JP2008221273A - 被圧延材の温度予測方法および圧延方法ならびに被圧延材の温度予測システムおよび圧延システム - Google Patents

被圧延材の温度予測方法および圧延方法ならびに被圧延材の温度予測システムおよび圧延システム Download PDF

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Abstract

【課題】 被圧延材を複数パスにわたって各パスでは圧延スタンドの前後で冷却媒体により冷却しながら冷間圧延する際の被圧延材の温度を精度よく予測する。
【解決手段】 各回のパス毎に圧延スタンド2へ装入される被圧延材1の温度を入側温度T1として、初回のパスでは実測温度、2回以降のパスでは前回のパスで予測する出側温度を設定し、圧延加工される直前のミル前温度T2を入側温度T1および被圧延材1から冷却媒体3への熱伝達に基づいて予測する。次に、圧延加工直後の加工後温度T3を、ミル前温度T2、ミルモーターの出力、単位時間当たりの被圧延材1の熱容量、および仕事の熱当量に基づいて予測する。さらに、圧延スタンド2から排出されるときの出側温度T4を、加工後温度T3および被圧延材1から冷却媒体3への熱伝達に基づいて予測する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、金属などの被圧延材を冷間圧延する際の発熱で上昇する温度を予測し、圧延条件を調整する被圧延材の温度予測方法および圧延方法ならびに被圧延材の温度予測システムおよび圧延システムに関する。
被圧延材を冷間圧延すると、温度は加工および摩擦によって発熱し上昇する。被圧延材の温度は、冷間圧延後の成品の表面品質などに影響を及ぼすので、精度よく管理することが求められる。
たとえば鋼帯などの冷間圧延では、疵発生防止のために合紙を使用する。冷間圧延終了後の鋼帯の温度が高いと、挿入した合紙と潤滑油及び鋼帯の素地とが反応し、合紙が鋼帯表面に焼き付く。この合紙が焼き付いた部分は、酸洗工程を経ることによって白く浮き上がる模様になる。このような模様は、鋼帯の中でも特に表面の美麗さが求められるステンレス鋼帯では表面欠陥とされ品質上の問題となる。ここでは、この合紙が鋼帯に焼き付く現象を紙焼き付きと呼ぶ。
経験上、冷間圧延後のステンレス鋼帯の温度が90℃未満であるか、または90℃以上であってもその後圧延加工することなく通板いわゆる空パス通板して90℃未満になるように冷却した場合、焼鈍酸洗後の紙焼き付きの発生を防止することができる。
したがって、紙焼き付きの発生を防止するための方法として、圧延後に空パス通板する冷却工程を入れること、また圧延後の鋼帯の温度が紙焼き付き発生の限界温度未満になるようにすることが考えられる。このうち、単に冷却することを目的として行う空パス通板は、余分な工程が増えて生産性を悪くするので好ましくない。そこで、圧延速度を下げることにより潤滑油による鋼帯の冷却時間を長くするとともに、加工ひずみの速度を遅くすることにより加工発熱の発生量が少なくなることから、圧延速度を遅くすることによって、冷間圧延時の温度が紙焼き付き発生の限界温度未満になるようにする方法がとられている。
しかしながら、冷間圧延時の鋼帯の温度を精度よく求めることができない場合、紙焼き付きの発生を懸念するあまり必要以上に圧延速度を遅くして生産性を悪化させているおそれがある。鋼帯を冷間圧延する場合の圧延速度は、毎分数百mときには千mの水準にも達するほど速いので、紙焼き付き対策として圧延速度を必要以上に遅くすることは生産性に影響する。したがって、紙焼き付きの発生を防止し、かつ紙焼き付きの発生を防止し得る範囲で圧延速度を速くするためには、冷間圧延時における鋼帯の温度を精度よく求める必要がある。
冷間圧延時の被圧延材の温度を測定する方法として、熱電対などの接触式温度計を用いることが考えられる。しかしながら、接触式温度計は直接被圧延材の表面に接しながら温度を測定するので、被圧延材表面に接触疵を発生させることがあり、表面品質上の問題から使用できないことが多い。
また、放射温度計などの非接触式温度計を用いることが考えられる。非接触式温度計は、被圧延材の表面に接することがないので表面品質上の問題はないが、被圧延材の材質および表面状態によって放射率が変化し、また冷間圧延中に発生するヒュームや外光が外乱となるので、測定温度の精度が悪くなる場合がある。
このような問題を解決する一つの方法として、温度解析のモデルを想定し、演算によって被圧延材の温度を予測することが提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。非特許文献1によれば、冷間圧延時の被圧延材の温度は、(1)被圧延材の圧延によって生じる加工発熱、(2)被圧延材と圧延ロールとの摩擦によって生じる摩擦発熱、(3)冷却媒体による被圧延材の冷却、(4)圧延ロールと被圧延材との接触熱損失、(5)強制対流による冷却の5つの要素の和で表される。
非特許文献1では、5つの要素のうちの摩擦発熱を、被圧延材と圧延ロールとの摩擦係数が一定として演算する。しかしながら、冷間圧延時における被圧延材と圧延ロールとの摩擦係数は、被圧延材の表面粗度、圧延ロールの周速、冷却媒体の温度などによって短い間にも変動する。この変動する摩擦係数をリアルタイムで求めることができないので、摩擦係数を一定として摩擦発熱を演算すると被圧延材の予測温度の精度が悪くなる。
このように冷間圧延時における被圧延材の発熱を演算して精度よく求めることが困難なので、経験則に基づいて圧延機の電動機の出力から求めることが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、圧延加工時における被圧延材の加工発熱および摩擦発熱を、圧延消費電力と呼ぶ圧延機の電動機の出力から計算する。すなわち、圧延消費電力に対して入熱率および定数を掛けることによって被圧延材から圧延ロールに与えられる入熱量を求める。入熱量に応じて圧延ロールを冷却する水量を制御すると、圧延ロールの温度が所望温度になるように制御される。
社団法人日本鉄鋼協会 共同研究会 圧延理論部会編、「板圧延の理論と実際」、社団法人日本鉄鋼協会、昭和59年9月1日、p156〜160 特開2002−66622号公報
しかしながら、特許文献1は、圧延消費電力に基づいて被圧延材の温度を予測することについては全く開示も示唆もしておらず、また被圧延材の予測温度に基づいて被圧延材側の昇温に起因する表面欠陥の発生を防止する思想についても全く開示していない。
本発明の目的は、冷間圧延時の被圧延材の温度を精度よく予測し、表面欠陥の発生を防止するとともに、生産性を高く維持することができる被圧延材の温度予測方法および圧延方法ならびに被圧延材の温度予測システムおよび圧延システム提供することである。
本発明の被圧延材の温度予測方法は、その課題を解決するために、被圧延材を複数パスにわたって、各パスでは圧延スタンドの前後で冷却媒体による冷却を行いながら冷間圧延するに際し、各回のパス毎に、圧延スタンドへ装入される被圧延材の温度を入側温度として、初回のパスでは実測温度、2回以降のパスでは前回のパスで圧延スタンドから排出される出側の被圧延材の温度として予測する出側温度を設定し、各回のパスで圧延加工される直前の被圧延材の温度としてのミル前温度を、入側温度、および被圧延材から冷却媒体への熱伝達に基づいて予測し、被圧延材が圧延加工された直後の温度である加工後温度を、ミル前温度、圧延ロールを駆動する電動機の出力、単位時間当たりの被圧延材の熱容量、および仕事の熱当量に基づいて予測し、圧延スタンドから排出される被圧延材の温度としての出側温度を、加工後温度、および被圧延材から冷却媒体への熱伝達に基づいて予測することを特徴とする。
また、本発明の圧延方法は、被圧延材を複数パスにわたって、各パスでは圧延スタンドの前後で冷却媒体による冷却を行いながら冷間圧延する圧延方法において、前記の被圧延材の温度予測方法により予測される被圧延材の前記出側温度が、予め定める限界温度以上になるとき、被圧延材の出側温度が限界温度未満で可能な限り限界温度に近い温度になるように圧延速度を調整することを特徴とする。
また、本発明の被圧延材の温度予測システムは、被圧延材を複数パスにわたって、各パスでは圧延スタンドの前後で冷却媒体による冷却を行いながら冷間圧延する場合の温度を予測する被圧延材の温度予測システムであって、被圧延材の温度を測定する温度測定手段と、初回のパスでは、温度測定手段によって測定される温度を圧延スタンドに装入される被圧延材の入側温度として設定し、2回以降のパスでは、前回のパスで圧延スタンドから排出される出側の被圧延材の温度として予測する出側温度を入側温度として設定する入側温度設定手段と、圧延加工される直前の被圧延材の温度としてのミル前温度を、入側温度、および被圧延材から冷却媒体への熱伝達に基づいて演算するミル前温度演算手段と、被圧延材が圧延加工された直後の温度である加工後温度を、ミル前温度、圧延ロールを駆動する電動機の出力、単位時間当たりの被圧延材の熱容量、仕事の熱当量に基づいて演算する加工後温度演算手段と、圧延スタンドから排出される被圧延材の温度としての出側温度を、加工後温度、および被圧延材から冷却媒体への熱伝達に基づいて演算する出側温度演算手段と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の圧延システムは、被圧延材を複数パスにわたって、各パスでは圧延スタンドの前後で冷却媒体による冷却を行いながら冷間圧延するための圧延システムにおいて、前記の被圧延材の温度予測システムと、被圧延材の温度予測システムによって予測する前記出側温度と予め定める限界温度とを比較する比較手段と、比較手段の比較結果に応じて、出側温度が予め定める限界温度以上になるとき、出側温度が限界温度未満で可能な限り限界温度に近い温度になるように圧延速度を調整する速度調整手段と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、圧延ロールを駆動する電動機の出力を用いて被圧延材の加工後温度を予測し、被圧延材から冷却媒体への熱伝達に基づいて圧延加工前後のミル前温度および出側温度を予測することによって、冷間圧延時における被圧延材の温度を精度よく予測することが可能になる。
また、被圧延材の出側温度の予測精度が高いので、予測結果に応じて出側温度が確実に限界温度未満になるように圧延速度を調整して被圧延材の昇温に起因する表面欠陥の発生を防止することができる。さらに、限界温度未満で可能な限り限界温度に近い温度になるように圧延速度を調整、すなわち許容限界近くまで圧延速度を速くすることによって、圧延の生産性を高く維持することができる。
図1は、本発明の実施の一形態としての被圧延材の温度予測方法の概要を示す。図2は、被圧延材の温度予測方法に用いる計算式を示す。なお、図中の説明におけるクーラントは冷却媒体のことを表す。
ステンレス鋼帯などの被圧延材1の温度予測は、被圧延材1を複数パスにわたって、各パスでは圧延スタンド2の前後で冷却媒体3による冷却を行いながら冷間圧延する際に行う。冷却媒体3は、被圧延材1の昇温抑制と圧延の潤滑とを目的として使用される液状物質であり、圧延スタンド2の入側に設けられる入側ワイパー4および出側に設けられる出側ワイパー5と圧延ロール2aとの間の被圧延材表面に、図示を省いている恒温槽から配管を介して供給される。
本発明の温度予測の考え方も、前述の非特許文献の(1)〜(5)の5つの要素に含まれる要素に基づく。しかし、被圧延材1の側から見ると圧延スタンド2に備わる圧延ロール2aとの接触時間が短いので圧延ロール2aとの接触熱損失を無視することができる。また、送風などによる被圧延材1の強制冷却も行わないので強制対流による冷却も無視することができる。したがって、本発明では、圧延加工時における被圧延材1の加工発熱および摩擦発熱と、冷却媒体3による冷却とに基づいて被圧延材1の温度を予測する。
まず、各回のパス毎に、圧延スタンド2へ装入される被圧延材1の温度を入側温度T1として設定する。入側温度T1は、初回のパスでは実測温度、2回以降のパスでは前回のパスで圧延スタンド2から排出される出側の被圧延材1の温度として予測する出側温度をそれぞれ設定する。初回のパスにおける被圧延材1の入側温度T1の実測は、接触式温度計または非接触式温度計のいずれかを用いて行うことができる。接触式温度計は被圧延材1の表面に接触して測温するが、圧延開始前の局所的な接触に止まるので表面疵による歩留低下が問題にならない。また、非接触式温度計についても、圧延開始前であればヒュームなどの発生がないので測定精度の低下をほとんど考慮しなくてもよい。2回以降のパスにおいて入側温度T1として前回のパスで予測する出側温度を設定することについては後述する。
各回のパスで圧延加工される直前の被圧延材1の温度としてのミル前温度T2を、入側温度T1、および被圧延材1から冷却媒体3への熱伝達に基づいて予測する。図3は、被圧延材1から冷却媒体3への熱伝達を模式的に示す。ミル前温度T2は、被圧延材1が入側ワイパー4から圧延ロール2aの直前まで移動する間に冷却媒体3への熱伝達により入側温度T1から冷却されて達する温度であり、その予測値は、式(1)によって求めることができる。
T2=Tw+(T1−Tw)exp(−2hw1×tc1/(ρ×Cs×h1))
・・・(1)
ここで、Tw:冷却媒体の温度
w1:入側冷却媒体の熱伝達係数
c1:入側冷却媒体による冷却時間
ρ :被圧延材の密度
Cs:被圧延材の比熱
h1:被圧延材の入側板厚、である。
式(1)中で、冷却媒体3の温度Twは実測することができ、被圧延材1の密度ρおよび比熱Csは被圧延材1の種類によって定まり、被圧延材1の入側板厚h1および入側冷却媒体3による冷却時間tc1は圧延条件によって定まる。
入側冷却媒体の熱伝達係数hw1は未知数なので求める必要がある。なお、入側冷却媒体の熱伝達係数hw1は、被圧延材1の入側温度T1と冷却媒体3の温度Twとの差(T1−Tw)、単位時間あたりに被圧延材1から冷却媒体3へ移行する熱エネルギー、および被圧延材1が冷却媒体3に接する面積に基づいて求められるべき値である。しかしながら、ここでは、熱伝達係数を冷却媒体によって冷却される前の被圧延材1の温度、冷却媒体の流量、および係数によって定まる値であると仮定し、経験則に基づいて求める係数とする。その求め方については出側冷却媒体の熱伝達係数hw2と併せて後述する。
次に、図4は、被圧延材1が圧延加工されることによって発生する熱の求め方を示す。圧延ロール2aを駆動する電動機であるミルモーター6の出力Wは、被圧延材1の加工および被圧延材1の圧延方向への推進に費やされて熱および振動に変換される。なお、ミルモーター6の出力Wをミル動力Wと呼ぶことがある。ミル動力Wが熱に変換される割合は、圧延の諸条件が定まれば該条件に応じて定まると考えられるので、圧延加工による加工発熱および摩擦発熱の和を個々に演算することなくミル動力Wから求めることができる。加工後温度T3は、ミル前温度T2に加工発熱および摩擦発熱による昇温を加えた温度である。温度予測方法では、被圧延材1が圧延加工された直後の温度である加工後温度T3を、ミル前温度T2、ミル動力W、単位時間当たりの被圧延材1の熱容量Hc、および仕事の熱当量ηpに基づいて予測する。その予測値は式(2)によって求めることができる。
T3=T2+ηp×W/(ρ×b×v×h2×Cs) ・・・(2)
ここで、ρ :被圧延材の密度
b :被圧延材の板幅
v :圧延速度
h2:被圧延材の圧延加工後の出側板厚
Cs:被圧延材の比熱、である。
なお、(ρ×b×v×h2×Cs)は、単位時間あたりの被圧延材1の体積に密度と比熱とを掛けたものであり熱容量Hcで表すことができる。
式(2)中で、ミル動力Wは実測することができ、被圧延材1の密度ρおよび比熱Csは被圧延材1の種類によって定まり、被圧延材1の出側板厚h2、板幅b、および圧延速度vは圧延条件によって定まる。仕事の熱当量ηpは次のようにして求めることができる。各種の圧延条件についてミル前温度T2と加工後温度T3とを実測する実験を重ねて行い、実測温度と予測温度とがよく一致するように経験則に基づく値として仕事の熱当量ηpを求める。
圧延スタンド2から排出される被圧延材1の温度としての出側温度T4を、加工後温度T3、および被圧延材1から冷却媒体3への熱伝達に基づいて予測する。出側温度T4は、被圧延材1が圧延ロール2aから出側ワイパー5まで移動する間に冷却媒体3への熱伝達により加工後温度T3から冷却されて達する温度であり、その予測値は、式(3)によって求めることができる。
T4=Tw+(T3−Tw)exp(−2hw2×tc2/(ρ×Cs×h2))
・・・(3)
ここで、Tw:冷却媒体の温度
w2:出側冷却媒体の熱伝達係数
c2:出側冷却媒体による冷却時間
ρ :被圧延材の密度
Cs:被圧延材の比熱
h2:被圧延材の圧延加工後の出側板厚、である。
式(3)中で、出側冷却媒体の熱伝達係数hw2以外は、式(1)の場合と同様に実測することにより、また被圧延材1の種類および圧延条件によって定まる。出側冷却媒体の熱伝達係数hw2は未知数なので求める必要がある。先の入側冷却媒体の熱伝達係数hw1と併せて出側冷却媒体の熱伝達係数hw2を求める方法について説明する。
図5は、冷却媒体の熱伝達係数を求めるについての仮定を示す。ここでは、冷却媒体の熱伝達係数が、冷却媒体によって冷却される前の被圧延材1の温度、冷却媒体の流量、および係数によって定まる値であると仮定する。すなわち、入側冷却媒体の熱伝達係数hw1については式(4)で表され、出側冷却媒体の熱伝達係数hw2については式(5)で表されるものとする。
w1=α×T1β×Fγ
・・・(4)
w2=α×T3β×Fγ
・・・(5)
ここで、α、β、γ:係数
T1:入側温度
T3:加工後温度
F :冷却媒体の流量である。
式(5)には加工後温度T3が含まれる。その加工後温度T3については式(2)から判るようにミル前温度T2が含まれる。さらにミル前温度T2については式(1)から判るように入側温度T1および入側冷却媒体の熱伝達係数hw1が含まれる。少なくとも初回のパスでは入側温度T1を実測することができるので、初回パスにおけるミル前温度T2の予測精度は、入側冷却媒体の熱伝達係数hw1に依る。さらに加工後温度T3の予測精度はミル前温度T2に依る。そして出側温度T4の予測精度は、加工後温度T3と出側冷却媒体の熱伝達係数hw2に依る。このことから、出側温度T4の予測精度は、入側および出側両方の冷却媒体の熱伝達係数hw1,hw2に依る。
冷却媒体の熱伝達特性はその物性によって定まる。入側と出側とで同じ冷却媒体を使用するので、式(4)および式(5)で表す入側および出側冷却媒体の熱伝達係数hw1,hw2における係数α、βおよびγを、入側と出側とで同じと仮定することができる。この仮定のもと、予測式から求められる出側温度T4を実測出側温度に一致するようにまたは可能な限り近くなるように係数α、βおよびγを定めることによって、経験則に基づいて入側冷却媒体の熱伝達係数hw1および出側冷却媒体の熱伝達係数hw2を求めることができる。
係数α、βおよびγを定める方法については特に限定しないが、たとえば次のようにして求めることができる。まず、3つの係数のうちβおよびγを仮に定める一定値に固定し、αのみを種々の値に変化させて予測式(3)から出側温度T4を算出し、その算出結果と実測出側温度とについて相関を求める。最も高い相関が得られるときのαの値を、係数αとして定める。次に、αを相関から定められる値に固定し、γを先の仮に定める一定値に固定し、βのみを種々の値に変化させて予測式(3)から出側温度T4を算出し、その算出結果と実測出側温度とについて相関を求める。最も高い相関が得られるときのβの値を、係数βとして定める。最後に、αおよびβを相関から定められる値に固定し、係数γを種々の値に変化させ、αおよびβの場合と同じようにして係数γを定める。この操作によって得られる係数α、βおよびγを式(4)、(5)に代入して入側冷却媒体の熱伝達係数hw1と出側冷却媒体の熱伝達係数hw2とを求めることができる。このようにして求める冷却媒体の熱伝達係数hw1,hw2を用いることによって、被圧延材1の温度予測を行うことができる。
本発明の温度予測方法は、前述のように被圧延材1を複数パスにわたって冷間圧延する場合に用いられる。したがって、パス毎に被圧延材1を反対方向に送りながら圧延するリバース圧延、および平行して設けられる複数の圧延スタンドに被圧延材1を一方向に送りながら圧延するタンデム圧延の両方に温度予測方法を適用することができる。
複数パスにわたって冷間圧延する場合、2回以降のパスでは前回のパスで圧延スタンドから排出される出側の被圧延材1の温度として予測する出側温度T4を入側温度T1に置き換えて設定し、以降のミル前温度T2、加工後温度T3および出側温度T4の予測計算を行う。
すなわち、リバース圧延において一方向の圧延が終了して反対方向への次パスの圧延を行う場合、前回のパスで予測した出側温度T4を式(1)における入側温度T1に置き換えるとともに、入側と出側との設定条件を逆にして前述の予測計算を行う。また、タンデム圧延において一つの圧延スタンドで圧延を終了して隣の圧延スタンドで次パスの圧延を行う場合、前回のパスで予測した出側温度T4を式(1)における入側温度T1に置き換えるとともに、被圧延材1が次に装入される隣の圧延スタンドの設定条件を用いて前述の予測計算を行う。
被圧延材1としてステンレス鋼帯を使用した場合について、リバース式冷間圧延機で複数パスにわたって各パスでは圧延スタンド2の前後で冷却媒体3による冷却を行いながら冷間圧延を行い、温度予測方法による計算出側温度T4と実測出側温度とについて相関を求めた結果を図6に示す。
相関によって得られる関係式によれば計算出側温度T4と実測出側温度との温度差は±4℃以内である。このように温度予測方法によれば、複数パスに応じて繰り返し出側温度の予測計算を行った場合であっても、冷間圧延時におけるステンレス鋼帯の温度を精度よく予測することが可能である。
次に、温度予測方法を用いる本発明の圧延方法について説明する。本発明の圧延方法は、被圧延材1を複数パスにわたって、各パスでは圧延スタンド2の前後で冷却媒体3による冷却を行いながら冷間圧延する圧延方法において、前述の温度予測方法により予測される被圧延材1の出側温度T4が、予め定める限界温度以上になるとき、被圧延材1の出側温度T4が限界温度未満で可能な限り限界温度に近い温度になるように圧延速度を調整することを特徴とする。
ここで、被圧延材1としてステンレス鋼帯を冷間圧延する場合について圧延方法を具体的に例示する。被圧延材1がステンレス鋼帯である場合には、限界温度として表面欠陥である紙焼き付きの発生を防止することができる温度を設定する。合紙の種類によって耐焼き付き性が異なるので、紙焼き付きの発生を防止することができる限界温度を一義的に定めることはできないが、限界温度は概ね90℃前後であることが多い。
ステンレス鋼帯の出側温度T4が限界温度以上になるとき、出側温度T4が限界温度未満で可能な限り限界温度に近い温度になるように圧延速度を調整するが、この調整は複数パスにわたる冷間圧延のうち最終パスのみにおいて行われる。
これは次の理由による。ステンレス鋼帯の紙焼き付きは、最終パスの圧延が終了した後、ステンレス鋼帯が巻き取られた状態で限界温度以上に長時間保持されるときに発生する。したがって、圧延の途中パスにおいて出側温度T4が限界温度以上になる状態が出現しても、圧延の最終パスにおいて出側温度T4が限界温度未満になるように条件設定して圧延すれば、ステンレス鋼帯が巻き取られた状態で限界温度未満に保たれるので、紙焼き付きの発生が防止される。
本発明の圧延方法によれば、ステンレス鋼帯の出側温度T4の予測精度が高いので、予測結果に応じて最終パスの出側温度T4が確実に限界温度未満になるように圧延速度を調整してステンレス鋼帯の昇温に起因する紙焼き付きの発生を防止することができる。さらに、限界温度未満で可能な限り限界温度に近い温度になるように圧延速度を調整、すなわち許容限界近くまで圧延速度を速くすることによって、ステンレス鋼帯の冷間圧延の生産性を高く維持することができる。
また、複数パスのうち途中パスにおいては出側温度T4が限界温度以上になることが許容されるけれども、たとえば機械的性質などの特性を考慮すると過剰に昇温することは好ましくない。したがって、途中パスの圧延といえども、品質管理上出側温度を精度よく管理することが求められる。本発明によれば、高い精度で出側温度を予測することができるので、途中パスにおけるステンレス鋼帯の出側温度も高い精度で管理することができる。このことによって、途中パスにおいても高精度の温度管理下において許容される温度範囲内で圧延速度を速くすることができるので、圧延の生産性を高く維持することが可能になる。
図7は、本発明の被圧延材の温度予測システムを備える圧延システムの概略構成を示す。図7では、リバース式冷間圧延機9を基礎とするシステム構成を例示する。リバース式冷間圧延機9は、前述の図1に一部の構成を示す圧延機と類似の構成を有するので同一部分については同じ参照符号を付して説明を省略する。リバース式圧延機9では、巻戻リール7から被圧延材1を巻戻し、圧延スタンド2で圧延加工し、巻取リール8で巻取る。冷間圧延時には、巻取リール8が被圧延材1に対して圧延張力を付与するテンションリールとして作用する。リバース式であるので、次のパスでは、巻戻リール7と巻取リール8とが、その作用を逆にして被圧延材1を圧延する。
まず、圧延システム10に備わる被圧延材の温度予測システム11について説明する。なお、被圧延材の温度予測システム11を単に温度予測システム11と略記する。温度予測システム11は、前述の温度予測方法を使用するのに好適なシステムであり、被圧延材1を複数パスにわたって、各パスでは圧延スタンド2の前後で冷却媒体3による冷却を行いながら冷間圧延する場合の被圧延材1の温度を予測する。
温度予測システム11は、温度測定装置12、入側温度設定装置13、ミル前温度演算装置14、加工後温度演算装置15、および出側温度演算装置16を含む。本実施形態では、入側温度設定装置13、ミル前温度演算装置14、加工後温度演算装置15、および出側温度演算装置16は、一体を成して演算装置20を構成する。この演算装置20は、たとえばパーソナルコンピュータなどで実現される。
温度予測システム11には、上記の構成装置に加えてさらにコントローラー17、アナログデジタル変換装置18および入力装置19が含まれる。なお、アナログデジタル変換装置18をA/D装置18と略記する。
温度測定装置12は、非接触式温度計の一種である放射温度計である。放射温度計12は、初回のパスにおいて圧延スタンド2に装入される被圧延材1の入側温度T1を測定することに用いられる。入側温度T1の測定結果は、A/D装置18を介して演算装置20の入側温度設定装置13に与えられる。
また、コントローラー17には、ミルモーター6から出力されるミル動力Wおよびミルモーター6の回転速度から検出される圧延速度vが入力されるとともに、生産計画として定められる圧延条件である冷却媒体の温度Tw、冷却媒体の流量F、被圧延材の板幅b、パス毎の入側板厚h1および出側板厚h2、被圧延材毎の圧延パス回数などが予め入力される。これらのミル動力W、圧延条件などもコントローラー17からA/D装置18を経由して演算装置20に与えられる。
なお、コントローラー17は、予め入力される被圧延材毎のパス回数に応じて圧延完了信号およびパス切替信号をA/D装置18を経由して演算装置20に対して出力する。圧延完了信号は、被圧延材ごとに予め定められるパス回数のうち最終パスの圧延が終了した時点で出力される信号であり、パス切替信号は、最終パス以外のパスの圧延が終了した時点で出力される信号である。コントローラー17からの出力信号に応じ、演算装置20は、圧延完了信号受信後のパスを初回のパスとして設定し、パス切替信号を受信する場合には2回以降のパスとして設定するとともに、パス切替信号の受信ごとにパス回数を1パス加算して何パス目の圧延であるかを設定する。
演算装置20に接続される入力装置19は、たとえばキーボードなどによって実現される。被圧延材1の温度予測に使用する定数として、被圧延材の比熱Cs、被圧延材の密度ρ、入側冷却媒体冷却距離Lc1、出側冷却媒体冷却距離Lc2、仕事の熱当量ηp、冷却媒体の熱伝達係数を求めるための係数α、β、γが、入力装置19から演算装置20に対して入力される。
なお、演算装置20には、コントローラー17から圧延速度v、入側板厚h1および出側板厚h2が入力され、入力装置19から入側冷却媒体冷却距離Lc1および出側冷却媒体冷却距離Lc2が入力されるので、温度予測に用いる入側および出側冷却媒体による冷却時間tc1,tc2は演算装置20において算出される。
入側温度設定装置13は、コントローラー17から出力される圧延完了信号またはパス切替信号を受けて、圧延スタンド2に装入される被圧延材1の入側温度T1を設定する。圧延完了信号を受けた後の初回のパスの場合には、放射温度計12によって測定される温度を入側温度T1として設定し、パス切替信号を受けた2回以降のパスでは前回のパスで圧延スタンド2から排出される出側の被圧延材1の温度として予測する出側温度T4を入側温度T1として設定する。この入側温度T1は、ミル前温度演算装置14に対して出力される。
ミル前温度演算装置14は、圧延加工される直前の被圧延材1の温度としてのミル前温度T2を、入側温度設定装置13から与えられる入側温度T1、および被圧延材1から冷却媒体3への熱伝達に基づいて演算する。この演算は前述の式(1)に従って行われる。入側温度T1以外の演算に必要な数値は、コントローラー17からA/D装置18を経由して与えられるとともに、入力装置19から与えられる。演算結果のミル前温度T2は、加工後温度演算装置15に対して出力される。
加工後温度演算装置15は、被圧延材1が圧延加工された直後の温度である加工後温度T3を、ミル前温度演算装置14から与えられるミル前温度T2、ミル動力W、単位時間当たりの被圧延材の熱容量Hc、仕事の熱当量ηpに基づいて演算する。この演算は前述の式(2)に従って行われる。ミル前温度T2以外の演算に必要な数値は、コントローラー17からA/D装置18を経由して与えられるとともに、入力装置19から与えられる。演算結果の加工後温度T3は、出側温度演算装置16に対して出力される。
出側温度演算装置16は、圧延スタンド2から排出される被圧延材1の温度としての出側温度T4を、加工後温度演算装置15から与えられる加工後温度T3、および被圧延材1から冷却媒体3への熱伝達に基づいて演算する。この演算は前述の式(3)に従って行われる。加工後温度T3以外の演算に必要な数値は、コントローラー17からA/D装置18を経由して与えられるとともに、入力装置19から与えられる。
入側温度設定装置13は、コントローラー17から出力されるパス切替信号を受信する場合、入側温度T1として出側温度演算装置16が演算した予測結果である出側温度T4を設定する。演算装置20は、予測した出側温度T4を入側温度T1に置き換えて、ミル前温度T2、加工後温度T3および出側温度T4を演算する。このように出側温度T4を入側温度T1に置き換えて繰り返し演算することによって、複数パスにわたって圧延する場合の出側温度T4をパス毎に予測することができる。
温度予測システム11で予測する被圧延材1の温度は前述の温度予測方法に従って予測するものであるため予測精度が高く、温度予測システム11によれば温度予測方法で得られる効果と同一の効果を奏することができる。
次に温度予測システム11を備える圧延システム10について説明する。図7に示すようにリバース式冷間圧延機9を基礎とする圧延システム10について例示する。圧延システム10は、リバース式冷間圧延機9、前述の温度予測システム11、比較装置21、および速度調整装置22を含む。
本実施形態の圧延システム10における比較装置21は、温度予測システム11の演算装置20と一体化するように構成され、たとえばパーソナルコンピュータの基板などによって実現される。比較装置21は温度予測システム11で予測する出側温度T4と予め定める限界温度とを比較する。出側温度T4と限界温度との比較は、入力装置19から予め入力される限界温度と出側温度演算装置16によって演算される出側温度T4との差を演算することによって行う。比較装置21は、限界温度と出側温度T4との差が正であるとき、出側温度T4が限界温度未満であるとの比較結果を、また前記差が0または負であるとき、出側温度T4が限界温度以上であるとの比較結果を、速度調整装置22に対して出力する。
速度調整装置22は、表示装置23と操作盤24とを含んで構成され、比較装置21の比較結果に応じて、出側温度T4が限界温度以上になるとき、出側温度T4が限界温度未満で可能な限り限界温度に近い温度になるように圧延速度を調整する。
表示装置23は、液晶ディスプレイや陰極線管などからなる表示部を含み、比較装置21による限界温度と出側温度T4との比較結果および出側温度演算装置16による演算結果である出側温度T4を表示する。また、表示装置23には、コントローラー17から演算装置20に与えられる圧延速度vも表示されることが好ましい。
比較装置21による比較結果は、たとえば次のようにして表示装置23に表示される。出側温度T4が限界温度以上であるときは、赤色の警告灯を点灯して圧延速度を遅くする旨の指示が表示される。一方、出側温度T4が限界温度未満であるときは、適温である旨が表示される。
操作盤24は、リバース式圧延機9の圧延動作を制御するための装置である。表示装置23に表示される比較装置21による比較結果および出側温度演算装置16による演算結果に応じて、オペレーター25が操作盤24を操作して圧延速度を調整する。すなわち、赤色の警告灯が点灯するときには、出側温度演算装置16による演算結果の表示に基づいて出側温度T4が限界温度未満で可能な限り限界温度に近くなるように圧延速度を遅くする調整を行う。なお、適温の表示がある場合であっても、限界温度に比べて出側温度T4が相当に低く圧延速度が遅すぎる場合には、出側温度T4が限界温度未満で可能な限り限界温度に近くなるように圧延速度を速くする調整を行う。
このようにして被圧延材1の出側温度T4が限界温度以上にならないようにすることができるので、被圧延材1としてステンレス鋼帯を冷間圧延する場合には紙焼き付きの発生を防止することが可能になる。また、限界温度以上にならない範囲で可能な限り限界温度に近くなるように圧延速度を調整できるので、紙焼き付きの発生防止が可能な範囲で圧延速度を速くして圧延の生産性を高く維持することができる。
(実施例)
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、被圧延材として日本工業規格G4305に規定される鋼種SUS304のステンレス鋼帯を用い、図7に示す温度予測システム11を備える圧延システム10にて複数パスにわたって冷間圧延を行った。
(実施例1)
実施例1では、板厚1.30mm、板幅1034mmのステンレス鋼帯を6パスで板厚0.585mmまで冷間圧延し、温度予測システムで出側温度T4を計算した結果と、圧延スタンドの出側でステンレス鋼帯の温度を実測した結果とを比較した。ステンレス鋼帯の出側温度の実測は、ステンレス鋼帯の長さ方向の中央部において接触式温度計にて行ない、各パスの代表値とした。接触式温度計はステンレス鋼帯に表面疵を発生させるおそれがあるけれども、予測精度検証のために測定精度を重視して接触式温度計で実測した。圧延条件および圧延中に検出して用いる値以外で温度予測に使用した数値を表1に示す。
Figure 2008221273
計算による出側温度T4と実測温度との比較結果を図8に示す。図8中において、階段状に表されるライン31が実測温度であり、台形を連ねたように表されるライン32が温度予測方法による計算出側温度T4である。1パスの圧延を行なう間にも1秒間隔で繰り返し温度予測の演算を実行したので、計算出側温度T4はミル動力Wの検出値などに応じて1パスの間でも若干変動する値として求められる。
計算出側温度T4の最高値と実測温度とを比較すると、4パス目を除いて各パスとも両者はよく一致する。また、4パス目においても計算出側温度T4の最高値と実測温度との差は数℃である。このことから温度予測方法による予測精度の高いことが判る。
(実施例2)
実施例2では、ステンレス鋼帯を0.60mm付近の仕上げ厚さまで複数パスにわたって冷間圧延し、実施例の圧延速度と比較例の圧延速度とを比較した。
実施例の最終パスでは、表示装置23に表示される比較装置21による比較結果および出側温度演算装置16による演算結果に従い、限界温度未満で可能な限り限界温度に近くなるように圧延速度を調整して圧延した。また、実施例の最終パス以外の途中パスでは、限界温度以上になっても許されるので、表示装置23に表示される出側温度演算装置16による演算結果を確認しながら、機械的性質などの特性上問題のない温度範囲内で圧延速度を可能な限り速くするように調整して圧延した。
一方、比較例では、温度予測システムを全く用いることなく、放射温度計による測定結果に従い、最終パスでは限界温度以上とならないように、また途中パスでは特性上問題のない温度範囲内となるように圧延速度を調整して圧延した。ただし、放射温度計の測定結果に従う比較例の場合、ヒュームなどによって測温値の精度が低下することを考慮し、最終パスにおける限界温度および途中パスにおける所定温度のいずれに対しても、品質管理上安全な温度幅を見込んで所定値よりもやや低目を目標にして圧延速度を調整した。
途中パスおよび最終パスについて圧延速度を比較した結果を図9に示す。図9は、実施例では4コイル、比較例では11コイルのステンレス鋼帯を、それぞれ冷間圧延したときに得られた圧延速度を併せて示す。図9中でひし形の印およびその近傍に示す数字は、圧延速度の平均値を表す。比較例に比べて実施例では、最終パスおよび途中パスのいずれにおいても圧延速度が平均値で10%以上向上した。
精度が高い温度予測結果に従って圧延速度を調整しながら冷間圧延することによって、最終パスの圧延速度を限界温度未満で、また途中パスの圧延速度を所定温度範囲内で可能な限り速くすることができたので、1機のリバース式圧延機における1時間あたりの生産トン数を15.2トンから16.4トンまで約8%向上することができた。
また、温度予測システムを備える圧延システムでステンレス鋼帯を冷間圧延する生産を継続的に行なった結果、最終パスの出側温度の予測精度が高く冷間圧延後のステンレス鋼帯の温度管理を厳密に行なうことが可能になったので、ステンレス鋼帯の紙焼き付きの発生量を1月あたり数コイルにまで減少させて品質歩留を向上することができた。
本発明の実施の一形態としての被圧延材の温度予測方法の概要を示す図である。 図1の温度予測方法に用いる計算式を示す図である。 図1の被圧延材1から冷却媒体3への熱伝達を模式的に示す図である。 図1の被圧延材1が圧延加工されることによって発生する熱の求め方を示す図である。 図1の冷却媒体の熱伝達係数を求めるについての仮定を示す図である。 図1の温度予測方法による計算出側温度T4と実測出側温度との相関の一例を示すグラフである。 図1の本発明の被圧延材の温度予測システムを備える圧延システムの概略構成を示すブロック図である。 図1の計算による出側温度T4と実測温度との比較結果を示すグラフである。 図7の圧延システムの途中パスおよび最終パスについて、圧延速度を比較した結果を示すグラフである。
符号の説明
1 被圧延材
2 圧延スタンド
3 冷却媒体
6 ミルモーター
9 リバース式冷間圧延機
10 圧延システム
11 温度予測システム
12 放射温度計
13 入側温度設定装置
14 ミル前温度演算装置
15 加工後温度演算装置
16 出側温度演算装置
17 コントローラー
20 演算装置
22 速度調整装置

Claims (4)

  1. 被圧延材を複数パスにわたって、各パスでは圧延スタンドの前後で冷却媒体による冷却を行いながら冷間圧延するに際し、各回のパス毎に、圧延スタンドへ装入される被圧延材の温度を入側温度として、初回のパスでは実測温度、2回以降のパスでは前回のパスで圧延スタンドから排出される出側の被圧延材の温度として予測する出側温度を設定し、
    各回のパスで圧延加工される直前の被圧延材の温度としてのミル前温度を、入側温度、および被圧延材から冷却媒体への熱伝達に基づいて予測し、
    被圧延材が圧延加工された直後の温度である加工後温度を、ミル前温度、圧延ロールを駆動する電動機の出力、単位時間当たりの被圧延材の熱容量、および仕事の熱当量に基づいて予測し、
    圧延スタンドから排出される被圧延材の温度としての出側温度を、加工後温度、および被圧延材から冷却媒体への熱伝達に基づいて予測することを特徴とする被圧延材の温度予測方法。
  2. 被圧延材を複数パスにわたって、各パスでは圧延スタンドの前後で冷却媒体による冷却を行いながら冷間圧延する圧延方法において、
    請求項1記載の被圧延材の温度予測方法により予測される被圧延材の前記出側温度が、予め定める限界温度以上になるとき、
    被圧延材の出側温度が限界温度未満で可能な限り限界温度に近い温度になるように圧延速度を調整することを特徴とする圧延方法。
  3. 被圧延材を複数パスにわたって、各パスでは圧延スタンドの前後で冷却媒体による冷却を行いながら冷間圧延する場合の温度を予測する被圧延材の温度予測システムであって、
    被圧延材の温度を測定する温度測定手段と、
    初回のパスでは、温度測定手段によって測定される温度を圧延スタンドに装入される被圧延材の入側温度として設定し、2回以降のパスでは、前回のパスで圧延スタンドから排出される出側の被圧延材の温度として予測する出側温度を入側温度として設定する入側温度設定手段と、
    圧延加工される直前の被圧延材の温度としてのミル前温度を、入側温度、および被圧延材から冷却媒体への熱伝達に基づいて演算するミル前温度演算手段と、
    被圧延材が圧延加工された直後の温度である加工後温度を、ミル前温度、圧延ロールを駆動する電動機の出力、単位時間当たりの被圧延材の熱容量、仕事の熱当量に基づいて演算する加工後温度演算手段と、
    圧延スタンドから排出される被圧延材の温度としての出側温度を、加工後温度、および被圧延材から冷却媒体への熱伝達に基づいて演算する出側温度演算手段と、を含むことを特徴とする被圧延材の温度予測システム。
  4. 被圧延材を複数パスにわたって、各パスでは圧延スタンドの前後で冷却媒体による冷却を行いながら冷間圧延するための圧延システムにおいて、
    請求項3記載の被圧延材の温度予測システムと、
    被圧延材の温度予測システムによって予測する前記出側温度と予め定める限界温度とを比較する比較手段と、
    比較手段の比較結果に応じて、出側温度が予め定める限界温度以上になるとき、出側温度が限界温度未満で可能な限り限界温度に近い温度になるように圧延速度を調整する速度調整手段と、を含むことを特徴とする圧延システム。
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