JP2004025254A - 熱間圧延における圧延材先端の反り防止方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】反りに起因する、設備トラブルや圧延材の表面欠陥の発生を抑制できる熱間圧延における圧延材先端の反り防止方法を提供する。
【解決手段】圧延材先端の上下面の表面温度を測定し、得られた表面温度から上面側および下面側の変形抵抗を予測し、その変形抵抗差に応じて生じると予想される反り量を相殺するだけの異周速率を上下ワークロール周速に付与し、その後、前記圧延材先端を圧延する。
【選択図】 図1
【解決手段】圧延材先端の上下面の表面温度を測定し、得られた表面温度から上面側および下面側の変形抵抗を予測し、その変形抵抗差に応じて生じると予想される反り量を相殺するだけの異周速率を上下ワークロール周速に付与し、その後、前記圧延材先端を圧延する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間圧延における圧延材先端の反り防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱間圧延で発生する圧延材先端の上下方向への反りは、デスケーリング装置の破損等の設備トラブルや、製品になったときの圧延材の腰折れ等の表面疵等、様々な問題をもたらす。
このような諸問題をもたらす圧延材先端の反りは、加熱炉内で圧延材加熱中に生じる圧延材の上面側、下面側の温度不均一、加熱完了後に圧延ライン上に抽出し、圧延する前のデスケーリング水等による圧延材の上面、下面の冷却能不均一等、圧延材の厚さ方向の温度不均一に起因して発生することが知られている。図10(a)、(b)にそれぞれ圧延材1先端の、上方向への反り(以下、上反り)および下方向への反り(以下、下反り)を示した。図中符号cは反り量、hは圧延材の厚さ、5は圧延材1を搬送するテーブルロールであり、5Aは搬送パスラインである。
【0003】
このような圧延材先端の反りを防止する方法が特公平02−30761号公報に開示されている。特公平02−30761号公報に開示されている反り防止方法は、例えば図11(a)に示す演算装置7で圧延材先端の上下面の表面温度差に基づき、発生する圧延材先端の反り量を予測し、この予測した反り量を補償するのに必要な周速差を上下ワークロール2の周速に付与して圧延することを特徴とするものである.
ここで、符号3は圧延機6直前に設置し圧延材1の表面温度を検出する温度計であり、TU 、TL は圧延材先端の上下面の表面温度である。また7Aは反り量を補償するのに必要な上下ワークロール2の周速差を決定する最適モデルであり、図11(b)に示す2つのモデル式よりなる。a1 、a2 は反り量c−周速差の関係を表すモデル式の係数、またb1 、b2 は、反り量c−表面温度差の関係を表すモデル式の係数であってそれらは定数である。
【0004】
しかしながら、図11(a)に示すように圧延材先端の上下面の表面温度差に基づき、発生する圧延材先端の反り量を予測し、図11(b)に示すようなモデルで上下ワークロール2に周速差を与えて圧延してもなお、鋼種が違ったり圧延パスの進展に伴って温度変化等の影響を受けたりすると反り量を十分小さくすることができず、デスケーリング装置の破損等の設備トラブルや圧延材の腰折れ等の表面疵が発生する場合がある、という問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の問題を解決すべくなされたもので、反りに起因する、設備トラブルや圧延材の表面欠陥の発生を抑制できる熱間圧延における圧延材先端の反り防止方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、圧延材先端に発生する反り量の予測精度を高めることにより上記課題を解決した。
本発明は、圧延材先端の上下面の表面温度を測定し、得られた表面温度から上面側および下面側の変形抵抗を予測し、その変形抵抗差に応じて生じると予想される反り量を相殺するだけの異周速率を上下ワークロール周速に付与し、その後、前記圧延材先端を圧延することを特徴とする熱間圧延における圧延材先端の反り防止方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1〜図5を用い、本発明の実施の形態に係る圧延材先端の反り防止方法ついて詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る反り防止方法に用いた熱間圧延設備の配置を図1に示す。図1中符号4は加熱炉であり、加熱炉4にて加熱された圧延材1は加熱完了にて加熱炉4から抽出後、テーブルロール5によって搬送され、圧延機6のワークロール2によって圧延される。この間、図示しないデスケーリング装置、幅プレス装置により処理を受ける場合もある。圧延機6に向けてテーブルロール5によって圧延材1を搬送する際、圧延機6の手前でかつ圧延材の上方、および下方にそれぞれ設置された温度計3により圧延材1の上下面の表面温度を測定し、この上下面の表面温度TU 、TL を演算装置7に入力する。演算装置7内では、後に詳説する温度‐変形抵抗モデル、変形抵抗差‐反り量モデル、異周速率‐反り量モデルを介することにより、上下面の表面温度TU 、TL の差により発生すると予測される反り量を相殺する異周速率を求める。演算装置7から送られた異周速率に基づいて圧延機6のワークロール2を駆動するモータ速度制御装置9でワークロール2の周速を上下ワークロールで独立に駆動制御し、圧延材の先端を圧延して圧延材1の先端の反りを防止する。ワークロールの周速の適正レベルは圧延材先端のワークロール2への噛み込みのスムーズさ等を考慮して適宜決めることができる。
【0008】
ところで、発明者らは研究の末、圧延材先端に発生する反りは、圧延材の温度が圧延材厚さ方向に不均一であることに起因して上面側と下面側で変形抵抗に差がある結果、上面側と下面側とで圧延による長手方向への伸び差が生じて発生することを究明した。そこで、本発明では、温度−変形抵抗モデルおよび変形抵抗差−反り量モデルに基づいて圧延材先端に発生する反り量の予測精度を高め、これを補償制御することにより反りを小さくした。
【0009】
以下にその研究結果について説明する。
ただし、以下反り量cとは、図10(a)のように上反りを+、図10(b)のように下反りを−で示している。また、上反り量cは搬送パスライン5Aから圧延材先端の最大高さまでの距離から圧延材の厚さhを差し引いた量、下反り量cは圧延材先端がテーブルロールトップに達したときの圧延材長手方向での最高部と搬送パスライン5Aの間の距離から圧延材の厚さhを差し引いた量で評価した。
【0010】
本発明に用いる温度−変形抵抗モデル式としては、圧延材の材質、厚さ方向圧下ひずみεおよびひずみ速度dε/ dtを考慮できるモデル式として、下記(1)式を用いた。
kf =kεn ( dε/ dt) m exp(A/T) ・・・・・ (1)
ここで、 kf 変形抵抗、T は絶対温度であり、k 、n 、m 、A 、は圧延材の材質によって予め定めた定数である。
【0011】
図2は、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304の圧延材温度と変形抵抗の関係(温度‐変形抵抗モデル)を例示したグラフであり、このときの圧下ひずみは0.2 である。これより、圧延材温度が変化するとひずみ速度次第で傾きが異なるために変形抵抗は温度が同じでもひずみ速度が変化すれば変化することがわかる。また、ひずみ、ひずみ速度が同じ場合でもSUS304からSM490 に圧延材の材質が変わることにより変形抵抗も変わることがわかる。
【0012】
よって、図1に示したように上下面の表面温度TU 、TL をそれぞれ(1)式で表される温度‐変形抵抗モデル式に代入することにより、圧延材の材質、ひずみ、ひずみ速度を考慮した変形抵抗 kf を計算により予測できる。
図3は上下面の表面温度TU 、TL からそれぞれ計算される変形抵抗の差(以下、変形抵抗差)と圧延材先端に発生する反り量の関係(変形抵抗差‐反り量モデル)を例示したグラフである。SUS304をロール半径650mm 、ロール周速87mpm で板厚179mm から145mm まで圧延した場合の反り量を測定した。これより変形抵抗差Δ kf と反り量cは(2)式で表される比例関係にあることがわかった。
【0013】
c=3.3 Δ kf ・・・・・・・・(2)
ここで、Δ kf は変形抵抗差である。つまり、変形抵抗差Δ kf を知ることができれば発生する反り量cを予測することが可能である。
次に、異周速率と反り量の関係を図4を用いて述べる。
図4は異周速率とその異周速率で圧延を行ったときに発生する反り量との関係(異周速率‐反り量モデル)を例示したグラフある。圧延材の先端に発生する反り量は上下ワークロールの異周速率に比例することがわかる。さらなる詳しい調査の結果、以下の(3)式で表される比例関係にあることがわかった。
【0014】
c’=α(ld/h m )ΔV ・・・・(3)
但し、c’は上下ワークロールに異周速率を付与して圧延したときに圧延材先端に発生する反り量、αは接触弧長ldと平均板厚hmの比で表される形状比と呼ばれるパラメータによって変化する係数(ld/hm の関数)、ΔVは上ワークロール周速VU 、下ワークロール周速VL からΔV=(VU −VL )/ VL と定義される異周速率である。上記の形状比と異周速率、圧延材先端の反り量はVU >VL の場合について例示すると図5の関係にある。
【0015】
よって、上下面の表面温度TU 、TL から上面側および下面側の変形抵抗を(1)式で予測し、(2)式で変形抵抗差に応じて生じる反り量cを求め、この反り量cを相殺する(変形抵抗差から発生する反りと反対の向きの同じ量の反りを与える)だけの周速差を上記(3)式から算出することができ、算出した周速差を上下ワークロールに与えて駆動することにより、圧延材先端の反りを十分小さくすることができるのである。
【0016】
ここで、図6は圧延材の上下面に表面温度差があり、上面側と下面側とで変形抵抗差が生じている場合において異周速率を上下ワークロールに付与して圧延することによって反りが抑制されていることを示したグラフである。すなわち、図6で☆印で示す異周速率が変形抵抗差によって発生すると予測される反り量をちょうど相殺することができる値である。この値は、(2)式の右辺と(3)式の右辺を等しいとし、Δ kf を表面温度TU 、TL で表した(4)式によって得ることができる。
【0017】
ΔV=−3.3 k εn ( dε/ dt) m exp(A)/ {α(ld/h m )}×{exp(1/TU ) −exp(1/TL ) } ・・・・・・ (4)
なお、以上の説明では圧延材1が圧延機6の左側に位置し、圧延材1の右側を先端として圧延する場合について説明したが、圧延機6で可逆圧延する場合には、図1に示す圧延機6の右側に圧延材1を移動させた後、圧延機6の右側直近の、圧延材の上方、および下方にそれぞれ設置された温度計3により圧延材1の上下面の表面温度を測定し、この上下表面温度TU 、TL を演算装置7に入力し、上述した場合と同様にして圧延材1左側の先端の反りを十分小さくすることができる。
【0018】
【実施例】
図1に示した圧延機6を用いて、直径が650mm の上下ワークロールで板厚198mm、板幅1200mmのSUS304およびSM490 を熱間圧延した。その際、粗圧延を3パスのリバース圧延とし、表1に示すパススケジュールで行った。圧延材先端における異周速率および反り量を表2、3に示した。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
発明例の場合、市販の放射温度計を圧延材の上方、下方の、圧延機中心から上流側および下流側10m 位置に設置し、この放射温度計により上下面の表面温度を測定し、演算装置7により上面側と下面側の変形抵抗差によって発生すると予想される反り量を相殺する異周速率を求め、この異周速率を上下ワークロール周速に与えて圧延した。SUS304の変形抵抗定数はk =45MPa 、n =0.26、m =0.09、A =1490k とし、SM490 の変形抵抗定数は、k =18MPa 、n =0.45、m =0.12、A =2400k とした。下ワークロール周速は、各パスとも87mpm とした。
【0023】
一方、特公平02−307611号公報の技術の場合を従来例とし、図1に示す演算装置7に図11(b)に示したモデル式を使用し,圧延した。比較例の場合、反りを制御することなく、上下ワークロール周速を同じとして圧延した。なお、従来例および比較例では、上下ワークロールの直径、パススケジュールを発明例と同じとし、下ワークロール周速を各パスとも87mpm とした。
【0024】
図7から明らかなように、従来例の場合、SUS304の1パス目は反りを制御できているものの、その他では十分に反りが制御できていない。また、比較例では大きな反りが発生している。それに対して発明例の場合、すべてのパスにて反りを十分に小さく抑制できている。この結果、本発明を適用した後、図8に見られるように1ヶ月当りの圧延材先端の反り起因の設備トラブルがこれまでの約10分の1にまで低減でき、また図9に示すように圧延材先端の反り起因で発生する表面疵も10分の1にまで低減することができた。
【0025】
【発明の効果】
本発明により、熱間圧延における圧延材先端の反り量を大幅に低減させることが可能となったので、反りに起因する、設備破損等のトラブルおよび表面疵の発生頻度を大幅に低減可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に用いた熱間圧延設備の配置図である。
【図2】圧延材温度と変形抵抗の関係を例示するグラフである。
【図3】変形抵抗差と圧延材先端の反り量の関係を例示するグラフである。
【図4】上下ワークロールの異周速率と圧延材先端の反り量の関係を例示するグラフである。
【図5】形状比と反り量の関係を例示する図である。
【図6】上下表面に温度差があるときの上下ワークロールの異周速率と圧延材先端の反り量の関係を示す図である。
【図7】本発明の効果を例示した、各圧延パスでの圧延材先端の反り量を示すグラフである。
【図8】本発明の効果を例示した、圧延材先端の反り起因の設備トラブル発生件数を示す図である。
【図9】本発明の効果を例示した、圧延材先端の反り起因の表面疵発生件数を示す図である。
【図10】反り量の定義を示す図である。
【図11】従来の圧延材先端の反り防止方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 圧延材
2 ワークロール
3 温度計
4 加熱炉
5 テーブルロール
5A 搬送パスライン
6 圧延機
7 演算装置
8 モータ
9 モータ速度制御装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間圧延における圧延材先端の反り防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱間圧延で発生する圧延材先端の上下方向への反りは、デスケーリング装置の破損等の設備トラブルや、製品になったときの圧延材の腰折れ等の表面疵等、様々な問題をもたらす。
このような諸問題をもたらす圧延材先端の反りは、加熱炉内で圧延材加熱中に生じる圧延材の上面側、下面側の温度不均一、加熱完了後に圧延ライン上に抽出し、圧延する前のデスケーリング水等による圧延材の上面、下面の冷却能不均一等、圧延材の厚さ方向の温度不均一に起因して発生することが知られている。図10(a)、(b)にそれぞれ圧延材1先端の、上方向への反り(以下、上反り)および下方向への反り(以下、下反り)を示した。図中符号cは反り量、hは圧延材の厚さ、5は圧延材1を搬送するテーブルロールであり、5Aは搬送パスラインである。
【0003】
このような圧延材先端の反りを防止する方法が特公平02−30761号公報に開示されている。特公平02−30761号公報に開示されている反り防止方法は、例えば図11(a)に示す演算装置7で圧延材先端の上下面の表面温度差に基づき、発生する圧延材先端の反り量を予測し、この予測した反り量を補償するのに必要な周速差を上下ワークロール2の周速に付与して圧延することを特徴とするものである.
ここで、符号3は圧延機6直前に設置し圧延材1の表面温度を検出する温度計であり、TU 、TL は圧延材先端の上下面の表面温度である。また7Aは反り量を補償するのに必要な上下ワークロール2の周速差を決定する最適モデルであり、図11(b)に示す2つのモデル式よりなる。a1 、a2 は反り量c−周速差の関係を表すモデル式の係数、またb1 、b2 は、反り量c−表面温度差の関係を表すモデル式の係数であってそれらは定数である。
【0004】
しかしながら、図11(a)に示すように圧延材先端の上下面の表面温度差に基づき、発生する圧延材先端の反り量を予測し、図11(b)に示すようなモデルで上下ワークロール2に周速差を与えて圧延してもなお、鋼種が違ったり圧延パスの進展に伴って温度変化等の影響を受けたりすると反り量を十分小さくすることができず、デスケーリング装置の破損等の設備トラブルや圧延材の腰折れ等の表面疵が発生する場合がある、という問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の問題を解決すべくなされたもので、反りに起因する、設備トラブルや圧延材の表面欠陥の発生を抑制できる熱間圧延における圧延材先端の反り防止方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、圧延材先端に発生する反り量の予測精度を高めることにより上記課題を解決した。
本発明は、圧延材先端の上下面の表面温度を測定し、得られた表面温度から上面側および下面側の変形抵抗を予測し、その変形抵抗差に応じて生じると予想される反り量を相殺するだけの異周速率を上下ワークロール周速に付与し、その後、前記圧延材先端を圧延することを特徴とする熱間圧延における圧延材先端の反り防止方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1〜図5を用い、本発明の実施の形態に係る圧延材先端の反り防止方法ついて詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る反り防止方法に用いた熱間圧延設備の配置を図1に示す。図1中符号4は加熱炉であり、加熱炉4にて加熱された圧延材1は加熱完了にて加熱炉4から抽出後、テーブルロール5によって搬送され、圧延機6のワークロール2によって圧延される。この間、図示しないデスケーリング装置、幅プレス装置により処理を受ける場合もある。圧延機6に向けてテーブルロール5によって圧延材1を搬送する際、圧延機6の手前でかつ圧延材の上方、および下方にそれぞれ設置された温度計3により圧延材1の上下面の表面温度を測定し、この上下面の表面温度TU 、TL を演算装置7に入力する。演算装置7内では、後に詳説する温度‐変形抵抗モデル、変形抵抗差‐反り量モデル、異周速率‐反り量モデルを介することにより、上下面の表面温度TU 、TL の差により発生すると予測される反り量を相殺する異周速率を求める。演算装置7から送られた異周速率に基づいて圧延機6のワークロール2を駆動するモータ速度制御装置9でワークロール2の周速を上下ワークロールで独立に駆動制御し、圧延材の先端を圧延して圧延材1の先端の反りを防止する。ワークロールの周速の適正レベルは圧延材先端のワークロール2への噛み込みのスムーズさ等を考慮して適宜決めることができる。
【0008】
ところで、発明者らは研究の末、圧延材先端に発生する反りは、圧延材の温度が圧延材厚さ方向に不均一であることに起因して上面側と下面側で変形抵抗に差がある結果、上面側と下面側とで圧延による長手方向への伸び差が生じて発生することを究明した。そこで、本発明では、温度−変形抵抗モデルおよび変形抵抗差−反り量モデルに基づいて圧延材先端に発生する反り量の予測精度を高め、これを補償制御することにより反りを小さくした。
【0009】
以下にその研究結果について説明する。
ただし、以下反り量cとは、図10(a)のように上反りを+、図10(b)のように下反りを−で示している。また、上反り量cは搬送パスライン5Aから圧延材先端の最大高さまでの距離から圧延材の厚さhを差し引いた量、下反り量cは圧延材先端がテーブルロールトップに達したときの圧延材長手方向での最高部と搬送パスライン5Aの間の距離から圧延材の厚さhを差し引いた量で評価した。
【0010】
本発明に用いる温度−変形抵抗モデル式としては、圧延材の材質、厚さ方向圧下ひずみεおよびひずみ速度dε/ dtを考慮できるモデル式として、下記(1)式を用いた。
kf =kεn ( dε/ dt) m exp(A/T) ・・・・・ (1)
ここで、 kf 変形抵抗、T は絶対温度であり、k 、n 、m 、A 、は圧延材の材質によって予め定めた定数である。
【0011】
図2は、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304の圧延材温度と変形抵抗の関係(温度‐変形抵抗モデル)を例示したグラフであり、このときの圧下ひずみは0.2 である。これより、圧延材温度が変化するとひずみ速度次第で傾きが異なるために変形抵抗は温度が同じでもひずみ速度が変化すれば変化することがわかる。また、ひずみ、ひずみ速度が同じ場合でもSUS304からSM490 に圧延材の材質が変わることにより変形抵抗も変わることがわかる。
【0012】
よって、図1に示したように上下面の表面温度TU 、TL をそれぞれ(1)式で表される温度‐変形抵抗モデル式に代入することにより、圧延材の材質、ひずみ、ひずみ速度を考慮した変形抵抗 kf を計算により予測できる。
図3は上下面の表面温度TU 、TL からそれぞれ計算される変形抵抗の差(以下、変形抵抗差)と圧延材先端に発生する反り量の関係(変形抵抗差‐反り量モデル)を例示したグラフである。SUS304をロール半径650mm 、ロール周速87mpm で板厚179mm から145mm まで圧延した場合の反り量を測定した。これより変形抵抗差Δ kf と反り量cは(2)式で表される比例関係にあることがわかった。
【0013】
c=3.3 Δ kf ・・・・・・・・(2)
ここで、Δ kf は変形抵抗差である。つまり、変形抵抗差Δ kf を知ることができれば発生する反り量cを予測することが可能である。
次に、異周速率と反り量の関係を図4を用いて述べる。
図4は異周速率とその異周速率で圧延を行ったときに発生する反り量との関係(異周速率‐反り量モデル)を例示したグラフある。圧延材の先端に発生する反り量は上下ワークロールの異周速率に比例することがわかる。さらなる詳しい調査の結果、以下の(3)式で表される比例関係にあることがわかった。
【0014】
c’=α(ld/h m )ΔV ・・・・(3)
但し、c’は上下ワークロールに異周速率を付与して圧延したときに圧延材先端に発生する反り量、αは接触弧長ldと平均板厚hmの比で表される形状比と呼ばれるパラメータによって変化する係数(ld/hm の関数)、ΔVは上ワークロール周速VU 、下ワークロール周速VL からΔV=(VU −VL )/ VL と定義される異周速率である。上記の形状比と異周速率、圧延材先端の反り量はVU >VL の場合について例示すると図5の関係にある。
【0015】
よって、上下面の表面温度TU 、TL から上面側および下面側の変形抵抗を(1)式で予測し、(2)式で変形抵抗差に応じて生じる反り量cを求め、この反り量cを相殺する(変形抵抗差から発生する反りと反対の向きの同じ量の反りを与える)だけの周速差を上記(3)式から算出することができ、算出した周速差を上下ワークロールに与えて駆動することにより、圧延材先端の反りを十分小さくすることができるのである。
【0016】
ここで、図6は圧延材の上下面に表面温度差があり、上面側と下面側とで変形抵抗差が生じている場合において異周速率を上下ワークロールに付与して圧延することによって反りが抑制されていることを示したグラフである。すなわち、図6で☆印で示す異周速率が変形抵抗差によって発生すると予測される反り量をちょうど相殺することができる値である。この値は、(2)式の右辺と(3)式の右辺を等しいとし、Δ kf を表面温度TU 、TL で表した(4)式によって得ることができる。
【0017】
ΔV=−3.3 k εn ( dε/ dt) m exp(A)/ {α(ld/h m )}×{exp(1/TU ) −exp(1/TL ) } ・・・・・・ (4)
なお、以上の説明では圧延材1が圧延機6の左側に位置し、圧延材1の右側を先端として圧延する場合について説明したが、圧延機6で可逆圧延する場合には、図1に示す圧延機6の右側に圧延材1を移動させた後、圧延機6の右側直近の、圧延材の上方、および下方にそれぞれ設置された温度計3により圧延材1の上下面の表面温度を測定し、この上下表面温度TU 、TL を演算装置7に入力し、上述した場合と同様にして圧延材1左側の先端の反りを十分小さくすることができる。
【0018】
【実施例】
図1に示した圧延機6を用いて、直径が650mm の上下ワークロールで板厚198mm、板幅1200mmのSUS304およびSM490 を熱間圧延した。その際、粗圧延を3パスのリバース圧延とし、表1に示すパススケジュールで行った。圧延材先端における異周速率および反り量を表2、3に示した。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
発明例の場合、市販の放射温度計を圧延材の上方、下方の、圧延機中心から上流側および下流側10m 位置に設置し、この放射温度計により上下面の表面温度を測定し、演算装置7により上面側と下面側の変形抵抗差によって発生すると予想される反り量を相殺する異周速率を求め、この異周速率を上下ワークロール周速に与えて圧延した。SUS304の変形抵抗定数はk =45MPa 、n =0.26、m =0.09、A =1490k とし、SM490 の変形抵抗定数は、k =18MPa 、n =0.45、m =0.12、A =2400k とした。下ワークロール周速は、各パスとも87mpm とした。
【0023】
一方、特公平02−307611号公報の技術の場合を従来例とし、図1に示す演算装置7に図11(b)に示したモデル式を使用し,圧延した。比較例の場合、反りを制御することなく、上下ワークロール周速を同じとして圧延した。なお、従来例および比較例では、上下ワークロールの直径、パススケジュールを発明例と同じとし、下ワークロール周速を各パスとも87mpm とした。
【0024】
図7から明らかなように、従来例の場合、SUS304の1パス目は反りを制御できているものの、その他では十分に反りが制御できていない。また、比較例では大きな反りが発生している。それに対して発明例の場合、すべてのパスにて反りを十分に小さく抑制できている。この結果、本発明を適用した後、図8に見られるように1ヶ月当りの圧延材先端の反り起因の設備トラブルがこれまでの約10分の1にまで低減でき、また図9に示すように圧延材先端の反り起因で発生する表面疵も10分の1にまで低減することができた。
【0025】
【発明の効果】
本発明により、熱間圧延における圧延材先端の反り量を大幅に低減させることが可能となったので、反りに起因する、設備破損等のトラブルおよび表面疵の発生頻度を大幅に低減可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に用いた熱間圧延設備の配置図である。
【図2】圧延材温度と変形抵抗の関係を例示するグラフである。
【図3】変形抵抗差と圧延材先端の反り量の関係を例示するグラフである。
【図4】上下ワークロールの異周速率と圧延材先端の反り量の関係を例示するグラフである。
【図5】形状比と反り量の関係を例示する図である。
【図6】上下表面に温度差があるときの上下ワークロールの異周速率と圧延材先端の反り量の関係を示す図である。
【図7】本発明の効果を例示した、各圧延パスでの圧延材先端の反り量を示すグラフである。
【図8】本発明の効果を例示した、圧延材先端の反り起因の設備トラブル発生件数を示す図である。
【図9】本発明の効果を例示した、圧延材先端の反り起因の表面疵発生件数を示す図である。
【図10】反り量の定義を示す図である。
【図11】従来の圧延材先端の反り防止方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 圧延材
2 ワークロール
3 温度計
4 加熱炉
5 テーブルロール
5A 搬送パスライン
6 圧延機
7 演算装置
8 モータ
9 モータ速度制御装置
Claims (1)
- 圧延材先端の上下面の表面温度を測定し、得られた表面温度から上面側および下面側の変形抵抗を予測し、その変形抵抗差に応じて生じると予想される反り量を相殺するだけの異周速率を上下ワークロール周速に付与し、その後、前記圧延材先端を圧延することを特徴とする熱間圧延における圧延材先端の反り防止方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
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Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010172927A (ja) * | 2009-01-29 | 2010-08-12 | Jfe Steel Corp | 圧延材の先端反り制御方法 |
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JP2022181167A (ja) * | 2021-05-25 | 2022-12-07 | Jfeスチール株式会社 | 鋼板の形状判別方法、形状測定方法、形状制御方法、製造方法、形状判別モデルの生成方法、及び形状判別装置 |
-
2002
- 2002-06-26 JP JP2002186548A patent/JP2004025254A/ja active Pending
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