JP7280506B2 - 冷間タンデム圧延設備及び冷間タンデム圧延方法 - Google Patents
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Description
一般に、無方向性電磁鋼板の製造にあたっては、連続鋳造によって得られた鋳造板(スラブ)を加熱し、連続熱間圧延して、所定の板厚の熱延鋼帯とし、引き続いて熱延鋼帯に対して連続焼鈍(以下ではホットコイル焼鈍と称する)を施し、その後、酸洗・冷間圧延を施し、表面処理するのが一般的である(例えば非特許文献1)。このような従来の一般的な製造方法では、工程数が多く、高コスト化を招かざるを得ない。そこで最近では、例えば、無方向性電磁鋼板の製造コストの低減を図るため、熱延鋼帯のホットコイル焼鈍工程を省略することが取り組まれている。すなわち、熱間圧延工程において熱延鋼帯の仕上げ圧延過程とそれに続く冷却過程の条件を適切に制御することによって、その冷却過程において自己焼鈍させることにより、ホットコイル焼鈍工程を省略する方法である。
このようなコイル内での冷却速度のバラツキによって、コイル内で、板長手方向及び板幅方向に材質の不均一、特に強度の不均一が生じ、ひいては冷間での変形抵抗の不均一が生じる。ここでは、このようなコイルを自己焼鈍コイルと称する。この自己焼鈍コイルの材質(鋼種)は上記無方向性電磁板に限定するものでは無く、コイル内で、板長手方向及び板幅方向に材質の不均一、特に強度の不均一が生じ、ひいては冷間での変形抵抗の不均一が生じている鋼種を意味する。
そこで、冷間タンデム圧延において自己焼鈍コイルの板破断が生じないようにした冷間タンデム圧延設備及び圧延方法が強く求められていた。
複数の圧延機スタンドを直列状に配列してなる冷間タンデム圧延機の上流に、圧延すべきストリップの変形抵抗に相関する材質についてのストリップ板幅方向の分布を連続的に測定することによりストリップ長手方向及びストリップ板幅方向の変形抵抗分布を測定するための変形抵抗分布測定器が配設されており、
さらに前記測定された変形抵抗分布に基づいて前記複数の圧延機スタンドのうち少なくとも最上流側に位置する第1圧延機スタンドの出側での板形状を予測してその予測に基づいて、前記予測された板形状が目標とする板形状になるように、少なくとも前記第1圧延機スタンドにおける形状制御端の制御量を計算するための計算装置と、計算された制御量に基づいて少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を制御する形状制御装置とを具備していることを特徴とするものである。
前記第1の態様の冷間タンデム圧延設備において、
前記複数の圧延機スタンドのうち少なくとも前記第1圧延機スタンドの出側に、ストリップの板形状を連続的に検出する形状検出器が配設されており、
前記形状制御装置が、前記変形抵抗分布と前記形状検出器で検出された形状に応じた制御量に基づいて、少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を制御するものであることを特徴とするものである。
複数の圧延機スタンドを直列状に配列してなる冷間タンデム圧延機の上流において、圧延されるストリップの変形抵抗に相関する材質についてのストリップ板幅方向の分布を連続的に測定することによりストリップ長手方向及びストリップ板幅方向の変形抵抗分布を測定し、
さらに前記測定された変形抵抗分布に基づいて前記複数の圧延機スタンドのうち少なくとも最上流側に位置する第1圧延機スタンドの出側での板形状を予測して、その予測に基づいて、前記予測された板形状が目標とする板形状になるように、少なくとも前記第1圧延機スタンドにおける制御端の制御量を計算し、計算された制御量に基づいて少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を制御することを特徴とするものである。
複数の圧延機スタンドを直列状に配列してなる冷間タンデム圧延機の上流において、圧延されるストリップの変形抵抗に相関する材質についてのストリップ板幅方向の分布を連続的に測定することによりストリップ長手方向及びストリップ板幅方向の変形抵抗分布を測定するとともに、前記複数の圧延機スタンドのうち少なくとも前記第1圧延機スタンドの出側においてストリップの板形状を検出し、
さらに前記測定された変形抵抗分布及び前記検出された形状検出結果に基づいて、前記検出された板形状が目標とする板形状制御範囲内に納まるように、前記複数の圧延機スタンドのうち少なくとも最上流側に位置する第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を計算し、計算された制御量に基づいて少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を制御することを特徴とするものである。
予め、圧延すべきストリップのサンプルであってかつ板幅方向に変形抵抗分布のあるサンプルについて、変形抵抗に相関する材質を測定する変形抵抗分布測定器により板幅方向材質分布を測定するとともに、該サンプルの板幅方向各位置についての引張試験によって板幅方向の耐力分布を測定するサンプル測定段階と、
該サンプル測定段階による板幅方向材質分布測定結果と板幅方向耐力分布測定結果に基づいて、板幅方向材質分布と板幅方向耐力分布との相関関係を求めることにより、前記変形抵抗分布測定器の較正を行う較正段階と、
複数の圧延機スタンドを直列状に配列してなる冷間タンデム圧延機による実際のストリップの連続タンデム冷間圧延中において、前記冷間タンデム圧延機の上流にて較正段階が完了した前記変形抵抗分布測定器によりストリップの板幅方向の材質分布を連続的に測定する変形抵抗分布測定段階と、
得られた変形抵抗分布測定結果を多項式近似して、変形抵抗分布を表すパラメータを算出する変形抵抗分布パラメータ算出段階と、
予め、鋼種・板幅・板厚毎に前記変形抵抗分布パラメータと少なくとも第1圧延機スタンドの出側での板形状との関係を求めておく第1の回帰計算段階と、
予め、鋼種・板幅・板厚毎に少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量とその圧延機スタンドの出側での板形状と関係を求めておく第2の回帰計算段階と、
前記第1の回帰計算段階で求められた関係と前記第2の回帰計算段階で求められた関係とに基づいて、少なくとも前記第1圧延機スタンドの出側での形状変化が打ち消されるように、少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を計算する制御量計算段階と、
前記制御量で少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端を制御する制御段階、とを有することを特徴とするものである。
複数の圧延機スタンドを直列状に配列してなる冷間タンデム圧延機によるストリップの連続タンデム冷間圧延中において、前記冷間タンデム圧延機の上流にて変形抵抗分布測定器によりストリップの板幅方向の材質分布を連続的に測定する変形抵抗分布測定段階と、
得られた変形抵抗分布測定結果を多項式近似して、変形抵抗分布を表すパラメータを算出する変形抵抗分布パラメータ算出段階と、
連続タンデム冷間圧延中において、少なくとも第1圧延機スタンドの出側でのストリップの板形状を連続的に検出する板形状検出段階と、
予め、鋼種・板幅・板厚毎に前記変形抵抗分布パラメータと少なくとも第1圧延機スタンドの出側での板形状との関係を求めておく第1の回帰計算段階と、
予め、鋼種・板幅・板厚毎に少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量とその圧延機スタンドの出側での板形状と関係を求めておく第2の回帰計算段階と、
前記第1の回帰計算段階で求められた関係と前記第2の回帰計算段階で求められた関係とに基づいて、少なくとも前記第1圧延機スタンドの出側での形状変化が打ち消されるように、少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を計算する制御量計算段階と、
前記制御量で少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端を制御する制御段階、とを有することを特徴とするものである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る冷間タンデム圧延設備を組み込んだ電磁鋼板の製造ラインの一例を示す。
ルーパー3は、溶接機2におけるコイル接合中の払出しが無い場合(すなわちストリップの走行が停止している場合)でも、下流工程でストリップの供給の停滞がないように制御される。なお、コイル払い出し機1に供給される自己焼鈍コイルC1,C2は、ホットバス等で温度60℃以上に予め加熱しても良い。
なお、本発明においては幅方向の分布測定は短周期(例えば0.1秒)で行うことが好ましく、場合によっては(スキャンに時間がかかる場合には)、上述の検出ヘッドを自己焼鈍ストリップSの板幅方向に複数設け、走査(スキャン)することなく、板幅方向の結晶粒径分布を測定してもよい。この場合、板幅が変っても所望位置の板端部の結晶粒が測定できるように測定位置を変更できるようにすることが好ましい。また、自己焼鈍コイル全幅を1つの検出ヘッドで走査(スキャン)するのではなく、走査型の検出ヘッドを複数設置し、スキャンの距離を短くして短周期で測定できるようにしてもよい。
さらに、冷間タンデム圧延機7では、図示していないが、各スタンドの入側と出側にてクーラントと称される圧延潤滑油を水に混入してエマルションにした圧延潤滑油が供給される。供給されたクーラントは図示しないタンクに回収され、再び各スタンドに供給されるリサーシュレーション潤滑が行われる。
なお、図示していないが、4重圧延機である各圧延機スタンド7a~7eのワークロールチョックには、ワークロールの撓み(ベンダー量)を調整して圧延板形状を制御する形状制御端として、ワークロールベンダー装置が具備されている。ワークロールベンダー装置は、形状制御装置6により制御されて、指令されたベンダー力が付与される。
接触式のものとしては、例えば非特許文献2に示されるように、板と接触するロールを分割ロール構造とし各分割ロールに圧電水晶式のセンサーを設置し、板の張力分布を測定する方法等があり、非接触式のものとしては、例えば非特許文献3に示されるように、ドットパターン投影方式による方法等がある。
なお、形状検出器10による検出値としては、ストリップの幅方向端部側と幅方向中央部との張力差、もしくは伸び率差が出力されるのが通常であるが、本例では張力差が出力されるものとする。
本発明の冷間タンデム圧延方法を実施するにあたっては、前述のように冷間タンデム圧延機の上流に変形抵抗分布測定器を設置しておき、自己焼鈍コイルの長手方向及び板幅方向の変形抵抗分布を測定する。ここで、変形抵抗分布測定器としては、変形抵抗と相関の強い材質(物性値)、例えば結晶粒径を測定する測定器を用い、その物性値測定値を変形抵抗に変換して、変形抵抗分布を求めることができる。材質分布、とりわけ結晶粒径の分布と変形抵抗分布との相関関係については、本発明者等の次のような実験によって確認されている。
このように板破断により圧延を緊急停止させた際の第1スタンド入側の板サンプル(したがって板の長手方向に、板破断個所に近い個所における圧延前のサンプル(大板サンプル)を採取して、さらにその大板サンプルから板幅方向の各位置のサンプル(小板サンプル)を切出し、その個所における材質を調査した。材質の調査方法としては、上記サンプルの材質分布として、板幅方向における結晶粒径分布を、特許文献7に示されている感磁性素子を用いて調査した。
その後、同一サンプル(前記小板サンプル)から、引張り試験片を作成し、引張り試験を行って、板幅方向の各位置での耐力を測定した。
このような傾向は、既に述べたように、熱間仕上げ圧延後のコイルの冷却過程でのコイル内における板幅方向の冷却速度の差に起因するものである。すなわち、コイル内において板幅方向両端部では冷却速度が大きいのに対し、板幅方向中央部では冷却速度が小さいためである。
図3からも、板幅方向両端部の耐力が大きいこと(変形抵抗が大きいこと)が明らかであるが、図3における板幅方向の変形抵抗分布形状を多項式近似しようとした場合、4次式によって近似し得ることを新規に見出した。
前述のような知見に基づき、本発明の冷間タンデム圧延方法の基本的な態様では、複数の圧延機スタンドを直列状に配列してなる冷間タンデム圧延機の上流において、圧延されるストリップ、例えば自己焼鈍ストリップの板幅方向の材質分布、例えば結晶粒径分布を自己焼鈍ストリップの全長にわたって測定することにより、板幅方向の変形抵抗分布を測定する。
そして測定された変形抵抗分布に基づいて、前記複数の圧延機スタンドのうち少なくとも最上流側に位置する第1圧延機スタンドの出側での板形状を予測して、その予測に基づいて、自己焼鈍ストリップの前記測定された変形抵抗分布がある部分(箇所)を圧延しても板形状が変わらないように、少なくとも前記第1圧延機スタンドにおける形状制御端の制御量を計算し、計算された制御量に基づいて少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量をフィードフォワード(FF)方式で制御することとしている。また、板形状を予測する際には、予め、変形抵抗分布と板形状の関係について数値計算を行い、モデル式を作成する。
そして測定された変形抵抗分布に基づいて、前記複数の圧延機スタンドのうち少なくとも最上流側に位置する第1圧延機スタンドの出側での板形状を予測して、その予測に基づいて、自己焼鈍ストリップの前記測定された変形抵抗分布がある部分(箇所)を圧延しても板形状が変わらないように、少なくとも前記第1圧延機スタンドにおける形状制御端の制御量を計算し、計算された制御量に基づいて少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量をフィードフォワード(FF)方式で制御することとしている。
さらに、前記検出された形状検出結果に基づいて板形状が目標とする形状制御範囲内に納まるように、第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を計算し、計算された制御量に基づいて、少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量をフィードバック(FB)方式でも制御することとしている。
ここで、冷間タンデム圧延機の上流における変形抵抗分布を測定して少なくとも第1圧延機スタンドを制御することは、FF制御に相当し、また少なくとも第1圧延機スタンドの出側におけるストリップの形状検出結果に基づいて少なくとも第1圧延機スタンドを制御することは、FB制御に相当する。したがってこの場合は、FB制御とFF制御とを組み合わせた制御を行うことを意味する。
また、板形状を予測する際には、予め、変形抵抗分布と板形状の関係についてデータを採取し、モデル式を作成してもよいし、上述したように、予め、変形抵抗分布と板形状の関係について数値計算を行い、モデル式を作成してもよい。
なお、ここでいうFB制御は、変形抵抗分布以外の要因で生じる形状に及ぼす外乱に対して形状制御することを意味する。具体的には、サーマルクラウンの影響や、ワークロールの粗度落ちや加減速時の摩擦係数変化(荷重変化)等を意味する。
第1の実施形態の冷間タンデム圧延方法は、基本的には、サンプル測定段階と、較正段階と、変形抵抗分布測定段階と、変形抵抗分布パラメータ算出段階と、第1の回帰計算段階と、第2の回帰計算段階と、制御量計算段階と、制御段階とを有する。以下にこれらの各段階について具体的に説明する。
第1の実施形態のサンプル測定段階は、予め、圧延すべきストリップのサンプルであってかつ板幅方向に変形抵抗分布のあるサンプルについて、変形抵抗に相関する材質を測定する変形抵抗分布測定器により板幅方向材質分布を測定するとともに、該サンプルの板幅方向各位置についての引張試験によって板幅方向の耐力分布を測定する段階である。
すなわち第1の実施形態の場合、予め変形抵抗分布のあるサンプルを採取し、オフラインで変形抵抗分布測定器の較正を実施しておく。ここで、変形抵抗分布測定器として、変形抵抗分布と相関の強い材質分布(例えば前述の冷間圧延設備の実施形態では粒径分布)を測定する場合、測定された板幅方向の粒径の分布態様が、同じ板幅方向の変形抵抗、例えば耐力の分布態様に相関するが、絶対値として粒径の値が耐力の値に相当するわけではない。そこで、予め採取した変形抵抗分布のあるサンプルを用いて、測定された粒径分布を耐力分布の絶対値分布に変換するための較正をおこなっておく必要がある。
較正段階とは、前記のサンプル測定段階による板幅方向材質分布測定結果と板幅方向耐力分布測定結果に基づいて、板幅方向材質分布と板幅方向耐力分布との相関関係を求めることにより、前記変形抵抗分布測定器の較正を行う段階である。すなわち、粒径と耐力との対応関係に基づいて、粒径分布測定結果を耐力分布(変形抵抗分布)に変換し得るように較正する。このようにして、変形抵抗分布をその絶対値として測定することが可能となる。
変形抵抗分布測定段階は、複数の圧延機スタンドを直列状に配列してなる冷間タンデム圧延機による実際のストリップの連続タンデム冷間圧延中において、冷間タンデム圧延機の上流にて前記変形抵抗分布測定器によりストリップの板幅方向の材質分布を測定する段階である。
すなわち、前記較正段階による較正済みの変形抵抗分布測定器を用いて冷間タンデム圧延機に送り込まれるストリップの板幅方向の材質分布(例えば粒径分布)を冷間タンデム圧延機の上流で測定して、その分布を変形抵抗分布測定結果として出力する。
変形抵抗分布パラメータ算出段階は、変形抵抗分布測定段階によって得られた変形抵抗分布測定結果を多項式近似して、変形抵抗分布を表すパラメータを算出する段階である。
具体的には、前記較正段階を経て得られた変形抵抗分布、例えば図3に示したような板幅方向の位置(横軸x)と耐力(変形抵抗:縦軸y)の関係を、多項式近似、例えば次の(1)式で示す4次式で近似する。
y=a×x4+b・・・(1)
ここで、板幅方向の位置xは、板幅方向の両端位置を±1、板幅方向の中央位置を0として規格化したものとする。
そして前記4次式((1)式)から、変形抵抗分布パラメータαとして、板端が板中央部よりどれだけ耐力が大きいか(変形抵抗がどれだけ大きいか)のパラメータαを次の(2)式によって算出する。
α=(a+b)/b・・・(2)
第1の回帰計算段階は、予め、鋼種・板幅・板厚毎に前記変形抵抗分布パラメータと少なくとも第1圧延機スタンドの出側での板形状との関係を求めておく段階である。
具体的には、複数の圧延機スタンドからなるタンデム冷間圧延機のスタンド番号をiとし、各スタンドごとに、かつ鋼種・板幅(W)・板厚(H)ごとに、上記変形抵抗分布パラメータαと板形状(Λ2fi)との関係を計算しておき、当該スタンドでの圧延後の板形状すなわち当該スタンドの出側での板形状(Λ2fi)と変形抵抗分布パラメータαとの関係を、次の(3)式で回帰する。
Λ2fi=fi(W,H,α)・・・(3)
ここで、板形状(Λ2fi)は、板端部の伸び率と板中央部の伸び率との差に基づく張力差に相当し、符合正は端伸び、符合負は中伸びを表す。
Λ2fi=f1(W,H,α)・・・(3A)
ΔΛ2fi=fi(W,H,α2)-fi(W,H,α1)・・・(4)
から求まる。
第2の回帰計算段階は、予め、鋼種・板幅・板厚毎に少なくとも前記第1スタンドの形状制御端の制御量とその圧延機スタンドの出側での板形状と関係を求めておく段階である。
具体的には、予め、変形抵抗分布の無い条件での、各圧延機スタンドごとに、鋼種・板幅・板厚毎の各圧延機スタンドの形状制御端の制御量(例えばワークロールベンダー力Fwr)と当該スタンドの出側での板形状(Λ2gi)との関係を、オフラインで計算しておく。そして板形状(Λ2gi)と形状制御端の制御量との関係を、次の(5)式で回帰する。
Λ2gi=gi(W,H,Fwr)・・・(5)
制御量計算段階は、前記第1の回帰計算段階で求められた関係と前記第2の回帰計算段階で求められた関係に基づいて、少なくとも前記第1スタンドの出側での形状変化が打ち消されるように、少なくとも前記第1スタンドの形状制御端の制御量を計算する段階である。
すなわち、上記(5)式を用いれば ワークロールベンダー力FwrがFwr1からFwr2へΔFwrだけ変化した際における各スタンドでの形状変化量(張力変化量)ΔΛ2giは、次の(6)式によって求めることができる。
ΔΛ2gi=fi(W,H,Fwr2)-fi(W,H,Fwr1)・・・(6)
ΔΛ2gi=ΔΛ2fi・・・(7)
の関係から求めることができる。したがって予測された形状変化を打ち消すように各スタンドのワークロールベンダー力(制御量)を決定することができる。
制御段階は、前記制御量計算段階によって求められた制御量(例えばワークロールベンダー力)となるように、少なくとも前記第1スタンドの形状制御端を制御する段階である。
すなわち、トラッキングを行いながら、(7)式を満たすように、フィードフォワード(FF)方式での当該スタンドでの形状制御(ワークロールベンダー力の制御)を行う。
冷間タンデム圧延機の圧延機スタンドの出側に形状検出器がある場合には、その形状測定機によって圧延機スタンドの出側で板形状(板幅方向の張力差もしくは伸び率差)を圧延中に測定(実測)し、その板形状測定値を、変形抵抗分布と併用することによって、第1の実施形態で説明した鋼種・板幅・板厚毎の各圧延機スタンドの形状制御端の制御量(例えばワークロールベンダー力Fwr)と当該スタンドの出側での板形状(Λ2gi)との関係につての、オフラインでの計算段階を省略することが可能である(但し、圧延機スタンド出側に形状検出器のある圧延スタンドに限る)。
すなわち、変形抵抗分布パラメータαと板形状(板幅方向の張力差もしくは伸び率差)との関係の実績データ、及び変形抵抗分布パラメータαが同じ値での各圧延スタンドの形状制御端の制御量(例えばワークロールベンダー力Fwr)と板形状の関係の実績データから(3)式及び(5)式に相当する回帰式を作成すれば良い。
先ず変形抵抗分布測定段階及び変形抵抗分布パラメータ算出段階は、第1の実施形態の場合と同様である。
板形状検出段階は、連続タンデム冷間圧延中において、少なくとも第1圧延機スタンドの出側でのストリップの形状を検出する段階である、すなわち、既に述べたような板形状検出器を少なくとも第1圧延機スタンドの出側に配置しておき、第1圧延機スタンドで圧延された板形状の情報(実際には張力差もしくは伸び率差で表される情報)を、連続圧延中に取得する。
第2の実施形態における第1の回帰計算段階は、第1の実施形態における第1の回帰計算段階と同様である。すなわち、予め、鋼種・板幅・板厚毎に前記変形抵抗分布パラメータと少なくとも第1圧延機スタンドの出側での板形状との関係を求めておく段階である。
具体的には、複数の圧延機スタンドからなるタンデム冷間圧延機のスタンド番号をiとし、各スタンドごとに、かつ鋼種・板幅(W)・板厚(H)ごとに、上記変形抵抗分布パラメータαと板形状(Λ´2fi)の関係を計算しておき、当該スタンドでの圧延後の板形状すなわち当該スタンドの出側での板形状(Λ´2fi)と変形抵抗分布パラメータαとの関係を、次の(3´)式で回帰する。
Λ´2fi=fi(W,H,α)・・・(3´)
ここで、第2の実施形態における板形状(Λ´2fi)は、前記形状検出段階で実際の形状検出により取得された形状実測値の情報である。なお第2の実施形態における板形状(Λ´2fi)は、第1の実施形態の場合の板形状(Λ2fi)と同様に、板端部の伸び率と板中央部の伸び率との差に基づく張力差に相当し、符合正は端伸び、符合負は中伸びを表す。
ΔΛ´2fi=fi(W,H,α2)-fi(W,H,α1)・・・(4´)
から求まる。
第2の実施形態における第2の回帰計算段階は、第1の実施形態における第2の回帰計算段階と同様である。すなわち、予め、鋼種・板幅・板厚毎に少なくとも前記第1スタンドの形状制御端の制御量とその圧延機スタンドの出側での板形状と関係を求めておく段階である。
具体的には、予め、変形抵抗分布の無い条件での、各圧延機スタンドごとに、鋼種・板幅・板厚毎の各圧延機スタンドの形状制御端の制御量(例えばワークロールベンダー力Fwr)と当該スタンドの出側での板形状(Λ´2gi)との関係を、オフラインで計算しておく。そして板形状(Λ´2gi)と形状制御端の制御量との関係を、次の(5´)式で回帰する。
Λ´2gi=fi(W,H,Fwr)・・・(5´)
制御量計算段階も、第1の実施形態の方法と同様である、すなわち制御量計算段階は、前記第1の回帰計算段階で求められた関係と前記第2の回帰計算段階で求められた関係に基づいて、少なくとも前記第1スタンドの出側での形状変化が打ち消されるように、少なくとも前記第1スタンドの形状制御端の制御量を計算する段階である。
すなわち、上記(5´)式を用いれば ワークロールベンダー力FwrがFwr1からFwr2へΔFwrだけ変化した際における各スタンドでの形状変化量(張力変化量)ΔΛ2giは、次の(6´)式によって求めることができる。
ΔΛ2gi=fi(W,H,Fwr2)-fi(W,H,Fwr1)・・・(6´)
ΔΛ2gi=ΔΛ2fi・・・(7´)
の関係から求めることができる。したがって、形状変化を打ち消すように各スタンドのワークロールベンダー力(制御量)を決定することができる。
制御段階は、第1の実施形態の方法と同様に、前記制御量計算段階によって求められた制御量(例えばワークロールベンダー力)となるように、少なくとも前記第1スタンドの形状制御端を制御する段階である。
すなわち、トラッキングを行いながら、(7´)式を満たすように、フィードフォワード(FF)方式とフィードバック(FB)方式とを併用しての当該スタンドでの形状制御(ワークロールベンダー力の制御)を行う。
すなわち、圧延による板形状は、
A:変形抵抗分布、
のほか、
B:板クラウン、
C:ロールプロフィル(初期プロフィル+圧延時のプロフィル変化(サーマルクラウン))、
D:圧延荷重(摩擦係数(速度)、圧延速度、変形抵抗のひずみ速度項、ロールの摩耗状態)、
等の影響を受けることが知られている。ここで、第1の実施形態の方法は、Aに対しては有効であるが、B~Dには有効ではない。これに対して第2の実施形態の方法では、圧延機の上流での変形抵抗分布測定のみならず、圧延機スタンド出側での板形状の実測をも行って板形状を制御するため、B~Dにも有効となる。
各実施例及び各比較例は、図1に示した構成を備えた冷間タンデム圧延設備において実施した。すなわち冷間圧延機は第1~第4の圧延機スタンドからなり、各圧延機スタンドは4重式圧延機(4Hiミル)からなり、各圧延機スタンドではワークロールベンダーによって形状制御を行う構成とした。
・比較例1:従来の一般的な圧延方法に相当する例であり、板幅方向の変形抵抗分布があっても、第1圧延機スタンドで変形抵抗分布に応じた形状制御を行なわずに、自己焼鈍ストリップを圧延した。
・比較例2:比較例1と同様に、第1圧延機スタンドで変形抵抗分布に応じての形状制御は行なわなかったが、第1圧延機スタンド出側の形状検出器による形状測定結果に基づいて第1圧延機スタンドのワークロールベンダー力をFB制御した。
・実施例1:自己焼鈍ストリップの板幅方向の変形抵抗分布を測定して、第1圧延機スタンドのワークロールベンダー力を、前述の変形抵抗分布パラメータαの値に応じてFF制御した。
・実施例2:実施例1と同様に、自己焼鈍ストリップの板幅方向の変形抵抗分布を測定するとともに、第1圧延機スタンド出側での板形状を検出し、前述の変形抵抗分布パラメータαの値に応じて第1圧延機スタンドのワークロールベンダー力をFF制御すると同時に、第1圧延機スタンド出側での板形状検出結果に応じて第1圧延機スタンドのワークロールベンダー力をFB制御した。
α≦1.1では、形状乱れるものの板破断の発生なし。
1.1≦αで、約90%の確率で板破断発生。残り10%はひどい中伸びが続いた。
α≦1.1では形状乱れるものの板破断の発生なし。
1.1≦αで、約86%の確率で板破断が発生した。残り16%は大きな中伸びの箇所(短い)はあるが板破断なし。
1.1≦α でも板破断の発生なし。但し、サーマルクラウンの影響で若干形状が乱れたが、実際上は支障ない程度であった。
1.1≦αでも板破断の発生なし。この場合、サーマルクラウンや圧延速度の加減速、あるいはロール摩耗の影響があってもほとんど形状は乱れなかった。
S 自己焼鈍ストリップ
1 コイル払い出し機
2 溶接機
3 ルーパー
4 酸洗設備
5 変形抵抗分布測定器
6 形状制御装置
7 冷間タンデム圧延機
7a,7b,7c,7d,7e 冷間タンデム圧延機の圧延機スタンド
8 切断機
9 カローゼルリール
10 形状検出器
11 計算装置
Claims (6)
- 複数の圧延機スタンドを直列状に配列してなる冷間タンデム圧延機の上流に、圧延すべきストリップの変形抵抗に相関する材質についてのストリップ板幅方向の分布を連続的に測定することによりストリップ長手方向及びストリップ板幅方向の変形抵抗分布を測定するための変形抵抗分布測定器が配設されており、
さらに前記測定された変形抵抗分布に基づいて前記複数の圧延機スタンドのうち少なくとも最上流側に位置する第1圧延機スタンドの出側での板形状を予測してその予測に基づいて、前記予測された板形状が目標とする板形状になるように、少なくとも前記第1圧延機スタンドにおける形状制御端の制御量を計算するための計算装置と、計算された制御量に基づいて少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を制御する形状制御装置とを具備していることを特徴とする冷間タンデム圧延設備。 - 請求項1に記載の冷間タンデム圧延設備において、
前記複数の圧延機スタンドのうち少なくとも前記第1圧延機スタンドの出側に、ストリップの板形状を連続的に検出する形状検出器が配設されており、前記形状制御装置が、前記変形抵抗分布と前記形状検出器で検出された形状に応じた制御量に基づいて、少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を制御するものであることを特徴とする冷間タンデム圧延設備。 - 複数の圧延機スタンドを直列状に配列してなる冷間タンデム圧延機の上流において、圧延されるストリップの変形抵抗に相関する材質についてのストリップ板幅方向の分布を連続的に測定することによりストリップ長手方向及びストリップ板幅方向の変形抵抗分布を測定し、
さらに前記測定された変形抵抗分布に基づいて前記複数の圧延機スタンドのうち少なくとも最上流側に位置する第1圧延機スタンドの出側での板形状を予測して、その予測に基づいて、前記予測された板形状が目標とする板形状になるように、少なくとも前記第1圧延機スタンドにおける制御端の制御量を計算し、計算された制御量に基づいて少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を制御することを特徴とする冷間タンデム圧延方法。 - 複数の圧延機スタンドを直列状に配列してなる冷間タンデム圧延機の上流において、圧延されるストリップの変形抵抗に相関する材質についてのストリップ板幅方向の分布を連続的に測定することによりストリップ長手方向及びストリップ板幅方向の変形抵抗分布を測定するとともに、前記複数の圧延機スタンドのうち少なくとも前記第1圧延機スタンドの出側においてストリップの板形状を検出し、
さらに前記測定された変形抵抗分布及び前記検出された形状検出結果に基づいて、前記検出された板形状が目標とする板形状制御範囲内に納まるように、前記複数の圧延機スタンドのうち少なくとも最上流側に位置する第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を計算し、計算された制御量に基づいて少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を制御することを特徴とする冷間タンデム圧延方法。 - 予め、圧延すべきストリップのサンプルであってかつ板幅方向に変形抵抗分布のあるサンプルについて、変形抵抗に相関する材質を測定する変形抵抗分布測定器により板幅方向材質分布を測定するとともに、該サンプルの板幅方向各位置についての引張試験によって板幅方向の耐力分布を測定するサンプル測定段階と、
該サンプル測定段階による板幅方向材質分布測定結果と板幅方向耐力分布測定結果に基づいて、板幅方向材質分布と板幅方向耐力分布との相関関係を求めることにより、前記変形抵抗分布測定器の較正を行う較正段階と、
複数の圧延機スタンドを直列状に配列してなる冷間タンデム圧延機による実際のストリップの連続タンデム冷間圧延中において、前記冷間タンデム圧延機の上流にて較正段階が完了した前記変形抵抗分布測定器によりストリップの板幅方向の材質分布を連続的に測定する変形抵抗分布測定段階と、
得られた変形抵抗分布測定結果を多項式近似して、変形抵抗分布を表すパラメータを算出する変形抵抗分布パラメータ算出段階と、
予め、鋼種・板幅・板厚毎に前記変形抵抗分布パラメータと少なくとも第1圧延機スタンドの出側での板形状との関係を求めておく第1の回帰計算段階と、
予め、鋼種・板幅・板厚毎に少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量とその圧延機スタンドの出側での板形状と関係を求めておく第2の回帰計算段階と、
前記第1の回帰計算段階で求められた関係と前記第2の回帰計算段階で求められた関係とに基づいて、少なくとも前記第1圧延機スタンドの出側での形状変化が打ち消されるように、少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を計算する制御量計算段階と、
前記制御量で少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端を制御する制御段階、とを有することを特徴とする冷間タンデム圧延方法。 - 複数の圧延機スタンドを直列状に配列してなる冷間タンデム圧延機によるストリップの連続タンデム冷間圧延中において、前記冷間タンデム圧延機の上流にて変形抵抗分布測定器によりストリップの板幅方向の材質分布を連続的に測定する変形抵抗分布測定段階と、
得られた変形抵抗分布測定結果を多項式近似して、変形抵抗分布を表すパラメータを算出する変形抵抗分布パラメータ算出段階と、
連続タンデム冷間圧延中において、少なくとも第1圧延機スタンドの出側でのストリップの板形状を連続的に検出する板形状検出段階と、
予め、鋼種・板幅・板厚毎に前記変形抵抗分布パラメータと少なくとも第1圧延機スタンドの出側での板形状との関係を求めておく第1の回帰計算段階と、
予め、鋼種・板幅・板厚毎に少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量とその圧延機スタンドの出側での板形状と関係を求めておく第2の回帰計算段階と、
前記第1の回帰計算段階で求められた関係と前記第2の回帰計算段階で求められた関係とに基づいて、少なくとも前記第1圧延機スタンドの出側での形状変化が打ち消されるように、少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端の制御量を計算する制御量計算段階と、
前記制御量で少なくとも前記第1圧延機スタンドの形状制御端を制御する制御段階、とを有することを特徴とする冷間タンデム圧延方法。
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