JP4409343B2 - クラッド性および耐摩耗性に優れた肉盛用銅合金粉末およびそれを用いたバルブシート - Google Patents
クラッド性および耐摩耗性に優れた肉盛用銅合金粉末およびそれを用いたバルブシート Download PDFInfo
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Description
一方、自動車エンジン等のバルブシートには、Fe基粉末焼結材が主に使用され、これをシリンダヘッドに圧入しバルブによる摩耗を抑制している。このような焼結バルブシートと比較し、放熱性、薄肉性に優れたレーザー肉盛バルブシートとして、レーザ粉末肉盛溶接する際、ビード形状が良好で、融合不良等の欠陥が発生せず、また、粉末製造に支障を来すことのない範囲でCu基合金に有効な微量の添加元素および微量の酸素を含有させたものとして、例えば特許第2984344号公報(特許文献1)が開示されている。
また、特許第3305738号公報(特許文献2)には、質量%で、Ni:5〜30%、Si:0.5〜5%、B:0.5〜3%、Co:2〜30%、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、Ni,Si,B,Coの合計含有量が60%を超えない耐摩耗性に優れた肉盛銅基合金。さらに、加えてPb:2〜20%、Sn:3〜15%、Zn:3〜30%を含む肉盛銅基合金が開示されている。
(1)質量%で、Ni:7〜20%、Fe+Co:10%以下、Si:2〜5%、S:0.1〜2%、Mn:1〜10%、残部Cuおよび不可避的不純物からなることを特徴とするクラッド性および耐摩耗性に優れた肉盛用銅合金粉末。
(2)質量%で、Mo:5%以下、B:2%以下を含むことを特徴とする前記(1)に記載のクラッド性および耐摩耗性に優れた肉盛用銅合金粉末。
(3)質量%で、P:2%以下、V:4%以下を含むことを特徴とする前記(1)または(2)に記載のクラッド性および耐摩耗性に優れた肉盛用銅合金粉末。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の肉盛用銅合金粉末を用いて作製したバルブシートにある。
本発明の第1の特徴は、高温での摩耗環境において凝着摩耗を起こしやすい銅合金において、自己潤滑性を有するMnSを均一分散させていることにある。この点についての本発明における合金系のポイントを以下に説明する。SはCu溶湯に対し均一な液相を形成しない。従って、銅合金中にMnSのような硫化物を均一分散させることは非常に困難である。そこで、Cuと全濃度域において、液相、固相で完全に溶け合い、かつSとも融点の低い液相を形成するNiを添加することにより、肉盛性を劣化させることなくSをCu(−Ni)溶湯に均一に溶かし込み、合金中の硫化物を均一分散させることができる。
本発明の第4の特徴は、Mo,B,V,P添加により、さらに硬度、耐摩耗性を改善でき、かつ添加量の上限を規制することによる良好な肉盛性の維持と粉末作製時の溶け残り防止を図ることにある。
Ni:7〜20%
Niは、本発明合金においてSを溶湯へ溶かし込み、かつCu−Ni−Si系基地中でNi系珪化物を形成し耐摩耗性を向上させるための必須元素である。しかし、7%未満ではSの溶湯への溶け込みが十分でなく、Cu−Ni−Si系基地の硬さも十分でない。また、20%を超えて添加するとCu−Ni−Si系基地において初晶となるCu基fcc相の凝固点を上昇させビード形状を劣化させるため、その上限を20%とした。
Siは、本発明合金において主にCu−Ni−Si系基地中でNi系珪化物を形成し、耐摩耗性を向上させるための必須元素である。しかし、2%未満では耐摩耗性の改善が十分でない。また、5%を超えて添加すると合金を脆化させ肉盛層にクラックが発生するため、その上限を5%とした。
Sは、本発明合金において自己潤滑性を有するMnSを析出させ、耐摩耗性を改善させるための必須元素である。しかし、0.1%未満では耐摩耗性の改善が十分でなく、また、2%を超えると肉盛時に割れが発生する。この割れはNi−Sの低融点共晶反応による凝固割れと推測される。従って、その上限を2%とした。
Mnは、本発明合金において自己潤滑性を有するMnSを析出させ、耐摩耗性を改善させるための必須元素である。しかし、1%未満では耐摩耗性の改善が十分でない。また、10%を超えるとビード形状の縦/横比を増大させる。また、Sと反応しなかった一部のMnはCu−Ni−Si系基地中のCu基fcc相に主に固溶され硬度向上にも寄与する。従って、その上限を10%とした。
FeおよびCoは、共にCuに対し包晶型の状態図を有しており、本発明合金中での作用もほぼ似ていることから合計添加量として扱うことができる。Fe,Coは本発明合金中において主にCu−Ni−Si系基地中でNiと共に珪化物を形成し、残りはCu基fcc相に固溶し基地硬度を向上させる。ただし、合計添加量が10%を超えると合金中に粗大粒子を形成し仕上性が劣化する。従って、その上限を10%とした。好ましくは1〜6%とする。
Mo、Bは共に合金の硬さを向上させて耐摩耗性を向上させる。特に同時添加した場合、Mo系硼化物が析出し効果的である。しかし、Moは5%を超えて添加すると粉末作製時に溶湯中で溶け残ってしまう。また、粗大粒子を形成し仕上性を劣化させるため、その上限を5%とした。また、Bは2%を超えて添加すると肉盛ビード断面形状の縦と横の長さの比(縦/横比)が増大する。従って、その上限を2%とした。
P,Vは、共に合金の硬さを向上させて耐摩耗性を向上させる。特に同時添加するとV系燐化物が析出し効果的である。しかし、Vは4%を超えて添加すると粉末作製時に溶湯中で溶け残ってしまう。また、粗大粒子を形成し仕上性を劣化させる。従って、その上限を4%とした。また、Pは2%を超えて添加すると肉盛層にクラックを生じる。従って、その上限を2%とした。
アルミナ坩堝にて表1に示す組成に秤量した1.2kgの母材を真空誘導溶解し、1600℃にて坩堝底のφ3mmノズルから出湯した。出湯直後に4MPaのArガスにて、予めAr置換しておいたタンク内にアトマイズ(フリーフォール方式)し供試粉末を作製した。この粉末を150/63μmに分級した後、幅4mm、深さ2mmの溝を付けたAl基材上に直線状(形状、ビード形状の評価)および円環状(クラックの有無、耐摩耗性、仕上性の評価)にレーザ肉盛した。この円環状の肉盛部をバルブシート形状に切削、研磨加工した。さらに、このバルブシートを用いて単体リグ摩耗試験を行なった。以下に、各評価の方法と判定基準を示す。また、評価結果を表2に示す。
・Al基材:JIS AC2Bに溶体化処理を施したもの
・レーザ出力:1.5kw
・レーザ形:1.8×4mm矩形
・粉末供給量:50g/min
・処理速度:8mm/sec
・雰囲気:Arガス(70L/min)
(a)母材の溶け残りの有無
○:なし
×:あり
(b)アトマイズ時の閉塞(坩堝中で溶解した母材が全量出湯できたかどうかで評価)
○:ノズル閉塞なし
×:アトマイズ中にノズル閉塞し全量出湯不可
○:直径15μm以上の粗大な硬質相なし
×:直径15μm以上の粗大な硬質相あり
(d)粉末硬さ
−150/+63μmに分級した粉末を樹脂埋めしミクロビッカースにて測定(荷重:100g、n=10の平均値)
直線状肉盛ビード頂上部を表面粗さ計で測定(JIS B 0601に準拠)
○:断面曲線の最大の高さRy≦0.5mm
×:Ry≧0.5mm
(f)ビード形状
直線状肉盛ビードの断面を研磨し光学顕微鏡にて観察し、ビード形状の縦横比で評価
〇:高さ/幅≦0.60
×:高さ/幅>0.60
円環状肉盛ビードの外観観察によりクラックの有無を評価
○:クラックなし
×:クラックあり
(h)耐摩耗性
350℃加熱、3000rpm、4.5h、大気中にて単体リグ試験を行い、バルブシート表面の摩耗深さにて評価
〇:摩耗高深さ≦20μm
×:摩耗高深さ>20μm
円環状肉盛ビードをバルブシート状に研磨した後の表面粗さで評価
〇:表面粗さRa≦0.2μm
×:表面粗さRa>0.2μm
特許出願人 山陽特殊製鋼株式会社 他1名
代理人 弁理士 椎 名 彊
Claims (4)
- 質量%で、
Ni:7〜20%、
Fe+Co:10%以下、
Si:2〜5%、
S:0.1〜2%、
Mn:1〜10%、
残部Cuおよび不可避的不純物からなることを特徴とするクラッド性および耐摩耗性に優れた肉盛用銅合金粉末。 - 質量%で、Mo:5%以下、B:2%以下を含むことを特徴とする請求項1に記載のクラッド性および耐摩耗性に優れた肉盛用銅合金粉末。
- 質量%で、P:2%以下、V:4%以下を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のクラッド性および耐摩耗性に優れた肉盛用銅合金粉末。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の肉盛用銅合金粉末を用いて作製したバルブシート。
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JP2004120702A JP4409343B2 (ja) | 2004-04-15 | 2004-04-15 | クラッド性および耐摩耗性に優れた肉盛用銅合金粉末およびそれを用いたバルブシート |
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