JP2008221592A - 透明樹脂シート - Google Patents

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寿 伊東
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Abstract

【課題】光を外部に取り出す効率が高く、線膨張係数が小さく、寸法安定性に優れた発光装置に好適な透明樹脂シートを提供すること。
【解決手段】透明樹脂及び繊維状フィラーからなる透明基材の片面に高屈折率層を形成した透明樹脂シートであって、前記透明基材の30〜150℃での平均線膨張係数が40ppm以下であり、前記透明基材の表面の平均粗さ(Ra)が10nm以上であり、前記高屈折率層の屈折率が1.6以上であることを特徴とする透明樹脂シートであり、好ましくは、高屈折率層が有機物からなり、透明樹脂がカチオン重合可能な成分を含む樹脂組成物を硬化させて得られるものである透明樹脂シート。
【選択図】 なし

Description

本発明は、各種ディスプレイ、表示装置、液晶用バックライト等に用いられる発光装置、ELディスプレイ、電界放出ディスプレイのような自発光型表示装置の表示基板として好適な、線膨張係数が小さく、寸法安定性に優れた透明樹脂シートに関する。
ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、電界放出ディスプレイのような自発光型の薄型ディスプレイは、広い視野角を有し、かつ表示の応答速度が速いことから注目されている。しかしELディスプレイの場合、発光層の屈折率が通常1.6以上と高く、発光した光が内部で全反射して閉じ込められるため、発光効率が非常に悪い。駆動電圧を高くし、画面輝度を上げることも可能であるが、素子の寿命が短くなる、消費電力が大きくなり、バッテリー駆動の場合連続使用時間が短くなる等の問題があった。またプラズマディスプレイに関しても、前面フィルターを含めると、液晶ディスプレイ、CRTに比べ、発光輝度が低く、高い駆動電圧をかけても輝度向上は難しい。さらにその他半導体発光装置のような、屈折率が1.6より高い発光源を有する各種発光装置においても、発光体と空気界面との間で全反射する割合が高くなり、光の取り出し効率が低いという問題があった。 このような内部反射による低い発光効率の改善のため、素子を構成する界面を乱反射面とする方法、あるいは発光層中に散乱中心となる粒子を分散する方法が提案されている(非特許文献1)。しかしこのような方法では、凸凹部の凸部に電界が集中し、発光が不均一になるなどの問題があった。
また、発光装置の透明基板には、重くて割れやすいガラスに替わり、軽くて割れにくいプラスチックの適用が検討されているが、プラスチックを透明基板として表示素子に用いた場合、ガラス基板よりも熱線膨張係数が大きいため、表示画素を加工する寸法精度が確保できず、高精細な表示を得ることが難しい等の問題がある。
猪口敏夫、「エレクトロルミネッセントディスプレイ」、産業図書株式会社刊、平成3年7月25日初版発行
本発明の目的は、発光装置を構成する材料界面における内部反射損失を低減し、外部光取り出し効率に優れた発光装置に好適な透明樹脂シートを提供することにある。
本発明は以下の通りである。
(1)透明樹脂及び繊維状フィラーからなる透明基材の片面に高屈折率層を形成した透明樹脂シートであって、前記透明基材の30〜150℃での平均線膨張係数が40ppm以下であり、前記透明基材の表面の平均粗さ(Ra)が10nm以上であり、前記高屈折率層の屈折率が1.6以上であることを特徴とする透明樹脂シート。
(2)前記高屈折率層が有機物からなる(1)記載の透明樹脂シート。
(3)前記透明樹脂がカチオン重合可能な成分を含む樹脂組成物を硬化させて得られるものであり、前記カチオン重合可能な成分が1種又は2種以上のエポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物、又はビニルエーテル基を有する化合物を含む(1)又は(2)記載の透明樹脂シート。
(4)前記透明樹脂が化学式(1)で示される脂環式エポキシ樹脂を主成分として含む樹脂組成物を硬化させて得られるものである(1)又は(2)記載の透明樹脂シート。
Figure 2008221592
(5)前記透明樹脂と前記繊維状フィラーとの屈折率差が0.01以下である(1)〜(4)何れか記載の透明樹脂シート。
(6)前記繊維状フィラーがガラス繊維布である(1)〜(5)何れか記載の透明樹脂シート。
(7)前記高屈折率層を形成した面側に発光装置を配置した(1)〜(6)何れか記載の透明樹脂シート。
(8)前記高屈折率層を形成した面側に有機EL発光装置を配置した(1)〜(6)何れか記載の透明樹脂シート。
本発明の透明樹脂シートは、線膨張係数が小さく、優れた寸法安定性を有しており、本発明の透明樹脂シートを用いることにより、有機EL発光装置のような自発光装置において、光が出射されてから観測者まで光が伝達される間、空気−基板、基板−発光層の間での光の内部反射による光閉じ込めが抑制されるため、光利用効率の高く、低消費電力な高精細な画像を有した発光装置が得られる。
自発光型の発光装置において、発光した光が内部に閉じ込められる大きな原因として、空気層と基板、基板と電極、電極と発光層、基板と発光層などの界面での全反射があげられる。古典光学の法則により、屈折率nの媒体から屈折率n (n>n)の媒体へ光が透過するとき、臨界角(θ)=arcsin(n/n) ・・・ 式(1) と定義すると、θより大きい入射角の光線は界面を通過できず全反射する。したがって、界面での屈折率差が大きいほど臨界角が小さくなり、全反射する成分が多くなる。
全反射成分を減らす方法としては、界面の屈折率差を小さくする方法、または界面形状を凹凸にすることで全反射角の分布を界面に持たせる方法が考えられる。本発明の透明光学シートを用いた場合、高屈折率層を介して発光層が形成されるため、発光層と高屈折率層の屈折率差が小さくなり、全反射する成分を抑えることができる。更に、高屈折率層と透明基材は凹凸形状で積層されるため、全反射ロスが抑えられる。つまり、発光した光が発光層内部で全反射して閉じ込められる割合が低減する。また、光出射側の面は凸凹形状を有していることで、空気層と基板との界面での全反射成分が小さくなる。
本発明の透明樹脂シートに使用する透明基材に用いる透明樹脂としては、各種の樹脂を使用することが可能であり特に限定されるものではないが、カチオン重合可能な成分を含む樹脂組成物が硬化させて得られるものが好ましく、カチオン重合可能な成分としては、例えばエポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物、又はビニルエーテル基等が挙げられる。
エポキシ基を有する化合物としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、またはこれらの水添化物、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂、カルド骨格を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂としては例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3‘、4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、1,8,9、ジエポキシリモネン、ジシクロペンタジエンジオキサイド、シクロオクテンジオキサイド、アセタールジエポキシサイド、ε−カプロラクトンオリゴマーの両端にそれぞれ3,4−エポキシシクロヘキシルメタノールと3,4―エポキシシクロヘキシルカルボン酸がエステル結合したもの、エポキシ化されたヘキサヒドロベンジルアルコール等、脂環式多官能エポキシ樹脂、水添ビフェニル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
またオキセタニル基を有する化合物としては1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(アロンオキセタンOXT−121(XDO))、ジ[2−(3−オキセタニル)ブチル]エーテル(アロンオキセタンOXT−221(DOX))、1,4−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン(HQOX)、1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン(RSOX)、1,2−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン(CTOX)、4,4’−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル(4,4’−BPOX)、2,2’−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ビフェニル(2,2’−BPOX)、3,3’,5,5’−テトラメチル〔4,4’−ビス(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル(TM−BPOX)、2,7−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ナフタレン(2,7−NpDOX)、1,6−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン(OFH−DOX)、3(4),8(9)−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、1,2−ビス[2−{(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}エチルチオ]エタン、4,4’−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メチル]チオジベンゼンチオエーテル、2,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]ノルボルナン(NDMOX)、2−エチル−2−[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]−1,3−O−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール(TMPTOX)、2,2−ジメチル−1,3−O−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール(NPGOX)、2−ブチル−2−エチル−1,3−O−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール、1,4−O−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−ブタン−1,4−ジオール、2,4,6−O−トリス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]シアヌル酸、ビスフェノールAと3−エチル−3−クロロメチルオキセタン(OXCと略す)のエーテル化物(BisAOX)、ビスフェノールFとOXCのエーテル化物(BisFOX)、フェノールノボラックとOXCのエーテル化物(PNOX)、クレゾールノボラックとOXCのエーテル化物(CNOX)、オキセタニルシルセスキオキサン(OX−SQ)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンのシリコンアルコキサイド(OX−SC)3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(アロンオキセタンOXT−212(EHOX))、3−エチル−3−(ドデシロキシメチル)オキセタン(OXR−12)、3−エチル−3−(オクタデシロキシメチル)オキセタン(OXR−18)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(アロンオキセタンOXT−211(POX))、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXA)、3−(シクロヘキシルオキシ)メチル−3−エチルオキセタン(CHOX)等が上げられる。ここで前記の括弧内は東亞合成株式会社 の製品名又は略称である。
ビニルエーテル基を有する化合物としては特に限定されないが、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールものビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、トリシクロデカンビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ペンタエリスリトール型テトラビニルエーテル等が挙げられる。
これらの内、特に化学式(1)で示される脂環式エポキシ樹脂を主成分として主成分として含む樹脂組成物を硬化させて得られるものであることが好ましい。化学式(1)を適用した硬化物の線膨張係数(αm)は小さいため、繊維状フィラーと複合化した場合の線膨張係数も小さくできるからである。
Figure 2008221592
また、これらの樹脂及び化合物を硬化させるには、単独で硬化させる場合においてはカチオン触媒、またはアニオン触媒を用いて硬化させることができ、種々の硬化剤を用いて硬化させることも可能である。例えばエポキシ樹脂の場合、酸無水物や脂肪族アミンを用いて硬化させることができる。
前記カチオン系硬化触媒としては、例えば加熱によりカチオン重合を開始させる物質を放出するもの(例えばオニウム塩系カチオン系熱カチオン系硬化触媒またはアルミニウムキレート系カチオン系硬化触媒)や、活性エネルギー線によってカチオン重合を開始させる物質を放出させるもの(例えばオニウム塩系カチオン系硬化触媒等)が挙げられる。これらの中でも、熱カチオン系硬化触媒が好ましい。これにより、より耐熱性に優れる硬化物を得ることができる。
前記熱カチオン系硬化触媒としては、例えば芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、アンモニウム塩、アルミニウムキレート、三フッ化ホウ素アミン錯体等が挙げられる。具体的には、芳香族スルホニウム塩として三新化学工業製のSI-60L、SI-80L、SI-100L、旭電化工業製のSP-66やSP-77等のヘキサフルオロアンチモネート塩挙げられ、アルミニウムキレートとしてはエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられ、三フッ化ホウ素アミン錯体としては、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イミダゾール錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体等が挙げられる。
前記カチオン系触媒の含有量は、特に限定されないが、例えば前記式(1)で示されるエポキシ樹脂を使用する場合は、該エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜3重量部が好ましく、特に0.5〜1.5重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると硬化性が低下する場合があり、前記上限値を超えると透明基材が脆くなる場合がある。必要に応じて硬化反応を促進させるため増感剤、および酸増殖剤等もあわせて用いることが可能である。
本発明に使用する透明基材には繊維状フィラーと樹脂との屈折率をあわせて透明性を向上させるため、透明樹脂中には樹脂、有機微粒子、無機微粒子などの屈折率調整成分を添加することができる。屈折率調整成分は、主成分の樹脂の屈折率が使用する繊維状フィラーの屈折率よりも高い場合は、繊維状フィラーの屈折率よりも低い成分を添加することができ、逆に主成分の屈折率が使用する繊維状フィラーよりも低い場合は、繊維状フィラーの屈折率よりも高い成分を添加することができる。
屈折率調整成分として樹脂を添加する場合には、主成分樹脂と架橋反応する官能基を有する化合物であるカチオン重合可能な成分を添加することが好ましい。前記カチオン重合可能な成分としては、1種又は2種以上のエポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物、又はビニルエーテル基を有する化合物であることが好ましい。
例えば、シルセスキ骨格を有する脂環式エポキシモノマー、シルセスキ骨格を有するオキセタンモノマー、シリケート構造を有するオリゴマー(小西化学製:PSQレジン、東亜合成製:オキセタニルシルセスキオキサン、オキセタニルシリケート)、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のカップリング剤が挙げられる。特に化学式(2)で示されるオキセタニルシリケートであることが好ましい。
Figure 2008221592
nは1〜5の整数
屈折率調整成分として無機微粒子を添加する場合はたとえばナノ粒子、ガラスビーズ等が挙げられ、平均分散粒子径が100nm以下となるような粒子が好ましい。
具体的にはシリケート構造を有するシリカ微粒子、または酸化チタン微粒子、酸化ジルコニア微粒子、アルミナ微粒子等が挙げられる。これらの粒子は屈折率の調整のために適宜用いることができる。
例えば主成分である樹脂の屈折率が繊維状フィラーの屈折率よりも高い場合には、繊維状フィラーより屈折率の低いシリカ微粒子が好ましい。これにより耐熱性、線膨張係数等の硬化物の物性を低下させずに高い透明性を得ることができる。
また同じシリカ微粒子の中でも表面処理が施されているシリカ微粒子がより好ましい。なぜなら微粒子表面にはカチオン重合を促進する活性水素(シラノール基)が存在し、表面処理がない場合、硬化反応が進行し保存安定性が低いからである。
本発明に用いる繊維状フィラーの屈折率は、特に限定されないが、1.4〜1.6が好ましく、特に1.5〜1.55が好ましい。透明樹脂のアッベ数と繊維状フィラーのアッベ数が近いほど広い波長領域で屈折率が一致し、広範囲で高い光線透過率が得られるからである。
本発明に用いる繊維状フィラーとしては、ガラス繊維、ガラスクロスやガラス不織布などのガラス繊維布、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスパウダー、ミルドガラスなどがあげられ、中でも線膨張係数の低減効果が高いことからガラスクロス、ガラス不織布等のガラス繊維布が好ましく、さらにガラスクロスが最も好ましい。
ガラスの種類としてはEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Tガラス、Dガラス、NEガラス、クオーツ、低誘電率ガラス、高誘電率ガラスなどが上げられ、中でもアルカリ金属などのイオン性不純物が少なく入手の容易なEガラス、Sガラス、TガラスNEガラスが好ましい。
繊維状フィラーの配合量は透明基材に対して1〜90重量%が好ましく、より好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%である。繊維状フィラーの配合量がこの範囲であれば成形が容易で、複合化による線膨張の低下の効果が認められる。
本発明に使用する透明基材の30〜150℃での平均線膨張係数は、40ppm以下であることが必要である。より好ましくは30ppm以下、最も好ましくは20ppm以下である。平均線膨張係数が上限値を超えると高精細な表示素子が作製し難いという問題が発生する可能性がある。
本発明に使用する透明基材の生産方法には制限はなく、例えば未硬化の樹脂組成物と繊維状フィラーとを直接混合し、必要な方に注型した後に架橋させてシートとする方法、未硬化の樹脂組成物を溶剤に溶解し繊維状フィラーを分散させてキャストした後、架橋させてシートとする方法、未硬化の樹脂組成物または樹脂組成物を溶剤に溶解させたワニスを織布フィラーや不織布フィラーに含浸させた後架橋させてシートなどとする方法等が挙げられる。
本発明に使用する透明基材の表面の平均粗さ(Ra)は、10nm以上であることが必要であり、好ましくは50nm以上である。下限値未満では光取り出し効率が充分でない可能性がある。
平均粗さ(Ra)は、10nm以上にするためには、透明基材表面に凸凹形状を形成することが好ましい。凸凹形状の形成は、例えば、紫外線硬化型樹脂を金型と透明基材内に注入した後、紫外線を照射し樹脂を硬化させて形状を転写する方法、未硬化の樹脂組成物を繊維状フィラーに含浸させた複合シートと金型とを加熱加圧することで形状を転写する方法、等によって作製できる。金型の凹凸加工は、例えばサンドブラスト、電鋳、電子彫刻、レーザー彫刻、エッチィングによって得られる。また、金型の材質は、プラスチックであってもよい。その他、凸凹形状を作製する方法は、ビーズ、フィラーと透明樹脂組成物から成る反応性樹脂混合物を樹脂シート上にコーティングし、その後光または熱で硬化する方法が上げられる。この場合透明樹脂とビーズ及びフィラーの屈折率差は、0.01以下が好ましい。凹凸形状形成は、機械加工、溶剤処理、紫外線、電子線処理、レーザーアブレーション、プラズマ処理等によっても行なうことができる。凸凹層の形状は、基板の法線を含む断面が、三角型、丸型、お椀型、不定形型が適用できる。
本発明の透明樹脂シートにおいて、透明基材の片面には高屈折率層が形成される。高屈折層の屈折率は、一般的な有機EL発光層の屈折率が1.6以上であるため、1.6以上であることが必要である。屈折率が1.6以上であれば、前述の古典光学の法則により、発光層からの出射光のほとんど全てを透過させることができる。
高屈折層の材質は、有機物、無機物、および有機無機複合物のいずれでもかまわないが、生産性、形状コントロール性の点で有機物である方が好ましい。有機物の例としては、分子中に塩素、臭素、硫黄、窒素を含むものが主成分であることが好ましい。具体例としては、ビス(4− メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビス(4− アクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビス(4− メタクリロイルチオ−3,5− ジクロロフェニル)スルフィド、ビス(4− アクリロイルチオ−3,5− ジブロモフェニル)スルフィド、等が挙げられ、これらを単独または2種以上を組合せて使用することができる。
高屈折率層の表面は、平均粗さ(Ra)がRa<10nm、最大高さ(Ry)がRy<0.3μmが好ましい。高屈折率層は、透明基材の表面凹凸を平坦化する機能も有している。無機バリア膜および有機EL素子の構成する積層膜は数10nm〜100nmと薄膜であるため、薄膜を形成する表面の平坦性が良好であることが好ましい。
本発明の透明樹脂シートにおいて、高屈折率層の表面に酸素バリア性、水蒸気バリア性、耐薬品性などを満たすために、無機物層または無機物層と有機物層の積層物を形成することが好ましい。無機物層としては、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Ta、Cu、Ce、Ge、Zr等の1種以上を含む酸化物、窒化物、酸化窒化物等が挙げることができるが、発光層および透明電極材料(ITOまたはIZOなど)の屈折率差を少なくすることが好ましく、1.50以上が好ましい。
本発明の透明樹脂シートは、高屈折率層を形成した面側に発光装置を配置することによって、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、電界放出ディスプレイのような自発光型の薄型ディスプレイ、および半導体レーザーのような発光装置に適用できる。
以下本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は、何ら下記実施例に限定されるものではない。
《実施例1》
Tガラス系ガラスクロス(厚さ90μm、屈折率1.523、日東紡製)に化学式(1)の構造を有する水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業性、E−BP)100重量部、芳香族スルホニウム系熱カチオン触媒(三新化学製SI−100L)1重量部を混合した樹脂組成物を含浸させ脱泡した。この樹脂含浸ガラスクロスを離型処理した2枚の表面粗化ステンレス基板に挟み込んで80℃で2時間加熱後、250℃で更に2時間加熱し、表面粗さRa=100nm、厚さ100μmの透明基材を得た。得られた透明基材の片面に、高屈折率層としてビス(4−メタクリロイルチオ−3,5−フェニル)スルフィド(住友精化製:MPSMA) 13重量部、エポキシアクリレート(昭和高分子製:VR−60−LAV)6重量部、ジエチレングリコール54重量部、酢酸エチル26重量部、光開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGACURE907)1重量部からなる均一な混合コート液をアプリケーターで塗布し、120℃10分の加熱乾燥後、500mJ/cmのUV照射で硬化させ、厚さ4μmの高屈折率層を形成した。高屈折率層の屈折率は1.65、表面粗さはRa=1.2nmであった。
つぎに、高屈折率層を形成した面に、スパッタリング法により100nmのTa無機層の形成を行なった(無機層の屈折率=2.10)。さらにその上に、透明電極層(ITO:100nm)、発光層(TPD:150nm/Alq:100nm)、陰極(Mg/Agの共蒸着)を設け、金属キャップで封止して有機EL発光装置を作製し、積分球付き輝度計で直流電圧印加時の輝度を測定したところ400cd/mであった。
《実施例2》
NEガラス系ガラスクロス(厚さ90μm、屈折率1.510、日東紡製)に水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業性、E−BP)70重量部、オキセタニルシリケート(東亞合成製、OXT−191)30重量部、芳香族スルホニウム系熱カチオン触媒(三新化学製SI−100L)1重量部を混合した樹脂組成物を含浸脱泡した。この樹脂含浸ガラスクロスを離型処理した2枚の表面粗化ステンレス基板に挟み込んで80℃で2時間加熱後、250℃で更に2時間加熱し、表面粗さRa=105nm、厚さ100μmの透明基材を得た。得られた透明基材の片面に実施例1と同様な方法にて4μmの高屈折率層/100nmのTa膜を形成し、バリア付透明基材を作製した。さらにその上に、透明電極層(ITO:100nm)、発光層(TPD:150nm/Alq:100nm)、陰極(Mg/Agの共蒸着)を設け、金属キャップで封止して有機EL発光装置を作製し、積分球付き輝度計で直流電圧印加時の輝度を測定したところ380cd/mであった。
《比較例1》
Tガラス系ガラスクロス(厚さ90μm、屈折率1.523、日東紡製)に水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業性、E−BP)100重量部、芳香族スルホニウム系熱カチオン触媒(三新化学製SI−100L)1重量部を混合した樹脂組成物を含浸させ脱泡した。この樹脂含浸ガラスクロスを離型処理したガラス基板に挟み込んで80℃で2時間加熱後、250℃で更に2時間加熱し、表面粗さRa=1.5nm、厚さ100μmの透明基材を得た。得られた透明基材の片面に、高屈折率層としてビス(4−メタクリロイルチオ−3,5−フェニル)スルフィド(住友精化製:MPSMA) 13重量部、エポキシアクリレート(昭和高分子製:VR−60−LAV)6重量部、ジエチレングリコール54重量部、酢酸エチル26重量部、光開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGACURE907)1重量部からなる均一な混合コート液をアプリケーターで塗布し、120℃10分の加熱乾燥後、500mJ/cmのUV照射で硬化させ、厚さ4μmの高屈折率層を形成した。高屈折率層の屈折率は1.65、表面粗さはRa=1.0nmであった。つぎに、実施例1と同様な方法にて、高屈折率層の上に100nmのTa膜を形成し、らにその上に、透明電極層(ITO:100nm)、発光層(TPD:150nm/Alq:100nm)、陰極(Mg/Agの共蒸着)を設け、金属キャップで封止して有機EL発光装置を作製し、積分球付き輝度計で直流電圧印加時の輝度を測定したところ315cd/mであった。
実施例、比較例の配合及び評価結果を表1に示す。評価方法は以下の通りである。
(a)平均線膨張係数
SEIKO電子(株)製TMA/SS6000型熱応力歪み測定装置を用いて、窒素雰囲気下、1分間に5℃の割合で昇温させて測定した。荷重を5gにし引っ張りモードで測定を行い、30℃から150℃における平均線膨張係数を算出した。
(b)屈折率
透明基材に用いた樹脂組成物のみを、透明基材と同様の硬化条件で硬化させ、アッベ屈折率計で波長598nmにおける屈折率を測定した。
(c)輝度
積分球付き輝度計で直流電圧印加時の輝度を暗所で測定した。
Figure 2008221592

Claims (8)

  1. 透明樹脂及び繊維状フィラーからなる透明基材の片面に高屈折率層を形成した透明樹脂シートであって、前記透明基材の30〜150℃での平均線膨張係数が40ppm以下であり、前記透明基材の表面の平均粗さ(Ra)が10nm以上であり、前記高屈折率層の屈折率が1.6以上であることを特徴とする透明樹脂シート。
  2. 前記高屈折率層が有機物からなる請求項1記載の透明樹脂シート。
  3. 前記透明樹脂がカチオン重合可能な成分を含む樹脂組成物を硬化させて得られるものであり、前記カチオン重合可能な成分が1種又は2種以上のエポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物、又はビニルエーテル基を有する化合物を含む請求項1又は2記載の透明樹脂シート。
  4. 前記透明樹脂が化学式(1)で示される脂環式エポキシ樹脂を主成分として含む樹脂組成物を硬化させて得られるものである請求項1又は2記載の透明樹脂シート。
    Figure 2008221592
  5. 前記透明樹脂と前記繊維状フィラーとの屈折率差が0.01以下である請求項1〜4何れか記載の透明樹脂シート。
  6. 前記繊維状フィラーがガラス繊維布である請求項1〜5何れか記載の透明樹脂シート。
  7. 前記高屈折率層を形成した面側に発光装置を配置した請求項1〜6何れか記載の透明樹脂シート。
  8. 前記高屈折率層を形成した面側に有機EL発光装置を配置した請求項1〜6何れか記載の透明樹脂シート。
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