JP2011142047A - 電極、マグネシウムイオン2次電池、および電力システム - Google Patents

電極、マグネシウムイオン2次電池、および電力システム Download PDF

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Abstract

【課題】より高い電圧やより高いエネルギを安全に出力することが可能な電池を形成するための電極を提供する。また、上記電極を用いたマグネシウムイオン2次電池、当該マグネシウムイオン2次電池からなる電力システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る電極はMgSi(0<x≦3)を含む、マグネシウムイオン2次電池用の電極であり、当該電極は負極2である。負極2に用いられるMgSiは、粉体を焼結させたものであってもよいし、MgSiは、導電体からなる構造物の一の表面上に配置された箔であってもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は電極、マグネシウムイオン2次電池、および電力システムに関するものであり、具体的にはマグネシウムイオン2次電池用の電極、当該電極を用いたマグネシウムイオン2次電池、および当該マグネシウムイオン2次電池を用いた電力システムに関するものである。
近年の地球温暖化対策などの環境対策として、低炭素社会を実現しようという試みがなされている。具体的には、従来の石油や石炭などを用いたエネルギに代わる、太陽光や風力発電等の新エネルギの実用化に向けて、充放電が可能な2次電池の必要性が高まってきている。2次電池としては、非水系の電解液を使用することが好ましいと考えられる。これは非水系の電解液を用いた電池は、水の電気分解電圧を超える高い電圧が得られ、また高いエネルギを得ることができるためである。
現在、2次電池としては、主に携帯用電子機器の電源として用いられるリチウムイオン電池が急速に普及しており、今後は電気自動車や電力貯蔵装置への参入も計画されている。これはリチウムイオン電池が高エネルギ密度を有し、長寿命であり、最も性能が優れるとされているためである。しかしリチウムは資源量(地球上の地表付近に存在する元素の割合)を示すクラーク数の値が小さい。つまりリチウムは鉱産資源としての存在量が乏しく、資源の枯渇、高コストという課題を抱えている。このためリチウムイオン電池は、携帯用電子機器よりも大型の、電気自動車などの機器への適用が困難となっている。そこで、資源が豊富でリチウムよりも低コストなマグネシウムを用いた電池(マグネシウムイオン電池)の開発が進められている。マグネシウムイオン電池は、携帯電話の基地局用のバックアップ電源等に使用する試みがなされている。たとえば特公2005−505099号公報(特許文献1)には、金属陽極がマグネシウムである電気化学的電池が開示されている。
特公2005−505099号公報
特許文献1に開示されている電気化学的電池は、金属陽極と、インターカレーション陰極と、固体ゲル状非水電解質とを含む。当該電気化学的電池は、陽極が上述したようにマグネシウムであるが、陰極はCuMgMo(0<x≦1かつ0<y≦2)で表わされるシェブレル相インターカレーション陰極である。
電気化学的電池以外の、たとえば上述したバックアップ電源用の電池においても、マグネシウム電池の陽極(負極)には金属マグネシウム(Mg)が使用されている。しかし負極がマグネシウムからなるマグネシウムイオン2次電池は、当該電池の放電中に容易に酸化され、酸化マグネシウム(MgO)が形成される。このMgOが金属Mgの元素の表面を薄膜状に被覆する。負極を覆うMgOの薄膜は電流の不良導体からなる不動態膜であるため当該負極の導電性が低下し、電極としての機能が低下する。
これを抑制するために、上記マグネシウムイオン2次電池の電解液として従来からたとえばRMgBr/THFが用いられる。ここで電解液とは、正極や負極を浸漬したり、正極と負極との間にイオンを伝導し、また正極と負極との短絡を抑制するための主として液相物質のことである。RMgBrとはグリニャール試薬のことであり、Rは有機基を表わす。またTHFはテトラヒドロフランを表わす。グリニャール試薬はMgOを溶解し、MgとOとに分解する。このためグリニャール試薬をTHFの溶液中に加えると、不導体のMgOが消滅し、負極の導電性が回復する。
グリニャール試薬は酸化されやすく、酸化電位が小さいという問題がある。つまり、高い電圧を正極に印加すると電解質が分解し始める。このため、この電解液を用いる限り、出力電圧および充電電圧が高い電池を作製することができない。当該マグネシウムイオン2次電池の出力する電圧の低下により、当該電池の出力するエネルギが低下する可能性がある。
また、グリニャール試薬を溶解することが可能な溶媒はTHFやANに限られるため、RMgBrをTHFに溶解した溶液が、Mgを電極とする電池の電解液として用いられる。しかしTHFの沸点は66℃、ANの沸点は82℃と低いため、これらの溶媒は取り扱いに注意を要する。このため電解液としてTHFを用いない溶媒を用いることがより好ましい。
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものである。その目的はより高い電圧やより高いエネルギを安全に出力することが可能な電池を形成するための電極を提供することである。また、上記電極を用いたマグネシウムイオン2次電池、当該マグネシウムイオン2次電池からなる電力システムを提供することである。
本発明に係る電極は、MgSi(0<x≦3)を含む、マグネシウムイオン2次電池用の電極である。本発明の発明者は鋭意研究の結果、マグネシウムの2次電池用の電極としてMgSi(0<x≦3)を含む電極を用いれば、Siを含まない金属Mgからなる負極に比べて、当該電極の表面上にMgOの不動態の薄膜の発生が抑制されることを見出した。このため当該電極は、MgOを分解することによりMg2+が多数生成され、当該電池の動作が遅延することによる起電力の低下、およびエネルギの低下を抑制することができる。つまり当該電極を用いた電池の出力する電圧やエネルギを高めることができる。
また、MgOの発生が抑制されるため、当該電池の電解液として、MgOを分解するためのRMgBrをTHFに溶解させた溶液(RMgBr/THF)を用いる必要がない。このため、酸化分解しにくい電解液を使用することで高い電圧で電池を作動することができる。さらに、当該電池の電解液として、THFより沸点の高い溶媒を用いることができる。つまり当該電池の安全性を向上することができる。
本発明に係る上記電極に含まれるMgSiは、粉体を焼結させたものであってもよいし、MgSiは、導電体からなる構造物の一の表面上に配置された箔であってもよい。つまり本発明に係るMgSiを含む電極は、たとえばSiを主成分とする粉末をMgと反応させることにより形成された、MgSiの粉末を焼結させることにより、一定の厚みを有する構造物である電極として形成されたものであってもよい。あるいは当該電極は、たとえばSUSなどからなる矩形状の構造物の一の表面上に薄膜として形成されたものであってもよいし、これに準ずる形状を有する箔として形成されたものであってもよい。いずれにせよMgSi(0<x≦3)を含む電極を負極に用いることにより、上述したようにMgOの不動態膜の生成が抑制される。このため当該マグネシウムイオン2次電池の起電力やエネルギを高くし、電解液の選択範囲を広くすることができる。
以上に述べたMgSiは結晶構造がCaF型構造であることが好ましい。結晶構造がCaF型構造であれば、MgSiの有する、Mgの挿入脱離に伴う体積変化が小さいという効果をより顕著にすることができる。
本発明に係る電極を用いたマグネシウムイオン2次電池は、上述したように起電力や出力エネルギを高くし、電解液の選択範囲を広くすることができるという効果をより顕著にすることができる。当該マグネシウムイオン2次電池は、電気容量が10Ah以上100Ah以下であることが好ましい。当該マグネシウムイオン2次電池のコスト、安全性および燃費のバランスを考慮すれば、マグネシウムイオン2次電池の電気容量は上述したように10Ah以上100Ah以下が適正値となる。なお上述した電気容量の範囲のなかでも、30Ah以上70Ah以下であることがより好ましい。
以上に述べたマグネシウムイオン2次電池からなる電力システムは、上述したようにMgOの発生が抑制されるため、沸点の高い安全な電解液を用いたマグネシウムイオン2次電池から構成されるものである。このため、長期間にわたって安定した電気特性を供給することができる。
本発明によれば、負極の金属(Mg)が酸化されることによる不動態膜(MgO)の発生が抑制される。したがって、当該電極を被覆する不動態膜を分解するための、酸化分解電圧が低く、沸点の低い薬品を用いる必要がないため、高い電圧を供給することが可能で、安全性の高い電解液を用いた電池を提供することができる。また、上記電極を用いた高性能なマグネシウムイオン2次電池、当該マグネシウムイオン2次電池からなる電力システムを提供することができる。
本発明に係る電極の一般的な使用態様を説明するための概略断面図である。 図1の負極と集電体とが接着された領域の態様を示す概略図である。 図1および図2の負極の製造方法を説明するためのフローチャートである。 図3の工程(S20)において、Siの粉末からなる構造物を用いてMgとSiとを合成する態様を示す概略断面図である。 図4の処理を行なうことにより形成される、薄膜形状のMgSiの態様を示す概略断面図である。 スパッタリング法による、MgとSiとの合成方法の態様を示す概略断面図である。 図6のSi薄膜が焼結されることにより、MgSiの薄膜が基板上に形成された態様を示す概略断面図である。 実施の形態1に係る2次電池を形成するための正極と負極との積層体の態様を示す概略斜視図である。 図8の積層体を渦巻き状に巻回する態様を示す概略図である。 実施の形態1に係るマグネシウムイオン2次電池の概略外観図である。 図10の線分XI−XIにおける概略断面図である。 本発明に係る電極を用いたマグネシウムイオン2次電池と、従来から用いられるマグネシウムイオン2次電池との印加電圧に対する電流の特性を示すグラフである。 図12のグラフに示す各データのうち、負極が粉末の焼結体である場合と、スパッタにて形成した箔である場合とのデータを抜き取ったグラフである。 実施の形態2に係るマグネシウムイオン2次電池の概略外観図である。 図14の線分XV−XVにおける概略断面図のうち一の態様を示すものである。 図14の線分XV−XVにおける概略断面図のうち、図15と異なる態様を示すものである。 図14の線分XV−XVにおける概略断面図のうち、図16とさらに異なる態様を示すものである。 図14の線分XV−XVにおける概略断面図のうち、図17とさらに異なる態様を示すものである。 本発明に係るマグネシウムイオン2次電池が用いられる電力システムを示す概略図である。 図19のバックアップ電源を示す概略図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
始めに、本発明に係る電極の一般的な使用態様について説明する。なお図1は説明を容易にするための模式図であり、実在する電池を構成する各部材の位置関係を示すものとは異なる。
本発明に係る電極を用いた電池とは、たとえばマグネシウムイオン2次電池である。図1に示すように、マグネシウムイオン2次電池は、具体的な態様によらず、電極として正極1と負極2とを備える。正極1と負極2との間にはセパレータ3が配置されている。また正極1と負極2とのそれぞれは、集電体4と密着するように接着されている。
マグネシウムイオン2次電池は充電と放電とを繰り返すことにより、複数回の使用が可能である。正極1は放電時に電流が、当該マグネシウムイオン2次電池に接続される回路(負荷)側に流れ出す側の電極である。また負極2は放電時に電流が、当該マグネシウムイオン2次電池に接続される回路(負荷)側から流れ込む側の電極である。
以下放電時において、正極1から電流が流れ出すため、正極1には電流源である電子が流れ込む。また負極2には電流が流れ込むため、負極2から電流源である電子が流れ出す。つまり正極1においては電子が流れ込むことによる還元反応が、負極2においては電子が流れ出すことによる酸化反応が起こる。
正極1と負極2とが接触することにより電流の短絡が起こることを抑制するために、正極1と負極2との間には絶縁体の材料からなるセパレータ3が配置されている。電流の短絡防止のほかにセパレータ3は、たとえば電池に対して電気分解を起こさせるために電池の内部に注入される電解液を、電池を構成する電池容器の内部に保持するために用いられることもある。
また電池には端子が存在する。端子とは、正極1や負極2において起こる還元反応や酸化反応による電子の流入や流出を、電流という形態で外部の回路(負荷)に出力するために設けられた領域である。正極1や負極2から端子へと電流(電子)を流すために、正極1および負極2から端子までの電流(電子)の流路となる集電体4が配置されている。
図1における左側の集電体4は正極1と、右側の集電体4は負極2と密着するように配置されている。このため集電体4を流路として、電子を端子に導くことができる。
ここで本発明に係る、マグネシウムイオン2次電池用の電極は、特に負極2がMgSi(0<x≦3)を含む構成であることが好ましい。このため図1の負極2と集電体4とが接着された領域においては、図2に示すようにMgSi(0<x≦3)からなる負極2と、集電体4とが接着されていてもよい。
負極2を表わすMgSiのxは、上述したように0より大きく3以下の範囲内の任意の数値とすることが好ましい。このようにすれば、SiがMgの酸化によるMgOの薄膜の形成を抑制することができる。MgOの薄膜の形成を抑制する効果をより顕著なものとするためには、上述したxの値の範囲は0より大きく3以下であることがより好ましく、そのなかでも1.5以上2.5以下であることがさらに好ましい。
以上に述べたMgSiを含む負極2は、たとえば粉体を焼結させたものであってもよいし、導電体からなる構造物の一の表面上に配置された箔からなるものであってもよい。負極2が上述のいずれの形態を有するものであるにせよ、図3のフローチャートに示すように、処理対象物を準備する工程(S10)と、MgとSiとを合成する工程(S20)とが実施されることにより形成される。
まず粉体を焼結させた負極2の製造方法について、以下に説明する。まず処理対象物を準備する工程(S10)において、Siを主成分とする粉末からなる構造物を形成する。この粉末は、所望の形状に加工することが容易である。具体的には、たとえば当該粉末を成形型の内部に投入し、プレス加工を行なうことにより、所望の形状を有する粉末の構造物に加工することができる。あるいは当該粉末にバインダー等を加えて粘土状にした状態で、成形型の内部に注ぎ込んで乾燥し、成形するスリップキャスト成形法を用いてもよい。上記のいずれの方法を用いても、粉末からなる処理対象物としての構造物を、高い形状精度となるよう加工することができる。
そしてMgとSiとを合成する工程(S20)を行ない、ここでSiの粉末がMgSiの結晶に変換される。具体的には図4に示すように、カーボン容器21の内部の試料台23上に、工程(S10)で準備した処理対象物25を載置し、たとえば処理対象物25を加熱するためのヒータが備えられている(ただしヒータは図4、図5に図示されていない)。そしてカーボン容器21の内部(図4、図5においては試料台23の下部)に備えられたMg金属27が加熱により蒸発し、カーボン容器21の内部の空間がMg蒸気22で充満される。すると処理対象物25の表面上には図5に示すようにMgSi薄膜10が形成される。
つまりMg金属27の気化により発生するMg蒸気22が、Siの粉末の表面や内部に接触する。つまりMg原子がSiの粉末を構成するSi粒子の集合体の内部に浸漬する。このときの加熱によりSiとMgとが合成反応を起こして、Siの粉末がMgSiの結晶に変換される。
このとき、処理対象物25を加熱する温度は500℃以上1500℃以下とすることが好ましいが、MgSiの一形態であるMgSiの、大気圧下における融点は1102℃である。このため、形成されるマグネシウムシリサイドの形状を安定させる観点から、処理対象物25の加熱温度は900℃以下であることがより好ましい。したがって処理対象物25の加熱温度を650℃以上900℃以下とすることがより好ましい。
ここで、たとえば図5に示すように、処理対象物25の表面から一定の深さ分の領域のみSiをMgSiに変換する処理を行なってもよい。この場合はSiの粉末を焼結した構造物の表面から一定の深さの領域に形成された薄膜(MgSi薄膜10)としてMgSiが形成される。しかし処理対象物25を加熱する時間や温度を調整することにより、処理対象物25の内部のほぼ全体に存在するSiをMg蒸気22のMgと合成させ、処理対象物25の構造物の全体がMgSiの構造物に変換される処理を行なってもよい。つまりこの場合は処理対象物25のほぼ全体が図5のMgSi薄膜10のように変換される。この場合は構造物(ブロック)としてのMgSiが形成される。
以上においては処理対象物25として、主成分がSiである粉末を成形することにより形成された構造物を用いている。しかしたとえば処理対象物として、主成分がSiの単結晶からなる直方体状の塊(バルク)を用いても、工程(S20)において上記と同様の処理を行なうことができる。
次に導電体からなる構造物の一の表面上に箔としてのMgSiの負極2を形成する製造方法について、以下に説明する。この場合も、上述した粉末の処理対象物を用いた場合と同様に、図3のフローチャートに従い、処理対象物を準備する工程(S10)と、MgとSiとを合成する工程(S20)とが実施される。処理対象物を準備する工程(S10)では、たとえばSUSからなる箔を準備する。当該SUSの箔は、たとえばコイル状のSUSの母材に対して焼きなまし処理や圧延処理を繰り返し、厚みを0.10mm以下とすることにより形成される。
このSUSからなる箔の一の表面上に、たとえば図6に示すスパッタリング装置31を用いてスパッタリングを行なうことにより、たとえば厚みが30nmのSiの薄膜を積層する。このSiの薄膜の厚みは10nm以上200nm以下とすることが好ましい。
具体的には、まず図6に示すスパッタリング装置31の内部の試料台32上に、上述したSUS箔26を載置する。スパッタリング装置31の内部の下方に備えられている試料台32に対向するように、つまりスパッタリング装置31の内部の上方にはターゲット基板34が備えられている。そしてターゲット基板34の一の表面、特に試料台32やSUS箔26と対向する表面上にはターゲット材料35の薄膜が形成されている。ターゲット材料35は、スパッタリングにより形成しようとする薄膜とほぼ同一の材料からなることが好ましい。したがってここでは、ターゲット材料35を構成する物質は、Siを主成分とする材料であることが好ましい。
試料台32を支持する試料台支持部36と、ターゲット基板34との間に直流の高電圧を加える。このため試料台支持部36とターゲット基板34とは導電性に優れた金属材料により形成されており、両者間に直流電圧を印加することが可能な構成となっていることが好ましい。このとき同時に真空ポンプ37を用いてスパッタリング装置31の内部を真空状態にしながら、Arガス供給源38からスパッタリング装置31の内部にArガスを供給する。スパッタリング装置31の内部の空間に上記の高電圧が印加された状態でArガスが供給されるため、Ar原子がイオン化され、Arイオンがターゲット材料35の表面上に衝突する。するとターゲット材料35からターゲット物質であるSiの粒子などが弾き飛ばされる。弾き飛ばされたターゲット物質が、ターゲット材料35に対向するように配置されたSUS箔26の表面上に付着し、堆積する。このようにして図6に示すように、ターゲット物質であるSiを主成分とする物質がSUS箔26の表面上にSi薄膜29が形成される。
そしてMgとSiとを合成する工程(S20)において、上述のSiと同様の要領でスパッタリングを行なうことにより、Si薄膜29の一の表面上にMg薄膜が形成される。つまりSUS箔26の一の表面上にSi薄膜とMg薄膜とが積層された状態となる。Mg薄膜の厚みは20nm以上500nm以下の範囲内とすることが好ましく、たとえば100nmとすることが好ましい。その後、Si薄膜とMg薄膜とが積層されたSUS箔26を500℃以上1500℃以下、たとえば600℃にて1時間加熱することにより、Si薄膜中のSiとMg薄膜中のMgとが合成反応される。このようにして、図7に示すように、SUS箔26の一の表面上にMgSi薄膜20(MgSi箔)が形成される。
なお以上のようなMgSi薄膜20(MgSi箔)を形成する方法としては、スパッタリングのほか、CVD法、PLD法、MBE法などの一般公知の方法を用いることができる。以上のように負極2は、たとえば構造物(バルク)形状を有する焼結体であってもよいし、たとえば基板の一の表面上に形成した薄膜形状であってもよい。このことは正極1についても同様である。
また上述したスパッタリングにおいては、SUS箔26の一の表面上に先にSiの薄膜を形成した後、Mgの薄膜を形成し、両者のMgとSiとを合成させている。しかし逆に、SUS箔26の一の表面上に先にMgの薄膜を形成した後、Siの薄膜を形成して両者のMgとSiとを合成させてもよい。この場合においても、上述した場合と同様にMgSi薄膜を形成することができる。
あるいはMgの薄膜を先に形成する場合は、MgとSiとを加熱して合成することなく、Mg金属の薄膜(バルク:構造物)上にSiの薄膜が積層された構成を有する負極としてもよい。このような構成であり、Siの薄膜がたとえば1nm以上30nm以下の極薄膜であれば、Siの薄膜が積層された下地のMgがSiを含まないMgの金属からなる層(構造物)であったとしても、Siの薄膜がMgの酸化を抑制する機能を備える。
以上のように形成されたMgSi薄膜10、20(構造物としてのMgSiも含む)の結晶構造はCaF型構造であることが好ましい。結晶構造がCaF型構造であれば、MgSiの有する、Mgの挿入脱離に伴う体積変化が小さいという効果をより顕著にすることができる。
また形成されるMgSi薄膜10、20(構造物としてのMgSiも含む)の結晶を構成する粒子は最大粒径が10μm以下であることが好ましい。ここで粒径とは、当該MgSiの粒子に対してレーザ回折・散乱法による粒子径分布測定方法を用いて測定した場合における、小粒径側から大粒径側に向けて当該粉末の体積を積算した累積体積が50%となる箇所における粉末断面の直径の値を意味する。上述した粒子径分布測定方法とは具体的には、MgSi薄膜10、20の粒子に照射したレーザ光の散乱光の散乱強度分布を解析することにより、MgSi薄膜10、20の粒子の直径を測定する方法である。
マグネシウムイオン2次電池の場合、正極1がMo(シェブレル相)やWO(酸化タングステン)からなることが好ましい。これらの材質を正極1に用いれば、当該マグネシウムイオン2次電池の容量を大きくし、充放電時の電圧をより高くすることができる。また当該電池のサイクル特性を向上することができる。
セパレータ3はたとえばポリエチレン、ポリプロピレンなどの絶縁性に優れており、かつ電池容器の内部の電解液により腐食しない材料から構成されることが好ましい。
集電体4はたとえばアルミニウムなどの導電性に優れており、かつ当該電池の内部の電解液により腐食しない材料から構成されることが好ましい。
なお、正極1や負極2と、集電体4との接合を良好なものとするためにバインダーを用いてもよい。このバインダーは、カーボンないしグラファイト(C)を含む結着材である。より具体的には、たとえばビニル基フッ素系有機化合物などが挙げられる。バインダーは、正極1や負極2と、集電体4との接着を強固にするとともに、バインダーが当該電池の電解液と接触することにより、好ましくない反応(副反応)を起こすことを抑制することができる。またバインダーは、正極1を構成するたとえばWOの粉末と導電助剤の粒子とを結合して一体とするために用いてもよい。またこのバインダーは、上述した処理対象物を準備する工程(S10)にて準備するSiの粉末の粒子同士を結合するために用いるバインダーと同一のバインダーであってもよいし、異なる種類のバインダーであってもよい。
続いて以上に述べた一般的な使用態様を利用した本発明の各実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1に係る2次電池は、凡そ図8に示すように平板状に形成された正極1や負極2などを複数積層させた積層体30から形成される。ここでは正極1と負極2とが交互になるように積層し、正極1と負極2との間にはセパレータ3を挟んでいる。ただし正極1と負極2とは必ずしも(セパレータ3を挟んで)交互になるように積層される必要はなく、たとえば正極1が(セパレータ3を挟んで)2段続いた後、負極2が(セパレータ3を挟んで)2段続くような積層態様であってもよい。
後述するように正極1と負極2には、セパレータ3と対向する平面上の一部の領域において、上述した集電体4(図1参照)と接続されている。ただし図を見やすくするため、図8においては集電体4は省略されている。
負極2がMgSiにより形成されていれば、Mgが酸化されてMgOの薄膜の不動態が発生されることが抑制される。これは、Siの存在しない単体のMgに比べてMgSi中に含まれるMgの酸化数が高いために、Mgの酸化が起こりにくくなるためである。このため、負極2をMgSiとすれば、表面に不動態の薄膜が形成されることによる、負極2の導電性の低下を抑制することができる。つまり負極2の電極としての導電性を確保し、負極2を用いた当該電池の出力エネルギを向上することができる。
また、このようにMgOの生成が抑制されるため、生成されたMgOを分解するためのグリニャール試薬のような溶媒を電解液に用いる必要がなくなり、電解液として選択できる溶媒の範囲が広くなる。
グリニャール試薬は酸化されやすく、高い電圧を正極1に印加すると電解液中の電解質が分解し始める。しかしグリニャール試薬によるMgOの分解が不要となれば、電圧が高い電池を作製することができるようになる。また、グリニャール試薬は、これを溶解可能な溶媒であるTHF中に溶かして用いるため、MgOを分解する仕様の電池においては、電解液としてTHFの溶液が用いられる。しかしグリニャール試薬によるMgOの分解が不要となれば、電解液に沸点の低いTHFを用いる必要はない。このため、MgSiを含む負極2を用いることにより、より沸点の高い電解液を用いることができるようになり、当該電池の安全性を高めることができる。
図8の積層体30を、図9に示すように渦巻き状に巻回する。図9に示すように渦巻き状に巻かれた断面が概ね円形をなすように積層体30を巻回すれば、概ね円柱形状の形成体が形成される。図9においては、図8の負極2が円柱形状の外周側に配置され、図8の正極1が円柱形状の内周側に配置されるように巻回されている。ただしこれは一例であり、形成される2次電池の外枠としての電池容器の形状や構成などに応じて、たとえば正極1が円柱形状の外周側に配置されるように巻回されたものであってもよい。
図9のように正極1と負極2とからなる積層体30を巻回することによる形成体を、たとえば円柱形状を有する電池容器の内部に配置することにより、図10に示す円柱形状のマグネシウムイオン2次電池100が形成される。マグネシウムイオン2次電池100は、たとえばニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池と同様の円柱形状を有している。図10のマグネシウムイオン2次電池100において、正極端子5は正極1と電気的に接続された端子であり、負極端子7は負極2と電気的に接続された端子である。
図11の断面図に示すように、マグネシウムイオン2次電池100の内部には、図9に示す積層体30が巻回されたものが載置されている。ただし図8および図9においては省略されているが、実際のマグネシウムイオン2次電池100には図11に示すように集電体4が備えられている。図10のマグネシウムイオン2次電池100は図10の上側に、図10の長手方向(上下方向)に交差する断面に関して電池容器12の断面積よりも小さい、突起形状の正極端子5と、電池容器12の断面積とほぼ同じ大きさを有する平坦形状の負極端子7とを備えている。このため図11に示すように、正極1にはその上側の端部に集電体4が接着されている。このことにより電流が正極1から集電体4を通り、さらに集電体4の上部の流路からガス排出弁13、正極端子5に達する構成となっている。これに対して図11に示すように、負極2には集電体4が配置されておらず、負極2が負極端子7と直接接触している。しかしマグネシウムイオン2次電池100としてはこのような態様に限られず、たとえば負極端子が突起形状を有しており、正極端子が平坦形状を有する態様となっていてもよい。あるいはたとえば負極についても集電体を介して負極端子に通じる流路を備えていてもよい。
なお正極1と集電体4とが接着された部分の一部の領域を、図11において丸点線で囲んでいる。この丸点線で囲まれた領域を拡大した図が上述の図1における正極1と集電体4とが接着された領域に相当する。この領域が上述したように、たとえばバインダーにより接着されていることが好ましい。そして図11の断面図の内部における、左右方向に関する中央部分は、正極1と負極2とがセパレータ3を挟んで周期的に巻回された形態が続くため、描写が省略されている。
また図8、図9においては考慮されていないが、実際には図10の態様を有するマグネシウムイオン2次電池100を形成する際には、積層する平板状の正極1と負極2との大きさを変化させることが好ましい。具体的には、図11に示すように、負極2は負極端子7に直接接触するが、正極1は負極端子7に直接接触しないことが好ましい。このような態様とするために、正極1を負極2よりもやや小さくすることが好ましい。そして正極1を負極2よりも小さくすることによる正極1が負極端子7に届かないための間隙の領域には、たとえば正極1と負極2との間に挟むセパレータ3と同様のセパレータ3を配置することが好ましい。
図11における集電体4は、長手方向(図11の上下方向)に関して正極1と接着している領域は比較的短いが、長手方向に関する集電体4の長さは図11に示す長さに限られず、任意の長さとすることができる。しかしセパレータ3は本来、正極1と負極2とが密着することによる両者の短絡を抑制するために配置された部材である。このためセパレータ3を配置させている以上、集電体4は正極1と一部の領域のみにおいて接触するように配置されることが好ましい。
さらに、図11において具体的に図示されないが、電池容器12の内部の正極1や負極2を浸漬するように電解液が保持されている。当該電解液としては、上述したRMgBr/THF(ここでRは有機化合物の官能基、Brは臭素、THFはテトラヒドロフラン)を用いてもよい。しかしTHFの大気圧下における沸点が66℃と低く、揮発性が強いという危険性を有する。また、負極2においてMgOの発生が抑えられるため、THFを使用する必要性がない。このため電解液として、Mg(ClO/PCを用いてもよい。PC溶液は沸点が298℃とTHFに比べて非常に高い。このため、当該電解液を用いることにより、当該電池の安全性が向上する。
ここで、マグネシウムイオン2次電池100の動作原理について説明する。放電の際には上述したように、正極1からは電流が流れ出し、集電体4からガス排出弁13を経て正極端子5から、接続される負荷に流入する。また負荷から負極端子7を経て負極2に電流が帰還する。電子の流れは上記電流と逆向きである。つまり正極1には電子が流入して正極1においては還元反応が起こる。このとき正極1を構成する材料中にマグネシウムイオンが多数含まれることになる。充電の際には放電の際と逆に、負極2から電流が流れ出し、負極端子7から、外部に接続されたたとえば充電器の負極へ電流が流入する。充電器の正極から電流が流れ出してマグネシウムイオン2次電池100の正極端子5から、ガス排出弁13、集電体4を経て正極1に流入する。このとき平板形状の負極2にマグネシウムイオンが移動することによりマグネシウムイオン2次電池100が充電される。
このとき負極2がMgSi(0<x≦3)からなる構造体あるいは薄膜であることにより、負極2の表面に不動態の薄膜が形成されることを原因とする負極2の導電性の低下を抑制することができる。したがって、負極2の電極としての導電性を確保し、負極2を用いた当該電池の出力エネルギを向上することができる。また、当該電極(負極2)を被覆する不動態膜を分解するための、酸化分解電圧が低く沸点の低い薬品を用いる必要がない。このため高い電圧を供給することが可能で、安全性の高い電解液を用いた電池を作製できる。つまりMgSi(0<x≦3)を含む本発明に係る電極(負極)は、電圧がより高く電流値がより高い、つまり電流−電圧特性がより良好なマグネシウムイオン2次電池を提供することができる。
その具体例を示すために、以上に述べたマグネシウムイオン2次電池100の電流−電圧特性を調べた結果を図12および図13に示す。図12は、負極2の態様を3種類に変化させたマグネシウムイオン2次電池の電流−電圧特性を示したものである。グラフ中の横軸は電池の正極端子5(図10参照)と負極端子7(図10参照)との間に加える電界(E)を、ボルト単位で示したものである。ここでは正極端子5側が負極端子7側よりも電位が高くなるように電界を加えた場合をプラス、負極端子7側が正極端子5側よりも電位が高くなるように電界を加えた場合をマイナスとしている。またグラフ中における「vs.Mg/Mg2+」という表示は、対象とする電気化学反応がMg電極基準の電位であることを意味している。またグラフ中の縦軸は、当該電池に接続する回路(負荷)に流れる電流値をmA単位で示したものである。電流の方向については正極端子5から出て回路(負荷)を通り、負極端子7に入力する方向に流れる電流をプラス、負極端子7から出て回路(負荷)を通り、正極端子5に入力する方向に流れる電流をマイナスとしている。
図12、図13に示す電流−電圧特性を測定した電池は、正極がWOからなるものであり、負極が「Mgリボン」「MgSiブロック」「MgSi箔」の3種類からなるものである。また電解液としては、1mol/LのMg(ClO/PC溶液が用いられている。さらに負極が「Mgリボン」である電池については、電解液に臭素のイオンを0.2mol/L添加したものと、添加していないものとの2種類を準備している。
以上のように、負極の構成の差異や、電解液への添加剤の有無により4種類の電池を準備している。上述した、負極が「Mgリボン」からなる電池とは、Mgからなるリボン状の切粉を電極として用いた電池である。また、負極が「MgSiブロック」からなる電池とは、上述したSiを主成分とする粉末を、電極形状となるように成形したものを、Mg蒸気の充満する雰囲気下で850℃に加熱して2時間保持することにより、MgSiとして焼結されるようにして形成した電極を用いた電池である。さらに、負極が「MgSi箔」からなる電池とは、上述したようにSUS箔の一の表面上にスパッタリングにてMgを100nm、Siを30nm積層した上で、当該SUS箔を600℃に加熱して1時間保持することにより形成されたMgSi箔を負極として用いた電池である。
以上の各負極を用いた電池を放電に用いた場合の電流−電圧特性を図12で比較すると、電界Eの絶対値が大きくなれば、「MgSi箔」の電池の示す箔電流41の絶対値が特に大きくなっている。そして「添加剤ありMgリボン」の電池の示す添加剤リボン電流42の絶対値がこれに次いで大きくなっている。以下、「MgSiブロック」の電池の示すブロック電流43の絶対値、「Mgリボン」の電池の示すリボン電流44の絶対値の順になっている。図13にはより見やすくするために、図12の箔電流41とブロック電流43のみを抜き出したものが示されている。図13を見ると、ブロック電流43よりも箔電流41の方が電流値の絶対値が大きくなっている。
なお、これらの電流値は、すべてほぼ同一の断面積を有する回路の一部分に流れる電流値を測定することにより導出している。したがって図12、図13において電流値が大きい場合、電流密度の値が大きいといえる。したがって電流密度は箔電流41が最も大きく、ブロック電流43がこれに次ぎ、(添加剤のない)リボン電流44が最も小さくなっていることがわかる。このことから本実施の形態1に係る負極2を用いてマグネシウムイオン2次電池100を形成すれば、当該電池の流すことのできる電流値を向上させることができるといえる。
また結果的にマグネシウムイオン2次電池100の電気容量を向上することができる。具体的にはマグネシウムイオン2次電池100の電気容量は10Ah以上100Ah以下であることが好ましい。
図11に示すように、マグネシウムイオン2次電池100の充電や放電の際の酸化還元反応などにより電池容器12の内部ではガスが発生することがある。このためマグネシウムイオン2次電池100にはガスや電解液などの漏洩を抑制し、内部の密閉性を確保するためのガスケット11や、内部に発生したガスを排出するためのガス排出弁13が配置されている。
(実施の形態2)
実施の形態2に係るマグネシウムイオン2次電池200は、図14に示すように、たとえばリチウムイオン電池と同様の矩形状(直方体状)の形状を有している。マグネシウムイオン2次電池100は、長手方向に関する一方の端部(図10における上側)に正極端子5が、長手方向に関する他方の端部(図10における下側)に負極端子7が配置されている。しかしマグネシウムイオン2次電池200は、長手方向に関する一方の端部(図14における上側)に、正極端子5と負極端子7との両方が配置されている。一般的にこのような態様を有するものが多いため図14においては一方の端部に両方の端子が配置されたマグネシウムイオン2次電池200が描写されている。しかしこのような態様に限られず、実施の形態2のマグネシウムイオン2次電池200においても、矩形状でありながら、正極端子と負極端子とが長手方向に関して互いに反対方向の端部に配置されていてもよい。
たとえば図8に示すように、平板状を有する複数の正極1や負極2、セパレータ3を積層したものを、図9のように渦巻き状に巻回する代わりに、矩形状となるように折り目を形成しながら巻回することにより、図15や図16の断面形状を有するマグネシウムイオン2次電池200を形成してもよい。しかしたとえば薄層状に正極1と負極2、セパレータ3を複数積層したものを、巻回させることなくそのまま電池容器14の内部に配置することにより、マグネシウムイオン2次電池200が形成されていてもよい。
図15および図16においては、正極1に接触するように配置される集電体4および負極2に接触するように配置される集電体4がそれぞれ1箇所ずつ描写されている。具体的には、正極1に接触し、正極1と電気信号をやり取りする集電体4は、図15の右側の集電体4および図16の上側の集電体4である。また負極2に接触し、負極2と電気信号をやり取りする集電体4は、図15の左側の集電体4および図16の下側の集電体4である。このようにいずれの集電体4も1箇所ずつのみ描写しているのは図面を見やすくするためであり、実際は各正極1から正極端子5へ通じる集電体4と、各負極2から負極端子7へ通じる集電体4とが配置されている。また図15の丸点線で囲まれた領域は、マグネシウムイオン2次電池100と同様に上述の図1の正極1と集電体4とが接着された領域に相当する。
またマグネシウムイオン2次電池200においては、電池容器14の内部にて酸化還元反応が起こることにより発生するガスによる、正極1と負極2とセパレータ3とのそれぞれが積層された領域間の間隙の膨張を抑制するために、図16における上側から弾性体16にて積層体を押さえ付けることが可能な構成とすることが好ましい。このようにすれば、積層体の内部における不要な間隙の発生を抑制することができる。
さらにたとえば図17に示すように、マグネシウムイオン2次電池200は、図17の上側の正極1と下側の負極2との間に挟まれたセパレータ3と、上側の負極2と下側の正極1との間に挟まれたセパレータ3とが、正極端子5や負極端子7が配置される側と反対側(図17の右側)において接続されて一体となり、断面図においてコの字型の形状を有する態様を有したものであってもよい。図17のマグネシウムイオン2次電池200も、たとえば図14〜図16のマグネシウムイオン2次電池200と同様の動作原理を有する。
さらにたとえば図18の弾性体17のように、マグネシウムイオン2次電池200に対して板バネ型の弾性体を用いても、図16や図17のようなツルマキバネ型の弾性体16と同様に、積層体を押さえ付けることができる。このとき、弾性体17と正極1との間に絶縁板状部材6を挟み、絶縁板状部材6を介して積層体を押さえ付けることがより好ましい。このようにすれば、より安定に積層体を押さえ付けることができる。
本発明の実施の形態2は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態2について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に順ずる。
(実施の形態3)
上述した各実施の形態のマグネシウムイオン2次電池100、200は電力システムに用いられる。具体的には携帯電話の基地局用のバックアップ電源としてマグネシウムイオン2次電池100、200を用いた電力システムが提供できる。
図19に示すように上記電力システムは、送受信機50とアンテナ51とから構成される。送受信機50にはアンプ52とコントローラ53と電源部54とを含んでいる。電源部54には電源システム55とバックアップ電源56とを有する。
電力システムは携帯電話用であるため、送受信機50は移動中の各携帯電話の端末と通信する役割を有する。外部ネットワークと接続するためのネットワーク機構57がコントローラ53と接続されている。アンテナ51により一の携帯電話端末から送受信機50に受信された電波は、アンプ52で増幅され、コントローラ53にて出力用に制御された後、ネットワーク機構57から他の携帯電話端末に送られる。
以上のような動作をするための電源は電源部54であり、電源部54として通常は外部から供給される電力をそのまま用いる電源システム55を利用する。しかしたとえば停電などにより電源システム55が使用不能となった場合にバックアップ電源56から電力が供給されることになる。
このバックアップ電源56に上述したマグネシウムイオン2次電池100、200が用いられる。27V系マグネシウムイオン電池システムの場合、図20に示すように、電池セル300が多数直列におよび並列に並ぶことにより1台のバックアップ電源56が形成される。具体的には図20に示さないが、たとえば電池セル300が8台直列に並び、40台並列に並ぶことにより、1台のバックアップ電源56が形成される。電池セル300を構成する個々の電池はマグネシウムイオン2次電池100であってもよいし、マグネシウムイオン2次電池200であってもよい。またこれら2種類のマグネシウムイオン2次電池が1台のバックアップ電源56の中で混在していてもよい。これらの多数の電池セル300が接続されたものが、入力端子301および出力端子302にて外部回路と接続されている。
ここで、1台の電池セル300(マグネシウムイオン2次電池100、200)の電気容量が50Ah、当該1台の電池セル300の電圧が3〜4Vである場合を仮定する。この場合、上述した電池セル300が8台直列に、40台並列に並んだバックアップ電源56は、その電気容量が約2000Ah、電圧が27Vになる。本発明に係る電極(正極)を用いたマグネシウムイオン2次電池100、200を用いることにより、上述した大きな電気容量や電圧を提供することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、2次電池の起電力や出力エネルギを安全に向上する技術として、特に優れている。
1 正極、2 負極、3 セパレータ、4 集電体、5 正極端子、6 絶縁板状部材、7 負極端子、10,20 MgSi薄膜、11 ガスケット、12,14 電池容器、13 ガス排出弁、16,17 弾性体、21 カーボン容器、22 Mg蒸気、23,32 試料台、25 処理対象物、26 SUS箔、27 Mg金属、29 Si薄膜、30 積層体、31 スパッタリング装置、34 ターゲット基板、35 ターゲット材料、36 試料台支持部、37 真空ポンプ、38 Arガス供給源、41 箔電流、42 添加剤リボン電流、43 ブロック電流、44 リボン電流、50 送受信機、51 アンテナ、52 アンプ、53 コントローラ、54 電源部、55 電源システム、56 バックアップ電源、57 ネットワーク機構、100,200 マグネシウムイオン2次電池、300 電池セル、301 入力端子、302 出力端子。

Claims (7)

  1. MgSi(0<x≦3)を含む、マグネシウムイオン2次電池用の電極。
  2. 前記MgSiは粉体を焼結させたものである、請求項1に記載の電極。
  3. 前記MgSiは、導電体からなる構造物の一の表面上に配置された箔である、請求項1に記載の電極。
  4. 前記MgSiは結晶構造がCaF型構造である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極。
  5. 請求項1に記載の電極を用いた、マグネシウムイオン2次電池。
  6. 前記マグネシウムイオン2次電池の電気容量が10Ah以上100Ah以下である、請求項5に記載のマグネシウムイオン2次電池。
  7. 請求項5に記載のマグネシウムイオン2次電池を用いた電力システム。
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