JP2008285718A - 溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2008285718A
JP2008285718A JP2007131116A JP2007131116A JP2008285718A JP 2008285718 A JP2008285718 A JP 2008285718A JP 2007131116 A JP2007131116 A JP 2007131116A JP 2007131116 A JP2007131116 A JP 2007131116A JP 2008285718 A JP2008285718 A JP 2008285718A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
stainless steel
less
ferritic stainless
temperature
hot
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2007131116A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5012194B2 (ja
JP2008285718A5 (ja
Inventor
Kunio Fukuda
國夫 福田
Yoshimasa Funakawa
義正 船川
Takumi Ugi
工 宇城
Hiroshi Yano
浩史 矢埜
Katsuhiro Kobori
克浩 小堀
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2007131116A priority Critical patent/JP5012194B2/ja
Publication of JP2008285718A publication Critical patent/JP2008285718A/ja
Publication of JP2008285718A5 publication Critical patent/JP2008285718A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5012194B2 publication Critical patent/JP5012194B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Abstract

【課題】溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、0.003%≦C≦0.010%、0.20%≦Si≦0.50%、Mn≦0.2%、P≦0.04%、S≦0.005%、0.02%≦Al≦0.15%、N≦0.010%、21.0%≦Cr≦25.0%、0.5%≦Mo≦1.3%、Ni≦0.5%、0.25%≦Nb≦0.5%を含み、かつ15≦Nb/(C+N)≦35であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、大きさが70nm以下のNbCまたはNb(CN)が存在していることを特徴とする溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板。
【選択図】なし

Description

本発明は、温水器用フェライト系ステンレス鋼板、特に、溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板とその製造方法に関する。
フェライト系ステンレス鋼板は、意匠性や耐食性に優れるため、建築物、輸送機器、家庭電化製品、厨房器具など、様々な用途に用いられている。特に、近年、ヒートポンプ方式の温水器缶体には、応力腐食割れの起きやすいオーステナイト系ステンレス鋼板に代わって、フェライト系ステンレス鋼板の使用される機会が多くなっている。温水器缶体は苛酷な腐食環境に曝されるため、CおよびN含有量を低減するとともに、Cr含有量を増加した高耐食性のフェライト系ステンレス鋼板が要求されているが、このようなフェライト系ステンレス鋼板を用いると、温水器缶体の製造工程で行われるTIG溶接やスポット溶接時に溶接熱影響部の結晶粒が粗大化し、溶接継手強度が著しく低下する。これは、ヒートポンプのように密閉され、従来の温水器などよりも過酷な正負の圧力が繰り返しかかる部材では、大きな問題となる。
そこで、フェライト系ステンレス鋼板を用いた溶接継手の高強度化のために、特許文献1には、質量%で、0.0005%≦C≦0.025%、10%≦Cr≦25%、0.0010%≦N≦0.025%、0.0005%≦Mg≦0.01%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、溶接部および溶接熱影響部の任意の断面に最大径が0.01μm以上5μm以下であるMgを含有する酸化物粒子が1個/mm2以上の密度で含まれる溶接性に優れたフェライト系ステンレス鋼薄板が開示されている。
特許文献2には、質量%で、0.0005%≦C≦0.08%、0.01%≦Si≦1%、0.01%≦Mn≦1%、P<0.04%、0.0001%≦S≦0.01%、10%≦Cr≦25%、0.005%≦N≦0.08%、0.0005%≦Mg≦0.01%を含有し、さらに0.01%≦Ti≦0.8%および0.005%≦Al≦0.2%のうち少なくとも1種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、TiおよびAlのうち少なくとも1種とMgを含み、2種類以上の組成からなる層構造を有し、最大径が0.05μm以上5μmである酸化物を、3個/mm2以上の分布密度で鋼中に含有することを特徴とする溶接性に優れたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献3には、質量%で、C≦0.03%、N≦0.025%およびO≦0.02%に規制した11%≦Cr≦35%を含むフェライト系ステンレス鋼であって、レーザ溶接部の酸素濃度および窒素濃度がそれぞれ250ppm以下および350ppm以下で、析出する炭化物および窒化物が平均粒径3μm以下で合計析出密度1×105個/mm2以下となるように、C量[%C]、N量[%N]、O量[%O]およびCr量[%Cr]の間に、[%C]+3[%N]+[%O]<(124.4-[%Cr])/1750の関係を維持させたレーザ溶接性に優れたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献4には、質量%で、0.001%≦C≦0.08%、0.01%≦Si≦1.0%、0.01%≦Mn≦2.0%、10.5%≦Cr≦32.0%、0.001%≦N≦0.04%、0.005%≦Al≦0.2%、0.001%≦Mg≦0.02%、0.001%≦O≦0.02%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶接性に優れたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
一方、温水器などの用途として耐食性を改善するための技術として、特許文献5には、質量%で、C≦0.08%、Si≦0.3%、Mn≦0.3%、13%≦Cr≦26%、N≦0.03%、P<0.015%、S<0.0010%、0.02%≦Al≦0.20%、残部実質的にFeからなる耐食性を主とする使用性能が優れたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献6には、質量%で、C≦0.025%、Si≦0.6%、Mn≦1.0%、P≦0.04%、S≦0.01%、Ni≦0.6%、16%≦Cr≦35%、0.3%≦Mo≦6%、N≦0.025%、0.01%≦Al≦0.5%、0.1%≦Nb≦0.6%、0.05%≦Ti≦0.3%、0.1%≦Cu≦1.0%を含み、かつこれらの成分の間に質量%において、C+N≦0.04、およびNb+Ti≧7(C+N)+0.15の関係が成立し、なおかつ次の式、B値=Cr+3(Mo+Cu)≧23.5、およびP値=5Ti+20(Al-0.01)≧1.5の関係が成立し、残部は実質的に鉄および不可避的不純物からなる溶接部の耐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献7には、質量%で、C≦0.003%、0.1%≦Si≦0.4%、Mn≦0.4%、P≦0.04%、S≦0.01%、16.0%≦Cr≦25.0%、0.8%≦Mo≦2.5%、N≦0.03%、0.1%≦Nb≦0.6%、0.05%≦Ti≦0.3%、0.01%≦Al≦0.5%を含み、かつNb、Ti、CおよびNの間にNb+Ti≧7(C+N)+0.15の関係が成立し、残部が実質的にFeからなるフェライト系ステンレス鋼板から構成され、胴体と上下の鏡板がかしめ接合されている耐食性に優れた温水器缶体が開示されている。
特許文献8には、質量%で、0.001%≦C≦0.02%、0.001%≦N≦0.02%、0.01%≦Si≦0.3%、0.05%≦Mn≦1%、P≦0.04%、0.15%≦Ni≦3%、11%≦Cr≦22%、0.01%≦Ti≦0.5%、0.0002%≦Mg≦0.002%を含み、0.5%≦Mo≦3.0%、0.02%≦Nb≦0.6%、0.1%≦Cu≦1.5%の条件で、Mo、Nb、Cuのうち1種または2種以上を、Cr+3Mo+6(Ni+Nb+Cu)≧23を満たす範囲で含み、残部がFeおよび不可避不純物からなる耐すきま腐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特開平11-256285号公報 特開2001-254153号公報 特開平7-286239号公報 特開平9-217151号公報 特開昭58-71356号公報 特開平10-81940号公報 特開2005-15816号公報 特開2006-257544号公報
しかしながら、特許文献1〜8に記載されたいずれのフェライト系ステンレス鋼においても、スポット溶接時に熱影響部となる板厚中央部もしくはTIG溶接時に熱影響部となるビード周辺部において結晶粒の粗大化が起こり、溶接継手強度が著しく低下する。
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、温水器用フェライト系ステンレス鋼板の溶接継手強度について詳細に調査した結果、以下の知見を得た。
i)従来技術にあるようなMg系の酸化物、TiまたはAlの酸化物では、溶接金属の結晶粒粗大化は防止できるが、熱影響部の結晶粒粗大化を必ずしも防止できず、高い溶接継手強度が必ずしも得られない。
ii)溶接熱影響部の結晶粒の粗大化を確実に防止し、継手強度を高めるには、溶接前の鋼板に大きさが70nm以下の微細なNbCまたはNb(CN)を析出させることが効果的である。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、質量%で、0.003%≦C≦0.010%、0.20%≦Si≦0.50%、Mn≦0.2%、P≦0.04%、S≦0.005%、0.02%≦Al≦0.15%、N≦0.010%、21.0%≦Cr≦25.0%、0.5%≦Mo≦1.3%、Ni≦0.5%、0.25%≦Nb≦0.5%を含み、かつ15≦Nb/(C+N)≦35であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、大きさが70nm以下のNbCまたはNb(CN)が存在していることを特徴とする溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板を提供する。
本発明のフェライト系ステンレス鋼板には、さらに、質量%で、0.005%≦Ti<0.02%および0.3%≦Cu≦0.6%のうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含有させることができる。
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、上記の成分組成を有する鋼スラブを1200℃以下の温度に加熱後、950℃以下の仕上温度で熱間圧延して熱延板とし、前記熱延板を500℃以下の巻取温度で巻取り、1030℃以下の温度で100秒以下の時間熱延板焼鈍を行った後、冷間圧延して冷延板とし、前記冷延板を850℃以上の温度で再結晶焼鈍を行うことを特徴とする方法により製造できる。
本発明により、溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板を製造できるようになった。
以下に、本発明であるフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法について詳述する。
1)成分組成(以下の「%」は、「質量%」を表す。)
0.003%≦C≦0.010%
Cは、Crと結合して固溶Cr量を減じて耐食性を劣化させるため、本発明ではNbCとして析出させるが、このNbCによって溶接継手の熱影響部の結晶粒粗大化が防止され、継手強度が高くなる。C量が0.003%を下回ると、十分な量のNbCが析出しないため、熱影響部の結晶粒粗大化を防止できない。一方、C量が0.010%を超えると、Cr炭化物が析出して耐食性に必要な固溶Cr量が少なくなるとともに、NbCが大きくなり熱影響部の結晶粒粗大化を防止できなくなる。このため、C量は0.003%以上0.010%以下とする。
0.20%≦Si≦0.50%
Siは、脱酸剤として必要な元素であるとともに、溶接部の耐食性の向上に有効な元素でもある。特に、溶接時の熱影響部で酸化されて緻密な皮膜を形成し、母材の耐食性の劣化を防止する。そのためには、Si量を0.02%以上とする必要がある。一方、Siは、固溶強化元素であり、その量が0.50%を超えると、鋼が硬質低延性化する。したがって、Si量は0.02%以上、好ましくは0.35%以上0.50%以下とする。
Mn≦0.2%
Mn量が0.2%を超えると、Sと結合しMnSを形成し、溶接継手の破壊の起点となる。このため、Mn量は0.2%以下とする。
P≦0.04%
P量が0.04%を超えると、鋼を顕著に固溶強化するとともに、粒界に偏析して脆性破壊を助長する。このため、P量は0.04%以下とする。
S≦0.005%
Sは、MnSとしてフェライト粒界に析出し、耐食性を劣化させるだけでなく溶接継手の破壊の起点となる。このため、S量は0.005%以下とする。
0.02%≦Al≦0.15%
Alは、脱酸剤であり、鋼の清浄度を向上させるためには積極添加が望まれる。また、Siと同様に、溶接時の熱影響部で酸化されて緻密な皮膜を形成し、母材の耐食性の劣化を防止する。こうした効果を得るためには、Al量は0.02%以上とする必要がある。一方、Al量が0.15%を超えると、結晶粒の粗大化を容易にするとともに、熱影響部の脆性破壊を招く。したがって、Al量は0.02%以上0.15%以下、好ましくは0.05%以上0.11%以下とする。
N≦0.010%
Nは、Cと同様に、Crと結合して固溶Cr量を減じて耐食性を劣化させるため、本発明ではNb(CN)あるいはTiNとして析出させるが、このNb(CN)によってスポット溶接継手の熱影響部の結晶粒粗大化が防止され、継手強度が高くなる。しかし、N量が0.010%を超えると、Nb(CN)が大きくなり、あるいはTiNが析出している場合は、TiNの周りにNbCが複合析出してNbCが大きくなって、熱影響部の結晶粒粗大化を防止できなくなる。このため、N量は0.010%以下とする。
21.0%≦Cr≦25.0%
Crは、ステンレス鋼表面に不動態被膜を形成し、耐食性を向上させる元素である。通常のフェライト系ステンレス鋼板は、SUS430に代表されるように、18%程度のCrを含有している。温水器缶体製造におけるTIG溶接などではガスシールドが十分でなく、ビード部などにCrを含むテンパーカラーと呼ばれる酸化皮膜が生成して、母材のCr濃度を低下させ、溶接部の耐食性を劣化させる。特に、1000℃以上で生成する酸化皮膜にはCrが選択的に多量に含まれ、温水中での溶接部の耐食性を極端に劣化させてしまう。そこで、本発明者等がこうした耐食性の極端な劣化を起こすCr量について検討したところ、Cr量が21.0%未満ではMoやその他の元素を添加しても、温水中での耐食性は不安定となり、すきま部などでは孔食の原因となることが明らかになった。一方、Cr量が25.0%を超えると、加工性が顕著に低下する。このため、Cr量は21.0%以上25.0%以下、好ましくは22.0%以上24.0%以下とする。
0.5%≦Mo≦1.3%
Mo量を0.5%以上にすると、耐食性が顕著に向上するが、1.3%を超えると、本発明のCr含有量の範囲では靭性が顕著に低下する。このため、Mo量は0.5%以上1.3%以下、好ましくは0.8%以上1.2%以下とする。
Ni≦0.5%
Niは、耐食性を向上させる元素であるが、その量が0.5%を超えると、鋼を硬質低延性化させる。このため、Ni量は0.5%以下とする。
0.25%≦Nb≦0.5%
Nbは、単独で添加された場合には主にNb(CN)を、Tiとともに添加された場合には主にNbCを形成する。Nb量が0.25%を下回ると、形成されるNb(CN)やNbCの量が少なくなり、粗大なFe炭化物やCr炭化物が析出しやすくなって、溶接継手の熱影響部の結晶粒粗大化が起こりやすくなる。一方、Nb量が0.5%を超えると、より高い温度でNb(CN)やNbCの析出が起こり、大きなNb(CN)やNbCが形成されやすくなり、熱影響部の結晶粒粗大化を抑制できなくなる。このため、Nb量は0.25%以上0.5%以下とする。
15≦Nb/(C+N)≦35
上述したように、Nbが単独で添加された場合には主にNb(CN)が形成されるが、Nb量がC+N量の15倍を下回ると、Nb(CN)の析出が不十分となり、Cr炭化物、Cr窒化物、Cr炭窒化物が析出し、耐食性が劣化する。一方、Nb量がC+N量の35倍を超えると、より高い温度でNb(CN)の析出が起こり、大きなNb(CN)が形成されやすくなり、溶接継手の熱影響部の結晶粒粗大化を抑制できなくなる。このため、Nb/(C+N)は15以上35以下とする。
残部は、Feおよび不可避的不純物であるが、次の理由により、さらに、質量%で、0.005%≦Ti<0.02%および0.3%≦Cu≦0.6%のうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含有させることができる。
0.005%≦Ti<0.02%
NbとともにTiを添加しても、Nb単独の場合と同様な効果を得ることができる。この場合、Tiは高温でTiNを形成するため、溶接継手の熱影響部の結晶粒粗大化はNbCによって抑制される。このような効果を得るためには、Ti量は0.005%以上にする必要があるが、Ti量が0.02%以上になると、粗大になりやすい(Nb,Ti)(CN)が析出するようになり、熱影響部の結晶粒粗大化を抑制できなくなる。このため、Ti量は0.005%以上0.02%未満とする。
0.3%≦Cu≦0.6%
Cuは、本発明鋼のようなC量が0.01%以下と少なく、Cr量が20%以上のフェライト系ステンレス鋼に対し、耐食性を向上させる働きがある。そのためには、Cu量を0.3%以上とする必要があるが、0.6%を超えると、CuSが粒界に析出して溶接継手の破壊の起点となる。このため、Cu量は0.3%以上0.6%以下とする。
なお、不可避的不純物として、B≦0.001%、V≦0.05%、Mg≦0.01%、Ca≦0.01%などが混入しても、本発明の効果は得られるが、これらの元素は少ないほど好ましい。
2)NbCまたはNb(CN)の大きさ
上述したように、NbCまたはNb(CN)が大きくなると、溶接継手の熱影響部の結晶粒粗大化を抑制できなくなる。熱影響部の結晶粒粗大化を効果的に抑制するには、NbCまたはNb(CN)の大きさを70nm以下とする必要がある。
3)製造条件
上述したように、本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、例えば、上記の成分組成を有する鋼スラブを1200℃以下の温度に加熱後、950℃以下の仕上温度で熱間圧延して熱延板とし、前記熱延板を500℃以下の巻取温度で巻取り、1030℃以下の温度で100秒以下の時間熱延板焼鈍を行った後、冷間圧延して冷延板とし、前記冷延板を850℃以上の温度で再結晶焼鈍を行うことにより製造できる。
鋼スラブの加熱温度:1200℃以下
鋼スラブの加熱温度が1200℃を上回ると、スラブの結晶粒が粗大化し、フェラト単相域で熱間圧延されるフェライト系ステンレス鋼では、圧延中の再結晶が起こりにくくなる。このため、冷間圧延、再結晶焼鈍後の結晶粒も粗大になり、溶接継手強度を十分に高めることができない。したがって、鋼スラブの加熱温度は1200℃以下とする。
熱間圧延の仕上温度:950℃以下
熱間圧延の仕上温度が950℃を上回ると、熱間圧延後に形成されるフェライト粒が粗大化しやすくなり、冷間圧延、再結晶焼鈍後の結晶粒も粗大になり、溶接継手強度を十分に高めることができない。したがって、熱間圧延の仕上温度は950℃以下とする。なお、仕上温度が低すぎると変形抵抗が大きくなり、圧延の負荷がかかるだけでなく、表面に圧延傷などが発生し、表面性状が悪化するため、熱間圧延の仕上温度は800℃以上とすることが好ましい。
巻取温度:500℃以下
熱間圧延後の巻取温度が500℃を上回ると、巻取り時にNbCまたはNb(CN)が析出し、冷間圧延、再結晶焼鈍後に微細なNbCまたはNb(CN)を得ることが困難となる。このため、巻取温度は500℃以下とする。なお、良好な形状の熱延板を得るために、巻取温度は350℃以上とすることが好ましい。
熱延板焼鈍:1030℃以下の温度で100秒以下
巻取り後の熱延板を焼鈍して、大きさが70nm以下の微細なNbCまたはNb(CN)を析出させ、それを冷間圧延、再結晶焼鈍後まで維持することにより、溶接継手強度を高めることができる。このとき、熱延板焼鈍の温度が1030℃を超えると、大きさが70nmを超える大きなNbCまたはNb(CN)が析出し、溶接継手強度を十分に高めることができない。また、焼鈍温度で100秒を超える時間保持すると、同様に、大きなNbCまたはNb(CN)が析出し、溶接継手強度を十分に高めることができない。このため、熱延板焼鈍は1030℃以下の温度で100秒以下の時間で行う。
再結晶焼鈍:850℃以上
熱延板焼鈍後の熱延板は、通常のステンレス鋼に対する酸洗によりスケールを除去した後、冷間圧延により冷延板とし、再結晶焼鈍を行う。このとき、再結晶焼鈍の温度が850℃未満だと、圧延方向に展伸した冷間圧延組織が残留しやすくなり、溶接継手強度が低下したり、再結晶が不十分なため、伸びが極端に低下する。このため、再結晶焼鈍は850℃以上で行う。なお、NbCまたはNb(CN)の粗大化防止の観点から、再結晶焼鈍は1000℃以下で行うことが好ましい。再結晶焼鈍後は、通常のステンレス鋼板と同様、酸洗が施される。さらに、降伏点伸びを消失させるために、再結晶焼鈍後に伸長率0.5%以上1.5%以下のスキンパス圧延を行うことが好ましい。
熱間圧延前の鋼の製造方法は、特に限定しないが、転炉、電気炉などで本願発明の範囲内の成分組成を有する鋼を溶製し、強攪拌真空酸素脱炭処理などにより二次精錬を行い、連続鋳造法などによってスラブにすればよい。
表1に示す化学成分の鋼No.1〜25を50kgの小型真空溶解炉で溶製し、鋼塊とした後、表2、3に示す熱延条件で、実験室的に、熱間圧延しその後保熱ボックスに装入して巻取り相当の熱処理を行い、板厚3mmの熱延板とした。この熱延板を、表2、3に示す熱延板焼鈍で焼鈍し、酸洗後、冷間圧延し、板厚0.8mmの冷延板とし、表2、3に示す焼鈍温度で再結晶焼鈍し、鋼板No.1〜30を作製した。そして、作製した鋼板No.1〜30に対し、以下の方法で、NbCまたはNb(CN)の大きさ、機械的性質、孔食電位を測定した。
NbCまたはNb(CN)の大きさ:鋼板の板厚中央部より薄膜をツインジェット法で作製し、透過型電子顕微鏡で観察して、その大きさを求めた。
機械的性質:作製した鋼板から引張方向が圧延方向に平行になるようにJIS 13号B引張試験片を採取し、歪速度10mm/minで引張試験を行って、引張強度TSおよび伸びElを求めた。また、作製した鋼板から幅30mmで長さ100mmの短冊を2本切り出し、短冊の長手方向にラップ代30mmで重ね、重なった30mm角の領域中央でスポット溶接を行った後、長手方向の両端部を引張試験機で引張り、最大荷重を測定し、引張剪断強さとした。なお、スポット溶接は、単相交流機を用い、電極:クロム/銅DR型、溶接電流:8kA、加圧力:400kgf、スクイズ:50cy/50Hz、通電時間:20cy/50Hz、通電後保持:50cy/50の条件で行った。こうして求めた引張剪断強さが7kN以上であれば、溶接継手強度として十分である。
孔食電位:鋼板から試験片を採取し、電極:1.6mmタングステン電極、溶接電圧:10V、溶接電流:60〜100A、溶接速度:600mm/min、表ビード側シールドガス:Ar(20L/min)、裏ビード側シールドガス:Ar+5%O2(20L/min)の条件で、裏ビード幅が2mm以上になるように、試験片にビード・オン・プレートのTIG溶接を行った。そして、JIS G 0577「ステンレ鋼の孔食電位測定方法」に基づき、温水器環境をシミュレートした85℃の200ppmNaCl溶液中で、溶接部の裏ビード面および溶接部から離れた部分(素材)の孔食電位を測定した。なお、試験前の試験片の研磨は行わず、また、溶液浸漬後10分間放置はせずに直ちに電位測定を行った。孔食電位は、非溶接部は溶解電流値が10μA/cm2になる電位Vc10(mV vs SCE)で、溶接部は溶解電流値が100μA/cm2になる電位Vc100(mV vs SCE)で評価した。こうして求めた溶接部の孔食電位(Vc100)が100mV以上であれば、溶接部の耐食性に優れるといえる。
結果を表2、3に示す。本発明の成分組成を有し、かつ70nm以下のNbCまたはNb(CN)が存在する鋼板No.2、3、5〜7、9〜12、15〜17、19、20、25では、引張剪断強さが7kN以上で、溶接継手強度が高く、溶接部の孔食電位が100mV以上で、溶接部の耐食性にも優れている。なお、70nm以下のNbCまたはNb(CN)が存在しても、Si、Al、Cr、Moの量が本発明範囲より低い鋼板No.21〜24では、7kN以上の引張剪断強さが得られるが、溶接部の孔食電位が著しく低く、溶接部の耐食性に劣っている。
Figure 2008285718
Figure 2008285718
Figure 2008285718

Claims (3)

  1. 質量%で、0.003%≦C≦0.010%、0.20%≦Si≦0.50%、Mn≦0.2%、P≦0.04%、S≦0.005%、0.02%≦Al≦0.15%、N≦0.010%、21.0%≦Cr≦25.0%、0.5%≦Mo≦1.3%、Ni≦0.5%、0.25%≦Nb≦0.5%を含み、かつ15≦Nb/(C+N)≦35であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、大きさが70nm以下のNbCまたはNb(CN)が存在していることを特徴とする溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板。
  2. さらに、質量%で、0.005%≦Ti<0.02%および0.3%≦Cu≦0.6%のうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含む成分組成を有することを特徴とする請求項1に記載の溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼スラブを1200℃以下の温度に加熱後、950℃以下の仕上温度で熱間圧延して熱延板とし、前記熱延板を500℃以下の巻取温度で巻取り、1030℃以下の温度で100秒以下の時間熱延板焼鈍を行った後、冷間圧延して冷延板とし、前記冷延板を850℃以上の温度で再結晶焼鈍を行うことを特徴とする溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
JP2007131116A 2007-05-17 2007-05-17 溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 Expired - Fee Related JP5012194B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007131116A JP5012194B2 (ja) 2007-05-17 2007-05-17 溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007131116A JP5012194B2 (ja) 2007-05-17 2007-05-17 溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2008285718A true JP2008285718A (ja) 2008-11-27
JP2008285718A5 JP2008285718A5 (ja) 2012-06-07
JP5012194B2 JP5012194B2 (ja) 2012-08-29

Family

ID=40145739

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007131116A Expired - Fee Related JP5012194B2 (ja) 2007-05-17 2007-05-17 溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5012194B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010202916A (ja) * 2009-03-02 2010-09-16 Nisshin Steel Co Ltd オーステナイト系ステンレス鋼との溶接部の耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼
JP2015030532A (ja) * 2013-08-07 2015-02-16 日新製鋼株式会社 薬液用大型タンク
JP2015506411A (ja) * 2011-12-22 2015-03-02 ティッセンクルップ ラッセルシュタイン ゲー エム ベー ハー リング型プルトップの製造方法およびリング型プルトップのための保護層が提供された鋼板の利用

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05271880A (ja) * 1992-03-26 1993-10-19 Nisshin Steel Co Ltd 耐候性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法
JP2003138349A (ja) * 2001-10-31 2003-05-14 Kawasaki Steel Corp 深絞り性に優れたフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法
JP2003155543A (ja) * 2001-11-19 2003-05-30 Nisshin Steel Co Ltd 深絞り性に優れ面内異方性の小さいフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法
JP2005015816A (ja) * 2003-06-23 2005-01-20 Nisshin Steel Co Ltd 耐食性に優れた温水器缶体
JP2005154862A (ja) * 2003-11-27 2005-06-16 Jfe Steel Kk 耐面歪み性に優れたフェライト系ステンレス鋼板
JP2006274332A (ja) * 2005-03-29 2006-10-12 Nisshin Steel Co Ltd 浴室用部品

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05271880A (ja) * 1992-03-26 1993-10-19 Nisshin Steel Co Ltd 耐候性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法
JP2003138349A (ja) * 2001-10-31 2003-05-14 Kawasaki Steel Corp 深絞り性に優れたフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法
JP2003155543A (ja) * 2001-11-19 2003-05-30 Nisshin Steel Co Ltd 深絞り性に優れ面内異方性の小さいフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法
JP2005015816A (ja) * 2003-06-23 2005-01-20 Nisshin Steel Co Ltd 耐食性に優れた温水器缶体
JP2005154862A (ja) * 2003-11-27 2005-06-16 Jfe Steel Kk 耐面歪み性に優れたフェライト系ステンレス鋼板
JP2006274332A (ja) * 2005-03-29 2006-10-12 Nisshin Steel Co Ltd 浴室用部品

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010202916A (ja) * 2009-03-02 2010-09-16 Nisshin Steel Co Ltd オーステナイト系ステンレス鋼との溶接部の耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼
JP2015506411A (ja) * 2011-12-22 2015-03-02 ティッセンクルップ ラッセルシュタイン ゲー エム ベー ハー リング型プルトップの製造方法およびリング型プルトップのための保護層が提供された鋼板の利用
US9623473B2 (en) 2011-12-22 2017-04-18 Thyssenkrupp Rasselstein Gmbh Method for producing a ring-pull top from a steel sheet provided with a protective layer and a ring-pull top produced thereby
JP2015030532A (ja) * 2013-08-07 2015-02-16 日新製鋼株式会社 薬液用大型タンク

Also Published As

Publication number Publication date
JP5012194B2 (ja) 2012-08-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5050863B2 (ja) 温水器用フェライト系ステンレス鋼板
KR100733016B1 (ko) Тi첨가 페라이트계 스테인레스 강판 및 그 제조방법
EP2639325B1 (en) Ferritic stainless steel with excellent oxidation resistance
WO2012018074A1 (ja) フェライト系ステンレス鋼
EP2787097A1 (en) Ferritic stainless steel
JP5119605B2 (ja) 溶接部の耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼
WO2011111871A1 (ja) 耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板並びに耐熱性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法
EP3587610B1 (en) Hot-rolled and annealed ferritic stainless steel sheet, and method for manufacturing same
JPWO2019189871A1 (ja) 二相ステンレスクラッド鋼板およびその製造方法
JP4998719B2 (ja) 打ち抜き加工性に優れる温水器用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法
KR20190003894A (ko) 액상금속취화 균열 저항성이 우수한 강판 및 그 제조방법
WO1996001335A1 (fr) Tole d&#39;acier au chrome a excellente formabilite a la presse
JP4905024B2 (ja) スポット溶接継手強度の高いフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法
JP5677819B2 (ja) 耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板
JP5935792B2 (ja) フェライト系ステンレス鋼
JP5012194B2 (ja) 溶接継手強度が高い温水器用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法
JP5401915B2 (ja) 抵抗スポット溶接の継手強度に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法
WO2021125283A1 (ja) 鋼板及びその製造方法
JP5590255B1 (ja) フェライト系ステンレス鋼
JPH0635615B2 (ja) 溶接部の耐食性にすぐれたフエライト系ステンレス鋼材の製法
JP2005008925A (ja) Mo含有オ−ステナイト系ステンレス鋼とその鋼材の製造法
JP4483089B2 (ja) 成形性と溶接熱影響部での加工性の双方に優れたCr含有耐熱耐食鋼板およびその製造方法
JP4254583B2 (ja) 溶接部の耐歪時効特性に優れたCr含有合金
JP2023145223A (ja) オーステナイト系ステンレス鋼材、鋼板、および鋼管ならびにその製造方法
JPH08291364A (ja) 重ね抵抗溶接継手強度に優れた極低炭素鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100422

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20120321

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120326

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20120327

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120413

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120508

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120521

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150615

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5012194

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees