JP2008251249A - アノード及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

アノード及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 高容量化(電極の高密度化)を図りつつ、安全性(デンドライトの抑制)を十分に確保することができ、高レート放電特性に優れたリチウムイオン二次電池を形成可能なリチウムイオン二次電池用のアノードを提供すること。
【解決手段】 集電体16と、該集電体16上に形成された活物質含有層18と、を備えるリチウムイオン二次電池用のアノードであって、前記活物質含有層18は、前記集電体16から最も遠い側に配置される最表面層19と、該最表面層19と前記集電体16との間に配置される1以上の層からなる下側層17とで構成され、前記最表面層19の屈曲度が、前記下側層17の屈曲度よりも小さい、アノード。
【選択図】 図1

Description

本発明は、アノード及びリチウムイオン二次電池に関する。
近年、リチウムイオン二次電池においては、電極に対する高容量化の要求が高まりつつある。電極の高容量化を図るために、従来の技術では、電極作製時の加工条件を調節し、例えばプレス圧を高めること等によって電極塗膜密度を高め、体積当たりの容量を向上させることが一般的に行われてきた(例えば、下記特許文献1〜6参照)。
しかしながら、プレス圧を上げていった場合に、電極中の活物質(特に電極表面側の活物質)が潰れて平坦化され、電極中の空隙が少なくなることによって電解液の流路がふさがれるという問題が生じてしまう。このように電解液の流路がふさがれると、電極表面でリチウムイオンが滞留し、デンドライトの生成が促進されることとなる。そして、デンドライトの生成に伴い、場合によっては、電極間で短絡を起こし、発火等の危険を生じることもある。
特開2005−63955号公報 特開2004−127913号公報 特開2005−317493号公報 特開2000−251890号公報 特開2003−142075号公報 特開2005−222933号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高容量化(電極の高密度化)を図りつつ、安全性(デンドライトの抑制)を十分に確保することができ、高レート放電特性に優れたリチウムイオン二次電池を形成可能なリチウムイオン二次電池用のアノード、及び、リチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、集電体と、該集電体上に形成された活物質含有層と、を備えるリチウムイオン二次電池用のアノードであって、上記活物質含有層は、上記集電体から最も遠い側に配置される最表面層と、該最表面層と上記集電体との間に配置される1以上の層からなる下側層とで構成され、上記最表面層の屈曲度が、上記下側層の屈曲度よりも小さい、アノードを提供する。
かかるアノードによれば、上記屈曲度の異なる最表面層と下側層とで構成される活物質含有層を備えることにより、屈曲度の大きい下側層が電気容量の向上に寄与するとともに、屈曲度の小さい最表面層が電解液の流路を確保し、電極表面でのリチウムイオンの滞留を防いでデンドライトの生成を抑制することができる。したがって、かかるアノードによれば、リチウムイオン二次電池に用いた場合に、その高容量化(電極の高密度化)を図りつつ、安全性(デンドライトの抑制)を十分に確保することでき、且つ、最表面層における電解液の流路が確保されることで優れた高レート放電特性を得ることが可能となる。
また、本発明のアノードにおいて、上記最表面層の屈曲度は1.3〜2.0であることが好ましい。最表面層の屈曲度が上記範囲内であることにより、電極表面におけるリチウムイオンの滞留をより十分に防ぐことができ、デンドライトの生成をより確実に抑制することができる。
一方、本発明のアノードにおいて、上記下側層の屈曲度は2.5〜4.0であることが好ましい。下側層の屈曲度が上記範囲内であることにより、電気容量をより向上させることができる。
また、本発明のアノードにおいて、上記最表面層の膜厚は上記下側層の膜厚よりも小さいことが好ましい。これにより、デンドライトの生成を十分に抑制しつつ、電気容量をより向上させることができる。
更に、本発明のアノードにおいて、上記最表面層の膜厚が5〜40μmであり、且つ、上記下側層の膜厚が40〜100μmであることが好ましい。これにより、デンドライトの生成をより十分に抑制しつつ、電気容量を更に向上させることができる。
本発明はまた、アノードと、カソードと、上記アノード及び上記カソードの間に配置される電解質層と、を備え、上記アノードが、上記本発明のアノードである、リチウムイオン二次電池を提供する。
なお、本明細書において、「アノード」及び「カソード」は説明の便宜上、リチウムイオン二次電池の放電時の極性を基準に決定したものである。従って、充電時には、「アノード」が「カソード」となり、「カソード」が「アノード」となる。
かかるリチウムイオン二次電池によれば、上述した効果を奏する本発明のアノードを用いて構成されていることにより、優れた電気容量を得ることができるとともに、デンドライトの生成を十分に抑制することができる。
本発明によれば、高容量化(電極の高密度化)を図りつつ、安全性(デンドライトの抑制)を十分に確保することができ、高レート放電特性に優れたリチウムイオン二次電池を形成可能なリチウムイオン二次電池用のアノード、及び、リチウムイオン二次電池を提供することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本発明のリチウムイオン二次電池用のアノードは、集電体と、該集電体上に形成された活物質含有層と、を備えるリチウムイオン二次電池用のアノードであって、上記活物質含有層は、上記集電体から最も遠い側に配置される最表面層と、該最表面層と上記集電体との間に配置される1以上の層からなる下側層とで構成され、上記最表面層の屈曲度が、上記下側層の屈曲度よりも小さいことを特徴とするものである。
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池用のアノードの基本構成を示す模式断面図である。図1に示すようにアノード10は、集電体16と、該集電体16上に形成された活物質含有層18とからなる。また、活物質含有層18は、集電体16から最も遠い側に配置される最表面層19と、該最表面層19と集電体16との間に配置される下側層17とで構成されている。なお、下側層17は、図1に示すように1層で構成されていてもよく、2以上の層で構成されていてもよい。そして、アノード10においては、最表面層17の屈曲度が、下側層19の屈曲度よりも小さくなっている。
本発明において屈曲度は、以下のようにして求められるものである。図2は、最表面層19の模式断面図である。図2に示すように、最表面層19は活物質粒子15が結着剤(図示せず)で結着されてなる構造を有している。屈曲度は、最表面層19に対して垂直方向(厚さ方向に平行)に直線Aを引き、その直線の長さをLとし、その直線Aが重なる活物質粒子15の横方向(上記の直線Aに垂直な方向)の最大直径を足していった数値をL’(Lと同一単位)として、(L’/L)で求められる値である。例えば、図2においては、直線Aと重なる活物質粒子15が5つあり、その横方向の最大直径はそれぞれL’1、L’2、L’3、L’4及びL’5である。したがって、屈曲度は{(L’1+L’2+L’3+L’4+L’5)/L}で求められる。
上記屈曲度を実際に測定する場合には、最表面層19の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を1サンプルについて任意に10点撮影し、それらのSEM写真の中央に、最表面層19に対して垂直な直線Aを引き、その直線Aの長さLと、直線Aが重なる活物質粒子15の横方向の最大直径を足していった数値L’とを測定して(L’/L)の値を算出し、10点の平均値を屈曲度として求める。なお、SEM写真は、最表面層19の厚さ方向の全体が収まるように撮影する。すなわち、Lの値は最表面層19の厚さに相当する。
また、下側層17についても、上記最表面層19の場合と同様にして屈曲度を測定する。なお、下側層17が2以上の層で構成されている場合でも、2以上の層からなる下側層17の厚さ方向の全体が収まるようにSEM写真を撮影し、同様の手法で下側層17全体としての屈曲度を測定する。なお、本発明において屈曲度は、未充電状態のアノードに対して測定される値である。
最表面層19の屈曲度は、下側層17の屈曲度よりも小さいことが必要であるが、具体的な数値としては、1.3〜2.0であることが好ましく、1.5〜1.9であることがより好ましい。最表面層19の屈曲度を1.3未満とするためには、例えば電極形成時のプレス圧を非常に低くする必要がある等、製造が困難となる傾向がある。一方、最表面層19の屈曲度が2.0を超えると、電極表面におけるリチウムイオンの滞留が生じやすくなり、デンドライトの生成を抑制する効果が低下する傾向がある。
また、下側層17の屈曲度は、最表面層19の屈曲率よりも大きいことが必要であるが、具体的な数値としては、2.5〜4.0であることが好ましく、2.7〜3.8であることがより好ましい。下側層17の屈曲度が2.5未満であると、電気容量の向上効果が低下する傾向がある。一方、下側層17の屈曲度を4.0より大きくするためには、例えば電極形成時のプレス圧を非常に高くする必要があり、電極に変形が生じやすくなる傾向がある。
以下、アノード10の各構成材料について説明する。
集電体16は、活物質含有層18への電荷の移動を十分に行うことができる良導体であれば特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池に用いられている集電体を使用することができる。例えば、集電体16としては、銅、アルミニウム等の金属箔が挙げられる。
最表面層19は、主として活物質粒子と、結着剤とから構成されている。なお、最表面層19には、更に導電助剤を含有させてもよい。
最表面層19に用いられる活物質粒子は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、ClO )とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知のアノード活物質粒子を使用できる。このような活物質粒子としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛(難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等)等の炭素材料、Al、Si、Sn等のリチウムと化合することのできる金属、SiO、SnO等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(LiTi12)が挙げられる。中でも、炭素材料が好ましく、炭素材料の層間距離d002が0.335〜0.338nmであり、かつ、炭素材料の結晶子の大きさLc002が30〜120nmであるものがより好ましい。このような条件を満たす炭素材料としては、人造黒鉛、MCF(メソカーボンファイバ)等が挙げられる。なお、上記層間距離d002及び結晶子の大きさLc002は、X線回折法により求めることができる。
また、最表面層19の屈曲度を小さくする観点で、活物質粒子として活性炭を用いることも好ましい。また、その他の材料として金属酸化物、多孔質材(セラミック、有機粒子等)などを用いてもよい。これらの材料は、電極形成時のプレスによって変形等が生じにくく、最表面層19の屈曲度を低く抑えることができる。これらの材料は、1種を単独で用いてもよく、上述した公知のアノード活物質粒子と組み合わせて用いてもよい。
最表面層19に用いられる活物質粒子の平均粒径(D50)は、3〜40μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。この平均粒径が3μm未満であると、活物質粒子の分散が難しくなり、均一な塗膜形成が難しくなる傾向があり、40μmを超えると、塗膜厚が40μmを超えてくる傾向がある。
最表面層19に用いられる結着剤としては、公知の結着剤を特に制限なく使用することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂が挙げられる。この結着剤は、活物質粒子や必要に応じて添加される導電助剤等の構成材料同士を結着するのみならず、それらの構成材料と集電体との結着にも寄与している。
また、上記の他に、結着剤としては、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴムを用いてもよい。
更に、上記の他に、結着剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等を用いてもよい。また、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子を用いてもよい。更に、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体等を用いてもよい。また、導電性高分子を用いてもよい。
最表面層19に必要に応じて用いられる導電助剤としては特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。導電助剤としては、例えば、カーボンブラック類、炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITOのような導電性酸化物が挙げられる。
最表面層19において活物質粒子の含有量は、最表面層19の固形分全量を基準として80〜97質量%であることが好ましく、85〜95質量%であることがより好ましい。この含有量が80質量%未満であると、活物質密度が低くなって電気容量が低下する傾向があり、97質量%を超えると、相対的にバインダーの量が少なくなって塗膜が脆くなる傾向がある。
また、最表面層19の厚さは下側層17よりも薄いことが好ましい。最表面層19の厚さは、具体的には、3〜40μmであることが好ましく、5〜35μmであることがより好ましい。この厚さが3μm未満であると、粒径の小さい活物質粒子を選択せざるを得ないことから、塗膜形成が難しくなる傾向があり、40μmを超えると、塗膜密度が低くなって抵抗が増大する傾向がある。
下側層17は、上述した最表面層19と同様に、主として活物質粒子と、結着剤とから構成されている。なお、下側層17には、更に導電助剤を含有させてもよい。
下側層17に用いられる結着剤及び導電助剤としては、最表面層19と同様のものを用いることができる。
下側層17に用いられる活物質粒子は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、ClO )とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知のアノード活物質粒子を使用できる。このような活物質粒子としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛(難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等)等の炭素材料、Al、Si、Sn等のリチウムと化合することのできる金属、SiO、SnO等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(LiTi12)が挙げられる。中でも、炭素材料が好ましく、炭素材料の層間距離d002が0.335〜0.338nmであり、かつ、炭素材料の結晶子の大きさLc002が30〜120nmであるものがより好ましい。このような条件を満たす炭素材料としては、人造黒鉛、MCF(メソカーボンファイバ)等が挙げられる。なお、上記層間距離d002及び結晶子の大きさLc002は、X線回折法により求めることができる。
下側層17に用いられる活物質粒子の平均粒径(D50)は、10〜40μmであることが好ましく、12〜35μmであることがより好ましい。この平均粒径が10μm未満であると、活物質粒子の分散が難しくなり、均一な塗膜形成が難しくなる傾向があり、40μmを超えると、塗膜密度が低下する傾向がある。
下側層17において活物質粒子の含有量は、下側層17の固形分全量を基準として80〜97質量%であることが好ましく、85〜95質量%であることがより好ましい。この含有量が80質量%未満であると、活物質密度が低くなって電気容量が低下する傾向があり、97質量%を超えると、相対的にバインダーの量が少なくなって、塗膜と集電体との密着性が低下する傾向がある。
また、下側層17の厚さは最表面層19よりも厚いことが好ましい。下側層17の厚さは、具体的には、40〜100μmであることが好ましく、50〜90μmであることがより好ましい。この厚さが40μm未満であると、電気容量が低下する傾向があり、100μmを超えると、電解質溶液の流路が阻害されて、高レート放電特性が低下したり、塗膜と集電体との接着強度が低下する傾向がある。
アノード10を作製する場合、まず、上述した各構成成分を混合し、結着剤が溶解可能な溶媒に分散させ、下側層形成用塗布液(スラリー又はペースト等)及び最表面層形成用塗布液(スラリー又はペースト等)をそれぞれ作製する。溶媒としては、結着剤が溶解可能であれば特に限定されるものではない。かかる溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
次に、上記下側層形成用塗布液を集電体16表面上に塗布し、乾燥させ、プレスすることにより集電体16上に下側層17を形成する。下側層17が複数の層からなる場合には、それぞれの層に対応する塗布液を調製し、塗布、乾燥及びプレスをそれぞれの層に対して行う。
次いで、上記最表面層形成用塗布液を下側層17表面上に塗布し、乾燥させ、プレスすることにより下側層17上に最表面層19を形成する。これにより、集電体16上に活物質含有層18を形成してなるアノード10の作製を完了する。
ここで、下側層形成用塗布液及び最表面層形成用塗布液を塗布する際の塗布方法としては、例えば、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
プレスは、例えば、カレンダロール等のロールプレスや、平板プレス等により行うことができるが、本発明では電極の高密度化に有利なロールプレスを用いることが望ましい。もし、高圧で加工してアノード電極シートへの変形等の影響がある時は、低圧で熱プレスさせても構わない。熱プレスをさせる場合には、バインダーの耐熱性を考慮して適宜調整する。なお、その際の温度は、通常、80〜180℃とすることが好ましい。プレス時の圧力は、下側層17及び最表面層19の屈曲度が上述した条件を満たすように、各層の構成材料等に応じて適宜調節する。なお、下側層17をプレスする際の圧力は、通常、線圧2452〜9807N/cm(250〜1000kgf/cm)とすることが好ましく、線圧2746〜7845N/cm(280〜800kgf/cm)とすることがより好ましい。一方、最表面層19をプレスする際の圧力は、通常、線圧245〜14710N/cm(25〜1500kgf/cm)とすることが好ましく、線圧343〜12749N/cm(35〜1300kgf/cm)とすることがより好ましい。最表面層19の活物質粒子として活性炭のようなプレス時に変形の生じ難い硬い材料を用いる場合等には、最表面層19形成時のプレス圧を下側層17形成時のプレス圧より高くしてもよい。本発明のアノードを製造する場合、集電体16上に下側層形成用塗布液を塗布、乾燥し、プレスして下側層17を形成した後、該下側層17上に最表面層形成用塗布液を塗布、乾燥し、下側層17形成時よりも低い圧力でプレスして最表面層19を形成することが好ましい。なお、集電体16上に各塗布液の塗布及び乾燥のみを行ってプレス前の下側層及び最表面層を形成してから、一度にプレスを行っても構わない。プレス時の線圧を調整することで、得られる層のポロシティー、密度及び屈曲度を調整することが可能である。
次に、本発明のリチウムイオン二次電池について説明する。本発明のリチウムイオン二次電池は、アノードと、カソードと、アノード及びカソードの間に配置される電解質層と、を備え、アノードが、上記本発明のアノードであることを特徴とするものである。
図3は本発明のリチウムイオン二次電池の好適な一実施形態を示す正面図である。また、図4は図3に示すリチウムイオン二次電池の内部をアノード10の表面の法線方向からみた場合の展開図である。更に、図5は図3に示すリチウムイオン二次電池を図3のX1−X1線に沿って切断した場合の模式断面図である。また、図6は図3に示すリチウムイオン二次電池を図3のX2−X2線に沿って切断した場合の要部を示す模式断面図である。また、図7は図3に示すリチウムイオン二次電池を図3のY−Y線に沿って切断した場合の要部を示す模式断面図である。
図3〜図7に示すように、リチウムイオン二次電池1は、主として、互いに対向する板状のアノード10及び板状のカソード20と、アノード10とカソード20との間に隣接して配置される板状のセパレータ40と、リチウムイオンを含む電解質溶液(本実施形態では非水電解質溶液)と、これらを密閉した状態で収容するケース50と、アノード10に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部がケース50の外部に突出されるアノード用リード12と、カソード20に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部がケース50の外部に突出されるカソード用リード22とから構成されている。
ここで、アノード10は、先に説明した本発明のアノード10となっている。
図10は、図3に示すリチウムイオン二次電池1のカソード20の基本構成の一例を示す模式断面図である。図10に示すようにカソード20は、集電体26と、該集電体26上に形成されたカソード活物質含有層28とからなる。
集電体26は、カソード活物質含有層28への電荷の移動を充分に行うことができる良導体であれば特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池に用いられている集電体を使用することができる。例えば、集電体26としては、銅、アルミニウム等の金属箔が挙げられる。
カソード活物質含有層28は、主としてカソード活物質と、結着剤とから構成されている。また、カソード活物質含有層28は、更に導電助剤を含有していることが好ましい。
カソード活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、ClO )とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能なものであれば特に限定されず、公知の電極活物質を使用できる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNiCoMn(x+y+z=1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn又はFeを示す)、チタン酸リチウム(LiTi12)等の複合金属酸化物が挙げられる。
カソード20に用いられる結着剤としては、アノード10に用いられる結着剤と同様のものを使用することができる。また、カソード20に必要に応じて用いられる導電助剤としては、アノード10に用いられる導電助剤と同様のものを使用することができる。
カソード20の集電体は、例えばアルミニウムからなるカソード用リード22の一端に電気的に接続され、カソード用リード22の他端はケース50の外部に延びている。一方、アノード10の集電体も、例えば銅又はニッケルからなるアノード用リード12の一端に電気的に接続され、アノード用リード12の他端はケース50の外部に延びている。
アノード10とカソード20との間に配置されるセパレータ40は、イオン透過性を有し、且つ、電子的絶縁性を有する多孔体から形成されていれば特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池に用いられるセパレータを使用することができる。かかるセパレータ40としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリオレフィンからなるフィルムの積層体や、上記高分子の混合物の延伸膜、或いは、セルロース、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも一種の構成材料からなる繊維不織布等が挙げられる。
電解質溶液(図示せず)はケース50の内部空間に充填され、その一部は、アノード10、カソード20、及びセパレータ40の内部に含有されている。電解質溶液は、リチウム塩を有機溶媒に溶解した非水電解質溶液が使用される。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiCFCFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFCFCO)等の塩が使用される。なお、これらの塩は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、電解質溶液は、高分子等を添加することによりゲル状としてもよい。
また、有機溶媒は、公知のリチウムイオン二次電池に使用されている溶媒を使用することができる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、及び、ジエチルカーボネート等が好ましく挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。
ケース50は、互いに対向する一対のフィルム(第1のフィルム51及び第2のフィルム52)を用いて形成されている。ここで、図4に示すように、本実施形態における第1のフィルム51及び第2のフィルム52は連結している。すなわち、本実施形態におけるケース50は、一枚の複合包装フィルムからなる矩形状のフィルムを、図4に示す折り曲げ線X3−X3において折り曲げ、矩形状のフィルムの対向する1組の縁部同士(図中の第1のフィルム51の縁部51B及び第2のフィルム52の縁部52B)を重ね合せて接着剤を用いるか又はヒートシールを行うことにより形成されている。なお、図3及び図4中の51A、並びに、図4中の52Aは、それぞれ第1のフィルム51及び第2のフィルム52の接着又はヒートシールされていない部分領域を示す。
そして、第1のフィルム51及び第2のフィルム52は、1枚の矩形状のフィルムを上述のように折り曲げた際にできる互いに対向する面を有する該フィルムの部分をそれぞれ示す。ここで、本明細書において、接合された後の第1のフィルム51及び第2のフィルム52のそれぞれの縁部を「シール部」という。
これにより、折り曲げ線X3−X3の部分に第1のフィルム51と第2のフィルム52とを接合させるためのシール部を設ける必要がなくなるため、ケース50におけるシール部をより低減することができる。その結果、リチウムイオン二次電池1の設置されるべき空間の体積を基準とする体積エネルギー密度をより向上させることができる。
また、本実施形態の場合、図3及び図4に示すように、アノード10に接続されたアノード用リード12及びカソード20に接続されたカソード用リード22のそれぞれの一端が、上述の第1のフィルム51の縁部51Bと第2のフィルムの縁部52Bとを接合したシール部から外部に突出するように配置されている。
また、第1のフィルム51及び第2のフィルム52を構成するフィルムは、可とう性を有するフィルムである。フィルムは軽量であり薄膜化が容易なため、リチウムイオン二次電池自体の形状を薄膜状とすることができる。そのため、本来の体積エネルギー密度を容易に向上させることができるとともに、リチウムイオン二次電池の設置されるべき空間の体積を基準とする体積エネルギー密度も容易に向上させることができる。
このフィルムは可とう性を有するフィルムであれば特に限定されないが、ケースの十分な機械的強度と軽量性とを確保しつつ、ケース50外部からケース50内部への水分や空気の侵入及びケース50内部からケース50外部への電解質成分の逸散を効果的に防止する観点から、発電要素60に接触する高分子製の最内部の層と、最内部の層の発電要素と接する側の反対側に配置される金属層とを少なくとも有する「複合包装フィルム」であることが好ましい。
第1のフィルム51及び第2のフィルム52として使用可能な複合包装フィルムとしては、例えば、図8及び図9に示す構成の複合包装フィルムが挙げられる。図8に示す複合包装フィルム53は、その内面F53において発電要素60に接触する高分子製の最内部の層50aと、最内部の層50aのもう一方の面(外側の面)上に配置される金属層50cとを有する。また、図9に示す複合包装フィルム54は、図9に示す複合包装フィルム53の金属層50cの外側の面に更に高分子製の最外部の層50bが配置された構成を有する。
第1のフィルム51及び第2のフィルム52として使用可能な複合包装フィルムは、上述の最内部の層をはじめとする1以上の高分子の層、金属箔等の金属層を備えた2以上の層を有する複合包装材であれば特に限定されないが、上記と同様の効果をより確実に得る観点から、図9に示した複合包装フィルム54のように、最内部の層50aと、最内部の層50aから最も遠いケース50の外表面の側に配置される高分子製の最外部の層50bと、最内部の層50aと最外部の層50bとの間に配置される少なくとも1つの金属層50cとを有する3層以上の層から構成されていることがより好ましい。
最内部の層50aは可とう性を有する層であり、その構成材料は上記の可とう性を発現させることが可能であり、且つ、使用される非水電解質溶液に対する化学的安定性(化学反応、溶解、膨潤が起こらない特性)、並びに、酸素及び水(空気中の水分)に対する化学的安定性を有している高分子であれば特に限定されないが、更に酸素、水(空気中の水分)及び非水電解質溶液の成分に対する透過性の低い特性を有している材料が好ましい。例えば、エンジニアリングプラスチック、並びに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン酸変成物、ポリプロピレン酸変成物、ポリエチレンアイオノマー、ポリプロピレンアイオノマー等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
なお、「エンジニアリングプラスチック」とは、機械部品、電気部品、住宅用材等で使用されるような優れた力学特性と耐熱性、耐久性を有しているプラスチックを意味し、例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシテトラメチレンオキシテレフタロイル(ポリブチレンテレフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。
また、図9に示した複合包装フィルム54のように、最内部の層50a以外に、最外部の層50b等のような高分子製の層を更に設ける場合、この高分子製の層も、上記最内部の層50aと同様の構成材料を使用してもよい。
金属層50cとしては、酸素、水(空気中の水分)及び非水電解質溶液に対する耐腐食性を有する金属材料から形成されている層であることが好ましい。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、クロム等からなる金属箔を使用してもよい。
また、ケース50における全てのシール部のシール方法は、特に限定されないが、生産性の観点から、ヒートシール法であることが好ましい。
図3及び図4に示すように、第1のフィルム51の縁部51B及び第2のフィルム52の縁部52Bからなる外装袋のシール部に接触するアノード用リード12の部分には、アノード用リード12と各フィルムを構成する複合包装フィルム中の金属層との接触を防止するための絶縁体14が被覆されている。更に、第1のフィルム51の縁部51B及び第2のフィルム52の縁部52Bからなる外装袋のシール部に接触するカソード用リード22の部分には、カソード用リード22と各フィルムを構成する複合包装フィルム中の金属層との接触を防止するための絶縁体24が被覆されている。
これら絶縁体14及び絶縁体24の構成は特に限定されないが、例えば、それぞれ高分子から形成されていてもよい。なお、アノード用リード12及びカソード用リード22のそれぞれに対する複合包装フィルム中の金属層の接触が十分に防止可能であれば、これら絶縁体14及び絶縁体24は配置しない構成としてもよい。
次に、上述したリチウムイオン二次電池1は、例えば、以下の手順で作製することができる。まず、アノード10及びカソード20のそれぞれに対して、アノード用リード12及びカソード用リード22をそれぞれ電気的に接続する。その後、アノード10とカソード20との間に、セパレータ40を接触した状態(好ましくは非接着状態)で配置し、発電要素60を完成する。
次に、例えば、以下の方法によりケース50を作製する。まず、第1のフィルム及び第2のフィルムを先に述べた複合包装フィルムから構成する場合には、ドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、エクストルージョンラミネ−ション法等の既知の製法を用いて作製する。また、複合包装フィルムを構成する高分子製の層となるフィルム、アルミニウム等からなる金属箔を用意する。金属箔は、例えば金属材料を圧延加工することにより用意することができる。
次に、好ましくは先に述べた複数の層の構成となるように、高分子製の層となるフィルムの上に接着剤を介して金属箔を貼り合わせる等して複合包装フィルム(多層フィルム)を作製する。そして、複合包装フィルムを所定の大きさに切断し、矩形状のフィルムを1枚用意する。
次に、先に図4を参照して説明したように、1枚のフィルムを折り曲げて、第1のフィルム51のシール部51B(縁部51B)と第2のフィルムのシール部52B(縁部52B)を、例えば、シール機を用いて所定の加熱条件で所望のシール幅だけヒートシールする。このとき、発電要素60をケース50中に導入するための開口部を確保するために、一部のヒートシールを行わない部分を設けておく。これにより開口部を有した状態のケース50が得られる。
そして、開口部を有した状態のケース50の内部に、アノード用リード12及びカソード用リード22が電気的に接続された発電要素60を挿入する。そして、電解質溶液を注入する。続いて、アノード用リード12、カソード用リード22の一部をそれぞれケース50内に挿入した状態で、シール機を用いて、ケース50の開口部をシールする。このようにしてケース50及びリチウムイオン二次電池1の作製が完了する。なお、本発明のリチウムイオン二次電池は、このような形状のものに限定されず、円筒形等の形状でもよい。
以上、本発明のリチウムイオン二次電池の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態の説明において、リチウムイオン二次電池1のシール部を折り曲げることにより、よりコンパクトな構成としてもよい。また、上記実施形態の説明においては、アノード10及びカソード20をそれぞれ1つずつ備えたリチウムイオン二次電池1について説明したが、アノード10及びカソード20をそれぞれ2以上備え、アノード10とカソード20との間にセパレータ40が常に1つ配置される構成としてもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
アノード活物質であるグラファイト(平均粒径24μm)90質量部、導電助剤であるアセチレンブラック2質量部、及び、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)8質量部を、プラネタリーミキサにて混合分散した後、適量のNMPで粘度調整してスラリー状の下側層形成用塗布液を得た。
得られた下側層形成用塗布液を、集電体である銅箔(15μm)の上にドクターブレード法により活物質担持量10.5mg/cmとなるよう塗布し、乾燥させた。得られたアノードシートに対して線圧が3432N/cm(350kgf/cm)になるようにカレンダロールによってプレスした。これにより、集電体上に下側層を形成した。
また、アノード活物質であるグラファイト(平均粒径14μm)90質量部、導電助剤であるアセチレンブラック2質量部、及び、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)8質量部を、プラネタリーミキサにて混合分散した後、適量のNMPで粘度調整してスラリー状の最表面層形成用塗布液を得た。
得られた最表層形成用塗布液を、上記の下側層上にドクターブレード法により活物質担持量2.4mg/cmとなるよう塗布し、乾燥させた。得られたアノードシートに対して線圧が1275N/cm(130kgf/cm)になるようにカレンダロールによってプレスした。これにより、下側層上に最表面層を形成した。プレス後のアノードシートにおいて、最表面層の厚さは18μmであり、下側層の厚さは63μmであった。また、プレス後のアノードシートを31mm×41.5mmのサイズに打ち抜き、目的のアノードを得た。
(実施例2)
最表面層を形成する際のアノードシートのカレンダロールによるプレス時の線圧を393N/cm(40kgf/cm)としたこと以外は実施例1と同様にして、アノードを作製した。なお、プレス後のアノードシートにおいて、最表面層の厚さは20μmであり、下側層の厚さは63μmであった。
(実施例3)
最表面層を形成する際のアノードシートのカレンダロールによるプレス時の線圧を2746N/cm(280kgf/cm)としたこと以外は実施例1と同様にして、アノードを作製した。なお、プレス後のアノードシートにおいて、最表面層の厚さは16μmであり、下側層の厚さは61μmであった。
(実施例4)
下側層を形成する際のアノードシートのカレンダロールによるプレス時の線圧を2492N/cm(300kgf/cm)としたこと以外は実施例1と同様にして、アノードを作製した。なお、最表面層をプレスした後のアノードシートにおいて、最表面層の厚さは19μmであり、下側層の厚さは67μmであった。
(実施例5)
下側層を形成する際のアノードシートのカレンダロールによるプレス時の線圧を3825N/cm(390kgf/cm)としたこと以外は実施例1と同様にして、アノードを作製した。なお、最表面層をプレスした後のアノードシートにおいて、最表面層の厚さは18μmであり、下側層の厚さは62μmであった。
(実施例6)
最表面層用のアノード活物質(グラファイト)の平均粒径を5μmとし、最表面層の活物質担持量を0.7mg/cmとしたこと以外は実施例1と同様にして、アノードを作製した。なお、最表面層をプレスした後のアノードシートにおいて、最表面層の厚さは5μmであり、下側層の厚さは65μmであった。
(実施例7)
下側層の活物質担持量を5.6mg/cmとし、最表面層の活物質担持量を5.3mg/cmとしたこと以外は実施例1と同様にして、アノードを作製した。なお、最表面層をプレスした後のアノードシートにおいて、最表面層の厚さは40μmであり、下側層の厚さは41μmであった。
(実施例8)
下側層の活物質担持量を13.7mg/cmとしたこと以外は実施例1と同様にして、アノードを作製した。なお、最表面層をプレスした後のアノードシートにおいて、最表面層の厚さは18μmであり、下側層の厚さは100μmであった。
(比較例1)
アノード活物質であるグラファイト(平均粒径24μm)90質量部、導電助剤であるアセチレンブラック2質量部、及び、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)8質量部を、プラネタリーミキサにて混合分散した後、適量のNMPで粘度調整してスラリー状の塗布液を得た。
得られた塗布液を、集電体である銅箔(15μm)の上にドクターブレード法により活物質担持量11mg/cmとなるよう塗布し、乾燥させた。これにより、集電体上にアノード活物質含有層が形成されてなるアノードシートを得た。得られたアノードシートに対して線圧が1569N/cm(160kgf/cm)になるようにカレンダロールによってプレスした。プレス後のアノード活物質含有層の厚さは81μmであった。また、プレス後のアノードシートを31mm×41.5mmのサイズに打ち抜き、目的のアノードを得た。
(比較例2)
カレンダロールによるプレス時の線圧を2648N/cm(270kgf/cm)としたこと以外は比較例1と同様にして、アノードを作製した。なお、プレス後のアノード活物質含有層の厚さは74μmであった。
(比較例3)
カレンダロールによるプレス時の線圧を3138N/cm(320kgf/cm)としたこと以外は比較例1と同様にして、アノードを作製した。なお、プレス後のアノード活物質含有層の厚さは72μmであった。
(比較例4)
カレンダロールによるプレス時の線圧を3923N/cm(400kgf/cm)としたこと以外は比較例1と同様にして、アノードを作製した。なお、プレス後のアノード活物質含有層の厚さは62μmであった。
<屈曲率の測定>
実施例1〜8及び比較例1〜4で得られたアノードについて、アノード活物質含有層の断面のSEM像から屈曲率を求めた。ここで、図11は、比較例1のアノードにおけるアノード活物質含有層の断面のSEM写真(倍率:1500倍)である。図11に示すように、撮影したSEM写真の中央に、アノード活物質含有層に対して垂直(アノード活物質含有層の厚さ方向に平行)な直線Aを引き、その直線Aの長さLと、直線Aが重なる活物質粒子15の横方向の最大直径を足していった数値L’(L’1+L’2+L’3+L’4+L’5+L’6)とを測定して(L’/L)の値を算出した。同様に、比較例1のアノードにおけるアノード活物質含有層の断面のSEM写真を合計10枚撮影し、それぞれのSEM写真から測定した(L’/L)の値の平均値を屈曲度として求めた。また、他の実施例及び比較例についても、同様の手法で屈曲度を求めた。なお、実施例においては、下側層及び最表面層のそれぞれについて屈曲度を求めた。また、屈曲率を測定する際のSEM写真の倍率は1500倍に限らず、L’やLが求めにくい場合には、適宜拡大縮小させて測定した。その結果を表1に示す。
<活物質含有層の密度の測定>
実施例1〜8及び比較例1〜4のアノードにおけるアノード活物質含有層の見かけ密度(g/cm)を、アノード活物質含有層(下側層及び最表面層の合計)の質量、厚み、及び面積から算出した。その結果を表1に示す。
<放電レート特性の測定>
実施例1〜8及び比較例1〜4で得られたアノードを用いて、以下の手順で電極評価用セルを作製した。すなわち、アノードと、その対極であるLi箔(厚さ100μm)とを、それらの間にポリエチレンからなるセパレータを挟んで積層し、積層体(素体)を得た。この積層体を、アルミラミネーターパックに入れ、このアルミラミネーターパックに電解液である1MLiPF/PCを注入した後、真空シールし、電極評価用セル(縦48mm、横34mm、厚さ2mm)を作製した。得られた電極評価用セルについて、放電温度25℃で定電流放電を行ったときに5時間で放電終了となる電流値を0.2C、そのときの放電容量を0.2C容量とし、0.2C容量を100%とした場合の3C容量の比率(%)を求めた。その結果を表1に示す。
表1に示したように、屈曲度が高い比較例3及び4では、放電レート特性が悪くデンドライトが生成しやすい。一方、比較例1及び2では、屈曲度が低く放電レート特性は良いが、屈曲度が低いと塗膜密度が低くなりやすく電気容量が小さい。比較例1〜4に示したような単層の電極では目的とする電極の作製が困難である。
そこで、実施例1〜8のように、アノードの活物質含有層において、下側層には屈曲度が大きく、電気容量の大きい層を用い、最表面層には屈曲度が小さく、デンドライトの生成を抑制できる層を用いることで、リチウムイオン二次電池の電気容量を良好なものとし、且つ、デンドライトの生成を十分に抑制して安全性及び高レート放電特性を良好なものとすることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用のアノードの基本構成を示す模式断面図である。 本発明のリチウムイオン二次電池用のアノードにおける最表面層の模式断面図である。 本発明のリチウムイオン二次電池の好適な一実施形態を示す正面図である。 図3に示すリチウムイオン二次電池の内部をアノード10の表面の法線方向からみた場合の展開図である。 図3に示すリチウムイオン二次電池を図3のX1−X1線に沿って切断した場合の模式断面図である。 図3に示すリチウムイオン二次電池を図3のX2−X2線に沿って切断した場合の要部を示す模式断面図である。 図3に示すリチウムイオン二次電池を図3のY−Y線に沿って切断した場合の要部を示す模式断面図である。 図3に示すリチウムイオン二次電池のケースの構成材料となるフィルムの基本構成の一例を示す模式断面図である。 図3に示すリチウムイオン二次電池のケースの構成材料となるフィルムの基本構成の別の一例を示す模式断面図である。 図3に示すリチウムイオン二次電池のカソード20の基本構成の一例を示す模式断面図である。 比較例1のアノードにおけるアノード活物質含有層の断面のSEM写真(倍率:1500倍、視野:65μm×80μm)である。
符号の説明
1…リチウムイオン二次電池、10…アノード、12…アノード用リード線、14…絶縁体、15…活物質粒子、16…集電体、17…下側層、18…活物質含有層、19…最表面層、20…カソード、22…カソード用リード線、24…絶縁体、40…セパレータ、50…ケース、60…発電要素。

Claims (6)

  1. 集電体と、該集電体上に形成された活物質含有層と、を備えるリチウムイオン二次電池用のアノードであって、
    前記活物質含有層は、前記集電体から最も遠い側に配置される最表面層と、該最表面層と前記集電体との間に配置される1以上の層からなる下側層とで構成され、
    前記最表面層の屈曲度が、前記下側層の屈曲度よりも小さい、アノード。
  2. 前記最表面層の屈曲度が1.3〜2.0である、請求項1記載のアノード。
  3. 前記下側層の屈曲度が2.5〜4.0である、請求項1又は2記載のアノード。
  4. 前記最表面層の膜厚が前記下側層の膜厚よりも小さい、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアノード。
  5. 前記最表面層の膜厚が5〜40μmであり、且つ、前記下側層の膜厚が40〜100μmである、請求項4記載のアノード。
  6. アノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードの間に配置される電解質層と、を備え、前記アノードが、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアノードである、リチウムイオン二次電池。
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