JP2008269890A - 非水電解質二次電池用電極 - Google Patents

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Abstract

【課題】電極層が厚くても電極層の脱落が抑制され、電極層の厚さの電極面内での不均一化が抑制されてなる非水電解質二次電池用電極を提供する。
【解決手段】集電体の両端より中央で貫通孔密度が高くなるように配された複数の貫通孔を有する該集電体上に厚さ50μm以上の電極層が形成されてなることを特徴とする非水電解質二次電池用電極。
【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解質二次電池用電極およびその製造方法、並びに該非水電解質二次電池用電極を用いた非水電解質二次電池に関する。本発明の非水電解質二次電池用電極及びこれを用いた非水電解質二次電池は、例えば、電気自動車、燃料電池車及びハイブリッド電気自動車等の車両のモータ等の駆動用電源として用いられる。
近年、環境・エネルギー問題の解決へ向けて、種々の電気自動車の普及が期待されている。これら電気自動車の実用化の鍵を握るモータ駆動用電源などの車載電源として、非水電解質二次電池の開発が鋭意行われている。しかしながら、広く普及するためには電池を高性能にして、より安くする必要がある。また、電気自動車については、一充電走行距離をガソリンエンジン車に近づける必要があり、より高エネルギーの電池が望まれている。
こうした駆動電源等としては、エネルギー密度、出力密度の高いリチウムイオン二次電池やニッケル水素電池などの非水電解質二次電池が注目されている。
こうした非水電解質二次電池用電極の従来の塗工方法は、ダイコーターやロールコーター等を用いて、Al箔などの貫通孔を有しない集電体に対し、片面に電極スラリーを塗布、乾燥した後に、もう片面に同様に電極スラリーの塗布、乾燥を施していた。
しかしながら、自動車用の駆動電源として高エネルギー密度、高出力密度が求められるリチウムイオン二次電池等では、集電体に貫通孔を設けることにより、リチウムイオンが集電体に遮断されることなく電極の表裏間を移動できる。そのため、当該貫通孔を通じて、リチウム近傍に配置された負極だけでなくリチウムから離れて配置された負極にもリチウムを電気化学的に担持させることが可能となる。また、当該貫通孔を通じてリチウムイオンが自由に各極間を移動できるため、充放電がスムーズに進行する。
そのため、こうした貫通孔を有する集電体上に電極層を形成する塗工方法として、両面を同時に塗布する方法が提案されている。例えば、特許文献1では、貫通孔を有する集電体に対し、ダイの電極スラリー噴き出し対向部に、集電体を挟み込む形でロールバーを並行に宛がい、ダイの電極スラリー噴き出し部とロールバーの間にスラリーの液溜まりを作ることにより、電極スラリーを集電体に対し表裏両面を塗布する方法が提案されている。特許文献1のような従来公知の貫通孔を有する集電体上に電極層を形成する塗工方法では、複数の貫通孔が集電体上に一様に配設されているものが用いられていた。
特開2005−203115号公報
しかしながら、電極層が厚くなると、バインダが表面に偏在しやすいことから、集電体との密着性が低下する。そのため、上記特許文献1に記載のような従来の塗工方法では、集電体に電極スラリーを塗布して乾燥した電極を巻回する際、例えば、ロールを介して巻き回す操作や電極フープに巻き取る操作の際に、電極層が厚いと集電体から剥離して、電極層の脱落が発生するという問題があった。また、電極の製造過程で搬送される集電体にある程度のテンションを張っておいても、中心部に沿って湾曲する為、電極スラリーの乾燥工程でスラリーが中心部に集まり、電極中央部付近で電極層が盛り上がる。そのため、電極中央部付近で密着性不良による剥離がより発生しやすくなるという問題もあった。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、集電体中央部の貫通孔を増やすことで、その盛り上がりを抑制することができ、電極層が厚くなっても電極層の脱落を抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明は、集電体の両端より中央で貫通孔密度が高くなるように配された複数の貫通孔を有する該集電体上に厚さ50μm以上の電極層が形成されてなることを特徴とする非水電解質二次電池用電極により達成することができる。
また本発明は、集電体の両端より中央で貫通孔密度が高くなるように配された複数の貫通孔を有する該集電体を用いて、搬送される前記集電体上に電極スラリーを塗布し、乾燥を行って厚さ50μm以上の電極層を形成することを特徴とする非水電解質二次電池用電極の製造方法によっても達成することができる。
本発明のリチウムイオン電池用正極材料およびその製造方法では、電極層が厚くても電極層の脱落が抑制され、電極層が厚くても電極面内での厚さの不均一化が抑制できる。
本発明の非水電解質二次電池用電極は、集電体の両端より中央で貫通孔密度が高くなるように配された複数の貫通孔を有する該集電体上に厚さ50μm以上の電極層が形成されてなることを特徴とするものである。
上記貫通孔を有する集電体を用いることで、スラリー塗布後に溶媒の蒸発が、塗布面だけではなく、該貫通孔を通じて集電体の上下方向(塗布面及び非塗布面の両方向)となるために、バインダが均一に分散するので、密着性が向上する。その為、50μm以上の厚い電極層であっても、電極層が剥離することなく生産できる点でも優れている。したがって、乾燥後の電極層をロールを介して巻き回したり、電極フープに巻き取る際に、電極層の応力が集電体の内部に分散されるので、電極層が剥離することなく生産できる点でも優れている。
さらに、本発明の非水電解質二次電池用電極では、電極の製造過程で集電体にある程度のテンションを張っておいても、中心部に沿って湾曲するために、電極スラリーの乾燥工程で該スラリーが中心部に集まって中央部付近で発生するスラリーの盛り上がりを、中央部の貫通孔を増やすことでその盛り上がりを抑制することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の非水電解質二次電池用電極及びこれを用いてなる非水電解質二次電池の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[非水電解質二次電池用電極]
本発明に係る非水電解質二次電池用電極は、集電体の両端より中央で貫通孔密度が高くなるように配された複数の貫通孔を有する該集電体上に厚さ50μm以上の電極層が形成されてなることを特徴とするものである。以下、集電体と電極層に分けて説明する。
<集電体>
図1は、本発明の非水電解質二次電池用電極に用いられる集電体の代表的な実施形態を模式的に表した平面図である。
図1に示すように、本発明に用いられる集電体1は、その両端A、Aより中央Bで貫通孔密度が高くなるように配された複数の貫通孔3を有するものであればよい。
上記貫通孔密度を高めるには、貫通孔の数を増やす、貫通孔の開口面積を増やす、これらの組合せなどが挙げられるがこれらに何ら制限されるものではなく、これらにより、以下に説明する集電体の開孔率を高めるようにすればよい。
(集電体の開孔率)
集電体の両端(A,A)の開孔率は、{1−(集電体両端の質量/集電体両端の真比重)/(集電体両端の見かけ体積)}の比を百分率に換算して得られるものと定義する。同様に集電体中央(B)の開孔率は、{1−(集電体中央の質量/集電体中央の真比重)/(集電体中央の見かけ体積)}の比を百分率に換算して得られるものと定義する。
集電体両端(A,A)の開孔率は、通常、10〜70%、好ましくは20〜60%、さらに好ましくは30〜50%、最も好ましくは、35〜45%である。集電体両端(A,A)の開孔率が上記に規定する下限値の10%以上の場合には集電体の強度の点で優れている。集電体両端(A,A)の開孔率が上記に規定する上限値の70%以下の場合には集電体の軽量化の点で優れている。
集電体中央(B)の開孔率は、通常、20〜80%、好ましくは30〜80%、さらに好ましくは40〜80%、最も好ましくは、50〜80%である。集電体中央(B)の開孔率が上記に規定する下限値の20%以上の場合には集電体の強度の点で優れている。集電体中央(B)の開孔率が上記に規定する上限値の80%以下の場合には集電体の軽量化の点で優れている。
(集電体の中央Bの占有面積比率)
集電体の両端A、Aと中央Bの占有面積比率としては、本発明の作用効果を損なわない範囲内で任意に決定することができるものである。具体的には集電体の中央Bの占有面積比率は、集電体全面積に対して20〜80%、好ましくは30〜70%の範囲であればよい。集電体の中央Bの占有面積比率が、集電体全面積に対して上記に規定する下限値の20%以上であれば、集電体の強度の点で優れている。集電体の中央Bの占有面積比率が、集電体全面積に対して上記に規定する上限値の80%以下であれば、集電体の軽量化の点で優れている。なお、ここでは、貫通孔は考慮しないものとする。
(集電体の厚み)
集電体の厚みは、特に限定するものではないが、正極用、負極用共に、通常は1〜100μm程度、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μmである。集電体の厚みが上記に規定する下限値の1μm以上の場合には集電体の軽量化の点で優れている。集電体の厚みが上記に規定する上限値の100μm以下の場合には集電体の強度の点で優れている。
集電体の厚みは、正極用、負極用が同じ厚さでもよいが、材質が異なる場合、比重の重い方を薄くする方がセル容積当たりの重量を低減する上での効果が大きい。例えば、正極用としてアルミニウム、負極用として銅を用いた場合、負極用を正極用より薄くすることが、より好ましい。
(集電体の材質)
集電体の材質は、特に制限されるものではない。具体的には、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、チタン、モリブデン、バナジウム、ニオブ、アルミニウム、銅、銀、金、白金およびカーボンよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種類の材質で構成された集電体を用いることができる。また本発明では、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、あるいはこれらの材質の組み合わせのめっき材なども好ましく使える。また、上記材質である金属(アルミニウムを除く)表面に、他の材質であるアルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の上記材質の金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。
(貫通孔の形状)
集電体の貫通孔の形状は、両端A、A及び中央Bのいずれにおいても、電解液が電極集電体に遮断されることなく電極の表裏間を移動できるものであれば、特に制限されるものではなく、任意の形状をとることができる。例えば、円形(図1参照)、楕円形(図2A参照)、三角形、正方形、長方形(図2B参照)、菱形(図2C参照)、五角形以上の多角形、星型、十文字型などの特定の形状のほか、不定形状であってもよい。更にこれらの形状を適当に組み合わせて用いてもよい。以下、貫通孔の形状の好適な実施形態につき説明する。
集電体の貫通孔は、集電タブが設けられる電極の一辺に対して垂直に、貫通孔の長手方向を配置しているのが望ましい。
図2A〜Cは、いずれも好ましい形状の貫通孔を好適に配置した集電体を表した平面図であり、図2Dは、好ましい形状の貫通孔を好適な配置から外れるように配置した集電体を表した平面図である。具体的には、図2A、Dは、楕円形の貫通孔の例を、図2Bは、長方形(矩形)の貫通孔の例、図2Cは、菱形の貫通孔の例を示している。なお、図2A〜Dでは、集電体上に電極層を形成した状態を図示しており、通常、集電タブ5部分を除くほぼ全面に電極層を形成するが、図面上は、集電体1に設けた貫通孔3の配列がわかるように電極層の一部を図示せずに表している。
図2A〜Cに示すように、集電体1の貫通孔3は、集電タブ5が設けられる電極の一辺(図中の上辺)に対して垂直に、貫通孔3の長手方向を配置することにより、電極層7から集電方向へ電流が流れる際の電流経路の方向に対して、貫通孔3同士の間隔が広いために抵抗を小さくできる。その結果、出力向上や発熱の低減に有効に寄与し得る点で優れている。これに対し、図2Dに示すように、集電体1の貫通孔3が、集電タブ5が設けられる電極の一辺(図中の上辺)に対して平行に、貫通孔3の長手方向を配置している場合には、図2A〜Cの好適な実施形態に比して、電極層7から集電方向へ電流が流れる際の電流経路の方向に対して、貫通孔3同士の間隔が狭いために抵抗が相対的に大きくなり、出力向上効果や発熱低減効果が相対的に小さくなる。
また、集電体の貫通孔の形状は、角部を有しないことが望ましい。
図3Aは、角部を有しない形状の貫通孔を配置した集電体を表した平面図であり、図3B〜Cは、角部を有する形状の貫通孔を配置した集電体を表した平面図である。具体的には、図3Aは、楕円形の貫通孔の例を、図3Bは、長方形(矩形)の貫通孔の例、図3Cは、菱形の貫通孔の例を示している。
図3B、Cに示すように、長方形や菱形などの角部を有する形状の貫通孔3を配置した集電体1では、打ち抜き、あるいはエッチングなどで貫通処理する際に、角部を有する形状の貫通孔3において、この角部で切れ込みが存在すると、縦および横方向にテンションをかけて電極スラリーを塗布する際に、集電体1が引っ張りに対して破断しやすい。そのため、図3B、Cのように角部を有する貫通孔を有する集電体原料箔にテンションをかけて均一塗布する際に、集電体原料箔が破断しないように相対的に低いテンションをかけて搬送する必要があり、中心部に沿った湾曲を抑え難く、従来技術では使用困難であった。しかしながら、本発明では、両端に対する中央の貫通孔密度を図3Aに比して大きくすることとで、中心部に沿った湾曲を効果的に抑えることができる。
これに対し、図3Aに示す楕円形や円形のように角部を有しない形状の貫通孔3を配置した集電体1は、図3B,Cと比べて縦および横方向に対する引っ張りに対しても破断しにくい貫通孔形状であるため、より強いテンションをかけて生産することができる。そのため、電極の製造過程で集電体原料箔フープから引き出された集電体原料箔に強いテンションをかけて搬送することができ、中心部に沿った湾曲が抑えられる。そのために、スラリーの乾燥工程でスラリーが中心部に集まって中央部付近で発生する電極層7の盛り上がりをより一層低減することができる。また、集電体と電極層との接着力向上を図ることもできる。
(貫通孔の配列)
集電体の最も近接する貫通孔同士は、集電体の長手方向または短手方向に平行な列をなさないように配列されていることが望ましい。
図4Aは、集電体の最も近接する貫通孔同士は、集電体の長手方向または短手方向に平行な列をなさないように配列された集電体の代表的な実施形態を表した平面図および同平面図内の集電体の中央Bの貫通孔の一部を抜出した部分拡大図であり、図4Bは、集電体の最も近接する貫通孔同士が、集電体の長手方向に平行な列をなすように配列した集電体を表した平面図および同平面図内の集電体の中央Bの貫通孔の一部を抜出した部分拡大図である。
同一面積における貫通孔の総数の面積が等しい図4Aと図4Bの場合、図4Aに示すように、集電体1の互いに最も近接する貫通孔3同士は、集電体1の長手方向(図中の上下方向)または短手方向(図中の左右方向)に平行な列をなさないように、いわば、互い違いに配列されている。詳しくは、図4Aの部分拡大図に示すように、1つの貫通孔3aを基準とした場合に、これに最も近接する貫通孔3bは、集電体1の長手方向(図中の上下方向)または短手方向(図中の左右方向)に平行な列をなさないように、いわば、互い違いに配列されている。なお、貫通孔3aに対し、集電体1の長手方向または短手方向に平行な列をなす貫通孔3cは、貫通孔3aを基準とした場合に、これに最も近接する貫通孔とはならないように間隔をあけた位置に配置(配列)されている。こうして、上下左右方向に対してテンションをかけた際に、貫通孔3の位置(配列)を工夫することで、両端と中央との貫通孔密度差との相乗効果により、より強いテンションをかけて電極スラリーを塗布する際の破断を効果的に抑制することができるものである。図4A、Bにおいて、同一面積における貫通孔の総数の面積が等しい場合、図4Aのように貫通孔の縦横方向での間隔が、図4Bよりも差がないために、電極スラリー塗布時に集電体原料箔に縦横方向にテンションをかけても、図4Bと比べて図4Aのほうが破断抑制効果に優れているものといえる。
一方、図4Bのように集電体1の互いに最も近接する貫通孔3同士が、集電体1の長手方向に平行な列をなすように配列されている。詳しくは、図4Bの部分拡大図に示すように、貫通孔3aを基準とした場合に、これに最も近接する貫通孔3bは、集電体1の長手方向(図中の上下方向)または短手方向(図中の左右方向)に平行な列をなすように配列されている。なお、貫通孔3aに対し、集電体1の長手方向または短手方向に平行な列をなさない貫通孔3dは、貫通孔3aを基準とした場合に、これに最も近接する貫通孔とはならないように間隔をあけた位置に配置(配列)されている。このように集電体の最も近接する貫通孔3同士が、集電体1の長手方向または短手方向に平行な列をなすように配列した集電体では、上記したように、貫通孔の縦横方向での間隔が広く、集電体原料箔が破断しないように図4Aに比して縦横方向に相対的に低いテンションをかけて搬送する必要があり、中心部に沿った湾曲を抑え難く、従来技術では使用困難であった。しかしながら、本発明では、両端A、Aに対する中央Bの貫通孔密度を図4Aに比して大きくすることとで、中心部に沿った湾曲を効果的に抑えることができる。
(貫通孔の断面形状;テーパー)
集電体の貫通孔は、テーパーを有することが望ましい。
図5Aは、集電体の貫通孔が、テーパーを有するように形成された様子を模式的に表した集電体の部分断面図である。図5Bは、図5Aの集電体(原料箔)表面に電極スラリーを塗布した際の様子を模式的に表した集電体の部分断面図である。図5Cは、集電体の貫通孔が、テーパーを持たないように形成された様子を模式的に表した集電体の部分断面図である。図5Dは、図5Cの集電体(原料箔)表面に電極スラリーを塗布した際の様子を模式的に表した集電体の部分断面図である。
図5A、Bに示すように、集電体1の貫通孔3がテーパーを有することで、電極スラリー7aを集電体(原料箔)表面に塗布する際に裏面(非塗布面)への液(電極スラリー)垂れを抑制することができる。かかる作用効果は、図5Bに示したように、まず最初に、テーパーを有する貫通孔3の大きな開口面側の集電体原料箔表面に電極スラリー7aを塗布、乾燥した後に、集電体原料箔のもう一方の面に電極スラリーを塗布し、乾燥を行う場合に有用である。これは、図5Aの集電体では、その原料箔に電極スラリーを塗布する際に、図5Cよりも図5Aの方が表面塗布時のスラリーの裏面への周り込みを抑制できるためである。
一方、図5C、Dに示すように、集電体1の貫通孔3にテーパーを設けない場合には、図5Dに示すように、表面塗布時に窪みが発生しやすく、さらに裏面へ周り込んだスラリーが多くなり、裏面塗布時のスラリーが不均一化するおそれがある。そのため、貫通孔3にテーパーを設けない場合には、貫通孔の形状、大きさ、数をコントロールして、こうした表面塗布時に窪みが発生しにくくして行ってもよいほか、後述するように、スラリーの粘度を上げることで、乾燥工程で貫通孔からのスラリーの垂れ落ちるのを抑制することもできる。好ましくは、電極スラリーの粘度を2000cps以上とし、更に集電体の貫通孔(テーパーを有する場合には小さな開口面)の短辺の径を20μm以上とするのが望ましい。これにより、貫通孔3のテーパーの有無にかかわらず、乾燥工程で貫通孔からスラリーが垂れ落ちるのを極めて効果的に抑制することができる。また、貫通孔の短辺の径が20μm以上とすることで、巻き取り時の電極層の剥離を効果的に抑制することができる。
貫通孔のテーパーの角度θ(図5A参照)としては、テーパーを有する貫通孔3の大きさにもよるが、10〜80°、好ましくは20〜70°の範囲である。但し、これらの範囲に何ら制限されるものではない。上記テーパーの角度θが上記に規定する下限値の10°以上の場合にはテーパーを設けるのが容易である。テーパーの角度θが上記に規定する上限値の80°以下の場合にはスラリーの裏面への周り込みを抑制できる。
(貫通孔の大きさ)
テーパーを有する貫通孔の大きさは、図5Aの下面(裏面)側の小さな開口面の短辺の径が、20μm以上、好ましくは50〜10000μm、より好ましくは100〜5000μmの範囲である。短辺の径が20μm以上であれば、上記したようにスラリーの垂れ落ちるのを極めて効果的に抑制することができ、巻き取り時の電極層の剥離を効果的に抑制することができる。一方、短辺の径の上限値は特に制限されるものではないが上記に規定する好ましい範囲の上限値である10000μm以下であれば、溶媒の蒸発時間を短縮できる。なお、短辺の径は、貫通孔が円形の場合には直径とし、正方形の場合には一辺の長さとする。同様に、短辺と長径に差異がない形状の場合には、その径ないし辺の長さとする。
テーパーを有しない貫通孔の大きさは、短辺の径が、20μm以上、好ましくは50〜10000μm、より好ましくは100〜5000μmの範囲である。短辺の径が20μm以上であれば、上記したようにスラリーの垂れ落ちるのを極めて効果的に抑制することができ、巻き取り時の電極層の剥離を効果的に抑制することができる。一方、短辺の径の上限値は特に制限されるものではないが上記に規定する好ましい範囲の上限値である10000μm以下であれば、スラリーの裏面への周り込みを抑制できる。
<電極層>
本発明に用いられる電極層としては、特に制限されるものではなく、従来公知の電極層を用いることができる。即ち、正極層(正極活物質層)および負極層(負極活物質層)の構成は、特に限定されず、公知の正極層および負極層が適用可能である。電極層には、電極層が正極層であれば正極活物質、電極層が負極層であれば負極活物質が含まれる。
以下の説明では、本発明に用いられる電極層のうち、より高出力且つ高容量とできるリチウムイオン二次電池用電極に適用し得る電極層を例に挙げて、ごく簡単に説明するが、決してこれらに制限されるべきものではない。
正極活物質および負極活物質の材料(材質)としては、特に制限されるものではなく、電池の種類に応じて適宜選択すればよい。
具体的には、正極活物質としては、上記一般式;xLiMO・(1−x)LiNOで表される本発明のリチウムイオン電池用正極材料を正極の主要な活物質として用いるものである。
正極活物質としては、特に制限されるものではなく、従来公知の材料を用いることができる。好ましくは、出力特性、容量、反応性、サイクル耐久性に優れ、低コストな材料であるリチウム−遷移金属複合酸化物(リチウム含有遷移金属酸化物)を好適に使用できる。具体的には、LiMn、LiMnなどのLi・Mn系複合酸化物、LiCoOなどのLi・Co系複合酸化物、LiCr、LiCrOなどのLi・Cr系複合酸化物、LiNiOなどのLi・Ni系複合酸化物、LiFeOなどのLi・Fe系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したもの、例えば、LiNiCo1−x(0<x<1)、LiFePO、LiCo0.5Ni0.5、LiNi0.7Co0.2Mn0.1等)などが挙げられる。更にMnOなどのリチウムを含有していない金属酸化物などが挙げられる。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。またこの他にも、リチウムを電気化学的に挿入、脱離する物質であれば、制限なく用いることができる。
負極活物質としては、従来公知の材料であれば特に制限はされないが、具体的には、カーボンもしくはリチウム−遷移金属複合酸化物を好適に用いることができる。上記負極活物質材料であるカーボンもしくはリチウム−遷移金属複合酸化物としては、特に制限されるものではなく、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛系炭素材料などの結晶性炭素材、カーボンブラック、アセチレンブラック、活性炭、カーボンファイバ、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン(難黒鉛化炭素材料)などの非結晶性炭素材等のカーボン;リチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、さらにこれらに他の元素を添加したリチウム合金;リチウム−チタン複合酸化物(チタン酸リチウム:LiTi12)などのリチウム−移金属複合酸化物やLiTiなどの酸化物;或いはシリコン、スズ、アルミニウム、亜鉛など、リチウムと金属間化合物をする金属などが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。またこの他にも、リチウムを電気化学的に挿入、脱離する物質、或いはリチウムと合金化して体積が増加する材料であれば、制限なく用いることができる。
正極用活物質としてはリチウム−遷移金属複合酸化物を、負極用活物質としてはカーボン若しくはリチウム−遷移金属複合酸化物を用いることが好ましい。容量、出力特性に優れた電池を構成できるからである。
物質それぞれの固有の効果を発現する上で最適な粒径が異なる場合には、それぞれの固有の効果を発現する上で最適な粒径同士をブレンドして用いればよく、全ての活物質の粒径を必ずしも均一化させる必要はない。
負極層(負極活物質層)は、通常のスラリーを塗布(コーティング)する方法のほか、混練法、スパッタ、蒸着、CVD、PVD、イオンプレーティングおよび溶射のいずれかの方法によっても形成することもできる。こうした形成法に適した負極活物質としては、チタン酸リチウムのほか、カーボン、リチウム金属、リチウムアルミ合金、リチウムスズ合金、リチウムケイ素合金などが好適に利用可能である。
電極層(正極層および負極層)は、電子伝導性を高めるための導電材(以下、導電助剤とも称する)、バインダ、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性高分子、電解液など)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)などが含まれ得る。
上記導電助剤(導電材)としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などが挙げられる。導電助剤を含ませることによって、電極で発生した電子の伝導性を高めて、電池性能を向上させることができる。
上記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム、ポリイミドなどが挙げられる。ただし、これらに限られるわけではない。
電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、それらの共重合体などのリチウム塩を含むイオン伝導性高分子(固体高分子電解質)などが挙げられる。
使用されるリチウム塩は、電池の種類に応じて選択すればよい。電解質支持塩(リチウム塩)としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON等の有機酸陰イオン塩、またはこれらの混合物などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
活物質、導電材、バインダ、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性高分子、電解液など)、電解質支持塩(リチウム塩)などの電極の構成材料の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して決定することが好ましい。
[非水電解質二次電池]
本発明に係る非水電解質二次電池は、車両の駆動電源用等として好適に利用できるほか、携帯電話などの携帯機器向けの非水電解質二次電池にも十分に適用可能である。
すなわち、本発明の対象となる非水電解質二次電池は、上記した本発明の非水電解質二次電池用電極を用いてなるものであればよく、他の構成要件に関しては、特に制限されるべきものではない。
例えば、上記非水電解質二次電池を形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得るものである。
非水電解質二次電池内の電解質層の種類で区別した場合には、電解質層に非水系の電解液等の溶液電解質を用いた溶液電解質型電池のほか、電解質層に非水系の高分子電解質を用いたポリマー電池など従来公知のいずれの電解質層のタイプにも適用し得るものである。該ポリマー電池は、更に高分子ゲル電解質(単にゲル電解質ともいう)を用いたゲル電解質型電池、高分子固体電解質(単にポリマー電解質ともいう)を用いた固体高分子(全固体)型電池に分けられる。このうち、ポリマー電池、なかでも固体高分子(全固体)型電池は液漏れが生じないので、液絡の問題が無く信頼性が高く、かつ簡易な構成で出力特性に優れた電池を形成することができる点では有利である。
また、積層型(扁平型)電池構造を採用することで簡単な熱圧着などのシール技術により長期信頼性を確保でき、コスト面や作業性の点では有利である。
さらに、非水電解質二次電池内の電極材料の種類で区別した場合には、より高出力且つ高容量とできることから非水電解質のリチウムイオン二次電池が望ましいが、非水電解質のニッケル−水素電池、ナトリウム電池、マグネシウム電池、硫黄電池、導電性ポリマー電池など、従来公知のいずれの電極材料をも適用し得るものである。
したがって、以下の説明では、より高出力且つ高容量とできる非水電解質のリチウムイオン二次電池(以下、単にリチウムイオン二次電池ともいう)につき図面を用いてごく簡単に説明するが、決してこれらに制限されるべきものではない。
図7は、本発明のリチウムイオン電池の代表的な一実施形態である、扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
図7に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池10では、電池外装材22に高分子−金属を複合したラミネートフィルムを用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合することにより、発電要素(電池要素)17を収納し密封した構成を有している。ここで、発電要素(電池要素)17は、正極集電体11の両面に正極層(正極活物質層とも称されている。以下、正極層として説明する。)12が形成された正極板、電解質層13、および負極集電体14の両面(発電要素の最下層および最上層用は片面)に負極層(負極活物質層とも称されている。以下、負極層として説明する。)15が形成された負極板を積層した構成を有している。この際、一の正極板片面の正極層12と前記一の正極板に隣接する一の負極板片面の負極層15とが電解質層13を介して向き合うようにして、正極板、電解質層13、負極板の順に複数積層されている。
これにより、隣接する正極層12、電解質層13、および負極層15は、一つの単電池層16を構成する。従って、本実施形態のリチウムイオン二次電池10は、単電池層16が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素(電池要素;積層体)17の両最外層に位置する最外層正極集電体11aには、いずれも片面のみに正極層12が形成されている。なお、図7と正極板と負極板の配置を変えることで、発電要素(電池要素)17の両最外層に最外層負極集電体(図示せず)が位置するようにし、該最外層負極集電体の場合にも片面のみに負極層15が形成されているようにしてもよい。
また、上記の各電極板(正極板及び負極板)と導通される正極タブ18および負極タブ19が、正極端子リード20および負極端子リード21を介して各電極板の正極集電体11及び負極集電体14に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられ、上記熱融着部に挟まれて上記の電池外装材22の外部に露出される構造を有している。
以下、チウムイオン二次電池の各構成要件を中心に説明するが、本発明の特徴部である非水電解質二次電池用電極以外は、従来公知のものを用いることができる。また、本発明のリチウムイオン二次電池を用いて、組電池や車両を構成することもできる。
[集電体]
本発明の非水電解質二次電池用電極において説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
[電極層(正極層及び負極層)]
本発明の非水電解質二次電池用電極において説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
[電解質層]
電解質層は、液体、ゲル、固体のいずれの相であってもよい。電池が破損した際の安全性や液絡の防止を考慮すると、電解質層は、ゲルポリマー電解質層、全固体電解質層のような固体電解質を用いることが好ましい。電解質層として固体電解質(詳しくは、後述するが、高分子ゲル電解質、固体高分子型電解質、無機固体型電解質すべてを含めるものとする)を用いることにより漏液を防止することが可能となり、液絡を防ぎ信頼性の高いリチウムイオン電池を構成できるからである。
電解質層としてゲルポリマー電解質層(高分子ゲル電解質)を用いることで、電解質の流動性がなくなり、集電体への電解質の流出をおさえ、各層間のイオン伝導性を遮断することが可能になる。ゲル電解質のホストポリマーとしては、PEO、PPO、PVdF、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF−HFP)、PAN、PMA、PMMAなどがあげられる。また、可塑剤としては、従来公知のリチウムイオン電池に用いられる電解液を用いることが可能である。
上記ゲルポリマー電解質(高分子ゲル電解質)は、PEO、PPOなどの全固体型高分子電解質に、従来公知のリチウムイオン電池で用いられる電解液を含ませることにより作製される。PVdF、PAN、PMMAなど、リチウムイオン伝導性をもたない高分子の骨格中に、電解液を保持させたものもゲルポリマー電解質(高分子ゲル電解質)にあたる。ゲルポリマー電解質(高分子ゲル電解質)を構成するポリマーと電解液との比率は、特に限定されず、ポリマー100%を全固体高分子電解質、電解液100%を液体電解質とすると、その中間体はすべてゲルポリマー電解質(高分子ゲル電解質)の概念に含まれる。また、セラミックなどの無機固体などイオン伝導性を持つ無機固体型電解質も全固体型電解質にあたる。よって、上記高分子ゲル電解質、固体高分子型電解質、無機固体型電解質すべてを含めて固体電解質とする。
電解質層としては、具体的には、従来公知の材料として、(a)高分子ゲル電解質(ゲルポリマー電解質)、(b)全固体高分子電解質(高分子固体電解質、無機固体型電解質)、(c)液体電解質(電解液)または(d)これら電解質を含浸させたセパレータ(不織布セパレータを含む)を用いることができる。
(a)ゲルポリマー電解質(高分子ゲル電解質)
ゲルポリマー電解質(高分子ゲル電解質)とは、ポリマーマトリックス中に電解液を保持させたものをいう。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、導電性高分子膜などの集電体層への電解質の流出をおさえ、各層間のイオン伝導性を遮断することが容易になる点で優れている。
高分子ゲル電解質として用いるポリマーマトリックス(高分子)ないしゲル電解質のホストポリマーとしては、たとえば、ポリエチレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー(PEO)、ポリプロピレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸エステル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVdF−HFP)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびそれらの共重合体が望ましく、中でもPEO、PPOおよびそれらの共重合体、あるいは、PVdF−HFPを用いることが望ましい。また、可塑剤としては通常リチウムイオン電池に用いられる電解液を用いることが可能である。かかる電解液とは、電解質塩を溶媒に溶かしたものであり、電解質としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種が、溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)およびそれらの混合物が望ましい。
本発明におけるゲル電解質中の電解液の割合としては、特に制限されるべきものではないが、イオン伝導度などの観点から、数質量%〜98質量%程度とするのが望ましい。本発明では、電解液の割合が70質量%以上の、電解液が多いゲル電解質について、特に効果がある。
(b)全固体型電解質(全固体高分子電解質、高分子固体電解質、無機固体型電解質)
電解質として全固体型電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、集電体への電解質の流出がなくなり各層間のイオン伝導性を遮断することが可能になる点で優れている。
全固体高分子電解質としては、例えば、PEO、PPO、これらの共重合体などの公知の固体高分子電解質、セラミックなどのイオン伝導性を持つ無機固体型電解質が挙げられる。固体高分子電解質中には、イオン伝導性を確保するためにリチウム塩が含まれる。リチウム塩としては、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SO、またはこれらの混合物などが使用できる。
(c)液体電解質(電解液)
電解液とは、電解質塩を溶媒に溶かしたものが挙げられる。ここで、電解質としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種が、溶媒としては、EC、PC、GBL、DMC、DEC、MECおよびそれらの混合物が望ましい。
(d)上記電解質を含浸させたセパレータ(不織布セパレータを含む)
セパレータに含浸させることのできる電解質としては、既に説明した(a)〜(c)と同様のものを用いることができる。
上記セパレータとしては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーからなる多孔性シートおよび不織布を挙げることができる。
多孔性シートとしては、例えば、微多孔質セパレータを用いることができる。該ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミド、アラミドが挙げられる。上記セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできないが、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。上記セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)、その空孔率は20〜80%であることが望ましい。
不織布としては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。不織布セパレータの空孔率は50〜90%であることが好ましい。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。厚さが5μm未満では電解質の保持性が悪化し、200μmを超える場合には抵抗が増大することになる。
[正極および負極タブ]
本発明のリチウムイオン電池においては、電池外部に電流を取り出す目的で、各集電体に、あるいは最外層集電体に、電気的に接続されたタブ(正極タブおよび負極タブ)が電池外装材の外部に取り出されている。具体的には、図7に示すように各正極集電体に電気的に接続された正極タブと各負極集電体に電気的に接続された負極タブとが、電池外装材であるラミネートシートの外部に取り出される。
タブ(正極タブおよび負極タブ)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用のタブとして従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極タブと負極タブとでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。また、各集電体あるいは最外層集電体を延長することにより正極および負極タブとしてもよいし、別途準備した正極および負極タブを各集電体あるいは最外層集電体に接続してもよい。
[正極および負極リード]
正極および負極リードに関しても、必要に応じて使用する。例えば、各集電体あるいは最外部の集電体から出力電極端子となる正極タブ及び負極タブを直接取り出す場合には、正極および負極リードは用いなくてもよい。
正極および負極リードの材料は、公知のリチウムイオン電池で用いられるリードを用いることができる。なお、電池外装材から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
[電池外装材]
電池外装材としては、従来公知の金属缶ケースを用いることができほか、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた発電要素(電池要素)を覆うことができる袋状のケースを用いることができる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。
[リチウムイオン二次電池の外観構成]
図8は、本発明に係るリチウムイオン電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な非双極型あるいは双極型のリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
図8に示すように、積層型の扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素(電池要素)57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素(電池要素)57は、正極タブ58及び負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素(電池要素)57は、先に説明した図7に示す非双極型のリチウムイオン二次電池10の発電要素(電池要素)17に相当するものであり、正極層12、電解質層13および負極層15で構成される単電池層(単セル)16が複数積層されたものである。
なお、本発明のリチウムイオン電池は、図7に示すような積層型の扁平な形状のものに制限されるものではなく、巻回型のリチウムイオン電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
また、図8に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではなく、正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図8に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
本発明のリチウムイオン電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
[組電池]
本発明の組電池は、本発明のリチウムイオン二次電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。なお、本発明の組電池では、本発明の非双極型リチウムイオン二次電池と双極型リチウムイオン二次電池を用いて、これらを直列に、並列に、または直列と並列とに、複数個組み合わせて、組電池を構成することもできる。
また、図9は、本発明に係る組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図9Aは組電池の平面図であり、図9Bは組電池の正面図であり、図9Cは組電池の側面図である。
図9に示すように、本発明に係る組電池300は、本発明のリチウムイオン二次電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池250を形成し、この装脱着可能な小型の組電池250をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池300を形成することもできる。図9Aは、組電池の平面図、図9Aは正面図、図9Cは側面図を示しているが、作成した装脱着可能な小型の組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個のリチウムイオン二次電池を接続して組電池250を作成するか、また、何段の組電池250を積層して組電池300を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
[車両]
本発明の車両は、本発明のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を搭載したことを特徴とするものである。本発明の高容量正極を用いると高エネルギー密度の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。言い換えれば、本発明のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。本発明のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
図10は、本発明の組電池を搭載した車両の概念図である。
図10に示したように、組電池300を電気自動車400のような車両に搭載するには、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は高い耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。本発明の組電池を搭載した車両としては、図10に示すような電気自動車のほか、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車などに幅広く適用できるものである。
[リチウムイオン電池の製造方法]
次に、本発明のリチウムイオン電池の製造方法としては、上記にて説明した本発明の電極を適当な工程にて行うこと以外は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適用して作製することができる。
よって、以下では、本発明の非水電解質二次電池用電極の製造方法を中心に説明し、その以外のリチウムイオン二次電池の製造方法については、簡単に説明する。ただし、本発明の製造方法は、これらに何ら制限されるものでない。
[非水電解質二次電池用電極の製造方法]
本発明の非水電解質二次電池用電極電池用電極(以下、単に電極または正極または負極ともいう)の作製は、上記に説明したような貫通孔を設けた集電体を用いる以外は特に制限されることなく、公知になった電極作製技術により実施できる。以下、簡単に説明する。
本発明の電極の製造方法では、集電体の両端より中央で貫通孔密度が高くなるように複数の貫通孔を設けた集電体原料箔を用いて、搬送される前記集電体原料箔上に電極スラリーを塗布し、乾燥を行って厚さ50μm以上の電極層を形成するのが望ましい。特に本発明では、上記電極層を形成した後に、ロールを介して巻き回す操作および/または電極フープに巻き取る操作を経て、所定の電極サイズに切り出す場合に特に有効である。従来、電極層が厚くなると集電体原料箔から剥離して電極層の脱落が発生していた。本発明のような貫通孔を有する集電体原料箔を用いることで、溶媒の蒸発が上下方向となるために、バインダが均一に分散するので、電極層が厚くてもバインダ含有量を増やさずに密着性が向上する。また、乾燥後の電極をロールを介して巻き回したり、電極フープに巻き取る際に、電極層の曲げ応力が集電体(原料箔)の内部に分散されるので、電極層が剥離することもなく、またバインダを増やさなくとも精度よく厚塗りの電極を生産できる。また、電極の製造過程で金属箔にある程度のテンションを張っておいても、中心部に沿って湾曲するために、スラリーの乾燥工程でスラリーが中心部に集まって中央部付近で発生する電極層の盛り上がりを、中央部の貫通孔を増やすことでその盛り上がりを抑制することができる。
更に、前記集電体原料箔の片面に電極スラリーを塗布し、乾燥を行った後に、前記集電体原料箔のもう一方の面に電極スラリーを塗布し、乾燥を行うのが望ましい。スラリーの表面に塗布する際に裏面への液垂れを抑制することができるからである。ただし、上記したように貫通孔の密度差や大きさ、形状、テーパーなどを適当に調整することで、集電体原料箔の両面に同時に電極スラリーを塗布し、乾燥を行うこともできる。
また、前記貫通孔がテーパーを有する集電体原料箔を用い、前記貫通孔の大きな開口面側の集電体原料箔上に電極スラリーを塗布し、乾燥を行った後に、前記集電体原料箔のもう一方の面に電極スラリーを塗布し、乾燥を行うのがより好ましい。これについては、図5A〜Dを用いて、非水電解質二次電池用電極の項にて説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
更に、本発明では、テンションを張って水平方向に搬送される前記集電体原料箔上に電極スラリーを塗布することが望ましい。これは特許文献1のように垂直上方に搬送する場合には、どうしても液垂れが発生しやすくなるなどの問題があるが、テンションを張って水平方向に搬送する場合には、貫通孔からの液垂れのみを考慮すればよく、例えば、前記電極スラリーの粘度を2000cps以上とし、かつ前記集電体の貫通孔の短辺の径を20μm以上とすることにより、貫通孔からの液垂れの問題を解消することができ、なおかつ、中心部に沿って湾曲するために、スラリーの乾燥工程でスラリーが中心部に集まって中央部付近で発生する電極層の盛り上がりを、中央部の貫通孔を増やすことでその盛り上がりを抑制することができるものである。
製造時の集電体原料箔にかける上記テンションとしては、通常1N〜500N、好ましくは5N〜400N、より好ましくは10N〜300Nの範囲である。該テンションが上記に規定する下限値の1N以上であれば、集電体の湾曲を抑制できる。一方、該テンションが上記に規定する上限値の500N以下であれば、集電体の破断を抑制できる。
上記集電体原料箔は、連続して電極を作製する際に通常用いられてなる集電体にカットする前の帯状の金属箔などを用いることができる。該帯状の金属箔に、両端より中央で貫通孔密度が高くなるように複数の貫通孔を設ける方法としても、特に制限されるものではなく、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属網、発泡体、エッチングなどにより貫通孔を付与することができる。
また、上記電極スラリーは、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を用いて作製することができる。例えば、正極ないし負極活物質と、カーボンブラック、黒鉛、金属粉などの導電助剤と、バインダとしてPVdF、SBRとCMC、アクリロニトリルなどの高分子材料とをNMPあるいは水に分散させて電極スラリーを作製することができる。
上記スラリーの粘度としては、既に説明したように、乾燥工程で貫通孔からのスラリーの垂れ落ちるのを抑制するのを防止することができるものであればよく、貫通孔の大きさ、形状、更にテーパーの有無やテーパー角度などによっても異なるが、通常、1500cps以上、好ましくは2000cps以上、より好ましくは2500〜60000cps、特に好ましくは5000〜40000cpsの範囲である。なお、上限値については特に制限されるものではないが、上記に規定する60000cps以下とするのがスラリーの分散状態を確保できる。該スラリーの粘度は、例えば、NMPあるいは水等により調整することができる。
以上が、電極の製造方法の説明であるが、本発明は、これらに何ら制限されるものではない。以下で電池の作製方法をごく簡単に説明する。
電解質が電解液の電池の作製は、前記のようにして作製した正極と負極から、少し負極を大きくして切り出し、それぞれを、適当な温度、好ましくは90℃以上の真空乾燥機にて、適当な時間、好ましくは1日乾燥して用いることができる。正極と負極の間に、所望の厚さセパレータを介して最外側が負極になるようにして正極と負極を交互に積層して、各正極と負極を束ねて電極タブにリードを溶接して、この積層体を正負極のリードを取り出した構造にて、アルミニウムのラミネートフィルムバック等の電池外装材に収めて、注液機により電解液を注液して、減圧下シールをして電池とすることができる。
電解質が電解液の電池の他、電解質がゲルの電池、全固体ポリマーの電池の作製は、公知になった我々の技術により実施できるのでここでは省略する。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
実施例1及び比較例1
以下の負極活物質、バインダ及びNMPからなる材料を括弧内に示した重量比(NMPは除く)で混合して負極スラリーを作製した。
・負極活物質として、平均粒径5μmのハードカーボン(95wt%)を用いた。
・バインダとして、PVDF(5wt%)を用いた。
・2000cpsのスラリー粘度調整溶媒として、NMP(適量)を用いた。
次に、比較例1として、図6Bに示すように、貫通孔のないCu集電箔(縦300mm×横400mm×厚さ10μm)を用い、実施例1として、直径20μmで、集電体全体の開孔率40%の球状貫通孔を、図6Aに示すように、両端より中央で貫通孔密度が高くなるように形成されたCu集電箔(縦300mm×横400mm×厚さ10μm)を用いた。これらの集電体の片面に4mg・cm−2となるように上記負極スラリーを塗布し、80℃で1時間乾燥後することで厚さ50μmの負極層が形成された負極をそれぞれ得た。ここでいう厚さとは、後述する実施例2で行った厚み測定と同様にA〜Eの5箇所で測定した平均値とした。尚、本実施例1及び比較例1では、テンションをかけず、既に集電体の大きさに切断したものを用いて実験したため、いずれも均一な状態であった。
ここで、実施例1の集電箔は、図6Aに示すように両端の開孔率20%とし、中央の開孔率60%のものを用いた。また実施例1の集電体の中央の占有面積比率は、集電体全面積に対して50%とした。また、図6A、Bでは、集電体の片面に集電タブ5部分を除くほぼ全面に負極層を形成したが、図面上は、集電体1に設けた貫通孔3の配列がわかるように電極上部の負極層を図示せずに表している。
得られた負極を丸棒(直径10cm)に巻きつけ、元に戻した後の負極、特に集電体と負極層との接着状況の様子を観察した。結果を下記表1に示す。
Figure 2008269890
実施例2〜3及び比較例2〜3
以下の正極活物質、導電助剤、バインダ及びNMPからなる材料を括弧内に示した重量比(NMPは除く)で混合して正極スラリーを作製した。
・正極活物質として、平均粒径1μmのLiFePO(90wt%)を用いた。
・導電助剤としてカーボンブラック(6wt%)を用いた。
・バインダとして、PVDF(4wt%)を用いた。
・20000cpsのスラリー粘度調整溶媒として、NMP(適量)を用いた。
次に、比較例3として、図6Fに示すように、貫通孔のないAl集電箔(縦300mm×横400mm×厚さ20μm)を用い、実施例2〜3及び比較例2として、図6C〜Eに示すように、貫通孔の長辺の直径4mm、短辺の直径2mmで、集電体全体の開孔率40%で、両端A、Aに分割して中央Bの貫通孔密度を下記表2に示す3種類としたAl集電箔(縦300mm×横400mm×厚さ20μm)を用いた。これらの集電体の片面全体に30mg・cm−2となるように上記正極スラリーを塗布し、80℃で1時間乾燥後することで下記表2に示す厚さの正極層が形成された正極をそれぞれ得た。
ここでいう厚さとは、正極の短手方向をA〜Eに等間隔で均等に5分割し(図6C参照、それぞれの中央(中心)部分の厚さを測定した。尚、本実施例2〜3及び比較例2〜3では、いずれも集電体の長手方向(図中の上下方向)に5Nのテンションをかけて、実際の製造方法を模して行った。
ここで、実施例2の集電箔は、図6Cに示すように両端A、Aの開孔率20%とし、中央Bの開孔率60%のものを用いた。また実施例2の集電体の中央の占有面積比率は、集電体全面積に対して50%とした。実施例3の集電箔は、図6Dに示すように両端A、Aの開孔率24%とし、中央Bの開孔率74%のものを用いた。また実施例3の集電体の中央の占有面積比率は、集電体全面積に対して33%とした。比較例2の集電箔は、図6Dに示すように両端A、A及び中央Bの開孔率が均等になるように共に40%ものを用いた。また比較例2の集電体の中央の占有面積比率は、集電体全面積に対して50%とした。また、図6C〜Fでは、集電体の片面に集電タブ(図示せず)部分を除くほぼ全面に正極層を形成したが、図面上は、集電体1に設けた貫通孔3の配列がわかるように正極層を図示せずに表している。
Figure 2008269890
実施例2では、4分割したうち中央の2分割分を中央Bとした。実施例3では、3分割したうち中央の1分割分を中央Bとした。比較例2では、便宜的に集電体の全面積の50%に相当する中央部分を中央Bとした。
上記表2より、本実施例2〜3は比較例2〜3に比して、スラリーの乾燥工程でスラリーが中心部に集まって中央部付近で発生する正極層の盛り上がりを、中央の貫通孔を増やすことで、その盛り上がりを効果的に抑制することができ、精度よく厚塗りできることが確認できた。こうした結果から、本発明の電極を用いて電池に組み上げた場合には、電極の積層方向において、中央部と周辺部との間で歪が生じにくく、密着性不良による剥離が生じ難いことから、電池性能の低下を格段に抑制することができ、性能及び耐久性・品質に優れた電池を提供し得るものといえる。
本発明のる非水電解質二次電池用電極に用いられる集電体の代表的な実施形態を模式的に表した平面図である。 好ましい形状の貫通孔を好適に配置した集電体を表した平面図であり、楕円形の貫通孔の例を示す図面である。 好ましい形状の貫通孔を好適に配置した集電体を表した平面図であり、長方形(矩形)の貫通孔の例を示す図面である。 好ましい形状の貫通孔を好適に配置した集電体を表した平面図であり、菱形の貫通孔の例を示す図面である。 好ましい形状の貫通孔を好適な配置から外れるように配置した集電体を表した平面図であり、楕円形の貫通孔の例を示す図面である。 角部を有しない形状の貫通孔を配置した集電体を表した平面図であり、楕円形の貫通孔の例を示す図面である。 角部を有する形状の貫通孔を配置した集電体を表した平面図であり、長方形(矩形)の貫通孔の例を示す図面である。 角部を有する形状の貫通孔を配置した集電体を表した平面図であり、菱形の貫通孔の例を示す図面である。 集電体の最も近接する貫通孔同士は、集電体の長手方向または短手方向に平行な列をなさないように配列された集電体の代表的な実施形態を表した平面図および同平面図内の集電体の中央Bの貫通孔の一部を抜出した部分拡大図である。 集電体の最も近接する貫通孔同士が、集電体の長手方向に平行な列をなすように配列した集電体を表した平面図および同平面図内の集電体の中央Bの貫通孔の一部を抜出した部分拡大図である。 集電体の貫通孔が、テーパーを有するように形成された様子を模式的に表した集電体の部分断面図である。 図5Aの集電体(原料箔)表面に電極スラリーを塗布した際の様子を模式的に表した集電体の部分断面図である。 集電体の貫通孔が、テーパーを持たないように形成された様子を模式的に表した集電体の部分断面図である。 図5Cの集電体(原料箔)表面に電極スラリーを塗布した際の様子を模式的に表した集電体の部分断面図である。 実施例1に用いた集電体を表した平面図である。 比較例1に用いた集電体を表した平面図である。 実施例2用いた集電体を表した平面図と、実施例2〜3及び比較例2〜3の正極層の厚さ測定箇所である、正極の短手方向をA〜Eに等間隔で均等に5分割した際のA〜Eの割り振りの様子を表したイメージ図を併記したものである。 実施例3に用いた集電体を表した平面図である。 比較例2に用いた集電体を表した平面図である。 比較例3に用いた集電体を表した平面図である。 本発明のリチウムイオン電池の代表的な一実施形態である積層型の扁平な非双極型リチウムイオン二次電池の概要を模式的に表した断面概略図である。 本発明に係るリチウムイオン電池の代表的な実施形態である積層型の扁平なリチウムイオン二次電池の外観を模式的に表した斜視図である。 本発明に係る組電池の代表的な実施形態を模式的に表した外観図であって、図9Aは組電池の平面図であり、図9Bは組電池の正面図であり、図9Cは組電池の側面図である。 本発明の組電池を搭載した車両の概念図である。
符号の説明
1 集電体、
3 貫通孔、
5 集電タブ(正極タブないし負極タブ)、
7 電極層、
7a 電極スラリー、
10 非双極型リチウムイオン二次電池、
11 正極集電体、
11a 最外層正極集電体、
12 正極(正極活物質層)、
13 電解質層、
14 負極集電体、
15 負極(負極活物質層)、
16 単電池層(=電池単位ないし単セル)、
17、57 発電要素(電池要素;積層体)、
18、58 正極タブ、
19、59 負極タブ、
20 正極端子リード、
21 負極端子リード、
22、52 電池外装材(たとえばラミネートフィルム)、
50 リチウムイオン二次電池、
250 小型の組電池、
300 組電池、
310 接続治具、
400 電気自動車。

Claims (14)

  1. 集電体の両端より中央で貫通孔密度が高くなるように配された複数の貫通孔を有する該集電体上に厚さ50μm以上の電極層が形成されてなることを特徴とする非水電解質二次電池用電極。
  2. 前記集電体の貫通孔が、集電タブが設けられる電極の一辺に対して垂直に、貫通孔の長手方向を配置していることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
  3. 前記集電体の貫通孔の形状が、角部を有しないことを特徴とする請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極。
  4. 前記集電体の最も近接する貫通孔同士が、集電体の長手方向または短手方向に平行な列をなさないように配列されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用電極。
  5. 前記集電体の貫通孔が、テーパーを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用電極。
  6. 前記集電体の貫通孔の短辺の径が、20μm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用電極。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の非水電解質二次電池用電極を用いてなることを特徴とする非水電解質二次電池。
  8. 請求項7に記載の非水電解質二次電池を搭載した車両。
  9. 集電体の両端より中央で貫通孔密度が高くなるように複数の貫通孔を設けた集電体原料箔を用いて、
    搬送される前記集電体原料箔上に電極スラリーを塗布し、乾燥を行って厚さ50μm以上の電極層を形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の非水電解質二次電池用電極の製造方法。
  10. 前記電極層を形成した後に、ロールを介して巻き回す操作および/または電極フープに巻き取る操作を経て、所定の電極サイズに切り出すことを特徴とする請求項9に記載の非水電解質二次電池用電極の製造方法。
  11. 前記集電体原料箔の片面に電極スラリーを塗布し、乾燥を行った後に、
    前記集電体原料箔のもう一方の面に電極スラリーを塗布し、乾燥を行うことを特徴とする請求項9または10に記載の非水電解質二次電池用電極の製造方法。
  12. 前記貫通孔がテーパーを有する集電体原料箔を用い、
    前記貫通孔の大きな開口面側の集電体原料箔上に電極スラリーを塗布し、乾燥を行った後に、前記集電体原料箔のもう一方の面に電極スラリーを塗布し、乾燥を行うことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の非水電解質二次電池用電極の製造方法。
  13. テンションを張って水平方向に搬送される前記集電体原料箔上に電極スラリーを塗布することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用電極の製造方法。
  14. 前記電極スラリーの粘度が、2000cps以上で、かつ前記集電体の貫通孔の短辺の径が、20μm以上であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用電極の製造方法。
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