なシリコン原料を用いることができる。なお、ルツボ残シリコン塊8には石英ルツボ1aから剥離した石英片が多く付着しており、使用に際しては、この石英片を除去する必要がある。そのためには、例えば、石英片が付着したルツボ残シリコン塊8をフッ酸に浸漬して石英片を溶解し、更にフッ硝酸でエッチングを行って原料表面に付着している汚染物を取り除き、最後に純水洗浄を行う方法が好適である。これにより、石英片を完全に除去できる。
原料シリコンインゴット10を得るための結晶育成時の条件に特に限定はない。高速育成、低速育成のいずれでもよいし、育成により得られる原料シリコンインゴット10が有転位、無転位のいずれであってもよい。使用する石英ルツボ1aは、新品のものに限定されず、一度、シリコン単結晶や原料シリコンインゴット10の引き上げに使用した使用済みのものを酸洗浄や高温熱処理を施して再生処理したものであってもよい。
また、育成する原料シリコンインゴット10の径についても何ら制約はない。従って、結晶育成の効率を高め、製造コストを低減するという観点から、できるだけ速い引き上げ速度で結晶成長を行う高速育成で、かつ育成可能な最大径の結晶が得られる条件で行うのが望ましい。また、原料シリコンインゴット10は、シリコン単結晶育成工程での原料として再度溶融されるため、無転位結晶が得られるような引き上げ条件でも、結晶が有転位化するような育成条件であってもよい。
但し、前記図2に示したように、原料シリコンインゴット10中の不純物濃度は固化率に従って変化する。一般に、固化率が低い原料シリコンインゴット10のトップ側では、不純物は低く、固化率が高いボトム側では不純物濃度が高くなる。一方、固化率をどの程度に採って引き上げを終了するかにより、原料シリコンインゴット10の歩留りが左右される。従って、原料インゴット育成工程では、原料シリコンインゴット10の不純物濃度と歩留りとの両者を勘案しつつ最適の固化率で引き上げを終了するのがよい。
特に、前記図2に示したように、結晶引き上げ開始前のシリコン融液中の各不純物(カーボン、銅、アルミニウム)の濃度を1×1015atoms/cm3とすると、結晶中に混入するこれらの元素の中で最も偏析係数の大きいカーボン(C)の場合、固化率が0.94(図2中の破線参照)の部位で、カーボン濃度は引き上げ開始前のシリコン融液中のカーボン濃度と等しくなる。固化率が0.94を超えると、カーボン濃度のより高い部位が発生するので、引き上げの際の固化率の上限は0.94とするのが望ましい。
また、原料インゴット育成工程で得られた原料シリコンインゴット10に関しては、例えば5kg、10kgといった所定の重量別に分類して製作することが望ましい。原料シリコンインゴット10は、詳細は後述するシリコン単結晶育成工程において、原料インゴット育成工程で得られた形のままで原料として用いるため、シリコン単結晶を引き上げる際に所望するシリコン融液の必要量に対し、これに見合った重量の原料シリコンインゴット10を適宜選択することができるからである。原料シリコンインゴット10の重量は、プルチャンバの上部に配設されて引き上げ軸5を回転及び昇降させる引き上げ駆動機構内のロードセルによって測定することができる。
このように、原料インゴット育成工程においては、半導体用すなわちシリコン単結晶製造用の原料としては本来不適で使用されないルツボ残シリコン塊等のシリコン原料を用いて、シリコン単結晶製造用の原料となる高純度の原料シリコンインゴットを精製できる。その際のシリコン原料に関しては、高純度で調達が困難なシリコン単結晶製造用のシリコン原料に限定されないため、原料調達を安価に安定して行える。
また、原料インゴット育成工程で用いられるシリコン原料としては、ルツボ残シリコン塊や、不純物濃度が高くてシリコン単結晶製造用の原料としての要求純度を満たさないシリコン原料のみを用いてもよいが、これらに、シリコン単結晶製造用に通常用いる不純物濃度の極めて低い高純度の多結晶シリコン原料を適宜混合して用いてもよい。また、原料インゴット育成工程では、1つの石英ルツボにて、シリコン原料の投入及び原料シリコンインゴットの引き上げを複数回繰り返し行ってもよい。
次に、シリコン単結晶育成工程について説明する。
図4は、本発明のシリコン単結晶の製造方法におけるシリコン単結晶育成工程の流れを模式的に例示する図である。図4(a)に示すように、石英ルツボ1aの上方に、上記の原料インゴット育成工程で得られた原料シリコンインゴット10を引き上げ軸5によって吊下げ支持する。このとき、引き上げ軸5の下端には種結晶7が取り付けられていて、原料シリコンインゴット10はその種結晶7を介して吊下げ支持されている。
続いて、図4(b)に示すように、引き上げ軸5を下降させて、石英ルツボ1a内に原料シリコンインゴット10を供給し、図4(c)に示すように、その原料シリコンインゴット10を溶融させてシリコン融液3を得る。このとき、原料シリコンインゴット10を保持していた種結晶7は、シリコン融液3の表面近傍に待機した状態にされる。
その後、図4(d)に示すように、待機状態の種結晶7を石英ルツボ1a内のシリコン融液3の表面に引き続き浸漬して、通常行われているシリコン単結晶の製造条件に従って上方に引き上げる。これにより、図4(e)に示すように、種結晶7の下方にシリコン単結晶4が成長して得られる。
こうしたシリコン単結晶育成工程により得られたシリコン単結晶4は、原料インゴット育成工程で得られた高純度の原料シリコンインゴット10を原料として用いて育成したものであるため、不純物濃度の低い高品質のものとなっている。
ここで、シリコン単結晶育成工程で原料として用いられる原料シリコンインゴット10に関しては、原料インゴット育成工程で得られた形のままで破砕等することなく吊下げ支持して溶融されるため、シリコン単結晶育成工程に先駆けて原料シリコンインゴット10を破砕したり付着物を洗浄したりする必要がなく、生産効率を低下させる要因となる工程が不要である。
また、シリコン単結晶育成工程において、原料シリコンインゴット10を保持していた種結晶7をそのままシリコン単結晶4の引き上げに兼用しているため、シリコン単結晶4の引き上げにあたり、改めて引き上げ軸5に種結晶を取り付ける手間は一切生じず、効率良くシリコン単結晶4を育成することができる。特に、原料インゴット育成工程において、引き上げた原料シリコンインゴット10からその引き上げに用いた種結晶7を切り離さずに、原料シリコンインゴット10と一体のまま確保しておき、シリコン単結晶育成工程においては、その原料シリコンインゴット10をこれと一体の種結晶7を介して吊下げ支持し、原料シリコンインゴット10の溶融後、その種結晶7を引き続きシリコン単結晶4の引き上げに用いるようにすれば、全体としてより一層生産効率が高まる。シリコン単結晶育成工程に先駆けて、原料シリコンインゴット10の上端に種結晶を取り付ける手間が省けるからである。
なお、原料シリコンインゴット10を育成した際の種結晶7とは、結晶方位あるいは直径サイズ等が異なる種結晶を使用してシリコン単結晶4を育成する場合には、予め、シリコン単結晶4を育成するための種結晶に直径を部分的に拡大、縮小させたコブ部を形成しておき、一方、原料シリコンインゴット10の上端部には前記種結晶のコブ部と嵌合する嵌合溝を形成しておき、これら双方を嵌合させるようにして、原料シリコンインゴット10の上端に種結晶を取り付けることが望ましい。これにより、シリコン単結晶4を育成する際、原料シリコンインゴット10を溶解後、引き続き種結晶を溶融液に浸漬させてシリコン単結晶4を育成することができ、生産効率を高めることができる。
もっとも、生産効率の際立つ向上を望まなければ、シリコン単結晶育成工程での原料シリコンインゴット10の吊下げ支持に種結晶7を用いなくてもよい。その場合、原料シリコンインゴット10は特別の治具を介して引き上げ軸5に連結されて吊下げ支持され、原料シリコンインゴット10を溶融した後、引き上げ軸5に改めてシリコン単結晶引き上げ用の種結晶を取り付けることになる。
このような原料インゴット育成工程とシリコン単結晶育成工程とを含むシリコン単結晶の製造方法によれば、原料インゴット育成工程により、安価で安定して調達できるシリコン原料を用いて、シリコン単結晶製造用の原料となる高純度の原料シリコンインゴットを精製でき、シリコン単結晶育成工程により、その原料シリコンインゴットを原料として用いて、不純物濃度の低い高品質のシリコン単結晶を製造できる。
このようなシリコン単結晶の製造方法は、シリコン単結晶の生産性を向上させるための操業手法として近年広く採用されている追加チャージやリチャージに適用することが可能である。追加チャージとは、シリコン単結晶を育成するにあたり、ルツボ内に初期投入されたシリコン原料を溶融した後、この初期シリコン融液にシリコン原料を追加投入する手法である。リチャージとは、シリコン単結晶を育成するにあたり、先のシリコン単結晶を引き上げた後、ルツボ内に残存している残存シリコン融液にシリコン原料を追加投入する手法である。
図5は、本発明のシリコン単結晶の製造方法を追加チャージに適用したときの一連の流れを模式的に例示する図である。図5(a)に示すように、石英ルツボ1a内にシリコン単結晶製造用の原料として使用されないシリコン原料であるルツボ残シリコン塊8を投入し、図5(b)に示すように、そのシリコン原料を溶融させて融液9を得る。
続いて、図5(c)に示すように、石英ルツボ1a内の融液9の表面に種結晶7を浸漬して上方に引き上げる。これにより、図5(d)に示すように、種結晶7の下方にシリコン結晶が成長し、原料シリコンインゴット10が得られる。このとき、原料シリコンインゴット10は、引き上げ装置の外部に取り出されることなく、そのまま引き上げ軸5によって種結晶7を介して吊下げ支持され、引き上げ装置の外郭を形成する図示しないメインチャンバ及びプルチャンバのうちの上方に配置されたプルチャンバ内に格納された状態におかれる。またこのとき、上記した引き上げ駆動機構内のロードセルにより、原料シリコンインゴット10の重量を測定する。
次に、図5(e)に示すように、原料シリコンインゴット10を引き上げた後に石英ルツボ1a内に残存している残存融液9aを、石英ルツボ1aから排出する。その残存融液9a中には不純物が多く残っているため、これがそのまま次のシリコン単結晶製造用の原料に加わるとすると、シリコン単結晶の品質に悪影響を及ぼしかねないからである。
その後、図5(f)に示すように、シリコン単結晶製造用に通常用いる高純度の多結晶シリコン原料11を石英ルツボ1a内に所定量投入して溶融させる。このときの多結晶シリコン原料11の投入量は、シリコン単結晶を引き上げる際に所望するシリコン融液の必要量から、上記測定した原料シリコンインゴット10の重量を差し引いた量である。
次いで、図5(g)に示すように、引き上げ軸5を下降させて、石英ルツボ1aの上方で種結晶7を介して吊下げ支持された状態にある原料シリコンインゴット10を、石英ルツボ1a内の初期シリコン融液に供給して溶融させ、シリコン融液3を得る。このとき、原料シリコンインゴット10を保持していた種結晶7は、シリコン融液3の表面近傍に待機した状態にされる。
そして、図5(h)に示すように、待機状態の種結晶7を石英ルツボ1a内のシリコン融液3の表面に引き続き浸漬して、通常行われているシリコン単結晶の製造条件に従って上方に引き上げる。これにより、図5(i)に示すように、種結晶7の下方にシリコン単結晶4が成長して得られる。
こうした追加チャージにより得られたシリコン単結晶4は、高純度の原料シリコンインゴット10を原料として用いて育成したものであるため、不純物濃度の低い高品質のものとなっている。また、ここでの追加チャージでは、精製した原料シリコンインゴット10を引き上げ装置の外部に取り出すことがないため、その分の作業時間を短縮できる。
図6は、本発明のシリコン単結晶の製造方法をリチャージに適用したときの一連の流れを模式的に例示する図である。図6(a)に示すように、シリコン単結晶製造用に通常用いる高純度の多結晶シリコン原料を石英ルツボ1a内に所定量投入して溶融させ、シリコン融液3を得る。続いて、図6(b)に示すように、石英ルツボ1a内のシリコン融液3の表面に種結晶7を浸漬して、通常行われているシリコン単結晶の製造条件に従って上方に引き上げる。これにより、図6(c)に示すように、種結晶7の下方にシリコン単結晶4が成長して得られる。
ここで得られたシリコン単結晶4は、シリコン単結晶製造用に通常用いる高純度のシリコン原料を原料として用いて育成したものであるため、不純物濃度の低い高品質のものとなっている。
次に、図6(d)に示すように、前記図3に示す原料インゴット育成工程にて予め精製して準備しておいた種結晶7Aを一体で備える原料シリコンインゴット10を、引き上げ軸5に付け替えて吊下げ支持する。このとき、石英ルツボ1a内には、先のシリコン単結晶4を引き上げた後の残存シリコン融液3aが残存している。この残存融液3a中には不純物がそれほど多く残っていないため、次のシリコン単結晶製造用の原料に加わっても、シリコン単結晶の品質に悪影響はない。
その後、図6(e)に示すように、引き上げ軸5を下降させて、原料シリコンインゴット10を石英ルツボ1a内の残存シリコン融液3aに供給して溶融させ、図6(f)に示すように、シリコン融液3を得る。このとき、原料シリコンインゴット10を保持していた種結晶7Aは、シリコン融液3の表面近傍に待機した状態にされる。
そして、図6(g)に示すように、待機状態の種結晶7Aを石英ルツボ1a内のシリコン融液3の表面に引き続き浸漬して、通常行われているシリコン単結晶の製造条件に従って上方に引き上げる。これにより、図6(h)に示すように、種結晶7Aの下方にシリコン単結晶4が成長して得られる。
こうしたリチャージにより得られたシリコン単結晶4も、高純度の原料シリコンインゴット10を原料として用いて育成したものであるため、不純物濃度の低い高品質のものとなっている。また、ここでのリチャージでは、重量別に分類して製作されていた原料シリコンインゴット10の中から、残存シリコン融液3aの量を勘案して、シリコン単結晶4を引き上げる際に所望するシリコン融液3の必要量に応じたものを選択して用いるようにすると、一層生産効率が高まる。
以上の原料インゴット育成工程とシリコン単結晶育成工程とを含むシリコン単結晶の製造方法に関し、以下の実施例からその有効性を明らかにした。
<原料インゴット育成工程>
内径22インチの石英ルツボを使用し、これにルツボ残シリコン塊120kgを仕込み、加熱溶融して得られたシリコン融液から高速又は低速で引き上げ育成を行って、直径200mmの原料シリコンインゴットを育成した。高速育成条件としては、結晶成長速度が1.3mm/minとなる育成条件を採用し、低速育成条件としては、結晶成長速度が0.4mm/minとなる育成条件を採用した。
得られた原料シリコンインゴットの固化率0.94(百分率表示で94%)位置での不純物(銅、アルミニウム及びカーボン)の濃度を調査した。
下記の表2に調査結果を示す。表2において、不純物濃度は、結晶Aにおける濃度をそれぞれ基準(1.0)として表示した。不純物濃度を表す数値は、結晶A〜結晶Dのいずれも5バッチの育成を行って得られた平均値である。
Figure 2008297132
表2から明らかなように、育成時の条件、すなわち高速育成、低速育成、有転位結晶、無転位結晶の違いによって、精製後の不純物濃度に差は認められなかった。
<シリコン単結晶育成工程>
原料シリコンインゴットを得るための原料として全量ルツボ残シリコン塊を使用し(ルツボ残シリコン塊100%)、上記原料インゴット育成工程での結晶Aの育成に用いた条件で原料となる原料シリコンインゴットを育成した。この原料シリコンインゴットを石英ルツボ内に供給して溶融させ、COP(Crystal Originated Particle:赤外線散乱体欠陥)が存在しない無欠陥結晶領域となる育成条件で製品となるシリコン単結晶を育成した。
得られたシリコン単結晶からサンプルウェーハを採取して品質評価を実施した。具体的には、サンプルウェーハの酸素濃度、比抵抗、OSF(Oxygen Induced Stacking Fault:酸化誘起積層欠陥)密度、LPD(Light Point Defect)密度及びBMD(Bulk Micro Defect:析出欠陥)密度を評価した。なお、比較のため、通常の高純度多結晶シリコンを原料として用いた場合(通常原料)についても同様の評価を行った。
品質評価は、以下の方法によって行った。
酸素濃度:ASTM F121−1979に規定される赤外吸収法に準拠し、フーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR:Fouerier Transform Infrared Spectrometer)を用いて測定した。
比抵抗:シリコンウェーハに対してドナーキラー熱処理(650℃×30分)を施した後、比抵抗測定器(四深針接触方式)により測定した。
OSF密度:シリコンウェーハを湿潤酸素(Wet−O2)雰囲気中で1100℃×16時間の熱処理を行った後、ウェーハ表面をエッチングしてウェーハ表面のOSF密度を光学顕微鏡で測定した。
LPD密度:セコエッチングしたウェーハ表面を、光散乱式パーティクルカウンタ(KLA−Tencor社製SP1)を用いて、ウェーハ表面に存在する200μmサイズ以上のLPD及び300μmサイズ以上のLPDの個数をカウントした。
BMD密度:シリコンウェーハに対して780℃×3時間、更に1000℃×16時間の熱処理を行った後、ウェーハを劈開して、その断面を2μmエッチングするライトエッチングを行った後、その断面におけるBMDの個数を光学顕微鏡でカウントした。
下記の表3に評価結果を示す。
Figure 2008297132
表3の結果から、得られたシリコン単結晶から採取したサンプルウェーハの品質は、原料シリコンインゴットを得るための原料としてルツボ残シリコン塊を使用しても、通常原料を使用した場合と差がないことがわかる。
本発明のシリコン単結晶の製造方法によれば、原料調達を安価で安定して行え、不純物濃度の低い高品質のシリコン単結晶を製造できる。よって、本発明は、CZ法によるシリコン単結晶の製造に極めて有用な技術である。
CZ法によるシリコン単結晶の引き上げを実施するのに適した引き上げ装置の要部構成を模式的に示す図である。 シリコン単結晶育成における固化率と不純物濃度の関係を示す図である。 本発明のシリコン単結晶の製造方法における原料インゴット育成工程の流れを模式的に例示する図である。 本発明のシリコン単結晶の製造方法におけるシリコン単結晶育成工程の流れを模式的に例示する図である。 本発明のシリコン単結晶の製造方法を追加チャージに適用したときの一連の流れを模式的に例示する図である。 本発明のシリコン単結晶の製造方法をリチャージに適用したときの一連の流れを模式的に例示する図である。
符号の説明
1 ルツボ
1a 石英ルツボ
1b 黒鉛ルツボ
2 ヒータ
3 融液
3a 残存融液
4 シリコン単結晶
5 引き上げ軸
6 支持軸
7、7A 種結晶
8 ルツボ残シリコン塊
9 融液
9a 残存融液
10 原料シリコンインゴット
11 多結晶シリコン原料

Claims (6)

  1. シリコン単結晶製造用の原料として使用されないシリコン原料を溶融し、この融液からチョクラルスキー法により原料シリコンインゴットを引き上げる原料インゴット育成工程と、
    原料インゴット育成工程で得られた原料シリコンインゴットを吊下げ支持してルツボ内に上方から供給して溶融した後、このシリコン融液からチョクラルスキー法によりシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶育成工程と、を含むことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  2. 前記シリコン単結晶育成工程において、前記原料シリコンインゴットを種結晶を介して吊下げ支持し、前記ルツボ内の前記シリコン融液に前記種結晶を引き続き浸漬して前記シリコン単結晶を引き上げることを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
  3. 前記原料シリコンインゴットは、前記原料インゴット育成工程の後において、種結晶を切り離さずに一体のまま構成されることを特徴とする請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法。
  4. 前記シリコン単結晶育成工程において、予めチョクラルスキー法によりシリコン単結晶を引き上げ、その後、ルツボ内に残存している残存シリコン融液に前記原料シリコンインゴットを供給して溶融し、前記シリコン単結晶を引き上げることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシリコン単結晶の製造方法。
  5. 前記シリコン単結晶育成工程において、予めルツボ内に投入されて溶融している初期シリコン融液に前記原料シリコンインゴットを供給して溶融し、前記シリコン単結晶を引き上げることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシリコン単結晶の製造方法。
  6. 前記原料インゴット育成工程において、所定の重量別に分類された前記原料シリコンインゴットを作製し、
    前記シリコン単結晶育成工程において、前記シリコン単結晶の重量に応じた前記原料シリコンインゴットを選択して用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシリコン単結晶の製造方法。
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