JP2008238339A - シリンダブロックの加工用治具および加工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シリンダボア3の仕上げ加工を行う際に用いられる加工用治具であって、ヘッド取付面2に対して近接離間する治具本体10と、ヘッドボルト穴7の雌ネジ部8に対して係合可能なネジ部19が形成された複数のボルト片部18の内側面21によってテーパ穴部20を形成し、テーパ穴部20を介して受ける楔作用により拡径するボルト部材16と、テーパ穴部20に挿入され前記楔作用を与えるテーパ面部22を有するテーパ軸部材17と、ヘッド取付面2における所定の面部に接触する押圧面23を有するピストン部材24とを備える構成とした。
【選択図】図1
Description
一方で、シリンダボア等の孔部の真円度は、エンジンの組立て過程における部品の組付けにともなうボルト締結等の影響を受ける。つまり、シリンダブロックに対して部品がボルト締結によって組み付けられることにより、そのボルト締結の締付け力(締結軸力)によってシリンダブロック等が歪み(変形し)、シリンダボア等の孔部の真円度が悪化する。
このため、従来、シリンダボア等の孔部に対し、シリンダブロックに対して部品が組み付けられること等による歪(変形)が再現された状態(模擬された状態)での仕上げ加工が行われている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
ダミーヘッド加工は、ダミーヘッドをシリンダブロックにボルト締結により組み付け、エンジンアッシとしての組付け完了状態を再現した状態で、シリンダボア等の孔部に対する仕上げ加工を行うという考え方に基づくものである。このため、生産サイクルタイムを考慮した相当数のダミーヘッドの準備や、ダミーヘッドの組付け・取外しのための設備等が必要となる。したがって、ダミーヘッド加工が行われるシリンダブロックの加工に際しては、ダミーヘッド加工が行われない通常工程のシリンダブロックの加工に対して、相当数のダミーヘッドの準備およびそのスペースの追加や、ダミーヘッドの組付け・取外しのための設備および工程の追加等が必要となり、製造コストが増加する。
特許文献2には、軸受孔の形成に際し、ボルト締結の代わりに、押圧ピンによって所定の付加を与えることにより、ボルト締結等によって生じる変形と同等の変形を与えた状態とし、軸受孔の真円加工を行う技術が示されている。かかる技術は、軸受孔の真円加工に際し、ボルト締結工程やボルト解体工程を廃止して生産効率を高めることを目的とするものである。
しかし、シリンダヘッド(ダミーヘッド)がシリンダブロックに対して組み付けられることによりシリンダボアに生じる変形は、シリンダヘッド取付面が押圧されることだけでなく、ボルト締結による締結軸力(ボルトによる引張り力)が作用することも原因となる。このため、特許文献2に開示されている技術が用いられることによっては、シリンダヘッドが組み付けられることにより生じるシリンダボアの変形を再現することができない。
すなわち、本発明によれば、シリンダブロックが有するシリンダボアに対する仕上げ加工において、シリンダボアに対して予め所定の変形を付与するに際し、既存の設備を利用することができ、製造コストの増加を招くスペースや設備や工程等の増加をともなうことなく、生産効率を高めることができる。
本発明に係るシリンダブロックの加工は、シリンダブロックが有するシリンダボアに対して行われるものであり、シリンダボアについて所定の真円度を得るための仕上げ加工である。そして、シリンダボアに対する仕上げ加工が行われるに際し、シリンダボアに対して所定の変形が付与されることで、シリンダボアが予め変形した状態となる。
一方で、シリンダボアは、シリンダブロックにシリンダヘッド等の部品が組み付けられることや、エンジンの実働時においてシリンダブロックが熱変形すること等の影響を受けて変形する。このようなシリンダボアの変形(ボア変形)は、シリンダブロックにおいてシリンダボアの周囲に設けられる、シリンダヘッドの締結部の配置に関係する。具体的には、シリンダボアの中心軸方向視での形状である円周形状において、シリンダヘッドの締結部に対応する位相の部分が相対的に内側に膨出するような変形が生じる。このようなボア変形は、シリンダボアの真円度の悪化を招く。
シリンダボア3は、シリンダブロック1において一または複数(図1では一つのみ図示)設けられる。例えば、シリンダブロック1が直列四気筒エンジンを構成する場合、シリンダボア3は、図1における奥行き方向(紙面に対して垂直方向)に一列に四個並んだ状態となるように設けられる。
なお、図示においては、便宜上、ヘッドボルト穴7が一か所とされているが、ヘッドボルト穴7は、シリンダブロック1の構成等に応じて所定の位置に複数設けられる。具体的には、シリンダブロック1が直列四気筒エンジンを構成する場合、例えば、各シリンダボア3の周囲において略等間隔で四個のヘッドボルト穴7が設けられるとともに、隣り合うシリンダボア3間においては二個のヘッドボルト穴7が共用されることにより、計十個のヘッドボルト穴7が設けられる。
図1に示すように、シリンダボア3に対する仕上げ加工には、仕上げ加工用の工具40を備える構成が用いられる。工具40は、ヘッド部41と、このヘッド部41を支持する軸部42とを有する。ヘッド部41は、全体として略円柱状に構成される。ヘッド部41は、砥石43を有する。砥石43は、ヘッド部41の外周面部に例えば周方向に等間隔を隔てた状態で環状に配設される。ヘッド部41は、その略円柱形状の軸心方向を軸方向として設けられる軸部42の一端部(下端部)に支持される。軸部42は、図示せぬ駆動手段によって軸方向の移動および軸心を回転軸とする回転が可能に設けられる。つまり、ヘッド部41は、軸部42を介して軸方向の運動および回転運動が可能な状態で設けられる。そして、シリンダボア3の仕上げ加工に際しては、ヘッド部41の回転運動等により、シリンダボア3を形成する壁面が砥石43によって研削加工される。
治具本体10は、本実施形態では、全体として厚板状の部材により構成され、その一側(下側)の板面により対向面13が形成される。対向面13は、少なくともヘッド取付面2と略同じ大きさ(面積)を有する。治具本体10は、対向面13と反対側(上側)の板面により形成される支持面10aに連結されるシリンダ機構14により、上下方向に移動可能に支持される。
このように、本実施形態では、治具本体10は、シリンダ機構14に移動可能に支持されることにより、対向面13をヘッド取付面2に向き合わせた状態で、対向面13がヘッド取付面2に対して近接離間するように設けられる。
つまり、図1に示すように、治具本体10の対向面13から垂下した状態で設けられる棒状の外形を有する部分が、ボルト部材16となる。ボルト部材16は、略円柱棒状の外径を有し、ヘッドボルト穴7に挿入可能な径を有する。
ボルト片部18は、棒状の外形を有するボルト部材16が、その軸方向を分割面の方向として分割された部分により形成される。つまり、ボルト部材16が、その軸方向にスリットが形成されること等によって複数に分割されることにより、その分割数に応じた数のボルト片部18が形成される。言い換えると、複数のボルト片部18により、棒状の外形を有するボルト部材16が構成される。なお、ボルト部材16の分割数、つまりボルト部材16が有するボルト片部18の数は特に限定されるものではない。
また、各ボルト片部18においては、その外側面に、ヘッドボルト穴7の雌ネジ部8に対して係合可能なネジ部19が形成される。こられボルト片部18が有するネジ部19が、ボルト部11が有する前記雄ネジ部15を構成する。
すなわち、棒状の外形を有するボルト部材16は、その軸心部分に穴部を有するように略筒状に構成され、その軸心部分の穴部が、複数のボルト片部18の内側面21によって形成されるテーパ穴部20となる。言い換えると、略筒状のボルト部材16が、前記のとおり複数の部分に分割されることにより形成される各ボルト片部18が、ボルト部材16の軸方向を長手方向とする略短冊状の部分となり、各ボルト片部18の内側面21によってテーパ穴部20が形成される。
なお、本実施形態においては、テーパ穴部20は、略円錐形状の一部形状を有することによって対向面13側にテーパするように形成されているが、これに限定されるものではない。テーパ穴部20が対向面13側にテーパするための形状としては、例えば、三角錐や四角錐等の多角錐形状の一部形状等であってもよい。この場合、ボルト片部18の内側面21は、本実施形態のように略円錐面の一部を形成する曲面ではなく、平面部分により形成されることとなる。
すなわち、ボルト部材16を構成する複数のボルト片部18は、前記のとおり一体に連結される基部側の部分を基点として、ボルト部材16の径方向外側に弾性変形し、放射状に拡がるように変位する。この各ボルト片部18の外側への変位により、ボルト部材16が拡径する。このような各ボルト片部18の外側への変位が、ボルト部材16がテーパ穴部20を介して楔作用を受けることにより生じる。ボルト部材16に対する楔作用は、テーパ穴部20を介してテーパ軸部材17により与えられる。
なお、本実施形態では、ボルト部材16を拡径させるためのボルト片部18の変位は、前記のとおりボルト片部18が有する弾性によるものであるが、これに限定されるものではない。例えば、ボルト片部18がその基部側の連結部において折曲げ可能に構成されたり、ボルト片部18が複数の部材によって折曲げ可能に構成されたりすることで、各ボルト片部18が、ボルト部材16の径方向外側に変位するような構成であってもよい。
テーパ軸部材17は、全体として棒状の部材であり、テーパ穴部20に挿入可能な径の部分を有する。テーパ面部22は、テーパ軸部材17のテーパ穴部20に対する挿入方向にテーパする(縮径される)。このテーパ面部22が、ボルト部材16のテーパ穴部20に対してテーパ嵌合した状態(楔係合した状態)となる。つまり、テーパ軸部材17がテーパ穴部20に挿入され、テーパ面部22が、テーパ穴部20を形成するボルト片部18の内側面21に接触した状態が、テーパ面部22がテーパ穴部20に対してテーパ嵌合した状態となる。したがって、テーパ面部22の形状は、テーパ穴部20が有する形状に対応したものとなる。つまり、本実施形態では、テーパ軸部材17においてテーパ面部22が形成される部分は、細長の略円錐形状の一部形状を有するテーパ穴部20に対応して、細長の略円錐形状の一部形状を有する部分となる。
テーパ軸部材17が付勢されるための押圧力は、油圧により生じる。すなわち、テーパ軸部材17における延設部29は、穴部30に対して上下方向に摺動可能に設けられる。穴部30内には、テーパ軸部材17に対して延設部29を介して油圧を作用させるための油圧室31が形成される。油圧室31には、治具本体10の内部に形成される油路32を介して油圧ポンプ等の油圧源(図示略)が接続される。このような構成において、前記油圧源から油路32を介して油圧室31に対して油圧が供給されることにより、テーパ軸部材17が、延設部29を介して所定の押圧力を受ける。これにより、テーパ軸部材17が、テーパ穴部20から突出する方向(下方向)に付勢される。
すなわち、テーパ軸部材17がテーパ穴部20に押し込まれることにより、テーパ穴部20およびこのテーパ穴部20に対してテーパ嵌合するテーパ面部22を介して、ボルト部材16に対して楔作用が与えられる。ボルト部材16が受ける楔作用は、テーパ軸部材17の、テーパ穴部20に対する挿入方向へのボルト部材16との間の相対的な移動により、テーパ穴部20を形成する内側面21を介してボルト片部18が外側に移動する作用となる。つまり、ボルト部材16が受ける楔作用は、ボルト片部18が、ボルト部材16の径方向外側に変形し、放射状に拡がるように変位する作用となる。このようなボルト片部18の拡がり作用が、ボルト部材16を拡径させ、つまりは、ボルト部11を拡径させる。
ピストン部材24が有する押圧面23は、本実施形態では、ヘッド取付面2におけるシリンダボア3の周縁部(以下「ボア周縁部」という。)を押圧するように形成される。つまり、押圧面23は、一つのシリンダボア3に対して、そのボア周縁部に接触するように略円環形状に形成される。これにともない、ピストン部材24は、略円筒状の部材として構成される。つまり、略円筒状のピストン部材24の一端面側に、押圧面23が形成される。
また、押圧面23の形状も、ヘッド取付面2における所定の面部に接触する形状であれば、本実施形態のようにボア周縁部に接触するような形状に限定されるものではない。つまり、押圧面23が接触することとなるヘッド取付面2における「所定の面部」とは、ヘッド取付面2において、シリンダボア3に対して変形が付与されるために押圧される部分となる。言い換えると、ヘッド取付面2における「所定の面部」は、シリンダボア3に対して付与される変形に対応する部分となる。さらに言うと、ヘッド取付面2における所定の面部の形状や大きさが調節されることにより、シリンダボア3に対して付与される変形が調節される。したがって、押圧面23の形状は、前記のとおりシリンダブロック1の構成等により適宜設定される。押圧面23の形状は、例えば、ボア周縁部を部分的に接触するような形状であったり、ヘッド取付面2におけるボア周縁部以外の部分に接触するような形状であったりしてもよい。
ピストン部材24が付勢されるための押圧力は、油圧により生じる。すなわち、ピストン部材24は、シリンダ凹部25に対して出没方向(上下方向)に摺動可能に設けられる。シリンダ凹部25内には、ピストン部材24に対して油圧を作用させるための油圧室26が形成される。油圧室26には、治具本体10の内部に形成される油路27を介して油圧ポンプ等の油圧源(図示略)が接続される。このような構成において、前記油圧源から油路27を介して油圧室26に対して油圧が供給されることにより、ピストン部材24が、所定の押圧力を受ける。これにより、ピストン部材24が、対向面13から突出する方向(下方向)に付勢される。
すなわち、ボア周縁部に対する押圧力が変化することにより、シリンダボア3に付与される変形の規模などが変化する。ボア周縁部が押圧される力は、ピストン部材24に作用する所定の押圧力に対応する。したがって、ピストン部材24に作用する所定の押圧力は、シリンダボア3に付与される変形に応じて適宜設定され、この所定の押圧力が調節されることにより、シリンダボア3に付与される変形が調節される。
すなわち、前述したように、シリンダボア3に対する仕上げ加工には、ヘッド部41と軸部42とを有する工具40を備える構成が用いられる。工具40におけるヘッド部41の回転運動等に際しては、工具40を案内するためのガイド体が用いられる。つまり、ガイド体は、工具40のヘッド部41のシリンダボア3に対する位置決め等を行うための構成となる。そこで、シリンダボア3に対する仕上げ加工に際し、工具40を案内するためのガイド体として、治具本体10が用いられる。
このように、ピストン部材24は、治具本体10に形成されるガイド孔28によってガイドされる工具40に対して干渉しないように設けられる。つまりは、治具本体10において、ピストン部材24を保持するためのシリンダ凹部25と、工具40を案内するためのガイド孔28とは、互いに干渉しないように設けられる。
一方、押圧部12においては、この押圧部12により、押圧面23がヘッド取付面2における所定の面部(ボア周縁部)に接触した状態でボルト部11の治具本体10に対する突出方向(下方向)に所定の押圧力で付勢されことで、ボア周縁部が押圧された状態となる。
ボルト部11が、ヘッドボルト穴7に挿入された状態では、前述したように、ピストン部材24の押圧面23は、ヘッド取付面2における所定の面部、つまり本実施形態ではボア周縁部に対応した状態(対向した状態)となる。
前記のとおりテーパ軸部材17の先端がボルト穴底部7aに当接した状態から、治具本体10がさらにヘッド取付面2に対して近接する方向に移動する。これにより、ボルト部11が、その先端側にボルト穴底部7aから押圧作用を受ける。つまり、テーパ軸部材17が、その先端側からボルト穴底部7aによって押圧される状態となり、テーパ穴部20に対して押し込まれる。なお、ここでの治具本体10の移動には、シリンダ機構14が用いられる。
このように、ボルト部材16が拡径することにより、ボルト部11が有する雄ネジ部15(ボルト片部18の外側面に形成されるネジ部19)が、ヘッドボルト穴7の雌ネジ部8に係合した状態となる。つまり、ボルト部材16が、ヘッドボルト穴7に対して用いられる通常のヘッドボルトと同様の外形形状(ヘッドボルトの外形に沿う形状)となり、ヘッドボルト穴7の雌ネジ部8に係合した状態となる。
また、同じくシリンダブロック1の変形外力付与状態において、係合状態となるボルト部11は、ボア周縁部がピストン部材24の押圧面23によって押圧されることの反作用により、治具本体10を介して、ヘッドボルト穴7から抜ける方向(上方向)に引っ張られる。つまりここでは、治具本体10の移動はシリンダ機構14には制限されず、ピストン部材24がボア周縁部を押圧することの反作用により、治具本体10がヘッド取付面2から離間する方向(上方向)の力が、治具本体10に対して作用する。この治具本体10が受ける作用により、係合状態のボルト部11が引っ張られる。これは、ダミーヘッドが用いられる場合における、ヘッドボルト穴7に対してヘッドボルトによる締結軸力(引張り力)が作用することに対応する。
すなわち、図2(c)に示すように、シリンダボア3の仕上げ加工用の工具40が、ガイド体としての治具本体10により案内され、工具40のヘッド部41が、シリンダボア3に作用する。つまり、工具40のヘッド部41が、治具本体10のガイド孔28およびピストン部材24の内周側を介してシリンダボア3内に挿入され、シリンダボア3を形成する壁面が砥石43によって研削加工される。
シリンダブロック1の変形外力付与状態の解除に際しては、ボア周縁部を押圧するピストン部材24を所定の押圧力で付勢する油圧が解放される。これにより、係合状態のボルト部11が治具本体10を介して引っ張られる力が除去される。また、ボルト部11の係合状態の解除は、テーパ軸部材17が、テーパ穴部20から突出する方向に所定の押圧力で付勢されることにより行われる。具体的には次のとおりである。
以上のようにして、加工用治具によるシリンダブロック1に対する変形外力の付与、シリンダボア3に対する仕上げ加工、およびシリンダブロック1の変形外力付与状態の解除が行われる。
このような現象は、本実施形態に係るシリンダブロック1のように、シリンダボア3の周囲に形成されるウォータジャケット6の外側においてヘッドボルト穴7が形成される構成において見られる現象である。つまり、ヘッドボルト穴7における雌ネジ部8の範囲が、ウォータジャケット6の底の部分(下端部分)から遠ざかる側に広くなる程、ヘッドボルト締結によるボア変形は小さくなる。
一方で、前述のような現象は、逆にとらえると、ヘッドボルト穴7においてボルト穴底部7a側がウォータジャケット6の底の部分に近い構成のシリンダブロック1においては、ヘッドボルトのヘッドボルト穴7に対する係合部分が、ウォータジャケット6の底の部分に近付く程、ヘッドボルト締結によるボア変形は大きくなることとなる。
すなわち、前述のように、ヘッドボルト穴7における雌ネジ部8の範囲がヘッドボルトの根元側に広くなる程、シリンダヘッド組付け時のボア変形が小さくなるという現象を逆手に取り、雌ネジ部8におけるボルト穴底部7a側の部分のみに対してボルト部11を係合させる。
すなわち、雄ネジ部15が雌ネジ部8に係合するための楔作用を生じさせる、ボルト部材16のテーパ穴部20およびこれにテーパ嵌合するテーパ軸部材17におけるテーパ面部22のテーパ形状(テーパのプロファイル)が、雌ネジ部8の底側部分に対して雄ネジ部15が重点的に係合するように設定される。
これにより、テーパ穴部20に対してテーパ面部22を介してテーパ嵌合した状態のテーパ軸部材17が、ボルト部材16に対してテーパ穴部20に挿入される方向に相対的に移動する(差し込まれる)ことによるボルト部11の(ボルト部材16の)拡径度合いが大きくなり、雌ネジ部8の底側部分における雄ネジ部15から受ける圧力(締結力)が大きくなる。結果として、雄ネジ部15が雌ネジ部8の底側部分に対して重点的に係合することとなる。
このようなテーパ軸部材17が用いられることによっても、前記と同様に、テーパ嵌合した状態のテーパ軸部材17が、ボルト部材16に対して差し込まれることによるボルト部11の(ボルト部材16の)拡径度合いが大きくなり、雄ネジ部15が雌ネジ部8の底側部分に対して重点的に係合することとなる。
このように、雌ネジ部8の底側部分のみに雄ネジ部15が係合することも、雄ネジ部15が雌ネジ部8の底側部分に対して重点的に係合することに含まれる。
すなわち、係合状態のボルト部11が治具本体10を介して引っ張られた状態において、雌ネジ部8の開口側(上側)の部分に対しては、テーパ軸部材17の基部側の部分の縮径等によるテーパ孔部20に対する逃げ(縮径等による)により一定以上の面圧は加わらなくなる。同じくボルト部11が引っ張られた状態において、雌ネジ部8の底側部分に対しては、係合状態のボルト部11が引っ張られることにより作用する力の分担が増加する。つまり、係合状態のボルト部11が引っ張られることにより生じる、ヘッドボルトの締結軸力(引張り力)に対応する力が、雌ネジ部8の底側部分に対して重点的に作用することとなる。
言い換えると、設備の増加等をともなうことなく、シリンダヘッドの組付け時におけるボア変形に対して変形の規模が大きいエンジンの実働時におけるボア変形を容易に再現することが可能となる。
2 ヘッド取付面(シリンダヘッド取付面)
3 シリンダボア
7 ヘッドボルト穴(ボルト穴)
7a ボルト穴底部(底部)
8 雌ネジ部
10 治具本体(ガイド体)
11 ボルト部
12 押圧部
13 対向面
15 雄ネジ部
16 ボルト部材
17 テーパ軸部材
18 ボルト片部
19 ネジ部
20 テーパ穴部
21 内側面
22 テーパ面部
23 押圧面
24 ピストン部材
29 延設部
30 穴部
40 工具
Claims (5)
- シリンダブロックが有するシリンダボアに対する仕上げ加工を行う際に用いられるシリンダブロックの加工用治具であって、
シリンダブロックのシリンダヘッド取付面と向き合う対向面を有し、該対向面を前記シリンダヘッド取付面に向き合わせた状態で、前記対向面と前記シリンダヘッド取付面とが相対的に近接離間するように設けられる治具本体と、
前記シリンダヘッド取付面に開口するシリンダヘッド取付用のボルト穴に対して挿入可能な棒状の外形を有する部分として前記対向面に突設され、外側面に前記ボルト穴の雌ネジ部に対して係合可能なネジ部が形成された複数のボルト片部を有し、これらボルト片部の内側面によって、前記対向面側にテーパするとともに該対向面側と反対側に開口するテーパ穴部を形成し、該テーパ穴部を介して受ける楔作用により前記複数のボルト片部が変位することで拡径するボルト部材と、
前記テーパ穴部から突出した状態で該テーパ穴部に挿入され、該挿入方向の前記ボルト部材との間の相対的な移動により前記楔作用を与えるテーパ面部を有するテーパ軸部材と、
前記対向面に対して突出する方向に所定の押圧力で付勢可能に設けられ、前記シリンダヘッド取付面における所定の面部に接触する押圧面を有するピストン部材と、
を備えることを特徴とするシリンダブロックの加工用治具。 - 前記テーパ軸部材は、
前記テーパ穴部に対する挿入方向の先端側に延設部を有し、
該延設部が、前記治具本体に形成される穴部に対して挿入された状態で、前記テーパ穴部から突出する方向に所定の押圧力で付勢可能に設けられることを特徴とする請求項1に記載のシリンダブロックの加工用治具。 - 前記ネジ部は、前記雌ネジ部の、前記ボルト穴の底部側の部分に対して重点的に係合することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリンダブロックの加工用治具。
- シリンダブロックが有するシリンダボアに対する仕上げ加工を行う際に用いるシリンダブロックの加工方法であって、
シリンダブロックのシリンダヘッド取付面に対して相対的に近接離間するように設けられ、前記仕上げ加工用の工具を案内するガイド体に、
前記シリンダヘッド取付面に開口するシリンダヘッド取付用のボルト穴に対して挿入可能に構成されるとともに、前記ボルト穴の雌ネジ部に対して係合可能な雄ネジ部を有し、先端側からの押圧作用により拡径可能に構成されるボルト部と、
前記シリンダヘッド取付面における所定の面部に接触可能な押圧面を有し、該押圧面が前記ボルト部の前記ガイド体からの突出方向と同じ方向に所定の押圧力で付勢可能となるように構成される押圧部と、
を設け、
前記ボルト部を、前記ボルト穴に挿入した状態で、前記ガイド体を、前記シリンダヘッド取付面に対して近接させることにより、前記ボルト部の先端側を、前記ボルト穴の底部に対して当接させることで、前記ボルト部に対して前記押圧作用を与え、前記ボルト部を拡径させることにより、前記雄ネジ部を前記雌ネジ部に対して係合させた状態とするとともに、
前記押圧部により、前記押圧面を前記所定の面部に接触させた状態で前記方向に所定の押圧力で付勢することで、前記所定の面部を押圧した状態で、
前記仕上げ加工を行うことを特徴とするシリンダブロックの加工方法。 - 前記雄ネジ部を、前記雌ネジ部の、前記ボルト穴の底部側の部分に対して重点的に係合させることを特徴とする請求項4に記載のシリンダブロックの加工方法。
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