JP2008230116A - 液滴吐出ヘッド及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ノズルの高密度化を可能にし、かつノズル間の圧力干渉を防止することができる液滴吐出ヘッド及びその製造方法を得る。
【解決手段】底壁が振動板13を形成し、液滴を溜めておく吐出室11となる吐出室11用凹部11aが複数形成され且つ各吐出室11に共通のリザーバ12となる第1リザーバ凹部12aが形成されたキャビティ基板1と、振動板13に対向し、振動板13を駆動する個別電極22が形成された電極ガラス基板2と、吐出室11内の液滴を吐出するノズル孔11が複数形成されたノズル基板3とを備え、ノズル基板3と電極ガラス基板2との間にキャビティ基板1が挟んで接合された液滴吐出ヘッドであって、キャビティ基板1の第1リザーバ凹部12aと反対側の部分にはザグリが形成され、第1リザーバ凹部12aの底面が圧力を緩衝するダイヤフラム15となっている。
【選択図】図1

Description

本発明はインクやその他の液体を吐出する液滴吐出装置に用いられる液滴吐出ヘッド及びその製造方法に関する。
液滴を吐出するための液滴吐出ヘッドとして、例えばインクジェット記録装置に搭載されるインクジェットヘッドが知られている。インクジェットヘッドとして、従来より、底壁が振動板を形成し、インクを溜めておく吐出室となる吐出室用凹部が複数形成され且つ各吐出室に共通のリザーバが形成されたキャビティ基板と、振動板に対向し、振動板を駆動する個別電極が形成された電極基板と、吐出室内のインクを吐出するノズル孔が複数形成されたノズル基板とを備え、ノズル基板と電極ガラス基板との間にキャビティ基板を挟んで接合した構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。
このようなインクジェットヘッドでは、印刷速度の高速化およびカラー化を目的として、ノズル列を複数有する構造のインクジェットヘッドが求められている。さらに、近年ノズル密度は高密度化するとともに、長尺化(1列当たりのノズル数の増加)しており、インクジェットヘッド内のアクチュエータ数はますます増加している。
インクジェットヘッドでは、ノズル孔のそれぞれに共通に連通するリザーバが設けられているので、ノズル密度の高密度化に伴い、吐出室の圧力がリザーバにも伝わり、その圧力の影響が他のノズル孔にも及ぶことになる。例えば、アクチュエータを駆動することにより、リザーバに正圧がかかると本来インク滴を吐出するべきノズル孔(駆動ノズル)以外の非駆動ノズルからもインク滴が漏れ出たり、逆にリザーバに負圧がかかると駆動ノズルから吐出するべきインク滴の吐出量が減少したりして、印字品質が劣化する。そこで、このようなノズル間の圧力干渉を防止するために、リザーバの圧力変動を緩衝させるためのダイヤフラムをノズル基板に設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−119044号公報(図1)
しかしながら、特許文献1のインクジェットヘッドのように、ダイヤフラムをノズル基板に設けた構造では、強度の低い部位が外部に露出することになるため、破損防止等の観点からダイヤフラムを薄くするのにも限界があった。このため、圧力緩衝効果が十分に得られず、更なる改善が望まれていた。
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、ノズルの高密度化を可能にし、かつノズル間の圧力干渉を防止することができる液滴吐出ヘッド及びその製造方法を得ることを目的とする。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、底壁が振動板を形成し、液滴を溜めておく吐出室となる吐出室用凹部が複数形成され且つ各吐出室に共通のリザーバとなる第1リザーバ凹部が形成されたキャビティ基板と、振動板に対向し、振動板を駆動する個別電極が形成された電極基板と、吐出室内の液滴を吐出するノズル孔が複数形成されたノズル基板とを備え、ノズル基板と電極基板との間にキャビティ基板が挟んで接合された液滴吐出ヘッドであって、キャビティ基板の第1リザーバ凹部と反対側の部分にはザグリが形成され、第1リザーバ凹部の底面が圧力を緩衝するダイヤフラムとなっているものである。
このように、キャビティ基板にダイヤフラムを設けたため、ダイヤフラムが外部に露出しない構造とすることができる。このため、ダイヤフラムを必要十分に薄く形成することが可能となり、高い圧力緩衝効果を得ることができる。その結果、ノズル孔の高密度化が可能で、且つ液滴吐出時に発生するノズル孔間の圧力干渉を防止して吐出特性が良好な液滴吐出ヘッドを得ることができる。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、ノズル基板においてキャビティ基板の第1リザーバ凹部と対向する位置には、第1リザーバ凹部とともにリザーバを構成する第2リザーバ凹部が形成され、また、キャビティ基板には、一端が電極基板に貫通形成した液滴供給孔に連通し、他端がノズル基板の第2リザーバ凹部に連通する液滴供給孔が貫通形成されており、外部からのリザーバへの液滴の供給が、電極基板及びキャビティ基板に設けた液滴供給孔を介してノズル基板の第2リザーバ凹部経由で行われる構造としたものである。
このように、ノズル基板のキャビティ基板との接合面側に第2リザーバ凹部を設けてリザーバの体積を拡大した構造としたため、流路抵抗を低減できクロストークを防止することが可能となり、吐出特性の安定化を図ることが可能となる。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、上記の液滴吐出ヘッドの製造方法であって、シリコン基板の一方の面に前記ザグリを形成する工程と、シリコン基板の一方の面全体にボロンを拡散してボロンドープ層を形成する工程と、シリコン基板の他方の面に吐出室用凹部及び第1リザーバ凹部を形成するためのエッチングパターンを形成する工程と、エッチングパターンを用いてウェットエッチングを行い、ボロンドープ層でエッチングストップさせ、吐出室用凹部及び第1リザーバ凹部を形成する工程とを有するものである。
このように、第1リザーバ凹部を形成するに際し、ボロンエッチングストップ技術を用いるため、第1リザーバ凹部の深さを高精度に制御できる。これにより、ヘッド毎に第1リザーバ凹部の深さが異なることによる流路抵抗のばらつきを防止することができる。
以下、本発明の一実施の形態の液滴吐出ヘッドについて説明する。なお、ここでは液滴吐出ヘッドの一例として、ノズル基板の表面に設けられたインクノズルからインク液滴を吐出するフェイス吐出型のインクジェットヘッドについて図1及び図2を参照して説明する。また、本発明は、以下の図に示す構造、形状に限定されるものではなく、基板の端部に設けられたインクノズルからインク液滴を吐出するエッジ吐出型のインクジェットヘッドにも適用できるものである。
図1は、本発明の一実施の形態のインクジェットヘッドの分解斜視図である。
図1に示すように、このインクジェットヘッドは、キャビティ基板1、電極ガラス基板2、ノズル基板3の3つの基板を有し、ノズル基板3と電極ガラス基板2の間にキャビティ基板1を挟んで接合した構成を有している。
キャビティ基板1は、例えば厚さ約50μmで、110面方位のシリコン単結晶基板(以下、単にSi基板という)から構成されている。キャビティ基板1には、底壁が振動板13を形成し、インクを溜めておく吐出室11となる複数の吐出室用凹部11aと、各吐出室11に共通のリザーバ12となる第1リザーバ凹部12aとが形成されている。振動板13は、シリコンに高濃度のボロンを拡散することにより形成されるボロン拡散層で構成されている。このようにボロン拡散層で構成することにより、Si基板をエッチングしたときにエッチング速度が極端に遅くなるいわゆるエッチングストップを十分に働かせることができ、振動板13の厚み及び吐出室11の容積を高精度で形成でき、また、面荒れも小さくすることが可能となる。
また、キャビティ基板1において、第1リザーバ凹部12aの反対側の部分にはザグリ14が形成されている。これにより、第1リザーバ凹部12aの底面は電極ガラス基板2の表面から浮いた状態となっており、リザーバ12内の圧力変動を緩衝するダイヤフラム15となっている。このようなダイヤフラム15を設けることにより、ノズル間の圧力干渉を防止することが可能となっている。このダイヤフラム15も、振動板13と同様に、シリコンに高濃度のボロンを拡散することによるボロン拡散層により構成されている。これにより、上記と同様にエッチングストップを十分に働かせることができ、第1リザーバ凹部12aの深さを高精度に形成することができる。したがって、各ヘッド毎に流路抵抗がばらつくのを抑えることができる。また、ノズル基板3と電極ガラス基板2との間に接合されるキャビティ基板1にダイヤフラム15を形成しているため、ダイヤフラムが外部に露出しない構造となり、破損等を考慮することなくダイアフラム15を必要十分に薄く形成することが可能である。
また、キャビティ基板1には更に、一端が、電極ガラス基板2に貫通形成された後述のインク供給孔29に連通し、他端がノズル基板3の後述の第2リザーバ凹部34に連通するインク供給孔16が貫通形成されている。
また、キャビティ基板1の下面(電極ガラス基板2と対向する面)には、絶縁膜となるTEOS膜(Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシランを用いてできるSiO2 膜をいう)17(図2参照)を、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて0.1μm程度成膜している。これは、インクジェットヘッドを駆動させた時の絶縁膜破壊及び短絡を防止するためである。また、キャビティ基板1には、キャビティ基板1の通電部として共通電極18が設けられている。
電極ガラス基板2(電極基板ともいう)は、厚さ約1mmであり、図1で見るとキャビティ基板1の下面に接合される基板である。本実施の形態では、電極ガラス基板2となるガラスとして、ホウ珪酸系の耐熱硬質ガラスを用いることにする。電極ガラス基板2には、キャビティ基板1に形成される各吐出室11に合わせて、エッチングにより深さ約0.2μmの電極形成用凹部21が設けられる。そして、電極形成用凹部21の内側に、個別電極22、リード部23及び端子部24(以下、個別電極22、リード部23、端子部24を合わせて電極部と呼ぶ)が設けられている。端子部24は個別電極22を外部機器(例えば電源)に接続する際などに利用される部分で、図2に示すように、配線のためにキャビティ基板1の末端部に貫通形成された電極取出し用貫通穴部25内に露出している。
本実施の形態では、電極形成用凹部21の底面に形成する電極部の材料として、酸化錫を不純物としてドープした透明のITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を用い、電極形成用凹部21内に例えば0.1μmの厚さにスパッタ法を用いて成膜する。したがって、絶縁膜17と個別電極22との間に形成されるギャップは、この電極形成用凹部21の深さ及び電極部の厚さにより決まることになる。このギャップは吐出特性に大きく影響するため、厳格な精度管理が行われる。ここで、電極部の材料はITOに限定するものではなく、クロム等の金属等を材料に用いてもよいが、本実施の形態では、透明であるので放電したかどうかの確認が行い易い等の理由でITOを用いることとする。
また、端子部24は、図2に示すように、発振回路26に接続されている。発振回路26は、端子部24を介して個別電極22に電荷の供給及び停止を制御する。また、振動板13と個別電極22との間に形成されるギャップの端部には封止材27が充填されており、個別電極22単位で封止が行われるようになっている。このように封止を行うことにより、振動板13の底面や個別電極22の表面に水分が付着するのを防止し、水分付着に起因した電極と振動板13の貼り付き等の防止を図っている。
また、電極ガラス基板2には、各電極形成用凹部21を相互に連通するように結ぶ気相処理溝28が電極形成用凹部21と同様の深さ約0.2μmで形成されている。気相処理溝28はギャップ内の水分除去を行った後、疎水処理を行うために用いられるものである。本例では、各電極形成用凹部21の端部の封止を行った後、ギャップ内の気相処理(脱水処理及び疎水処理)を行い、そして、その気相処理を行うための気相処理溝28の端部を封止するといった2段階で気密封止を行うようにしている。これは、ギャップ内の疎水処理のための化合物の濃度を高く保つためである。この気相処理(疎水処理)により、絶縁膜17の表面及び個別電極22の表面にはヘキサメチルジシラザン(HMDS)で構成された疎水化膜(図示せず)が形成されている。
また、電極ガラス基板2には、外部のインクカートリッジ(図示せず)に接続されるインク供給孔29が設けられている。インク供給孔29は、キャビティ基板1に設けられたインク供給孔16を通じてノズル基板3に設けられた後述の第2リザーバ凹部34に連通している。
ノズル基板3は、例えば厚さ約180μmのSi基板で構成される。ノズル基板3は、複数のノズル孔31が設けられる領域に凹部32が形成され、この凹部32の底面にインク液滴を吐出するための複数のノズル孔31が開口している。すなわち、ノズル部分の長さ(基板厚み)を凹部32により薄肉化することにより各ノズル孔31の流路抵抗を調整している。これにより、均一な吐出性能を確保するとともに、吐出面(凹部32の底面)に記録用紙などの他の物体が直接接触することがないので、記録用紙の汚損やノズル孔31の先端の損傷などを防止することができる。
各ノズル孔31は、ここでは、基板面に対し垂直にかつ同軸上に小さい穴の第1ノズル31aと第1ノズル31aよりも径の大きい第2ノズル31bとから構成されている。このように2段に構成することにより、インク滴の吐出方向をノズル孔31の中心軸方向に揃えることができ、安定したインク吐出特性を発揮させることができる。すなわち、インク滴の飛翔方向のばらつきがなくなり、またインク滴の飛び散りがなく、インク滴の吐出量のばらつきを抑制することができる。また、ノズル密度を高密度化することが可能である。
また、ノズル基板3の図1において下面(キャビティ基板1と接合される接合側の面)には、吐出室11とリザーバ12とを連通させるためのオリフィス33が形成されている。また、更に、ノズル基板3においてキャビティ基板1の第1リザーバ凹部12aと対向する位置には、第1リザーバ凹部12aとともにリザーバ12を構成する第2リザーバ凹部34が形成されている。このようにキャビティ基板1に形成した第1リザーバ凹部12aに加え、更にノズル基板3に第2リザーバ凹部34を形成することにより、リザーバ12の体積拡大が図られている。
上記のように構成されたインクジェットヘッドの動作を説明する。
図2に示すように発振回路26はキャビティ基板1の共通電極18と端子部24とに接続されている。そして、例えば24kHzで発振し、個別電極22に0Vと30Vのパルス電位を印加して電荷供給を行う。このように発振回路26が駆動し、個別電極22に電荷を供給して正に帯電させると、振動板13は負に帯電し、静電気力により個別電極22に引き寄せられて撓む。これにより吐出室11の容積は広がる。そして個別電極22への電荷供給を止めると振動板13は元に戻る。このとき、吐出室11の容積も元に戻るため、その圧力により差分の液滴が吐出し、例えば記録対象となる記録紙に着弾することによって記録が行われる。
次に、振動板13が再び下方へ撓むことにより、インクがリザーバ12よりオリフィス33を通じて吐出室11内に補給される。また、インクジェットヘッドへのインクの供給は、外部のインクカートリッジから、電極ガラス基板2のインク供給孔29及びキャビティ基板1のインク供給孔16を介して第2リザーバ凹部12経由でリザーバ12に供給されるようになっている。
なお、このような方法は引き打ちと呼ばれるものであるが、バネ等を用いて液滴を吐出する押し打ちと呼ばれる方法もある。
次に、本実施の形態のインクジェットヘッド10の製造方法について、図3〜図6を用いて説明する。なお、以下において示す基板の厚さやエッチング深さ、温度、圧力等の値はあくまでも一例を示すものであり、本発明はこれらの値によって限定されるものではない。また、実際には、Si基板から複数個分のインクジェットヘッドの部材を同時形成するが、図3〜図6ではその一部分だけを示している。
図3は、ノズル基板の製造方法を示す製造工程の断面図である。図4は、キャビティ基板を電極ガラス基板に接合するまでのキャビティ基板の製造工程の断面図である。図5及び図6は、キャビティ基板及び電極ガラス基板の製造方法を示す製造工程の断面図であり、ここでは、主に、電極ガラス基板にキャビティ基板となるSi基板を接合した後にキャビティ基板を製造する方法を示す。
まず最初に、図3を参照してノズル基板の製造方法を説明する。
(a)(100)を面方位とするSi基板300を用意する。そして、Si基板300のキャビティ基板1との接合面300aを鏡面研磨し、180μmの厚みの基板を作製する。
(b)酸素及び水蒸気雰囲気中、1075℃の条件で8時間酸化することで、Si基板300の両面に約1.8μmのSiO2膜301を成膜する。
(c)Si基板300の両面にレジストを塗布し、接合面300a側のSiO2 膜301から第1ノズル31aに対応する部分302及び電極取出し用貫通穴部25に対応する部分303をエッチング除去するためのレジストパターニングを施す。そして、このレジストパターンをマスクとしてSiO2 膜301をふっ酸水溶液でエッチングし、SiO2 膜301をパターニングする。そしてレジストを剥離する。
(d)Si基板300の両面にレジストを塗布し、先にパターニングされたSiO2 膜301上にレジストパターニングを施し、ふっ酸水溶液でSiO2膜301をエッチングする。このとき、第2ノズル31bに対応する部分304、オリフィス33に対応する部分305及び第2リザーバ凹部34に対応する部分306を完全に除去せずハーフエッチングし、約1.0μmのSiO2膜301が残るようにする。以上によりSiO2膜301によるエッチングパターンが形成される。そしてレジストを剥離する。
(e)ICPドライエッチング装置を用いて、第1ノズル31aとなる部分307及び電極取出し用貫通穴部25となる部分308の深さが約20μmになるまでエッチングする。エッチング条件は、エッチングプロセスがSF6流量400cm3/min(400sccm)、エッチング時間3.5秒、チャンバー圧力8Pa、コイルパワー2200W、プラテンパワー55W、プラテン温度20℃で、デポジションプロセスがC48流量200cm3/min(200sccm)、エッチング時間2.5秒、チャンバー圧力2.7Pa、コイルパワー1800W、プラテン温度20℃である。エッチングプロセスとデポジションプロセスを組み合わせて1サイクルとし、約50サイクル行う。
(f)ふっ酸水溶液にSi基板300を浸し、第2ノズル31bに対応する部分304、オリフィス33に対応する部分305及び第2リザーバ凹部34に対応する部分306に残っているSiO2膜301をエッチングする。そしてレジストを剥離する。
(g)再度ICPドライエッチング装置を用いて、第2ノズル31bとなる部分309、オリフィス33となる部分310及び第2リザーバ凹部34となる部分311の深さが約50μmになるまでエッチングする。エッチング条件は、エッチングプロセスがSF6流量400cm3/min(400sccm)、エッチング時間3.5秒、チャンバー圧力8Pa、コイルパワー2200W、プラテンパワー55W、プラテン温度20℃で、デポジションプロセスがC48流量200cm3/min(200sccm)、エッチング時間2.5秒、チャンバー圧力2.7Pa、コイルパワー1800W、プラテン温度20℃である。エッチングプロセスとデポジションプロセスを組み合わせて1サイクルとし、約125サイクル行う。
このとき、第1ノズル31aとなる部分307及び電極取出し用貫通穴部25となる部分308の深さは約70μmとなる。
(h)ふっ酸水溶液にSi基板300を浸し、Si基板300の両面に残っているSiO2膜301を剥離する。
(i)酸素及び水蒸気雰囲気中、1075℃の条件で4時間酸化することで、Si基板300の両面に約1.2μmのSiO2膜320を成膜する。
(j)Si基板300の両面にレジストを塗布し、Si基板300の接合面300aと反対側のSiO2膜320から、凹部32に対応する部分321及び電極取出し用貫通穴部25に対応する部分322をエッチング除去するためのレジストパターニングを施す。そして、このレジストパターンをマスクとしてSiO2膜320をふっ酸水溶液でエッチングして、SiO2膜320をパターニングする。そしてレジストを剥離する。
(k)Si基板300を25wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に浸し、凹部32となる部分323及び電極取出し用貫通穴部25となる部分324の深さが約110μmになるまでエッチングする。
(l)ふっ酸水溶液にSi基板300を浸し、Si基板300の両面に残っているSiO2膜320を剥離する。これによりノズル孔31及び電極取出し用貫通穴部25が貫通し、ノズル基板3が作製される。
次に、電極ガラス基板2と陽極接合する前のキャビティ基板1の製造方法について図4を参照して説明する。
(a)(110)を面方位とする酸素濃度の低いSi基板100を用意する。そして、Si基板100の電極ガラス基板2と接合される接合面100aを鏡面研磨し、220μmの厚みの基板を作製する。
(b)酸素及び水蒸気雰囲気中、1075℃の条件で4時間酸化することで、Si基板100の両面に約1.2μmのSiO2膜101を成膜する。
(c)Si基板100の両面にレジストを塗布し、接合面100a側のSiO2膜101からザグリ14に対応する部分102をエッチング除去するためのレジストパターニングを施す。そして、このレジストパターンをマスクとしてSiO2膜101をふっ酸水溶液でエッチングし、SiO2膜101をパターニングする。そしてレジストを剥離する。
(d)Si基板100を35wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に浸し、ザグリ14となる部分103の深さが約5μmになるまでエッチングを行う。
(e)Si基板100をふっ酸水溶液に浸し、両面のSiO2膜101を剥離する。
(f)酸素及び水蒸気雰囲気中、1075℃の条件で12時間酸化することで、Si基板100の両面に約2.0μmのSiO2膜104を成膜する。
(g)Si基板100の両面にレジストを塗布し、ボロンを選択拡散させたい部分(電極取出し用貫通穴部25に対応する部分)105のSiO2膜104をエッチング除去するためのレジストパターニングを施し、ふっ酸水溶液でエッチングして、SiO2膜104をパターニングする。そしてレジストを剥離する。
(h)Si基板100のボロンドープ層を形成する面100aをB23を主成分とする固体の拡散源に対向させて石英ボートにセットする。縦型炉に石英ボートをセットし、炉内を窒素雰囲気にし、温度を1100℃に上昇させ、そのまま温度を6時間保持し、ボロンをSi基板中に拡散させ、選択拡散部105にボロンドープ層106を形成する。ボロンドープ工程では、Si基板100の投入温度を800℃とし、Si基板100の取出し温度も800℃とする。これにより、酸素欠陥の成長速度が速い領域(600℃から800℃)をすばやく通過することができるため、酸素欠陥の発生を抑えることができる。
この時、選択拡散部以外の部分及び拡散面100aと反対面100bにはSiO2膜104が残っているため、SiO2膜104がマスクとなってボロンが拡散されることは無い。
(i)ボロンドープ層106の表面にはボロン化合物(SiB6)が形成されるが(図示せず)、酸素及び水蒸気雰囲気中、600℃の条件で1時間30分酸化することで、ふっ酸水溶液によるエッチングが可能なB23+SiO2に化学変化させることができる。
選択拡散した面と反対面にレジストを塗布し、Si基板100をふっ酸水溶液に10分間浸す。すると、選択拡散部105のB23+SiO2膜及び拡散面側のSiO2膜104がエッチング除去される。そしてレジストを剥離する。
(j)工程(h)と同様に、Si基板100のボロンドープ層を形成する面100aをB23を主成分とする固体の拡散源に対向させて石英ボートにセットする。縦型炉に石英ボートをセットし、炉内を窒素雰囲気にし、温度を1050℃に上昇させ、そのまま温度を7時間保持し、ボロンをSi基板中に拡散させ、拡散面側全面にボロンドープ層106を形成する。ボロンドープ工程では、Si基板100の投入温度を800℃とし、Si基板100の取出し温度も800℃とする。これにより、酸素欠陥の成長速度が速い領域(600℃から800℃)をすばやく通過することができるため、酸素欠陥の発生を抑えることができる。
この時、拡散面100aの反対面100bにはSiO2膜104が残っているため、ボロンが反対面に回り込んでも、SiO2膜104がマスクとなって反対面100bに拡散されることが無い。
先に選択拡散した部分105のボロン濃度は他の部分に比べて濃くなり、Si基板100のより内部へボロンが拡散される。
(k)工程(i)と同様に、ボロンドープ層106の表面にはボロン化合物(SiB6)が形成されるが(図示せず)、酸素及び水蒸気雰囲気中、600℃の条件で1時間30分酸化することで、ふっ酸水溶液によるエッチングが可能なB23+SiO2に化学変化させることができる。そして、Si基板100をふっ酸水溶液に10分間浸す。すると、拡散面100aのB23+SiO2膜及び反対面100bのSiO2膜104がエッチング除去される。
(l)ボロンドープ層106を形成した面にプラズマCVD法によりTEOS絶縁膜107を、成膜時の処理温度は360℃、高周波出力は250W、圧力は66.7Pa(0.5Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3/min(100sccm)、酸素流量1000cm3/min(1000sccm)の条件で0.1μm成膜する。
次に、インクジェットヘッドの完成までの製造方法について図5及び図6を用いて説明する。
(a)図1に示すような各部(個別電極、リード部、端子部、気相処理溝、インク供給孔)を形成した電極ガラス基板2を作製する。
(b)図4の製造方法により作製したSi基板100と電極ガラス基板2とを360℃に加熱した後、電極ガラス基板2に負極、Si基板に正極を接続して、800Vの電圧を印加して陽極接合する。
(c)陽極接合後、Si基板100の厚みが約60μmになるまで研削加工を行う。その後、加工変質層を除去するために、32w%の濃度の水酸化カリウム溶液でSi基板100を約10μmエッチングする。これによりSi基板100の厚みは約50μmとなる。
(d)全面エッチング面にプラズマCVDを用いて、成膜時の処理温度は360℃、高周波出力は700W、圧力は33.3Pa(0.25Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3/min(100sccm)、酸素流量1000cm3/min(1000sccm)の条件でTEOSエッチングマスク110を1.0μm成膜する。
(e)TEOSエッチングマスク110にレジストパターニングを施し、ふっ酸水溶液でエッチングし、吐出室11に対応する部分111、第1リザーバ凹部12aに対応する部分112、電極取出し用貫通穴部25に対応する部分113、インク供給孔となる部分(図示せず)を除去してパターニングする。そしてレジストを剥離する。
(f)接合済み基板を35wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に浸し、TEOSエッチングマスク110を用いてエッチングし、吐出室11となる部分114及び電極取出し用貫通穴部25となる部分116の厚みが約10μmになるまで行う。第1リザーバ凹部12aとなる部分115は反対側にザグリ14があるため、厚みが約5μmとなる。
また、このエッチング工程でインク供給孔16が貫通する。すなわち、電極ガラス基板2のインク供給孔29から水酸化カリウム水溶液が侵入し、Si基板100の表面をエッチングしてインク供給孔16を貫通させる。なお、Si基板100の電極ガラス基板2との接合面にはボロンドープ層106が形成されているため、ボロンドープ層106の部分でエッチングレートが低下するが、水酸化カリウム水溶液の濃度が高いためエッチングが進行し、インク供給孔16を貫通させることができる。
(g)接合済み基板を3wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に浸し、ボロンドープ層106でのエッチングレート低下によるエッチングストップが十分効くまでエッチングを続ける。これにより、吐出室用凹部11a及び第1リザーバ凹部12aが形成されるとともに、0.8μmの厚みの振動板13が形成される。このように前記2種類の濃度の異なる水酸化カリウム水溶液を用いたエッチングを行うことによって、振動板13の面荒れを抑制し、厚み精度を0.80±0.05μm以下にすることができ、インクジェットヘッドの吐出性能を安定化することができる。
また、第1リザーバ凹部12aの底面にも振動板13と同様に厚み0.8μmのダイヤフラム15が形成される。このように、ボロンドープ層によるエッチングストップ技術を用いて第1リザーバ凹部12aを形成することにより、第1リザーバ凹部12aの深さを高精度に形成することができる。このため、ヘッド毎の流路抵抗のばらつきを抑えることが可能となる。
また、電極取出し用貫通穴部25は高濃度で深いボロンドープ層106が形成されているため、振動板13部分に比べてエッチングストップが早く効き始め、電極取出し用貫通穴部25の残し厚みは約3μmとなる。このため、強度が向上し、広い面積を持つ電極取出し用貫通穴部25がSiエッチング中に割れるのを防止でき、歩留まりを向上することができる。
(h)Siエッチングが終了したら、接合済み基板をふっ酸水溶液に浸し、シリコン基板表面のTEOSエッチングマスク110を剥離する。
(i)電極取出し用貫通穴部25に残っているSi薄膜及びTEOS絶縁膜を除去するために、電極取出し用貫通穴部25に対応した部分が開口したSiマスク(図示せず)をSi基板100表面に取り付け、RFパワー200W、圧力40Pa(0.3Torr)、CF4流量30cm3/min(30sccm)の条件で、RIEドライエッチングを1時間行い、電極取出し用貫通穴部25のみにプラズマを当て、開口する。このとき、ギャップは大気開放される。
以上によりキャビティ基板1が作製される。
(j)ギャップの端部に例えばエポキシ系樹脂の封止材12を盛り、個別電極22毎の封止を行う。エポキシ系樹脂の代わりにTEOS膜等の無機材料を成膜して封止しても良い。なお、この時点では、気相処理溝28(図1参照)によって各電極形成用凹部21は大気連通しており、ギャップは密閉されていない。そして、気相処理溝28の端部(図示せず)を介してギャップ内の水分除去及び疎水化処理を行った後、エポキシ系樹脂を気相処理溝28の端部に盛り、ギャップを封止する。これによって、ギャップは密閉状態になる。
(k)図3の製造方法により作製したノズル基板3をエポキシ系接着剤によりキャビティ基板1の上面に接着する。
(l)ダイシングを行い、個々のヘッドに切断する。
以上により、インクジェットヘッドが完成する。
以上説明したように、本実施の形態によれば、キャビティ基板1にダイヤフラム15を設けたため、ダイヤフラム15が外部に露出しない構造とすることができる。このため、ダイヤフラム15を必要十分に薄く形成することが可能となり、高い圧力緩衝効果を得ることができる。その結果、ノズル孔の高密度化が可能で、且つ液滴吐出時に発生するノズル孔間の圧力干渉を防止して吐出特性が良好な液滴吐出ヘッドを得ることができる。
また、ノズル基板3のキャビティ基板1との接合面側に第2リザーバ凹部34を設け、リザーバの体積を拡大した構造としたため、流路抵抗を低減できクロストークを防止することが可能となり、吐出特性の安定化を図ることが可能となる。
また、第1リザーバ凹部12aを形成するに際し、ボロンエッチングストップ技術を用いるため、第1リザーバ凹部12aの深さを高精度に制御できる。したがって、ヘッド毎に第1リザーバ凹部12aの深さが異なることによる流路抵抗がばらつきを防止することができる。
なお、本実施の形態では、第2リザーバ凹部34を第2ノズル31bと同じ工程で作製する製造方法を採用しているため、第2リザーバ凹部34の深さを第2ノズル31bの深さと同じ深さに形成しているが、第2ノズル31bの製造工程と分けることで更に深く形成するようにしても良い。これにより、更にリザーバ体積の拡大が図れ、流路抵抗を更に低減することが可能となる。
なお、本実施の形態のインクジェットヘッドは、吐出する液滴を種々変更することで、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、生体液体の吐出等にも適用することができる。
本発明の一実施の形態のインクジェットヘッドの分解斜視図。 図1のインクジェットヘッドの断面図。 ノズル基板の製造方法を示す製造工程の断面図。 キャビティ基板を電極ガラス基板に接合するまでのキャビティ基板の製造工程の断面図。 キャビティ基板及び電極ガラス基板の製造方法を示す製造工程の断面図(1/2)。 キャビティ基板及び電極ガラス基板の製造方法を示す製造工程の断面図(2/2)。
符号の説明
1 キャビティ基板、2 電極ガラス基板、3 ノズル基板、10 インクジェットヘッド、11 吐出室、11a 吐出室用凹部、12 リザーバ、12a 第1リザーバ凹部、13 振動板、14 ザグリ、15 ダイヤフラム、16 インク供給孔、22 個別電極、29 インク供給孔、31 ノズル孔、31a 第1ノズル、31b 第2ノズル、34 第2リザーバ凹部。

Claims (3)

  1. 底壁が振動板を形成し、液滴を溜めておく吐出室となる吐出室用凹部が複数形成され且つ前記各吐出室に共通のリザーバとなる第1リザーバ凹部が形成されたキャビティ基板と、前記振動板に対向し、前記振動板を駆動する個別電極が形成された電極基板と、前記吐出室内の液滴を吐出するノズル孔が複数形成されたノズル基板とを備え、前記ノズル基板と前記電極基板との間に前記キャビティ基板が挟んで接合された液滴吐出ヘッドであって、
    前記キャビティ基板の前記第1リザーバ凹部と反対側の部分にはザグリが形成され、前記第1リザーバ凹部の底面が圧力を緩衝するダイヤフラムとなっていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 前記ノズル基板において前記キャビティ基板の前記第1リザーバ凹部と対向する位置には、前記第1リザーバ凹部とともに前記リザーバを構成する第2リザーバ凹部が形成され、また、前記キャビティ基板には、一端が前記電極基板に貫通形成した液滴供給孔に連通し、他端が前記ノズル基板の前記第2リザーバ凹部に連通する液滴供給孔が貫通形成されており、外部からの前記リザーバへの液滴の供給が、前記電極基板及び前記キャビティ基板に設けた前記液滴供給孔を介して前記ノズル基板の第2リザーバ凹部経由で行われる構造としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 請求項1又は請求項2記載の液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
    シリコン基板の一方の面にザグリを形成する工程と、
    前記シリコン基板の前記一方の面全体にボロンを拡散してボロンドープ層を形成する工程と、
    前記シリコン基板の他方の面に前記吐出室用凹部及び前記第1リザーバ凹部を形成するためのエッチングパターンを形成する工程と、
    前記エッチングパターンを用いてウェットエッチングを行い、前記ボロンドープ層でエッチングストップさせ、前記吐出室用凹部及び前記第1リザーバ凹部を形成する工程とを有することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
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