JP2014008520A - 金属板の冷間圧延方法及び金属板の製造方法 - Google Patents

金属板の冷間圧延方法及び金属板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】圧延における破断や絞込み等の通販トラブルを低コストで防止することが可能な、金属板の冷間圧延方法、及び、これを用いる金属板の製造方法を提供する。
【解決手段】被圧延材の幅方向端部の変形抵抗が幅方向中央部の変形抵抗よりも高い場合は、耳波形状になるように設定された圧延機を用いて被圧延材を冷間圧延し、被圧延材の幅方向端部の変形抵抗が幅方向中央部の変形抵抗よりも低い場合は、中伸び形状になるように設定された圧延機を用いて被圧延材を冷間圧延する、金属板の冷間圧延方法とし、該金属板の冷間圧延方法を用いて金属板を冷間圧延する工程を有する、金属板の製造方法とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属板の冷間圧延方法、及び、これを用いる金属板の製造方法に関する。
冷間圧延を経て製造される金属板のうち、例えば自動車用鋼板等に代表される冷延鋼板は、車体軽量化による省エネルギー性、及び、衝突安全性強化を両立するために、高張力鋼板(以下において「ハイテン鋼」ということがある。)の使用が増加している。
ハイテン鋼は、強度を高めるために添加元素を調整し、さらに、加熱後の冷却によって析出や相変態といった冶金現象を利用した組成制御及び組織制御を行うことにより、製造されている。一般に、強度を高めると延性(伸び)が低下するため、ハイテン鋼を製造する冷間圧延工程において、被圧延材に過大な張力が作用すると割れが発生し、破断(板割れ)の危険性が高まる。
一方、冷延鋼板の母材となる熱延鋼板の製造工程に含まれている圧延工程における熱処理も、最終的な製品の特性に影響を及ぼすことが知られている。熱延鋼板の製造時には、仕上圧延機出側のランアウトテーブル上で鋼板が水冷される。この際、鋼板上の水流や水膜のムラが生じやすく、さらに、遷移沸騰と呼ばれる鋼板表面での熱伝達の不安定域が存在するため、熱延鋼板には冷却ムラが生じやすい。加えて、一般に板の端部は冷えやすいため、相対的に熱延鋼板の幅方向端部は硬く、延性も低い。また、ランアウトテーブル上で仕上圧延機とダウンコイラとの間で張力が作用していない部位であるコイルの先端部及び尾端部では、鋼板の形状不良によって水が滞留しやすい。したがって、冷却ムラは、鋼板の長手方向でも生じ得る。ハイテン鋼は、冷却によって組織を変化させて強度を高めるように成分設計がされているため、冷却速度や温度に対する感受性が特に高く、普通鋼に比べて冷却ムラに起因する強度バラツキ(変形抵抗のバラツキ)が生じやすい。
このように、冷間圧延に供する熱延母材では、長手方向や幅方向の変形抵抗にバラツキが生じる。そのため、冷間圧延工程における、圧延荷重の変動による板厚のハンチングや形状不安定によって、幅方向端部の低延性とも相俟って、圧延中の破断のリスクがより高まる。鋼板が破断すると、処理作業によって稼働率が低下し、また、再通板時に未圧延部や不良部が発生するため、歩留まりが大幅に低下する。かかる事態を回避するために、熱延母材の幅方向端部をトリミングしたり、先尾端部を切断したりすることにより、機械的特性が不安定な部分を除去する等の対策を講じることも考えられるが、このような対策を講じても、歩留まりの低下を防止することはできない。そのため、冷間圧延工程における板破断を防止する技術の開発が求められている。
冷間圧延工程における板破断を防止し得る技術として、例えば特許文献1には、予め被圧延材の引張破断伸びを求めておき、各圧延スタンド又は各圧延パスにおける板幅端部の圧下率が、板幅全体の平均の圧下率と引張破断伸びから求まる限界圧下率を超えるように圧延スケジュールを設定することにより、板幅端部のエッジ割れを防止する冷間圧延方法が開示されている。また、特許文献2には、冷間圧延機の出側に回転自在に支持されたロールを配設し、このロールを被圧延材の板幅中央部に押し当てることにより、冷間圧延機の出側における被圧延材板幅両端部にかかる張力を減らして耳割れや板破断を防止する冷間圧延方法が開示されている。また、特許文献3には、冷間圧延すべき金属板コイルの両側縁部を加熱、軟化した後、該金属板コイルを巻戻しつつ冷間圧延する冷間圧延板の耳割れ防止方法が開示されており、金属板コイルの両側縁部にホットプレートを押しつけることによって加熱することが好ましい旨、記載されている。
特許第3156568号公報 特開平6−87005号公報 特開平4−371314号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、圧延が安定的に行われることを前提にしている。そのため、母材の変形抵抗の変動により圧延荷重や形状が変動して幅方向端部に過張力が生じる場合には、特許文献1に開示されている技術を適用することはできない。また、強度の高いハイテン鋼では、圧延荷重やモーターパワー等の制約から、圧下率を十分に大きくすることができない場合がある。また、特許文献2に開示されている技術によって得られる幅方向端部における張力の低減効果は僅かであると考えられ、また、ロールを被圧延材へ過度に押し当てるとスタンド間に過大な張力を発生させてしまうため、圧延に悪影響を及ぼすことが懸念される。さらに、特許文献2に開示されている技術では、第1スタンド出側の板厚が比較的厚い条件を想定しているので、この技術を下流側のスタンドに適用すると、疵や折れ等の悪影響を及ぼす可能性が高いと考えられる。また、特許文献3に開示されている技術は、アルミニウムの圧延を想定しており、その実施例では、必要な加熱温度が350℃とされている。しかしながら、鋼板が軟化する温度は500℃以上であり、加えて、鋼板はアルミニウムよりも熱が伝導され難い。さらに、強度がばらつく幅方向端部の幅は100mm程度に亘るため、特許文献3に開示されている技術を鋼板の冷間圧延に適用すると、必要な加熱設備が大掛かりになり、加熱処理エネルギー等のコスト増が懸念される。したがって、特許文献1〜3に開示されている技術を組み合わせても、強度バラツキが存在する被圧延材の板破断を防止しながら低コストで冷間圧延を行うことは困難であった。
そこで、本発明は、圧延における板破断等の通板トラブルを低コストで防止することが可能な、金属板の冷間圧延方法、及び、これを用いる金属板の製造方法を提供することを課題とする。
以下、本発明について説明する。
本発明の第1の態様は、被圧延材の幅方向端部の変形抵抗が幅方向中央部の変形抵抗よりも高い場合は、耳波形状になるように設定された圧延機を用いて、被圧延材を冷間圧延し、被圧延材の幅方向端部の変形抵抗が幅方向中央部の変形抵抗よりも低い場合は、中伸び形状になるように設定された圧延機を用いて、被圧延材を冷間圧延する、金属板の冷間圧延方法である。
ここに、本発明において、「耳波形状になるように設定された圧延機」とは、被圧延材の幅方向中央部よりも幅方向端部(両端)の方が伸びやすい設定で作動する圧延機を言う。また、本発明において、「中伸び形状になるように設定された圧延機」とは、被圧延材の幅方向端部(両端)よりも幅方向中央部の方が伸びやすい設定で作動する圧延機を言う。
また、上記本発明の第1の態様において、上記被圧延材は、幅方向の変形抵抗分布が予め特定されており、特定された幅方向端部の変形抵抗が幅方向中央部の変形抵抗よりも高い場合は、圧延機の形状制御アクチュエータの設定値を、被圧延材の変形抵抗が幅方向で均一であると仮定したセットアップ計算から導かれる設定値よりも耳波形状となる設定値にして、被圧延材を冷間圧延し、特定された幅方向端部の変形抵抗が幅方向中央部の変形抵抗よりも低い場合は、圧延機の形状制御アクチュエータの設定値を、セットアップ計算から導かれる設定値よりも中伸び形状となる設定値にして、被圧延材を冷間圧延しても良い。
ここに、本発明において、被圧延材の幅方向の変形抵抗分布を予め特定する際の特定方法は特に限定されず、例えば、熱延後の鋼帯の先尾端からサンプルを採取し、サンプルの幅方向の数箇所から試験片を切り出して引張試験にて評価する方法や、硬さ測定から変形抵抗に換算する方法等を挙げることができる。
また、上記本発明の第1の態様において、冷間圧延の実施中に、圧延機から被圧延材へと付与される圧延荷重を測定し、測定した圧延荷重の変化に応じて圧延機の形状制御アクチュエータの設定を変更し、圧延荷重の変化が、被圧延材の幅方向中央部の変形抵抗が変化することに伴う、被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因する場合には、圧延荷重の変化が被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因しない場合よりも、上位形状制御アクチュエータの設定値の変更量を大きくすることが好ましい。
ここに、本発明において、「圧延機の形状制御アクチュエータ」とは、例えば、圧延ロールの幅方向位置や、クラウンや、上下の圧延ロールの傾き度合い等を制御するアクチュエータをいう。また、「被圧延材の幅方向中央部」とは、被圧延材の幅方向中央を含む領域をいい、例えば、中伸び形状のときに、他の領域(幅方向一端を含む領域及び幅方向他端を含む領域)よりも相対的に伸びる領域をいう。また、本発明において、圧延荷重の測定方法は特に限定されず、例えば、圧延機に取り付けたロードセルを用いて測定する等、公知の方法で測定することができる。また、「圧延荷重の変化が被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因しない場合」とは、例えば、圧延速度変更に起因する潤滑状態の変化に起因して圧延荷重が変化する場合を言う。
また、上記本発明の第1の態様において、冷間圧延の実施中に、圧延機から被圧延材へと付与される圧延荷重を測定し、測定した圧延荷重の変化に応じて圧延機の形状制御アクチュエータの設定を変更し、圧延荷重の変化が、被圧延材の幅方向端部の変形抵抗が変化することに伴う、被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因する場合には、圧延荷重の変化が被圧延材の幅方向中央部の変形抵抗が変化することに伴う、被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因する場合よりも、上記形状制御アクチュエータの設定値の変更量を小さくすることが好ましい。
ここに、「被圧延材の幅方向端部」とは、被圧延材の幅方向中央部を除く部位をいい、例えば、耳波形状のときに、他の領域(幅方向中央部)よりも相対的に伸びる領域をいう。
また、上記本発明において、冷間圧延の実施中に圧延機の出側で測定された被圧延材の形状と、圧延機の圧延条件から求められる被圧延材の形状予測値との差を用いて、出側における被圧延材の形状が測定された圧延機よりも上流側における被圧延材の幅方向の変形抵抗分布を推定し、推定した被圧延材の幅方向の変形抵抗分布に応じて、圧延機の形状制御アクチュエータの設定値を変更することが好ましい。
ここに、本発明において、被圧延材の形状の測定方法は特に限定されず、例えば、圧延機の出側に設置した形状計(形状測定手段)を用いて測定する等、公知の方法で測定することができる。また、本発明において、圧延機の圧延条件から被圧延材の圧延後の形状を予測する方法は特に限定されず、例えば、「板圧延の理論と実際」(社団法人日本鉄鋼協会編)の第4章に記載の数値計算手法等を用いることができる。
本発明の第2の態様は、上記本発明の第1の態様にかかる金属板の冷間圧延方法を用いて金属板を冷間圧延する工程を有する、金属板の製造方法である。
幅方向端部の変形抵抗が幅方向中央部の変形抵抗よりも高い被圧延材は、圧延すると中伸び形状になりやすく、幅方向端部の変形抵抗が幅方向中央部の変形抵抗よりも低い被圧延材は、圧延すると耳波形状になりやすい。本発明では、耳波形状にしやすい設定で作動する圧延機を用いて中伸び形状になりやすい被圧延材を冷間圧延し、中伸び形状にしやすい設定で作動する圧延機を用いて耳波形状になりやすい被圧延材を冷間圧延するので、過大な中伸びや耳波を抑制でき、これによって、過大な中伸びに起因する板の破断や、過大な耳波に起因する絞込み等の通板トラブルの発生を抑制することができる。そのため、本発明によれば、被圧延材の幅方向に変形抵抗(以下において、「引張強さ」又は「強度」ということがある。)のバラツキがあり、それが長手方向で変化するような場合であっても、冷間圧延での通板トラブルの発生を抑制でき、稼働率や歩留まりの低下を防止することが可能になる。また、本発明では、幅方向端部を加熱する加熱装置を必須の構成としないので、コスト増を抑制することが可能である。
幅方向位置と降伏応力との関係を示す図である。 幅方向位置と引張強さとの関係を示す図である。 冷間圧延の最終スタンド出側における形状測定結果を示す図である。図3(a)はコイル先端部の形状測定結果を示す図であり、図3(b)はコイル尾端部の形状測定結果を示す図である。 冷間圧延の数値シミュレーション結果を示す図である。図4(a)はコイル先端部の数値シミュレーション結果を示す図であり、図4(b)はコイル尾端部の数値シミュレーション結果を示す図であり、図4(c)は幅方向の変形抵抗が一定である場合の数値シミュレーション結果を示す図である。 圧延荷重の変化と形状変化との関係を調査する際に用いたサンプルの引張強さと幅方向位置との関係を示す図である。図5(a)は幅方向の変形抵抗が均一でないサンプルの引張強さと幅方向位置との関係を示す図であり、図5(b)は幅方向の変形抵抗が均一であるサンプルの引張強さと幅方向位置との関係を示す図である。 圧延荷重の変化と形状変化との関係を調査する際に用いた各スタンドの圧延荷重の計算結果を示す図である。図6(a)は幅方向の変形抵抗が均一でないサンプルを冷間圧延した時の各スタンドの圧延荷重を示す図であり、図6(b)は幅方向の変形抵抗が均一であるサンプルを冷間圧延した時の各スタンドの圧延荷重を示す図である。 圧延荷重と圧延形状との関係を示す図である。図7(a)は幅方向の変形抵抗が均一でないサンプルを冷間圧延した時の圧延荷重と圧延形状との関係を示す図であり、図7(b)は幅方向の変形抵抗が均一であるサンプルを冷間圧延した時の圧延荷重と圧延形状との関係を示す図である。 圧延荷重の変化に対する幅方向端部の伸び差率の変化を説明する図である。 幅方向の変形抵抗が均一である場合及び均一でない場合の幅方向端部の形状変化と、形状制御アクチュエータによる形状制御量との関係を説明する図である。 本発明にかかる金属板の冷間圧延方法を説明するブロック図である。 通板トラブル発生比率の結果を示す図である。 通板トラブル発生比率の結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されない。
980MPa級ハイテン鋼の熱間圧延後のコイルの長手方向の先端部、中央部、尾端部から採取したサンプルについて引張試験を行うことにより、これらのサンプルの降伏応力(YP)及び引張強さ(TS)を測定した。幅方向位置と降伏応力(YP)との関係を図1に、幅方向位置と引張強さ(TS)との関係を図2に、それぞれ示す。図1の縦軸は降伏応力(YP)[MPa]、横軸は幅方向位置[mm]であり、図2の縦軸は引張強さ(TS)[MPa]、横軸は幅方向位置[mm]である。図1及び図2において、幅方向位置0mmは、幅方向中央に相当する。
図1及び図2に示したように、長手方向の先端部及び中央部では、幅方向中央部よりも幅方向端部の方が高強度であったが、長手方向の尾端部では、幅方向端部よりも幅方向中央部の方が高強度であった。また、幅方向中央部の強度は、先端部、中央部、尾端部で変化した。さらに、図1及び図2から、幅方向における降伏応力の最大値と最小値との差よりも、幅方向における引張強さの最大値と最小値との差の方が大きかった。これは、加工硬化によるものと考えられる。
図1及び図2に測定結果を示したサンプルを得たコイルと同等の条件で熱間圧延したコイルを、5つのスタンド(圧延機)を備えるタンデム圧延機を用いて冷間圧延した際の、最終スタンド(第5スタンド)出側に設置した形状計による形状測定結果を図3に示す。図3(a)はコイル先端部の形状測定結果、図3(b)はコイル尾端部の形状測定結果である。図3(a)及び図3(b)の縦軸は板の幅方向の張力分布の測定値から算出した形状実績[Iunit]、横軸は幅方向位置[mm]であり、矢印は、コイルの幅方向一端から他端までの領域を意味している。ここで、「Iunit」とは、基準長さ1mのサンプルに内在する歪が伸びの差で0.01mmであるときに1Iunitと表現する、平坦度の表示単位である。以下においても同様である。
幅方向端部が幅方向中央部よりも高強度であるコイル先端部は、図3(a)に示したように中伸び形状となり、幅方向中央部が幅方向端部よりも高強度であるコイル尾端部は、図3(b)に示したように耳波形状となった。なお、この時の圧延条件は、板幅:1000mm、母材厚:2.4mm、仕上厚:1.2mm、総圧下率:50%、第1〜第3スタンドの圧下率:約17%、第4スタンドの圧下率:12%、第5スタンドの圧下率:1%とし、第1〜第5スタンドの圧延条件を決定する際には、コイルの幅方向における変形抵抗分布を考慮していない。
冷間圧延中の破断や絞込み等の通板トラブルの発生頻度は、最終スタンドよりも上流側における被圧延材の形状と関係があるため、最終スタンドよりも上流側における被圧延材の形状(圧延形状)を把握し、必要に応じて最終スタンドよりも上流側に配置されたスタンドの圧延条件を適宜変更することが好ましい。しかしながら、上記5つのスタンドを備えるタンデム圧延機には、一般的にはスタンド間に形状計が配置されておらず、スタンド間の圧延形状を特定できなかった。そこで、数値シミュレーションを行うことにより、スタンド間における圧延形状を評価した。結果を図4に示す。図4(a)はコイル先端部の数値シミュレーション結果を示す図であり、図4(b)はコイル尾端部の数値シミュレーション結果を示す図であり、図4(c)は幅方向の変形抵抗が一定である場合の数値シミュレーション結果を示す図である。図4(a)〜(c)の縦軸は幅方向中央の伸び率との差(伸び差率)[Iunit]であり、横軸は幅方向中央からの距離[mm]である。伸び差率が正の値である部位は、幅方向中央よりも伸びていることを意味し、伸び差率が負の値である部位は、幅方向中央よりも伸びていないことを意味している。また、「F1」は、5スタンドのうち、通板方向の最上流側に配置したスタンドの出側における形状を意味し、「F2」は、通板方向の上流側から2番目に配置したスタンドの出側における形状を意味し、「F3」は、通板方向の上流側から3番目に配置したスタンドの出側における形状を意味し、「F4」は、通板方向の上流側から4番目に配置したスタンドの出側における形状を意味し、「F5」は、通板方向の最下流側に配置したスタンドの出側における形状を意味する。
図4(a)に示したように、幅方向端部の変形抵抗(引張強さ)が幅方向中央の変形抵抗(引張強さ)よりも高いコイル先端部では、全スタンドとも中伸び形状となり、図4(b)に示したように、幅方向端部の変形抵抗(引張強さ)が幅方向中央の変形抵抗(引張強さ)よりも低いコイル尾端部では、全スタンドとも耳波形状となり、何れも、最終スタンド出側の形状計で測定した実測値と同様の傾向を示した。このように、5スタンドによる冷間圧延を想定した数値シミュレーションの結果は、実測結果と良く一致し、本シミュレーションが妥当であることを示している。
また、図4(c)に示したように、幅方向の変形抵抗(引張強さ)が一定である被圧延材を、5つのスタンドを備えるタンデム圧延機で冷間圧延すると、耳波形状になることが示された。この結果は、図4(b)に示した結果と類似していたが、図4(a)に示した結果とは大きく異なっていた。図3(a)や図4(a)に示したように、幅方向端部の変形抵抗が幅方向中央の変形抵抗よりも高い部位を圧延すると、幅方向端部は幅方向中央よりも伸びないが、図4(c)に示したように、幅方向の変形抵抗が一定である被圧延材を圧延するように設定された形状制御アクチュエータを有するタンデム圧延機を用いて被圧延材を圧延すると、幅方向端部は幅方向中央よりも伸びる。したがって、幅方向の変形抵抗が一定である被圧延材を圧延するように設定されたタンデム圧延機を用いて、幅方向端部の変形抵抗が幅方向中央の変形抵抗よりも高い部位を圧延すると、過大な張力が付与され、例えば被圧延材がハイテン鋼である場合には、破断する虞がある。
このように、幅方向における変形抵抗の差によって圧延形状が大きく変化するのは、変形抵抗の高い部分では圧延荷重が高くなり、圧延機のワークロールの扁平量が大きくなるため板厚方向の圧下量が小さくなり、伸び歪みも小さくなるためであると考えられる。
以上説明したように、幅方向で変形抵抗に差がある被圧延材を冷間圧延すると、幅方向における変形抵抗の差の傾向(幅方向端部が幅方向中央部よりも変形抵抗が高いか、又は、幅方向中央部が幅方向端部よりも変形抵抗が高いか)によって、冷間圧延後の被圧延材の形状(圧延形状)が大きく異なる。そのため、被圧延材の変形抵抗が幅方向で均一であることを前提にセットアップされた形状制御アクチュエータを有する圧延機を用いて、幅方向で変形抵抗に差がある被圧延材を圧延しても、適切な圧延形状は得られない場合があり、特に、走間変更の直後等では、過大な中伸びによる金属板の破断や、過大な耳波による金属板の絞込み等の通板トラブルが生じる虞がある。本発明者らは、上記検討を行い、被圧延材の幅方向端部の変形抵抗が幅方向中央部の変形抵抗よりも高い場合は、圧延機の形状制御アクチュエータの設定値を、被圧延材の変形抵抗が幅方向で均一であると仮定したセットアップ計算から導かれる設定値よりも耳波形状となる設定値にして、被圧延材を冷間圧延し、被圧延材の幅方向端部の変形抵抗が幅方向中央部の変形抵抗よりも低い場合は、圧延機の形状制御アクチュエータの設定値を、上記セットアップ計算から導かれる設定値よりも中伸び形状となる設定値にして、被圧延材を冷間圧延することにより、通板トラブルを低減できることを知見して、本発明を完成させた。
また、被圧延材の強度の変化は、圧延中の挙動としては、圧延荷重の変化にも現れる。そこで、幅方向で変形抵抗に差があるサンプル、及び、幅方向で変形抵抗が均一なサンプルのそれぞれについて、圧延荷重の変化と形状変化との関係を調査した。幅方向で変形抵抗に差があるサンプルの、引張強さ(TS)と幅方向位置との関係を図5(a)に、幅方向で変形抵抗が均一であるサンプルの、引張強さ(TS)と幅方向位置との関係を図5(b)に、それぞれ示す。図5(a)及び図5(b)の縦軸は引張強さ(TS)[MPa]、横軸は幅方向位置[mm]である。また、幅方向で変形抵抗に差があるサンプルを圧延する際の各スタンドにおける圧延荷重を図6(a)に、幅方向で変形抵抗が均一であるサンプルを圧延する際の各スタンドにおける圧延荷重を図6(b)に、それぞれ示す。図6(a)及び図6(b)の縦軸は圧延荷重P[ton]である。また、幅方向で変形抵抗に差があるサンプルを圧延した時の、通板方向の上流側から4番目に配置したスタンド(第4スタンド)の出側における形状を図7(a)に、幅方向で変形抵抗が均一であるサンプルを圧延した時の、通板方向の上流側から4番目に配置したスタンド(第4スタンド)の出側における形状を図7(b)に、それぞれ示す。図7(a)及び図7(b)の縦軸は伸び差率[Iunit]、横軸は幅方向位置[mm]である。図5(a)(b)及び図7(a)(b)において、幅方向位置0mmは、幅方向中央を意味する。また、図5乃至図7において、「基準」とは、圧延荷重の基準条件であることを意味し、「−10%」とは、基準条件から圧延荷重を10%低減した条件であることを意味し、「−20%」とは、基準条件から圧延荷重を20%低減した条件であることを意味し、「−30%」とは、基準条件から圧延荷重を30%低減した条件であることを意味する。
図5(a)(b)に示したように圧延荷重の変更形態を変えた場合であっても、図6(a)(b)に示したように、圧延機のロードセルで検出された圧延荷重は同様の結果になった。これに対し、図7(a)(b)に示したように、圧延荷重の変更形態を変えると圧延形状が変わり、例えば、基準条件から圧延荷重を30%低減した場合、図7(a)に示したように、幅方向で変形抵抗に差があるサンプルでは幅方向端部で100Iunit程度中伸び側に変化したが、図7(b)に示したように、幅方向で変形抵抗が均一のサンプルでは幅方向端部で30Inuit程度の変化に留まった。
圧延荷重と各スタンドの出側における幅方向端部の伸び差率との関係を図8に示す。図8において、「F1」は、5スタンドのうち、通板方向の最上流側に配置したスタンドの出側における幅方向端部の結果であり、「F2」は、通板方向の上流側から2番目に配置したスタンドの出側における幅方向端部の結果であり、「F3」は、通板方向の上流側から3番目に配置したスタンドの出側における幅方向端部の結果であり、「F4」は、通板方向の上流側から4番目に配置したスタンドの出側における幅方向端部の結果であり、「F5」は、通板方向の最下流側に配置したスタンドの出側における幅方向端部の結果である。図8では、幅方向で変形抵抗が均一である場合の変化挙動を破線で表し、幅方向で変形抵抗が均一でない場合の変化挙動を実線で表している。図8に示したように、幅方向で変形抵抗が均一である場合も、幅方向で変形抵抗が均一でない場合も、圧延荷重が増大するにつれて伸び差率は負の値から正の値へと変化するが、その変化挙動は、幅方向で変形抵抗が均一であるか否かによって大きく異なっていた。この結果から、本発明者らは、スタンド間の形状を適正に保ち、通板の安定性を確保するために、圧延荷重が変化する場合には、圧延機の形状アクチュエータの動作を制御して、圧延荷重の変動に起因する形状変化量を補償することが有効であることを知見した。圧延荷重の変動が形状に影響を与えるのは、圧延機のロールの変形量が変化し、上下のワークロール間隙の幅方向の分布が変化することで、圧下による歪、即ち、長手方向の伸びが幅方向で偏差を生じることに起因する。圧延機のロールは板に接触しない左右の軸端部を軸受け箱によって支えられる構造のため、圧延中に荷重が作用することで撓み変形を受けている。また、同時に、被圧延材と接触するワークロールの表面近傍は、扁平変形を受けている。圧延機のセットアップにおいてこれら荷重によるロール変形を考慮し、幅方向でのロール間隙分布がほぼ均一となるように制御を行い、被圧延材の形状を通板に支障のない範囲に保っている。上記のロール変形で、撓み変形は本発明で対象とする冷間タンデム圧延機のワークロールの直径と軸長さの範囲では、一般に放物線に近い単純な変形形態となり、変形量に対しては圧延荷重の幅方向分布の影響は小さくトータルの荷重の影響が大きい。一方、ワークロールの扁平変形はロール表面に作用する圧力による凹み変形と見做せるため、被圧延材との接触面における圧力分布の影響が大きい。このため、幅方向の変形抵抗がほぼ均一な条件で荷重変動が生じた場合は撓み変形による影響が支配的である。これに対して幅方向に変形抵抗の差が生じると、変形抵抗の大きい部分では被圧延材とワークロール間の圧力が高く、変形抵抗の小さい部分では圧力が低くなる。そのため、圧力の低い変形抵抗の小さい部分では変形抵抗の大きい部分に比べワークロール表面の扁平変形が小さくなり、上下ワークロールの間隙が狭くなって圧下による歪量が相対的に増大し、長手方向への伸びが大きくなる。この変形分がトータルの圧延荷重変動によるロールの撓み変形による被圧延材の変形分に加算されるため、上記の差異が生じる。ここで、被圧延材の変形抵抗の変化形態としては、例えば、表1に示した4つの形態が想定される。
表1のケース1及び2に示したように、圧延荷重の変化が、幅方向中央部の変形抵抗が変化することに伴う、被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因する場合には、形状変化が大きくなる。そのため、圧延荷重の変動に起因する形状変化量を補償する場合、荷重変化が、被圧延材の幅方向中央部の変形抵抗が変化することに伴う、幅方向の変形抵抗分布の変化に起因する場合には、通常の幅全体における変形抵抗の変動や、例えば圧延速度の変更に起因する潤滑状態の変化等で生じる荷重変化による形状変化を補償する場合よりも、形状アクチュエータの設定を変更する際の変更量を大きくすることが好ましい。逆に幅中央部に対して幅端部の変形抵抗が相対的に小さい場合には、幅端部が伸びた形状となる。
一方、表1のケース3及び4に示したように、圧延荷重の変化が、幅方向端部の変形抵抗が変化することに伴う、被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因する場合には、トータル荷重の影響(均一変形抵抗での形状変化)による形状変化の方向と、変形抵抗分布の影響による形状変化の方向が相殺されるため、表1のケース1及び2に示した場合よりも、形状変化が小さくなる。そのため、圧延荷重の変動に起因する形状変化量を補償する場合、荷重変化が、被圧延材の幅方向端部の変形抵抗が変化することに伴う、幅方向の変形抵抗分布の変化に起因する場合には、荷重変化が、被圧延材の幅方向中央部の変形抵抗が変化することに伴う、幅方向の変形抵抗分布の変化に起因する場合よりも、形状アクチュエータの設定を変更する際の変更量を小さくすることが好ましい。
幅方向において変形抵抗が均一である場合及び均一でない場合と幅方向端部における伸び差率との関係、並びに、形状制御アクチュエータ(ベンダ、クラウン)制御による形状制御量の計算値を、図9に示す。図9において、棒グラフで示す結果は、幅方向における変形抵抗が均一である場合及び均一でない場合と幅方向端部における伸び差率との関係を示しており、折れ線グラフで示す結果は、形状制御アクチュエータ制御による形状制御量の結果を示している。図9の左側の縦軸は、基準条件から圧延荷重を20%低減した条件における幅方向中央と比較した幅方向端部の伸び変化[Iunit]であり、図9の右側の縦軸は、形状制御アクチュエータ制御による形状制御量[Iunit]である。
図9に示したように、前段の3スタンド(第1スタンド乃至第3スタンド:4Hi圧延機)では、幅方向における変形抵抗が均一な場合の伸び差率が、ベンダ制御による形状制御量よりも小さいので、ベンダ制御のみで形状変化量を補償することができる。これに対し、前段の3スタンドにおいて、幅方向における変形抵抗が均一でない場合の伸び差率は、ベンダ制御による形状制御量よりも大きく、且つ、ベンダ制御及びクラウン制御(ロールクロス角度やロールシフト等のロールクラウン制御)による形状制御量よりも小さい。そのため、幅方向における変形抵抗が均一でない場合には、ベンダ制御のみで、中伸びによる幅方向端部の過張力を抑制することは困難であり、中伸びによる幅方向端部の過張力を抑制するためには、ベンダ制御に加えてクラウン制御を行う必要がある。
また、図9に示したように、後段の2スタンド(第4スタンド及び第5スタンド:6Hi圧延機)では、幅方向における変形抵抗が均一な場合であっても、幅方向における変形抵抗が均一でない場合であっても、伸び差率はベンダ制御による形状制御量と同程度であるか、これよりも小さいので、ベンダ制御のみで形状変化量を補償することができる。
図9に示した結果は、幅方向において変形抵抗が均一であるか否かによって、形状変化を補償するために必要とされるアクチュエータの制御量が異なること、及び、変形抵抗の変化に起因して各スタンドにおける圧延後の形状が変化した場合であっても、形状制御アクチュエータの動作を制御することによって、形状変化分を補償可能であり、幅方向端部における過張力等も抑制可能であることを示している。
なお、図9に結果を示した数値シミュレーションでは、幅方向における変形抵抗の差のみならず、幅方向における変形抵抗の平均値も大きく変化する条件を仮定して計算を行い、伸び差率の変化が最も大きい条件を想定して評価した。しかしながら、実機操業において幅方向の変形抵抗の平均値が今回の数値シミュレーションほどに変化することは考え難い。そのため、実機操業では、ほとんどの場合において、形状制御アクチュエータの制御範囲内で形状変化を補償することが可能と考えられる。
上述のように、被圧延材の幅方向の変形抵抗分布が圧延中に変化すると、圧延形状が大きく変化する。図6(a)(b)に示したように、ロードセルで検出される圧延荷重の変化のみでは、形状の変化を適正に予測することは困難であり、特に、形状検出手段(形状計)が配置されていない中間スタンド間(上記5スタンドのタンデム圧延機では、第1スタンドと第2スタンドとの間、第2スタンドと第3スタンドとの間、第3スタンドと第4スタンドとの間、及び、第4スタンドと第5スタンドとの間。)では、形状変化の予測誤差の影響は顕著である。被圧延材の変形抵抗分布の変化にともなう圧延形状の変化は、最終スタンド(上記5スタンドのタンデム圧延機の例では、第5スタンド。)とそれより上流側のスタンド(上記5スタンドのタンデム圧延機の例では、第1スタンド乃至第4スタンド。)とで、ほぼ同様の挙動を示す。そのため、変形抵抗分布の変化に起因する中間スタンド間の形状変化を予測する際には、最終スタンドの出側に配置された形状計による測定結果を用いることが有効である。
図10は、本発明にかかる金属板の冷間圧延方法の一形態を説明するブロック図である。図10に示した例では、スタンド1、2、3、4、5を備えるタンデム圧延機で圧延された被圧延材がテンションリール9で巻き取られ、予め求められた被圧延材の幅方向の変形抵抗分布情報Xが、演算制御部8へと入力される。演算制御部8では、変形抵抗分布情報Xを用いて、各スタンド1、2、3、4、5の形状アクチュエータ制御部1a、2a、3a、4a、5aへと送られる制御目標の設定値を決定するためのセットアップ計算が行われ、演算制御部8で決定された制御目標の設定値が、形状アクチュエータ制御部1a、2a、3a、4a、5aへと送られる。冷間圧延中には、最終スタンド5の出側に配置された形状計6によって測定された形状測定結果が、形状信号処理部7を介して演算制御部8へと入力される。また、各スタンド1、2、3、4、5のロードセル1b、2b、3b、4b、5bによって測定された圧延荷重の信号も、演算制御部8へと送られる。演算制御部8では、形状信号処理部7を介して送られてきた形状測定値と、被圧延材の幅方向における変形抵抗が均一であると仮定して計算した形状予測値との差に基づいて、被圧延材の幅方向における変形抵抗分布を推定する。同時に、ロードセル1b、2b、3b、4b、5bによって測定された圧延荷重が変化した場合には、形状信号処理部7を介して送られてきた形状測定値を用いて、幅方向の変形抵抗分布変化に起因する圧延荷重の変化分を計算し、これを用いて形状アクチュエータ制御部1a、2a、3a、4a、5aへの制御目標値変更量を計算し、形状アクチュエータ制御部1a、2a、3a、4a、5aに対して、変更後の制御目標値を指示する。図10に示した例では、変更後の制御目標値に基づいてスタンド1、2、3、4、5を作動させることにより、圧延における板破断等の通板トラブルを低コストで防止した金属板の冷間圧延が行われる。本発明によれば、金属板の変形抵抗に応じて、圧延機の動作を適切に制御することができるので、本発明は、ハイテン鋼等を製造する際に好適に実施することができる。
図10に示した制御を適用した場合(本発明例1、本発明例2)、及び、本発明を適用しなかった場合(比較例1)の、板破断や絞込み等の通板トラブルの発生率を検証した結果を図11に示す。
本発明例1は、被圧延材の幅方向の変形抵抗分布を予め特定して、その特定結果を圧延機(形状制御アクチュエータ)のセットアップ計算にのみ適用した場合の結果であり、本発明例2は、本発明例1に加えて、形状計による被圧延材の形状測定結果を用いて圧延機の入側における被圧延材の幅方向の変形抵抗分布を推定し、この推定結果を用いて形状制御アクチュエータの設定を変更した場合の結果である。
図11に示したように、比較例1に比べて、本発明例1は、通板トラブルの発生比率が1/2程度に低減しており、さらに、本発明例2は、本発明例1よりも、通板トラブルの発生比率が1/2程度に低減した。この結果から、幅方向に変形抵抗のバラツキを有する被圧延材を冷間圧延する場合であっても、本発明によれば、被圧延材の幅方向における変形抵抗の差の影響を低減でき、板破断や絞込み等の通板トラブルを低減できることが確認された。
また、圧延荷重の変化が、被圧延材の幅方向中央部の変形抵抗が変化することに伴う、被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因する場合に、圧延荷重の変化が被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因しない場合よりも、圧延機の形状制御アクチュエータの設定値の変更量を大きくしながら冷間圧延を実施した場合(本発明例3)の、板破断や絞込み等の通板トラブルの発生率を検証した結果を図12に示す。また、圧延荷重の変化が、被圧延材の幅方向中央部の変形抵抗が変化することに伴う、被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因する場合であっても、圧延荷重の変化が被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因しない場合における、形状制御アクチュエータの設定値の変更量以下の範囲で形状制御アクチュエータの設定値を変更しながら冷間圧延を実施した場合(比較例2)の、板破断や絞込み等の通板トラブルの発生率を検証した結果を、図12に併せて示す。
図12に示したように、比較例2に比べて、本発明例3は、通板トラブルの発生比率が1/2程度に低減した。この結果、圧延荷重の変化が、被圧延材の幅方向中央部の変形抵抗が変化することに伴う、被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因する場合に、圧延荷重の変化が被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因しない場合よりも、圧延機の形状制御アクチュエータの設定値の変更量を大きくしながら冷間圧延を実施する本発明によれば、板破断や絞込み等の通板トラブルを低減できることが確認された。
X…被圧延材の幅方向の変形抵抗分布情報
1、2、3、4、5…スタンド(圧延機)
1a、2a、3a、4a、5a…形状アクチュエータ制御部
1b、2b、3b、4b、5b…ロードセル
6…形状計
7…形状信号処理部
8…演算制御部
9…テンションリール

Claims (6)

  1. 被圧延材の幅方向端部の変形抵抗が幅方向中央部の変形抵抗よりも高い場合は、耳波形状になるように設定された圧延機を用いて、前記被圧延材を冷間圧延し、
    被圧延材の幅方向端部の変形抵抗が幅方向中央部の変形抵抗よりも低い場合は、中伸び形状になるように設定された圧延機を用いて、前記被圧延材を冷間圧延する、金属板の冷間圧延方法。
  2. 前記被圧延材は、幅方向の変形抵抗分布が予め特定されており、
    特定された前記幅方向端部の変形抵抗が前記幅方向中央部の変形抵抗よりも高い場合は、前記圧延機の形状制御アクチュエータの設定値を、前記被圧延材の変形抵抗が幅方向で均一であると仮定したセットアップ計算から導かれる設定値よりも耳波形状となる設定値にして、前記被圧延材を冷間圧延し、
    特定された前記幅方向端部の変形抵抗が前記幅方向中央部の変形抵抗よりも低い場合は、前記圧延機の形状制御アクチュエータの設定値を、前記セットアップ計算から導かれる設定値よりも中伸び形状となる設定値にして、前記被圧延材を冷間圧延する、請求項1に記載の金属板の冷間圧延方法。
  3. 冷間圧延の実施中に、前記圧延機から前記被圧延材へと付与される圧延荷重を測定し、測定した前記圧延荷重の変化に応じて前記圧延機の形状制御アクチュエータの設定を変更し、
    前記圧延荷重の変化が、前記被圧延材の幅方向中央部の変形抵抗が変化することに伴う、前記被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因する場合には、前記圧延荷重の変化が前記被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因しない場合よりも、前記形状制御アクチュエータの設定値の変更量を大きくする、請求項1又は2に記載の金属板の冷間圧延方法。
  4. 冷間圧延の実施中に、前記圧延機から前記被圧延材へと付与される圧延荷重を測定し、測定した前記圧延荷重の変化に応じて前記圧延機の形状制御アクチュエータの設定を変更し、
    前記圧延荷重の変化が、前記被圧延材の幅方向端部の変形抵抗が変化することに伴う、前記被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因する場合には、前記圧延荷重の変化が、前記被圧延材の幅方向中央部の変形抵抗が変化することに伴う、前記被圧延材の幅方向の変形抵抗分布の変化に起因する場合よりも、前記形状制御アクチュエータの設定値の変更量を小さくする、請求項1又は2に記載の金属板の冷間圧延方法。
  5. 冷間圧延の実施中に前記圧延機の出側で測定された前記被圧延材の形状と、前記圧延機の圧延条件から求められる前記被圧延材の形状予測値との差を用いて、前記圧延機よりも上流側における前記被圧延材の幅方向の変形抵抗分布を推定し、
    推定した前記被圧延材の幅方向の変形抵抗分布に応じて、前記圧延機の形状制御アクチュエータの設定値を変更する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属板の冷間圧延方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属板の冷間圧延方法を用いて金属板を冷間圧延する工程を有する、金属板の製造方法。
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