JP2008285611A - 架橋ゲルの製造方法及びその架橋ゲル - Google Patents

架橋ゲルの製造方法及びその架橋ゲル Download PDF

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Abstract

【課題】吸水性が高く、粒径の大きな粒状架橋ゲルを簡便に効率よく製造できる方法、その方法で得られる架橋ゲル及びそのゲルで構成される吸水体を提供する。
【解決手段】カルボキシアルキルセルロース塩を酸で反応させ、塩を形成したカルボキシル基を遊離化する遊離化工程と、遊離化されたカルボキシアルキルセルロースから熱架橋した粒状のゲルを得る成形工程とを含む架橋ゲルの製造方法において、前記遊離化工程において、前記カルボキシアルキルセルロース塩を溶解可能な溶媒を用いて前記カルボキシアルキルセルロース塩を均一化し、前記成形工程において、均一化したカルボキシアルキルセルロースを特定の平均粒径を有する粒状に成形して架橋ゲルを製造する。この方法では、吸水性が高く、粒径の大きな粒状架橋ゲルを簡便に効率よく製造できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、吸水性(特に、塩を含む水に対する吸収性)、生分解性に優れ、廃棄物に含まれる水を吸収する吸水体として有用な架橋ゲルの製造方法、その方法で得られる架橋ゲル及びそのゲルで構成された吸水体、並びにその吸水体を用い、廃棄物を浄化処理する方法に関する。
従来から、水分含有量の高い廃棄物(例えば、食物残渣、汚泥、家畜糞尿など)の処理(例えば、堆肥化など)においては、水分量を低減するため、おがくずやもみ殻が使用されている。例えば、乳牛などの糞尿では、含水率が90%程度であるため、発酵させて堆肥化するためには、含水率を50〜60%程度まで低下させる必要がある。しかし、おがくずやもみ殻を用いて水分量を低減させる場合、おがくずやもみ殻を多量に添加する必要がある。そのため、添加量が少なくても、水を有効に吸収することができ、含水量の調整に有用な吸水体が必要とされている。また、限られたスペースであっても、効率よく処理(例えば、堆肥化)できるよう、優れた生分解性、液体保持性(又は保型性)も必要とされる。また、例えば、動物の糞尿を発酵させて堆肥化する場合には、糞尿に適度な空隙(又は通気孔)が必要であるため、空隙の形成を補助する吸水体も必要とされている。
特開2006−110537号公報(特許文献1)には、鹸化度が90モル%以上であり、かつ粒径が2〜20メッシュのポリビニルアルコール共重合体からなる家畜排泄物用処理剤が開示されている。しかし、この文献の処理剤では、粒状のポリビニルアルコール共重合体を原料としているため、液体を十分に吸収又は保持するためには、添加量を多くする必要がある。さらに、時間がたつにつれ吸湿するとともに、生分解に長期間必要とし、環境への負荷が懸念される。
また、水分含有量の高い廃棄物の処理に利用可能な液体吸収体の原料として、高吸収性樹脂(SAP)が知られている。しかし、従来の高吸収性樹脂(SAP)は、石油系の樹脂であるため、廃棄すると環境破壊に繋がるおそれがあった。
環境に負荷のかからない吸収体として、天然由来の樹脂を主成分とする吸収体も知られている。例えば、特開2005−95737号公報(特許文献2)には、セルロース誘導体及び/又はデンプン誘導体のペースト状物に放射線橋かけによって得られるハイドロゲル、その生乾きの半乾燥ゲル及び乾燥ゲルの少なくとも1種を含有物に添加し寒天状に固化させ堆肥及び/又は飼料化を可能にすることからなる含水物の固化処理方法が開示されている。しかし、この文献のゲルでは、ゲルを架橋するのに放射線を利用するため、製造設備が大掛かりになり、生産性、コスト面に問題がある。また、デンプン誘導体で構成されるゲルは、分解が速すぎるため、液体の保持性が十分でない。
特許第3274550号公報(特許文献3)には、カルボキシアルキルセルロースアルカリ金属塩および多価カルボン酸を水および親水性有機溶媒からなる混合溶媒中で加熱下に反応させて得られる反応生成物から該溶媒を除去した後130℃以上で加熱処理することによりカルボキシアルキルセルロースアルカリ金属塩架橋体(I)を調製し、次いで該架橋体(I)の水性ゲルを得た後、この水性ゲル中の水分を親水性有機溶媒で置換・脱水してから乾燥することを特徴とする吸収材の製法が開示されている。しかし、この文献の吸収材では、液体保持性には優れるものの、液体吸収性が不十分であり、含水量の多い廃棄物を処理する用途には不向きである。また、吸収材を製造する過程で、カルボキシアルキルセルロースアルカリ金属塩を低含水低級アルコール中で加熱しているため、特定の粒径のゲル(粒状のゲル)を形成することができない。その上、多くの操作(工程)を必要とするため、操作性に劣る。
また、特公昭60−22937号公報(特許文献4)には、同分子鎖中に遊離カルボン酸基を有し、遊離カルボン酸基とカルボン酸アルカリ金属塩の当量比が0.08:1〜3:1であり、カルボキシメチルセルロースアルカリ金属塩の架橋物よりなる吸収性素材が開示されている。なお、特公昭43−22880号公報(特許文献5)には、カルボキシメチルセルロース又はその塩の製造過程において、それが加熱乾燥に付される前の湿潤状態にあるとき、モノクロル酢酸、又はその塩から選ばれた少なくとも1種の化合物を少量添加し、しかる後加熱乾燥すれば、容易に、しかも各種エーテル化度のものでも、高粘度の水溶液を得ることが記載されている。この製造方法には、80%メタノールを含有する湿潤精製Na・CMCをニーダー中で撹拌しながら、MClA−Na(モノクロル酢酸ナトリウム)粉末を添加し、さらに撹拌後、乾燥させて粉砕する工程を含むことが記載されている。
しかし、特許文献4の吸収性素材は、カルボキシメチルセルロースアルカリ金属塩を高濃度のメタノールなどの低級アルコールで処理しているため、部分架橋したゲルの形状は、原料としての前記カルボキシメチルセルロースアルカリ金属塩の形状を保持しており、簡便に特定の粒径のゲル(粒状のゲル)を形成することができない。また、特許文献5の製造方法でも、Na・CMCを80%メタノールで処理して加熱しており、加熱後のNa・CMCも、原料としての前記Na・CMCの形状(粉末状)を保持しているため、特定の粒径の粒状ゲルは得られない。
特開2006−110537号公報(特許請求の範囲) 特開2005−95737号公報(特許請求の範囲) 特許第3274550号公報(特許請求の範囲) 特公昭60−22937号公報(特許請求の範囲、実施例) 特公昭43−22880号公報(発明の詳細な説明、実施例)
従って、本発明の目的は、吸水性が高く、粒径の大きな粒状架橋ゲルを簡便に効率よく製造できる方法、その方法で得られた架橋ゲル及びそのゲルで構成された吸水体を提供することにある。
本発明の他の目的は、高い吸水性を有するとともに、高い生分解性を有する架橋ゲルの製造方法、その方法で得られた架橋ゲル及びそのゲルで構成された吸水体を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、吸収した水の保持性(又は保型性)に優れ、廃棄物の処理に適した架橋ゲルの製造方法、その方法で得られた架橋ゲル及びそのゲルで構成された吸水体、並びにその吸水体を用い、廃棄物を浄化処理する方法を提供することにある。
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、カルボキシアルキルセルロース塩を酸で反応させ、塩を形成したカルボキシル基を遊離化する遊離化工程において、特定の溶解可能な溶媒を用いて前記カルボキシアルキルセルロース塩を均一化した後、次の工程で熱架橋し、かつ粒状に成形すると、吸水性が高く、粒径の大きな粒状架橋ゲルを簡便に効率よく製造できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の架橋ゲルの製造方法は、カルボキシアルキルセルロース塩を酸で反応させ、塩を形成したカルボキシル基を遊離化する遊離化工程と、遊離化されたカルボキシアルキルセルロースから熱架橋した粒状のゲルを得る成形工程とを含む架橋ゲルの製造方法であって、前記遊離化工程において、前記カルボキシアルキルセルロース塩を溶解可能な溶媒を用いて前記カルボキシアルキルセルロース塩を均一化し、前記成形工程において、均一化したカルボキシアルキルセルロースを平均粒径が0.1mm以上の粒状の架橋ゲルに成形する方法である。
本発明の方法において、前記カルボキシアルキルセルロース塩を溶解可能な溶媒は、水及びポリオール類から選択される少なくとも1種であってもよい。前記溶媒の割合は、塩を形成したカルボキシアルキルセルロース100重量部に対し、5〜1000重量部程度であってもよい。また、前記酸の割合は、塩を形成したカルボキシアルキルセルロース100重量部に対し、0.005〜100重量部程度であってもよい。さらに、酸型化率0.01〜75%(例えば、0.05〜70%)及び平均エーテル化度0.2〜2.5を有するカルボキシメチルセルロースを用いて、平均粒径が0.1〜20mmの粒状である前記架橋ゲルを製造してもよい。
本発明には、前記方法で製造された架橋ゲルも含まれる。前記ゲルは、吸水倍率が、15〜200倍程度であり、吸水したゲルの平均粒径と吸水する前のゲルの平均粒径との割合が、前者/後者=1/1〜50/1(例えば、2/1〜20/1)程度であってもよい。
さらに、本発明には、前記ゲルで構成されている吸水体及び前記吸収体を用いて、廃棄物を浄化処理する方法も含まれる。
なお、本明細書において、「均一化」とは、「種々の形状(例えば、粉粒状、繊維状など)のカルボキシアルキルセルロースが溶媒に溶解又は溶融して前記形状を消失し、粘性の塊状となる」ことを意味する。また、「水」とは、特に断りのない限り、塩を含まない水に限られず、塩を含む水をも意味する。さらに、「カルボキシアルキルセルロース」とは、塩を形成していないカルボキシアルキルセルロースのみならず、カルボキシアルキルセルロース塩を含む意味に用いる。
本発明の方法では、カルボキシアルキルセルロースを溶解(又は溶融)可能な溶媒を用いて前記カルボキシアルキルセルロースを均一化するとともに、前記カルボキシアルキルセルロースを加熱して架橋処理し、特定の形状(又は形態)に成形することにより、吸水性が高く、粒径の大きな架橋ゲルを簡便に製造できる。また、得られた架橋ゲルは、生分解性及び吸収した水の保持性(又は保型性)にも優れるため、添加する量が少量であっても、廃棄物に含まれる水を簡便に高レベルで吸収できる。特に、廃棄物処理においては、おがくず、もみ殻などの生分解性の吸水材の量を低減できるとともに、適度な空隙を形成でき、省スペースで、効率よく浄化処理ができる。
[架橋ゲルの製造方法]
本発明の架橋ゲルの製造方法では、カルボキシアルキルセルロース塩を酸で反応させ、塩を形成したカルボキシル基を遊離化する遊離化工程と、遊離化されたカルボキシアルキルセルロースから熱架橋した粒状のゲルを得る成形工程とを含む。以下、各工程を詳細に説明する。
(遊離化工程)
遊離化工程は、カルボキシアルキルセルロース塩を酸で処理又は反応させ、塩を形成したカルボキシル基を遊離化する工程であって、この工程では、カルボキシアルキルセルロースの塩において、塩を形成したカルボキシル基を遊離のカルボキシル基に変換するとともに、前記カルボキシアルキルセルロースを溶解(又は溶融)可能な溶媒を用いて均一化(又は混練)する。この工程において、カルボキシアルキルセルロース塩に対して親和性の低い溶媒を用いて、酸で遊離のカルボキシル基に変換した後、前記カルボキシアルキルセルロース塩を、均一化可能な溶媒を用いて均一化してもよく、又は、カルボキシアルキルセルロース塩を、均一化可能な溶媒を用いて均一化した後、酸で遊離のカルボキシル基に変換してもよいが、カルボキシル基への変換効率、操作性、簡便性の点から、前記均一化可能な溶媒を用いて、前記カルボキシアルキルセルロース塩を均一化可能な系で、酸を用いて塩を形成したカルボキシル基を遊離のカルボキシル基に変換するのが好ましい。
原料になる前記カルボキシアルキルセルロース塩は、例えば、セルロース(木材パルプ、リンターパルプなど)を、慣用の方法、例えば、アルカリと反応させてアルカリセルロースを生成させる工程(アルカリセルロース化工程)、得られたアルカリセルロースをエーテル化剤(カルボキシアルキルエーテル化剤)と反応させる工程(エーテル化工程)を経て製造できる。なお、使用するセルロースは、粉粒状、繊維状などであってもよい。
前記アルカリセルロース化工程としては、例えば、スラリー法(高液倍率法)やニーダー法(低液倍率法)などの慣用の方法が利用できる。アルカリセルロース化工程において使用されるアルカリとしては、前記塩に対応する化合物、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属の水酸化物;マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニアなどが挙げられる。これらのアルカリのうち、アルカリ金属水酸化物(特に水酸化ナトリウム)を用いる場合が多い。なお、アルカリは、通常、水溶液の形態で使用される。アルカリの使用量は、セルロース100重量部に対して、例えば、10〜100重量部、好ましくは30〜80重量部、さらに好ましくは40〜70重量部程度であってもよい。
前記アルカリセルロース化工程は、適当な溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノールなど)、ケトン類(アセトンなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)などが例示できる。
前記エーテル化工程(カルボキシアルキル化工程)で使用されるエーテル化剤としては、カルボキシアルキルセルロースの種類に応じて選択でき、例えば、ハロカルボン酸(モノクロロ酢酸、モノクロロプロピオン酸又はこれらの塩など)などが挙げられる。また、エーテル化工程も、前記アルカリセルロース化工程と同様に、前記例示の溶媒の存在下で行ってもよい。
このエーテル化工程を経た段階で、通常、カルボキシアルキルセルロースの塩(酸型化率0%の塩)が得られる。得られるカルボキシアルキルセルロースとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースなどのカルボキシC1−2アルキルセルロースなどが挙げられる。前記カルボキシアルキルセルロースは、塩を形成していてもよい。このようなカルボキシアルキルセルロース塩としては、通常、一価の塩が挙げられ、例えば、アルカリ金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アンモニウム塩、アミン塩などが例示できる。これらのカルボキシアルキルセルロース塩のうち、アルカリ金属塩、特にナトリウム塩が好ましい。これらのカルボキシアルキルセルロースは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。好ましいカルボキシアルキルセルロースは、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース塩(特に、カルボキシメチルセルロースナトリウム)である。
カルボキシアルキルセルロース(特に、カルボキシメチルセルロース)の平均エーテル化度(カルボキシアルキル基の平均エーテル化度)(又は平均置換度、DS)は、例えば、0.2〜2.5、好ましくは0.25〜1.5、さらに好ましくは0.3〜1、特に0.35〜0.9(例えば、0.4〜0.8)程度であってもよい。前記範囲の平均エーテル化度を有するカルボキシアルキルセルロースを用いると、ゲルの吸水性、強度を容易に向上することができる。なお、「平均置換度」とは、セルロースを構成するグルコース単位の2,3および6位のヒドロキシル基に対する置換度(置換割合、特に、塩を形成していてもよいカルボキシアルキル基の置換度)の平均であり、最大値は3である。
また、前記カルボキシアルキルセルロースの1重量%水溶液(イオン交換水溶液)粘度は、B型粘度計を用いて、60rpmおよび25℃の条件下で測定したとき、例えば、500mPa・s以上(例えば、600〜20000mPa・s程度)、好ましくは800mPa・s以上(例えば、900〜18000mPa・s程度)、さらに好ましくは1000mPa・s以上(例えば、1200〜15000mPa・s程度)であってもよい。
なお、前記カルボキシアルキルセルロース又はその塩(架橋していないカルボキシアルキルセルロース又はその塩)の形状(又は形態)は、例えば、粉粒状、繊維状などであってもよく、例えば、乾燥した粉末(パウダー)状、湿綿状(エーテル化後の湿潤状態のカルボキシアルキルセルロース塩)などであってもよい。前記カルボキシアルキルセルロース塩は、市販品を使用してもよく、慣用の方法を利用(又は応用)して製造したものを使用してもよい。
このようなカルボキシアルキルセルロース塩は、前記カルボキシアルキルセルロース塩を溶解(又は溶融)可能な溶媒を用いて、塩を形成したカルボキシル基が遊離のカルボキシル基に変換されるのが好ましい。前記溶媒は、常温下で液体である媒体に限られず、加熱(加温)条件下で液体(又は液状)である媒体であってもよい。このような溶媒として、例えば、水及びポリオール類から選択される少なくとも1種であってもよい。ポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2―4アルカンジオール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの数平均分子量150〜1000程度のポリエチレングリコール類;三価以上のポリオール類(例えば、グリセリン、トリメチロールエタンなどの脂肪族C3−10トリオール類;ペンタエリスリトールなどのペンタエリスリトール類;糖アルコール類[例えば、エリスリトールなどのテトリトール類;アラビトール、リビトール(アドニトール)、キシリトールなどのペンチトール類;ソルビトール、マンニトール、イジトール、グリトール、タリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、アロズルシトール(アリトール)、アルスリトールなどのヘキシトール類など]などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの溶媒のうち、水、C2―4アルカンジオール類(特に、エチレングリコールなど)、ポリエチレングリコール類、糖アルコール類(特に、キシリトール、マンニトールなど)などが好適に使用される。なお、前記溶媒として、例えば、水、C2―4アルカンジオール類(特に、エチレングリコールなど)、低分子量(例えば、数平均分子量150〜500程度)のポリエチレングリコール類などを使用する場合には、遊離化工程は常温下で行われてもよく、一方、糖アルコール類(特に、キシリトール、マンニトールなど)、高分子量(例えば、数平均分子量500〜1000程度)のポリエチレングリコール類などを使用する場合には、遊離化工程は加熱(又は加温)条件下で行われてもよい。
前記溶媒の割合(又は、使用量)は、前記カルボキシアルキルセルロース塩100重量部に対し、5〜1000重量部、好ましくは8〜900重量部、さらに好ましくは10〜800重量部程度であってもよい。なお、前記カルボキシアルキルセルロース塩を溶解(又は溶融)可能な限り、必要に応じて他の溶媒、例えば、低級脂肪族アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど);ポリオール類;ケトン類(例えば、アセトンなど);エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど);セロソルブ類;カルビトール類などの水溶性有機溶媒などを含んでいてもよい。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、塩を形成したカルボキシル基を遊離のカルボキシル基に変換するための酸としては、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など)であってもよく、有機酸(例えば、カルボン酸、スルホン酸など)であってもよい。安全性の点から、有機酸(特に、カルボン酸)が好適に使用される。なお、前記カルボン酸は、ギ酸、酢酸などの一価カルボン酸であってもよく、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸などの多価カルボン酸(ヒドロキシカルボン酸を含む)であってもよい。これらの酸は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましい酸は、ギ酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸である。
酸の割合(又は、使用量)は、前記カルボキシアルキルセルロースの酸型化率に応じて調整でき、塩を形成したカルボキシアルキルセルロース100重量部に対し、例えば、0.005〜100重量部、好ましくは0.007〜70重量部、さらに好ましくは0.01〜65重量部、特に0.015〜55重量部(例えば、0.018〜50重量部)程度であってもよい。前記溶媒の下で、前記割合の酸を使用すると、前記カルボキシアルキルセルロースの酸型化率を0.01〜75%、好ましくは0.05〜70%、さらに好ましくは0.1〜60%(特に0.5〜50%)程度に調整することができる。また、吸水性に優れる点から、前記酸型化率を、低めの酸型化率(例えば、0.01〜5%、好ましくは0.05〜4%、さらに好ましくは0.6〜2.5%程度)に調整してもよい。この場合、前記酸の割合(又は、使用量)は、塩を形成したカルボキシアルキルセルロース100重量部に対し、例えば、0.005〜1重量部、好ましくは0.01〜0.8重量部、さらに好ましくは0.015〜0.7重量部程度であってもよい。前記範囲の酸型化率を有するカルボキシアルキルセルロースの架橋ゲルは、ゲルの吸水性に優れるとともに、吸収した水の保持性(又は保型性)にも優れる。すなわち、前記範囲より大きい酸型化率を有する前記ゲルでは、ゲルの吸水性が不十分となる場合がある。一方、前記範囲より小さい酸型化率を有する前記ゲルでは、吸収した水の保持性(又は保型性)が不十分であり、自重で潰れたり、ゲルの形状(又は、形態)を保持できない場合がある。なお、酸型化率は、前記カルボキシアルキルセルロースにおいて、塩を形成したカルボキシル基の割合の指標として、遊離のカルボキシル基(カルボキシアルキルセルロースの遊離のカルボキシル基)をAモル、塩を形成したカルボキシル基(カルボキシアルキルセルロースの塩を形成したカルボキシル基)をBモルとするとき、[A/(A+B)]×100(%)で表され、酸又はアルカリ滴定、電導度測定、赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトルなどの慣用の方法を利用して測定できる。
前記カルボキシアルキルセルロース塩を溶解(又は溶融)可能な溶媒(例えば、前記例示の溶媒など)を用いて、前記カルボキシアルキルセルロース塩を均一化(又は均一化処理、混練)するためには、通常使用される装置(例えば、一軸又は二軸押出機、ミキサーなど)を用いてもよい。先述の通り、遊離化工程において、前記均一化可能な溶媒の下、前記カルボキシアルキルセルロース塩を均一化可能な系で、酸を用いて塩を形成したカルボキシル基を遊離のカルボキシル基に変換するのが好ましい。このようにして得られる均一化物(混練物)は、溶解(又は溶融)状態を経て粘性の塊状(又は餅状)となるため、粒状に成形又は粉砕するのに好適である。なお、前記カルボキシアルキルセルロース塩を溶解(又は均一化)して塊状にすることなく、例えば、所望の粒径より大きい粒径の粒状のカルボキシアルキルセルロース塩を用いて、酸で遊離のカルボキシル基に変換し、所望の粒径の粒状に成形又は粉砕しようとしても、前記カルボキシル基への変換効率が低下するとともに、吸水後に所望の形状を維持できない。
遊離化工程を行う温度は、使用する溶媒が液体状態にある温度であればよく、常温下であってもよく、加熱条件下であってもよい。前記加熱条件下とは、後続する熱処理温度(又は架橋温度)より低い温度であれば、特に制限されず、例えば、30〜200℃、好ましくは40〜150℃(特に、70〜120℃)程度であってもよい。
(成形工程)
成形工程は、遊離化工程において遊離化されたカルボキシアルキルセルロースから熱架橋した粒状のゲルを得る工程であって、この工程では遊離化されたカルボキシアルキルセルロースを架橋するとともに、粒状に成形(粉砕)する。この工程において、遊離化工程で遊離化されたカルボキシアルキルセルロースを乾燥して粉砕する方法などにより、予め粒状に成形した後、架橋してもよいが、簡便性の点から、前記遊離化されたカルボキシアルキルセルロースを熱により架橋した後、粒状に成形(粉砕)するのが好ましい。架橋処理に供するカルボキシアルキルセルロースは、溶融状態であってもよく、乾燥状態であってもよいが、通常、架橋処理は、乾燥状態のカルボキシアルキルセルロースに対して行われる。なお、溶媒によって溶解又は溶融した状態のカルボキシアルキルセルロースを架橋する場合には、前記カルボキシルアルキルセルロースを架橋する前に、予め自然乾燥などにより前記カルボキシアルキルセルロースを乾燥してもよいが、架橋温度で前記カルボキシアルキルセルロースを処理することにより、乾燥と架橋を同時に行うことができる。
架橋(又は熱処理)温度は、50〜280℃程度の範囲から選択でき、例えば、60〜200℃、好ましくは65〜160℃、さらに好ましくは70〜150℃(例えば、75〜145℃)程度であってもよい。架橋温度が高すぎるとカルボキシアルキルセルロースが分解したり、着色したりする場合があり、また経済性の点からも、例えば、50〜200℃、好ましくは70〜150℃程度のより低温条件下で熱処理することが好ましい。
また、架橋(又は熱処理)時間は、架橋温度や架橋度に応じて選択でき、例えば、1分〜10時間、好ましくは3分〜7時間、さらに好ましくは5分〜5時間、特に7分〜3時間(例えば、10分〜2時間)程度であってもよい。
なお、架橋(又は熱処理)は、乾燥機(恒温乾燥機、熱風乾燥機など)などの適当な装置を用いて行うことができる。また、架橋は、空気又は酸素雰囲気下、又は非酸素雰囲気(ヘリウム、アルゴン、窒素)下で行ってもよく、通常、酸素雰囲気下(例えば、大気下又は空気中)で行ってもよい。また、架橋は、大気圧下又は加圧下で行ってもよく、通常、大気圧下で行ってもよい。
架橋は、架橋剤の非存在下で行ってもよく、存在下で行ってもよい。すなわち、(1)カルボキシアルキルセルロースを架橋剤の非存在下で、熱により架橋して架橋ゲル(自己架橋したゲル、自己架橋ゲル)を製造してもよく、(2)カルボキシアルキルセルロースを架橋剤の存在下で、熱により架橋して架橋ゲルを製造してもよい。
架橋剤としては、多価金属化合物(又は多価金属系架橋剤)[例えば、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物(例えば、カリミョウバンなどのミョウバン)、チタン化合物、ジルコニウム化合物など];又は多価金属イオンなどの無機架橋剤、有機架橋剤などが含まれる。有機架橋剤としては、例えば、アミノ系樹脂(尿素系樹脂、メラミン系樹脂など)、ポリイソシアネート系化合物(芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、ポリイソシアネートの多量体など)、ポリカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリト酸などの芳香族ポリカルボン酸など)又はその誘導体(酸無水物、酸ハライドなど)、エポキシ化合物又は樹脂(ビスフェノール系エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル系化合物、グリシジルエステル系化合物など)、アルデヒド化合物、ポリオキサゾリン化合物、ビニルエーテル化合物、メチロール化合物などが例示できる。これらの有機架橋剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。液体吸収性(又は吸水性)、生分解性の点から、有機架橋剤であることが好ましい。
生分解性の観点から、有機架橋剤は生分解性を損なうことのない非芳香族系架橋剤であってもよい。このような架橋剤としては、脂肪族ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などのC2−10アルカンポリカルボン酸、マレイン酸、フマル酸などのC2−10アルケンポリカルボン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などのヒドロキシC2−8アルカンポリカルボン酸など)又はその誘導体(酸無水物、酸ハライドなど)、脂肪族ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートなど)、脂肪族エポキシ化合物(エピクロロヒドリン;ブタンジオールなどのC2−6アルカンポリオールのポリグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールなどのポリC2−4アルキレングリコールのポリグリシジルエーテルなど)、ポリケトン化合物(アセチルアセトンなど)、アルデヒド化合物(ホルムアルデヒド;グリオキザール、スクシンアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物)、ビニルエーテル化合物(ジビニルエーテルなど)などが例示できる。さらに好ましい有機架橋剤は、親水性、特に水溶性架橋剤(例えば、C2−4アルカンポリカルボン酸、C2−4アルケンポリカルボン酸、オキシC2−6アルカンポリカルボン酸又はその酸無水物など)である。なお、架橋剤として、特公昭60−22937号公報に記載の架橋剤を使用してもよい。
有機架橋剤の使用量は、前記カルボキシアルキルセルロース100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜25重量部、さらに好ましくは1〜20重量部程度であってもよい。
先述の通り、架橋は、カルボキシアルキルセルロースを架橋剤の存在下で加熱して行ってもよいが、生分解性、ゲル強度(又は保型性)の点から、架橋剤の非存在下で加熱して行うのが好ましい。
特定の粒径のゲルに成形(又は粒状に成形)する方法は、所望の粒径を充足可能である限り、特に制限されず、慣用の方法、例えば、架橋したゲルを乾燥させて粉砕し、分級する方法であってもよい。前記粒状ゲルの平均粒径は、例えば、0.1mm以上(例えば、0.1〜20mm)、好ましくは、0.2mm以上(例えば、0.2〜18mm)、さらに好ましくは0.3mm以上(例えば、0.3〜15mm)、特に0.5〜10mm(例えば、0.7〜8mm)程度であってもよい。
前記2つの工程(遊離化工程及び成形工程)は、個別に行ってもよいが、工業的生産性の点から前記2つの工程を連続的に行うのが有利である。
[架橋ゲル]
本発明の方法で得られる架橋ゲルは、水を吸収するゲルであって、吸水性に優れる。吸水倍率は、例えば、ゲルに吸水させる前後のゲル重量を測定し、次式「吸水倍率(g/g)=(吸水後のゲル重量−吸水前のゲル重量)/吸水前のゲル重量」として表すことができる。本発明のゲルの吸水倍率は、例えば、15倍(15g/g)以上(例えば、15〜200倍程度)、好ましくは17倍(17g/g)以上(例えば、18〜100倍程度)、さらに好ましくは20倍(20g/g)以上(例えば、20〜80倍程度)であってもよい。このように高吸水倍率を示すため、ゲルの添加量が少量であっても、有効に水を吸収することができる。
さらに、本発明のゲルは粒状であり、水を吸収するとゲルが膨潤(又は膨張)する。吸水したゲルの平均粒径と吸水する前のゲルの平均粒径との割合は、前者/後者=1/1〜50/1程度であってもよく、前記割合は、例えば、1.2/1〜45/1、好ましくは1.5/1〜40/1、さらに好ましくは1.8/1〜30/1(例えば、2/1〜20/1)程度であってもよい。より具体的に、吸水したゲルの平均粒径は、例えば、0.5〜50mm、好ましくは1〜40mm、さらに好ましくは1.5〜30mm、特に2〜25mm(例えば、2.5〜20mm)程度であってもよい。従って、本発明の架橋ゲルは、水を吸収して前記範囲の平均粒径を有する嵩高いゲルになることができる。このような特性を有する前記ゲルでは、少量であっても高いレベルで水を吸収することができる。
なお、本発明のゲルは、液体をゲル内部に導き、吸収速度を高めるために、多孔質化された多孔質体であってもよい。ここで、多孔質化とは、架橋により形成される空隙とは別にさらに孔径の大きい空隙を形成することを意味する。多孔質化する方法としては、種々の方法が利用でき、例えば、(a)圧力差を利用して多孔質化する方法、(b)発泡剤を添加する方法、(c)生分解性有機材料を添加する方法などが挙げられる。
(a)圧力差を利用して多孔質化する方法は、前記カルボキシアルキルセルロース(又はそのゲル)を、溶媒とともに高圧(又は加圧)下、押出機(一軸又は二軸押出機)を用いて混練し、押し出す方法であって、押出とともに減圧されて多孔質化する方法であってもよい。この方法で用いられる溶媒は、カルボキシアルキルセルロースを溶解又は溶融可能であることが好ましく、例えば、水及び前記例示のポリオール類から選択される少なくとも1種であってもよい。混練時(又は加圧時)の圧力は、例えば、0.01〜30MPa(好ましくは0.05〜20MPa、さらに好ましくは0.1〜10MPa)程度であってもよい。また、減圧時の圧力は、通常、大気圧である。
(b)発泡剤を添加する方法において、添加する発泡剤は、慣用の発泡剤、例えば、揮発性発泡剤(例えば、窒素、二酸化炭素、酸素、空気、水などの無機系発泡剤;プロパン、ブタン、ペンタンなどの低級脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、トルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、塩化メチルなどの塩化炭化水素、フロンなどのフッ化炭化水素、メタノール、2−プロパノールなどのアルコール類、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、石油エーテルなどのエーテル類、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などの有機系発泡剤など)、分解性発泡剤(例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの無機炭酸塩、炭酸水素ナトリウムなどの無機炭酸水素塩、クエン酸などの有機酸、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミドなどのアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)などのニトロソ化合物、テレフタルアジドなどのアジド化合物など)などであってもよい。これらの発泡剤は単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。生分解性の点から、無機系発泡剤[例えば、二酸化炭素(又は、炭酸水)など]、無機炭酸塩(例えば、炭酸アンモニウムなど)、無機炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウムなど)などが好適に使用される。
(c)生分解性有機材料を添加する方法において、ゲル内部に空隙を形成するために添加する生分解性有機材料としては、例えば、パルプ(又は粉末状パルプ)、おがくず、もみ殻、コーンコブ、フラワーコブ、茶殻、コーヒー殻、おからなどの植物材料などが挙げられる。これらの生分解性有機材料は単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましい生分解性有機材料はおがくず、もみ殻などである。なお、この方法において用いられる生分解性有機材料は、例えば、0.01〜15mm、好ましくは0.02〜10mm、さらに好ましくは0.05〜8mm程度であってもよい。
なお、(b)及び(c)の方法において、前記発泡剤及び生分解性有機材料は、樹脂製マイクロカプセルなどに詰めて使用してもよい。また、(b)及び(c)の方法において、多孔質化するために添加する多孔質化剤(前記発泡剤、前記生分解性有機材料)の割合は、前記カルボキシアルキルセルロース100重量部に対し、1〜30重量部、好ましくは2〜25重量部、さらに好ましくは3〜20重量部程度であってもよい。
前記ゲルを多孔質化する方法は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。また、前記ゲルを多孔質化する方法(又は、多孔質化法、多孔質化工程)は、前記2つの工程(遊離化工程及び成形工程)のどの段階に組み込まれてもよいが、通常、前記遊離化工程に組み込まれる場合が多く、特に、前記カルボキシアルキルセルロース塩を、所望の酸型化率を有するカルボキシアルキルセルロースに変換する段階に組み込まれる場合が多い。
なお、本発明のゲルは、前記発泡剤、生分解性有機材料、架橋剤の他、必要に応じて慣用の添加剤(例えば、気泡調整剤、安定剤(熱安定化剤、紫外線吸収剤など)、消泡剤、難燃剤、バイオサイド(殺菌剤、静菌剤、抗かび剤、防腐剤、防虫剤など)、粘度調節剤、分散剤、充填剤など)などを含んでいてもよい。
本発明の架橋ゲルは、水や、塩を含有する水(例えば、生理食塩水、屎尿など)に対する吸収性(吸水性)に優れている。また、吸収した水の保持性にも優れている。さらに、高い生分解性を有しており、廃棄しても環境に対する影響を低減できる。
このようなゲルは、吸水性が要求される用途、例えば、吸水体(吸収材、吸収剤)などとして有用である。このような吸収体としては、例えば、おむつ(紙おむつ、おむつライナーなど)、生理用品(ナプキン、タンポンなど)、パット(汗取りパット、母乳パット、失禁パットなど)、ウェットティッシュ類[ウェットティッシュ、各種拭き取り用シート(掃除用ペーパークリーナー、メイク落とし用シートなど)など]、医療用品[創傷被覆材(又は創傷保護材)、創傷治癒材、手術用廃液処理材など]、土木又は園芸用品などが挙げられる。このような吸水体は、前記ゲル単独で構成してもよく、前記ゲルとこのゲルを被覆(又は被包又は内包)する基材とで構成してもよい。
特に、本発明の架橋ゲルは、例えば、家畜糞尿、汚泥、食物残渣、酒の絞り粕などの含水率の高い廃棄物に添加すると、少量であっても水を効率よく吸収しゲル内部に保持することができる。また、本発明の架橋ゲルは、前記廃棄物を浄化処理するのに有用な吸水体として有用である。通常、前記廃棄物を浄化処理する場合(例えば、発酵させて堆肥化する場合など)には、他の慣用の生分解性の吸水材、特に、不用で廃棄可能な生分解性の吸水材(例えば、おがくず、もみ殻、パルプ、コーヒー殻、茶殻などの生分解性有機材料など)を添加して廃棄物中の水分を吸収させるが、その際に本発明の架橋ゲルを併用すると、ゲルが前記廃棄物中の水分を吸収するとともに、前記廃棄物と前記生分解性吸水材との間に空隙を形成し、廃棄物の発酵又は堆肥化の進行を補助できるため、前記生分解性吸水材の添加量を低減できる。より具体的には、本発明の架橋ゲルは、非吸水状態で、例えば、前記廃棄物100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.2〜20重量部、さらに好ましくは0.3〜10重量部程度用いてもよい。また、前記生分解性吸水材の平均粒径は、例えば、1〜15mm(好ましくは2〜10mm、さらに好ましくは3〜8mm)程度であってもよい。本発明の架橋ゲルは、このような生分解性吸水材100重量部に対して、非吸水状態で、0.1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、さらに好ましくは2〜100重量部程度用いてもよい。また、本発明の架橋ゲル(非吸水状態)と前記生分解性吸収材との合計は、前記廃棄物100重量部に対して0.01〜100重量部、好ましくは0.05〜50重量部、さらに好ましくは0.1〜30重量部程度であってもよい。前記割合で前記架橋ゲルを廃棄物処理に用いると、前記架橋ゲルを用いない場合に比べ、前記生分解性吸水材の添加量を5〜90%、好ましくは7〜80%、さらに好ましくは10〜70%程度低減することができる。なお、塩濃度、水分濃度(又は含水率)が高い廃棄物(例えば、家畜糞尿など)を処理する場合には、先述の通り、低い酸型化率を有するカルボキシアルキルセルロースを用いるのが好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例および比較例において、各物性の評価方法は以下の通りである。
(平均エーテル化度)
精秤したカルボキシメチルセルロースナトリウム1gを包んだ濾紙を磁性ルツボにいれ、静かに加熱して炭化させた後、さらに600〜620℃で3時間炭化し、冷却後に500mLのビーカーに前記ルツボを移し、水250mLを加えた。さらに、0.1N硫酸を50mL加え、30分煮沸した。そして、冷却後、フェノールフタレイン試薬を加え、0.1N水酸化ナトリウム水溶液により滴定し、平均エーテル化度を測定した。
(1重量%水溶液粘度)
精秤したカルボキシメチルセルロースナトリウム1gに、固形分が1重量%になるように補水を行いながら300rpmで30分間攪拌した後、ままこを潰し、4時間静置した。そして、B型粘度計により、60rpmおよび25℃の条件下で1重量%水溶液粘度を測定した。
(酸型化率)
酸型化率は、中和滴定により測定した。
(吸水倍率)
調製したゲル1gを入れたポリエステルメッシュ袋(100mm×100mm)を、0.9%生理食塩水(1L)が入った2Lビーカーに25℃で24時間浸漬した。浸漬前後(吸水前後)のゲルの重量を測定し、以下の式に基づいて算出した。
吸水倍率(g/g)=(吸水後のゲル重量−吸水前のゲル重量)/吸水前のゲル重量
(発酵性)
牛糞尿(含水率90%)5kgに、おがくず1.5L、もみ殻0.5L及び調製したゲルを50g加え、均一に混合した。その後、混合物を小型堆肥化装置(富士平工業(株)製、かぐやひめ)の発酵槽に入れ、500mL/分で通気し、混合物の中心に取り付けた熱伝対を用いて、24時間後の温度を測定した。なお、温度が高いほど、発酵が進んでいることを示す。
(保型性)
10Lのバケツに、発酵性評価の項で記載の混合物を入れ、定常状態となるまでゲルに吸水させた後、蓋をして重り(10kg)を10分間載せて保持した。次いで、30cmの高さからバケツを逆さに落とし、バケツを取り除いた1分後の混合物の高さを測定した。なお、高さが大きいほど、保型性に優れることを示す。
(平均粒径)
平均粒径は、光学顕微鏡を用いて測定した。
(合成例1)[カルボキシメチルセルロースナトリウムの製造方法]
主溶媒成分として、イソプロピルアルコール(以下、IPAと略記する)を使用する有機溶媒法により、カルボキシメチルセルロース及びその塩を製造した。すなわち、撹拌装置付きの3Lセパラブルフラスコに、IPA1600g、水170g、粉砕パルプ(セルロース)70gを投入して撹拌した。30℃の温度条件下、水酸化ナトリウム38gと水37gとの水溶液を添加し、30〜35℃で60分撹拌混合して、アルカリセルロースを得た(アルカリセルロース化工程)。
この反応生成物に、モノクロロ酢酸33gをIPA26gに溶解したIPA溶液を供給して混合し、70℃の温度で60分間反応させた。反応終了後、3Lセパラブルフラスコから反応混合物を取り出し、遠心分離機により脱液し、湿綿状のカルボキシルメチルセルロースナトリウム(以下、CMC−Naと略記する)を得た(エーテル化工程)。得られた湿綿状のCMC−Naに80重量%メチルアルコール水溶液を添加し、99.5重量%酢酸を添加して過剰のアルカリ成分を中和し、さらに、80重量%メチルアルコール水溶液で洗浄し、脱液、乾燥を行った。次いで、得られた繊維を60℃で一昼夜乾燥させた。乾燥後、得られた繊維は、白色で繊維長2〜10mmであった。この繊維を、粉砕し、分級して粉末状のCMC−Naを得た。得られた粉体は、平均エーテル化度0.64、1重量%水溶液粘度8100mPa・s(温度25℃)であった。
(実施例1)[架橋ゲルの製造]
合成例1で得られたCMC−Na粉体200g、酒石酸0.5g及び水800gを3Lニーダー(佐竹化学機械工業(株)製、佐竹式捏和機)に添加し、常温で15分間混練(均一化)した。混練物(均一化物)は、溶解状態を経て餅状となり、酸型化率は1%であった。次いで、熱風乾燥機(エスペック(株)製、PH−201)を用いて、140℃で1時間加熱し、架橋ゲルを得た。架橋ゲルを、小型強力粉砕機(大阪ケミカル(株)製、フォースミル Y−308B)で粉砕し、分級して粒径1〜2mmの粒状架橋ゲルを得た。得られた粒状架橋ゲルに生理食塩水を吸収させたところ、ゲルは寒天状となった。実施例1で得られたゲルの吸水倍率、発酵性、保型性、吸水後の平均粒径を求めた。結果を表1に示す。
(実施例2)
水の代わりに、炭酸水800gを用いた以外は、実施例1と同様にして架橋ゲルを得、ゲルの吸水倍率、発酵性、保型性、吸水後の平均粒径を求めた。結果を表1に示す。なお、吸水後の粒状架橋ゲルは寒天状であった。
(実施例3)
常温で15分間混練(均一化)した後に炭酸水素ナトリウムを10g添加した以外は、実施例1と同様にして架橋ゲルを得、ゲルの吸水倍率、発酵性、保型性、吸水後の平均粒径を求めた。結果を表1に示す。なお、吸水後の粒状架橋ゲルは寒天状であった。
(実施例4)
さらに、おがくず20重量部を添加して混練(均一化)した以外は、実施例1と同様にして架橋ゲルを得、ゲルの吸水倍率、発酵性、保型性、吸水後の平均粒径を求めた。結果を表1に示す。なお、吸水後の粒状架橋ゲルは寒天状であった。
(実施例5)
合成例1で得られたCMC−Na粉体20g、酒石酸0.05g及びキシリトール(融点94℃)10gをラボプラストミル(東洋精機製作所(株)製、ラボプラストミルμ)に添加し、110℃で15分間混練(均一化)した。110℃における混練物(均一化物)は、溶解状態を経て餅状となり、酸型化率は1%であった。次いで、熱風乾燥機(エスペック(株)製、PH−201)を用いて、140℃で1時間加熱し、架橋ゲルを得た。架橋ゲルを、小型強力粉砕機(大阪ケミカル(株)製、フォースミル Y−308B)で粉砕し、分級して粒径1〜2mmの粒状架橋ゲルを得た。得られた粒状架橋ゲルに生理食塩水を吸収させたところ、ゲルは寒天状となった。実施例5で得られたゲルの吸水倍率、発酵性、保型性、吸水後の平均粒径を求めた。結果を表1に示す。
(実施例6)
合成例1で得られたCMC−Na粉体20kgを、二軸押出機((株)池貝社製、PCM30)にフィーダーより投入した。次いで、途中のラインから水10kgに酒石酸50gを予め溶解させた水溶液を注入し、80℃、15kg/hrのスピードで混練(均一化)した。混練物(均一化物)の酸型化率は、1%であった。この混練物(均一化物)を押出して、直径2mmのストランドをペレタイザで2mm程度にペレット化(粒状化)した。得られた熱架橋ペレット(粒状体)について、実施例1と同様に吸水倍率、発酵性、保型性、吸水後の平均粒径を求めた。結果を表1に示す。なお、吸水後の熱架橋ペレット(粒状体)は寒天状であった。
(比較例1)
実施例1において、粒径30〜80μmの粒状架橋ゲルに分級した以外は、実施例1と同様にして架橋ゲルを得、吸水倍率、発酵性、保型性、吸水後の平均粒径を求めた。結果を表1に示す。なお、吸水後の粒状架橋ゲルはどろどろの状態であった。
(比較例2)
合成例1のCMC−Naの製造時において、エーテル化工程を経た後、反応系にクエン酸35gを加え、温度を74℃に保持しつつ攪拌し、吸引濾過により反応生成物から溶媒を除去した。得られた湿綿状のCMC−Naを80重量%メチルアルコール水溶液で洗浄し、脱液、乾燥を行った。得られたCMC−Na粉体の酸型化率は92%であった。得られたCMC−Na粉体を熱風乾燥機(エスペック(株)製、PH−201)を用いて、150℃で30分間加熱し、架橋ゲルを得た。この架橋ゲル1重量部に対してイオン交換水50重量部を添加し、混合して水性ゲルを調製した。この水性ゲルを80重量%メチルアルコール水溶液で洗浄し、脱液し、さらに濾過を行い、固形分を得た。得られた固形分を120℃で1時間乾燥させ、粉砕し、分級して粒径1〜2mmの粒状架橋ゲルを得た。得られた粒状架橋ゲルの吸水倍率、発酵性、保型性、吸水後の平均粒径を実施例1と同様に求めた。結果を表1に示す。なお、吸水後の粒状架橋ゲルは寒天状であった。
(比較例3)
ポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA−624)を用いて、粒径が約5mmの粒状架橋ゲルとする以外は実施例1と同様に行い、吸水倍率、発酵性、保型性、吸水後の平均粒径を求めた。結果を表1に示す。なお、吸水後の粒状架橋ゲルはどろどろの状態であり、流動的であったため、平均粒径を測定することはできなかった。
(比較例4)
合成例1で得られたCMC−Na粉体を、4倍量の80重量%メチルアルコール水溶液に常温下、30分間浸漬し、固形分が全体の70重量%となるまで脱液し、80重量%メチルアルコール水溶液が30重量%である湿潤CMC−Naを得た。次いで、得られた湿潤CMC−Naを3Lニーダー(佐竹化学機械工業(株)製、佐竹式捏和機)で撹拌し、モノクロロ酢酸ナトリウムをCMC−Naに対し1重量%となるように添加し、さらに常温で30分間撹拌した。反応混合物をニーダーから取り出し、80℃で5時間乾燥した。乾燥して得られた反応生成物について、実施例1と同様に吸水倍率、発酵性、保型性、吸水後の平均粒径を求めた。結果を表1に示す。なお、反応生成物は、粉体の凝集体であったため、分級して、平均粒径が1〜2mmの粒状ゲルを得ることができなかった。また、得られた反応生成物に吸水させると、どろどろの状態となった。
Figure 2008285611
表1から明らかなように、実施例1では、吸水性に優れ、特に発酵に伴う温度上昇が顕著であり、発酵が促進されている。また、保型性にも優れているため、吸収した水の保持性に優れている。実施例2〜4では、多孔質体のゲルであり、高い吸水性を有している。実施例5では、カルボキシアルキルセルロース塩を均一化する際に、溶媒として糖アルコールを用いているため、溶媒の添加量が少量であっても、優れた特性(吸水性など)を有するゲルが得られる。さらに実施例6では、本発明の製造方法を二軸押出機のみで実施可能であり、簡便に優れた特性(吸水性など)を有するゲルが得られる。
一方、比較例1では、吸水性には優れているが、吸水後のゲルがどろどろの状態であり、吸水体として機能せず、発酵性、保型性に劣る。比較例2では、吸水後のゲルが寒天状であるが、CMC−Naを均一化する工程がなく、また酸型化率も高いため、吸水性に劣るとともに、煩雑な操作を要する。また、比較例3では、吸水後のゲルがどろどろの状態である上に、合成樹脂を用いているため、環境への負荷が懸念される。さらに、比較例4では、CMC−Naが溶解状態を経ていないため、好適な形状のゲルを製造することができず、さらに得られたゲルにおいても、吸水後のゲルがどろどろの状態であり、吸水体として機能できない。

Claims (8)

  1. カルボキシアルキルセルロース塩を酸で反応させ、塩を形成したカルボキシル基を遊離化する遊離化工程と、遊離化されたカルボキシアルキルセルロースから熱架橋した粒状のゲルを得る成形工程とを含む架橋ゲルの製造方法であって、遊離化工程において、前記カルボキシアルキルセルロース塩を溶解可能な溶媒を用いて前記カルボキシアルキルセルロース塩を均一化し、成形工程において、均一化したカルボキシアルキルセルロースを平均粒径が0.1mm以上の粒状に成形する架橋ゲルの製造方法。
  2. 溶媒が、水及びポリオール類から選択される少なくとも1種であり、溶媒の割合が、塩を形成したカルボキシアルキルセルロース100重量部に対し、5〜1000重量部である請求項1記載の方法。
  3. 酸の割合が、塩を形成したカルボキシアルキルセルロース100重量部に対し、0.005〜100重量部である請求項1記載の方法。
  4. 酸型化率0.01〜75%及び平均エーテル化度0.2〜2.5を有するカルボキシメチルセルロースを用いて、平均粒径が0.1〜20mmの粒状である架橋ゲルを製造する請求項1記載の方法。
  5. 請求項1記載の方法で製造された架橋ゲル。
  6. ゲルの吸水倍率が、15〜200倍であり、吸水したゲルの平均粒径と吸水する前のゲルの平均粒径との割合が、前者/後者=1/1〜50/1である請求項5記載の架橋ゲル。
  7. 請求項5記載の架橋ゲルで構成されている吸水体。
  8. 請求項7記載の吸水体を用いて、廃棄物を浄化処理する方法。
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