JP2008115426A - 調質圧延鋼板の幅方向材質予測方法及びこれを用いた連続焼鈍ラインの操業方法 - Google Patents

調質圧延鋼板の幅方向材質予測方法及びこれを用いた連続焼鈍ラインの操業方法 Download PDF

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【課題】調質圧延鋼板の板幅方向の材質変動を予測し、抑制することができる調質圧延鋼板の幅方向材質予測方法及びこれを用いた連続焼鈍ラインの操業方法を提供する。
【解決手段】連続焼鈍炉1の出側に、鋼板幅方向に複数に分割されたバックアップロール9を装備する調質圧延機2を配置し、調質圧延機9における伸び率、張力、鋼板幅方向の圧延荷重の値と、鋼板の板厚、板幅とに基づいて調質圧延鋼板の幅方向材質予測を行う。また、得られた予測結果に基づいて連続焼鈍炉の徐冷炉および/または急冷炉の冷却手段18を幅方向に制御すれば、鋼板幅方向の材質バラツキを抑制することができる。
【選択図】図11

Description

本発明は、連続焼鈍炉を持つ連続処理ライン、例えば連続焼鈍設備や溶融めっき設備の出側に調質圧延機を配置した連続処理ラインにおける調質圧延鋼板の材質予測方法及びこれを用いた連続焼鈍ラインの操業方法に関するものである。
連続焼鈍炉の出側に調質圧延機を配置した連続焼鈍ラインにおいては、炉内における加熱・均熱条件や冷却条件が調質圧延鋼板の材質に大きな影響を及ぼす。このため従来から連続焼鈍炉の内部における板温制御を高精度化し、材質を安定させる努力が行われていた。しかし例えば鋼板成分が変動するなどの前工程起因の材質バラツキが存在するような場合には、単に連続焼鈍炉の板温制御を高精度化しても、材質変動を避けることができなかった。特に近年、自動車部品の成形精度向上の観点からハイテン材(高強度鋼板)の材質バラツキ低減、特に引張強度の安定を求められているが、従来法では自動車メーカーの要求に完全に応えることができなかった。
なお特許文献1には、連続焼鈍炉と調質圧延機との間に鋼板温度の制御手段を設け、環境温度の影響をなくして調質圧延鋼板の材質安定を図る技術が開示されている。しかしこの方法も、前工程起因の材質バラツキが存在するような場合には、効果がなかった。また、特許文献2には、調質圧延装置の張力変動量によって焼鈍温度を制御する方法が提案されている。しかし、この方法は、単に張力変動にのみ着目したものであって、調質圧延荷重が一定条件の必要があり、圧延荷重が変動するような場合には、予測精度に問題があった。このため、従来は製造された後の調質圧延鋼板の材質をオフラインで検査し、その結果を連続焼鈍ラインの製造条件にフィードバックする方法が採用されてきた。しかしこの方法ではフィードバックに時間がかかるため、大量の規格外れ品が発生してしまうことがあった。
しかも従来は調質圧延鋼板の長手方向の材質変動のみが問題とされており、鋼板幅方向の材質変動を考慮した例はなかった。例えば特許文献2の方法においても調質圧延装置の張力は板幅全体の平均値として検出されるものであり、鋼板幅方向のバラツキを検出することは不可能であった。
特開平6−344019号公報 特開平6−10055号公報
本発明は上記した従来の問題点を解決し、鋼板幅方向に複数に分割されたバックアップロールを装備する調質圧延機の圧延実績により鋼板の材質予測、特に幅方向の材質予測を行うと共に、鋼板成分が変動するなどの前工程起因の材質バラツキが存在する場合にも、速やかに連続焼鈍ラインにフィードバックを行うことができ、しかも調質圧延鋼板の板幅方向の材質変動をも抑制することができる調質圧延鋼板の幅方向材質予測方法及びこれを用いた連続焼鈍ラインの操業方法を提供することを目的とするものである。
上記の課題を解決するためになされた請求項1の発明は、調質圧延鋼板の幅方向材質予測方法に関するもので、連続焼鈍炉の出側に、鋼板幅方向に複数に分割されたバックアップロールを装備する調質圧延機を配置し、この調質圧延機における伸び率、張力、鋼板幅方向の圧延荷重の値を測定するとともに、鋼板の板厚、板幅を測定するか上位計算機より入手し、これらの値に基づいて調質圧延鋼板の幅方向材質予測を行うことを特徴とするものである。なお、調質圧延鋼板の幅方向材質予測を、鋼板の全長にわたり行うことが好ましく、調質圧延鋼板の幅方向材質予測を、調質圧延機における伸び率、張力、圧延荷重の値と、鋼板の板厚、板幅から鋼板の降伏点を算出する予測式を用いて行うことが好ましい。
また請求項4の発明は、連続焼鈍ラインの操業方法に関するものであり、請求項1〜3の何れかの方法により調質圧延鋼板の幅方向材質予測を行い、予測結果に基づいて連続焼鈍炉の徐冷炉および/または急冷炉の操業条件をフィードバック制御することを特徴とするものである。なお、徐冷炉および/または急冷炉の冷却媒体が水、気水、ガスのいずれか1種または2種以上の併用であって、徐冷炉および/または急冷炉の冷却手段が鋼板幅方向の冷却制御手段を有し、フィードバック制御する操業条件が、冷却媒体の鋼板幅方向の流量であることが好ましい。
請求項1〜3の発明によれば、前工程起因の材質バラツキが存在する場合にも、調質圧延機における伸び率、張力、鋼板幅方向の圧延荷重の値と、鋼板の板厚、板幅とから直ちに板幅方向の材質予測を行うことができる。また請求項4〜5の発明によれば、予測材質が板幅方向に一定となるように連続焼鈍炉の徐冷炉および/または急冷炉の操業条件をフィードバック制御することにより、調質圧延鋼板の板幅方向の材質バラツキをなくすことができる。このほか本発明によれば、連続焼鈍炉の板温計に異常が発生したような場合にも直ちに異常発生を検出でき、規格外れ品の発生を抑制することができる。なお本発明は鋼板の長手方向の材質予測やその変動抑制にも適用できることはいうまでもない。
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は鋼板の連続焼鈍ラインを模式的に示した図であり、1は連続焼鈍炉、2はその出側に配置された調質圧延機である。連続焼鈍炉1は昇温炉3、均熱炉4、冷却炉5、急冷炉6などに大別されている。払出しリール7から払い出された鋼板は連続焼鈍炉1の内部を走行する間に鋼板の材質に適した温度に加熱焼鈍されたうえ、冷却炉5、急冷炉6で焼入れされ、調質圧延機2で調質圧延されたうえで巻き取りリール8に巻き取られる。なお、連続焼鈍炉1と調質圧延機2との間に過時効炉や冷却炉、表面処理鋼板を製造するための溶融メッキ設備、合金化設備、電気メッキ設備などの表面処理設備を付設してもよい。
調質圧延機2では軽圧下による調質圧延が行われるが、本発明では調質圧延機2として、図2に示すように鋼板幅方向に複数に分割されたバックアップロール9を装備する調質圧延機2を用いる。分割された各バックアップロール9には圧延荷重計10が設けられており、ワークロール11が鋼板を調質圧延する際の圧延荷重を、鋼板幅方向の複数点で測定する。図2ではバックアップロール9の分割数は5であるが、分割数をより多くすることもできる。またテンションメーターロール12によってトータル張力値を測定することができ、調質圧延機2の出側に設置された板厚計13と板幅計14によって調質圧延鋼板の板厚と板幅を測定できる。なお圧延張力はトータル張力値を、板厚、板幅で除した単位断面積あたりの値を使用する。
本発明では、ハイテン鋼板の材質予測を正確に行うべく、調質圧延機2の張力、伸び率のみならず、調質圧延機2の鋼板幅方向の圧延荷重をも取り入れて材質予測をする。図3及び図4にハイテン鋼板での圧延荷重とハイテン鋼板との降伏点との相関を示す。また図5及び図6に当該ハイテン鋼板での圧延荷重と抗張力との相関を示す。すなわち実績データによれば、図3及び図4に示されるように伸び率が同じであれば圧延荷重、張力が増加すると調質圧延鋼板の降伏点(YP)が増加し、また図5及び図6に示すように抗張力(TS)も増加している。また圧延荷重もしくは張力が一定であっても、伸び率が低い方が降伏点(YP)及び抗張力(TS)が大きくなる。このことから、圧延荷重、張力、伸び率、調質圧延鋼板の材質(YP、TS)との間には強い相関があることが分る。
そこで過去の操業実績に基づいて、調質圧延鋼板の材質予測式を作成した。調質圧延の理論式として知られるROBERTSの式には、材質(YP、TS)、伸び率、張力、摩擦係数、厚み、圧延速度、ロール径などの多くの影響因子が含まれており、これらの因子を精度よく用いることで、高精度な材質予測が可能になることから、本発明の一例として、下記の材質予測式を作成した。影響因子としては、調質圧延機の伸び率(%)、調質圧延機の張力(MPa)、鋼板の板厚(mm)、調質圧延機の圧延荷重と鋼板の板巾から算出される線荷重(ton/m)を用いている。
YP=a*伸び率(%)+b*(平均張力MPa)+c*(鋼板の板厚mm*線荷重ton/m)+d
この式中、YPは降伏点であって単位はMPa、SPM%は伸び率、線荷重は圧延荷重を鋼板の幅で割った値である。この式に含まれる係数は重回帰分析により定めるが、前記式のa, b,c, dの具体的な数値や式の形態は各ラインの特性や通板される鋼板の強度によって定められるものであり、上記に限定されるものではないことはいうまでもない。
この式により予測されたYPは図7に示すとおり実績YPとよく一致する(重相関係数0.925)ことが確認された。また調質圧延鋼板のYPとTSとの間には図8に示すとおり強い相関があるので、この図8に示されたTS=e*YP+fの関係を利用してTSを予測し、実績TSとの関係を確認すると図9にようになり、上記の材質予測式によって調質圧延鋼板の材質を正確に予測できることが確認された。
上記したように、調質圧延機2における伸び率、張力、圧延荷重と、鋼板の板厚、板幅とに基づいて調質圧延鋼板の材質予測を正確に行うことができるが、本発明では図2に示したように分割されたバックアップロール9を装備する調質圧延機2を用いるため、鋼板幅方向の分割されたバックアップロール毎の圧延荷重の値を測定することができる。これにより前述の式を分割されたバックアップロール毎に計算し、鋼板幅方向の材質予測が可能となる。尚、前述の式のa、b、c、d、e、fの具体的な数値や式の形態は分割されたバックアップロール毎に同じでも異なっても構わない。また当業者には自明であるが、TSとYPとの関係も鋼種によって変化するため、鋼種に応じた式、例えば高次の式や各種関数を用いた式を用いても構わず、前記式の形態に限定されない。また前述の式のa、b、c、d、e、fは各ラインの特性や鋼種によって定められるもので特に限定されない。
また図2では鋼板幅方向の圧延荷重の値を測定したが、図10に示すようにテンションメーターロール12の胴長方向に圧電素子15を多数設置し、接触圧の大小により形状を検出し、その形状情報から張力の幅方向分布を推測し、分割されたバックアップロール9の各位置毎に張力値及び単位断面積当たりの張力を求めれば、鋼板幅方向の材質予測をさらに精度よく行うことが可能となる。
本発明の一例では、調質圧延機2において連続的に検出された鋼板幅方向の圧延荷重、張力、伸び率と、調質圧延機2の後方に位置する板厚計13、板巾計14において連続的に検出された板厚、板巾は図1に示すプロセスコンピュータ16に入力され、プロセスコンピュータ16に入力されている調質圧延鋼板のYP算出式、TS算出式に代入されて計算され、リアルタイムで現在圧延中の鋼板幅方向の材質を把握することができる。なお、板厚、板巾の値はプロセスコンピュータ16の上位計算機であるビジコン17より入手しても構わない。
このため演算された調質圧延鋼板のYPやTSに変動が生じた場合には直ちに異常発生の警報を出すことができ、従来のように大量の規格外れ品を発生させることがない。また異常発生の原因が、鋼板成分変動などの前工程起因の材質バラツキである場合にも、圧延荷重、張力、伸び率の変動として現れるので、直ちに異常発生を把握することができる。このように調質圧延機2を材質変動のモニターとして利用するのは、従来に例を見ない新規な技術である。
上記したように、本発明によれば板幅方向及び長手方向について調質圧延鋼板のYPやTSの予測が可能であるが、請求項4以下の発明では、得られた予測結果に基づいて連続焼鈍炉1の徐冷炉5および/または急冷炉6の操業条件をフィードバック制御する。しかもそのフィードバック制御は、板幅方向のバラツキを考慮して行うことが好ましい。
図11はその具体例を示すもので、急冷炉6に設置された冷却手段18を鋼板幅方向に分割されたものとしておき、冷却流体の流量を冷却制御手段である制御弁19によって鋼板幅方向に可変としておく。そして幅方向材質予測の結果に基づいて、鋼板幅方向の冷却流量を制御する。なお、冷却媒体は水、気水、ガスのいずれか1種または2種以上の併用とすることができる。これによって鋼板幅方向の材質バラツキを抑制することができる。
また図12に示すように、鋼板幅方向の張力値をも測定して幅方向材質予測を行い、その幅方向材質予測の結果に基づいて、鋼板幅方向に冷却を制御することにより、更に好ましい結果が得られる。
図13は従来法と本発明法とにより製造されたハイテン調質圧延鋼板の板幅方向のYPのバラツキを示すグラフであり、表1はその測定データを示す表である。この例では15分割したバックアップロールを使用し、ワークサイドから順に1、2、3の番号を付した。なお表1中の左端欄は冷却制御を行わなかった場合、右端欄は冷却制御を行った場合のデータである。従来法では鋼板幅方向のYPの最大値‐最小値の差は34MPaであったが、本発明による冷却制御を行えば、11MPaにまで小さくなったことが分る。
Figure 2008115426
このようにフィードバック制御を行えば、前工程起因の材質バラツキや、連続焼鈍炉内における板温の変動に起因する板幅方向の材質バラツキが発生しても直ちに自動修正を加え、調質圧延鋼板の材質安定を図ることができる。また鋼板の長手方向の材質バラツキにも対応できることはいうまでもない。これにより自動車メーカーからのハイテン材(高強度鋼板)の材質バラツキ低減の要求にも応えることが可能となった。
連続焼鈍ラインの模式図である。 本発明の幅方向材質予測方法の実施形態を示す斜視図である。 圧延荷重とYPとの相関を示すグラフである。 圧延張力とYPとの相関を示すグラフである。 圧延荷重とTSとの相関を示すグラフである。 圧延張力とTSとの相関を示すグラフである。 予測YPと実績YPとの相関を示すグラフである。 YPとTSの関係を示すグラフである。 予測TSと実績TSとの相関を示すグラフである。 本発明の幅方向材質予測方法の他の実施形態を示す斜視図である。 本発明の操業方法の実施形態を示す斜視図である。 本発明の操業方法の他の実施形態を示す斜視図である。 ハイテン調質圧延鋼板の板幅方向のYPのバラツキを示すグラフである。
符号の説明
1 連続焼鈍炉
2 調質圧延機
3 昇温炉
4 均熱炉
5 冷却炉
6 急冷炉
7 払出しリール
8 巻き取りリール
9 分割されたバックアップロール
10 圧延荷重計
11 ワークロール
12 テンションメーターロール
13 板厚計
14 板幅計
15 圧電素子
16 プロセスコンピュータ
17 ビジコン
18 冷却手段
19 制御弁

Claims (5)

  1. 連続焼鈍炉の出側に、鋼板幅方向に複数に分割されたバックアップロールを装備する調質圧延機を配置し、この調質圧延機における伸び率、張力、鋼板幅方向の圧延荷重の値を測定するとともに、鋼板の板厚、板幅を測定するか上位計算機より入手し、これらの値に基づいて調質圧延鋼板の幅方向材質予測を行うことを特徴とする調質圧延鋼板の幅方向材質予測方法。
  2. 調質圧延鋼板の幅方向材質予測を、鋼板の全長にわたり行うことを特徴とする請求項1記載の調質圧延鋼板の幅方向材質予測方法。
  3. 調質圧延鋼板の幅方向材質予測を、調質圧延機における伸び率、張力、圧延荷重の値と、鋼板の板厚、板幅から鋼板の降伏点を算出する予測式を用いて行うことを特徴とする請求項1または2記載の調質圧延鋼板の幅方向材質予測方法。
  4. 請求項1〜3の何れかの方法により調質圧延鋼板の幅方向材質予測を行い、予測結果に基づいて連続焼鈍炉の徐冷炉および/または急冷炉の操業条件をフィードバック制御することを特徴とする連続焼鈍ラインの操業方法。
  5. 徐冷炉および/または急冷炉の冷却媒体が水、気水、ガスのいずれか1種または2種以上の併用であって、徐冷炉および/または急冷炉の冷却手段が鋼板幅方向の冷却制御手段を有し、フィードバック制御する操業条件が、冷却媒体の鋼板幅方向の流量であることを特徴とする請求項4記載の連続焼鈍ラインの操業方法。
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