JP2008235258A - リチウムイオン二次電池用負極材、負極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極材、負極及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウムと合金を形成する金属を含む負極材であって、このような負極材を用いて作製された負極を備えるリチウムイオン二次電池の充放電サイクル特性を向上させることが可能なリチウムイオン二次電池用負極材、当該負極材を用いてなるリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくともリチウムと合金形成可能な金属Maの多孔質粒子、黒鉛粒子及び炭素からなり、比表面積が10m/g以下であるリチウムイオン二次電池用負極材もしくは少なくともリチウムと合金形成可能な金属Maの多孔質粒子及び黒鉛粒子からなる複合材の表面が炭素で被覆されている、比表面積が10m/g以下であるリチウムイオン二次電池用負極材、当該負極材を用いてなるリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池を提供する
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極材、当該負極材を用いてなるリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池に関する。
携帯電子機器の小型軽量化、多機能化に伴い、高エネルギー密度を有する電池、特に、二次電池に対する要求が高くなっている。リチウムイオン二次電池は、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池と比較して高電圧、高容量を有し、しかも軽量であるため、上記携帯電子機器に多く使用されるようになってきている。
リチウムイオン二次電池の負極活物質には、現在、黒鉛質負極材が一般的に使用されている。黒鉛質負極材の放電容量は、せいぜい360mAh/gであり、より高い放電容量を有する負極材が求められている。
高い放電容量を有する負極材として、Si、Sn、Al、Pb等のリチウムと合金を形成する金属が検討されており、例えば、Siの場合には4000mAh/gという非常に大きな放電容量が得られる。しかし、充放電(リチウムとの合金形成、分解)時に大きな体積変化を伴うため、粒子が崩壊・微粒子化し、その結果として充放電容量が大きく低下するという問題がある。
この問題を解決する方策として、銅集電体表面にメッキ法によりSn薄膜を形成した電極(例えば、特許文献1参照)、銅集電体表面にスパッタ法によりSi薄膜を形成した電極が提案されている(例えば、特許文献2参照)。これらの方法によりサイクル特性はかなり改善されるが、前者ではSn層を厚膜化した場合にサイクル劣化が大きくなる、入出力特性が低いという課題が依然としてあり、後者は高価な設備が必要という問題がある。
また、負極材として、金属Si微粒子、炭素及び黒鉛粒子を一体化した複合材粒子を用いる手法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。金属Siを微粒子とすることにより、充放電時の粒子の崩壊を抑制し、さらに炭素、黒鉛粒子と一体化することによりリチウムイオン、電子の移動経路を確保し、結果としてサイクル劣化を抑制するものである。本手法でもサイクル劣化はかなり改善されるが、充放電サイクルにおいて複合材中の金属Si微粒子が膨張・収縮し、その結果として複合材粒子が膨張、さらに崩壊するため、長期的な信頼性に欠けるという課題がある。
また、負極材として、金属Siの酸化物、炭素及び黒鉛粒子を一体化した複合材を用いる手法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。負極材としてこのような複合材を用いた場合には、金属Siを用いる前述の複合材と比較して良好なサイクル特性を示すが、不可逆容量が大きいという課題がある。この大きな不可逆容量はそれぞれの酸化物が金属Siに還元されるために生じるものと考えられている。
特開2003−157833号公報 特開2001−210319号公報 特開2000−268824号公報 特開2000−203818号公報
本発明は、リチウムと合金を形成する金属を含む負極材であって、このような負極材を用いて作製された負極を備えるリチウムイオン二次電池の充放電サイクル特性を向上させることが可能なリチウムイオン二次電池用負極材、当該負極材を用いてなるリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とするものである。
すなわち、本発明は、以下<1>〜<5>に記載の事項をその特徴とするものである。
<1>少なくともリチウムと合金形成可能な金属Maの多孔質粒子、黒鉛粒子及び炭素からなり、比表面積が10m/g以下であるリチウムイオン二次電池用負極材。
<2>少なくともリチウムと合金形成可能な金属Maの多孔質粒子及び黒鉛粒子からなる複合材の表面が炭素で被覆されている、比表面積が10m/g以下であるリチウムイオン二次電池用負極材。
<3>前記金属MaがSiである上記<1>又は<2>に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
<4>上記<1>〜<3>のいずれか一つに記載のリチウムイオン二次電池用負極材を用いてなるリチウムイオン二次電池用負極。
<5>上記<4>に記載のリチウムイオン二次電池用負極を用いてなるリチウムイオン二次電池。
本発明の負極材によれば、高容量で且つ不可逆容量が小さいことはもちろんのこと、充放電サイクル特性にも優れるリチウムイオン二次電池を作製することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、少なくともリチウムと合金形成可能な金属Maの多孔質粒子、黒鉛粒子、炭素からなることを特徴とする。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、少なくともリチウムと合金形成可能な金属Maの多孔質粒子と黒鉛粒子からなる複合材(以下、多孔質複合材ということもある)の表面が炭素で被覆されていることを特徴とする。
このような本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、少なくともリチウムと合金形成可能な金属Maが多孔質構造を有しているため、充放電時の体積膨張収縮が多孔質粒子中の空隙によって吸収、緩和され、その結果、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が向上していると考えられる。また、黒鉛及び炭素は導電性が高いため、充放電の際の電子の授受が速やかに行われるようになり、これもまた、リチウムイオン二次電池のサイクル特性の向上に寄与しているものと考えられる。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、その比表面積が10m/g以下であることを要件とする。比表面積が10m/gを超えると、初回充放電効率が大きく低下する傾向があるので好ましくない。なお、比表面積は、−197℃での窒素吸着量を測定し、BET法によって算出し求めることができる。
上記のような本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、例えば、以下(1)〜(4)の工程によって作製することができる。
(1)少なくともリチウムと合金形成可能な金属Maの酸化物及び金属Maと異なる種類の金属Mbを不活性雰囲気中でメカニカルアロイング処理して金属Ma及び金属Mbの酸化物からなる複合粒子を作製する工程。
(2)複合粒子と黒鉛粒子を混合して、金属Ma、金属Mbの酸化物及び黒鉛粒子からなる複合材を作製する工程。
(3)複合材を酸溶液で処理して金属Mbの酸化物を除去し、金属Maの多孔質粒子及び黒鉛粒子からなる多孔質複合材を作製する工程。
(4)多孔質複合材の表面を炭素で被覆する工程。
上記工程(1)では、メカニカルアロイング処理によって、金属Maの酸化物が金属Mbによって還元され金属Maとなり、金属Mbが酸化物となる。ここで得られる金属Maと金属Mbの酸化物からなる複合粒子において、広角X線回折の回折線から求められる金属Maの結晶子サイズは100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。通常は、結晶子サイズが10nm程度のものが得られる。
上記メカニカルアロイング処理には、強い圧縮、せん断力が発生する公知の設備を使用することができ、例えば、遊星ボールミル、振動ボールミル、ロッドミル、ボールミル等を用いることが出来る。また、メカニカルアロイング処理時の環境(処理容器内)の雰囲気は、金属Mb及び生成する金属Maの酸化を抑制するため、不活性雰囲気とすることが好ましい。不活性雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を使用することができる。また、メカニカルアロイング処理の時間は、処理によって生じる反応の進み具合を観察することによって決定されるべきものであり、特に限定されないが、1時間〜数十時間の範囲である。また、メカニカルアロイング処理における金属Maの酸化物に対する金属Mbの配合比率(金属Mb/金属Maの酸化物)は、金属Maの酸化物をすべて還元するのに必要な量(化学量論比)又はそれよりも若干過剰とすることが好ましく、具体的には、1.0〜1.6の範囲とすることが好ましい。金属Mbの配合比率が化学量論比よりも少ない場合、得られる複合材中に金属Maの酸化物が残留することになり、好ましくない。
また、上記金属Maとしては、Si、Sn、Al、Pb等のリチウムと合金形成可能な金属であればよく、特に限定されないが、高い放電容量が得られることから、Siが好ましく、また、金属Maの酸化物としては、SiOが好ましい。
また、上記金属Mbとしては、上記金属Maと異なる種類の金属で且つ上記金属Maの酸化物を還元しうる金属であればよく、特に限定されないが、例えば、Al、Mgまたはこれら両者を用いることが好ましい。
また、上記工程(2)では、上記工程(1)で作製された金属Maと金属Mbの酸化物からなる複合粒子と黒鉛粒子を混合して、金属Ma、金属Mbの酸化物及び黒鉛粒子からなる複合材を作製する。この混合では、金属Ma、金属Mbの酸化物からなる複合粒子と黒鉛粒子との均一な混合・複合化を実現するため、強い圧縮、せん断力を発生する設備を用いることが好ましく、例えば、遊星ボールミル、振動ボールミル、ロッドミル、ボールミル等を用いることが出来る。
上記工程(2)における混合の際の処理雰囲気としては金属Maの酸化を抑制するという観点から不活性雰囲気であることが好ましく、窒素、アルゴン、ヘリウム等を用いることが好ましい。
また、上記黒鉛粒子としては、導電性が高い高結晶性のものが好ましく、天然黒鉛、人造黒鉛のいずれも使用することができ、その粒子径は10μm以下のものを使用することが好ましい。また、金属Maと金属Mbの酸化物からなる複合粒子に対する黒鉛粒子の配合比率(質量比)は、0.3〜1.0であることが好ましい。
また、上記工程(3)では、上記で作製された金属Ma、金属Mbの酸化物及び黒鉛粒子からなる複合材を酸溶液で処理して、金属Maの多孔質粒子と黒鉛粒子からなる多孔質複合材を作製する。つまり、金属Maと金属Mbの酸化物は非常に高い均一性で複合化されており、このような複合粒子と黒鉛粒子もまた複合化(一体化)されているため、酸溶液によって金属Mbの酸化物が除去された複合材は、小さな細孔を多数有する金属Maの粒子と黒鉛粒子からなる多孔質複合材となる。
上記酸溶液処理による多孔質化は、処理前後での比表面積を測定することによって確認することができる。つまり、酸溶液による処理前の比表面積は一般に約10m/gであるが、酸溶液による処理後には約100m/g程度にまで著しく表面積が増加する。
上記酸溶液としては、金属Mbの酸化物を溶解できるもので、且つ処理中での金属Maの酸化をできるだけ抑制しうる非酸化性のものを用いることが望ましく、塩酸水溶液を好ましく用いることができる。酸溶液による処理は攪拌しながら行うことが好ましい。また、酸溶液による処理時間は金属Mbの酸化物の残留度合いより決定されるもので、金属Mbの酸化物の残留が1%以下になるまで行うことが好ましい。なお、金属Mbの酸化物の残留量は、公知の広角X線回折によるAl回折線強度、蛍光X線分析、化学分析等によって計測することができる。
また、金属Mbの酸化物の溶解が終了した後は、ろ過、遠心分離等の公知の手法によって多孔質複合材を分離し、残留した酸溶液を洗浄・除去し、次いで乾燥することが好ましい。なお、上記多孔質複合材は、金属Maの一部が上記酸溶液による処理の際に酸化され酸化物となっているが、これは本発明における金属Maの多孔質粒子と黒鉛粒子からなる多孔質複合材という基本構成を阻害するものではない。
また、上記工程(4)では、上記多孔質複合材の表面を炭素で被覆し、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材とする。この炭素による被覆には公知の手法を用いることができ、例えば、上記多孔質複合材表面に、加熱によって炭素化する有機化合物(炭素前駆体)を被覆し、不活性又は還元性雰囲気中で加熱・炭素化する手法を用いることができる。ただし、上記被覆炭素の前駆体として用いる有機化合物によっては、得られる負極材の比表面積が大きくなり、本発明の負極材の比表面積の好ましい範囲(10m/g以下)を超える場合がある。
上記有機化合物を炭化する温度としては、使用する有機化合物により適宜決定すればよく、特に限定されないが、金属MaとしてSiを用いた場合、Siと炭素との反応が生じると炭化珪素のような炭化金属化合物が生成し、放電容量低下の原因となるため、過度に高温とすることは不適であり、また低い場合には初回充放電効率低下の原因となるので好ましくない。したがって、炭化する温度は、800〜1000℃の範囲とすることが好ましい。また、上記有機化合物としては、特に限定されないが、例えば、石油、石炭系のピッチ、合成ピッチ、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等を用いることが好ましい。
なお、比表面積を10m/gとするには、上記有機化合物の炭化率、炭化温度、炭化温度履歴、有機化合物の構造等を適宜調整することが挙げられる。具体的には、例えば、負極材の平均粒子径を大きくする、負極材への熱処理温度を高くする、負極材の表面を改質すること等で値が小さくなる傾向がある。
また、多孔質複合材の表面を炭素で被覆する手法として、上記の他に、エタン、プロパン、トルエン等の有機ガスを高温下で導入し、多孔質複合材表面に炭素として析出させる気相法なども採用できる。
また、多孔質複合材表面に被覆する炭素の量は、当該多孔質複合材の質量に対し、質量比で0.4〜1.2とすることが好ましい。この範囲とすることにより、電解液の分解を制御することができることから安定性が向上し、初回充放電効率、サイクル特性等が向上する。炭素の量が多孔質複合材の質量に対し1.2を超える場合は、放電容量や初回充1放電時の不可逆容量が大きくなる傾向がある。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、上記本発明のリチウムイオン二次電池用負極材を用いてなるものであり、例えば、本発明のリチウム二次電池用負極材、バインダおよび必要に応じて添加される導電助材等の添加剤を溶剤などとともに撹拌機、ボールミル、スーパーサンドミル、加圧ニーダー等により混練し、粘度を調整してペースト状の負極材スラリーとした後、これを例えば、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法など公知の方法により集電体に塗布、乾燥し、必要に応じて、ロールプレス等の成形法により圧縮成形することで形成することができる。また、ペースト状の負極材スラリーをシート状、ペレット状等に成形し、これをロールプレス等の成形法により集電体と一体化することで形成することもできる。また、負極材として、本発明のリチウム二次電池用負極材以外に、公知の黒鉛質リチウムイオン二次電池用負極材を添加してもよい。
上記バインダとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸、イオン導電性の大きな高分子化合物などが使用できる。イオン導電率の大きな高分子化合物としては、例えば、ポリ弗化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル等が使用できる。また、上記バインダは、本発明の負極材とバインダの総量100質量部に対して1〜20質量部配合することが好ましい。
また、バインダとして、特定の電解液中での膨潤度が5%以下の樹脂からなるバインダを用いることが好ましい。なお、特定電解液中での樹脂の膨潤度は、当該樹脂からなるバインダを含む溶液をポリフッ化エチレン系繊維コーティングしたステンレス板上に塗布、80℃で1時間、乾燥し、形成されたバインダ樹脂フィルムを剥離し、120℃、真空中、5時間乾燥した後、当該バインダ樹脂フィルムを電解液(電解質:LiPF、溶媒:エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)/ジエチルカーボネート(DEC)=1/1/1(質量比)の混合溶媒、濃度1M)に50℃で24時間浸漬し、電解液浸漬前後での質量変化より算出される。上記膨潤度が5%を超えるような大きな樹脂からなるバインダを用いた場合、電池内でバインダが膨潤し、結着力が低下し、負極材の充放電時の膨張収縮によって負極材粒子間、負極材/集電体間の接合が破壊され、容量低下が生じ易くなる傾向にある。特定の電解液中での膨潤度が5%以下の樹脂からなるバインダは、例えば、LSR7(日立化成工業株式会社製、商品名)、LA132(Chengdu Indigo Power Sources Co., LtD製、商品名)として入手可能である。
また、上記溶剤としては、通常、バインダを溶解又は分散可能な溶媒が使用され、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒を例示することができる。溶剤の使用量は、特に制限されず、例えば、本発明の負極材100質量部に対して、通常、60〜150質量部程度、好ましくは60〜100質量部程度である。
また、上記導電助剤は、電極としての導電性を向上させるための添加剤であり、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック)、グラファイトあるいは導電性を示す酸化物や窒化物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。また、上記導電助剤以外の添加剤として、負極材スラリーの増粘剤を用いることもできる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼインなどが挙げられる。このような添加剤の使用量は、二次電池の特性を低下させない範囲であれば特に限定されないが、本発明の負極材と添加剤の総量に対して1〜10質量%程度が好ましく、1〜5質量%程度がより好ましい。
また、上記集電体としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅等の箔、メッシュなど、公知のものを使用することができる。また、上記負極材ペーストの集電体への塗布量は、特に制限はないが、5〜15mg/cm程度が好ましく、7〜13mg/cm程度がより好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、例えば、本発明のリチウムイオン二次電池用負極と正極とをセパレータを介して対向して配置し、電解液を注入することにより得ることができる。また、この他にも、通常当該分野において使用されるガスケット、封口板、ケースなどをさらに備えていてもよい。
上記正極は、負極と同様にして、集電体表面上に正極活物質や導電剤等を含む正極材層を形成することで得ることができる。
上記正極活物質としては、特に制限はなく、例えば、LiNiO、LiCoO、LiMn、LiMnO、LiCo0.33Ni0.33Mn0.33等のリチウム複合酸化物やCr、Cr、V、V13、VO、MnO、TiO、MoV、TiS、V、VS、MoS、MoS,ポリアニリン、ポリピロール等の導電性ポリマー、多孔質炭素等などを単独或いは混合して使用することができる。また、上記導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックなどを例示できる。
上記電解液としては、例えば、LiClO、LiPF、LiAsF、LiBF、LiClF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO、LiI、LiCl、LiB(C、CHSOLi、LiSOCF等の溶媒和しにくいアニオンを生成するリチウム塩(電解質)を、例えば、カーボネート類、ラクトン類、鎖状エーテル類、環状エーテル類、スルホラン類、スルホキシド類、ニトリル類、アミド類、ポリオキシアルキレングリコール類等の非水系溶媒に溶解した、いわゆる有機電解液を使用する。
上記非水系溶媒としては、具体的には、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、シクロペンタノン、スルホラン、メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、3−メチル−1,3−オキサゾリジン−2―オン、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキソラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコール、酢酸メチル、酢酸エチル等を用いることができ、これら溶媒は、単独でも2種以上を混合したものであってもよい。
また、上記電解質の濃度は、特に限定されないが、電解液1Lに対して電解質0.3〜5モルであることが好ましく、0.5〜3モルであることがより好ましく、0.8〜1.5モルであることが特に好ましい。
上記セパレータとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、多孔質フィルム又はそれらを組み合わせたものを使用することができる。なお、作製する二次電池の正極と負極が使用中も直接接触しない構造にした場合は、セパレータを使用しなくとも良い。
また、本発明のリチウムイオン二次電池の構造は、特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレータとを、扁平渦巻状に巻回して巻回式極板群としたり、これらを平板状として積層して積層式極板群とし、これら極板群を外装体中に封入した構造とするのが一般的である。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、ペーパー型、ボタン型、コイン型、積層型、角型、円筒型など任意の形態とすることができる。
また、リチウム固体二次電池、ポリマーリチウム二次電池を作製する場合においては、公知の正極、ポリマー電解質、固体電解質と共に、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材又は負極を用いることにより、安全性が高く、高容量の二次電池を作製することができる。
以下、本発明を実施例にてより具体的に説明するが、本発明はこれら記載に限定されるものではない。
実施例1
<負極材の作製>
(Si/Al複合粒子の作製)
遊星ボールミル{Planetary Mono Mill P−6(Fritsch Germany)、容器:ステンレス製、容積80ml、ステンレス製ボール(直径10mm、15個)}の容器にSiO(Aldrich社製、325mesh以下)1g、Al(99.99%、200mesh以下)0.6gを投入した。
容器内をアルゴンガスでパージした後、密閉し、400min−1で15時間、メカニカルアロイング処理を行い、Si/Al複合粒子を得た。得られた処理物の広角X線回折図には結晶子サイズ30μmのSiと未反応のAlが観察された。
(Si/Al/黒鉛複合材の作製)
上記で得たSi/Al複合粒子0.5gと黒鉛粒子(Aldrich社製、1〜2μm)0.3gを上記で使用したものと同じ遊星ボールミルの容器に投入し、容器内をアルゴンガスでパージした後、密閉し、450min−1で20分間、混合してSi/Al/黒鉛複合材を得た。
(多孔質Si/黒鉛複合材の作製)
上記で得たSi/Al/黒鉛複合材を4Mの塩酸水溶液30mlに攪拌しながらゆっくりと添加し、2時間攪拌を行い、Al及び未反応のAlを溶解した。次いで、ろ過、水洗し、120℃で2時間、減圧乾燥して多孔質Si/黒鉛複合材を得た。なお、多孔質Si/黒鉛複合材の比表面積は105m/gであり、酸処理前の比表面積2.8m/gより増加していることから、多孔質化されていることが確認された。
(リチウムイオン二次電池用負極材(炭素被覆・多孔質Si/黒鉛複合材)の作製)
上記で得た多孔質Si/黒鉛複合材0.25gをポリ塩化ビニル溶液(テトラヒドロフラン30mlに1.17gのポリ塩化ビニルを溶解)に添加し、超音波を印加しながらよく混合した後、テトラヒドロフランを加熱・蒸発させ、ポリ塩化ビニルで被覆された多孔質Si/黒鉛複合材を得た。
ついで、上記で得た、ポリ塩化ビニルで被覆された多孔質Si/黒鉛複合材を、Ar/H(H濃度:4%)フロー中で100℃/hで900℃まで昇温し、2時間保持した後、冷却して炭素被覆・多孔質Si/黒鉛複合材を得た。ポリ塩化ビニルの残炭率を17%としたときの、複合材中の組成比はSi/黒鉛/炭素=2/3/4であった。
得られた炭素被覆・多孔質Si/黒鉛複合材を粉砕し、篩で200mesh以下、300mesh以上の粉末を分級し、負極材試料とした。
<充放電特性評価>
得られた負極材とアセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデン(呉羽化学、#1120、10%N−メチル−2−ピロリドン溶液)を80:10:10(質量比)で秤量、混合し、銅箔上に乾燥後の厚さが40μmとなるように塗布した後、120℃で3時間、真空乾燥した。乾燥後、直径15mmの電極を打ち抜き、充放電特性評価に使用した。
コインセル(CR2016)を用い、上記で作製した試料電極、対極として金属リチウム、セパレータとしてポリエチレン微多孔膜(セルガード社製、商品名:セルガード2700)、電解液として、エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)=1/1(質量比)の混合溶媒に、濃度が1MとなるようにLiPFを添加した電解液を用い、アルゴングローブボックス内でセルを組み立てた。このセルについて、電流密度0.2mA/cm、カットオフ電圧を1.4V/0.01Vとして充放電を行った。結果を表1に示す。
比較例1
多孔質Si/黒鉛複合材の代わりに、下記のように作製したSi/黒鉛複合材に対して炭素被覆を行った以外は、実施例1と同様にして、負極材試料およびセルを作製し、さらに当該セルについて充放電特性評価を行った。結果を表1に示す。
(Si/黒鉛複合材の作製)
Si粒子(粒子径<100nm)1gと黒鉛粒子(Aldrich社製、1〜2μm)1.5gを上記で使用したものと同じ遊星ボールミルの容器に投入し、容器内をアルゴンガスでパージした後、密閉し、450min−1で20分間、混合してSi/黒鉛複合材を得た。
比較例2
Si/Al/黒鉛複合材に対して塩酸水溶液による処理を施さずに炭素被覆した以外は、実施例1と同様にして、負極材試料およびセルを作製し、さらに当該セルについて充放電特性評価を行った。結果を表1に示す。
比較例3
炭素被覆用樹脂として、ポリ塩化ビニルの代わりにポリアクリロニトリルを用いた以外は、実施例1と同様にして、負極材試料およびセルを作製し、さらに当該セルについて充放電特性評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2008235258
表1から、実施例1のリチウムイオン二次電池用負極材は非常に良好なサイクル特性を示すことが分かる。

Claims (5)

  1. 少なくともリチウムと合金形成可能な金属Maの多孔質粒子、黒鉛粒子及び炭素からなり、比表面積が10m/g以下であるリチウムイオン二次電池用負極材。
  2. 少なくともリチウムと合金形成可能な金属Maの多孔質粒子及び黒鉛粒子からなる複合材の表面が炭素で被覆されている、比表面積が10m/g以下であるリチウムイオン二次電池用負極材。
  3. 前記金属MaがSiである請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極材を用いてなるリチウムイオン二次電池用負極。
  5. 請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用負極を用いてなるリチウムイオン二次電池。
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