JP2008265218A - プロピレン系積層フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エチレン含量が1.0〜6.0重量%であり、Mwが270000〜460000であるメタロセン触媒を用いて重合された高分子量エチレン−プロピレンランダム共重合体(A)50〜99重量%、及びエチレン含量が1.0〜6.0重量%であり、Mwが29000〜130000であるメタロセン触媒を用いて重合された超低分子量エチレン−プロピレンランダム共重合体(B)1〜50重量%とからなる、230℃、2.16Kg荷重で測定されたMFRが2.0〜20g/10分のプロピレン系樹脂組成物をシーラント層として用いることを特徴とするプロピレン系積層フィルム。
【選択図】図1
Description
しかし、実用的に満足し得る低温ヒートシール性能を包装用フィルムに与えるには、低温ヒートシール性を有する樹脂、例えば、プロピレン・エチレンランダム共重合体を多量に使用しなくてはならず、これによりフィルムのベタツキ(ブロッキング性)という弊害が発生する。ブロッキング性を改良するためにシリカ等の無機微粒子を添加する方法もあるが、フィルム同士のこすれにより、傷つきが発生し易くなるという問題を有していた。
また、オレフィン系重合体からなる基材層の表面に、逐次重合で得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体からなる表面層を、ヒートシール強度と表面層厚みとが特定式を満足するように得られたポリプロピレン系二軸延伸複層フィルムに関する発明(例えば、特許文献2参照。)が挙げられる。しかし、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が、メタロセン触媒より得られるものであると、低温ヒートシール性や耐ブロッキング性に優れた複層フィルムが得られるが、これに反し、成形性に関しては充分な効果が得られなくなるのが現状であった。
しかし、プロピレン単独重合体では、充分な低温ヒートシール性が発揮されない上、メタロセン触媒により得られる2種類のプロピレン単独重合体の極限粘度[η]差が小さい上、極限粘度[η]の比較的低いメタロセン触媒により得られるプロピレン単独重合体も極限粘度[η]が1.0〜2.0dl/gの範囲のものであり、この程度の極限粘度[η]では、成形性を充分に改善するには至らず、共押出しにより積層フィルムを製造すると、ダイス出口においてシャークスキンが生じたり、ダイス内部で積層界面の荒れに起因する外観不良が生じたりして、積層フィルムの光学的性質を著しく悪化させる。
しかし、単に、基材層に用いるポリオレフィン系樹脂Bとシーラント層に用いるポリオレフィン系樹脂Aのゼロせん断粘度[η0]と分子量分布Wを調整するだけでは、成形性を充分に改善するには至らないのが現状であった。特に、特許文献4は、基材層に用いるポリオレフィン系樹脂Bの特性に注目して改善しているため、ポリオレフィン系樹脂Aとしてメタロセン触媒により得られたものを用いる場合、メタロセン触媒により得られるポリオレフィン系樹脂(例えば、プロピレン系ランダム共重合体)が根本的に有する成形性の悪さは改善されていない。
(A)高分子量プロピレン系重合体:エチレン含量が1.0〜6.0重量%であり、重量平均分子量(Mw)が270000〜460000であるメタロセン触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体
(B)超低分子量プロピレン系重合体B:エチレン含量が1.0〜6.0重量%であり、重量平均分子量(Mw)が29000〜130000であるメタロセン触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体
(1)高分子量プロピレン系重合(A)
本発明に用いる高分子量プロピレン系重合体(A)は、エチレン含量が1.0〜6.0重量%であり、重量平均分子量(Mw)が270000〜460000であるメタロセン触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体である。
ここで、エチレン含量は、プロトン完全デカップリング法により、以下の条件に従って13C−NMRスペクトルを解析することにより求める値である。
機種:日本電子(株)製 GSX−400又は同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロベンゼン+重ベンゼン(4:1(体積比))
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えば、Macromolecules 17,1950 (1984)などを参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は、表1の通りである。表1中Sαα等の記号はCarmanら(Macromolecules 10,536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
[PPP]=k×I(Tββ) …(1)
[PPE]=k×I(Tβδ) …(2)
[EPE]=k×I(Tδδ) …(3)
[PEP]=k×I(Sββ) …(4)
[PEE]=k×I(Sβδ) …(5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} …(6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。したがって、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 … (7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えば、I(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、本発明のプロピレンランダム共重合体には少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/又は1,3−結合)が含まれ、それにより、表2の微小なピークを生じる。
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここで、Xはモル%表示でのエチレン含有量である。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である、F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000を用い、各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
これらの内、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物が好ましい。
本発明に用いる超低分子量プロピレン系重合体(B)は、エチレン含量が1.0〜6.0重量%であり、重量平均分子量(Mw)が29000〜130000であるメタロセン触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体である。
ここで、エチレン含量は、上述の方法によって測定する値である。
ここで、重量平均分子量(Mw)は、上述の方法によって測定する値である。
このようなメタロセン触媒には、前記高分子量プロピレン系重合体(A)を得る際に用いたものと同様のものを使用することができる。
本発明で用いるプロピレン系樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない限り、プロピレン系樹脂に添加できる酸化防止剤などの添加剤、エラストマー、脂環式炭化水素樹脂などの改質剤を適宜加えることができる。
具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(IRGANOX 1010)やn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(IRGANOX 1076)で代表されるフェノール系安定剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどで代表されるホファイト系安定剤、高級脂肪酸アミドや高級脂肪酸エステルで代表される滑剤、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステルなどの帯電防止剤、シリカ、炭酸カルシウム、タルクなどで代表されるブロッキング防止剤、エチレン−α−オレフィン共重合体、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどで代表されるポリエチレン系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、並びにそれらの水素添加誘導体等に代表される脂環式炭化水素樹脂などを添加しても良い。
本発明で用いるプロピレン系樹脂組成物における高分子量プロピレン系重合体(A)と超低分子量プロピレン系重合体(B)の組成割合は、高分子量プロピレン系重合体(A)99〜50重量%と超低分子量プロピレン系重合体(B)1〜50重量%であり、高分子量プロピレン系重合体(A)95〜55重量%と超低分子量プロピレン系重合体(B)5〜45重量%が好ましく、高分子量プロピレン系重合体(A)85〜60重量%と超低分子量プロピレン系重合体(B)15〜40重量%がより好ましい。高分子量プロピレン系重合体(A)の配合量が99重量%を超える(超低分子量プロピレン系重合体(B)の配合量が1重量%未満である)と、樹脂流動性が著しく悪化し、シャークスキンといった外観不良が生じるとなり、高分子量プロピレン系重合体(A)の配合量が50重量%未満である(超低分子量プロピレン系重合体(B)の配合量が50重量%を超える)と、うろこ模様を改善するために必要なG’(ω=0.1)が不足することとなり、結果として外観に優れたプロピレン系積層フィルムを得ることが出来なくなる。
本発明で用いるプロピレン系樹脂組成物は、上記の高分子量プロピレン系重合体(A)、超低分子量プロピレン系重合体(B)および必要に応じて他の添加剤をヘンシェルミキサー、vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。
プロピレン系樹脂組成物の流動時の法線応力の強さが、積層フィルム成形時の外観不良と大きく関係しており、貯蔵弾性率G’が20Pa未満では、ダイス内においてシーラント層が基材層を押す力が減少し、フィルム積層間界面が荒れ易くなることにより、得られるプロピレン系樹脂フィルムにうろこ模様が生じる易くなり、外観を悪化させる恐れがある。
プロピレン系樹脂組成物の貯蔵弾性率G’を調整する方法としては、用いる高分子量プロピレン系重合体(A)もしくは/および超低分子量プロピレン系重合体(B)の重量平均分子量や両者の比率を調整する方法を挙げることができる。貯蔵弾性率G’を高くするには、本発明の範囲内において、重合体(特に、高分子量プロピレン系重合体(A))の重量平均分子量が高いものを用いるか、高分子量プロピレン系重合体(A)の配合比率を高くすると良い。
ここで、角振動数ω=0.1(rad/sec)での貯蔵弾性率G’の測定は、下記の条件で測定する値である。
装置:レオメトリックス社製、ARES
温度:200℃
測定治具:直径25mmパラレルプレート
ギャップ:1.5mm
角振動数:0.1rad/s
歪:10%
本発明のプロピレン系積層フィルムは、上記プロピレン系樹脂組成物からなるシーラント層と基材層とを積層した構造を有する。シーラント層は、基材層の片面であっても両面に積層されていてもよい。
また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、用いるプロピレン系樹脂には、特に制限はないが、融点(Tm)が155℃以上で、MFRが1〜5g/10分(230℃、2.16kg荷重)のプロピレン系樹脂を用いると、本発明で用いるシーラント層と相性が良い。
延伸フィルムの場合には、少なくとも一軸方向に延伸されることが好ましい。延伸方法としては、共押出して得られた積層フィルムを、その後一軸延伸または二軸伸する方法等が採用される。
一方、TDの延伸温度は140℃〜180℃が好ましく、150℃〜170℃がさらに好ましい。延伸温度が140℃より低い場合も、熱収縮率が大きくなり、また、170℃より高い場合、フィルムの白化が起こり透明性が低下する恐れがある。
また、TD延伸処理後にテンターの幅を狭めるリラックス処理を施してもよい。TDリラックス率(狭めた幅/テンターの幅×100)は0〜8%が好ましく、0〜3%がさらに好ましい。8%より大きいとTD方向の配向が小さくなりすぎるため、結果として、MD方向の熱収縮率が大きくなる恐れがある。
(1)角振動数ω=0.1(rad/sec)での貯蔵弾性率G’:前述の方法に従って測定した。
(2)重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn):前述の条件のゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した。
(3)13C−NMRによるエチレン含量:前述の方法で測定した。
(4)メルトフローレート(MFR):JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して求めた。
(5)融点(Tm):セイコー社製DSCを用いて測定した。サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/minの降温速度で結晶化させてその熱履歴を消去し、更に10℃/minの昇温速度で融解させた時の融解曲線のピーク温度を融点(Tm)とした。
(6)フィルム外観:得られたプロピレン系積層フィルムの外観について、うろこ模様、シャークスキン、フィッシュアイについて下記の様に評価を行った。
(i)うろこ模様、シャークスキン:うろこ模様とは図1に示すように、シーラント層と基材層(コア層)の積層界面の不安定現象により生じる外観不良であり、シャークスキンとは図2に示すようにフィルム表面に生じる外観不良である。
波模様が発生したプロピレン系積層フィルムのうち、該フィルムのシーラント層のみ、基材層のみを各々浸漬オイル(屈折率1.515−25℃)で濡らして、目視評価を実施し、波模様が消失しない物をうろこ模様による波模様と特定した。また、前記と同様の評価を実施し、波模様が消失する物をシャークスキンによる波模様と特定した。うろこ模様、シャークスキンにおいて、波模様が生じていないフィルムには○、波模様が使用上問題ないであろうと思える程度に微妙に生じているフィルムには△、波模様が鮮明であり、なおかつ透視感が劣るフィルムには×と判定した。
(ii)フィッシュアイ:得られたプロピレン系積層フィルムの外観を目視し、フィッシュアイの有無を確認した。フィッシュアイがほぼ見られず、外観に優れる物を○、フィッシュアイが多数発生して外観が著しく劣る物を×とした。
(7)300gヒートシール温度(単位:℃):10mm×200mmのヒートシールバーを用い、得られた積層フィルムのシーラント層同士を100℃から150℃の範囲において、圧力2kg/cm 2 、時間1秒のヒートシール条件下で溶融押出しした方向(MD)に垂直になるようにシールした試料から15mm幅のサンプルを切り取り、引張試験機を用いて引張速度500mm/分にて引き離し、300gの強度となる温度を求めた。
(1)シーラント用樹脂
下記の触媒製造例1〜2で得られた触媒(メタロセン系重合触媒A、メタロセン系重合触媒B)を用いた製造例1〜11で得られたPP−1〜PP−11を用いた。PP−1〜PP−11の物性等を表3に示す。
特開2002−284808号公報の実施例1に記載された方法に基づいてメタロセン系重合触媒Aを調整した。
(触媒製造例2)
(i)メタロセン化合物Bの合成
特開平11−240909号公報に記載の方法に準じて、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムの合成を行った。
(ii)化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた5Lセパラブルフラスコに、純水1,700gを投入し、98%硫酸500gを滴下した。そこへ、さらに市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製、ベンクレイSL、平均粒径:19.5μm)を300g添加後撹拌した。その後90℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、洗浄した。
回収したケーキに硫酸リチウム1水和物325gの水900mL水溶液を加え90℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、pH>4まで洗浄した。
回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。その結果、270gの化学処理体を得た。その後、2Lフラスコに全量投入し、200℃にて6hr減圧乾燥を行った。
(iii)固体触媒の調製
内容積13リットルの攪拌機の付いた金属製反応器に、上記で得た乾燥珪酸塩0.223kgと日石三菱社製ヘプタン(以下、ヘプタンという。)1.45リットルの混合物を導入し、さらにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)0.79リットルを加え、系内温度を25℃に維持した。1時間の反応後、ヘプタンにて十分に洗浄し、珪酸塩スラリーを3.1リットルに調製した。
上記スラリーにトリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.39M)を34.4ミリリットル加えて10分間攪拌した。さらに予め(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム2.73gにヘプタンを0.55リットルを添加した混合物を導入して、室温にて1時間反応させた後、ヘプタンを追加して5.6リットルに調整した。
続いて、温度40℃にて、プロピレンを111.8g/時間の速度で供給し、4時間予備重合を行った。さらに1時間、後重合した。
予備重合終了後、残モノマーをパージした後、触媒をヘプタンにて十分に洗浄した。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M)のヘプタン溶液95mL添加した後に、40℃で減圧乾燥を実施した。この操作により、乾燥したメタロセン系重合触媒Bを0.688kg得た。
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。これにトリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液500ml(0.12mol)、エチレン1.89kg、水素2.0リットル(標準状態の体積として)を加え、内温を30℃に維持した。次いで、メタロセン系重合触媒Aを0.83g(固体触媒成分として)アルゴンで圧入して重合を開始させ、40分かけて62℃に昇温し、120分間その温度を維持した。ここでエタノール100mlを添加して反応を停止させた。残ガスをパージし、ポリプロピレン系重合体(PP−1)20.2kgを得た。重合条件および重合結果を表3に示した。
製造例1と同様の操作を行い、(PP−2)〜(PP−11)を得た。各工程の条件は表3に従った。
基材層用樹脂として、チーグラー・ナッタ系触媒によって重合された市販のプロピレン系重合体(PPC−1;日本ポリプロ(株)製ノバテックF203T:MFR=2.5g/10分、Mw=342000g/モル、Mw/Mn=5.6、融点158℃)を用いた。
(1)樹脂組成物の製造
シーラント層用のプロピレン系樹脂組成物は、高分子量プロピレン系重合体(A)として(PP−1)を80重量%と、超低分子量プロピレン系重合体(B)として(PP−2)20重量%とをドライブレンドした重合体混合物に対して、酸化防止剤:テトラキス{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン(商品名=イルガノックス1010)500ppm、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名=イルガフォス168)500ppm、中和剤:ステアリン酸カルシウム500ppmを加えた後、スクリュー口径15mmの二軸混練機によって押出機温度=200℃、スクリュー回転数=700rpm、吐出量=3.0kg/hの条件で造粒することにより得た。プロピレン系樹脂組成物の角振動数0.1rad/sでのG’の値を表4に示す。
(2)プロピレン系積層フィルムの製造
(i)未延伸シートの成形
成形には口径30mmの表面層用押出機−1及び口径30mmの表面層用押出機−2、口径75mmの中間層用押出機−3が接続された、ダイス幅265mmの3種3層Tダイを用いた。シーラント層用のプロピレン系樹脂組成物を押出機−1に、基材層用の重合体としてPPC−1を押出機−2と押出機−3に投入し、240℃にて溶融押出し、30℃の冷却ロールで冷却固化させ、厚さ約1mmの未延伸シートを得た。その際、未延伸シートを構成する各層の厚み比が、フィルム外観評価用サンプルとしては、シーラント層:基材層=1:39、300gヒートシール温度評価用サンプルとしては、シーラント層:基材層=1:9となるように、各押出機の吐出量を調製した。
(ii)延伸フィルムの成形
次に、得られた未延伸シートを、テンター式逐次二軸延伸装置にて105℃でMD方向に5倍、引き続きテンター炉内で160℃に予熱をかけた後、158℃でTD方向に9倍の延伸倍率で延伸し、5%緩和させつつ158℃で熱セットをかけて、フィルム全厚さ20μmの2種2層の二軸延伸ポリプロピレン系積層フィルムを得た。得られたフィルムの基材層側に40dyn/cmとなるようコロナ放電処理を施した。得られたポリプロピレン系積層フィルムの評価結果を表4に示す。
得られた積層フィルムは、本発明の特定物性を全て満足しているため、フィルム外観および低温ヒートシール性に極めて優れるものであった。
実施例2のシーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の製造において、超低分子量プロピレン系重合体(B)を(PP−3)に変更し、配合比率を(PP−1)/(PP−3)=70重量%/30重量%に変更した以外は、実施例1と同様に2種2層積層フィルムを成形した。得られたポリプロピレン系積層フィルムの評価結果を表4に示す。
得られた積層フィルムは、本願の特定物性を全て満足しているため、フィルム外観および低温ヒートシール性に極めて優れるものであった。
実施例1のシーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の製造において、超低分子量プロピレン系重合体Bを(PP−4)に変更した以外は、実施例1と同様に2種2層積層フィルムを成形した。得られたポリプロピレン系積層フィルムの評価結果を表4に示す。
得られた積層フィルムは、本発明の特定物性を全て満足しているため、フィルム外観および低温ヒートシール性に極めて優れるものであった。
実施例1のシーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の製造において、超低分子量プロピレン系重合体Bを(PP−5)に変更した以外は、実施例1と同様に2種2層積層フィルムを成形した。得られたポリプロピレン系積層フィルムの評価結果を表4に示す。
得られた積層フィルムは、該樹脂組成物の溶融流動性が若干不足していたため、製品としては特に問題はないが、わずかなシャークスキンが発生したため、外観を△としたが、それ以外にはフィルムの外観に何の問題もなく、低温ヒートシール性は極めて優れるものであった。
実施例1のシーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の製造において、超低分子量プロピレン系重合体Bを(PP−6)に変更した以外は、実施例1と同様に2種2層積層フィルムを成形した。得られたポリプロピレン系積層フィルムの評価結果を表4に示す。
得られた積層フィルムは、該樹脂組成物の溶融流動性が若干不足していたため、製品としては特に問題はないが、わずかなシャークスキンが発生したため、外観を△としたが、それ以外にはフィルムの外観に何の問題もなく、低温ヒートシール性は極めて優れるものであった。
実施例1のシーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の製造において、超低分子量プロピレン系重合体(B)を(PP−3)に変更し、配合比率を(PP−1)/(PP−3)=90重量%/10重量%に変更した以外は、実施例1と同様に2種2層のポリプロピレン系積層フィルムを成形した。得られたポリプロピレン系積層フィルムの評価結果を表4に示す。
得られた積層フィルムは、該樹脂組成物の溶融流動性が若干不足していたため、製品としては特に問題はないが、わずかなシャークスキンが発生したため、外観を△としたが、それ以外にはフィルムの外観に何の問題もなく、低温ヒートシール性は極めて優れるものであった。
実施例1のシーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の製造において、プロピレン系樹脂組成物(PP−7)を単独とした以外は、実施例1と同様に2種2層積層フィルムを成形した。得られたポリプロピレン系積層フィルムの評価結果を表5に示す。
得られた積層フィルムは、該樹脂組成物に超低分子量プロピレン系重合体(B)を用いず、高分子量プロピレン系重合体Aの重量平均分子量も小さいため、シーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の貯蔵弾性率G’も低く、該積層フィルムには、うろこ模様が発生し、フィルム外観が著しく悪化した。
実施例1のシーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の製造において、プロピレン系樹脂組成物(PP−1)を単独とした以外は、実施例1と同様に2種2層積層フィルムを成形した。得られたポリプロピレン系積層フィルムの評価結果を表5に示す。
得られた積層フィルムは、該樹脂組成物に超低分子量プロピレン系重合体(B)を用いなかったため、シーラント層用のプロピレン系樹脂組成物のMFRも低く、該積層フィルムには、シャークスキンが発生し、フィルム外観が著しく悪化した。
実施例1のシーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の製造において、超低分子量プロピレン系重合体Bを(PP−8)に変更した以外は、実施例1と同様に2種2層積層フィルムを成形した。得られたポリプロピレン系積層フィルムの評価結果を表5に示す。
得られた積層フィルムは、該樹脂組成物の超低分子量プロピレン系重合体(B)の重量平均分子量が大きいため、該積層フィルムには、シャークスキンが発生し、フィルム外観が著しく悪化した。
実施例1のシーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の製造において、超低分子量プロピレン系重合体Bを(PP−6)に変更し、配合比率を(PP−1)/(PP−6)=45重量%/55重量%に変更した以外は、実施例1と同様に2種2層積層フィルムを成形した。得られたポリプロピレン系積層フィルムの評価結果を表5に示す。
得られた積層フィルムは、該樹脂組成物の高分子量プロピレン系重合体(A)と超低分子量プロピレン系重合体(B)との配合比率が、本発明の範囲外であったため、シーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の貯蔵弾性率G’も低く、該積層フィルムには、うろこ模様が発生し、フィルム外観が著しく悪化した。
実施例1のシーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の製造において、高分子量プロピレン系重合体Aを(PP−9)に変更し、超低分子量プロピレン系重合体Bを(PP−5)に変更した以外は、実施例1と同様に2種2層積層フィルムを成形した。得られたポリプロピレン系積層フィルムの評価結果を表5に示す。
得られた積層フィルムは、該樹脂組成物の高分子量プロピレン系重合体(A)の重量平均分子量が大きいため、シーラント層用のプロピレン系樹脂組成物のMFRが低く、該積層フィルムには、高分子由来のフィッシュアイ及び流動性不足によるシャークスキンが発生し、フィルム外観が著しく悪化した。
実施例1のシーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の製造において、高分子量プロピレン系重合体(A)を(PP−10)に変更した以外は、実施例1と同様に2種2層積層フィルムを成形した。得られたポリプロピレン系積層フィルムの評価結果を表5に示す。
得られた積層フィルムは、該樹脂組成物の高分子量プロピレン系重合体(A)の重量平均分子量が小さいため、シーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の貯蔵弾性率G’も低く、該積層フィルムには、うろこ模様が発生し、フィルム外観が著しく悪化した。
実施例1のシーラント層用のプロピレン系樹脂組成物の製造において、超低分子量プロピレン系重合体(B)を(PP−11)に変更し、配合比率を(PP−1)/(PP−11)=75重量%/25重量%に変更した以外は、実施例1と同様に2種2層積層フィルムを成形した。得られたポリプロピレン系積層フィルムの評価結果を表5に示す。
得られた積層フィルムは、該樹脂組成物の超低分子量プロピレン系重合体(B)のエチレン含量が0.5重量%であったため、ヒートシール温度が135℃と悪化した。
Claims (6)
- 下記の(A)高分子量プロピレン系重合体50〜99重量%、及び(B)超低分子量プロピレン系重合体1〜50重量%とからなる、230℃、2.16Kg荷重で測定されたメルトフローレート(MFR)が2.0〜20g/10分のプロピレン系樹脂組成物をシーラント層として用いることを特徴とするプロピレン系積層フィルム。
(A)高分子量プロピレン系重合体:エチレン含量が1.0〜6.0重量%であり、重量平均分子量(Mw)が270000〜460000であるメタロセン触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体
(B)超低分子量プロピレン系重合体B:エチレン含量が1.0〜6.0重量%であり、重量平均分子量(Mw)が29000〜130000であるメタロセン触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体 - プロピレン系樹脂組成物が、200℃における動的粘弾性測定より得られる角振動数ω=0.1(rad/sec)における貯蔵弾性率G’(ω=0.1)が20Pa以上の強度を有することを特徴とする請求項1記載のプロピレン系積層フィルム。
- 共押出し法で得られることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン系積層フィルム。
- 少なくとも一軸方向に延伸されていることを特徴とする請求請1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン系積層フィルム。
- 二軸方向に延伸されていることを特徴とする請求請1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン系積層フィルム。
- 請求請1〜5のいずれか1項に記載のプロピレン系積層フィルムを用いることを特徴とするヒートシール性包装用フィルム。
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