JP2008253253A - 無菌魚肉の製造方法及びその保存方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】長期間保存可能な生食用の無菌魚肉の製造方法、その無菌魚肉を経常的に繰り返して製造しても同じ製品を確実に得ることができる無菌魚肉の製造方法、得られた無菌魚肉の適切な保存方法の提供。
【解決手段】即殺するか又は氷〆めにした魚体から滅菌した用具を使用して、魚肉が鰭、鰓、外皮表面、内臓内容物のどれにも接触しないようにすると共に内臓を破裂させないで魚肉を取り出し、取り出した魚肉の表面全周を滅菌した後、滅菌した容器に無菌的に収納して密封するか、又は、取り出した魚肉を真空包装してその包装体を沸騰水に短時間浸漬する無菌魚肉の製造方法。得られた無菌魚肉を密封したまま24〜30℃で3〜7日間保存して魚肉を熟成させる無菌魚肉の保存方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、長期間の保存が可能な生食用の無菌魚肉を安定して製造する方法及びその製造方法によって得られた無菌魚肉を適切に保存する方法に関する。なお、本発明において「無菌」ないし「無菌状態」とは、一般細菌数が0(ゼロ)の状態のことをいう。また、「無菌的に」とは「無菌状態で」と同じ意味である。
一般に、健康な生きた魚の筋肉や体液は無菌状態であるが、魚体表面の粘出物、表皮、鰓、消化管内には環境水由来の多くの細菌が生息していること、これらの細菌は魚が生きている間は体内に侵入しないこと、魚の死後まもなく筋肉や内臓の酵素の働きによって自己消化が進行すると消化管や各組織が分解を始めて脆弱化し、またタンパク質なども低分子化されて細菌の増殖に好都合となるため、細菌が血管や皮膚や腹腔を突破して魚体内へ侵入を始め、ついには活発に増殖することが知られている。
したがって、魚体が細菌に汚染される前に魚肉を取り出すことができれば無菌状態の魚肉(以下「無菌魚肉」と記す。)を得ることができる筈である。しかし、実際には、生食用の商品として長期間の保存・流通が可能な無菌魚肉を安定して製造することは容易ではない。本発明者らの研究によれば、魚肉を無菌的に取り出す方法によって、長期間の保存に耐えうる無菌魚肉が得られる確率は30〜70%程度である。以下の参考試験例によってその困難性を例示する。
《参考試験例》
<魚体から無菌魚肉を取り出せる確率>
即殺したトラフグの魚体を次亜塩素酸とエタノールで表面を殺菌した後、実施例1と同じ無菌的な方法で魚肉を取り出し、取り出した魚肉を1gずつ10mLの標準液体培地3本及び人工海水に0.5%濃度でペプトン類を溶かしたPPES−II液体培地3本に接種した。また希釈液を作るための試料原液として50mL液体培地に5gの魚肉を入れ、これを試験管ミキサーで攪拌した後、攪拌液の1mL及び0.1mLをそれぞれの培地10mLに3本ずつ接種した。標準液体培地の培養液は35℃で2日間、PPES−II液体培地の培養液は20℃で10日培間養した。培養後液体培地から一白金耳を取り、それぞれの寒天平板培地に接種し、35℃及び20℃で培養した。平板培地上にコロニーが観察された場合に魚肉が汚染されていると判定した。また、汚染されていた場合の細菌数をMPN法により計算した。その結果、11回無菌的に取り出しを行なって3回失敗した。すなわち、11回中の3回は汚染が生じたことになる。また、汚染が起きたときの細菌数は魚肉1g当たり6〜17細胞であった。
このような状況であるため、従来、魚体から無菌魚肉を取り出して長期間保存可能な生食用の商品として流通させた事例は未だ報告されておらず、また、魚体から無菌魚肉を安定して製造する方法は開発されていなかった。
すなわち、従来の方法では、鮮度のよい魚体から魚肉を迅速に取り出しても、魚肉を取り出す過程で細菌の汚染を防ぐ方法が解明されておらず、何らの防御策も採っていないため、長く保存した魚肉を生食すると腸炎ビブリオなどの食中毒を発生させやすい。そのため、生の魚肉の保存性を高めるために、取り出した魚肉を非加熱状態で殺菌する方法が採られている。その殺菌方法としては、魚肉を塩素水、次亜塩素酸水、食塩水や希塩酸などの塩素系殺菌剤に浸漬する方法や魚肉に紫外線、オゾンなどを照射する方法が用いられている。しかし、これら従来の方法では、魚肉の一般細菌数を減らす「殺菌」は可能であるが、一般細菌数をゼロにする「滅菌」はできなかった。そのため、従来から生鮮魚肉の貯蔵期間は、冷蔵庫(−1〜5℃程度)保存でも2週間程度が限度とされている。また、従来の方法では、魚肉を熟成して得られる、美味しい「熟れごろ」の期間がきわめて短い。
一般に、魚肉の熟成・腐敗の過程では、魚肉の酵素の働きによって魚肉内のATPがイノシン酸にまで変化し、さらに、魚肉の酵素や細菌の働きによってイノシン酸がイノシンやヒポキサンチンに変化する。イノシン酸に至るまでの過程が熟成で、ヒポキサンチンが生成する過程で魚肉は劣化する。
無菌魚肉の製造方法に関して、特許文献を精査したところ、特許文献1には「生食用の無菌生鮮魚介類およびそれを組み合わせた冷凍米飯食品」と題して、きわめて新鮮な、死後まもない魚介類の消化管内を次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系殺菌剤を用いて除菌・殺菌処理して生食用の無菌生鮮魚介類を調整する方法について開示していることを見いだした。この文献の実施例3では、殺菌直後、さらにラウンドの状態で24時間保存したものから調整したフィレーが無菌であることを報告しているが、同時に同じ操作を行なっている他の魚肉では細菌が増殖している。そのため、この方法は、無菌魚肉を安定して繰り返し製造することができる方法ではない。また、この文献は、フィレーの保存方法に言及していない。すなわち、この文献に記載の発明は、保存に耐えうるような無菌魚肉の製造方法を示したものではない。
また、非特許文献1には、タラから無菌的に魚肉を取り出し、シャーレに移した後、核酸関連化合物を抽出している。この研究では無菌魚肉を取り出しているが「細菌が生えたときは捨てた」との記述が見られるので、無菌魚肉を安定して取り出しているわけではない。また、実験用の小片を単発的に取り出しているのみで、食品用のまとまった魚肉を無菌的に取り出したわけではない。さらに、この文献では保存方法について何ら言及していないし、保存に耐えうるような無菌魚肉の製造方法を開示したものでもない。
特開2000−217504号公報 Surette,M.E., Gill,T.A.,and LeBlanc P.J. Biochemical Basis of Postmortem Nucleotide Catabolism in Cod (Gadus morham) and Its RelationshiptoSoilage.J.Agric.Food.Chem., 1998.36:19-12
上記の状況に鑑み、本発明は、長期間保存可能な生食用の無菌魚肉の製造方法を提供することを第1の課題とする。具体的には、4℃で70日間以上の保存が可能であり、保存後も生食用に適した無菌魚肉の製造方法を提供するものである。また、本発明は、長期間保存可能な生食用の無菌魚肉を安定して製造できる方法を提供することを第2の課題とする。なお、本発明において「安定して製造できる」とは、経常的に繰り返して製造しても同じ製品を確実に得ることができるという意味である。本発明は、また、その製造方法によって得られた無菌魚肉の適切な保存・熟成方法を提供することを第3の課題とする。
本発明のうち特許請求の範囲・請求項1に記載する発明は、上記第1と第2の課題を解決するための発明であって、即殺するか又は氷〆めにした魚体から滅菌した用具を使用して、魚肉が鰭、鰓、外皮表面、内臓内容物のどれにも接触しないようにすると共に内臓を破裂させないで魚肉を取り出し、取り出した魚肉の表面全周を滅菌した後、滅菌した容器に無菌的に収納して密封することを特徴とする無菌魚肉の製造方法である。
また、同じく請求項2に記載する発明は、上記第1と第2の課題を解決するための発明であって、請求項1に記載の製造方法において、取り出した魚肉の表面全周を滅菌する手段として以下の(1)〜(5)のいずれかの方法又は以下の(1)〜(5)のいずれかの方法を適宜組み合わせた方法を採る無菌魚肉の製造方法である。
(1)魚肉を沸騰水に短時間浸漬する方法
(2)魚肉を火炎で短時間炙る方法
(3)魚肉をアルコール液に短時間浸漬した後、魚肉に付着したアルコールを燃焼し 尽くす方法
(4)魚肉を有機酸液に短時間浸漬する方法
(5)魚肉を次亜塩素酸液に短時間浸漬する方法
さらに、同じく請求項3に記載する発明は、上記第1と第2の課題を解決するための発明であって、即殺するか又は氷〆めにした魚体から滅菌した用具を使用して、魚肉が鰭、鰓、外皮表面、内臓内容物のどれにも接触しないようにすると共に内臓を破裂させないで魚肉を取り出し、取り出した魚肉を真空包装して、その包装体を沸騰水に短時間浸漬することを特徴とする無菌魚肉の製造方法である。
また、同じく請求項4に記載する発明は、上記第3の課題を解決するための発明であって、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法で得られた無菌魚肉を密封したまま24〜30℃で3〜7日間保存して魚肉を熟成させることを特徴とする無菌魚肉の保存方法である。
本発明に係る無菌魚肉の製造方法は、上記の構成であるから、後記する各試験例にも示すとおり、長期間保存可能な無菌魚肉を容易に作ることができる。すなわち、本発明によって、長期間保存可能な無菌魚肉の製造が可能となった。本発明によって得られる無菌魚肉は、25℃で7日間以上又は4℃で70日間以上保存しても生食が可能であり、腸炎ビブリオ発症のおそれもなく、きわめて安全な食品である。その上、本発明によって得られる無菌魚肉は、じっくりと熟成させることが可能である。
本発明に係る無菌魚肉の製造方法によれば、魚体から無菌魚肉を容易かつ安定して製造することができる。すなわち、本発明によって無菌魚肉を量産することが可能となった。
本発明に係る無菌魚肉を無菌的に保存すると、魚肉中のイノシンやヒポキサンチンの生成を遅くすることができる。また、無菌化されているので細菌による魚肉の変化が進まない。そのため、本発明に係る無菌魚肉は、長期間保存してヒポキサンチンの値が高くなっても、単に旨みが強い魚肉と感じられるだけで、生食することができる。すなわち、本発明に係る無菌魚肉の保存方法によれば、無菌魚肉を25℃前後で3日間程度保存すると遊離アミノ酸中の旨み成分の濃度が高くなって、通常の魚肉よりも旨みが強くなる。そのため、本発明に係る無菌魚肉の保存方法によって、いわゆる「熟れごろ」の美味しい生食用の魚肉を安定的に市場に供給できる。
すなわち、本発明の方法によって製造される無菌魚肉は、冷蔵庫で長期保存や常温保存が可能であり、保存後の魚肉は旨みの強い魚肉加工食品として生食が可能である。また、本発明の方法によって製造される無菌魚肉は、添加物が使用されておらず、また、食中毒のおそれがないので、加工食品の原料としても好適に使用できる。
本発明の方法によって得られた無菌魚肉は、旨みが強くて安全な魚肉加工食品として、従来の刺身同様、薄切りにしたものを醤油などの調味料に浸してそのまま生食が可能である。また、米飯を盛った丼に敷きつめ、海鮮丼を作ったり、サラダや酢の物の材料として用いてもよい。さらには、ステーキや天ぷらや煮付けにしたり、吸い物の具材として用いるなど、様々な用途に利用できる。
本発明では、原料として鮮度のよい魚体を使用するのは当然であるが、即殺した魚(刃物などを使って瞬時に殺した魚)か又は氷〆めにした魚を使用する必要がある。そのためには、製造者の目の前で殺すことが望ましいが、殺した直後の魚であれば、別の場所で捌いた魚を使用してもよい。また、即殺した直後に魚体を傷めないで急速凍結した魚を用いても差し支えない。なお、鮮度がよい魚体とは、即殺するか又は氷〆めにしてから数時間以内のもので刺身にして食することができる程度に新鮮な魚、という意味である。
本発明で使用する用具(包丁、まな板、金串、鉗子、ボール、トレー、タオル・布巾、手袋、タワシ、金タワシなど)であって魚体に直接触れるものは、全て滅菌したものを使用する必要がある。用具を滅菌する方法は、常法のとおりでよいが、例えば、包丁やまな板などは清浄な状態のものをアルコールに浸漬して滅菌するのが好ましく、タオルや手袋などはオートクレーブで滅菌したものを使用するのが好ましい。なお、手袋の着用法は、まず、滅菌したビニールの手袋を嵌めて、その上に滅菌した布の手袋(いわゆる軍手)を嵌めるなど二重にすることが好ましい。布の手袋だけでは魚体から浸出した液が手や指先に接触し、その結果、魚肉を汚染させるおそれがあるからである。
魚体から無菌魚肉を取り出す方法に関し、最初に、原料魚としてフグやカワハギなどの外皮を剥離しやすい魚を用いる場合について説明する。この方法は、魚体から外皮を剥離した後か又は外皮を剥離しながら魚肉を無菌的に取り出す方法である。まず、滅菌した包丁などを使用して魚を即殺するか又は魚を氷〆めにする。或いは即殺した魚体又は氷〆めにした魚体を入手する。なお、用意した魚体は解体処理を始める前にその表面を殺菌しておくことが好ましい。魚体の表面を殺菌する方法は、常法のとおりでよいが、例えば、魚体を短時間塩素系殺菌剤の液(例えば次亜塩素酸液)に浸漬する方法(魚を浸漬して泳がせてもよい。以下同じ)、アルコール液に浸漬する方法、魚体の表面に塩素系殺菌剤を吹きつける方法、アルコールを吹きつける方法などがあり、これらの方法を単独で行なうか又は適宜組み合わせて行なえばよい。なお、塩素系殺菌剤液やアルコール液に浸漬したり塩素系殺菌剤やアルコールを吹きつける時間は1〜2秒程度でよい。このように、魚体の表面を殺菌する方法を採ると、後で説明する「魚肉表面全周滅菌」の工程において、滅菌条件を緩和することができる。
次いで、滅菌した包丁などを使用して魚体から鰭、鰓、内臓、外皮を除去すると共に魚肉を取り出す。この作業のとき、鰭、鰓、外皮表面、内臓内容物のどれにも魚肉が触れないように、また、内臓を破裂させないように注意する必要がある。
外皮を剥離しやすい魚の場合、魚体から魚肉を取り出す具体的な方法は、例えば、滅菌した包丁で魚体の首の部分から脊椎の下まで縦に切り込みを入れた後、滅菌した手袋を嵌めた右手で頭を持ち、同じく左手で魚体の切断面を押し出すように折り曲げ、はみ出た魚肉を持って、内臓を破裂させないように、かつ魚肉を外皮表面に触れさせないように注意しながら、骨付きの魚肉を一気に抜き取る方法を採ることができる。この方法では、魚肉を抜き取った後には内臓と外皮と腹側の皮で繋がった頭と胴体が残る。また、このとき、魚肉(すなわち筋肉)と外皮の内側から出血するが、取り出した骨付きの魚肉に付着した血はすぐに滅菌水で洗浄した上、滅菌したタオルで拭うことが好ましい。洗浄後の骨付きの魚肉は滅菌したタオルの上に載せ、滅菌した包丁で直ちに三枚に下ろす。フィレー状に下ろした魚肉(以下単に「フィレー」と記すことがある。)は、滅菌水(例えばオートクレーブで滅菌した水)で洗浄し、付着した水分は滅菌したタオルで拭っておくことが好ましい。
続いて、原料魚としてブリやカツオなどの外皮を剥離し難い魚を用いて魚体から魚肉を取り出す方法について説明する。この方法は、魚体から外皮を剥離しないで魚肉を無菌的に取り出す方法である。まず、外皮を剥離しやすい魚の場合と同様、即殺した魚か又は氷〆めにした魚を用意し、必要に応じて表面の鱗を滅菌した用具(例えば金タワシ)を用いて除去する。次いで、魚体表面の滑りを塩で揉むか又は金タワシで擦るなどの常法によって除去する。滑りを取り除いた魚体はその表面全周を殺菌する。表面を殺菌する方法は、外皮を剥離しやすい魚の場合と同じ方法でよい。
外皮を剥離し難い魚の場合、魚体から魚肉を取り出す具体的な方法は、例えば、滅菌した包丁などを用いて鰭や鰓を除去した後、魚体に切り込みを入れて、外皮の表面や内臓の内容物に魚肉を触れさせないように、また、内臓を破裂させないように注意しながら外皮付きのままで魚肉を取り出す。別の方法として、即殺した魚を断頭した後、鰭や鰓と共に内臓を破裂させないように注意しながら除去し、その後に魚肉を取り出すことも可能である。このようにして骨付きで外皮付きの魚肉が得られる。この骨付きの魚肉の表面はアルコールなどを用いて再度殺菌し、滅菌したタオルの上に載せ、滅菌した包丁で直ちに三枚に下ろす。得られたフィレー状の魚肉は滅菌水で洗浄し、付着した水分は滅菌したタオルで拭っておくことが好ましい。
魚体から魚肉を取り出す方法として、上記2つの方法(外皮を剥離しやすい魚の例と外皮を剥離し難い魚の例)を説明したが、魚体の大小や種類や形状などによっては、必ずしも上記と同じ方法を採る必要はない。要は、本発明において魚体から魚肉を取り出す方法は、(1)滅菌した用具を使用すると共に、(2)魚体から魚肉を取り出す際は勿論、取り出した後においても、魚肉を鰭、鰓、外皮表面、内臓内容物のどれにも接触させないこと、及び(3)魚肉を取り出す際に内臓を破裂させないこと、の3点を注意すればよい。(なお、外皮付きの魚肉を取り出す場合は、取り出した魚肉を他の魚肉の外皮表面に接触させないようにすればよい。)また、外皮付きの無菌魚肉を作る場合は、魚体を解体する前にその外皮表面を殺菌しておくことが好ましいのは当然であるが、外皮のない無菌魚肉を作る場合でも、魚体表面を殺菌しておくと取り出した魚肉の表面全周を滅菌する工程において滅菌条件(滅菌時間や滅菌水の濃度など)を緩和できる。そのため、いずれにしても、魚体を解体する前にその外皮表面を殺菌しておくことが好ましい。
本発明では、続いて、魚体から取り出した魚肉の表面全周を滅菌する。滅菌の方法としては、魚肉を沸騰水(熱湯)に20〜30秒程度の短時間浸漬する方法、魚肉を火炎で75〜90秒程度の短時間炙る方法、魚肉をアルコール液に1〜5分程度の短時間浸漬した後魚肉に付着したアルコールを燃焼し尽くす方法、魚肉を有機酸(濃度5%程度の酢酸、乳酸、クエン酸など)の液に3〜60秒程度の短時間浸漬する方法、魚肉を次亜塩素酸液に4〜6分程度の短時間浸漬する方法などのいずれかを採ればよい。また、これらの方法を適宜組み合わせて用いてもよい。これらのどの方法によっても、魚肉内部に変化を起こさせずに、その表面だけを滅菌することができる。なお、魚肉は魚体から無菌的な方法で取り出してあるので、得られた魚肉は無菌であるか又はほぼ無菌の状態であるから、上記のどれかの方法を採ればよく、滅菌されているか否かなどを確認する必要はない。また、上記の方法によらず、別の方法で滅菌してもよいことは勿論である。また、魚体から魚肉を取り出す前に魚体の表面をアルコールや次亜塩素酸で殺菌しておくと、上記の滅菌時間を短縮できるなど滅菌条件を緩和できる。このように、魚肉の表面全周だけを滅菌することによって、長期保存可能な生食用の無菌魚肉の安定した製造が可能となる。
無菌化した魚肉にもその後に外環境から細菌が転移するので、得られた無菌魚肉は、あらかじめ滅菌しておいた容器に無菌的に収容し、密封することによって細菌の魚肉への転移を防ぎ、長期間の保存・熟成を可能とする。容器を滅菌する方法は、ガス滅菌やガンマ線照射、オートクレーブ滅菌や乾熱滅菌などの方法を採ればよい。また、魚肉を容器に無菌的に収納する方法は、例えば、クリーンベンチ内において無菌の空気やオゾンを吹きつけながら収容するとよい。なお、市販のアセプティック装置を用いて無菌充填しても差し支えない。また、密封する方法としては、ヒートシーラーなどの圧着機を用いて容器の口部を加熱・封印(シール)すればよい。なお、無菌処理容器に収納・密封した包装体の保存は、室温(10〜25℃)でも低温下(−2〜5℃)でも、また、これらの中間の温度でも差し支えない。しかし、密封したまま24〜30℃で3〜7日間保存すると旨みの強い魚肉となるので、これらの条件で保存することが好ましい。
上記説明のとおり、「表面全周滅菌法」によって無菌魚肉を安定して製造できることが確認されたが、この方法では無菌魚肉を容器に封入するときに製造者に高度の集中力が要求される。そこで、より容易かつ安定して確実に無菌魚肉を製造するために「無菌魚肉を真空包装した後で滅菌する方法(真空包装後加熱法)」を開発した。
すなわち、「真空包装後加熱法」では、魚体から上記いずれかの方法で無菌的に取り出した魚肉を、その表面を滅菌することなく、そのまま真空包装して、その包装体を沸騰水(熱湯)に30〜60秒程度の短時間浸漬する方法を採る。真空包装に用いる包材は、プラスチック製の清潔なものであれば一般に使用されているものでよく、真空包装機も一般に使用されているもので差し支えない。この「真空包装後加熱法法」は、上記の「表面全周滅菌法」に比べて簡易であり、誰が実施しても失敗のおそれがほとんどない。「真空包装後加熱法」で得られた無菌魚肉の包装体の保存条件は「表面全周滅菌法」の場合と同じである。
本発明によって作った無菌魚肉は、「表面全周滅菌法」によるものも「真空包装後加熱法」によるものも、密封したまま24〜30℃で3〜7日間保存すると、適度に熟成されて、旨みの強い無菌魚肉を得ることができる。なお、上記の範囲外の保存条件の場合、生食は可能であるが、熟成魚肉としての風味がやや不足することがあるので注意を要する。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例1〜実施例7はフグを原料とする無菌魚肉の製造例であり、実施例8と実施例9はブリを原料とする無菌魚肉の製造例、実施例10は凍結カツオを原料とする無菌魚肉の製造例である。また、実施例1、2、3及び9は表面全周滅菌法による無菌魚肉の製造例であり、実施例4、6、7及び8は真空包装後加熱法による無菌魚肉の製造例である。なお、実施例2と実施例5は「魚肉の表面全周を滅菌する方法の効果の確認試験」を、実施例6は「無菌魚肉の高温熟成の可能性の確認試験」を、実施例7は「無菌魚肉の長期保存可能性の確認試験」をそれぞれ兼ねている。
<トラフグを原料とする無菌魚肉の製造方法1>
(1)生きたトラフグをオートクレーブで滅菌したタオルの上に載せ、エタノールで滅菌した包丁で尾鰭と背鰭と胸鰭を切り離し、背中を上にして首の部分から脊椎の下まで縦に切り込みを入れて延髄を切断した後、滅菌した手袋を嵌めた右手で頭部を掴み、同左手で胴部を持って魚体の切断面を押し出すように折り曲げた。そうすると、切断面に魚肉が露呈するので、これを新たな滅菌した手袋を嵌めた右手で掴み、同左手で尾部を握って尾の方向に剥ぐように引っ張った。すると、外皮が筒状のまま頭部と内臓を伴った状態で捲くれるようにして剥がれ、内面を表にして捲くれた外皮と尾部で繋がった骨付きのフグ肉が露出した。そこで、フグ肉と外皮を反対方向に引っ張るとフグ肉が切り離された。こうして、内臓を破裂させずにかつ外皮表面がフグ肉に触れないようにして骨付きのフグ肉を取り出した。フグ肉を取り出した後には、内臓と外皮と腹側の皮で繋がった頭部と胴部が残った。
(2)骨付きのフグ肉に付着した血は直ちに滅菌水で洗浄し、滅菌したタオルで拭った。(3)洗浄後の骨付きのフグ肉を滅菌したタオルの上に載せ、滅菌した包丁で直ちに三枚に下ろし、フグのフィレーを作った。
(4)このフィレーをエタノール液に浸漬し、その容器ごとクリーンベンチへ運んだ。
(5)エタノール液に浸漬してから5分経過した後、滅菌した鉗子でフィレーを掴み、クリーンベンチ内で無菌の空気をフィレーの表面に吹きつけながら、表面に付着したエタノールに着火してアルコール分を燃焼し尽くした。
(6)次いで、クリーンベンチ内で無菌の空気を吹きつけながら、フィレーを市販の滅菌したビニール袋に入れ、口部をヒートシーラーでシールした。
(7)このフィレーの包装体をシールしたまま25℃の恒温槽に入れて7日間保存した後開封し、それぞれのフィレーの一般生細菌数、大腸菌群数、腸炎ビブリオ数を食品衛生法に定める公定法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。なお、表1には、比較例1〜4として、実施例1の方法と一部相違する方法で処理したフィレーの検査結果についても記載してある。
(8)表1から、25℃で7日間保存する場合、保存後も無菌状態のフグ肉を得るには、実施例1の方法(滅菌した包丁で魚体の脊椎骨を切断し、滅菌した包丁で内臓と外皮を除去すると共に魚体をエタノール液に浸漬し、その後、付着したエタノールを燃焼し尽くす方法)が有効であることが確認された。また、無菌的に取り出した魚肉であっても、その魚肉の表面全周を滅菌処理しないときは細菌汚染のリスクが高くなることが確認された。
表1に示す比較例4では、生きたフグを次亜塩素酸液の中で泳がせて殺菌する方法を採ったにもかかわらず、得られたフグ肉をエタノール液に浸漬して表面全周を滅菌する方法を採らなかったため、保存後のフグ肉から細菌が検出されている。また、同じく比較例1は、生きたフグを次亜塩素酸液の中で泳がせて殺菌する方法を採らず、かつ、滅菌していない包丁を使用して脊髄骨を切断したもの、同比較例2は、生きたフグを次亜塩素酸液の中で泳がせて殺菌する方法を採らず、かつ、滅菌していない包丁で外皮と内臓を除去したもの、同比較例3は、生きたフグを次亜塩素酸液の中で泳がせて殺菌する方法を採らず、かつ、取り出したフグ肉をエタノール液に浸漬する方法を省略したものである。比較例1〜4によって製造したフグ肉は、25℃で7日間保存した後、いずれも細菌が検出されている。なお、表1に示すように、大腸菌や腸炎ビブリオよりも一般細菌の方が無菌状態をより感度高く示すので、以後の実施例では一般細菌の状態のみをまとめることにする。
Figure 2008253253
<魚肉の表面全周を滅菌する方法の効果の確認1>
トラフグを原料とし、実施例1と同じ無菌的な方法で魚体から魚肉を取り出し、実施例1と同じ無菌的な方法で三枚に下ろした5片のフィレーを以下の(1)〜(5)の方法によってそれぞれの表面全周を滅菌した後、クリーンベンチ内で無菌の空気を吹きつけながら市販の滅菌したビニール袋に実施例1と同じ方法で無菌的に収納し、口部をヒートシーラーでシールした。この5通りのフグ肉の包装体をシールしたまま25℃の恒温槽に入れて7日間保存した後、開封してそれぞれの包装体からフグ肉を2gずつ採取し、その一般細菌数とビニール袋内のドリップの一般細菌数を食品衛生法に定める公定法に基づいて調べると共に、フグ肉とドリップのpHを電極法で調べた。その結果を表2に示す。
(1)フィレーをガスバーナーの火炎中に入れ、回転させながら75秒間炙った後、滅菌したタオルに挟んで余熱を除去した。
(2)フィレーを沸騰水に20秒間浸漬した後、取り出して滅菌したタオルに挟んで余熱を除去した。
(3)フィレーを濃度5%の酢酸液に60秒間浸漬した後、取り出して滅菌したタオルで水分を拭った。
(4)フィレーをエタノール液に5分間浸漬した後、取り出して着火し、表面に付着したエタノールを燃焼し尽くした。
(5)フィレーを次亜塩素酸濃度20ppmの滅菌水に4分間浸漬した後、取り出して滅菌したタオルで水分を拭った。
表2に示すように、(1)〜(5)のどの方法で滅菌処理したフィレーでも、25℃で7日間保存した後、フィレーやドリップから細菌は検出されなかった。また、保存期間中のpHの低下も(5)の方法以外では見られていない。ドリップ量もフィレー重量の10%以下に納まっており、劣化も激しくないことが判明した。このように、(1)〜(5)の全ての方法で好結果が得られたことから、これら以外の表面滅菌方法を採っても無菌魚肉を製造できるものと考えられる。
すなわち、表2から、(イ)魚体から無菌的に取り出した魚肉を、その表面全周を滅菌することによって無菌魚肉が安定して得られること、(ロ)魚肉の表面全周を滅菌する手段は(1)〜(5)を含めて多様な方法があるが、どの方法によっても滅菌効果を示すことが確認された。また、表には示さないが、(ハ)これら滅菌方法を組み合わせて用いても効果があること、(ニ)魚肉の一面を滅菌しただけでは、無菌魚肉が得られることもあるが、細菌汚染のリスクがあることが判明した。
Figure 2008253253
<トラフグを原料とする無菌魚肉の製造方法2>
(1)生きたトラフグを次亜塩素酸濃度100ppmの海水中で15分間泳がせた後、海水から取り出してその表面をエタノールで拭って殺菌し、滅菌したタオルで表面の滑りを拭き取った。この殺菌済みの生きたトラフグを滅菌したタオルの上に載せ、実施例1と同じ無菌的な方法で捌いてフグのフィレーを作った。得られたフグのフィレーを、市販の滅菌済みビニール袋に実施例1と同じ無菌的な方法で収納して、口部をヒートシーラーでシールして実施例1と同じように保存した後、実施例1と同じ内容の細菌検査を行なった。細菌検査の結果は、表3に比較例5として表示してある。なお、この試作は2回ずつ行なったので、表3には、1回目の試作品をA、2回目の試作品をBで示してある(表3の実施例3と比較例6についても同様である)。
(2)表3に示すように、比較例5の方法では、生きたフグの表面全周を次亜塩素酸とエタノールで殺菌すると共に滅菌した包丁で脊椎骨を切断し、かつ、滅菌した包丁を使用して外皮と内臓を一気に除去したので、一応、無菌フグ肉を作ることができた筈であるが、取り出した魚肉の表面全周を滅菌しなかった。そのため、試作品Bでは無菌化に成功したものの、試作品Aではドリップに細菌が検出され、無菌のフグ肉を安定して製造できなかった。そこで、取り出した魚肉の表面全周を次亜塩素酸で滅菌する方法を導入してみた。
(3)すなわち、生きたトラフグを次亜塩素酸液中で泳がせることなく、また、その表面をエタノールなどで拭うこともせず、即殺した魚体から、実施例1と同じ無菌的な方法で骨付きのフグ肉を取り出し、実施例1と同じ方法でフィレーを作った。得られたフグのフィレーを次亜塩素酸濃度20ppmの滅菌水に4分間浸漬した後、その表面に付着した水分を滅菌したタオルで拭った。このフィレーを滅菌した鉗子で掴み、クリーンベンチ内で市販の滅菌済みのビニール袋に実施例1と同じ無菌的な方法で収納して、口部をヒートシーラーでシールした。この包装体を実施例1と同じように保存した後、実施例1と同じ内容の細菌検査を行なった。その結果は表3に実施例3として示してある。なお、表3において、比較例6は、フィレーを次亜塩素酸液に浸漬しなかっただけでなく、生きている間にも表面を殺菌しなかった場合の結果である。すなわち、比較例6では、試作品Bのフグ肉は無菌であるが、試作品Aのフグ肉は無菌状態ではなかった。このように、表3から、無菌的に取り出したフグ肉を25℃で7日間保存する場合、保存した後も無菌状態のフグ肉を安定して得るには、魚体の表面全周を殺菌するよりも、魚体から取り出した魚肉の表面全周を次亜塩素酸などで滅菌する方法が有効であることが確認された。
Figure 2008253253
<魚肉を真空包装した後で滅菌する方法>
(1)即殺したトラフグの魚体から実施例1と同じ方法で無菌的に取り出したフグのフィレー(表面全周滅菌処理をしてないもの)の複数個をそれぞれ市販のポリエチレン袋に入れて真空包装した後、この包装体を沸騰水中に60秒間浸漬した。
(2)この包装体を25℃で2日間保存した後、開封して魚肉25gを採取し、食品衛生法に定める標準液体培地に接種して35℃で2日間保存した。保存後、1白金耳の液を無菌的に取って標準寒天培地に塗布し、35℃で2日間培養した。その結果を表4に示す。なお、表4の数値は8個のフィレーについての平均値である。表4に示すとおり、いずれの魚肉からも細菌は全く検出されなかった。よって、この製造方法(真空包装後加熱法)によっても無菌魚肉が製造できることが確認された。
Figure 2008253253
<魚肉の表面全周を滅菌する方法の効果の確認2>
トラフグを原料とし、実施例1と同じ無菌的な方法で取り出し、実施例1と同じ無菌的な方法で三枚に下ろしたフィレーを、実施例2に示した(1)〜(5)の方法で、ただし処理時間を変化させて滅菌し、実施例1と同じ方法で市販の滅菌したビニール袋に無菌的に収納し、口部をヒートシーラーでシールした。また、実施例4と同じ方法で無菌魚肉の包装体を作り、その包装体を浸漬時間を変化させて沸騰水に浸漬した。これらの包装体を25℃で2日間保存した後、各包装体から魚肉を1gずつ取り出し、標準液体培地10mL3本に接種し、35℃で2日間培養した。培養後、1白金耳を取り、標準寒天平板培地に塗布して35℃で2日間培養し、コロニーの出現の有無を観察して魚肉が滅菌されているかどうかを調べた。なお、全ての試験は繰り返して4回行なって確認した。
この試験の結果、以下のことが判明した。
(1)魚肉を沸騰水に浸漬する方法の場合は、20〜30秒間の浸漬で有効な滅菌がなされること、また、あまり長く浸漬すると魚肉の表面が白濁すること、
(2)魚肉を火炎で炙る方法の場合は、炙る時間が75秒未満では滅菌効果が乏しく、75〜90秒程度の炙りで有効な滅菌がなされること、
(3)魚肉をアルコール液に浸漬した後、付着したアルコール分を燃焼し尽くす方法の場合は、浸漬時間が1分未満では滅菌効果が乏しく、1〜5分間の浸漬で有効な滅菌がなされること、
(4)魚肉を有機酸液に浸漬する方法の場合は、5%酢酸液では3〜60秒間の浸漬で有効な滅菌がなされること、また乳酸液やクエン酸液を用いても同じ効果が得られること、(5)魚肉を次亜塩素酸液に浸漬する方法の場合は、20ppm溶液では浸漬時間が3分間以下では滅菌効果が乏しく、4〜6分間の浸漬で有効な滅菌がなされること、
(6)魚肉を真空包装した後で沸騰水に浸漬する方法の場合は、浸漬時間が10秒以下では滅菌効果が乏しく、30〜60秒間の浸漬で有効な滅菌がなされること、また、あまり長く浸漬すると魚肉の表面が白濁すること
<無菌魚肉の高温熟成の可能性の確認>
即殺したトラフグの魚体から実施例1と同じ方法で取り出したフィレー(表面全周滅菌処理をしてないもの)を、実施例4と同じ方法で真空包装した後沸騰水に60秒間浸漬して無菌魚肉の包装体を複数個作った。これらの包装体を10℃と25℃に分けて保存し、3日後に開封してそれぞれのフグ肉の一般細菌の有無を実施例4と同じ方法と嫌気ジャーを用いる方法の両方によって調べた。また、熟練したパネラー10名によって官能検査を実施した。これらの試験結果を表5、表6及び表7に示す。
表5に示すように、無菌魚肉を25℃で3日間保存した場合には遊離アミノ酸中の旨み成分であるリジンが増えて魚肉中の濃度が刺激閾値以上になり、表6に示すように通常の生魚肉よりも旨みが強くなることが判明した。一方、10℃で3日間保存した場合には遊離アミノ酸の顕著な増加は見られなかった。また、魚肉の核酸成分については、表7に示すように10℃保存では7日間にわたってイノシン酸量が高い値を維持したが、25℃保存では7日目に急激に低下することが判った。また、細菌検査の結果は、好気性細菌・嫌気性細菌とも全く検出されなかった。
なお、上記と同じ試験を保存条件を様々に変えて実施した。その結果、24〜30℃で3〜7日間保存した場合、リジン濃度が顕著に増えることが判明した。また、8〜12℃で1〜7日間保存した場合、イノシン酸濃度が高く維持できることが確認された。
この試験結果から、高温熟成では、短期間の保存によって遊離アミノ酸を旨み成分とする魚肉が得られ、一方、低温熟成では、短期間の保存によってイノシン酸を旨み成分とする旨みの強い魚肉が得られることが判明した。
Figure 2008253253
Figure 2008253253
Figure 2008253253
<無菌魚肉の長期保存性の確認>
即殺したトラフグの魚体から実施例6と同じ方法(真空包装後加熱法)で無菌フグ肉の包装体を複数個作った。これらの包装体を4℃で保存し、適時開封してそれぞれのフグ肉の一般細菌の有無を実施例6と同じ方法で調べた。また、魚肉から遊離アミノ酸や核酸を抽出し、高速液体クロマトグラフィーで調べた。一般細菌については、嫌気ジャーを用いて嫌気性細菌についても調べた。また、熟練した10名のパネラーによって官能検査を行なった。これらの試験結果を表8、表9及び表10に示す。
表8に示すように、無菌フグ肉を4℃で7日間保存した場合には、通常の生のフグ肉を4℃で保存した場合よりも、鮮度を表すK値が半分以下に留まり、無菌フグ肉の方が通常の生フグ肉よりも鮮度が効果的に維持されることが判った。
また、無菌フグ肉を4℃で保存した場合、表8に示すように、73日間の保存でイノシン酸は7日間保存した場合の6分の1にまで減少するものの、表9に示すように、旨み成分であるグルタミン酸とリジンが刺激閾値以上にまで蓄積され、旨みが増すことが判明した。また、73日間保存した無菌フグ肉の官能検査によれば、表10に示すように、通常の生のフグ肉よりも旨みが強いという評価を得た。また、細菌検査においては、好気・嫌気いずれの場合にも細菌は検出されなかった。
Figure 2008253253
Figure 2008253253
Figure 2008253253
<ブリを原料とする無菌魚肉の製造方法1>
(1)延髄刺殺した体重約2.5kgのブリをエアガンで神経破壊した後、魚体表面を食塩で5分間塩揉みして滑りを取り除き、滅菌した金タワシで鱗を除去した後、エタノール液に3分間浸漬した。浸漬の間も滅菌した金タワシで魚体表面、口蓋、鰓の内側を擦り、エタノールが外皮内部や口蓋、鰓内部にも浸透するようにした。
(2)このブリを、滅菌したビニール手袋を嵌めた手でエタノール液から取り出し、滅菌したタオルの上に載せて、別の滅菌済みのタオルで表面のエタノールを拭った。
(3)次いで、滅菌したまな板の上に背側を手前に向けて載せ、滅菌した包丁で胸鰭から頭部背筋にかけての横断線に沿って脊椎骨の上まで縦に切れ目を入れた。さらに、滅菌した包丁で側線に沿って先の横断面から尾部に向かって、縦に脊椎骨まで切れ目を入れた。(4)次に、背筋に沿って滅菌した包丁で背骨・肋骨の上をなぞるようにして脊椎まで切り、皮付きの背肉を取り出した。この皮付きの魚肉から滅菌した包丁を用いて外皮を除去し、ブリのフィレーを作った。
(5)得られたフィレーの血を滅菌したタオルで拭い、エタノール液に浸漬した。このフィレーを市販のポリエチレン袋に入れて真空包装した後、この包装体を沸騰水に60秒間浸漬した。
(6)得られた包装体を4℃で12日間保存し、適時に開封して核酸とドリップの変化を調べた。また、一般細菌による汚染の状況を調べた。その結果を表11と表12に示す。
その結果、ブリにおいては、表11に示すように、イノシン酸量が急激に減少し、これに伴ってK値も7日で44%、12日目で79%になるものの、魚肉を劣化させるヒポキサンチンは低濃度に保たれ、ドリップも4日目で1%に留まっているのが確認された。また、表12に示すように、細菌検査においては、好気・嫌気いずれの場合にも細菌は検出されなかった。よって、本実施例の方法(真空包装後加熱法)によれば、ブリについても無菌魚肉を安定して製造できることが確認された。
Figure 2008253253
Figure 2008253253
<ブリを原料とする無菌魚肉の製造方法2>
(1)スラッシュアイス(氷の量対海水の量=2:1)に4時間漬けて氷〆めにした体重約3.0kgのブリの活魚を用い、実施例8と同じ方法で塩揉みし、鱗を除去した後、実施例8と同じ方法でエタノール液に浸漬して殺菌を済ませた。このブリの魚体を滅菌した包丁を用いて、内臓を切らないように注意しながら、腹鰭の中央から肛門の後ろまで腹に切れ目を入れた。
(2)次に、滅菌した包丁で頭部背筋から胸鰭の後ろを通って腹鰭まで内臓を切らないようにして切れ目を入れる操作を両面について行なった。このとき、頭部は脊椎骨から切断されているが、頭部と内臓は食道を介して繋がっており、内臓は肛門で胴体と繋がっている状態である。
(3)次に、滅菌した手袋を嵌めた手で頭部を持ち、尾部を包丁で押さえて、頭部を内臓ごと一気に尾部に向かって引いて、引きちぎった。ちぎれた肛門部分は滅菌した包丁で抉るようにして除去した後、腹腔内及び魚体表面を20ppmの次亜塩素酸液で2.5分間洗浄した。
(4)得られたブリ肉を濃度5%の酢酸液に40秒間浸漬して表面全周を滅菌した後、滅菌したタオルの上に載せ、別の滅菌済みのタオルを用いて付着した酢酸液を拭った。
(5)この滅菌済みのブリのフィレーを滅菌した市販のビニール袋に実施例1と同じ方法で無菌的に収納して口部をヒートシーラーでシールし、これを実施例1と同じ条件で同じ期間(25℃で7日間)保存した後、実施例6と同じ内容の細菌検査を行なった。その結果、好気・嫌気いずれの場合にも細菌は検出されなかった。
(6)本実施例の方法(表面全周滅菌法)によれば、ブリについても無菌魚肉を安定して製造できることが確認された。
<凍結カツオを原料とする無菌魚肉の製造方法>
(1)即殺してから直ちに急速凍結処理をしたカツオの魚体を、外部との通路を除菌フィルターで遮断したクリーンルーム内に置いて一晩空気解凍し、実施例9と同じ方法(表面全周滅菌法)で無菌魚肉の包装体を作った。この包装体を実施例6と同じ条件で同じ期間(4℃で7日間及び25℃で7日間)保存した後、実施例6と同じ内容の細菌検査を行なった。その結果は表13に示すとおりである。
(2)細菌検査の結果、無菌的に取り出して保存したカツオ肉からは、好気・嫌気いずれの場合にも細菌は検出されなかった。
Figure 2008253253
以上のとおりであって、本発明は、きわめて簡単な方法によって保存性を有する無菌魚肉を製造し、また、これを保存・熟成させることによって旨みに富んで生食可能な魚肉加工食品を容易かつ安定して確実に製造できる画期的な方法である。本発明によって無菌魚肉の安定的な量産方法や保存方法が確立された。なお、本発明の方法によって無菌魚肉を製造し、かつ保存できる魚種には何ら制限はなく、本発明はどのような魚肉にも適用できる。なかでも、フグ、ブリ、カツオ、マグロ、カワハギなどに適用することが好ましい。さらに、本発明の方法は、魚肉に限らず、タコやエビなどを含めた魚介類全般の肉の無菌化と保存について適用できる。

Claims (4)

  1. 即殺するか又は氷〆めにした魚体から滅菌した用具を使用して、魚肉が鰭、鰓、外皮表面、内臓内容物のどれにも接触しないようにすると共に内臓を破裂させないで魚肉を取り出し、取り出した魚肉の表面全周を滅菌した後、滅菌した容器に無菌的に収納して密封することを特徴とする無菌魚肉の製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法において、取り出した魚肉の表面全周を滅菌する手段として以下の(1)〜(5)のいずれかの方法又は以下の(1)〜(5)のいずれかの方法を適宜組み合わせた方法を採る無菌魚肉の製造方法。
    (1)魚肉を沸騰水に短時間浸漬する方法
    (2)魚肉を火炎で短時間炙る方法
    (3)魚肉をアルコール液に短時間浸漬した後、魚肉に付着したアルコールを燃焼し 尽くす方法
    (4)魚肉を有機酸液に短時間浸漬する方法
    (5)魚肉を次亜塩素酸液に短時間浸漬する方法
  3. 即殺するか又は氷〆めにした魚体から滅菌した用具を使用して、魚肉が鰭、鰓、外皮表面、内臓内容物のどれにも接触しないようにすると共に内臓を破裂させないで魚肉を取り出し、取り出した魚肉を真空包装して、その包装体を沸騰水に短時間浸漬することを特徴とする無菌魚肉の製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の製造方法で得られた無菌魚肉を密封したまま24〜30℃で3〜7日間保存して魚肉を熟成させることを特徴とする無菌魚肉の保存方法。
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