JP4197401B2 - 調質冷間圧延設備および調質冷間圧延方法 - Google Patents

調質冷間圧延設備および調質冷間圧延方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa 以上で板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料をほぼ同一圧延条件で大量に調質冷間圧延する際に、ワークロールの粗度変化による圧延荷重変化を防止し、安定した板形状を得ることを可能とし、または、従来の圧延方法では荷重限界によって製造することのできなかった高い伸び率、もしくは、ジャンピングによって製造することができなかった低い伸び率の調質圧延を可能とする調質冷間圧延設備および調質冷間圧延方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属ストリップ材料を同一ワークロールで大量にコイルの調質圧延をすると、ワークロール表面の平滑化が進み摩擦係数が減少する。摩擦係数が減少すると、その圧延に必要な圧延荷重は減少する。その結果、ロール扁平やロール軸芯たわみが変化して板形状が複合伸びや中伸び方向へ変化する。圧延後の板形状を検査して、板形状が許容値を超えるとワークロール交換を行い圧延を継続する。操業条件によっては数コイル毎にワークロール交換が必要な場合がある。圧延荷重に及ぼす摩擦係数の影響は一般に無潤滑圧延よりも潤滑圧延の方がはるかに大きい。
【0003】
また、摩擦係数の高い圧延では小さな伸び率でも圧延荷重は大きく、このためもう少し大きな伸び率を取ろうとしても、圧延機の圧延荷重限界にすぐに達してしまうので限られた伸び率しか取ることができなかった。
一方、摩擦係数の低い圧延で、素材に上下降伏点があるような金属ストリップではジャンピングが発生するため逆に低い伸び率を取ることができなかった。
【0004】
ロールの摩耗に対しては、上述した理由からワークロール交換の周期が非常に短いため生産性と板形状品質を大きく阻害していた。このため、ワークロールに関してはクロムメッキ等を施して耐摩耗性を向上させたり、ベンダー力等を主体とした形状制御等で対応してきた。
【0005】
摩擦係数の高い圧延では、圧延荷重を低減するためにワークロール径を小さくすることによって対応してきたが、このためには多額の設備改造費が必要であった。摩擦係数の低い圧延では、ロールの粗度や圧延潤滑油の濃度・供給量を変更することによって対応してきたが、ロール粗度の場合には表面品質の変化を招き、潤滑条件での対応にも限界があった。
【0006】
ロール摩耗に対しての操業面での従来技術として、潤滑調質冷間圧延の例を図1を基に具体的に説明する。
図1は1スタンドからなる調質圧延設備であり、圧延機は上下ワークロール1、1′および上下バックアップロール2、2′からなる4段圧延機であり、図示していないが形状制御手段としてワークロールベンダーを有している。金属ストリップ材料Sは圧延機入側に配置されたペイオフリール4から払い出され、入側デフレクターロール3経由して、該4段圧延機の入側で圧延潤滑油が潤滑油供給ノズル5から供給され、該4段圧延機で圧延された後、出側デフレクターロール3′を経由し、テンションリール4′で巻き取られている。
【0007】
圧延を続けて行くと、ワークロールの粗度変化によって摩擦係数は減少し、圧延荷重は減少する。圧延荷重の減少に伴い板形状は変化するが、圧延機に具備されている形状制御端であるワークロールベンダーを操作することによって、板形状は大きく乱れないように操業される。しかしながら、形状制御端の能力によって板形状を修正できる荷重限界が存在するため、ある荷重以下では良好な板形状が得られなくなる。この結果、ワークロールの交換が必要となり、生産性の低下や製造コストの増大を招いていた。
このように操業面ではオペレータによってロール交換の頻度を少なくしようとする努力がなされるものの、まだ十分とは言えない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述したような従来法の問題点を解決するものであり、本発明により、引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa以上で板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料を調質冷間圧延る際、摩擦係数の低減による荷重変動に起因した形状不良の防止、摩擦係数が高い場合の伸び率の増大、摩擦係数が低い場合の製造可能な最少伸び率の低減を可能とすることができるものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は、張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa以上で板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料を2つの圧延機を用いて調質冷間圧延する設備において、上流圧延機入側に配置されたストリップ巻き戻し装置と上流圧延機との間に張力制御装置を設けると共に、上流圧延機のワークロール直径を350mm以下、下流圧延機のワークロール直径を400mm以上とすることを特徴とする調質冷間圧延設備であり、
本発明の請求項2は、請求項1記載の圧延設備を用いて、圧延引張り試験法で求めた0.2%耐力で上および下降伏点での応力差が30MPa以上の金属ストリップ材料を圧延することを特徴とする調質冷間圧延方法であり、
本発明の請求項3は、請求項2記載の調質圧延方法において、所望とする伸び率およびまたは圧延荷重を制御する主制御手段として、前記上流圧延機の入側および出側張力を用いることを特徴とする調質冷間圧延方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。図2は、本発明を実施する圧延機設備の一例を示す構成図である。
図2は、1スタンドからなる調質圧延設備であり、圧延機は上下ワークロール1、1′および上下バックアップロール2、2′からなる4段圧延機であり、図示していないが形状制御手段としてワークロールベンダーを有している。金属ストリップ材料Sは、圧延機入側に配置されたペイオフリール4から払い出され、入側デフレクターロール3経由して、該4段圧延機の入側で圧延潤滑油が潤滑油供給ノズル5から供供給され、該4段圧延機で圧延された後、出側デフレクターロール3′を経由し、ブライドルロール6を用いた張力制御装置で出側張力を調整されデフレクターロール3′′、3′′′を経由した後テンションリール4′で巻き取られている。
【0011】
圧延機入側の張力はデフレクターロール3に、圧延機出側の張力はデフレクターロール3′に、ストリップの巻き取り張力はデフレクターロール3′′′に、それぞれ取り付けられたロードセルによって検出される。
図示していないが圧延機入出側に設置されたデフレタロール3、3′には、該ロールの回転数を検出するパルスジェネレータが取り付けられて板速度を検出しており、該4段圧延機によるストリップの伸び率はマスフロー則から測定されている。
【0012】
この設備を用いて基礎実験を行った結果、以下のことが判明した。図3のa)は該4段圧延機の圧延状況を模式的に表した図である。図3において、IおよびIII はロールバイト内で塑性変形が生じている領域であり、IIはロールバイト内では塑性変形は生じていない領域である。このような圧延状態は圧延材の板厚が薄いほど、圧延材の変形抵抗が高いほど、ロール径が大きいほど生じやすく圧延時に噛み止め行い、板厚分布を測定することによって確認できる。
【0013】
圧延荷重は領域I、II、III 部の垂直応力の合計であるから、圧延荷重を制御する手段として、領域IIの長さを操作することが可能で有ればよい。そこで、材料や速度や張力や伸び率やワークロール径などを変えて実験すると共に、上述した噛み止め試験を行い実験調査した結果以下のことが明らかになった。
【0014】
圧延荷重に及ぼす圧延因子の定性的な影響は、入側張力以外は、例えば従来のKarmanモデルで得られる影響と同一であった。入側張力の影響について述べる。図3の(b)はロールバイト内の板厚分布に及ぼす入側張力の影響を示す模式図である。図3において実線は基準圧延条件時のものである。この場合圧延方向A〜B間(領域I)のロールバイト入口近傍では塑性変形が生じ、圧延方向B〜C間(領域II)のロールバイト中央近傍では塑性変形は生じず、圧延方向C〜D間(領域III )のロールバイト出口近傍では塑性変形が生じている。
【0015】
この圧延条件で入側張力のみを増大した場合のロールバイト内の板厚分布を示すものが図3(b)の破線である。この場合も同様に圧延方向A〜B′間(領域I)のロールバイト入口近傍では塑性変形が生じ、圧延方向B′〜C′間(領域II)のロールバイト中央近傍では塑性変形は生じず、圧延方向C′〜D間(領域III )のロールバイト出口近傍では塑性変形が生じている。入側張力を増大した結果、ロールバイト入口部A〜B′間(領域I)では塑性変形しやすくなり変形が早く進むものの、圧延方向B′〜C′間(領域II)の距離は逆に長くなり、ロールバイト出口C′〜D間(領域III )のでは塑性変形がしにくくなっている。この結果、圧延荷重は入側張力を増大したにもかかわらず、圧延荷重はほとんど減少しない。この原理が本発明の第一の構成要素になっている。このような現象は、引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa 以上で板厚0.3mm以下のでワークロール径が400mm以上の際にほとんど生じることを確認した。なかでも、圧延引張試験法で求めた0.2%耐力で上および下降伏点での応力差が30MPa 存在する金属ストリップ材料で潤滑調質冷間圧延するに際して特に、その影響は顕著に生じることを見出だした。
【0016】
また、ワークロール径が350mm以下の場合では、圧延方向B′〜C′間(領域II)の距離はあまり変化がなく、入側張力が増大するにつれて、圧延荷重は減少することを確認し、この原理が本発明の第二の構成要素になっている。
なお、板厚が0.3mmよりも厚い材料または0.3mm以下でも、引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa 未満の金属ストリップでは、上述した調質圧延の特異な現象は認められなかった。
【0017】
図4は上記実験結果の特性を示す概念図である。図4の(a)は引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa 以上で板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料を、ワークロール径が400mm以上で潤滑調質冷間圧延をした場合の圧延荷重と伸び率の関係を示すものである。
【0018】
張力の条件は、基準張力条件(入側張力:σbo、出側張力:σfo)と、入側張力変更条件(入側張力:σbo±α、出側張力:σfo)と、出側張力増大条件(入側張力:σbo、出側張力:σfo+α)を表し、αは正の値である。基準張力条件の場合、圧延荷重を増大して行くと、ある荷重から急にある伸び率まで増大しその後緩やかに伸び率は増大する。この挙動は入側張力を変更しても全く同じである。これに対し、出側張力を増大した張力条件の場合、圧延荷重を増大して行くと、基準張力条件よりも小さなある荷重から急に基準張力条件よりも小さなある伸び率まで増大し、その後緩やかに伸び率は増大する。
【0019】
図4の(b)は引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa 以上で板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料を、ワークロール径が400mm以上で無潤滑調質冷間圧延をした場合の圧延荷重と伸び率の関係を示すものである。
【0020】
張力の条件は、基準張力条件(入側張力:σbo、出側張力:σfo)と、入側張力変更条件(入側張力:σbo±α、出側張力:σfo)と、出側張力増大条件(入側張力:σbo、出側張力:σfo+α)を表し、αは正の値である。基準張力条件の場合、圧延荷重を増大して行くとある荷重から伸び率は比例的に増大する。この挙動は入側張力を変更しても全く同じである。これに対し、出側張力を増大した張力条件の場合、圧延荷重を増大して行くと、基準張力条件よりも小さなある荷重から増大する。同じ伸び率では出側張力を増大した際の方が圧延荷重は小さい。
【0021】
図4の(c)は引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa 以上で板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料を、ワークロール径が350mm以下で無潤滑または潤滑調質冷間圧延をした場合の圧延荷重と伸び率の関係を示すものである。
【0022】
張力の条件は、基準張力条件(入側張力:σbo、出側張力:σfo)と、入側張力増大条件(入側張力:σbo+α、出側張力:σfo)と、出側張力増大条件(入側張力:σbo、出側張力:σfo+α)を表し、αは正の値である。基準張力条件の場合、圧延荷重を増大して行くとある荷重から伸び率は比例的に増大する。これに対し、張力を増大した張力条件の場合、圧延荷重を増大して行くと、基準張力条件よりも小さなある荷重から増大する。同じ張力では入側張力を増大した際の方が出側張力を増大するよりも圧延荷重は小さい。
【0023】
本発明は上述した新しい発見を基になされたものであり、ロールの摩耗が進行しても圧延荷重を一定とした安定圧延を実現するものであり、または、従来の圧延方法では荷重限界によって製造することのできなかった高い伸び率、もしくは、ジャンピングによって製造することができなかった低い伸び率の調質圧延を可能とするものである。
【0024】
この発明は、図4の(a)、(b)の知見をもとになされたもので、引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa 以上で板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料を、ワークロール径が400mm以上の圧延機を用いて圧延する場合、現状よりも小さな伸び率から大きな伸び率を得るため、または、同じ伸び率でも荷重レベルを変化させるためには出側張力を制御すればよい。しかしながら、単に出側張力を変更するとテンションリールでのコイルの巻き締まりや、擦り傷、巻きゆるみが発生するため実用上は実施できない。このため、テンションリールと圧延機の間に張力制御装置を設置し、圧延機出側の張力は目的とする圧延によって制御し、張力制御装置とテンションリール間の張力は上記問題が生じない張力範囲に制御すればよい。
【0025】
請求項の発明は、図4の(a)、(b)、(c)の知見からなされたもので、通常2スタンドの調質圧延機では、上流スタンドで伸び率制御を、下流スタンドで形状矯正と表面仕上げを行っており、下流スタンドでは伸び率は極僅かであり、荷重変化が無いことが望ましい。引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa 以上で板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料をワークロール径が400mm以上で入側張力を変更した調質冷間圧延をしても圧延荷重は変化しない。また、ワークロール径が350mm以下の場合には、図2で示した剛体域の影響が僅かになり圧延荷重は減少するので幅広いレンジの伸び率が可能となり、摩擦係数の変化に対する荷重変化の影響が小さくなる。このことがら、引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa 以上で板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料を、2つの圧延機を用いて調質冷間圧延するに際し、該圧延機の上流圧延機のワークロール径を350mm以下、下流圧延機のワークロール径を400mm以上とした。
【0026】
請求項の発明は、図2の(a)に示すような特性を材質を変えて得られた知見を基になされたもので、このような調質圧延に特異な特性は引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa 以上で、かつ、圧延引張試験法で求めた0.2%耐力で上および下降伏点での応力差が30MPa 以上の板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料をワークロール径が400mm以上の圧延機で圧延する際に著しく顕著であったからである。
【0027】
請求項に発明は、調質圧延方法において、所望とする伸び率およびまたは圧延荷重を制御する主制御手段として、2つの圧延機の場合には該圧延機のスタンド間張力を用いることが、設備コスト的にも有利であることから規定したものである。
【0028】
出側張力一定である場合には、ワークロール摩耗により摩擦係数が減少し同じ伸び率でも圧延荷重は減少するが、出側張力を制御することによって同じ伸び率でも圧延荷重は減少しなくなる。常に荷重を一定にするように張力を変化させた場合、伸び率は圧延機の圧下で制御する必要が生じてくる。従って、圧延荷重はある程度のバンド内範囲は許容するものとし、外乱による伸び率変化に対する伸び率の主制御は出側張力とすることが望ましい。
【0029】
ワークロール径が350mm以下の場合には入側張力によっても圧延荷重は変化するので、入側張力も変化させて荷重レベルと伸び率を制御することができる。この場合には、例えば伸び率の主制御を出側張力で、荷重の主制御を後方張力で行うことが可能となる。勿論、伸び率の主制御を入側張力で、荷重の主制御を出側張力で行うことも有効であり、ある比率で入・出側張力を制御しても良い。
【0030】
【実施例】
使用した圧延機を図5に示す。詳細な圧延条件を下記に示す。また、この材料の圧延引張試験法で求めた0.2%の耐力と圧下率の関係を図6に示す。図6より、この材料の耐力は約400MPa で、上下降伏点の差は約60MPa あることがわかる。
【0031】
[圧延条件]
Figure 0004197401
【0032】
図5は、2スタンドからなる調質圧延設備であり、上流側の小径ワークロールの圧延機は上下ワークロール1a、1a′および上下バックアップロール2a、2a′からなる4段圧延機であり、図示していないが形状制御手段としてワークロールベンダーを有している。下流側の大径ワークロールの圧延機は上下ワークロール1b、1b′および上下バックアップロール2b、2b′からなる4段圧延機であり、これも図示していないが形状制御手段としてワークロールベンダーを有している。
【0033】
金属ストリップ材料Sは圧延機入側に配置されたペイオフリール4から払い出され、入側デフレクターロール3a、3bを経由して、ブライドルロール7を用いた張力制御装置で入側張力を調整されてデフレクターロール3cを経由して、該4段上流圧延機の入側で圧延潤滑油が潤滑油供給ノズル5から供給され、該4段圧延機で圧延された後、テンションロール3dを経由して該4段下流圧延機で矯正された後、出側デフレクターロール3eを経由した後テンションリール4′で巻き取られている。
【0034】
上流圧延機入側の張力はデフレクターロール3cに、スタンド間張力はテンションロール3dに、下流圧延機出側の張力はデフレクターロール3eに、それぞれ取り付けられたロードセルによって検出される。
図示していないが上流圧延機入出側に設置されたデフレタロール3cとテンションロール3eには、該ロールの回転数を検出するパルスジェネレータが取り付けられて板速度を検出しており、該上流圧延機によるストリップの伸び率はマスフロー則から測定されている。
【0035】
ここで従来技術と比較するために、上流スタンドのワークロール径のみを交換して440mmにして圧延した場合を従来技術とする。従来技術の伸び率制御としては、上流スタンドの入出側張力を一定とし、圧下による伸び率制御をする場合を採用した。
【0036】
本発明では、板厚、材質ごとに予め実験を行い、圧延荷重Pと伸び率とλと入出側張力σb,σfの実験式(1)、(2)を作成した。
P=P(σb,σf) (1)
λ=λ(σb,σf) (2)
式(1)、式(2)を基に基準条件から、張力は変化した場合の荷重および伸び率変化はそれぞれ式(3)および式(4)から求まる。
△P=a×△σb+b×△σf (3)
△λ=c×△σb+d×△σf (4)
ここで、a〜dは式(1)、式(2)より求まる定数である。
【0037】
所望とする圧延荷重および伸び率をPaim、λaimとし、実測した圧延荷重および伸び率をPe、λeとすると、式(5)、(6)が求まる。
△P=Pe−Paim (5)
△λ=λe−λaim (6)
式(3)〜式(6)を用いて連立方程式を解くことによって、△σbおよび△σfは求まる。この値を用いて上流スタンドの圧延荷重および伸び率を制御した。
【0038】
但し、修正後の張力が予め設定した適正範囲を超える場合には、その限界値を最大または最小値として使用した。上述したようにこの条件の場合には第2スタンドの圧延荷重はスタンド間張力の影響を受けないので、第2スタンドの伸び率は一定であることは言うまでもない。
【0039】
その結果、従来技術では平均で圧延コイル12.3本で圧延荷重減少による形状能力不足からくるワークロールベンダー限界に達し、ロール交換が必要となったのに対し、本発明では平均圧延コイル35.1本で張力限界および形状能力不足からくるワークロールベンダー限界に達した。この条件ではロール交換が1/3に減少し、その結果生産性は20%増大した。
【0040】
【発明の効果】
以上の本発明により、引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa以上で板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料を調質冷間圧延る際、摩擦係数の低減による荷重変動に起因した形状不良の防止、摩擦係数が高い場合の伸び率の増大、摩擦係数が低い場合の製造可能な最少伸び率の低減を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の調質冷間圧延設備の説明図である。
【図2】この発明を実施する、1スタンドからなる調質圧延設備の説明図である。
【図3】(a)は圧延機の圧延状況を模式的に表した図であり、(b)はロールバイト内の板厚分布に及ぼす入側張力の影響を示す模式図である。
【図4】本発明の調質冷間圧延特性を示す概念図で、ジャンピングに及ぼすワークロールクロス角の効果を示す図である。
(a)は引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa 以上で板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料を、ワークロール径が400mm以上で潤滑調質冷間圧延をした場合の圧延荷重と伸び率の関係を示すものである。
(b)は引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa 以上で板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料を、ワークロール径が400mm以上で無潤滑調質冷間圧延をした場合の圧延荷重と伸び率の関係を示すものである。
(c)は引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa 以上で板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料を、ワークロール径が350mm以下で調質冷間圧延をした場合の圧延荷重と伸び率の関係を示すものである。
【図5】本発明を実施する、2スタンドからなる調質圧延設備の説明図である。
【図6】本発明の実施例で用いた材料の圧延引張試験法で求めた0.2%の耐力と圧下率の関係を示す図である。
【符号の説明】
1、1a、1b :上ワークロール
1′、1a′、1b′:下ワークロール
2、2a、2b :上バックアップロール
2′、2a′、2b′:下バックアップロール
3〜3′′′、3a〜3c、3e:デフレクターロール
3d :テンションロール
4 :ペイオフリール
4′ :テンションリール
5 :潤滑油供給ノズル
6、7 :張力制御装置
S :金属ストリップ

Claims (3)

  1. 引張試験法で求めた素材の0.2%耐力が300MPa以上で板厚0.3mm以下の金属ストリップ材料を2つの圧延機を用いて調質冷間圧延する設備において、上流圧延機入側に配置されたストリップ巻き戻し装置と上流圧延機との間に張力制御装置を設けると共に、上流圧延機のワークロール直径を350mm以下、下流圧延機のワークロール直径を400mm以上とすることを特徴とする調質冷間圧延設備。
  2. 請求項1記載の圧延設備を用いて、圧延引張り試験法で求めた0.2%耐力で上および下降伏点での応力差が30MPa以上の金属ストリップ材料を圧延することを特徴とする調質冷間圧延方法。
  3. 請求項2記載の調質圧延方法において、所望とする伸び率およびまたは圧延荷重を制御する主制御手段として、前記上流圧延機の入側および出側張力を用いることを特徴とする調質冷間圧延方法。
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