JP2008260755A - L−ビフェニルアラニン化合物の塩の回収方法、およびそれを用いたビフェニルアラニンエステル化合物の回収方法 - Google Patents

L−ビフェニルアラニン化合物の塩の回収方法、およびそれを用いたビフェニルアラニンエステル化合物の回収方法 Download PDF

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潔 杉
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Abstract

【課題】ビフェニルアラニンエステルの酵素水解により生成するL−ビフェニルアラニンの塩を簡便な操作により回収し、有効利用する方法を提供する。
【解決手段】ビフェニルアラニンエステル化合物(1)を、有機溶媒と水の混合溶媒中、pH6〜13に調整しながら、Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼを用いて加水分解し、生成したL−ビフェニルアラニン化合物の塩を含む水層と、未反応のD−ビフェニルアラニンエステル化合物を含む有機層を分離し、当該水層に無機塩および有機溶媒を加えて、当該水層中のL−ビフェニルアラニン化合物の塩を抽出する、L−ビフェニルアラニン化合物の塩の回収方法。
Figure 2008260755

(式中、R1は、アルキル基等を示し、R2はアミノ基の保護基を示す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、医薬等の中間体として有用なD−ビフェニルアラニン化合物の製造により生成するL−ビフェニルアラニン化合物の塩の回収方法、およびそれを用いたビフェニルアラニンエステル化合物の回収方法に関する。
D−ビフェニルアラニンは、中性エンドペプチダーゼ阻害剤等の医薬の中間体として有用である(特許文献1参照)。
特開平6−228187号公報
D−ビフェニルアラニンの製造方法として、ビフェニルアラニンエステルから酵素による加水分解(以下、酵素水解ともいう)する方法(D−ビフェニルアラニンエステルとL−ビフェニルアラニンの塩が生成する)が考えられる。しかし、L−ビフェニルアラニンの塩は廃棄されるか、或いは有効利用のためには、酸性で遊離酸として分離、晶析する等の煩雑な回収操作が必要となる。
本発明の目的は、ビフェニルアラニンエステルの酵素水解により生成するL−ビフェニルアラニンの塩を簡便な操作により回収し、有効利用する方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、ビフェニルアラニンエステルの酵素水解後の反応液を、水層と有機層を分離し、分離後の水層に無機塩と有機溶媒を加えて抽出するという簡便な操作により、L−ビフェニルアラニン化合物の塩を塩の形態のままで回収できることを見出し、発明を完成するに至った。また、本発明者らは、この回収されたL−ビフェニルアラニン化合物の塩をエステル化し、次いでラセミ化することにより、ビフェニルアラニンエステルに変換でき、従って、酵素水解の原料を簡便な操作により回収できることも合わせて見出した。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]式(1):
Figure 2008260755
(式中、Rは、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、Rはアミノ基の保護基を示す。)
で表されるビフェニルアラニンエステル化合物(以下、ビフェニルアラニンエステル化合物(1)ともいう)を、有機溶媒と水の混合溶媒中、pH6〜13に調整しながら、Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼを用いて加水分解し、生成した式(2’):
Figure 2008260755
(式中、Mは、アルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示し、Rは前記と同義である。)
で表されるL−ビフェニルアラニン化合物の塩(以下、L−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)ともいう)を含む水層と、式(3):
Figure 2008260755
(式中、各記号は前記と同義である。)
で表される未反応のD−ビフェニルアラニンエステル化合物(以下、D−ビフェニルアラニンエステル化合物(3)ともいう)を含む有機層を分離し;
当該水層に無機塩および有機溶媒を加えて、当該水層中のL−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)を抽出する;
ことを包含する、L−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)の回収方法。
[2]加水分解用の有機溶媒が、メチルtert−ブチルエーテルおよびトルエンから選ばれる1種以上である、上記[1]に記載の回収方法。
[3]抽出用の有機溶媒が、メチルtert−ブチルエーテルおよびトルエンから選ばれる1種以上である、上記[1]に記載の回収方法。
[4]ビフェニルアラニンエステル化合物(1)を、有機溶媒と水の混合溶媒中、pH6〜13に調整しながら、Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼを用いて加水分解し、生成したL−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)を含む水層と、未反応のD−ビフェニルアラニンエステル化合物(3)を含む有機層を分離し;
当該水層に無機塩および有機溶媒を加えて、当該水層中のL−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)を抽出し;
抽出したL−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)をエステル化して、式(2):
Figure 2008260755
(式中、各記号は前記と同義である。)
で表されるL−ビフェニルアラニンエステル化合物(以下、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)ともいう)を得;
L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)を塩基でラセミ化して、ビフェニルアラニンエステル化合物(1)を得る;
ことを包含する、ビフェニルアラニンエステル化合物(1)の回収方法。
[5]加水分解用の有機溶媒が、メチルtert−ブチルエーテルおよびトルエンから選ばれる1種以上である、上記[4]に記載の回収方法。
[6]抽出用の有機溶媒が、メチルtert−ブチルエーテルおよびトルエンから選ばれる1種以上である、上記[4]に記載の回収方法。
[7]エステル化が、塩基の存在下、対応する硫酸エステルまたはハライドと反応させることにより行われる、上記[4]に記載の回収方法。
[8]Rがメチルである、上記[4]に記載の回収方法。
[9]エステル化が、塩基の存在下、ジメチル硫酸と反応させることにより行われる、上記[8]に記載の回収方法。
[10]ラセミ化で使用する塩基が、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属アルコラートから選ばれる、上記[4]に記載の回収方法。
[11]ラセミ化で使用する塩基がアルカリ金属アルコラートである、請求項4に記載の回収方法。
[12]ラセミ化で使用する塩基がナトリウムメチラートである、上記[4]に記載の回収方法。
[13]Rがアルキル基であり、かつRが−CO(式中、Rは、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基または9−フルオレニルメチル基を示す。)で表される基である、上記[4]に記載の回収方法。
[14]L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)を固体として単離した後、ラセミ化を行う、上記[13]に記載の回収方法。
[15]式(1a):
Figure 2008260755
で表されるDL−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステル(以下、DL−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステル(1a)ともいう)を、メチルtert−ブチルエーテルと水の混合溶媒中、タウリンと水酸化カリウム水溶液によりpH6〜13に調整しながら、Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼを用いて加水分解し、生成した式(2’a):
Figure 2008260755
で表されるL−N−Boc−ビフェニルアラニンカリウム塩(以下、L−N−Boc−ビフェニルアラニンカリウム塩(2’a)ともいう)を含む水層と、式(3a):
Figure 2008260755
で表される未反応のD−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステル(以下、D−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステル(3a)ともいう)を含む有機層を分離し;
当該水層に無機塩およびメチルtert−ブチルエーテルを加えて、当該水層中のL−N−Boc−ビフェニルアラニンカリウム塩(2’a)を抽出し;
抽出したL−N−Boc−ビフェニルアラニンカリウム塩(2’a)を塩基の存在下、ジメチル硫酸でエステル化して、式(2a):
Figure 2008260755
で表されるL−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステル(以下、L−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステル(2a)ともいう)を得;
L−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステル(2a)を固体として単離した後、ナトリウムメチラートでラセミ化して、DL−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステル(1a)を得る;
ことを包含する、DL−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステル(1a)の回収方法。
本発明の方法によれば、ビフェニルアラニンエステル化合物の酵素水解後の反応液から、簡便な操作によりL−ビフェニルアラニン化合物の塩を塩の形態のままで回収できる。また、この回収されたL−ビフェニルアラニン化合物の塩をエステル化、次いでラセミ化することにより、ビフェニルアラニンエステル化合物に変換できるので、酵素水解の原料を簡便な操作により回収できる。このように、酵素水解の目的物ではないL−ビフェニルアラニン化合物を有効利用することができるので、本発明の方法は経済的に有利な方法である。
本明細書において使用する置換基の定義を以下に説明する。
「アルキル基」としては、炭素数1〜6の直鎖又は分枝のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等が挙げられ、好ましくはメチル又はエチルであり、より好ましくはメチルである。
「アルケニル基」としては、炭素数2〜6の直鎖又は分枝のアルケニル基、例えば、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル等が挙げられ、好ましくは、アリルである。
「シクロアルキル基」としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられ、好ましくはシクロペンチル又はシクロヘキシルである。
「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子又は臭素原子である。
「ハロアルキル基」とは、ハロゲン原子で置換された上記定義の「アルキル基」である。当該ハロゲン原子の置換数は特に限定されないが、1〜3個が好ましい。「ハロアルキル基」としては、例えば、クロロメチル、ブロモメチル、フルオロメチル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、トリフルオロメチル、2,2−ジクロロエチル、2,2,2−トリクロロエチル等が挙げられ、好ましくはトリフルオロメチルである。
「アルコキシ基」としては、炭素数1〜6の直鎖又は分枝のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられ、好ましくはメトキシ又はエトキシである。
「置換基を有していてもよいアリール基」の「アリール基」としては、炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニルである。
当該アリール基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、ハロゲン原子(上記で定義したものと同じものが例示される)、アルキル基(上記で定義したものと同じものが例示される)、ハロアルキル基(上記で定義したものと同じものが例示される)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(上記で定義したものと同じものが例示される)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。当該置換基の数は特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基の数が2個以上の場合、それらの置換基は同一又は異なっていてもよい。
「置換基を有していてもよいアラルキル基」の「アラルキル基」は、上記定義の「アリール基」で置換された上記定義の「アルキル基」である。当該アリール基の置換数は特に限定されないが、1〜3個が好ましい。「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル、フェネチル、1−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−フェニルプロピル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、ベンズヒドリル、トリチル等が挙げられ、好ましくはベンジルである。
当該アラルキル基は置換可能な位置に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、ハロゲン原子(上記で定義したものと同じものが例示される)、アルキル基(上記で定義したものと同じものが例示される)、ハロアルキル基(上記で定義したものと同じものが例示される)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(上記で定義したものと同じものが例示される)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。当該置換基の数は特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基の数が2個以上の場合、それらの置換基は同一又は異なっていてもよい。
で示される「アミノ基の保護基」としては、アミノ基の保護基として用いられる自体公知の保護基を特に制限なく使用することができる。そのような保護基としては、−CO(式中、Rは、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基または9−フルオレニルメチル基を示す。)、−COR(式中、Rは、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。)、置換基を有していてもよいアラルキル基等が挙げられる。「アミノ基の保護基」の具体例として、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、アリルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンゾイル、ベンジル、ベンズヒドリル、トリチル等が挙げられる。
は、好ましくはアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくはメチルまたはエチルであり、特に好ましくはメチルである。
は、好ましくは−CO(式中、Rは前記と同義である。)であり、より好ましくはtert−ブトキシカルボニル(Boc)である。
「アルカリ金属原子」としては、カリウム、ナトリウム、リチウム等が挙げられる。
「アルカリ土類金属原子」としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
Mは、好ましくはアルカリ金属原子であり、より好ましくはカリウム、ナトリウムであり、特に好ましくはカリウムである。
本発明の方法において用いられる原料である、ビフェニルアラニンエステル化合物(1)は、例えば、次の方法で製造することができる。
Figure 2008260755
(式中、各記号は前記と同義である)
工程1
化合物(4)とヒダントインを、塩基の存在下で反応させることにより、化合物(5)を得ることができる。
工程2
化合物(5)を還元することにより、化合物(6)を得ることができる。
還元は、好ましくは、接触水素添加により行うことができる。
工程3
化合物(6)を加水分解することにより、化合物(7)を得ることができる。
工程4
化合物(7)を、アミノ基の保護およびカルボキシル基のエステル化反応に供することにより、ビフェニルアラニンエステル化合物(1)を得ることができる。アミノ基の保護とカルボキシル基のエステル化は常法に従って行うことができる。アミノ基の保護とカルボキシル基のエステル化の順序は特に限定されず、任意の順序で行うことができる。
ビフェニルアラニンエステル化合物(1)には、α位の炭素原子を不斉中心とする2種の光学異性体(L体とD体)が存在するが、本発明の方法に用いられるビフェニルアラニンエステル化合物(1)は、これらの光学異性体を等量含むラセミ体であっても、一方の光学異性体を過剰に(任意の割合で)含む混合物であってもよい。好ましくはラセミ体である。
このようにして得られたビフェニルアラニンエステル化合物(1)を、Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼを用いて加水分解する。当該プロテアーゼを用いて加水分解すると、L体が優先的に加水分解される。
Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼとしては、エナンチオ選択性に優れることから、Bacillus licheniformis由来のプロテアーゼが好ましい。Bacillus licheniformis由来のプロテアーゼの具体例としては、サブチリシン(subtilisin)を含有するBacillus licheniformis由来のプロテアーゼが挙げられ、好ましくはアルカラーゼ(ノボザイム社)、特に好ましくはアルカラーゼ2.4L(ノボザイム社)である。
上記プロテアーゼの純度あるいは形態については特に制限されるものではなく、精製酵素、粗酵素、微生物培養物、菌体、それらの処理物等の種々の形態で用いることができる。ここで処理物とは、例えば、凍結乾燥菌体、菌体破砕物、菌体抽出物等をいう。さらに、上記のような種々の純度あるいは形態の酵素を例えば、シリカゲルやセラミックス等の無機担体、セルロース、イオン交換樹脂等に固定化したものを使用してもよい。
上記プロテアーゼの使用量は、特に限定されないが、ビフェニルアラニンエステル化合物(1)1gに対して、精製酵素に換算して、通常0.001〜0.5g、好ましくは0.001〜0.1gである。
上記プロテアーゼによる加水分解は、プロテアーゼの種類にもよるが、pHを6〜13、好ましくはpH6〜10、より好ましくは6.0〜9.5に調整しながら行われる。上記pH範囲で加水分解を行うことにより、光学純度の高い生成物を得ることができる。
pHを上記範囲に調整するには、アルカリおよび/または緩衝剤が使用される。
緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、アミノ酸緩衝剤、アミノスルホン酸緩衝剤等の緩衝剤等が挙げられる。
リン酸緩衝剤としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。
酢酸緩衝剤としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられる。
アミノ酸緩衝剤のアミノ酸とは、1分子中にアミノ基(置換アミノ基や環状構造となった置換アミノ基も含む)とカルボキシル基の両方を有する有機化合物(アミノ基の水素原子が側鎖部分と環状構造となったイミノ酸も含む)であり、α−アミノ酸だけでなく、β−アミノ酸、γ−アミノ酸、δ−アミノ酸等も含まれる。α−アミノ酸の具体例としては、グリシン、アラニン、α−アミノ酪酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、メチオニン、システイン、スレオニン、セリン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン、グルタミン等の中性アミノ酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸;リジン、トリプトファン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン等の塩基性アミノ酸等が挙げられる。β−アミノ酸の具体例としては、β−アラニン、β−アミノ酪酸等が挙げられる。γ−アミノ酸の具体例としては、γ−アミノ酪酸等が挙げられる。δ−アミノ酸の具体例としては、5−アミノ吉草酸等が挙げられる。アミノ酸としては、グリシンが好ましい。
アミノスルホン酸緩衝剤のアミノスルホン酸とは、上記アミノ酸におけるカルボキシル基の代わりにスルホ基を有する有機化合物であり、具体例としては、タウリン、N−メチルタウリン、2−(4−モルホリニル)エタンスルホン酸等が挙げられ、好ましくはタウリンである。
緩衝剤としては、タウリンまたはリン酸緩衝剤が好ましく、タウリンが特に好ましい。
緩衝剤の濃度は、通常0.05〜0.8M、好ましくは0.1〜0.8M、より好ましくは0.1〜0.5Mである。緩衝液の濃度を上記の範囲とすることにより、光学純度の高い生成物が得られる。
緩衝剤の使用量は、濃度にもよるがビフェニルアラニンエステル化合物(1)1gに対して、通常0.1〜100mL、好ましくは0.4〜10mLである。緩衝液の使用量がこの範囲内であると、円滑に反応を進行させることが可能になる。
アルカリを使用する場合、固体または水溶液として使用されるが、操作上水溶液が好ましい。アルカリ水溶液としては、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)水溶液、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム)水溶液、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)水溶液、アルカリ土類金属炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)水溶液、アルカリ金属炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)水溶液、アルカリ土類金属炭酸水素塩(炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム)水溶液等が挙げられる。中でも、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液が好ましく、水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
アルカリの使用量は、pH6〜13に調節できる量であればよい。
pHの調整は、タウリンと水酸化カリウム水溶液;またはリン酸緩衝剤と水酸化カリウム水溶液;により行うことが好ましく、タウリンと水酸化カリウム水溶液で行うことが特に好ましい。
上記の加水分解は、有機溶媒と水の混合溶媒中で行われる。
有機溶媒としては、疎水性有機溶媒、親水性有機溶媒が挙げられる。
疎水性有機溶媒としては、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類等が挙げられる。親水性有機溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;アセトン等のケトン類;アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらの有機溶媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶媒としては、MTBEまたはトルエンが好ましく、MTBEが特に好ましい。
有機溶媒の使用量は、ビフェニルアラニンエステル化合物(1)1gに対して、通常1〜50mL、好ましくは1〜5mLである。有機溶媒の使用量がこの範囲内であると、円滑に反応を進行させることが可能になる。
なお、上記の緩衝剤やアルカリ水溶液中の水は溶媒も兼ねる。
上記の加水分解は、ビフェニルアラニンエステル化合物(1)、Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼ、溶媒、アルカリもしくはその水溶液および/または緩衝剤を混合することにより行われる。
これらの添加順序は特に限定されず、例えば、
(i)有機溶媒に溶解したビフェニルアラニンエステル化合物(1)をアルカリおよび/または緩衝剤に添加し、次いで上記プロテアーゼを添加する、
(ii)有機溶媒に溶解したビフェニルアラニンエステル化合物(1)にアルカリおよび/または緩衝剤を添加し、次いで上記プロテアーゼを添加する、
(iii)有機溶媒に溶解したビフェニルアラニンエステル化合物(1)に上記プロテアーゼ(必要により水も)を添加し、次いでアルカリおよび/または緩衝剤を添加(好ましくは滴下)する、
(iv)有機溶媒に溶解したビフェニルアラニンエステル化合物(1)に上記プロテアーゼおよび緩衝剤(必要により水も)を添加し、次いでアルカリを添加(好ましくは滴下)する
等の手法が挙げられる。
上記プロテアーゼは、必要により反応中に追加してもよい。また、反応中に反応液のpHが上記範囲より低下した場合には、上記のアルカリまたはそれらの水溶液を用いて反応液のpHを上記範囲に調整する。
加水分解の反応温度は、酵素の安定性および反応速度の観点から、好ましくは30〜60℃、より好ましくは35〜55℃、特に好ましくは40〜45℃である。
加水分解の反応時間は、通常3〜24時間、好ましくは4〜15時間である。
加水分解後の反応混合物を水層と有機層に分液することにより、加水分解により生成したL−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)と未反応のD−ビフェニルアラニンエステル化合物(3)を分離することができる。このとき、水層にL−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)が、有機層にD−ビフェニルアラニンエステル化合物(3)が含有される。
本発明においては、L−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)を含む上記の水層に無機塩と有機溶媒を加えて、L−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)を抽出する。これにより、当該水層からL−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)を塩の形態のままで回収することができる。
ここで、無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム等が挙げられ、経済性およびL−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)の溶解度の観点から、塩化カリウムまたは塩化ナトリウムが好ましい。無機塩の使用量は、抽出率等の観点から、L−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)を含む水溶液100gに対して、通常6g以上、好ましくは6〜9gである。無機塩は、上記水層に飽和量以上に加えてもよい。
有機溶媒としては、MTBE、トルエン、酢酸エチル等の溶媒が挙げられ、中でも、MTBEまたはトルエンが好ましく、特にMTBEが好ましい。
有機溶媒の使用量は、L−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)を含む水溶液100gに対して、通常20g〜100g、好ましくは25g〜50gである。
抽出は、必要に応じて、2回以上行ってもよい。
抽出は、通常10〜50℃で行う。
L−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)を含む抽出液は、アルカリ水溶液で洗浄してもよい。アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられ、通常5〜15%濃度(w/w)である。アルカリ水溶液の使用量は、L−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)1モルに対して、0.95〜1.01モルである。
アルカリ水溶液で洗浄する場合、収率向上のために、この水溶液に塩化カリウム、臭化カリウム、塩化ナトリウム等の無機塩を加えるのがよい。無機塩の使用量は、アルカリ水溶液中の無機塩濃度が5%(w/w)以上となる量でよい。
このように、本発明の方法によれば、L−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)を、一旦遊離酸に変換することなく、塩の形態のままで回収することができる。
回収されたL−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)は、エステル化、次いでラセミ化してビフェニルアラニンエステル化合物(1)に変換することにより、酵素水解の原料を回収することができる。
一方、D−ビフェニルアラニンエステル化合物(3)は、中性エンドペプチダーゼ阻害剤等の医薬を製造する中間体として有用である。例えば、特開平6−228187号公報に記載の方法を用いて、D−ビフェニルアラニンエステル化合物(3)から、当該公報に記載されたN−ホスホノメチル−ビフェニル置換ジペプチド誘導体を製造することができる。
以下、L−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)を、エステル化、次いでラセミ化して、ビフェニルアラニンエステル化合物(1)に変換する方法について説明する。
まず、L−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)をエステル化して、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)を得る。
エステル化は、通常溶媒中で行われるが、前記のL−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)を含む抽出液をそのまま使用するのが好ましい。必要に応じて、溶媒を加えてもよい。その溶媒としては、MTBEまたはトルエンが好ましく、中でも、MTBEがより好ましい。
エステル化は常法に従って行うことができ、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類と酸による方法;ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等の硫酸エステル((RO)SO)と塩基による方法;ROHとDCC等の縮合剤による方法;ヨウ化メチル、ブロモエタン、塩化ベンジル等のハライド(RX,X:ハロゲン原子)と塩基による方法;等が挙げられ、中でも、副生物および簡便性の観点から、硫酸エステルと塩基による方法が好ましい。
以下、塩基と硫酸エステルによる方法について説明する。
塩基としては、通常炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類、ジイソプロピルエチルアミン、2,6−ジメチルピリジン、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類が挙げられ、中でも、炭酸水素ナトリウムが好ましい。
塩基の使用量は、L−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)1モルに対して、通常0.3〜1.2モル、好ましくは0.8〜1.2モルである。
硫酸エステルとしては、目的とするL−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)に応じて選択されるが、本発明ではメチルエステルが好ましく、従ってジメチル硫酸が好適に使用される。
硫酸エステルの使用量は、L−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)1モルに対して、通常1.2〜2.5モル、好ましくは1.6〜2.0モルである。
エステル化の手順としては、反応性の観点から、塩基とL−ビフェニルアラニン化合物の塩(2’)を含む溶液に、硫酸エステルを滴下することが好ましい。
エステル化の温度は、通常30〜50℃である。反応時間は、試薬量、反応温度等にもよるが、通常1〜10時間である。反応の終了はHPLC分析により確認できる。
反応終了後、トリエチルアミン等のアミンを加えて、30〜50℃の温度で2〜5時間攪拌することにより、残存する硫酸エステルを分解させることができる。アミンの使用量は、使用した硫酸エステルに対して10モル%程度でよい。
次いで、反応液を分液し、有機層を脱水する。脱水は、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブス等の脱水剤を用いてもよいが、操作性の観点から、水と共沸する溶媒(例えば、トルエン等)で共沸脱水する方法が好ましい。
水と共沸する溶媒の使用量は、十分に脱水できる量であればよいが、溶液量に対して、通常50〜100重量%である。
次のラセミ化は、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)を単離せずに脱水後の溶液のまま行ってもよく、或いは一旦、結晶等の固体や油状物等として単離した後、ラセミ化を行ってもよい。
前者の場合には、溶液中の水分量が500ppm以下であることが好ましく、従って、脱水を十分に行うことが好ましい。
後者においては、例えば、Rがアルキル基であり、かつRが−COであるL−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)の場合には、脱水後の溶液を濃縮して、メタノールと水から結晶化させることができる。このように、一旦、結晶等の固体や油状物等として単離することにより、上記エステル化反応の残骸物(例えば、硫酸エステル由来の化合物)による塩基の消費を防止できるため、より少ない量の塩基でラセミ化することができ、また、これにより、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)の加水分解も防止することができる。
以下、メタノールと水から結晶化させる好適な具体例を説明する。
メタノールの使用量は、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)100gに対して、通常380〜520g、好ましくは450〜490gである。
メタノールに溶解した溶液に、約45〜55℃の温度で水を滴下する。加える水の量は、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)100gに対して、通常160〜220g、好ましくは190〜210gである。水を加えた後、種結晶を少量加え、同温度で攪拌する。結晶析出を確認した後、同温度で水を加えて十分結晶を析出する。このときの水の量は、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)100gに対して、通常0〜60g、好ましくは40〜60gである。攪拌後約5℃まで冷却し、結晶をろ過、約70%メタノール水溶液で洗浄する。減圧下乾燥することにより、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)の結晶を得ることができる。
次いで、エステル化により得られたL−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)をラセミ化して、ビフェニルアラニンエステル化合物(1)に変換する。
このラセミ化工程では、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)を前記エステル化工程で得られた脱水後の溶液のままで使用してもよく、一旦単離したL−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)を使用してもよい。後者の場合は、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)を溶媒に溶解する。ここで、溶媒としては、トルエンまたはMTBEが好ましく、中でも、MTBEがより好ましい。溶媒は、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)100gに対して、通常150〜230g、好ましくは180〜220g使用する。
ラセミ化は、塩基を用いて行われる。
塩基としては、トリエチルアミン等の有機塩基;炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムtert−ブチラート等のアルカリ金属アルコラート;水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物等;およびこれらの混合物が挙げられ、アルカリ金属アルコラート、アルカリ金属炭酸塩;およびこれらの混合物が好ましく、中でも、取り扱いの観点から、アルカリ金属アルコラートが好ましく、経済性の観点から、ナトリウムメチラートが特に好ましい。塩基は溶液の状態で滴下して加えてもよい。
塩基の使用量としては、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)を前記エステル化工程で得られた脱水後の溶液のままで使用する場合には、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)に対して、通常20〜120モル%、好ましくは50〜100モル%である。
また、一旦単離したL−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)を使用する場合は、アルカリ金属炭酸塩では、通常5〜50モル%、好ましくは10〜50モル%である。アルカリ金属アルコラートでは、通常1〜5モル%、好ましくは2〜4モル%である。
前記したように、一旦単離したL−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)を使用することにより、前記エステル化の残骸物による塩基の消費をなくすことができるので、より少ない量の塩基でラセミ化することができる。また、これにより、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)の加水分解も防止することができる。
ラセミ化促進の観点から、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類を加えることが好ましい。
アルコール類の使用量は、L−ビフェニルアラニンエステル化合物(2)に対して、通常10〜120重量%、好ましくは10〜30重量%である。
ラセミ化の温度は、通常30〜70℃、好ましくは30〜60℃、より好ましくは30〜40℃である。反応時間は、試薬の使用量、温度にもよるが、通常10分〜25時間、好ましくは10分〜6時間である。ラセミ化反応の終了はHPLCで確認することができる。
ラセミ化終了後、反応液に酢酸等の酸を加えて、エステルの分解を抑制することが好ましい。ここで、酸の使用量は、ラセミ化に使用した塩基に対して、通常1.1〜1.3倍モル量である。
ラセミ化終了後の後処理は、常法に従って行われる。
このようにして得られたビフェニルアラニンエステル化合物(1)の溶液は、酵素水解にそのまま供してもよいし、濃縮後、別の有機溶媒に溶解した後、酵素水解に供してもよい。
以下に製造例、実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
光学活性体の光学純度(エナンチオマー過剰率)とラセミ化は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により決定した。
HPLC分析条件:
カラム; キラルパック AD-RH(ダイセル化学工業株式会社)(4.5 mmφ x 15 cm、5mm)
移動相; A液; 0.1%リン酸水溶液
B液; アセトニトリル
溶離条件; B液40%(15分)−30分−80%(0分)グラジエント
カラム温度; 40℃
流速; 1.0 mL/分
検出器; UV(254 nm)
保持時間; L-N-Boc-ビフェニルアラニン; 10分
D-N-Boc-ビフェニルアラニン; 13分
L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル; 27分
D-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル; 30分
(Bocは、tert‐ブトキシカルボニル基の略である)
エステル化は以下の条件で分析した。
HPLC分析条件:
カラム;SUMIPAX A212 ODS (住化分析センター株式会社製) (φ: 6mm×L:15cm)
移動相;A液; 25mMリン酸水素ニカリウム水溶液(リン酸にてpHを6.8に調整)
B液; アセトニトリル
溶離条件;B液40%(5分)−20分−80%(5分)グラジエント
カラム温度;40℃
流速;1.0mL/分
検出器;UV(254nm)
保持時間;L-N-Boc-ビフェニルアラニン ; 7分
L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル; 24分
Figure 2008260755
製造例1(DL-ビフェニルアラニン (7)の製造)
4-ビフェニルアルデヒド (1) (100.0 g, 0.549 mol)、ヒダントイン(82.4 g, 0.823 mol)および酢酸アンモニウム(63.5 g, 0.824 mol)を酢酸(360 mL)中で5時間加熱還流した。水(360 mL)を加えた後、室温に冷却し、析出した結晶を濾取して、イソプロパノール-水(1:1, 400 mL)で洗浄することによりヒダントイン体 (5) (143.14 g, 収率98.7%)を得た。
ヒダントイン体 (5) (60.2 g)、THF(540 mL)および水(60 mL)の混合物に5%パラジウム−炭素(50%含水品、2.7 g)を加え、0.5 MPaの水素雰囲気下、60℃で3時間撹拌した。触媒を濾過により除いた後、濾液を濃縮して還元体 (6) (60.63 g、収率100%)を得た。
還元体 (6) (59.7 g, 0.224 mol)、エチレングリコール(300 mL)および水(10 mL)の混合物に水酸化ナトリウム(36.65 g)を加え、130-140℃で5時間撹拌した。室温に冷却後、水(130 mL)を加え、濃塩酸(85 g)と水(99 g)からなる塩酸水溶液を加えて、混合物のpHを6.9とした。析出した結晶を濾取し、水(300 mL)、ついでメタノール(300 mL)で洗浄した。結晶を乾燥して、DL-ビフェニルアラニン (7) (53.25 g, 収率98.4%)を得た。
製造例2(DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)の製造)
DL-ビフェニルアラニン (7) (20.0 g, 0.0829 mol)を10%水酸化ナトリウム(116 g, 0.29mol)水溶液に加えた。THF(50 mL)を加えた後、30℃でジ-tert-ブチルジカーボネート(23.5 g, 0.108 mol)のTHF(20 mL)溶液を1時間かけて滴下した。さらに、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.20 g, 0.62 mmol)を加えた後、30℃でジメチル硫酸(12.5 g, 0.099 mol)を滴下した。室温で16時間撹拌後、ジメチル硫酸(5.4 g, 0.0428 mol)を加え、35℃で4.5時間撹拌した。さらにジメチル硫酸(2.93 g, 0.0232 mol)を加え、35℃で2.5時間撹拌した。
MTBE(40 mL)および水(100 mL)を加えた後、分液して水層を除去し、DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)のMTBE溶液104.1 gを得た。
HPLCで定量した結果、DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)の含量は29.4 gであり、DL-ビフェニルアラニン (7)からの収率は99.8%であった。
こうして得られたDL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)のMTBE溶液のうち78.1 gを濃縮乾固した。残渣をイソプロパノール(9 mL)とヘプタン(80 mL)から再結晶して、DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a) (19.1 g)を無色結晶として得た(再結晶収率86.6%)。
1H-NMR (CDCl3); 1.42 (9H, s), 3.09 (1H, dd, J=5, 14 Hz), 3.16 (1H, dd, J=5, 14 Hz), 3.74 (3H, s), 4.55-4.70 (1H, m), 4.90-5.08 (1H, m), 7.20 (2H, d, J=8 Hz), 7.33 (1H, t, J=8 Hz), 7.43 (2H, t, J=8 Hz), 7.52 (2H, d, J=8 Hz), 7.57 (2H, d, J=8 Hz).
製造例3(DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)の酵素水解)
DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a) 25.0g(70.3mmol)をMTBE 41.14gに溶かした溶液に、水11.25gとタウリン1.76g(14.1mmol)およびアルカラーゼ2.4L FG(Bacillus licheniformis由来)(ノボザイム社)4.50gを添加し40℃で攪拌した。そこに5%水酸化カリウム水溶液47.28g(40.67mmol)を滴下しながら40℃で17時間攪拌した。この時の反応液のpHの範囲は6.30から8.16であった。
反応液を分析したところ、D-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (3a)の光学純度は99.4%ee、L-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウム塩 (2’a)の光学純度は99.9%eeであった。
反応液を5分間静置後、分液し、有機層A35.72gと水層A83.46gを得た。その水層にトルエン37.5gを加えて、40℃で30分間撹拌した。5分間静置後、分液し、有機層B42.80gと水層B76.80gを得た。有機層Aと有機層Bを合一し、水58gと炭酸ナトリウム1.49gを加えて、40℃で30分間撹拌した。5分間静置後、分液し、有機層C76.07gを得た。得られた有機層C76.07gを50℃に保温しながら濃縮を行い、63.2gを留去した。
その濃縮残12.87gにメタノール75mLを加えて、40℃に保温しながら、水18.75gを加えた。D-N-Boc-ビフェニンアラニンメチルエステル (3a)の種晶2mgを加えて、40℃で30分間撹拌した。そこに水12.5gを30分間かけて滴下し、40℃にて1時間保温した。次に20℃まで冷却し、濾過した。結晶をメタノール8.75gと水3.75gとを混合した溶液で洗浄した。
その結晶を減圧乾燥することにより、D-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (3a)の白色結晶10.94gを得た。D-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (3a)の収率はDL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)に対して43.8%であった。
実施例1
(i) L-N-Bocビフェニルアラニンカリウム塩 (2’a)の回収
製造例3と同様の方法で得られた、L-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウム塩 (2’a) 55.4g(0.146mol)を含んだ水溶液328.54g(水層B)にトルエン50gと食塩37.5gを加えて、40℃にて20分間撹拌した。5分間静置後、分液し、有機層156.23gを得た。
(ii) L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)の製造
この有機層に炭酸水素ナトリウム12.27g(0.146mol)を加えて、40℃で撹拌した。そこにジメチル硫酸33.15g(0.263mol)を2時間かけて滴下し、40℃で1時間撹拌した。反応液をHPLCで分析したところ、原料は検出限界以下であった。
その反応液にトリエチルアミン2.95g(0.029mol)を加えて40℃で3時間撹拌した。5分間静置後、分液し、有機層114.04gを得た。そこにトルエン86.72gを加えて、50℃に保温しながら濃縮を行い、トルエン57.92gを留去した。そこにトルエン7.39gを加えてトルエン溶液150.23gを得た。得られたトルエン溶液を定量すると、L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)の収率はL-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウム塩 (2’a)に対して96.2%であった。また、カールフィッシャー水分測定器にて測定を行うと、得られたトルエン溶液の水分含量は204ppmであった。
L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)
1H-NMR (CDCl3); 1.42 (9H, s), 3.09 (1H, dd, J=6, 12 Hz), 3.17 (1H, dd, J=6, 12 Hz), 3.73 (3H, s), 4.60-4.65 (1H, m), 5.01 (1H, d, J= 8Hz), 7.20 (2H, d, J=8 Hz), 7.33 (1H, t, J=8 Hz), 7.43 (2H, t, J=8 Hz), 7.52 (2H, d, J=8 Hz), 7.57 (2H, d, J=8 Hz).
(iii) L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)のラセミ化
L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a) 50g(0.141mol)を含んだトルエン溶液150.23gにメタノール50gを加えて40℃にて撹拌した。そこに28% ナトリウムメチラートメタノール溶液27.20g(0.141mol)を1時間かけて滴下し、40℃で1時間撹拌した。
反応溶液を分析すると、L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)の光学純度は0.02%ee、DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)のHPLC面積百分率値は89.3%であった。
その反応溶液に酢酸10.16g(0.169mol)を15分間かけて滴下し、40℃で30分間撹拌した。
次に水50gを加えて、40℃で5分間撹拌した。5分間静置後、分液し、有機層151.90gを得た。有機層に水45gと炭酸水素ナトリウム2.37g(0.028mol)を加えて、40℃で50分間撹拌した。5分間静置後、分液し、有機層147.67gを得た。得られた溶液をHPLCにて定量すると、DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)の収率はL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)に対して89.7%であった。
その溶液を54〜56℃に保温しながら濃縮を行い、62.67gを留去した。そこにMTBE75gを加えて、52℃に保温しながら濃縮を行い、74.23gを留去した。そこにMTBE75gを加えて、52℃に保温しながら濃縮を行い、84.71gを留去した。そこにMTBE51.46gを加え127.52gの溶液を得た。得られた溶液をHPLCにて定量すると、DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)の収率はL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)に対して89.5%であった。またMTBE溶液中のトルエンの含量は18.5%であった。
実施例2
(i) L-N-Bocビフェニルアラニンカリウム塩 (2’a)の回収
L-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウム塩 (2’a)50.0g(0.132mol)を含んだ水溶液227.19gにMTBE 70.0gと塩化カリウム 25.0gを加えて、40℃にて30分間撹拌した。5分間静置後、分液し、有機層204.97gを得た。その有機層に10% 水酸化カリウム水溶液 73.9g(0.132mol)と塩化カリウム 10gを加えて、40℃にて15分間撹拌した。5分間静置後、分液し、有機層190.18gを得た。
(ii) L-N-Boc-ビフェニルアラニンエステル (2a)の製造
得られた有機層95.1g(L-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウム塩 22.5g相当)に炭酸水素ナトリウム5.55g(0.066mol)を加えて、35℃で撹拌した。そこにジメチル硫酸15.0g(0.119mol)を30分間かけて滴下し、35℃で5時間撹拌した。反応液を分析したところ、未反応のL-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウム塩 (2’a)はHPLC分析において0.19%であった。
その反応液にトリエチルアミン1.33g(0.013mol)と水 35gを加えて35℃で3時間撹拌した。5分間静置後、分液し、水層(78.16g)を除いた。有機層に2.5wt%炭酸ナトリウム水溶液41.9g(0.010mol)を加えて、1時間20分撹拌した。5分間静置後、分液し、有機層60.74gを得た。有機層を定量した結果、L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)の収率はL-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウム塩 (2’a)に対して92.3%であった。
(iii) L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)の晶析
上記の方法で得られたL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)のMTBE溶液408.12gを減圧濃縮し、油状の濃縮残130.3gを得た。そこにメタノール617.4gを加え、40℃で撹拌し、メタノール溶液747.65g (L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a) 130.3g相当を含有)を得た。
得られたメタノール溶液373.82g (L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a) 65.1g相当を含有)を50℃に保温しながら、水130.3gを加えた。L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステルの種晶1mgを加えて、1時間撹拌した。そこに水32.6gを30分間かけて滴下し、50℃で1時間撹拌した。次に5℃まで冷却し、析出した結晶を濾過した。結晶はメタノール45.6gと水19.5gを混合した溶液で洗浄した。
その結晶を減圧乾燥することにより、白色のL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)の結晶60.77gを得た。L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)の収率はL-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウム塩 (2’a)に対して93.3%であった。
実施例3 (L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)のラセミ化)
L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a) 20g(56.3mmol)をMTBE40gに溶解し、30℃に保温した。そこにメタノール4.0gと28% ナトリウムメチラートメタノール溶液0.22g(1.1mmol)を混合した溶液を添加し、30℃にて2時間撹拌した。
反応溶液を分析すると、L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)の光学純度は0.44%ee、DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)のHPLC面積百分率値は98.9%であった。
その反応溶液に酢酸0.07g(1.2mmol)を添加し、30℃で5分間撹拌した。次に水20gを加えて、30℃で5分間撹拌した。5分間静置後、分液し、有機層(上層)61.56gを得た。そこに水18gと炭酸水素ナトリウム0.94g(11.3mmol)を加えて、30℃で30分間撹拌した。5分間静置後、分液し、有機層58.80gを得た。得られた有機層をHPLCにて定量すると、DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)の収率はL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)に対して100%であった。HPLC定量値は101.6%であった。
実施例4 (L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)のラセミ化)
L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a) 2.0g(5.63mmol, 81.25%ee)をMTBE 2.0gとメタノ―ル12.0gに溶解し、60℃に保温した。そこに炭酸カリウム0.15g(1.13mmol)を添加し、60℃にて8時間撹拌した。
反応液を分析すると、L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)の光学純度は2.25%ee、DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)のHPLC面積百分率値は81.3%であった。
実施例5 (L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)のラセミ化)
L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a) 2.0g(5.63mmol, 81.25%ee)をMTBE 2.0gとメタノール12.0gに溶解し、60℃に保温した。そこに炭酸ナトリウム0.12g(1.13mmol)を添加し、60℃にて25時間撹拌した。
反応液を分析すると、L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2a)の光学純度は6.02%ee、DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)のHPLC面積百分率値は90.0%であった。
本発明の方法によれば、ビフェニルアラニンエステル化合物の酵素水解後の反応液から、簡便な操作によりL−ビフェニルアラニン化合物の塩を塩の形態のままで回収できる。また、この回収されたL−ビフェニルアラニン化合物の塩をエステル化、次いでラセミ化することにより、ビフェニルアラニンエステル化合物に変換できるので、酵素水解の原料を回収できる。このように、酵素水解の目的物ではないL−ビフェニルアラニン化合物を有効利用することができるので、本発明の方法は経済的に有利な方法である。

Claims (15)

  1. 式(1):
    Figure 2008260755

    (式中、Rは、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、Rはアミノ基の保護基を示す。)
    で表されるビフェニルアラニンエステル化合物を、有機溶媒と水の混合溶媒中、pH6〜13に調整しながら、Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼを用いて加水分解し、生成した式(2’):
    Figure 2008260755

    (式中、Mは、アルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示し、Rは前記と同義である。)
    で表されるL−ビフェニルアラニン化合物の塩を含む水層と、式(3):
    Figure 2008260755

    (式中、各記号は前記と同義である。)
    で表される未反応のD−ビフェニルアラニンエステル化合物を含む有機層を分離し;
    当該水層に無機塩および有機溶媒を加えて、当該水層中の式(2’)で表されるL−ビフェニルアラニン化合物の塩を抽出する;
    ことを包含する、式(2’)で表されるL−ビフェニルアラニン化合物の塩の回収方法。
  2. 加水分解用の有機溶媒が、メチルtert−ブチルエーテルおよびトルエンから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の回収方法。
  3. 抽出用の有機溶媒が、メチルtert−ブチルエーテルおよびトルエンから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の回収方法。
  4. 式(1):
    Figure 2008260755

    (式中、Rは、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、Rはアミノ基の保護基を示す。)
    で表されるビフェニルアラニンエステル化合物を、有機溶媒と水の混合溶媒中、pH6〜13に調整しながら、Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼを用いて加水分解し、生成した式(2’):
    Figure 2008260755

    (式中、Mは、アルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示し、Rは前記と同義である。)
    で表されるL−ビフェニルアラニン化合物の塩を含む水層と、式(3):
    Figure 2008260755

    (式中、各記号は前記と同義である。)
    で表される未反応のD−ビフェニルアラニンエステル化合物を含む有機層を分離し;
    当該水層に無機塩および有機溶媒を加えて、当該水層中の式(2’)で表されるL−ビフェニルアラニン化合物の塩を抽出し;
    抽出した式(2’)で表されるL−ビフェニルアラニン化合物の塩をエステル化して、式(2):
    Figure 2008260755

    (式中、各記号は前記と同義である。)
    で表されるL−ビフェニルアラニンエステル化合物を得;
    式(2)で表されるL−ビフェニルアラニンエステル化合物を塩基でラセミ化して、式(1)で表されるビフェニルアラニンエステル化合物を得る;
    ことを包含する、式(1)で表されるビフェニルアラニンエステル化合物の回収方法。
  5. 加水分解用の有機溶媒が、メチルtert−ブチルエーテルおよびトルエンから選ばれる1種以上である、請求項4に記載の回収方法。
  6. 抽出用の有機溶媒が、メチルtert−ブチルエーテルおよびトルエンから選ばれる1種以上である、請求項4に記載の回収方法。
  7. エステル化が、塩基の存在下、対応する硫酸エステルまたはハライドと反応させることにより行われる、請求項4に記載の回収方法。
  8. がメチルである、請求項4に記載の回収方法。
  9. エステル化が、塩基の存在下、ジメチル硫酸と反応させることにより行われる、請求項8に記載の回収方法。
  10. ラセミ化で使用する塩基が、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属アルコラートから選ばれる、請求項4に記載の回収方法。
  11. ラセミ化で使用する塩基がアルカリ金属アルコラートである、請求項4に記載の回収方法。
  12. ラセミ化で使用する塩基がナトリウムメチラートである、請求項4に記載の回収方法。
  13. がアルキル基であり、かつRが−CO(式中、Rは、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基または9−フルオレニルメチル基を示す。)で表される基である、請求項4に記載の回収方法。
  14. 式(2)で表されるL−ビフェニルアラニンエステル化合物を固体として単離した後、ラセミ化を行う、請求項13に記載の回収方法。
  15. 式(1a):
    Figure 2008260755

    で表されるDL−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステルを、メチルtert−ブチルエーテルと水の混合溶媒中、タウリンと水酸化カリウム水溶液によりpH6〜13に調整しながら、Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼを用いて加水分解し、生成した式(2’a):
    Figure 2008260755

    で表されるL−N−Boc−ビフェニルアラニンカリウム塩を含む水層と、式(3a):
    Figure 2008260755

    で表される未反応のD−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステルを含む有機層を分離し;
    当該水層に無機塩およびメチルtert−ブチルエーテルを加えて、当該水層中の式(2’a)で表されるL−N−Boc−ビフェニルアラニンカリウム塩を抽出し;
    抽出した式(2’a)で表されるL−N−Boc−ビフェニルアラニンカリウム塩を塩基の存在下、ジメチル硫酸でエステル化して、式(2a):
    Figure 2008260755

    で表されるL−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステルを得;
    式(2a)で表されるL−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステルを固体として単離した後、ナトリウムメチラートでラセミ化して、式(1a)で表されるDL−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステルを得る;
    ことを包含する、式(1a)で表されるDL−N−Boc−ビフェニルアラニンメチルエステルの回収方法。
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