JP2008264842A - レーザー肉盛バルブシート用原料粉末およびこれを用いたバルブシート - Google Patents

レーザー肉盛バルブシート用原料粉末およびこれを用いたバルブシート Download PDF

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Abstract

【課題】 製造性、肉盛性、耐摩耗性および仕上性に優れたレーザー肉盛バルブシート用原料粉末およびこれを用いたバルブシートを提供する。
【解決手段】 レーザー肉盛バルブシート用原料粉末において、質量%で、Ni:7〜20%、Fe+Co:10%以下、Si:2〜5%、Al:3%以下、B:0.5〜5%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる粉末を80〜99%と、Mo:5〜40%、Cr:25%以下、Si:5%以下、残部Coおよび不可避的不純物からなり、ビッカース硬度が500HV以上、平均粒径が50〜200μmである粉末を1〜20%混合してなることを特徴とするレーザー肉盛バルブシート用原料粉末。
【選択図】 図1

Description

本発明は、製造性、肉盛性、耐摩耗性および仕上性に優れたレーザー肉盛バルブシート用原料粉末およびこれを用いたバルブシートに関するものである。
従来、自動車エンジン等のバルブシートにはFe基粉末焼結材が主に使用されており、これをシリンダヘッドに圧入しバルブによる摩耗を抑制している。このような焼結バルブシートと比較し、放熱性、薄肉性に優れたレーザー肉盛銅合金バルブシートの技術が開示されている。例えば特開2004−162100号公報(特許文献1)に開示されているように、質量%で、Ni:8.0〜20.0%、Si:1.5〜4.5%、および、Fe、Co、Crの少なくとも1種を合計で、2.0〜15.0%、さらに、Mm、P、Tiの少なくとも1種を合計で、0.1〜1.5%を含み、残部Cuおよび不可避的不純物からなる肉盛用銅合金粉末が提案されている。
また、特公平8−942号公報(特許文献2)に開示されているように、重量%で、Ni:5〜30%、Si:1〜5%、B:0.5〜3%、Fe:4〜30%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物よりなり、Cu基マトリックス中にFe−Ni系の珪化物および硼化物の粒子が分散した組織を有する耐摩耗性に優れた分散強化Cu基合金が提案されている。
さらに、特許第2748717号公報(特許文献3)に開示されているように、重量%で、Ni:10〜30%、Si:1〜5%、Fe:2〜15%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物よりなり、均一微細なデンドライトのCu−Ni合金中にFe−Ni系のシリサイドの硬質層が微細に分散した組織を有する肉盛用耐摩耗性銅基合金が提案されている。
特開2004−162100号公報 特公平8−942号公報 特許第2748717号公報
上述した特許文献1では、製造性、肉盛性、耐摩耗性、仕上性に優れた肉盛用銅合金粉末が提案されているが、この粉末を使用した肉盛バルブシートは良好な特性バランスを示すものである。しかしながら、特に、A/F(空燃比)が高い使用環境においては、燃焼生産物によるバルブとバルブシートとの凝着抑制効果が低いため、両者は激しく凝着摩耗を起こすことが分かった。
また、このような厳しい摩耗環境において耐摩耗性を改善するには、数十〜数百μm程度の粗大硬質粒子の分散が重要であるとされている特許文献2での実施例2によると粗大粒子の分散には液相分離が有効であるが、高融点元素を多量に含むため、アトマイズ時に閉塞を起こすなど製造性に課題があり、また、溶湯の粘性が上がり肉盛性を劣化させたりする。さらに、粗大硬質粒子は切削工具の刃先などを著しく摩耗し、仕上性を劣化させてしまう。このように、耐摩耗性と製造性、肉盛性を両立させることは非常に難しく、なおかつ、粗大粒子の分散と仕上性の両立は本質的に困難であり、従来技術の課題となっていた。
さらに、特許文献3には、Cu基合金粉末にCo基合金やNi基合金粉末を混合した実施例が記載されているが、Cu基合金にはBを添加しておらず、殻状Mo系硼化物の効果を狙ったものではない。
上述したような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、特に凝着摩耗の激しい環境下で使用される場合においても良好な耐摩耗性を示し、かつ、製造性、肉盛性、仕上性にも優れた特性を示すレーザー肉盛バルブシート用原料粉末およびレーザー肉盛バルブシートを提供するものである。
その発明の要旨とするところは、
(1)レーザー肉盛バルブシート用原料粉末において、質量%で、Ni:7〜20%、Fe+Co:10%以下、Si:2〜5%、Al:3%以下、B:0.5〜5%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる粉末を80〜99%と、Mo:5〜40%、Cr:25%以下、Si:5%以下、残部Coおよび不可避的不純物からなり、ビッカース硬度が500HV以上、平均粒径が50〜200μmである粉末を1〜20%混合してなることを特徴とするレーザー肉盛バルブシート用原料粉末。
(2)前記(1)に記載の混合粉末をレーザー肉盛したことを特徴とするレーザー肉盛バルブシート。
(3)前記(2)に記載のレーザー肉盛層に、Mo:5〜40%、Cr:25%以下、Si:5%以下、残部Coおよび不可避的不純物からなる粉末を主成分とした相をMo系硼化物が囲んだ殻構造の粗大粒子を有することを特徴とするレーザー肉盛バルブシート。
(4)前記(3)に記載の殻構造の粗大粒子が、ビッカース硬度が500HV以上、平均粒径が30〜300μmであることを特徴とするレーザー肉盛バルブシートにある。
以上述べたように、本発明により製造性、肉盛性、耐摩耗性および仕上性に優れたレーザー肉盛バルブシート用原料粉末およびこれを用いたバルブシートを提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における最も重要な特徴は、Ni,Fe,Co,Si,Al,Bを所定量含む肉盛性に優れたCu基合金粉末(以下、Cu基合金粉末という)と、Mo,Cr,Siを所定量含む高硬度なCo基合金粉末(以下、Co基合金粉末という)を混合していることにある。この混合粉をレーザーなどで溶融、凝固させると、Cu基合金粉末中のBが、Co基合金粉末中で硼化物を生成しやすいMoと、Co基合金粉末の界面で反応し、Mo系硼化物となり、図1に示す殻構造の硬質粒子を形成することにある。なお、図1は、本発明に係る殻構造の硬質粒子を形成する状態を示す反射電子像およびその模式図であり、図1(a)は反射電子像であり、図1(b)は図1(a)の模式図である。
上記したBを含むCu基合金粉末とMoを含むCo基合金粉末を混合し、レーザー肉盛で溶融、凝固させることによって得られる殻構造の粗大硬質粒子を形成することが本発明の最も重要な特徴である。この特徴について以下(1)〜(5)に、さらに詳細に説明する。
(1)生成するMo系硼化物は摩耗環境において潤滑作用を持つ。この潤滑作用については詳細は定かでないが、酸化雰囲気で生成するMo,Bの酸化物により、バルブ、バルブシート表面における、双方への移着が抑制されるためと推測される。この潤滑作用によって、上記のような極めて厳しい凝着摩耗環境下においても良好な耐摩耗性を有することができるものである。
(2)Mo系硼化物を形成するMo,Bが、それぞれ別の粉末に含まれて溶融されることにより、主にその界面にMo系硼化物が生成し、Co基合金粉末の成分を主成分とした硬質相の周りをMo系硼化物が囲んだ殻構造となる。さらに、Bの一部はこのCo基合金粉末の内部にも拡散し、Mo系硼化物を生成する。従って、図1に示すような、Co基合金粉末を主成分とした硬質相とその内部にBが拡散して生成したMo系硼化物の混合粗大粒子をMo系硼化物が囲んだ構造となる。この構造となることによって高硬度と潤滑作用を併せもった、凝着摩耗の厳しい環境下において極めて有用な粗大粒子となる。なお、図1(b)に示す、符号1はCu基合金粉末を主成分とした基地相であり、符号2はCo基合金粉末を主成分とした硬質相であり、符号3は殻状Mo系硼化物であり、符号4はBがCo基合金粉末の内部へ拡散し生成したMo系硼化物である。
(3)レーザー肉盛バルブシートの耐摩耗性改善には、Cuベースの基地硬度だけでなく、硬質相の粗大さが影響することが知られている。特許文献2によると、肉盛層に凝固のままで粗大な硬質粒子を分散するには液相分離組成を用いることで達成されるとされている。すなわち、Cuに対し液相分離傾向の高いCr,Mo,W,V,Nb,Ta,B,Cなどの元素を含むことにより溶湯を液相分離させ、分離状態の液相を凝固することにより粗大なサイズの液相が硬質粒子として分散する。
しかしながら、この方法では冷却速度のバラツキや溶融ビード(プール)の攪拌状態のバラツキにより、粗大粒子のサイズを制御することは難しく、微細すぎると耐摩耗性が劣化し、粗大すぎると仕上性が劣化する。本発明では上述の如く、Co基合金粉末および反応により生成するMo系硼化物が殻構造をもつ粗大硬質粒子となるが、界面に殻状に生成するMo系硼化物(高融点)が障壁となり、高温でこのMo系硼化物が生成した後はCu基合金粉末と、Co基合金粉末の反応が抑制される。その結果、殻構造をもつ粗大粒子のサイズは、混合するCo基合金粉末の粒子径でほぼ決まるため、粗大硬質粒子のサイズ制御が容易となる。
(4)一般的に粗大な硬質粒子が存在すると機械仕上性が劣化する。しかしながら、本発明における肉盛材は、数百μm程度の粗大硬質粒子が分散しているにも関わらず、表面の機械仕上性が良好である。この理由としては、以下のことが推測される。粗大硬質粒子が存在すると機械加工時にこの粗大硬質粒子が切削工具の刃先を摩耗したり、傷つけたりするため、その刃先で加工された表面は仕上がりが悪くなる。本発明における粗大硬質粒子は周りを潤滑効果の高いMo系硼化物が覆っているため、その潤滑効果により相手攻撃性が低く、切削工具の刃先を摩耗しないため、表面の仕上がりが良くなるものと推測される。
(5)本発明では、Mo源となるCo基合金粉末のベース金属をCoとしているが、CoはCu溶湯中に拡散しにくく、また、Moを含んでいるため、さらに拡散しにくい。その上、上記(3)の通り、Co基合金粉末の界面に高温で生成する殻状Mo系硼化物が障壁となるため、Co基合金粉末に含まれる元素が、Cu基合金粉末の溶湯へ拡散することが極めて少なく抑えられる。従って、Cu基合金粉末の組成が本来持っている良好な肉盛性を損なうことがない。仮に、Co基合金粉末をCuと全率固溶となるNiをベースとした合金とすると、殻状Mo系硼化物の障壁が生成する前に、ある程度のNiがCo基合金粉末の溶湯に拡散し、Cu基合金粉末の肉盛性を劣化させてしまう。
ここで、Mo系硼化物を生成するために、仮に所定量のMoをCu基合金粉末中に添加したとすると、Mo,Bを含むCu基合金溶湯は極めて高温でMo系硼化物を晶出するため、アトマイズ時に超粗大晶出粒子となりノズル閉塞を起こしやすい。さらに、アトマイズが可能であった場合でも、溶湯の粘性が高く肉盛性に劣り、超粗大晶出粒子のために仕上性が劣ってしまう。さらに、本発明のように、Co基合金粉末との界面で生成するMo系硼化物が殻状に生成することもなく、上記(2)〜(4)に記述した効果も得られない。従って、例え同一成分であったとしても、混合ではなく、単一合金粉末による技術と本発明は全く異なるものである。
以下、本発明に係る合金粉末についての限定理由について説明する。
先ず、Ni,Fe,Co,Si,Al,Bを所定量含む肉盛性に優れたCu基合金粉末について説明する。
Ni:7〜20%
Niは、硬度を上げ、耐摩耗性を改善する効果がある。しかし、7%未満ではその効果が十分でなく、20%を超えると肉盛性が劣化することから、その範囲を7〜20%とした。好ましくは10〜17%とする。
Fe+Co:10%以下
FeとCoは、Cu合金中での挙動が似ており、合計量によって扱うことができる。Fe,Coは硬度を上げ、耐摩耗性を改善する効果がある。しかし、10%を超えると肉盛性が劣化することから、その上限を10%とした。好ましくは2〜7%とする。
Si:2〜5%
Siは、硬度を上げ、耐摩耗性を改善する効果がある。しかし、2%未満ではその効果が十分でなく、5%を超えると肉盛性が劣化することから、その範囲を2〜5%とした。好ましくは3〜5%とする。
Al:3%以下
Alは、硬度を上げ、耐摩耗性を改善する効果がある。しかし、3%を超えると肉盛性が劣化することから、その上限を3%とした。好ましくは0.1〜1%とする。
B:0.5〜5%
Bは、本発明における肉盛材において、Co基合金粉末中のMoと反応し、Mo系硼化物を生成するための必須成分である。しかし、0.5%未満ではMo系硼化物の生成が十分でなく、また、5%を超えると、Cu基合金粉末を主とした基地が脆化し肉盛割れを発生するなど肉盛性を劣化させる。従って、その範囲を0.5〜5%とした。好ましくは1〜3%とする。
Cu基合金
Cuは、本発明に係るレーザー肉盛バルブシートは主にアルミニウム合金のシリンダヘッドに肉盛されるため、Alとの溶接性に優れたCuをベース合金としている。このCu基合金粉末は良好な肉盛性を有するCu基合金粉末であり、肉盛層においては基地となる成分である。従って、80%未満では肉盛性が劣化し、また、99%を超えると耐摩耗性が劣化することから、その範囲を80〜99%とした。好ましくは85〜96%とする。
次に、Mo,Cr,Siを所定量含む高硬度なCo基合金粉末について説明する。
Mo:5〜40%
Moは、本発明の肉盛材において、Cu基合金粉末中のBと反応し、Mo系硼化物を生成するための必須成分である。しかし、5%未満ではMo系硼化物の生成が十分でなく、また、40%を超えるとCo基合金粉末の融点を上昇させ、アトマイズが困難になる。従って、その範囲を5〜40%とした。好ましくは10〜30%とする。
Cr:25%以下
Crは、硬さを上げ、耐摩耗性を改善する効果がある。しかし、25%を超えるとCo基合金粉末の融点を上昇させ、アトマイズが困難になる。従って、その上限を25%とした。好ましくは10〜20%とする。
Si:5%以下
Siは、硬さを上げ、耐摩耗性を改善する効果がある。しかし、5%を超えると肉盛層におけるCu基合金粉末を主とした粗大硬質粒子が脆くなり、仕上加工時にこの粗大硬質粒子が脱落し、仕上げ性が劣化してしまう。従って、その上限を5%とした。好ましくは3%以下とする。
Coは、比較的低融点なためレーザー肉盛技術での溶融が可能であり、しかも、Cuとの反応性が悪く、必要以上にCu基合金粉末の溶湯中へ拡散しないため、このCu基合金粉末が本来持つ良好な肉盛性を損なわない。また、本発明の必須元素であるMoを40%まで添加してもアトマイズ可能な融点(1600℃程度)に抑えることができる。その混合量は、殻状粗大硬質粒子の量に影響する。しかし、1%未満では粗大硬質粒子の量が十分でないため、耐摩耗性に劣る。また、20%を超えると肉盛層が脆化し肉盛割れが発生するなど肉盛性を劣化させる。従って、その範囲を1〜20%とする。好ましくは4〜15%とした。
ビッカース硬度:500HV以上
本発明におけるCo基合金粉末は、添加元素であるMoが一部Bと反応し、Mo系硼化物を生成する他、多くは肉盛材においても、元の原料粉末であるCo基合金粉末とほぼ同じ組成で殻状粗大硬質粒子の内部に留まる。従って、Co基合金粉末の硬度そのものが肉盛層中の粗大硬質粒子の硬度に影響する。しかし、Co基合金粉末のビッカース硬度が500HV未満では、肉盛層中の粗大硬質粒子の硬度を500HV以上にすることが困難であり、その場合耐摩耗性が十分でないことから、その下限を500HVとした。好ましくは600〜850HVとする。
平均粒径:50〜200μm
本発明におけるCo基合金粉末の平均粒径は、殻状粗大硬質粒子のサイズおよびレーザー肉盛時の溶接性に影響を与える。Co基合金粉末の平均粒径が50μm未満では殻状粗大硬質粒子のサイズが小さくなってしまい、耐摩耗性改善の効果が十分でない。また、Co基合金粉末の平均粒径が200μmを超えるとレーザー肉盛時に十分に溶解せず、肉盛性を劣化させることから、Co基合金粉末の平均粒径の範囲を50〜200μmとした。好ましくは70〜120μmとする。
肉盛層中では、Co基合金粉末を主成分とした相と、その内部にBが拡散して生成したMo系硼化物を殻状Mo系硼化物が囲んだ構造となる。この構造となることによって高硬度と潤滑作用を併せもった、凝着摩耗の厳しい環境下において極めて有用な粗大粒子となる。この粗大粒子の硬度は耐摩耗性に影響を及ぼし、500HV未満では耐摩耗性が十分でない。従って、この殻構造の粗大硬質粒子の硬度を500HV以上とする。好ましくは600〜900HVとする。また、粗大粒子のサイズも耐摩耗性に影響し、30μm未満では、耐摩耗性が劣化し、300μmを超えると仕上性が劣化する。従って、その範囲を30〜300μmとする。好ましくは150〜250μmとした。
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
1.5kgの表1に示す母材を溶解し、Arアトマイズにて合金粉末を得る。表1に示すCu基合金粉末を150/63μmに分級し、また、Co基合金粉末は各平均粒径になるように分級し、これらを混合し、幅4mm、深さ2mmの溝を付けたAl基材上に円環状にレーザー肉盛を行いバルブシート形状に切削、研磨加工した後150℃に加熱した状態でバルブによる摩耗評価(A/F比=1.47)を行った。また、混合条件および殻構造粗大粒子硬度および径を表1および表2に示す。粗大粒子径は肉盛材を研磨し、光学顕微鏡写真により画像解析にて測定し、相当円の直径に換算した。その結果を表2に示す。
なお、レーザー肉盛条件については、以下の通りである。
レーザー出力:1.5kW、レーザー形:矩形、粉末供給量:50g/min、送り速度:8mm/s、Ar雰囲気中で行った。
(a)肉盛性
肉盛ビード断面の縦横比および肉盛割れの有無で評価(高さ/幅≦0.6、かつ肉盛割れなし:○、高さ/幅>0.6、または/および、肉盛割れあり:×)
(b)耐摩耗性
耐摩耗評価後のバルブシートの摩耗深さで評価(摩耗深さ≦60μm:○、摩耗深さ>6060μm:×)
(c)仕上性
バルブシート状に研磨した後の表面粗さで評価(Ra≦0.2μm:○、Ra>0.2μm:×)
Figure 2008264842
Figure 2008264842
表1および表2に示すように、No.1〜4およびNo.10〜14は本発明例であり、No.5〜9およびNo.15〜24は比較例である。
比較例No.5はCo基合金粉末の成分組成であるMo含有量が低いために殻構造が出来ず、耐摩耗性および仕上性が劣る。比較例No.6はCo基合金粉末の成分組成であるSi含有量が高いためにCo基合金粉末の硬度が高くなり、肉盛性および仕上性が劣る。比較例No.7はCo基合金粉末の硬度が低く、肉盛層中の殻構造粗大粒子の硬度が低いために耐摩耗性が劣る。比較例No.8はCo基合金粉末の平均粒子径が小さく、殻構造粗大粒子径が小さいために耐摩耗性が劣る。比較例No.9はCo基合金粉末の平均粒子径が大きく、肉盛層中の殻構造粗大粒子径が大きいために肉盛性および仕上性が劣る。
比較例No.15はCu基合金粉末の成分組成であるNi含有量が低いために耐摩耗性が劣る。比較例No.16はCu基合金粉末の成分組成であるNi含有量が高いために肉盛性が劣る。比較例No.17はCu基合金粉末の成分組成であるFe含有量とCo含有量の和が高いために肉盛性および仕上性が劣る。比較例No.18はCu基合金粉末の成分組成であるSi含有量が低いために耐摩耗性が劣る。比較例No.19はCu基合金粉末の成分組成であるSi含有量が高いために肉盛性および仕上性が劣る。
比較例No.20はCu基合金粉末の成分組成であるAl含有量が高いために肉盛性が劣る。比較例No.21はCu基合金粉末の成分組成であるB含有量が低いために殻構造が出来ず、耐摩耗性および仕上性が劣る。比較例No.22はCu基合金粉末の成分組成であるB含有量が高いために肉盛性が劣る。比較例No.23はCu基合金粉末の混合割合が低く、Co基合金粉末の混合割合が高いために肉盛性が劣る。
比較例No.24は比較例No.23と逆にCu基合金粉末の混合割合が高く、Co基合金粉末の混合割合が低いために耐摩耗性が劣る。なお、Co基合金粉末の比較例として、45Mo−5Cr−残部Coおよび10Mo−30Cr−1Si−残部Coから成る成分組成のものをアトマイズにより製造を試みたが、Mo,Cr母材が溶け残った。
これに対し、本発明例であるNo.1〜4およびNo.10〜14のいずれも本発明の条件を満足していることから、肉盛性、耐摩耗性および仕上性についていずれも優れていることが分かる。
以上述べたように、本発明の最大の特徴である、Ni,Fe,Co,Si,Al,Bを所定量含む肉盛性に優れるCu基合金粉末と、Mo,Cr,Siを所定量含む高硬度なCo基合金粉末とを混合した混合粉末をレーザーなどで溶融、凝固させるとCu基合金粉末中のBが、Co基合金粉末中で硼化物を生成し易いMoとCo基合金粉末の界面で反応し、Mo系硼化物となり、図1に示すような殻構造の硬質粒子を形成することで、肉盛性、耐摩耗性および仕上性の優れたレーザー肉盛バルブシート用原料粉末およびこれを用いた耐摩耗性に優れた肉盛バルブシートを提供することが出来るものである。
本発明に係る殻構造の硬質粒子を形成する状態を示す反射電子像およびその模式図である。
符号の説明
1 Cu基合金粉末を主成分とした基地相
2 Co基合金粉末を主成分とした硬質相
3 殻状Mo系硼化物
4 BがCo基合金粉末の内部へ拡散し生成したMo系硼化物


特許出願人 山陽特殊製鋼株式会社 他1名
代理人 弁理士 椎 名 彊

Claims (4)

  1. レーザー肉盛バルブシート用原料粉末において、質量%で、
    Ni:7〜20%、
    Fe+Co:10%以下、
    Si:2〜5%、
    Al:3%以下、
    B:0.5〜5%、
    残部Cuおよび不可避的不純物からなる粉末を80〜99%と、
    Mo:5〜40%、
    Cr:25%以下、
    Si:5%以下、
    残部Coおよび不可避的不純物からなり、ビッカース硬度が500HV以上、平均粒径が50〜200μmである粉末を1〜20%混合してなることを特徴とするレーザー肉盛バルブシート用原料粉末。
  2. 請求項1に記載の混合粉末をレーザー肉盛したことを特徴とするレーザー肉盛バルブシート。
  3. 請求項2に記載のレーザー肉盛層に、Mo:5〜40%、Cr:25%以下、Si:5%以下、残部Coおよび不可避的不純物からなる粉末を主成分とした相をMo系硼化物が囲んだ殻構造の粗大粒子を有することを特徴とするレーザー肉盛バルブシート。
  4. 請求項3に記載の殻構造の粗大粒子が、ビッカース硬度が500HV以上、平均粒径が30〜300μmであることを特徴とするレーザー肉盛バルブシート。
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