JP4701935B2 - 液滴吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はインクやその他の液体を吐出する液滴吐出装置に用いられる液滴吐出ヘッドの製造方法に関する。
液滴吐出を実現するヘッドとして、吐出前の液体を貯えて吐出させる吐出室(圧力室ともいう)を設け、吐出室の底面を構成する底壁を振動板とし、この振動板に対向配置した個別電極を利用して該振動板を撓ませて吐出室内の圧力を高め、液体を加圧することで吐出室と連通するノズル孔から液滴を吐出させるものがある。このような液滴吐出ヘッドを製造する方法として、個別電極となる複数の電極が形成されたガラス基板に流路形成前のシリコン基板を接合した後、該シリコン基板を薄板化し、且つ吐出室等の流路を形成する方法が提案されている(例えば特許文献1または特許文献2参照)。
特開2004−82572号公報 特開2004−306444号公報
個別電極となる複数の電極が形成されたガラス基板に流路形成前のシリコン基板を接合した後、該シリコン基板に吐出室等の流路を形成する方法では、それらの電極を外部機器に接続するための電極取出し口もシリコン基板に形成される。この電極取出し口となる部分は、振動板となる個々の吐出室底面よりも面積が大きい。したがって、加工途中で吐出室底面(振動板)と同等の厚さまでエッチングされてしまうと、この部分の剛性が非常に弱くなってしまい、機械的な振動や、個別電極とシリコン基板とのギャップ内に挟まった異物が押し上げる力等によって、その部分が割れる場合がある。特にギャップ内に気体が発生すると、成膜等、真空チャンバ内での工程を行う場合には、ギャップ内外の気圧差が大きくなるため割れやすくなる。そのため、割れた際の破片等の異物がギャップに混入したり、後の工程でエッチャント等の液体がギャップに浸入するおそれがある。しかし、電極取出し口のような貫通穴が形成されることになる部分に対して、途中でウェットエッチングを全く行わないのでは、後の工程でそれらの部分を除去するのに時間がかかりすぎてしまう。
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、個別電極となる複数の電極が形成されたガラス基板に流路形成前のシリコン基板を接合した後、該シリコン基板を薄板化し、且つ吐出室等の流路及び電極取出し口を形成する方法において、電極取出し口などのように大きな面積にわたって薄膜が形成される部分の加工方法を改善し、薄膜割れに起因する歩留まり低下を防止できる、液滴吐出ヘッドの製造方法を提案するものである。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、個別電極となる複数の電極及び前記複数の電極を外部の機器に接続する複数の電極端子が形成された電極基板と、液体を貯えて吐出させる吐出室となる複数の凹部が少なくとも形成されるシリコン基板とを、前記電極と前記吐出室の底面となる部分をギャップを介して対向させて接合する接合工程と、前記電極基板と接合された前記シリコン基板に、少なくとも前記凹部を含む液体流路および前記電極端子に対応した電極取出し口となる部分をウェットエッチングを利用して形成するウェットエッチング工程と、を備えた液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記電極基板と接合される前の前記シリコン基板に対して、前記ウェットエッチング工程において薄膜が形成される部分のうち、所定の薄膜形成予定部分にのみ選択的にボロンを拡散し、その後さらに該シリコン基板のボロンが拡散された側の全面にボロンを拡散し、前記シリコン基板に対して選択的にボロンを拡散する部分を、前記電極取出し口となる部分とすることを特徴とする。
これにより、ボロンが二重に拡散された部分が後のウェットエッチング工程において薄膜とされても、その薄膜は高濃度にボロンが拡散された層からなり、しかも他のボロンドープ層部分より厚く形成されるため、その部分からの割れに起因する歩留まり低下を低減することができる。
なお、前記シリコン基板に対して選択的にボロンを拡散するため、SiO2 膜をマスクとして用いるのが好ましい。SiO2 膜はシリコン基板に容易に形成でき、しかもボロンの拡散マスクとして十分な機能を有しているからである。
極取出し口は最終的には開口される部分であるが、その加工途中ではウェットエッチングにより薄膜とされる。この電極取出し口となる部分は、液滴吐出ヘッドの流路を構成するシリコン基板のなかで比較的大きな面積を占めるため、この部分を薄くした場合、この部分で特に割れなどが生じやすい。そこで、開口される前の電極取出し口となる部分に対して、二重にボロン拡散を行うことで、その部分のボロンドープ層が他の部分より厚くなり、割れ難い膜が形成できる。
また、前記ウェットエッチング工程では、ボロン拡散により形成されたボロンドープ層によるエッチングストップが作用するまで、前記シリコン基板をエッチングするようにするのが好ましい。エッチングストップを利用することで、ボロン拡散により形成されたボロンドープ層からなる薄膜を容易に形成できる。
さらに、前記ウェットエッチングの終了後、前記シリコン基板の前記電極取出し口となる部分に残ったボロンドープ層を含む薄膜を、ドライエッチングまたはレーザ加工により除去することを特徴とする。
電極取出し口となる部分は最終的に開口した状態とされるが、電極基板の電極とシリコン基板とのギャップに液滴などを浸入させずにそれを行うことが必要となる。そのために、ドライエッチングやレーザ加工は好適な方法である。
実施の形態1
図1は本発明の第1の実施の形態に係る液滴吐出ヘッドを分解して表した図である。図1はフェイス吐出型の液滴吐出ヘッドを表している。図1に示すように、この液滴吐出ヘッドは、キャビティプレート1、ガラス基板2、ノズルプレート3の3つの基板が積層されてなる。
キャビティプレート1は、例えば厚さ約50μmで、110面方位のシリコン単結晶基板(以下、単にシリコン基板という)から構成されている。キャビティプレート1には、吐出される前の液滴が保持される複数の吐出室5、各吐出室5に供給する液体をためておく各吐出室に共通のリザーバ7などの流路が形成されている。なお、吐出室5の底面を構成する底壁は振動板4として作用する。
また、キャビティプレート1の下面(ガラス基板2と対向する面)には、絶縁膜となるTEOS膜(Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシランを用いてできるSiO2 膜をいう)14を、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて0.1μm程度成膜している。これは、液滴吐出ヘッドを駆動させた時の絶縁膜破壊及び短絡を防止するためである。さらに、キャビティプレート1の上面(ノズルプレート3と対向する面)には、液体保護膜15となるSiO2 膜(TEOS膜を含む)を、プラズマCVD法又はスパッタリング法により成膜している。これはインク等の液体によって流路が腐食するのを防ぐためである。また、液体保護膜15の応力とキャビティプレート1の下面に成膜したTEOS膜14の応力とを相殺させ、振動板4の反りを小さくすることができる効果も期待できる。
また、キャビティプレート1には、キャビティプレート1の通電部として共通電極19が設けられている。
第2の基板となるガラス基板2(電極基板ともいう)は、厚さ約1mmであり、図1で見るとキャビティプレート1の下面に接合される基板である。本実施の形態では、ガラス基板2となるガラスとして、ホウ珪酸系の耐熱硬質ガラスを用いることにする。ガラス基板2には、キャビティプレート1に形成される各吐出室5に合わせて、エッチングにより深さ約0.2μmの凹部9が設けられる。そして、凹部9の内側に、個別電極8、リード部10及び電極端子11からなる複数の電極を設ける。リード部10は個別電極8と電極端子11を繋ぐ部分であり、電極端子11は個別電極8を外部機器(例えば電源)に接続する際などに利用される部分である。なお、特に区別する必要がない場合は、個別電極8、リード部10及び電極端子11を合わせて個別電極(又は電極)9として説明する。
本実施の形態では、個別電極8の材料として酸化錫を不純物としてドープした透明のITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を用い、例えばスパッタ法を用いて0.1μmの厚さで凹部9内側に形成するものとする。その際、後述するように、個別電極8とガラス基板2に接合するシリコン基板とを等電位にするための接点(以下、等電位接点という)となるITOパターン24も個別電極8と同時に成膜しておく。
なお、個別電極8の材料はITOに限定するものではなく、クロム等の金属等を材料に用いてもよい。本実施の形態においては、透明であるので放電したかどうかの確認が行い易い等の理由でITOを用いることとする。
また、ガラス基板2には、リザーバ7と連通して外部タンク(図示せず)からリザーバ7への流路となるインク供給口13も設けられている。
振動板4と個別電極8との間には、後述する図2に示すように、振動板4の振動空間として機能するギャップGが構成されるが、その幅は凹部9の深さ、個別電極8及び振動板4(TEOS膜14)の厚さにより決まる。ギャップGの幅は液滴吐出ヘッドの吐出特性に大きく影響するため、厳格な精度管理が行われる。
ノズルプレート3は、例えば厚さ約180μmのシリコン基板で構成され、ガラス基板2とは反対の面(図1の場合には上面)で、キャビティプレート1と接合されている。図1から見て、ノズルプレート3の上面には、吐出室5で加圧されたインク等の液体を液滴として吐出するノズル孔12が形成されている。また、キャビティプレートのリザーバ7に対応する部分には、リザーバ7内の液体の圧力変動を吸収するためのダイヤフラム18が形成されている。さらに、ノズルプレート3の下面には、吐出室5とリザーバ7とを連通させるオリフィス6も形成されている。
なお、ここではノズル孔12を有するノズルプレート3を上面とし、ガラス基板2を下面として説明するが、実際には、ノズルプレート3の方がガラス基板2よりも下面となって用いられることが多い。
図2は図1の液滴吐出ヘッドの断面図である。図2(a)は吐出室5を長手方向に割断した部分の断面図、図2(b)は等電位接点部分の拡大断面図を表している。吐出室5は吐出前の液体を溜めておき、吐出室5の底壁を構成する振動板4を撓ませることにより、吐出室5内の圧力を高めて、液滴をノズル孔12から吐出させる作用を果たす。本実施の形態で振動板4は、高濃度のボロン(B)をシリコン基板に拡散したボロンドープ層から構成している。振動板4となるボロンドープ層の厚さは、例えば約0.8μmである。
また、ギャップGに、異物、水分(水蒸気)等が浸入しないように、ギャップGを外気から遮断し、密閉する封止材26がギャップGの端部に設けられている。
キャビティプレート1の共通電極19は、ワイヤ23を介して発振回路22に接続されている。また、ガラス基板2の電極端子11も、ワイヤ23を介して発振回路22に接続されている。発振回路22は、例えば24kHzで発振し、個別電極8に0Vと30Vのパルス電位を印加して電荷の供給及び停止を行う。すなわち、発振回路22が発振駆動することで、例えば個別電極8に電荷を供給して正に帯電させ、振動板4を相対的に負に帯電させると、静電気力により個別電極8に引き寄せられて撓む。これにより吐出室5の容積は広がる。そして電荷供給を止めると振動板4は元に戻るが、そのときの吐出室5の容積も元に戻るから、その圧力により差分の液滴20が吐出する。この液滴20が例えば記録対象となる記録紙21に着弾することによって印刷等の記録が行われる。なお、このような方法は引き打ちと呼ばれるものであるが、バネ等を用いて液滴を吐出する押し打ちと呼ばれる方法もある。
図3はガラス基板2を上面から見た図である。通常、液滴吐出ヘッドはウェハ単位で作られ、最終的に各液滴吐出ヘッド(ヘッドチップ)に切り離される。本実施の形態では、等電位接点を各ヘッドチップに独立して設け、それを利用して陽極接合時にキャビティプレート1と個別電極8との間を等電位に保つようにする。等電位接点となる部分については、ガラス基板2に凹部9を形成する際、エッチングせず残しておく。そして、その上に、導電性であるITO0.1μmを個別電極8とともに成膜し、ITOパターン24を形成する。したがって、等電位接点は、ガラス基板2表面よりもITOパターン24の分だけ0.1μm突出していることとなる。一方、キャビティプレート1においては、等電位接点に対応する部分のTEOS膜(0.1μm)を取り除き、キャビティプレート1の主となる材料であるシリコン基板(ボロンドープ層)を露出する窓を形成する。この窓を介してシリコン基板とITOパターン24とを接触させることで、陽極接合時において、ITOパターン24と電気的に接続されている個別電極8とシリコン基板との等電位を確保する。
大気開放穴28はこの液滴吐出ヘッドの外部と凹部9とを連通させ、陽極接合によって形成される前述したギャップGが密閉された状態になるのを防ぐためのものである。たとえば、陽極接合時等、各基板への加熱等による酸素等の気体発生によってギャップG内が加圧されるのを防ぐためのものである。なお、この大気開放穴28は、サンドブラスト法や切削加工等により形成する。また大気開放穴28は、最終的にはダイシングにより液滴吐出ヘッドと切り離されるので、完成した液滴吐出ヘッドには残らない。
ダイシングライン27は、ウェハに一体形成された複数の液滴吐出ヘッドを切り離す際のラインである。したがって、図3においてダイシングライン27よりも右側及び上側にある部分は、完成した液滴吐出ヘッドには残らない。なお、図3の液滴吐出ヘッドでは、個別電極8等の部材を5つしか記載していないが、実際には1つの液滴吐出ヘッドには多くのノズル孔12が存在し、その数に応じた個別電極8が形成されている。
図4及び図5は第1の実施の形態に係る液滴吐出ヘッドの製造工程を表す図である。以下、これらの図4及び図5に示す工程に沿って上記液滴吐出ヘッドの製造方法を説明する。なお、これらの図では、吐出室5と個別電極8からなる静電アクチュエータの部分が基本的に表されているが、図の左端部はその静電アクチュエータの部分ではなく、等電位接点の部分を表している。
(a)ここではガラス基板2を作製する。まず約1mmのガラス基板を用意し、その一方の面に対し、個別電極8の形状パターンに合わせて0.2μmの深さの凹部9を形成する。等電位接点となる部分については、エッチングを行わずに残しておく。ここで、等電位接点の形状については、キャビティプレート1のシリコン基板と個別電極8とを接触させて等電位にすることができればその形状は問わない。凹部9及び等電位接点の形成後、例えばスパッタリング法を用いて、0.1μmの厚さの個別電極8及びITOパターン24を同時に形成する。最後にインク供給口13及び大気開放穴28をサンドブラスト法または切削加工により形成する。これにより、ガラス基板2が作製される。
(b)一方で、ガラス基板2に接合されてキャビティプレート1となるシリコン基板を準備する。表面が(110)面方位の酸素濃度の低いシリコン基板41の片面(ガラス基板2との接合面側となる)を鏡面研磨し、220μmの厚みのシリコン基板41(第1の基板となるもの)を作製する。
次に、酸素及び水蒸気雰囲気中において、1075℃の温度条件で4時間酸化することで、シリコン基板41の両面に約1.2μmのSiO2膜41Aを成膜する。SiO2膜41Aは後の工程で行うボロンの選択拡散のためのマスクとなる。
(c)シリコン基板41の両面にレジストを塗布し、ボロンを選択拡散させたい部分(この例では電極取出し口25となる部分)のSiO2膜41Aを除去すべくレジストパターニングを施し、ふっ酸水溶液でエッチングして、SiO2膜41Aをパターニングする。その後、シリコン基板41からレジストを剥離する。
なお、この工程においてボロンを選択拡散させる部分は、電極取出し口25に限られるものではなく、後の工程でウェットエッチングにより薄膜が形成される部分のうちの所望の部分にボロンを選択拡散させることができる。
(d)次に、シリコン基板41のボロンドープ層42を形成する面を、B23を主成分とする固体の拡散源に対向させて石英ボートにセットする。さらに縦型炉に石英ボートをセットして、炉内を窒素雰囲気にし、温度を1100℃に上昇させて6時間保持することで、ボロンをシリコン基板41中に拡散させ、電極取出し口25となる部分にボロンドープ層42を、例えば2.2μmの厚さに形成する。ここでボロンドープ層42の形成工程においては、炉へのシリコン基板41(石英ボート)の投入温度を800℃とし、さらにシリコン基板41の取出し温度も800℃とする。これにより、シリコン基板41内の酸素による酸素欠陥の成長速度が速い領域(600℃から800℃)をすばやく通過させることができるため、酸素欠陥の発生を抑えることができる。なおこの時、シリコン基板41の拡散面と反対面にはSiO2膜41Aが残っているため、ボロンが反対面に回り込んでも、SiO2膜41Aがマスクとなって反対面にボロンが拡散されることが無い。
(e)シリコン基板41のボロンドープ層42の表面にはボロン化合物が形成されているが(図示なし)、酸素及び水蒸気雰囲気中、600℃の条件で1時間30分酸化することで、ふっ酸水溶液によるエッチングが可能なB23+SiO2 に化学変化させることができる。シリコン基板41のボロンを選択拡散した面と反対面にレジストを塗布し、シリコン基板41をふっ酸水溶液に10分間浸すと、選択拡散部のB23+SiO2膜及び拡散面側のSiO2膜41Aがエッチング除去される。その後、シリコン基板41からレジストを剥離する。
(f)続いて、工程(d)と同様に、シリコン基板41のボロンドープ層42が形成された面をB23を主成分とする固体の拡散源に対向させて石英ボートにセットする。縦型炉に石英ボートをセットし、炉内を窒素雰囲気にし、温度を1050℃に上昇させ、そのまま温度を7時間保持し、ボロンをシリコン基板41中に拡散させ、今度は拡散面側全面にボロンドープ層42を、例えば0.8μmの厚さに形成する。このボロンドープ工程では、シリコン基板の投入温度を800℃とし、シリコン基板の取出し温度も800℃とする。これにより、酸素欠陥の成長速度が速い領域(600℃から800℃)をすばやく通過することができるため、酸素欠陥の発生を抑えることができる。この時、拡散面と反対面にはSiO2膜41Aが残っているため、ボロンが反対面に回り込んでも、SiO2膜がマスクとなって反対面に拡散されることが無い。
この工程での処理により、先に選択拡散した電極取出し口25となる部分のボロン濃度は他の部分に比べて濃くなり、しかもその部分はシリコン基板41のより内部へボロンが拡散された状態となる。
(g)ここでもボロンドープ層42の表面にはボロン化合物が形成されるが(図示なし)、酸素及び水蒸気雰囲気中、600℃の条件で1時間30分酸化することで、ふっ酸水溶液によるエッチングが可能なB23+SiO2に化学変化させることができる。そして、シリコン基板をふっ酸水溶液に10分間浸す。すると、拡散面のB23+SiO2膜及び反対面のSiO2膜がエッチング除去される。
(h)続いて、ボロンドープ層42を形成した面に、プラズマCVD法により、TEOS膜(絶縁膜)14を、成膜時の処理温度は360℃、高周波出力は250W、圧力は66.7Pa(0.5Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3 /min(100sccm)、酸素流量1000cm3 /min(1000sccm)の条件で0.1μm成膜する。さらに、成膜したTEOS膜14の表面にレジストを塗布し、等電位接点においてシリコンを露出させる窓を作り込むためのレジストパターニングを施す。そして、ふっ酸水溶液でウェットエッチングを行ってTEOS膜14をパターニングし窓を形成する。その後、レジストを剥離する。
(i)続いて、シリコン基板41とガラス基板2を360℃に加熱した後、ガラス基板2に負極、シリコン基板41に正極を接続して、800Vの電圧を印加して陽極接合を行う。この陽極接合時に、シリコン基板41とガラス基板2の界面において、ガラスが電気化学的に分解され酸素が気体となって発生する場合がある。また加熱によって表面に吸着していたガス(気体)が発生する場合もある。しかしながら、これらの気体は大気開放穴28から逃げるため、ギャップG内が正圧になることは無い。
(j)続いて、陽極接合後のシリコン基板41の厚みが約60μmになるまでシリコン基板41表面の研削加工を行う。その後、加工変質層を除去するために、32w%の濃度の水酸化カリウム溶液でシリコン基板41を約10μmウェットエッチングする。これによりシリコン基板41の厚みを約50μmにする。
なお、この研削工程及び加工変質層除去工程においては、大気開放穴28から液体がギャップに入り込まないように、片面保護治具、テープ等を用いて大気開放穴28を塞ぎ、ギャップを保護する。
(k)次に、ウェットエッチングを行った面に対し、TEOSによるエッチングマスク(以下、TEOSエッチングマスクという)43をプラズマCVD法により成膜する。成膜条件としては、例えば、成膜時の処理温度は360℃、高周波出力は700W、圧力は33.3Pa(0.25Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3 /min(100sccm)、酸素流量1000cm3 /min(1000sccm)の条件で1.0μm成膜する。TEOSを用いた成膜は比較的低温で行うことができるので、基板の加熱をできる限り抑えられる点で都合がよい。
(l)続いて、大気開放穴28に例えばエポキシ系接着剤28Aを流し込み、大気開放穴28を封止する。これによりギャップGは密閉状態となるため、以後の工程で大気開放穴28から液体等が入り込むことが無くなる。なお、大気開放穴28の封止は、TEOSエッチングマスクを成膜した後に行うのが好ましい。TEOSエッチングマスクの成膜前に大気開放穴28の封止を行うと、閉じこめられたギャップG内の気圧が、TEOSエッチングマスク成膜時に膨張し、薄くなったシリコン基板を押し上げて、シリコン基板が割れる可能性があるからである。
さらに、TEOSエッチングマスク43にレジストパターニングを施し、ふっ酸水溶液中に浸して、吐出室5及び電極取出し口25となる部分のTEOSエッチングマスク43が無くなるまで、その部分をエッチングする。その後レジストを剥離する。なお、特開2004−306444号公報にあるように、エッチングした場合に貫通穴となる部分の中央部にシリコンの島が残るように、TEOSエッチングマスク43に対してレジストパターニングを施してもよい。
(m)続いて、リザーバ7となる部分のTEOSエッチングマスク43をエッチングするため、レジストパターニングを施す。そして、ふっ酸水溶液でそれらの部分のTEOSエッチングマスク43を0.7μmだけエッチングしてリザーバ7をパターニングする。これによりリザーバ7となる部分に残っているTEOSエッチングマスク43の厚みは0.3μmとなる。このようにするのは、最終的にリザーバ7の底面に厚みを持たせ、リザーバ7の剛性を高めるためである。なお、ここでは、TEOSエッチングマスク43の残留厚みを0.3μmとしたが、所望するリザーバ7の深さによって、この厚みは調整する。この後、レジストを剥離する。
(n)次に、接合済み基板を35wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に浸し、吐出室5及び電極取出し口25となる部分の厚みが約10μmになるまでウェットエッチングを行う。このとき、リザーバ7の部分はマスクされておりエッチングがまだ始まっていない。
(o)続いて、ふっ酸水溶液に接合済み基板を浸して、リザーバ7となる部分のTEOSエッチングマスク43を除去する。
(p)さらに、接合済み基板を3wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に浸し、ボロンドープ層42によりエッチングストップが十分効いたものと判断するまでエッチングを続ける。このように、2種類の濃度の異なる水酸化カリウム水溶液を用いたエッチングを行うことによって、形成される振動板4の面荒れを抑制し、振動板4の厚み精度を0.80±0.05μm以下にすることができる。その結果、液滴吐出ヘッドの吐出性能を安定化することができる。
ここで、エッチングストップについて簡単に説明しておく。アルカリ性水溶液でシリコン基板の異方性ウェットエッチングを行った場合、高濃度(約5×1019atoms・cm-3以上)のボロンをドーパントとした領域では極端にエッチングレートが小さくなる。そのため、振動板4や電極取出し口25の部分に必要な厚さのボロンドープ層を形成しておけば、ウェットエッチングにより、それらの厚さを精度よく形成することができる。なお、エッチングストップとは、エッチング面から発生する気泡が停止した状態と定義し、その状態のときにシリコンのエッチングが終了したものとする。
この例の場合、電極取出し口25の部分はボロンドープ層42が二重に形成された状態となるため、その部分が高濃度で他より厚いボロン拡散層となる。このため、エッチングストップが振動板4の部分に比べて早く効き始め、結果として電極取出し口25となる部分の膜厚は約3μmとなることと、ボロンの拡散効果によりその部分の強度が増す。このため、電極取出し口25を最終的に開口する前に、その薄膜の割れが低減されて歩留まりが向上する。
また、この工程でリザーバ7となる部分もエッチングされてリザーバ7が形成されるが、上記エッチングストップを目安にエッチングを終了した場合に、リザーバ7の底面厚みは20μm程度となるようにする。リザーバ7の底面厚みをこのようにするのは、リザーバ7の下側(図1等参照)に位置する個別電極8(又はリード部10)により、静電引力が生じ、これによりリザーバ7が撓んで変形するのを防ぐためである。
(q)ウェットエッチングを終了すると、接合済み基板をふっ酸水溶液に浸し、シリコン基板41表面のTEOSエッチングマスク43を剥離する。
(r)次に、シリコン基板41の電極取出し口25となる部分の残留シリコンを除去するために、電極取出し口25となる部分が開口したシリコンマスクを接合済み基板のシリコン基板41側の表面に取り付ける。そして、例えば、RFパワー200W、圧力40Pa(0.3Torr)、CF4 流量30cm3 /min(30sccm)の条件で、RIEドライエッチング(異方性ドライエッチング)を1時間行い、電極取出し口25となる部分のみにプラズマを当てて開口する。この開口により、個別電極8とシリコン基板41とのギャップGも大気開放される。
なお、上記のドライエッチングに代えて、機械的加工やレーザ加工により、電極取出し口25となる部分の残留シリコンを除去することも可能である。ただし、シリコンの破片等の異物の発生を防ぐことができるという観点からは、ドライエッチングやレーザ加工による方が機械的加工より好ましい。
その後、シリコン基板41の流路形成面にプラズマCVD法によりTEOS膜による液体保護膜15を、成膜時の処理温度は360℃、高周波出力は250W、圧力は66.7Pa(0.5Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3 /min(100sccm)、酸素流量1000cm3 /min(1000sccm)の条件で0.1μm成膜する。液体保護膜15は、上述したように、プラズマCVD法以外にもスパッタリング法によって成膜したSiO2 膜で形成してもよい。
本実施の形態では、電極取出し口25となる部分を開口した後に液体保護膜15を成膜している。電極取出し口25の開口前に液体保護膜15を成膜するとなると、ギャップ内が密閉状態になっているので、成膜時の処理温度によってギャップ内の気体が膨張して、薄膜部を破壊する可能性があるからである。したがって、このように、まず電極取出し口25となる部分を開口してギャップ内を大気開放するのがよい。
さらに、電極取出し口部25(端子部11)に残っている液体保護膜15を除去するために、再度、シリコンマスクをシリコン基板41表面に取り付け、例えば、RFパワー200W、圧力40Pa(0.3Torr)、CF4 流量30cm3 /min(30sccm)の条件でRIEドライエッチングを20分間行い、電極取出し口部25のみに、プラズマにより励起されたイオンを当てて、異方性エッチングを行う。なお、ここまでの処理が済んだシリコン基板41を、キャビティプレート1と称することとする。
(s)次に、例えばエポキシ樹脂からなる封止材26を、キャビティプレート1とガラス基板2の個別電極8との間で形成されるギャップGの開口端部に沿って流し込み、ギャップGを封止する。これによりギャップGは再び密閉状態となる。また、ギャップGと大気開放穴28へ連通する溝とは、この封止材26によって遮断される。
(t)その後、ノズル孔があらかじめ形成されたノズルプレート3を例えば、エポキシ系接着剤により、接合済み基板のキャビティプレート1側に接着する。
(u)最後に、ダイシングライン27に沿ってダイシングを行い、個々の液滴吐出ヘッドに切断し、液滴吐出ヘッドが完成する。ここで、陽極接合時には短絡していた各個別電極8はそれぞれ分断され、ノズル毎に独立する。また、大気開放穴28及びそこに連通するガラス溝も切断される。
以上のような方法によれば、ガラス基板2とシリコン基板41を接合した後に、接合されたシリコン基板41に対して吐出室等の各流路を形成するため、取り扱いが容易で、基板の割れも低減することができ、且つ基板の大口径化が可能となる。大口径化が可能となれば、一枚の基板から多くのインクジェットヘッドを取出すことができるため、生産性を向上させることができる。
また、電極取出し口25となる部分のような大面積にわたって薄膜が形成される部分にのみ選択的にボロンを高濃度に一次拡散した後、シリコン基板41のボロン一次拡散面側の全面にさらにボロンを高濃度に拡散するため、振動板を高精度に形成しつつ、所定部分の薄膜の強度を上げ、薄膜部の割れを防止することができる。
また、シリコン基板41に対して選択的にボロンを拡散させるマスクとしてSiO2 膜を利用することで、そのマスクの形成も簡単に行える。
さらに、電極取出し口25となる部分を機械的に割るのではなく、ドライエッチング法を用いて電極取出し口25となる部分の開口を行うようにしたので、破片等の異物が発生することなく、異物付着によるノズルプレート3とキャビティプレート1との接着不良、封止材26を用いた際のギャップ封止不良等を防ぐことができる。また、TEOSを用いたプラズマCVD、スパッタリングにより、液体保護膜15を成膜するようにしたので、低温で緻密な成膜を行うことができる。
さらに、電極取出し口25となる部分をドライエッチングする際、開口位置を高精度に作製することができるSiO2膜をマスクに用いたので、電極取出し口25となる部分だけを高精度にドライエッチングすることができる。
また、シリコン基板41とガラス基板2との陽極接合の際、あらかじめガラス基板2に大気開放穴28を設け、ギャップの密閉状態を防ぐようにしたので、陽極接合時にギャップ部分に発生した気体によりシリコン基板41を加圧して、薄膜化した部分から割れるのを防ぐことができる。そして、ウェットエッチングが行われる前に大気開放穴28を塞ぐようにしたので、大気開放穴28からのエッチャントの浸入を防ぐことができる。
なお、上記に示した液滴吐出ヘッドの製造方法は一例であり、そこで使用した温度、圧力、時間、厚みなどの値は上記に説明したものに限られるものではない。
実施の形態2
図6は上述の実施の形態で製造した液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出装置の概略構成図である。図6の液滴吐出装置はインクジェット方式による印刷を目的とするプリンタである。図6において、被印刷物であるプリント紙100が支持されるドラム101と、プリント紙100にインクを吐出し、記録を行う液滴吐出ヘッド102とで主に構成される。また、図示していないが、液滴吐出ヘッド102にインクを供給するためのインク供給手段がある。プリント紙110は、ドラム101の軸方向に平行に設けられた紙圧着ローラ103により、ドラム101に圧着して保持される。そして、送りネジ104がドラム101の軸方向に平行に設けられ、液滴吐出ヘッド102が保持されている。送りネジ104が回転することによって液滴吐出ヘッド102がドラム101の軸方向に移動するようになっている。
一方、ドラム101は、ベルト105等を介してモータ106により回転駆動される。また、プリント制御手段107は、印画データ及び制御信号に基づいて送りネジ104、モータ106を駆動させ、また、ここでは図示していないが、発振駆動回路を駆動させて振動板4を振動させ、制御をしながらプリント紙110に印刷を行わせる。
ここでは液体をインクとしてプリント紙110に吐出するようにしているが、液滴吐出ヘッドから吐出する液体はインクに限定されない。例えば、カラーフィルタとなる基板に吐出させる用途においては、カラーフィルタ用の顔料を含む液体、有機EL等の表示基板に吐出させる用途においては、発光素子となる化合物を含む液体、基板上に配線する用途においては、例えば導電性金属を含む液体を、それぞれの装置において設けられた液滴吐出ヘッドから吐出させるようにしてもよい。また、液滴吐出ヘッドをディスペンサとし、生体分子のマイクロアレイとなる基板に吐出する用途に用いる場合では、DNA(Deoxyribo Nucleic Acids :デオキシリボ核酸)、他の核酸(例えば、Ribo Nucleic Acid:リボ核酸、Peptide Nucleic Acids:ペプチド核酸等)タンパク質等のプローブを含む液体を吐出させるようにしてもよい。その他、布等の染料の吐出等にも利用することができる。
実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの分解図。 図1の液滴吐出ヘッドの断面図であり、吐出室の部分を長手方向に割断した部分の断面図(a)、等電位接点部分の拡大部分断面図(b)。 図1の液滴吐出ヘッドを構成するガラス基板を上面から見た図。 実施の形態1の液滴吐出ヘッドの製造工程図。 図4に続く液滴吐出ヘッドの製造工程図。 実施の形態1の液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置の概略構成図。
符号の説明
1 キャビティプレート、2 ガラス基板、3 ノズルプレート、4 振動板、5 吐出室、6 オリフィス、7 リザーバ、8 個別電極、9 凹部、10 リード部、11 電極端子、12 ノズル孔、13 インク供給口、14 TEOS膜、15 液体保護膜、18 ダイヤフラム、19 共通電極、20 液滴、21 記録紙、22 発振回路、23 ワイヤ、24 ITOパターン、25 電極取出し口、26 封止材、27 ダイシングライン、28 大気開放穴、28A 接着剤、41 シリコン基板、41A シリコン酸化膜(SiO2膜)、42 ボロンドープ層、43 TEOSエッチングマスク、100 プリンタ、102 液滴吐出ヘッド。

Claims (5)

  1. 個別電極となる複数の電極及び前記複数の電極を外部の機器に接続する複数の電極端子が形成された電極基板と、液体を貯えて吐出させる吐出室となる複数の凹部が少なくとも形成されるシリコン基板とを、前記電極と前記吐出室の底面となる部分をギャップを介して対向させて接合する接合工程と、
    前記電極基板と接合された前記シリコン基板に、少なくとも前記凹部を含む液体流路および前記電極端子に対応した電極取出し口となる部分をウェットエッチングを利用して形成するウェットエッチング工程と、を備えた液滴吐出ヘッドの製造方法において、
    前記電極基板と接合される前の前記シリコン基板に対して、前記ウェットエッチング工程において薄膜が形成される部分のうち、所定の薄膜形成予定部分にのみ選択的にボロンを拡散し、その後さらに該シリコン基板のボロンが拡散された側の全面にボロンを拡散し、
    前記シリコン基板に対して選択的にボロンを拡散する部分を、前記電極取出し口となる部分とすることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  2. 前記シリコン基板に対して選択的にボロンを拡散するため、SiO2 膜をマスクとして利用することを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  3. 前記ウェットエッチング工程では、ボロン拡散により形成されたボロンドープ層によるエッチングストップが作用するまで、前記シリコン基板をエッチングすることを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  4. 前記ウェットエッチングの終了後、前記シリコン基板の前記電極取出し口となる部分に残ったボロンドープ層を含む薄膜を、ドライエッチングにより除去することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  5. 前記ウェットエッチングの終了後、前記シリコン基板の前記電極取出し口となる部分に残ったボロンドープ層を含む薄膜を、レーザ加工により除去することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
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