JP2008273830A - リチウムコバルト複合酸化物の製造方法 - Google Patents

リチウムコバルト複合酸化物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】均質な結晶を有するリチウムコバルト複合酸化物及び高容量で充放電サイクル特性に優れたリチウム二次電池用高性能電極活物質の安価で簡便な製造方法の提供。
【解決手段】コバルト含有量が68.5±6重量%で、実質的にHxCoOy[0≦x≦1.4、1.3≦y≦2.2]の組成式で表現され、CuKαを線源とするX線回折における2θ=36〜37.5度付近の回折ピークの半値幅が0.31度より大きく、コバルト含有量と半値幅の関係が、半値幅(度)≧7.5−0.1×コバルト含有量(重量%)で示されるコバルト化合物と、リチウム化合物との混合体を250〜1000℃の温度で焼成して製造する。
【選択図】図1

Description

本発明はコバルト化合物、特にリチウムコバルト複合酸化物のコバルト源として好適に用いられるコバルト化合物と、かかるコバルト化合物をコバルト源として製造されるリチ
ウムコバルト複合酸化物の製造方法に関する。
六方晶系の層状結晶構造を持つ遷移金属酸化物は、適当なサイズの金属イオンを結晶の格子サイト及び/又は格子間に導入できることが知られている。特にリチウム層間化合物は、特定の電位差の下でリチウムイオンを結晶格子サイト及び/又は格子間に導入し、再びこれを取り出すことができることから、リチウム複合酸化物を電極活物質としたリチウム電池、二次電池が工業的に利用、生産されている。
電極活物質としては、コバルト酸リチウムが最も基本であり、最も有効な材料である。高価なコバルトを安価な他の遷移金属、例えばニッケルやマンガン等に代替しようとする試みも行われているが、コバルトを完全に代替できる技術はまだ確立されていない。
なし なし
しかしながらコバルト酸リチウムには、充放電の繰返し使用により放電容量が低下するといった問題があった。この現像は、充放電すなわちLiイオンの出入りに伴う結晶格子の収縮と膨張[J.Electrochem.Soc.139,2091(1992)]が活物質粒子を破壊し、脱落させてしまうためと考えられている。
かかるコバルト酸リチウムの欠点を解決し、充放電特性を高める検討はこれまでにも種々試みられていた。
リチウム複合酸化物は、一般には固相反応で、すなわち化合物を構成する原料成分粒子の混合体を加熱処理して調製される。したがって活物質粒子の特性は、原料成分の選択と原料成分粒子の特性及び混合体の混じり具合にも大きな影響を受けることになる。
乾式法と呼ばれる従来のリチウム相間化合物からなる電極活物質粒子の製造方法は、活物質を構成する原料成分粒子の所定量を混合、粉砕しながら混ぜ合わせた後、かかる活物質前駆体の混合体を加熱処理して製造する方法である。
この方法では、各原料成分を分子レベルで混合することは不可能であり、かつ粒子間でも均質に分散することは困難であった。したがって、かかる従来方法で製造された活物質は、組成に大きなバラツキを持つものであった。
また、活物質構成元素を含有する溶液からこれを塩として析出させ、均質に混合された前駆体混合体粒子を得る湿式法も検討された。かかる方法では、通常、しゅう酸塩として析出、沈殿させた前駆体混合体粒子を水洗して乾燥し、焼成して活物質粒子としている。しかしながら、しゅう酸塩の水に対する溶解性は元素により大きく異なり、このため洗浄中に組成のズレを生じてしまうという欠点があった。
さらに水酸化物や炭酸塩として沈澱させた場合も検討されているが、洗浄に伴う組成のズレは避け難いうえ、焼成による粒子の粗大化も引き起こしてしまうという問題もあった。
一方、電極活物質を構成するリチウムや所定の遷移金属のアルコキシド等からなるゾルをゾル・ゲル法の手法を用いてゲル化し、焼成して活物質とする方法[WO92/18425]も検討された。かかる方法では分子レベルで均質に配列したコバルト酸リチウムが製造できることから、Liイオンの出入りに伴う収縮膨張に強く、優れた充放電特性を発現できる活物質が得られるものと期待される。しかしながら、かかるアルコキシド等は著しく高価なため、工業的に使用しにくいという難点があった。
リチウムイオンを放出あるいは受け入れるマトリクスを形成するのはコバルト化合物であることから、コバルト源の検討も種々行われている。
例えば、晶析法で調製した球状もしくは長円球状の水酸化コバルトから、さらに熱処理して製造されたコバルト酸化物をコバルト源とする方法[特開平5−54888号]が提案されている。しかしながら、かかる方法で調製された活物質が特に優れた充放電特性を発現しているものとは読み取れない。
特定の水酸化コバルトを加熱処理して調製したCo3 4 をコバルト源とし、前記水酸化コバルトの形状を反映させた、特定形状のコバルト酸リチウムの製造方法[特開平9−022693号]も提案されている。しかしながら、ここで使用される水酸化コバルトはごく一般的なもので、製造されたコバルト酸リチウムにも何ら差別化される特性はなく、本質的な解決策であるとは言えない。加えて、水酸化コバルトの分解温度以上の温度で熱処理して得られたCo3 4 をコバルト源とし、さらに900℃で焼成される工程を経て得られた生成品に水酸化コバルトの形状が反映されるとするのは全く不自然である。
また、六方晶系の形態をすでに有する3価コバルト化合物を用い、イオン交換の手法を用いて低温でコバルト酸リチウムを製造する試みも検討された[Solid State Ionics 84,169(1996)]。しかしながら、この方法は、かかるコバルト化合物と2倍当量のリチウム化合物とを加圧してペレットとし、これとほぼ同量の水を加えて6気圧以上の加圧下に5日間程置いて製造されるという複雑な工程を必要とする欠点を有していた。しかもその後、過剰量のリチウム化合物を洗浄して除去し、さらに250℃以上の温度で1日間熱処理しなければ電極活物質としては使用できないという問題も有していた。
本発明は、発達した結晶の成長を押さえ、微細な粒子の軽い凝集体であり、固相での反応性に優れたコバルト化合物と、かかるコバルト化合物をコバルト源とした、均質で堅固な層状結晶構造を有し、放電容量が高く、充放電特性に優れたリチウムコバルト複合酸化物及びその製造方法の提供を目的とする。
本発明は、コバルト含有量が68.5±6重量%で、実質的にHxCoOy[0≦x≦1.4、1.3≦y≦2.2]の組成式で表現され、CuKαを線源とするX線回折における2θ=36〜37.5度付近の回折ピークの半値幅が0.31度より大きく、コバルト含有量と半値幅の関係が、半値幅(度)≧7.5−0.1×コバルト含有量(重量%)で示されるコバルト化合物と、リチウム化合物との混合体を焼成して製造されることを特徴とするリチウムコバルト複合酸化物の製造方法、及びかかる方法により製造されたリチウムコバルト複合酸化物と電極活物質とを提供する。
本発明は、結晶性が低く、もしくは結晶を有するものの結晶径の極めて小さいコバルト化合物をコバルト源として用い、リチウムコバルト複合酸化物を製造している点に特徴がある。
結晶性の低いコバルト化合物であれば、本発明のコバルト化合物として使用可能であるが、特に不定形もしくは多形の3価コバルト化合物の一方または両方を原料としたコバルト化合物であるのが、調製容易で固相反応性に優れることから好ましい。
特に好ましくは、実質的にHCoO2 の組成式で示される3価コバルト化合物であるのが、そのままでもあるいは熱処理することによっても安定して本発明のコバルト化合物が調製できる点で望ましい。
熱処理は、通常100℃前後でなされる乾燥工程であることも可能である。また、化合物の変化を伴う120〜910℃の温度範囲で行われても良い。しかし910℃を越える温度では分解温度に近く、反応の制御が困難となるため好ましくない。
熱処理を行う場合の処理時間は、処理温度にも依存するが、通常長くとも100時間であるのが好ましい。100時間処理を続ければ反応はほぼ終了してしまうからである。
かかる本発明のコバルト化合物は、従来知られていたコバルト酸化物やコバルト水酸化物等にはない特異な物性を有するものであることを本発明者等は見い出した。
すなわち、本発明のコバルト化合物は、コバルトを68.5±6重量%含有しており、本質的にHxCoOy[0≦x≦1.4、1.3≦y≦2.2]の組成式で示される。yが1.3以上で、xが0≦x≦1.4、コバルト含有量が68.5±6重量%の範囲にある場合、本発明のコバルト化合物をコバルト源としたリチウムコバルト複合酸化物は、酸素や空気の供給なしで製造可能となることから好ましい。一方、yが2.2以下の範囲では、本発明のコバルト化合物は安定であり、取り扱いの容易な点で好ましい。
本発明のコバルト化合物はまた、CuKαを線源とするX線回折において、Co3 4の(311)面に相当する回折と見れる2θ=36〜37.5度付近の回折ピークの半値幅が、0.31度より大きいことを特徴としている。さらに、この半値幅(度)は、コバルト含有量(重量%)に対して、半値幅≧7.5−0.1×コバルト含有量の関係にあることが好ましい。半値幅が0.31度より小さいと、固相での反応性を低下させてしまい好ましくない。また、半値幅が7.5−0.1×コバルト含有量の値より小さいと、発達した結晶が均質な反応を妨げることから好ましくない。
特に好ましくは、前記回折ピークの半値幅が0.35度より大きく、コバルト含有量が74重量%以下であるのが、広い温度範囲にわたって酸素もしくは空気中の酸素を供給することなく、より均質なリチウムコバルト複合酸化物が安定して製造できる点から望ましい。
本発明のコバルト化合物は、CoOOHもしくはCo23 ・H2 Oの一方または両方を含有することができる。また、本発明のコバルト化合物は、Co3 4を含有することができる。さらに、本発明のコバルト化合物は、CoOOHもしくはCo23 ・H2 Oの一方または両方とCo3 4を同時に含有することも可能である。
本発明のコバルト化合物は、リチウム複合酸化物のコバルト源として好適に用いられる。かかるコバルト化合物は、適当なリチウム化合物と混合され、焼成されて本発明のリチウムコバルト複合酸化物が製造される。
リチウム化合物としては、リチウム元素を含有するものであればいずれも使用可能である。しかしながら、取り扱いの容易な点からリチウムの酸化物、水酸化物、塩類、あるいはこれら化合物の2種以上の混合体等であるのが好ましい。
本発明では前記コバルト化合物と前記リチウム化合物の混合体を焼成して、リチウムコバルト複合酸化物を製造する。製造されるリチウムコバルト複合酸化物は、粒子の形態で加工され、電池材料として利用される。従って、前駆体混合体も粒子の形態であるのが好ましい、同様な理由から、コバルト化合物やリチウム化合物も、少なくともいずれか1つは粒子形態であるのが好ましい。本発明のコバルト化合物は、微細な粒子の軽い凝集体であることから、本発明のリチウムコバルト複合酸化物用コバルト源として特に望ましい。
本発明のリチウムコバルト複合酸化物となる前駆体混合体の調製は、従来の乾式法の手法をそのまま用いることができる。すなわち、所定量の前記リチウム化合物の粒子と前記コバルト化合物の粒子を混合、破砕することにより、均質に分散された前駆体混合体を得ることができる。本手法により均質な前駆体混合体が得られるのは本発明に使用する前記コバルト化合物の効果による。
また、リチウム化合物粒子とコバルト化合物粒子の混合体に溶媒及び/又は分散媒を加えて混合し、調製したスラリーをそのまま、あるいは乾燥して前駆体混合体とすることもできる。この場合、溶媒及び/又は分散媒としては水を用いることが取扱容易な点から好ましい。
通常、本発明のコバルト化合物は、しっかりとした結晶構造を持たない極めて微細な粒子の軽い混合体と見れる。かかるコバルト化合物粒子とリチウム化合物粒子の混合体に粉砕を加えながら混合する操作を加えると、コバルト化合物は容易に粉砕され、均質に分散混合された前駆体混合体が調製できる。
一方、溶媒及び/又は分散媒とのスラリーを経て調製した前駆体混合体は、コバルト化合物粒子の隙間にまでリチウム化合物が浸透し得るため、さらに低温の焼成においても均質なリチウムコバルト複合酸化物が製造できるものと期待される。
本発明のリチウムコバルト複合酸化物には、他にも多くの遷移金属を配合できる。特に、クロム、銅、鉄、インジウム、マンガン、ニッケル、バナジウム等が有効と判断され、本発明に好適に用いられる。
これら遷移金属等の配合は、かかる金属の酸化物、水酸化物、過酸化物、塩類等の粒子あるいは溶液、分散液等の形状でなされ、本発明のリチウムコバルト複合酸化物の前駆体混合体に形成される。
上述のごとくして調製された前駆体混合体の粒子は、焼成されて、本発明のリチウムコバルト複合酸化物となる。焼成温度は250〜1000℃の範囲であるのが好ましい。250℃未満の温度では反応が完結せず、残留未反応物が電池性能を低下させてしまう。一方、1000℃を越える温度では結晶構造に乱れが生じ易くなり、これが電池性能を低下されたり安全性を損ねたりしてしまうからである。
焼成時間は焼成温度にも依存するが、例えば500℃の場合、少なくとも30分以上処理されるのが反応を終結できる点で好ましい。一方、反応終結後、長時間にわたって加熱処理を続けても得られるメリットは少ないことから、長くとも100時間であるのが好ましい。
焼成方法は、密閉された加熱炉中に静置することでも可能である。ロータリーキルン等で流動させながら処理することもできる。また、トンネル炉を用い、コンベアーに載せて連続して処理するこことも可能である。
本発明のリチウムコバルト複合酸化物の製造方法によれば、低温焼成においてもしっかりした単一相の層状結晶構造を持つリチウム層間化合物を製造でき、製造コストの削減も可能となる。また、均質な組成が得られ、粒径や密度の制御が容易であり、得られたリチウムコバルト複合酸化物は電極活物質として特に有効に機能する。かかる活物質を電極としたリチウムイオン電池は高い放電容量と優れたサイクル特性を発現する。
本発明のリチウムコバルト複合酸化物の製造方法は、不定形及び/又は多形の3価コバルト化合物を基にした、低い結晶性及び/又は結晶を有するものの結晶径の極めて小さいコバルト化合物をコバルト源としていることに特徴づけられる。
本発明の製造方法において、広い焼成温度範囲にわたってリチウムコバルト複合酸化物を形成する固相反応を終結できるのは、微細な粒子の軽い凝集体であるかかる化合物の特性が、分散、混合性を高め、低い結晶性と大きく成長した結晶を持たない特性が、固相での反応性を高めているからと判断される。かかる効果が作用して本発明の製造方法は、均質に成長した良好な結晶のリチウムコバルト複合酸化物を低温焼成においても高温焼成においても安定して製造できる。
一方、原料成分の混合の不均一領域や大きな結晶の混入箇所は、固相反応の阻害領域となり、反応生成物結晶の表面が不純物で覆われたり、不純物が露出する等の悪影響がもたらされる。かかる悪影響も放電容量や充放電サイクル特性を低下させる。
本発明におけるコバルト化合物にはかかる悪影響が見られず、前述の如くの均一な分散、混合性と、低い結晶性が作用して固相反応の均質な進行を促進し、電池特性の優れたリチウムコバルト複合酸化物の製造を可能とした。
本発明の製造方法によれば、製造されるリチウムコバルト複合酸化物の諸特性は、焼成条件を管理することにより制御できる。例えば、焼成温度と時間を制御することにより、強靱な層状結晶構造を保持したまま、複合酸化物の粒径、比表面積、密度等を広範囲に変化させることができる。
本発明の方法により実現されるリチウムコバルト複合酸化物の強靱な結晶からなる活物質は、リチウムイオンの挿入及び脱離時の歪の発生を抑制し、電極の破壊を防止する。かかる作用の結果、本発明の活物質を用いた二次電池は、大電流を流すことができ、急速充電が可能で、しかも高容量と長寿命を達成した。
本発明の製造方法によれば、強靭に発達した層状の結晶構造を有するリチウムコバルト複合酸化物が、低温から高温までの広い温度範囲にわたって安定して製造できる。かかる層状結晶の発達した本発明の複合酸化物からは、放電容量の高い電極活物質が製造できる。
また、本発明の製造方法により得られたリチウムコバルト複合酸化物は、均質に成長した結晶構造を有することから、リチウムイオンの挿入及び脱離時に歪の集中が起こらず、電極の破壊を防ぐ効果がある。かかる効果は、充放電サイクル特性に優れ、大電流を流すことができ、急速充電が可能な電極活物質を形成し、長寿命で高性能な二次電池の製造を実現した。
乾燥重量当たりのコバルト含有量が68.5±6重量%で、実質的にHxCoOy[0≦x≦1.4、1.3≦y≦2.2]の組成式で表現され、CuKαを線源とするX線回折における2θ=36〜37.5度付近の回折ピークの半値幅が0.31度より大きく、コバルト含有量と半値幅の関係が、半値幅(度)≧7.5−0.1×コバルト含有量(重量%)で示されるコバルト化合物と、リチウム化合物との混合体を焼成してリチウムコバルト複合酸化物を製造することを最大の特徴とする。
市販のCoOOH(Queensland Nickel Pty.Ltd.製)のコバルト含有量とCuKαを線源とするX線における2θ=36〜37.5度付近の回折ピークの半値幅を測定したところ、63.2重量%と2.55度の値が得られた。これは組成式がH1.15CoO2.07で示され、コバルト含有量と半値幅の関係が図1の(1)に示される如くで、本発明のリチウムコバルト複合酸化物用コバルト源として好適であると判断された。
このCoOOHの93.2gとLiOH・H2 Oを43.2g、水50gを混合し、90℃にて撹拌して2時間後、乾固した粉体を取り出し、さらに100℃にて2時間乾燥して、リチウムコバルト複合酸化物前駆体粒子を得た。
この前駆体粒子を700℃にて3時間焼成したら、平均粒径6.1μmのLiCoO2 が97.5g得られた。
このLiCoO2 の90部、カーボン5部、及びポリフッ化ビニリデン5部にN−メチルピロリデンを加えて混練りして、ペーストとした。このペーストをアルミ箔に塗布して乾燥後、圧延して所定の大きさに打ち抜き、正極板とした。
次に、95部のカーボンと5部のポリフッ化ビニリデンに20部のN−メチルピロリデンを加えて混練りしてペーストとした。このペーストを銅箔に塗布して乾燥後、圧延して所定の大きさに打ち抜き、負極板とした。
こうして得られた正極板、負極板にそれぞれリード線を取り付け、ポリオレフィン系セパレータを介してステンレス製セルケースに収納した。続いて、エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートの混合液に六フッ化リン酸リチウムを1モル/リットル溶かした電解質溶液を注入し、モデルセルとした。
電池特性は、充放電測定装置を用い、25℃において最大充電電流0.20mAで電池電圧4.2Vになるまで充電した後、同一電流で2.7Vになるまで放電する充放電の繰返しを行い、初期放電容量と100サイクル後の放電容量とを求めて評価した。なお初期放電容量には、充放電サイクル開始3サイクル目の値を用いた。
その結果を下記の表1に示した。
Figure 2008273830
なお容量保持率は次式で求めた。
Figure 2008273830
コバルト含有量の実測値が64.2重量%のCoOOH(Queensland Nickel Pty.Ltd.製)100gを300℃にて7時間熱処理し、89.3gのコバルト化合物(2)を得た。
この化合物(2)のCo含有量は71.5重量%であり、H0.19CoO1.46の組成式で表された。又CuKαを線源とするX線回折における2θ=36〜37.5度付近の回折ピーク半値幅は0.60度であった。
このコバルト含有量とX線回折ピークの半値幅の関係は図1の如くであり、本発明のリチウムコバルト複合酸化物用コバルト源として好適であると判断された。
この化合物(2)の82.4gとLiOH・H2 Oの43.2gを混合撹拌した後、700℃にて5時間焼成したら、平均粒径7.8μmのLiCoO2 が97.9g得られた。
このLiCoO2 を用いたことを除いて実施例1と同様にして調製したモデルセルの電池特性は、前述の表1の如くであった。
熱処理が150℃の15時間であったことを除き、実施例2と同様にして95.5gのコバルト化合物(3)を得た。
化合物(3)のコバルト含有量は67.0重量%であり、H0.68CoO1.79の組成式で表された。また、X線回折における前記回折ピークの半値幅は1.86度であって、図1より明らかなように、リチウムコバルト複合酸化物用コバルト源として良好であると判断された。
化合物(3)の88.0gとLi2 CO3 の38.1gを混合撹拌した後、600℃にて5時間焼成したら、平均粒径3.8μmのLiCoO2 が97.1g得られた。
このLiCoO2 を用いたことを除いて実施例1と同様にして調製したモデルセルの電池特性は、前述の表1の如くであった。
熱処理が500℃の7時間であったことを除き、実施例2と同様にして87.2gのコバルト化合物(4)を得た。
化合物(4)のコバルト含有量は73.3重量%であり、H0.02CoO1.34の組成式で表された。また、X線回折における前記回折ピークの半値幅は0.36度であって、図1より明らかなように、リチウムコバルト複合酸化物用コバルト源として良好であると判断された。
化合物(4)の80.4gとLi2 CO3 の38.1gを混合撹拌した後、700℃にて3時間焼成したら、平均粒径5.8μmのLiCoO2 が97.5g得られた。
このLiCoO2 を用いたことを除いて実施例1と同様にして調製したモデルセルの電池特性は、前述の表1の如くであった。
コバルト含有量64.8重量%のCoOOHの10Kgをロータリキルンに仕込み、200℃にて1時間熱処理して、9Kgのコバルト化合物(5)を得た。
化合物(5)のコバルト含有量は68.4重量%であり、H0.51CoO1.67の組成式で表された。また、X線回折における前記回折ピークの半値幅は1.49度であって、図1のより明らかなように、リチウムコバルト複合酸化物用コバルト源として良好であると判断された。
この化合物(5)の8.6KgとLi2 CO3 の3.8Kgを混合撹拌した後、600℃にて10時間焼成したら、平均粒径9.3μmのLiCoO2 が9.7Kg得られた。
このLiCoO2 を用いたことを除いて実施例1と同様にして調製したモデルセルの電池特性は、前述の表1の如くであった。
(比較例1)
硫酸コバルトの水溶液を撹拌させながら1.05モル当量の炭酸水素アンモニニウム水溶液を滴下し、ろ過して取り出した析出物を水洗して140℃にて乾燥し、1.3重量%の水を含有したCoCO3 を得た。
このCoCO3 の100gを850℃にて1時間熱処理して66.3gのコバルト化合物(6)を得た。
化合物(6)のコバルト含有量は73.5重量%であり、X線回折における前記回折ピークの半値幅は0.30度であった。
図1より明らかなように、(6)はリチウムコバルト複合酸化物用コバルト源には適していないと判断された。
この化合物(6)の65gとLi2 CO3 の30.8gを混合撹拌した後、700℃にて3時間焼成してLiCoO2 の合成を試みた。しかしながら、焼成物のX線回折図にはCo3 4に基づく特徴的な反射が観察され、まだ反応が完結していないことがわかった。
(比較例2)
硫酸コバルトの水溶液を撹拌させながら2.1モル当量の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、ろ過して取り出した析出物を水洗して60℃にて乾燥したところ、2.5重量%の水を含有したCo(OH)2 が得られた。
このCo(OH)2 の100gを150℃にて15時間熱処理して87.1gのコバルト化合物(7)を得た。
化合物(7)のコバルト含有量は70.9重量%であり、H0.46CoO1.49の組成式で表された。また、X線回折における前記回折ピークの半値幅は0.37度であった。
図1より明らかなように、(7)はリチウムコバルト複合酸化物用コバルト源には適していないと判断された。
この化合物(7)の83.1gとLi2 CO3 の38.1gを混合撹拌した後、600℃にて5時間焼成してLiCoO2 の合成を試みた。しかしながら、焼成物のX線回折図にはCo3 4に基づく特徴的な反射が観察され、まだ反応が完結していないことがわかった。
(比較例3)
比較例2と同様にして調製した化合物(7)とLi2 CO3 の混合体を、700℃にて10時間焼成したところ、平均粒径1.3μmのLiCoO2 が97.3g得られた。
このLiCoO2 を用いたことを除いて実施例1と同様にして調製したモデルセルの電池特性は、前述の表1の如くであった。
(比較例4)
比較例2で用いたのと同様のCo(OH)2 の100gを120℃にて1.5時間熱処理したところ、92.0gのコバルト化合物(8)が得られた。
化合物(8)のコバルト含有量は67.0重量%であり、H1.2 CoO1.73の組成式で表された。また、X線回折における前記回折ピークの半値幅は0.38度であった。
図1より明らかなように、(8)はリチウムコバルト複合酸化物用コバルト源には適していないと判断された。
この(8)の88.0gとLiOH・H2 Oを43.2、水50gを混合し、90℃にて撹拌して2時間後、乾固した粉体を取り出し、更に100℃にて2時間乾燥してリチウムコバルト複合酸化物前駆体粒子を得た。
この前駆体粒子を900℃にて10時間焼成したところ、平均粒径3.3μmLiCoO2 が95.2g得られた。
このLiCoO2 を用いたことを除いて実施例1と同様にして調製したモデルセルの電池特性は、前述の表1の如くであった。
本発明の製造方法によれば、強靭に発達した層状の結晶構造を有するリチウムコバルト複合酸化物が、低温から高温までの広い温度範囲にわたって安定して製造できる。かかる層状結晶の発達した本発明の複合酸化物からは、放電容量の高い電極活物質が製造できる。
また、本発明の製造方法により得られたリチウムコバルト複合酸化物は、均質に成長した結晶構造を有することから、リチウムイオンの挿入及び脱離時に歪の集中が起こらず、電極の破壊を防ぐ効果がある。かかる効果は、充放電サイクル特性に優れ、大電流を流すことができ、急速充電が可能な電極活物質を形成し、長寿命で高性能な二次電池の製造を実現した。
二次電池製造の分野において利用可能性を有する。
本発明におけるリチウムコバルト複合酸化物用コバルト源として好適なコバルト化合物のコバルト含有量と、CuKαを線源とするX線回折ピークの2θ=36〜37.5度付近の半値幅の関係を示す図である。 ここでハッチングを施した領域に入るものが、本発明のリチウムコバルト複合酸化物用コバルト源として好適であることを示している。

Claims (12)

  1. 乾燥重量当たりのコバルト含有量が68.5±6重量%で、実質的にHxCoOy[0≦x≦1.4、1.3≦y≦2.2]の組成式で表現され、CuKαを線源とするX線回折における2θ=36〜37.5度付近の回折ピークの半値幅が0.31度より大きく、コバルト含有量と半値幅の関係が、半値幅(度)≧7.5−0.1×コバルト含有量(重量%)で示されるコバルト化合物と、リチウム化合物との混合体を焼成して製造されることを特徴とするリチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  2. 前記コバルト化合物が、不定形もしくは多形の3価コバルト化合物の一方または両方であることを特徴とする請求項1のリチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  3. 前記コバルト化合物が、不定形もしくは多形の3価コバルト化合物の一方または両方を熱処理して製造されたものであることを特徴とする請求項1あるいは2のリチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  4. 前記3価コバルト化合物が、実質的にHCoO2 の組成式で示されることを特徴とする請求項2または3のリチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  5. 前記熱処理が、910℃以下の温度範囲で行われることを特徴とする請求項3のリチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  6. 前記コバルト化合物が、CoOOHもしくはCo23 ・H2 Oの一方または両方を含有するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項のリチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  7. 前記コバルト化合物が、Co34 を含有するものであることを特徴とする請求項1、2、3、4および6のいずれか1項のリチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  8. 前記コバルト化合物が、CoOOHもしくはCo23 ・H2 Oの一方または両方とCo34 を同時に含有するものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、6および7のいずれか1項のリチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  9. 前記リチウム化合物が、リチウムの酸化物、水酸化物及び塩類のうちから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1のリチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  10. 前記焼成が、250〜1000℃の温度範囲で行われることを特徴とする請求項1のリチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項の方法で製造されることを特徴とするリチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  12. 請求項11のリチウムコバルト複合酸化物を含有したことを特徴とする電極活物質。
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